【実施例】
【0029】
以下、本発明の繊維製品の処理装置を用いて布帛を実際に染色した場合の実施例に基づいて本発明を説明するが、本発明の技術的範囲を逸脱しない範囲において様々な変更や修正が可能であることは言うまでもない。
【0030】
《実施例1》
以下の表1に示す組成の染料を溶解槽1に投入して、溶解槽1内の水に溶解させ、蒸気弁5を開弁して熱交換器6に高温蒸気を供給することによって染色液2を加熱した。そして、攪拌機7を撹拌させて染色液2の温度を約70℃に昇温した。染色液2の温度は蒸気弁5が備えている温度センサーで感知した。以下の表1、表4および表8において、%owfとは、布帛重量に対する染料の重量比率を示す。
【0031】
【表1】
【0032】
染色槽3内の水に以下の表2に示す組成の薬品を添加した。そして、流量調整弁14a、14bおよび14cを閉じ、水を主として含む液体2aを経路12aおよび15を経てポンプ16により熱交換器17に送給した。そして、蒸気弁18を開弁して熱交換器17に高温蒸気を供給することによって、染色槽3から供給された水を主として含む液体を加熱した。熱交換器17内で加熱された液体をポンプ16により、経路19を経て染色槽3に設けたノズル20に向けて送給した。ノズル20から噴射される加圧液体の圧力によってポリエステルフィラメント100%織物(経糸50デニール、緯糸75デニール)からなる布帛4は、染色槽3から槽外の循環路3aを経て染色槽3に戻るという循環ループを形成した。
【0033】
【表2】
【0034】
布帛4が染色槽3内で移動を開始すると、加圧弁21を開弁して加圧空気を染色槽3内に導入して染色槽3内の圧力を徐々に上昇させた。このようにして、染色槽3内の水を主として含む液体は、経路12a、経路15、熱交換器17、経路19およびノズル20を経て染色槽3に戻る順路を循環することによって徐々に加温された。一方、加圧弁21から染色槽3内に導入された加圧空気と温度に対応した蒸気圧力により、染色槽3内の圧力は徐々に上昇した。
【0035】
そして、温度センサー22によって感知した染色槽3内の液体2aの温度が、溶解槽1に投入された染料によって決まる所定の染色温度(染色液に含まれる染料の染色温度の中の最高染色温度、この場合は135℃)に達した時点で、無脈動ポンプ11aを駆動させた。無脈動ポンプ11は定量連続流を実現することができるポンプであるが、この実施例においては、吐出圧が0.5MPaで、吐出量は4(L/min)の一定値である。
【0036】
無脈動ポンプ11aから吐出された染色液2は経路12を経て、染色槽3から排出される液体と一緒になるが、無脈動ポンプ11aから吐出される染色液2の流量は実質的に変化せず一定であるから、染料の濃度が均一な染色液が熱交換器17に供給された。
【0037】
かくして、均一濃度の染色液は熱交換器17内で加熱された後、ポンプ16により経路19を経て染色槽3に設けたノズル20に向けて供給され、布帛4は、染色槽3から槽外の循環路3aを経て染色槽3に戻るという循環ループを形成した。溶解槽1において当初調製された染色液2の全量を染色槽3から排出された液体に混合してなる染色液を30分間ノズル20から噴射した後、蒸気弁18を閉じて、15分間かけて、染色槽3内の高温の液体を70℃まで冷却した後、布帛4を染色槽3から取り出した。135℃の染色液をノズル20から30分間噴射する際に、温度センサー22によって感知され染色液の温度を135℃に保持するように、蒸気弁18から熱交換器17に供給する高温蒸気の量を制御した。染色槽3から取り出した布帛4を観察すると、布帛4の全長は、目視で青色に均一に染色されたことを確認した。そして、布帛4の長手方向におけるL値、a値、b値および色差(△E)を、分光測色計を用いて測定した。その結果を、以下の表3に示す(以下の表3、表7および表10に示すL値、a値、b値は、国際照明委員会(CIE)で規格化されたCIELABより求められる値であり、△L、△a、△bは、0m地点の測色データを基準色とした場合の差を示す)。
【0038】
【表3】
【0039】
布帛4の長手方向に100m毎に分光測色計(コニカミノルタ社製 2600-d)で測色したところ、表3に示すように、色差を示す△Eは0.3以内であることから、全長に渡って均一に染色されていることが確認できた。
図3は、この染色工程中の染色槽内の液体の昇温の様子を示す図であり、横軸は時間(分)、縦軸は温度(℃)である。
【0040】
また、この染色工程中において、染色槽3内の染色液2aの量をほぼ一定にして、布帛4を
図1に示すような形態にするために、流量調整弁14a、14bおよび14cの開度を適宜調整して、染色槽3の最下端の底部のみならず、流量調整弁14a、14bおよび14cを経由して液体2aが必要に応じて排出されるようにした。
【0041】
《実施例2》
以下の表4に示す組成の染料を溶解槽1に投入して、溶解槽1内の水に溶解させ、蒸気弁5を開弁して熱交換器6に高温蒸気を供給することによって染色液2を加熱した。そして、攪拌機7を撹拌させて染色液2の温度を約30℃に昇温した。染色液2の温度は蒸気弁5が備えている温度センサーで感知した。
【0042】
【表4】
【0043】
染色槽3内の水に以下の表5に示す組成の薬品を添加した。流量調整弁14a、14bおよび14cを閉じ、水を主として含む液体2aを経路12aおよび15を経てポンプ16により熱交換器17に送給した。そして、蒸気弁18を開弁して熱交換器17に高温蒸気を供給することによって、染色槽3から供給された水を主として含む液体を加熱した。熱交換器17内で加熱された液体をポンプ16により、経路19を経て染色槽3に設けたノズル20に向けて送給した。ノズル20から噴射される加圧液体の圧力によってナイロンフィラメント100%織物(経糸20デニール、緯糸20デニール)からなる布帛4は、染色槽3から槽外の循環路3aを経て染色槽3に戻るという循環ループを形成した。
【0044】
【表5】
【0045】
布帛4が染色槽3内で移動を開始すると、加圧弁21を開弁して加圧空気を染色槽3内に導入して染色槽3内の圧力を徐々に上昇させた。このようにして、染色槽3内の水を主として含む液体は、経路12a、経路15、熱交換器17、経路19およびノズル20を経て染色槽3に戻る順路を循環することによって徐々に加温された。一方、加圧弁21から染色槽3内に導入された加圧空気と温度に対応した蒸気圧力により、染色槽3内の圧力は徐々に上昇した。
【0046】
そして、温度センサー22によって感知した染色槽3内の液体2aの温度が、溶解槽1に投入された染料によって決まる所定の染色温度(染色液に含まれる染料の染色温度の中の最高染色温度、この場合は95℃)に達した時点で、無脈動ポンプ11aを駆動させた。無脈動ポンプ11は定量連続流を実現することができるポンプであるが、この実施例においては、吐出圧が0.5MPaで、吐出量は1.6L/minの一定値である。
【0047】
無脈動ポンプ11aから吐出された染色液2は経路12を経て、染色槽3から排出される液体と一緒になるが、無脈動ポンプ11aから吐出される染色液2の流量は実質的に変化せず一定であるから、染料の濃度が均一な染色液が熱交換器17に供給された。
【0048】
かくして、均一濃度の染色液は熱交換器17内で加熱された後、ポンプ16により経路19を経て染色槽3に設けたノズル20に向けて供給され、布帛4は、染色槽3から槽外の循環路3aを経て染色槽3に戻るという循環ループを形成した。溶解槽1において当初調製された染色液2の全量を染色槽3から排出された液体に混合してなる染色液を60分間ノズル20から噴射した後、蒸気弁18を閉じて、10分間かけて、染色槽3内の高温の液体を70℃まで冷却した後、染色槽3内の染色液を廃液した。そして、染色槽3内に60℃の温水を供給し、この温水に以下の表6に示す組成のFix剤を添加し、染色工程時と同様に昇温した。95℃の染色液をノズル20から60分間噴射する際に、温度センサー22によって感知され染色液の温度を95℃に保持するように、蒸気弁18から熱交換器17に供給する高温蒸気の量を制御するとともに、Fix工程における染色液の温度を80℃に保持するように、蒸気弁18から熱交換器17に供給する高温蒸気の量を制御した。染色槽3から取り出した布帛4を観察すると、布帛4の全長は、目視で黒色に均一に染色されたことを確認した。そして、布帛4の長手方向におけるL値、a値、b値および色差(△E)を、分光測色計を用いて測定した。その結果を、以下の表7に示す。
【0049】
【表6】
【0050】
【表7】
【0051】
布帛4の長手方向に100m毎に分光測色計(コニカミノルタ社製 2600-d)で測色したところ、表7に示すように、色差を示す△Eは0.3以内であることから、全長に渡って均一に染色されていることが確認できた。
図4は、この染色工程中の染色槽内の液体の昇温の様子を示す図であり、横軸は時間(分)、縦軸は温度(℃)である。
【0052】
また、この染色工程中において、染色槽3内の染色液2aの量をほぼ一定にして、布帛4を
図1に示すような形態にするために、流量調整弁14a、14bおよび14cの開度を適宜調整して、染色槽3の最下端の底部のみならず、流量調整弁14a、14bおよび14cを経由して液体2aが必要に応じて排出されるようにした。
【0053】
《比較例》
上記実施例において、染色工程中の染色槽内の液体の温度を
図5に示すように昇温させた点と、昇温前に染色槽3内の水に、表8に示す組成の染料と表9に示す組成の薬品を添加した点を除けば、実施例1と同じようにポリエステルフィラメント100%織物(経糸50デニール、緯糸75デニール)からなる布帛4を染色した。
図5の横軸は時間(分)、縦軸は温度(℃)である。
【0054】
【表8】
【0055】
【表9】
【0056】
この比較例においては、温度センサー22によってノズル20から噴射される染色液の温度を監視して、蒸気弁18から熱交換器17に供給する高温蒸気の量を制御することで、
図5に示すように昇温をした、そして、ノズル20から噴射される染色液の温度を30分間、135℃に保持するように、蒸気弁18から熱交換器17に供給する高温蒸気の量を制御した。その後、蒸気弁18を閉じて、15分間かけて、染色槽3内の高温の液体を70℃まで冷却した後、布帛4を染色槽3から取り出した。
【0057】
染色槽3から取り出した布帛4を観察すると、青色を基調としていたが、ところどころに目視で青味の部分と黄味の部分が見られた。そして、布帛4の長手方向におけるL値、a値、b値および色差(△E)を、分光測色計を用いて測定した。その結果を、以下の表10に示す。
【0058】
【表10】
【0059】
布帛4の長手方向に100m毎に分光測色計(コニカミノルタ社製 2600-d)で測色したところ、表10に示すように、色差を示す△Eには最大約0.5の差が見られ、青味、黄味を示す△bについても、最大0.46の差が確認された。また、比較例の布帛4の全長における染色均一性は実施例1および2に比べて劣っていた。この原因としては、比較例は120℃および130℃の温度保持工程を有しており、比較例は、実施例1および2に比べて複雑な昇温工程となっているため、染色液の温度制御が十分できず、±5℃程度の温度ばらつきがあったことによると思われる。
【0060】
実施例1の染色時間(冷却工程を含む)は、90分(10分+35分+30分+15分)であり、実施例2の染色時間(冷却工程を含む)は、100分(10分+20分+60分+10分)であり、比較例の染色時間(冷却工程を含む)は、130分(10分+30分+10分+10分+15分+10分+30分+15分)である。このように、上記実施例1および2の染色方法によれば、比較例のように段階的に昇温しながら染色する方法に比べて、生産性を向上することが可能であり、上記比較例と比べると、約1.30〜1.44倍生産性を向上することができた。