【実施例】
【0025】
以下、実施例にて本発明を例証するが本発明を限定することを意図するものではない。なお、説明中、部及び%はそれぞれ有効分での重量部及び重量%を示す。また、塗工量は片面あたりの固形分である。
パルプの濾水度(カナダ標準濾水度、以下「CSF」という。)はJIS P8121に準じて測定した。
【0026】
[実施例1]
パルプ原料としてCSF340mlの広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)100部を使用し、パルプ100部に対して、紙力増強剤(カチオン化澱粉)0.6部、硫酸アルミニウム0.7部を配合し、更に基紙の灰分が18%となるように軽質炭酸カルシウムを配合した原料を、ツインワイヤー抄紙機を用いて速度800m/分で抄紙して坪量71.6g/m
2の基紙を得た。
次いで、上記基紙の両面に、水溶性高分子物質(酸化澱粉、日本食品化工社製、商品名:MS#3800)を9.2%及びサイズ剤(スチレン−アクリル酸系共重合体樹脂、ハリマ化成社製、商品名:KN−630)を0.05%含有するクリア塗工層用塗工液を、塗工量が1.2g/m
2(両面での塗工量が2.4g/m
2)となるようにゲートロールコーターで塗工、乾燥してクリア塗工層を形成し、ソフトニップカレンダーで表面を処理して、坪量74.0g/m
2の書籍用紙を得た。
この書籍用紙のJIS P8122:2004に規定されるステキヒトサイズ度は0秒であり、クリア塗工層の全固形分に対するサイズ剤は固形分で0.5%であった。
【0027】
[実施例2]
パルプ原料としてCSF340mlのLBKP100部を使用し、パルプ100部に対して、紙力増強剤(カチオン化澱粉)0.6部、硫酸アルミニウム0.7部、サイズ剤(アルキルケテンダイマー、星光PMC社製、商品名:AD1604)0.02部を配合し、更に基紙の灰分が18%となるように軽質炭酸カルシウムを配合した原料を、ツインワイヤー抄紙機を用いて速度800m/分で抄紙して坪量71.6g/m
2の基紙を得た。
次いで、上記基紙の両面に、水溶性高分子物質(酸化澱粉、日本食品化工社製、商品名:MS#3800)を9.2%及びサイズ剤(スチレン−アクリル酸系共重合体樹脂、ハリマ化成社製、商品名:KN−630)を0.07%含有するクリア塗工層用塗工液を、塗工量が1.2g/m
2(両面での塗工量が2.4g/m
2)となるようにゲートロールコーターで塗工、乾燥してクリア塗工層を形成し、ソフトニップカレンダーで表面を処理して、坪量74.0g/m
2の書籍用紙を得た。
この書籍用紙のJIS P8122:2004に規定されるステキヒトサイズ度は1秒であり、クリア塗工層の全固形分に対するサイズ剤は固形分で0.8%であった。
[実施例3]
基紙の坪量を71.6g/m
2として、水溶性高分子物質(酸化澱粉、日本食品化工社製、商品名:MS#3800)を5.2%及びサイズ剤(スチレン−アクリル酸系共重合体樹脂、ハリマ化成社製、商品名:KN−630)を0.07%含有するクリア塗工層用塗工液を、塗工量が1.2g/m
2(両面での塗工量が2.4g/m
2)となるようにゲートロールコーターで塗工、乾燥してクリア塗工層を形成した以外は、実施例2と同様にして坪量74.0g/m
2の書籍用紙を得た。
この書籍用紙のJIS P8122:2004に規定されるステキヒトサイズ度は2秒であり、クリア塗工層の全固形分に対するサイズ剤は固形分で1.3%であった。
[実施例4]
基紙の坪量を71.6g/m
2として、水溶性高分子物質(酸化澱粉、日本食品化工社製、商品名:MS#3800)を2.5%及びサイズ剤(スチレン−アクリル酸系共重合体樹脂、ハリマ化成社製、商品名:KN−630)を0.07%含有するクリア塗工層用塗工液を、塗工量が1.2g/m
2(両面での塗工量が2.4g/m
2)となるようにゲートロールコーターで塗工、乾燥してクリア塗工層を形成した以外は、実施例2と同様にして坪量74.0g/m
2の書籍用紙を得た。
この書籍用紙のJIS P8122:2004に規定されるステキヒトサイズ度は5秒であり、クリア塗工層の全固形分に対するサイズ剤は固形分で2.7%であった。
[実施例5]
基紙の坪量を68.0g/m
2として、水溶性高分子物質(酸化澱粉、日本食品化工社製、商品名:MS#3800)を9.2%及びサイズ剤(スチレン−アクリル酸系共重合体樹脂、ハリマ化成社製、商品名:KN−630)を0.07%含有するクリア塗工層用塗工液を、塗工量が3.0g/m
2(両面での塗工量が6.0g/m
2)となるようにゲートロールコーターで塗工、乾燥してクリア塗工層を形成した以外は、実施例2と同様にして坪量74.0g/m
2の書籍用紙を得た。
この書籍用紙のJIS P8122:2004に規定されるステキヒトサイズ度は5秒であり、クリア塗工層の全固形分に対するサイズ剤は固形分で0.8%であった。
【0028】
[比較例1]
パルプ原料のパルプ100部に対して、サイズ剤(アルキルケテンダイマー、星光PMC社製、商品名:AD1604)を0.2部配合した以外は実施例2と同様にして書籍用紙を得た。 この書籍用紙のJIS P8122:2004に規定されるステキヒトサイズ度は20秒であり、クリア塗工層の全固形分に対するサイズ剤は固形分で0.8%であった。
[比較例2]
基紙の坪量を68.0g/m
2として、水溶性高分子物質(酸化澱粉、日本食品化工社製、商品名:MS#3800)を7.2%及びサイズ剤(スチレン−アクリル酸系共重合体樹脂、ハリマ化成社製、商品名:KN−630)を0.07%含有するクリア塗工層用塗工液を、塗工量が3.0g/m
2(両面での塗工量が6.0g/m
2)となるようにゲートロールコーターで塗工、乾燥してクリア塗工層を形成した以外は、実施例2と同様にして書籍用紙を得た。
この書籍用紙のJIS P8122:2004に規定されるステキヒトサイズ度は7秒であり、クリア塗工層の全固形分に対するサイズ剤は固形分で1.0%であった。
[比較例3]
基紙の坪量を71.6g/m
2として、水溶性高分子物質(酸化澱粉、日本食品化工社製、商品名:MS#3800)を2.2%及びサイズ剤(スチレン−アクリル酸系共重合体樹脂、ハリマ化成社製、商品名:KN−630)を0.07%含有するクリア塗工層用塗工液を、塗工量が1.2g/m
2(両面での塗工量が2.4g/m
2)となるようにゲートロールコーターで塗工、乾燥してクリア塗工層を形成した以外は、実施例2と同様にして書籍用紙を得た。
この書籍用紙のJIS P8122:2004に規定されるステキヒトサイズ度は7秒であり、クリア塗工層の全固形分に対するサイズ剤は固形分で3.1%であった。
[比較例4]
基紙の坪量を71.6g/m
2として、水溶性高分子物質(酸化澱粉、日本食品化工社製、商品名:MS#3800)を9.2%含有するクリア塗工層用塗工液を、塗工量が1.2g/m
2(両面での塗工量が2.4g/m
2)となるようにゲートロールコーターで塗工、乾燥してクリア塗工層を形成した以外は、実施例2と同様にして書籍用紙を得た。
この書籍用紙のJIS P8122:2004に規定されるステキヒトサイズ度は0秒であり、クリア塗工層の全固形分に対するサイズ剤は固形分で0%であった。
[比較例5]
基紙の坪量を69.0g/m
2として、クリア塗工層用塗工液を下記配合の顔料塗工液に代え、塗工量が2.5g/m
2(両面での塗工量が5.0g/m
2)となるようにゲートロールコーターで塗工、乾燥して顔料塗工層を形成した以外は実施例2と同様にして坪量74.0g/m
2の書籍用紙を得た。
この書籍用紙のJIS P8122:2004に規定されるステキヒトサイズ度は5秒であった。
<顔料塗工液>
重質炭酸カルシウム(ファイマテック社製、商品名:FMT−90) 56.3部
スチレン・ブタジエン共重合体ラテックス(JSR社製、
商品名:NP−150B) 3.8部
澱粉(敷島スターチ社製、商品名:マーメイド210) 1.0部
水 91.7部
【0029】
以上のようにして得た書籍用紙について以下の評価を行った。
<発色性>
作製した書籍用紙について、市販の顔料インクジェットプリンター(製品名:CM8060 ColorMFP、ヒューレット・パッカード社製、印字条件:つや消し/ブローシャモード)を使用して、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローのベタ印字(大きさ:縦2cm×横3cm)を行った。1日後にマクベス濃度計(Gretag Macbeth RD−19)を用いて各色の印字濃度を測定し、4色の合計値で発色性を評価した。
【0030】
<文字品位(線太り率)>
作製した書籍用紙について、市販の顔料インクジェットプリンター(製品名:CM8060 ColorMFP、ヒューレット・パッカード社製、印字条件:つや消し/ブローシャモード)及び電子写真用レーザープリンター(製品名:LP−S7100、セイコーエプソン社製、印字条件:きれいモード)を使用して、ブラックでそれぞれ幅0.3mmの直線画像を印字した。
電子写真用レーザープリンターで印字した直線画像の幅と顔料インクジェットプリンターで印字した直線画像の幅から、下記式にて線太り率を算出し、文字品位を評価した。
線太り率(%)=(顔料インクジェットプリンターで印字した直線画像の幅/
電子写真用レーザープリンターで印字した直線画像の幅)×100
【0031】
<裏抜け>
作製した書籍用紙について、市販の顔料インクジェットプリンター(製品名:CM8060 ColorMFP、ヒューレット・パッカード社製、印字条件:つや消し/ブローシャモード)を使用して、ブラックのベタ印字(大きさ:縦2cm×横3cm)を行った。
1日後に印字面とは反対の面から、黒ベタの濃度をマクベス濃度計(Gretag Macbeth RD−19)を用いて測定し、以下の基準で裏抜けを評価した。評価は◎、○、△であれば実用上問題はない。
◎:濃度が0.10未満である。
○:濃度が0.10以上0.15未満である。
△:濃度が0.15以上0.20未満である。
×:濃度が0.20以上である。
【0032】
<セットオフ(インク乾燥性)>
作製した書籍用紙について、市販の顔料インクジェットプリンター(製品名:CM8060 ColorMFP、ヒューレット・パッカード社製、印字条件:つや消し/ブローシャモード)を使用して、ブラックのベタ印字(大きさ:縦2cm×横3cm)を行った。
印字10秒後に印字面の上に坪量80g/m
2の上質紙1枚を重ね、直径10cm、幅13cm、重量2.7kgのゴムローラーで1回加圧した後、上質紙に転写された黒ベタの濃度をマクベス濃度計(Gretag Macbeth RD−19)を用いて測定し、以下の基準で評価した。評価は◎、○であれば実用上問題はない。
◎:上質紙に転写された黒ベタの濃度が0.10未満である。
○:上質紙に転写された黒ベタの濃度が0.10以上0.15未満である。
△:上質紙に転写された黒ベタの濃度が0.15以上0.20未満である。
×:上質紙に転写された黒ベタの濃度が0.20以上である。
【0033】
<風合い>
作製した書籍用紙について、表面の面感を目視にて下記の基準で評価した。
○:オフセット印刷方式の書籍の風合いが得られている。
×:オフセット印刷方式の書籍の風合いが得られない。
【0034】
実施例及び比較例で得られた書籍用紙の紙質及び評価結果を表1に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
表1から明らかなように、顔料を含有しないクリア塗工層を有し、該クリア塗工層が、水溶性高分子物質及び疎水性高分子のエマルジョンから選ばれる少なくとも1種とサイズ剤とを含有し、前記クリア塗工層の全固形分に対し、サイズ剤が固形分で0.01〜3.0重量%であり、JIS P8122:2004に規定されるステキヒトサイズ度が5秒以下である各実施例の場合、インクジェット印刷方式により印刷した場合の発色性が良好であり、オフセット印刷方式の書籍と同等の文字品位と風合いが得られると共に、裏抜けとセットオフが抑制された書籍用紙が得られた。
一方、ステキヒトサイズ度が5秒を超える比較例1〜3の場合、文字品位(線太り率)は良好であるが、インクの乾燥性が不十分でありセットオフが劣る。特にステキヒトサイズ度が5秒を大きく超える比較例1の場合、セットオフが大きく劣った。
また、クリア塗工層にサイズ剤を含有しない比較例4は、インクの乾燥性が良好でありセットオフは抑制されるが、発色性、文字品位(線太り率)が劣り、特に裏抜けが大きく劣った。
顔料塗工層を有する比較例5の場合、発色性は良好であるが、オフセット印刷方式の書籍と同等の風合いを得ることができない。