【解決手段】格子間隔がチャープしたファイバブラッグ回折格子を有する被測定光ファイバ37に対し、互いに偏波が直交する第1、第2の偏波状態の光が、ファイバブラッグ回折格子を光が往復する時間より短い所定の時間差をもって合波された光を偏波多重部10で生成して測定光Pmesとして与え、信号処理部101において、1回の波長掃引で得られたディジタル信号Ds、Dpに対するフーリエ変換処理を、第1、第2の偏波状態の光に対する被測定光ファイバ37からのそれぞれの反射光と基準光との干渉によって生じるビート周波数が重ならない複数の期間に分割して行ない、そのフーリエ変換結果を距離軸上で合成して、第1、第2の偏波状態の光に対する被測定光ファイバの特性を求める。
波長が所定範囲連続的に掃引される波長掃引光を複数に分岐して測定光と基準光を生成し、前記測定光を、格子間隔がチャープしたファイバブラッグ回折格子を有する被測定光ファイバ(37)に出力する段階と、
前記測定光に対する前記被測定光ファイバからの反射光を受け入れ、該反射光と、前記基準光とを合波して受光器に入力し、前記反射光と前記基準光の干渉によって生じるビートを電気信号として出力させる段階と、
前記電気信号をディジタル信号に変換してフーリエ変換処理を行なう段階とを含む光周波数領域反射測定方法において、
前記測定光として、前記波長掃引光と同じ波長掃引特性を有し、互いに偏波が直交する第1の偏波状態の光と第2の偏波状態の光が、前記ファイバブラッグ回折格子を光が往復する時間より短い所定の時間差をもって合波された偏波多重光を用いるとともに、
前記波長掃引光が1回波長掃引されたときに得られる前記ディジタル信号に対するフーリエ変換処理を、前記第1の偏波状態の光に対する前記被測定光ファイバからの反射光と前記基準光との干渉によって生じるビート周波数と、前記第2の偏波状態の光に対する前記被測定光ファイバからの反射光と前記基準光との干渉によって生じるビート周波数とが重ならない複数の期間に分割して行ない、該複数の期間について得られたフーリエ変換結果を距離軸上で合成することで、前記第1の偏波状態の光と前記第2の偏波状態の光に対する前記被測定光ファイバの反射光のそれぞれの測定結果を得ることを特徴とする光周波数領域反射測定方法。
前記ビートを電気信号として出力させる段階は、前記反射光と前記基準光を互いに直交するs偏波成分とp偏波成分に分離し、前記反射光と前記基準光の該s偏波成分を受光器に入力して電気信号Asを出力させる段階と、前記反射光と前記基準光の該p偏波成分を受光器に入力して電気信号Apを出力させる段階とを含み、
前記電気信号をディジタル信号に変換してフーリエ変換処理を行なう段階は、前記電気信号Asをディジタル信号Dsに変換し、前記第1の偏波状態の光に対する前記被測定光ファイバからの反射光のs偏波成分と前記基準光のs偏波成分との干渉によって生じるビート周波数と、前記第2の偏波状態の光に対する前記被測定光ファイバからの反射光のs偏波成分と前記基準光のs偏波成分との干渉によって生じるビート周波数とが重ならない複数の期間に分割してフーリエ変換処理を行なう段階と、前記電気信号Apをディジタル信号Dpに変換し、前記第1の偏波状態の光に対する前記被測定光ファイバからの反射光のp偏波成分と前記基準光のp偏波成分との干渉によって生じるビート周波数と、前記第2の偏波状態の光に対する前記被測定光ファイバからの反射光のp偏波成分と前記基準光のp偏波成分との干渉によって生じるビート周波数とが重ならない複数の期間に分割してフーリエ変換処理を行なう段階とを含み、
前記第1の偏波状態の光と前記第2の偏波状態の光のそれぞれに対する前記被測定光ファイバの反射光の前記s偏波成分と前記p偏波成分のそれぞれの測定結果を得ることを特徴とする請求項1記載の光周波数領域反射測定方法。
前記偏波多重部が前記第1光路に挿入され、該偏波多重部から出力される偏波多重光が、分岐されて前記測定光と前記基準光として出力されることを特徴とする請求項3または請求項4記載の光周波数領域反射測定装置。
前記偏波多重部の所定の時間差が、前記被測定光ファイバの前記領域のいずれかを光が往復する時間より短く設定されていることを特徴とする請求項8記載の光周波数領域反射測定装置。
前記請求項3〜13のいずれかに記載の光周波数領域反射測定装置を用いて、前記被測定光ファイバが固定された被測定物の位置または形状を測定することを特徴する位置または形状を測定する装置。
前記被測定物が、医療用カテーテル、医療用検査プローブ、医療用センサ、建築物検査センサ、海底センサ、または地質センサであることを特徴する請求項14記載の位置または形状を測定する装置。
【背景技術】
【0002】
従来から光周波数領域反射測定法(Optical Frequency Domain Reflectometry; OFDR)を用いた光ファイバの歪み測定が行なわれている。
【0003】
光周波数領域反射測定装置(以下、単に測定装置と記す)200の基本構成を
図24に示す。
図24において、波長掃引光源1は、半導体レーザを含み、時間に対して光の周波数が直線的に変化する波長掃引光P0を出力する。
【0004】
波長掃引光P0は、光カプラ等からなる分岐手段3に入力されて2分岐され、その一方の分岐光P1が測定光Pmes として光サーキュレータ等からなる方向性結合手段31を介して被測定光ファイバ38の一端側に導かれる。
【0005】
被測定光ファイバ38の内部で反射して一端側に戻る反射光Pret は、方向性結合手段31を介して光カプラ等からなる合波手段41に入力される。合波手段41には、分岐手段3で分岐された他方の光P2(=基準光Pr)も入力され、反射光Pret と基準光Prが干渉する。
【0006】
合波手段41から出力される2つの光Psum(+)、Psum(-)は、干渉する光の位相が互いに逆位相となる。合波手段41から出力される2つの光Psum(+)、Psum(-)をバランス受光器55に入力して被測定光ファイバ38からの反射光Pret と基準光Prの干渉によるビート信号を検出する。
【0007】
バランス受光器55から出力されるアナログの電気信号AはA/D変換器65によりディジタル信号Dに変換され、信号処理部90にてフーリエ変換処理等が行なわれる。
【0008】
ここで、
図25の(a)に示すように、被測定光ファイバ38にa点、b点、c点の3つの反射点を想定し、被測定光ファイバ38の近端o点からの距離をLa、Lb、Lcとする。
【0009】
また、分岐手段3から被測定光ファイバ38の近端o点で折り返して合波手段41に至る光路長と、基準光Prが伝搬する分岐手段3から合波手段41までの光路長を等しくすると、被測定光ファイバ38のa点で反射した光Pretaは基準光Prに比べてta=2nLa/cだけ時間が遅れて合波手段41で合波される。ここで、nは被測定光ファイバ38の屈折率、cは光速である。同様にb点、c点で反射した光Pretb、Pretcは、tb=2nLb/c、tc=2nLc/cだけ時間が遅れる。
【0010】
したがって、基準光Prの光周波数νr、a点からの反射光の光周波数νa、b点からの反射光の光周波数νb、c点からの反射光の光周波数νcは、
図25の(b)のように、基準光Prの時間に対する光周波数の変化特性(この場合傾き一定の直線とする)が、上記した各時間ta〜tc遅れて現れることになる。
【0011】
波長掃引光P0の単位時間当たりの光周波数変化量をSとすると、a点からの反射光Pretaと基準光Prの干渉によるビート周波数は、
fa=|νa−νr|=S・ta=(2nS/c)La ……(1)
となる。同様にb点およびc点からの反射光と基準光の干渉によるビート周波数は、
fb=|νb−νr|=S・tb=(2nS/c)Lb ……(2)
fc=|νc−νr|=S・tc=(2nS/c)Lc ……(3)
となる。
【0012】
よって、信号処理部90において、ディジタル信号Dをフーリエ変換すると、
図25の(c)のように、被測定光ファイバ38の一端からそれぞれの反射点までの距離La、Lb、Lcに比例した周波数fa、fb、fcのビート信号が観測される。なお、各点での反射率は十分小さいと仮定し、多重反射は無視している。
【0013】
以上のように、光周波数領域反射測定法によって、被測定光ファイバからの反射の長手方向の分布を測定することが出来る。
【0014】
また、被測定光ファイバのレイリー散乱によって長手方向に連続的に光が反射するとともに、被測定光ファイバの長手方向に歪みが加わると、レイリー散乱による反射光の位相が変化する。
【0015】
このため、上記光周波数領域反射測定法によって得られたビート信号の位相を観測することにより、被測定光ファイバの微小な歪みの長手方向の分布を測定することが出来る。
【0016】
なお、特許文献1には、上記光周波数領域反射測定方法を、複数のコアを持ったマルチコアファイバに適用し、同ファイバの位置または形状を測定する方法が示されている。
【0017】
上記した
図24の構成例では、光の偏波について考慮していないが、通常の単一モードファイバでは光の偏波が保持されずファイバの曲げによって偏波が変化するため、被測定光ファイバからの反射光と基準光の偏波が直交すると干渉によるビート信号が得られなくなる問題がある。また、光ファイバが曲げられた場合、光の偏波状態によって屈折率が異なる複屈折が発生し、光周波数領域反射測定法による位相測定に影響を及ぼす。
【0018】
これらの問題を解決するために、2つの直交した偏波状態の光を掃引毎に切り替えて光ファイバに入射すると共に、それぞれの偏波状態について、光ファイバからの反射光の2つの直交した偏波成分に分離して測定する偏波ダイバーシティ方式が用いられる。
【0019】
図26は、従来の偏波ダイバーシティ方式を用いた測定装置210の構成例を示している。この測定装置210では、前記
図25に示した測定装置200と同様に、波長掃引光源1から出力された波長掃引光P0を分岐手段3によって2分岐するが、その一方の分岐光P1を偏波コントローラ15に入力する。偏波コントローラ15は、出射光の偏波状態を第1の偏波状態と、それに直交する第2の偏波状態に切り替えるためのものであり、制御器16によって波長掃引光源1で1回の波長掃引が行なわれる毎にこの2つの偏波状態を切り替えている。
【0020】
偏波コントローラ15の出力光P1′は、測定光Pmes として前記同様に方向性結合手段31を介して被測定光ファイバ38に入力され、その測定光Pmes に対する被測定光ファイバ38からの反射光Pret が、方向性結合手段31を介して合波手段41に入力される。
【0021】
分岐手段3で分岐された光の他方P2は、偏波コントローラ25に入力される。この偏波コントローラ25は、後述の偏波分離手段45、46で2つに分岐される基準光の強度がほぼ等しくなるように調整するためのものであり、予め波長掃引光P0の偏波状態が偏波分離手段45、46で2つに分岐される基準光の強度がほぼ等しくなるように設定されている場合には不要である。
【0022】
偏波コントローラ25から出力されたP2′は基準光Prとして、被測定光ファイバ38からの反射光Pret ともに合波手段41に入力されて合波され、反射光Pret と基準光Prが干渉する。前記したように合波手段41から出力される2つの光Psum(+)、Psum(-)は、干渉する光の位相が互いに逆位相となり、その一方の光Psum(+)は、偏光ビームスプリッタ(PBS)等からなる偏波分離手段45に入力され、2つの直交した偏波成分s(+)およびp(+)に分岐される。また、他方の光Psum(-)も、PBS等からなる偏波分離手段46に入力され、2つの直交した偏波成分s(-)およびp(-)に分岐される。
【0023】
分離された偏波成分s(+)、s(-)がバランス受光器55に入力され、その偏波成分s(+)、s(-)の光強度の差に比例する電気信号Asが出力され、A/D変換器65によってディジタル信号Dsに変換される。同様に、分離された偏波成分p(+)、p(-)がバランス受光器56に入力され、そのp(+)、p(-)の光強度の差に比例する電気信号Apが出力され、A/D変換器66でディジタル信号Dpに変換される。
【0024】
これらのディジタル信号Ds、Dpは、CPU等からなる信号処理部91に入力され、それぞれフーリエ変換処理を受ける。
【0025】
特許文献1には、上記構成の測定装置210において、偏波コントローラ15を第1の偏波状態に設定して波長掃引した時に得られるディジタル信号Ds、Dpのフーリエ変換結果をそれぞれa、b、偏波コントローラ15を第2の偏波状態に設定して波長掃引した時に得られるディジタル信号Ds、Dpのフーリエ変換結果をそれぞれc、dとし、これら4種類のフーリエ変換結果a、b、c、dから、被測定光ファイバ38の複屈折を補正する技術が開示されている。
【0026】
図27は、従来の偏波ダイバーシティ方式を用いた別の測定装置220の構成例を示している。この測定装置220では、波長掃引光源1からの出力光P0を、分岐手段3で分岐する前に偏波コントローラ15に与え、波長掃引毎に出力光の偏波状態を第1の偏波状態とそれに直交する第2の偏波状態に切り替えている。
【0027】
そして、被測定光ファイバ38からの反射光Pret と基準光Prを合波手段41で合波し、その合波光Psumを偏波コントローラ25に入力している。この偏波コントローラ25は前記同様に、後続の偏波分離手段45で2つに分岐される基準光の強度がほぼ等しくなるように調整されている。
【0028】
偏波コントローラ25の出力光Psum′は、偏波分離手段45で偏波状態s、pの光に分離される。
【0029】
図27では
図26のバランス受光器55、56の代わりにシングルエンドの受光器57、58を用いている。偏波状態sの光からディジタル信号Dsが得られ、偏波状態pの光からディジタル信号Dpが得られ、
図26で説明したように、偏波コントローラ15の出力光の偏波状態を第1の偏波状態にして波長掃引したときに得られるフーリエ変換結果a、bと、偏波コントローラ15の出力光の偏波状態を第2の偏波状態にして波長掃引したときに得られるフーリエ変換結果c、dとから、特許文献1に記載の方法にて被測定光ファイバ38の複屈折を補正することが出来る。
【0030】
図28は、
図27を基本構成として、マルチコアファイバ39を使用して3次元の位置または形状を測定する測定装置230の構成を示している。
【0031】
この測定装置230では、波長掃引光源1からの出力光P0は、分岐手段2で分岐され、その一方の分岐光P1は前記同様に偏波コントローラ15に入力され、他方の分岐光P2は、監視部70に入力される。
【0032】
監視部70は、
図29に示しているように、入力光P2を分岐手段71で2分岐し、その一方をシアン化水素(hydrogen cyanide; HCN)のガスセル72に与え、ガスセル72を通過した光のパワーを受光器73とA/D変換器74で測定し、信号処理部92へ出力する。信号処理部92はガスの吸収波長に従って波長掃引光源1の絶対波長を校正する。
【0033】
また、分岐手段71で分岐された他方の光は、光カプラ81、 遅延ファイバ82、ファラデー回転子型のミラー83、84からなる遅延干渉計に与えられる。この遅延干渉計の出力を受光器85、A/D変換器86で測定する。この遅延干渉計の出力から、波長掃引光源1の光周波数変化に応じたビート周波数の正弦波が得られる。実際の波長掃引光源1は時間に対する光周波数変化が完全に直線でないことが多いため、信号処理部92では、上記遅延干渉計の出力を用いて波長掃引の非直線性に対する補正処理を行なう。
【0034】
一方、偏波コントローラ15からは前記同様に掃引掃引毎に偏波状態が切り替えられた光P1′が出力され、分岐手段30で4分岐される。4分岐されたそれぞれの光P3〜P6は、それぞれ分岐手段3A〜3Dに入力され、測定光Pmes1〜Pmes4と、基準光Pr1〜Pr4に分岐され、4つの測定光Pmes1〜Pmes4は、方向性結合手段31A〜31Dをそれぞれ介して、マルチコアファイバ用ファンアウト35に入力され、1本の被測定マルチコアファイバ39の各コアに入力される。
【0035】
被測定マルチコアファイバ39の各コアからの反射光Pret1〜Pret4は、マルチコアファイバ用ファンアウト35および方向性結合手段31A〜31Dを介してそれぞれ合波手段41A〜41Dに入力される。
【0036】
これら合波手段41A〜41Dには、それぞれ基準光Pr1〜Pr4も入力しており、
図24の構成と同様に、被測定マルチコアファイバ39の各コアからの反射光と基準光とが合波され、その出力を受けた偏波分離手段45A〜45Dによりそれぞれ2つの偏波成分(s1、p1)〜(s4、p4)に分離され、それぞれ受光器57A〜57D、58A〜58Dで電気信号に変換され、A/D変換器65A〜65D、66A〜66Dでディジタル信号(Ds1、Dp1)〜(Ds4、Dp4)に変換され、信号処理部92に入力される。偏波コントローラ25A〜25Dは、前記同様に、それぞれ後続の偏波分離手段45A〜45Dで2つに分岐される基準光の強度がほぼ等しくなるように調整されている。
【0037】
この構成によって、
図27と同様に複屈折を補正して被測定マルチコアファイバ39の各コアの歪み分布を測定することが出来る。また、各コアの歪み分布から、被測定マルチコアファイバ39の位置または形状を算出することが可能である。
【0038】
なお、特許文献2には、被測定光ファイバとしてファイバブラッグ回折格子(FBG)を用いる方法が示されている。FBGの反射率はレイリー散乱の反射率よりも高いため、被測定光ファイバの終端や光コネクタ、方向性結合手段(光サーキュレータ)等における反射、および被測定マルチコアファイバやファンアウトのクロストークの影響を低減できる特長を持つ。また、反射波長がチャープしたFBGを用いることにより、広い波長掃引範囲にわたって反射光が得られ、受光器のダイナミックレンジを抑えることが出来る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0040】
上記の従来の偏波ダイバーシティ方式を用いた光周波数領域反射測定装置では、偏波コントローラ15を第1の偏波状態に設定した場合と第2の偏波状態に設定した場合の2回の波長掃引が必要であるため、2回の掃引分の測定時間を要し、1回目の掃引と2回目の掃引の間に被測定光ファイバの歪みが変化すると誤差が発生するという問題があった。
【0041】
本発明は、上記問題を解決し、1回の波長掃引で2つの直交した偏波状態の光を被測定光ファイバに入力でき、短時間に歪み変化の検出が可能な光周波数領域反射測定装置およびそれを用いた位置または形状を測定する装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0042】
前記目的を達成するために、本発明の請求項1の光周波数領域反射測定方法は、
波長が所定範囲連続的に掃引される波長掃引光を複数に分岐して測定光と基準光を生成し、前記測定光を、格子間隔がチャープしたファイバブラッグ回折格子を有する被測定光ファイバ(37)に出力する段階と、
前記測定光に対する前記被測定光ファイバからの反射光を受け入れ、該反射光と、前記基準光とを合波して受光器に入力し、前記反射光と前記基準光の干渉によって生じるビートを電気信号として出力させる段階と、
前記電気信号をディジタル信号に変換してフーリエ変換処理を行なう段階とを含む光周波数領域反射測定方法において、
前記測定光として、前記波長掃引光と同じ波長掃引特性を有し、互いに偏波が直交する第1の偏波状態の光と第2の偏波状態の光が、前記ファイバブラッグ回折格子を光が往復する時間より短い所定の時間差をもって合波された偏波多重光を用いるとともに、
前記波長掃引光が1回波長掃引されたときに得られる前記ディジタル信号に対するフーリエ変換処理を、前記第1の偏波状態の光に対する前記被測定光ファイバからの反射光と前記基準光との干渉によって生じるビート周波数と、前記第2の偏波状態の光に対する前記被測定光ファイバからの反射光と前記基準光との干渉によって生じるビート周波数とが重ならない複数の期間に分割して行ない、該複数の期間について得られたフーリエ変換結果を距離軸上で合成することで、前記第1の偏波状態の光と前記第2の偏波状態の光に対する前記被測定光ファイバの反射光のそれぞれの測定結果を得ることを特徴とする。
【0043】
また、本発明の請求項2の光周波数領域反射測定方法は、請求項1記載の光周波数領域反射測定方法において、
前記ビートを電気信号として出力させる段階は、前記反射光と前記基準光を互いに直交するs偏波成分とp偏波成分に分離し、前記反射光と前記基準光の該s偏波成分を受光器に入力して電気信号Asを出力させる段階と、前記反射光と前記基準光の該p偏波成分を受光器に入力して電気信号Apを出力させる段階とを含み、
前記電気信号をディジタル信号に変換してフーリエ変換処理を行なう段階は、前記電気信号Asをディジタル信号Dsに変換し、前記第1の偏波状態の光に対する前記被測定光ファイバからの反射光のs偏波成分と前記基準光のs偏波成分との干渉によって生じるビート周波数と、前記第2の偏波状態の光に対する前記被測定光ファイバからの反射光のs偏波成分と前記基準光のs偏波成分との干渉によって生じるビート周波数とが重ならない複数の期間に分割してフーリエ変換処理を行なう段階と、前記電気信号Apをディジタル信号Dpに変換し、前記第1の偏波状態の光に対する前記被測定光ファイバからの反射光のp偏波成分と前記基準光のp偏波成分との干渉によって生じるビート周波数と、前記第2の偏波状態の光に対する前記被測定光ファイバからの反射光のp偏波成分と前記基準光のp偏波成分との干渉によって生じるビート周波数とが重ならない複数の期間に分割してフーリエ変換処理を行なう段階とを含み、
前記第1の偏波状態の光と前記第2の偏波状態の光のそれぞれに対する前記被測定光ファイバの反射光の前記s偏波成分と前記p偏波成分のそれぞれの測定結果を得ることを特徴とする。
【0044】
また、本発明の請求項3の光周波数領域反射測定装置は、
波長が所定範囲連続的に掃引される波長掃引光を出力する波長掃引光源(1)と、
前記波長掃引光を、第1光路を介して受けて複数に分岐する分岐手段(3)と、
前記分岐手段から第2光路を介して出力される第1の分岐光を受け、格子間隔がチャープしたファイバブラッグ回折格子を有する被測定光ファイバ(37)に測定光として出力すると共に、該測定光に対する前記被測定光ファイバからの反射光を受け入れる方向性光結合手段(31)と、
前記分岐手段から第3光路を介して出力される第2の分岐光を基準光として受け、前記方向性光結合手段から出力される前記被測定光ファイバからの反射光と合波する合波手段(41)と、
前記合波手段の出力光を受けて前記反射光と前記基準光の干渉によって生じるビートを電気信号として出力する受光器(55、56、57、58)と、
前記電気信号をディジタル信号に変換するA/D変換器(65、66)と、
前記ディジタル信号に対するフーリエ変換処理を行なう信号処理部(101〜104)とを有する光周波数領域反射測定装置において、
前記第1光路、または前記第2光路、または該第2光路と前記第3光路の両方の光路のいずれかに挿入され、入力される波長掃引光またはその分岐光を、互いに偏波が直交する第1の偏波状態の光と第2の偏波状態の光に分け、前記ファイバブラッグ回折格子を光が往復する時間より短い所定の時間差を付与して合波し、該合波した光を偏波多重光として出力する偏波多重部(10、10A、10B)を有し、該偏波多重光を少なくとも前記被測定光ファイバに対する前記測定光として用い、
前記信号処理部は、前記波長掃引光源が1回の波長掃引を行なったことで得られる前記ディジタル信号に対するフーリエ変換処理を、前記第1の偏波状態の光に対する前記被測定光ファイバからの反射光と前記基準光との干渉によって生じるビート周波数と、前記第2の偏波状態の光に対する前記被測定光ファイバからの反射光と前記基準光との干渉によって生じるビート周波数とが重ならない複数の期間に分割して行ない、該複数の期間について得られたフーリエ変換結果を距離軸上で合成することで、前記第1の偏波状態の光と前記第2の偏波状態の光に対する前記被測定光ファイバの反射光のそれぞれの測定結果を得ることを特徴とする。
【0045】
また、本発明の請求項4の光周波数領域反射測定装置は、請求項3記載の光周波数領域反射測定装置において、
前記反射光と前記基準光を互いに直交するs偏波成分とp偏波成分に分離する偏波分離手段(45、46)と、
前記反射光と前記基準光の該s偏波成分を受けて干渉によって生じるビートを電気信号Asとして出力する受光器(55、57)と、
前記反射光と前記基準光の該p偏波成分を受けて干渉によって生じるビートを電気信号Apとして出力する受光器(56、58)と、
前記電気信号Asをディジタル信号Dsに変換するA/D変換器(65)と、前記電気信号Apをディジタル信号Dpに変換するA/D変換器(66)とを有し、
前記信号処理部は、
前記波長掃引光源が1回の波長掃引を行なったことで得られる前記ディジタル信号Dsに対するフーリエ変換処理を、前記第1の偏波状態の光に対する前記被測定光ファイバからの反射光のs偏波成分と前記基準光のs偏波成分との干渉によって生じるビート周波数と、前記第2の偏波状態の光に対する前記被測定光ファイバからの反射光のs偏波成分と前記基準光のs偏波成分との干渉によって生じるビート周波数とが重ならない複数の期間に分割して行ない、該複数の期間について得られた前記ディジタル信号sに対するフーリエ変換結果を距離軸上で合成し、前記波長掃引光源が1回の波長掃引を行なったことで得られる前記ディジタル信号Dpに対するフーリエ変換処理を、前記第1の偏波状態の光に対する前記被測定光ファイバからの反射光のp偏波成分と前記基準光のp偏波成分との干渉によって生じるビート周波数と、前記第2の偏波状態の光に対する前記被測定光ファイバからの反射光のp偏波成分と前記基準光のp偏波成分との干渉によって生じるビート周波数とが重ならない複数の期間に分割して行ない、該複数の期間について得られた前記ディジタル信号pに対するフーリエ変換結果を距離軸上で合成することで、前記第1の偏波状態の光と前記第2の偏波状態の光のそれぞれに対する前記被測定光ファイバの反射光の前記s偏波成分と前記p偏波成分のそれぞれの測定結果を得ることを特徴とする。
【0046】
また、本発明の請求項5の光周波数領域反射測定装置は、請求項3または請求項4記載の光周波数領域反射測定装置において、
前記偏波多重部が前記第2光路にのみ挿入されていることを特徴とする。
【0047】
また、本発明の請求項6の光周波数領域反射測定装置は、請求項3または請求項4記載の光周波数領域反射測定装置において、
前記偏波多重部が前記第1光路に挿入され、該偏波多重部から出力される偏波多重光が、分岐されて前記測定光と前記基準光として出力されることを特徴とする。
【0048】
また、本発明の請求項7の光周波数領域反射測定装置は、請求項3記載の光周波数領域反射測定装置において、
前記偏波多重部は、前記第2光路に挿入された第1の偏波多重部(10A)と前記第3光路に挿入された第2の偏波多重部(10B)からなり、
前記第1の偏波多重部において偏波多重光に付与される第1の所定の時間差と、前記第2の偏波多重部において偏波多重光に付与される第2の所定の時間差とが、異なる値に設定されていることを特徴とする。
【0049】
また、本発明の請求項8の光周波数領域反射測定装置は、請求項3〜7のいずれかに記載の光周波数領域反射測定装置において、
前記被測定光ファイバが、長手方向に複数の領域に分割され、該複数の領域はそれぞれの格子間隔がチャープしたファイバブラッグ回折格子を有しており、
前記信号処理部は、前記波長掃引光源が1回の波長掃引を行なったときに得られる前記ディジタル信号に対するフーリエ変換処理を、前記第1の偏波状態の光に対する前記被測定光ファイバの前記複数の領域からの反射光と前記基準光との干渉によって生じるビート周波数と、前記第2の偏波状態の光に対する前記被測定光ファイバの前記複数の領域からの反射光と前記基準光との干渉によって生じるビート周波数とが重ならない複数の期間に分割して行ない、該複数の期間について得られたフーリエ変換結果を距離軸上で合成することで、前記第1の偏波状態の光と前記第2の偏波状態の光に対する前記被測定光ファイバの前記複数の領域からの反射光のそれぞれの測定結果を得ることを特徴とする。
【0050】
また、本発明の請求項9の光周波数領域反射測定装置は、請求項8記載の光周波数領域反射測定装置において、
前記偏波多重部の所定の時間差が、前記被測定光ファイバの前記領域のいずれかを光が往復する時間より短く設定されていることを特徴とする。
【0051】
また、本発明の請求項10の光周波数領域反射測定装置は、請求項8または請求項9記載の光周波数領域反射測定装置において、
前記被測定光ファイバの複数の領域の反射波長範囲の一部が重複するように形成されており、
前記波長掃引光源の波長掃引範囲が、前記被測定光ファイバの前記波長掃引範囲の重複する部分に達していることを特徴とする。
【0052】
また、本発明の請求項11の光周波数領域反射測定装置は、請求項3〜10のいずれかに記載の光周波数領域反射測定装置において、
前記被測定光ファイバが、複数M以上のコアを有するマルチコアファイバ(36)であって、
前記マルチコアファイバのコアのうちの複数Mのコアに前記測定光を与え、該複数Mのコアからの反射光と前記基準光との干渉で得られるビート信号を得るために、前記方向性結合手段、前記合波手段、前記受光器および前記A/D変換器の組を複数M組設けたことを特徴する。
【0053】
また、本発明の請求項12の光周波数領域反射測定装置は、請求項3〜10のいずれかに記載の光周波数領域反射測定装置において、
前記被測定光ファイバが、複数M以上のコアを有するマルチコアファイバ(36)であって、
前記測定光を前記マルチコアファイバのコアのうちの複数Mのコアに与え、該測定光に対する前記複数のコアからの反射光をそれぞれ受け入れるために前記方向性結合手段が前記複数M組設けられ、
前記複数Mのコアからの反射光を、前記方向性結合手段を介して合波する反射光合波手段(48)と、
前記反射光合波手段において前記複数Mのコアからの反射光が前記コア毎に異なる遅延時間をもって合波されるように遅延時間差を付与する手段(51A〜51D)とを有し、
前記反射光合波手段の出力に対する処理を、1組の前記合波手段、前記受光器および前記A/D変換器で行なうことを特徴する。
【0054】
また、本発明の請求項13の光周波数領域反射測定装置は、請求項11または請求項12記載の光周波数領域反射測定装置において、
前記複数Mが4であることを特徴とする。
【0055】
また、本発明の請求項14の位置または形状を測定する装置は、
前記請求項3〜13のいずれかに記載の光周波数領域反射測定装置を用いて、前記被測定光ファイバが固定された被測定物の位置または形状を測定することを特徴する。
【0056】
また、本発明の請求項15の位置または形状を測定する装置は、請求項14記載の位置または形状を測定する装置において、
前記被測定物が、医療用カテーテル、医療用検査プローブ、医療用センサ、建築物検査センサ、海底センサ、または地質センサであることを特徴する。
【発明の効果】
【0057】
上記したように、本発明では、格子間隔がチャープしたファイバブラッグ回折格子を有する被測定光ファイバに与える波長掃引された測定光として、互いに偏波が直交する第1の偏波状態の光と第2の偏波状態の光が、ファイバブラッグ回折格子を光が往復する時間より短い所定の時間差をもって合波された偏波多重光を用いるとともに、波長掃引光が1回波長掃引されたときに得られるディジタル信号に対するフーリエ変換処理を、第1の偏波状態の光に対する被測定光ファイバからの反射光と基準光との干渉によって生じるビート周波数と、第2の偏波状態の光に対する被測定光ファイバからの反射光と基準光との干渉によって生じるビート周波数とが重ならない複数の期間に分割して行ない、その複数の期間について得られたフーリエ変換結果を距離軸上で合成することで、第1の偏波状態の光と第2の偏波状態の光に対する被測定光ファイバの反射光のそれぞれの測定結果を得ている。
【0058】
したがって、従来装置のように、波長掃引毎に測定光の偏波を切り替えて測定する必要がなく、1回の波長掃引で、第1の偏波状態の光と第2の偏波状態の光に対する被測定光ファイバの反射光の特性が得られ、測定を短時間に行なうことができ、被測定光ファイバに加わる歪みの変化が段時間に発生する場合でも、それを見逃すことなく測定できる。
【0059】
また、請求項6のように、偏波多重部が第1光路に挿入され、その偏波多重部から出力される偏波多重光が、分岐されて測定光と基準光として出力される構成の場合、合波手段において、基準光の2つの直交する偏波成分と反射光の2つの直交する偏波成分同士が合波されることになり、基準光に対する反射光の直交する偏波成分を単一の偏波分離手段で分離でき、合波手段以降の構成を簡素化でき、マルチコアファイバを測定対象とする場合に装置の構成が簡単化される。
【0060】
また、請求項7のように、多重時間差が異なる2つの偏波多重部を第2光路と第3光路に挿入した場合、合波手段において、基準光の2つの直交する偏波成分と反射光の2つの直交する偏波成分同士が、それぞれの多重時間差の差分だけずれた状態で合波されることになり、反射光の2つの直交する偏波成分が合成されて出力されることになり、偏波分離手段を介することなく単一の受光器へ入力でき、合波手段以降の構成をさらに簡素化でき、マルチコアファイバを測定対象とする場合に装置の構成がさらに簡単化される。
【発明を実施するための形態】
【0062】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0063】
(第1の構成)
図1は本発明を適用した光周波数領域反射測定装置(以下、単に測定装置と記す)100の構成例を示している。なお、以下の構成例において、前記した従来装置の構成要素と同等の要素には同一符号を付して説明する。
【0064】
図1において、測定装置100の波長掃引光源1は、規定された波長範囲および掃引速度で波長掃引された光(波長掃引光)P0を出力する。波長掃引光源1は、例えば、回折格子を用いた外部共振器レーザにおいて、回折格子またはミラーの角度を変えて共振波長を変えることにより発振波長を掃引する構成で実現できる。
【0065】
なお、一般に光周波数領域反射測定では、時間に対して光の周波数が直線的に変化する掃引が理想であるが、それに限られるものではなく、時間に対して光の波長が直線的に変化する掃引や、光の波長が正弦波的に変化する掃引でも良い。また、中心波長に対して波長掃引幅が十分小さい場合、波長が直線的に変化する掃引は、光周波数がほぼ直線的に変化することになる。正弦波的な掃引の場合は、正弦波のうちの比較的直線に近い領域のみを使用することにより、直線に近い掃引とみなすことが出来る。また、後述するように遅延干渉計を用いて掃引の非直線性を補正することも出来る。
【0066】
波長掃引光源1の出力光P0は、所定光路(第1光路)を介して光カプラ等からなる分岐手段3に入力されて2分岐され、その一方の分岐光P1は、分岐手段3から方向性結合手段31に至る光路(第2光路)の間に挿入された偏波多重部10に入力され、他方の分岐光P2は、合波手段41との間の光路(第3光路)に挿入された基準光の偏波調整のための偏波コントローラ25に入力される。
【0067】
ここで、偏波多重部10に入力される光は単一偏波であり、直線偏波、円偏波、楕円偏波のいずれでも良い。
【0068】
偏波多重部10は、入力される波長掃引光を、互いに偏波が直交する第1の偏波状態の光と第2の偏波状態の光に分け、その二つの光を所定の時間差(多重時間差)ΔT1をもって合波し、これを偏波多重光として出力するものであり、基本的には、分岐手段11によって2分岐された光P1a、P1bの間に、偏波直交性付与手段12によって互いの偏波が直交する偏波直交性を付与するとともに、遅延時間差付与手段13によって偏波が直交した2つの光に所定の時間差ΔT1を付与して合波出力する。なお、この時間差ΔT1は、後述するファイバブラッグ回折格子を光が往復する時間または被測定光ファイバの1つの領域を光が往復する時間より短いものとする。偏波直交性付与手段12と遅延時間差付与手段13は、逆の順序であっても良い。
【0069】
ここで、直交する偏波とは、ジョーンズベクトルで表した第1の偏波状態E1と第2の偏波状態E2がE1・E2
*=0の関係になる(ここで、記号・は内積、記号
* は複素共役を表す)、もしくは、ポアンカレ球上で第1の偏波状態を表す点に対して、第2の偏波状態はポアンカレ球の中心に対して対称な点になるものである。
【0070】
例えば、一方の光の偏波が直線偏波の場合は、その直線偏波と角度が90度異なる直線偏波を他方の光として生成し、両者に所定時間差を付与して合波する。また、一方の光の偏波が円偏波の場合は、その回転方向が逆の円偏波を他方の光として生成し、両者に所定時間差を付与して合波する。さらに、一方の光の偏波が楕円偏波の場合は、楕円の長軸の角度が90度異なり、楕円率が同じで回転方向が逆の楕円偏波を他方の光として生成し、所定時間差を付与して合波する。
【0071】
ここで、偏波多重部10で所定の時間差をもって合波された2種類の光の一方を第1の偏波状態の光、他方を第2の偏波状態の光と呼ぶ。
【0072】
図2は、この偏波多重部10のより具体的な構成例を示すものであり、
図2の(a)では、分岐手段11で分岐された光の一方P1aを偏波直交変換手段12に入力して、その偏波が入力光に対して直交する光P1a′(第1の偏波状態の光)を生成する。偏波直交変換手段12は、例えばファイバを円形に所定の回数巻いた偏波コントローラや、1/2波長板や1/4波長板を組み合わせた偏波コントローラで構成することが出来る。また分岐手段11で分岐された他方の光P1bを遅延ファイバのような遅延手段13で所定時間ΔT1だけ遅延させ、その遅延した光P1b′(第2の偏波状態の光)と偏波が直交変換された光P1a′とを合波手段14で合波する。なお、
図2では入力光の偏波が直線偏波の例を示している。
【0073】
遅延手段13として、屈折率n、長さΔL1の光ファイバを用いた場合、時間差ΔT1はnΔL1/cとなる。ここでcは光速である。
【0074】
実際には、分岐手段11の出力光路の他方を偏波保持ではないファイバで構成すると、分岐手段11からの出力光路の他方の光の偏波が変化するため、光カプラからなる合波手段14で2つの光を合波する際に、2つの光の偏波状態が互いに直交する(ジョーンズベクトルがE1・E2
*=0の関係になる、もしくはポアンカレ球上で中心に対して対称な点になる)ように、偏波直交変換手段12として、偏波状態の調整可能な偏波コントローラを用いることが望ましい。
【0075】
また、偏波コントローラ等の偏波直交変換手段12にも一定の遅延時間が存在するため、合波手段14で2つの光を合波する際に2つの光の遅延時間差がΔT1になるように遅延手段13の遅延時間(ファイバ長等)を設定する。
【0076】
図2の(a)では、分岐手段11の出力の一方に偏波直交変換手段12、他方に遅延手段13を配置したが、
図2の(b)のように分岐手段11の出力の一方に偏波直交変換手段12と遅延手段13の両方を配置しても良く、偏波直交変換手段12と遅延手段13の順序は逆でも良い。つまり、合波手段14で2つの光を合波する際に、互いに直交した偏波で時間差が所定値ΔT1であれば良く、2つの光のうちどちらの遅延時間が大きくても良い。
【0077】
偏波多重部10は、偏波が互いに直交し遅延時間差を持つ2つの光を多重すれば良いため、(a)、(b)以外の構成も可能である。例えば、
図2の(c)のように合波手段14として偏光ビームスプリッタ(PBS)を用いても良い。この場合、2つの光の偏波をPBSに合わせる必要があり、偏波直交性付与手段として、偏波コントローラ等からなる2つの偏波調整手段12a、12bが必要となるが、光カプラからなる合波手段で合波する際の3dB損失が無いため、低損失になる特長を持つ。
【0078】
また、
図2の(d)のように2つの偏波調整手段12a、12bのうちのどちらか一方は分岐手段11の前に配置することも出来る。
【0079】
また、偏波多重部10は、
図3のように自由空間光学系で構成することもできる。
図3の(a)は、分岐手段および合波手段としてハーフミラー11、14、遅延手段として2つのミラー13a、13b、直交変換手段として、回転角度が調整可能な1/2波長板12を用いた例であり、
図3の(b)は、遅延手段に直交可動ミラー13cを含めて遅延時間差を調整出来るようにした例である。また、
図3の(c)は、分岐手段および合波手段として偏光ビームスプリッタ11、14を用い、直交変換手段としてファイバ型の偏波調整手段12bと自由空間の1/2波長板12aを組み合わせた例であり、その他、ファイバ型と自由空間型の素子は任意に組み合わせることが出来る。
【0080】
偏波多重部10の出力光(偏波多重光)は、測定光Pmesとして方向性結合手段31を介して被測定光ファイバ37に入力される。
【0081】
ここで、被測定光ファイバ37は、
図4に示しているように、コア37a内の回折格子37cの間隔Λがチャープ(長手方向に変化)したファイバブラッグ回折格子(FBG)を含む光ファイバであり、FBGの反射波長λは、λ=2nΛで表される。nはコアの屈折率である。
【0082】
よってチャープFBGの反射波長は、
図5の(a)に示すように、距離によって変化する。距離に対して反射光周波数が直線的に変化するのが望ましいが、必ずしも直線である必要はなく、距離に対して反射波長が直線的に変化するものでも良い。
【0083】
図4、
図5では、3つの領域を模式的に図示しているが、領域の数は1つでも複数でも良い。領域長がセンチメートル程度のチャープFBGは容易に作製可能であるので、全長がメートル程度の被測定光ファイバでは、100程度の領域に分割しても良い。
【0084】
図4、
図5では回折格子間隔の変化が誇張して書かれているが、実際のチャープFBGでは、例えば反射波長の中心が1550nmに対して、反射波長の変化幅は数10nm程度の場合がある。また、
図5の(a)では、同図の左側から見て長波長から短波長にチャープする例を示しているが、逆に短波長から長波長にチャープするようにしても良い。
【0085】
このような反射波長特性を有する被測定光ファイバ37に対して、
図5の(b)に示すように波長掃引される光を入力した場合、時間によってFBGで反射する位置が変化する。FBGの反射率が小さい場合、複数の領域のFBGによる多重反射は無視でき、FBGの領域毎に光が反射して被測定光ファイバ37から戻ってくる。
【0086】
上記光周波数領域反射測定法では、被測定光ファイバ37からの反射光Pret と基準光Prが干渉してビート信号が発生するが、そのビート周波数は被測定光ファイバの距離に対応しているので、波長掃引された光に対し、
図5の(c)のようにFBGの領域の数だけビートスペクトルのピークが発生し、時間によってそのピーク周波数が変化する。
【0087】
ここで被測定光ファイバの長手方向に連続した測定結果を得るためには、FBGの各領域を隙間無く配置し、波長掃引範囲λ1〜λ2は、FBGの反射波長範囲以上にする必要がある(
図5は、波長掃引範囲λ1〜λ2とFBGの反射波長範囲が一致している例を示す)。なお、
図5は、チャープFBGに対して一つの波長掃引光を入射した場合の例であり、実際には、互いに偏波が直交する2つの波長掃引光が所定の時間差ΔT1で多重化された偏波多重光が測定光として入力されることになるが、その動作については後述する。
【0088】
上記したチャープFBG型の被測定光ファイバ37からの反射光Pret は、方向性結合手段31を介して合波手段41に入力される。方向性結合手段31は、光サーキュレータ、光ファイバカプラあるいはハーフミラーで構成することもできる。また、合波手段41としては、光ファイバカプラまたはハーフミラーで構成することができ、受光器としてバランス型を用いることを考慮して、合波される光の位相関係が反転した2系統の合波光を出力できるものが望ましいが、後述するように1系統出力のものでも使用できる。
【0089】
一方、分岐手段3で分岐された光の他方P2は偏波コントローラ25に入力される。この偏波コントローラ25は、入力光P2に対して、後述の偏波分離手段45、46でそれぞれ2つに分岐される基準光成分の強度がほぼ等しくなるように、出力光P2′(=基準光Pr)の偏波状態を調整するためのものであり、前記したように予め波長掃引光源1の出力光の偏波状態が、偏波分離手段45、46で2つに分岐される基準光成分の強度がほぼ等しくなるように設定されていれば省略できる。
【0090】
通常、被測定光ファイバ37からの反射光Pret の強度は、基準光Prの強度より小さいため、偏波分離手段45、46で2つに分岐される全ての光の強度がほぼ等しくなるように偏波コントローラ25を調整しておいても良い。
【0091】
合波手段41から出力される一方の光Psum(+)は、PBSのような偏波分離手段45に入力され、2つの直交した偏波状態の光s(+)、p(+)に分岐され、他方の光Psum(-)も、PBSのような偏波分離手段46に入力され、2つの直交した偏波状態の光s(-)、p(-)に分岐される。
【0092】
光s(+)、s(-)はバランス受光器55に入力され、そのバランス受光器55から入力光s(+)、s(-)の光強度の差に比例する電気信号Asが出力され、A/D変換器65でディジタル信号Dsに変換される。なお、バランス受光器は、入力光をそれぞれ独立に受ける二つの受光素子(例えばフォトダイオード)を直列接続し、その接続点から信号を取り出す構造のもの、または二つの受光素子と差動増幅器で構成されたものである。
【0093】
同様に、光p(+)、p(-)はバランス受光器56に入力され、そのバランス受光器56から入力光p(+)、p(-)の光強度の差に比例する電気信号Apが出力され、A/D変換器66でディジタル信号Dpに変換される。
【0094】
前記したように、光s(+)、s(-)および光p(+)、p(-)はそれぞれビートの位相が逆位相となっているため、バランス受光器に入力することで、得られるビート信号の振幅が2倍になる。そして、波長掃引光源1の強度変動による雑音は打ち消され、ランダムな雑音は振幅が√2倍になるため、信号対雑音比が改善する。
【0095】
A/D変換器65、66から出力されるディジタル信号Ds、Dpは、信号処理部101に入力される。
【0096】
信号処理部101は、例えば
図6に示すように、ディジタル信号を一時記憶するバッファメモリ101a、一時記憶されたディジタル信号に対するフーリエ変換を行なうフーリエ変換部101b、フーリエ変換で周波数軸上に得られた結果を、被測定光ファイバの距離の情報に換算する距離換算部101c、複屈折の補正処理などを行なう補正部101dおよびこれらを制御する制御部101eによって構成されている。
【0097】
制御部101eは、波長掃引光源1との掃引同期をとりながら、その掃引波長範囲等の波長掃引情報、偏波多重部における多重時間差(ΔT)の情報および被測定ファイバ37に関する情報を受け、各部に対して必要なパラメータの設定、制御を行なうが、特に1回の波長掃引で得られるディジタル信号の時間領域を、偏波多重光を測定光として用いることで生じるビート周波数の重複が起きない複数の期間に分割し、これをフーリエ変換部101bに対して指定する。
【0098】
フーリエ変換部101bは、制御部101dによって指定された期間に分けてディジタル信号に対するフーリエ変換を行なう。なお、補正部101dによる演算処理については、前記特許文献1に記載の処理と同等であるので、ここでは詳述しない。
【0099】
(測定原理の説明)
次に、上記構成の測定装置100により、互いに直交した偏波の光を被測定光ファイバ37に入射した時の応答を分離して検出できる原理を説明する。
【0100】
前記したように、FBGは、回折格子の間隔の2倍がファイバ中での光の波長の整数倍に等しい時に高い効率で光を反射する。これは各回折格子で反射した光が同相になり互いに強め合うためである。また、チャープFBGは、光ファイバの長手方向の位置によって回折格子間隔が変化しているため、光の波長によって反射する長手方向の位置が異なる。光ファイバの長手方向に所定の周期で複数のチャープが存在する場合、光ファイバの長手方向の複数の位置で光が反射する。
【0101】
また、光周波数領域反射測定法は、光の周波数が時間的に一定割合で変化する掃引光源の光を被測定光ファイバに入射し、被測定光ファイバからの反射光と基準光との干渉によるビートを測定するものである。この場合、光の周波数は時間的にほぼ一定割合で変化しているため、反射光と基準光は両者の遅延時間差に比例した光周波数の違いが発生し、反射光と基準光の干渉によって両者の光周波数差に応じた周波数のビートが発生する。被測定光ファイバで光が反射する位置によって反射光の遅延時間が異なるため、反射位置によってビートの周波数が異なる。
【0102】
したがって、
図5に示したように、チャープFBGを光周波数領域反射測定法で測定すると、チャープの周期の数だけビートスペクトルのピークが発生し、時間によってピーク周波数が一定割合で変化する。
【0103】
被測定光ファイバ37が、
図4に示したように、近端側より遠端側の格子間隔が短いチャープで、チャープ周期(領域)が3周期で、
図5に示したように、光源の掃引が時間的に光の周波数が増加する方向の場合において、分岐手段3から合波手段41までの基準光Prの光路長を、分岐手段3から被測定光ファイバ37の近端で反射して合波手段41に至る光路長よりも短くした場合、偏波多重部10から出力される測定光に含まれる第1の偏波状態の光と基準光との干渉で得られるビート信号については、
図7の(a)の実線のように、時間的に周波数が増加する3つのビートスペクトルのピークB1a〜B3aが得られる。
【0104】
また、偏波多重部10から出力される測定光に含まれる第2の偏波状態の光は、第1の偏波状態の光に比べて時間ΔT1だけ遅れているため、第2の偏波状態の光と基準光の干渉で得られるビート信号については、そのビートスペクトルのピークが第1の偏波状態の光に対応するビートスペクトルのピークよりも周波数が高くなる。
【0105】
例えば、偏波多重部10の光路長差ΔL1をFBGのチャープ周期の往復分の光路長の1/2に設定すると、
図7の(a)の破線のように第1の偏波状態の光に対応するビートスペクトルのピークの中間に第2の偏波状態の光に対応するビートスペクトルのピークB1b〜B3bが発生する。
【0106】
ここで、波長掃引される時間範囲t1〜t2全体でみると、実線で表すピークが取る周波数範囲とその隣の破線で表すピークがとる周波数範囲はその周波数範囲のほぼ半分が重複しており、その周波数が重複した範囲を含めてフーリエ変換しても被測定光ファイバ37の長手方向の歪の分布を正しく求める事ができない。
【0107】
そこで、実施形態の測定装置100では、
図7の(b)のように、各ピークの周波数範囲が重複しないように時間領域を複数(この例では2つ)の期間に分割し、その分割した各期間についてフーリエ変換(例えばCPUやFPGAを用いた高速フーリエ変換(FFT))を行なう。
【0108】
図7の(c)は、2つの期間について行なわれたフーリエ変換処理の結果を示しており、期間1におけるフーリエ変換処理で、各ピークB1a〜B3a、B1b〜B3bの期間1のフーリエ変換結果(B1aL)〜(B3aL)、(B1bL)〜(B3bL)が分離して求められ、期間2におけるフーリエ変換処理で、各ピークB1a〜B3a、B1b〜B3bの期間2のフーリエ変換結果(B1aH)〜(B3aH)、(B1bH)〜(B3bH)が分離して求められる。
【0109】
図7の(c)で得られた結果を、横軸を被測定光ファイバ37上の距離に換算すると、第2の入射偏波状態に対応する換算結果[B1bL]〜[B3bL]、[B1bH]〜[B3bH]は偏波多重部10の光路長差ΔL1の1/2だけ近端側へ補正され、
図7の(d)のように全ての距離範囲にわたって第1の入射偏波状態に対応する結果[B1aL]〜[B3aL]、[B1aH]〜[B3aH]と第2の入射偏波状態に対応する結果[B1bL]〜[B3bL]、[B1bH]〜[B3bH]とを分離して、かつFBGの全距離範囲にわたる分布が得られる。
【0110】
このように、全測定時間内では第1の偏波状態に対応するビートスペクトルと第2の偏波状態に対応するビートスペクトルを重複させることにより、第1の偏波状態に対応するビートスペクトルのみを測定する場合と比較して、受光器やA/D変換器の帯域およびA/D変換器以降のサンプリング周波数を大幅に増加させることなく、全測定時間を複数の領域に分割してフーリエ変換することにより、1回の波長掃引で第1の偏波状態に対応するビートスペクトルと第2の偏波状態に対応するビートスペクトルの両方を分離して得られる。
【0111】
なお、被測定光ファイバ37に部分的に大きな歪みが加わると、歪みによってFBGの格子間隔が変化し、
図7の(a)のビートスペクトルのピークが直線からずれる。光路長差ΔL1の誤差により
図7の(a)の破線は実線の中間からずれる場合がある。また、被測定光ファイバ37の長手方向に欠損が無く連続的に歪みを測定することが望まれるが、チャープFBGを完全に隙間無く配置することは困難なため、チャープFBGを一部オーバラップさせて配置することが望ましい(その構造については後述する)。そして、ビートスペクトルのピークが完全に隙間無く並ぶように波長掃引範囲を設定することは難しいため、ビートスペクトルのピークの一部がオーバラップするように波長掃引範囲を設定することが望ましい。
【0112】
これらの事情から、上記した2分割のフーリエ変換では、第1の入射偏波状態の光に対するビート信号と第2の入射偏波状態の光に対するビート信号の周波数が重複し、完全な分離ができなくなる恐れがある。この場合、時間軸上の分割数を増やすことにより重複を回避することが出来る。
【0113】
図8の(a)は、ビートスペクトルのピークB2a、B2bが直線ではなく、前記光路長差ΔL1に誤差があり、ビートスペクトルのピークのオーバラップがある場合の例を示す。
【0114】
この場合、
図8の(b)のように時間軸上で期間1〜3に3分割することにより、ビート周波数の重複を回避し、
図8の(c)のように、期間1〜3における第1の入射偏波状態のフーリエ変換結果(B1aL)〜(B3aL)、(B1aM)〜(B3aM)、(B1aH)〜(B3aH)、期間1〜3における第2の入射偏波状態のフーリエ変換結果(B1bL)〜(B3bL)、(B1bM)〜(B3bM)、(B1bH)〜(B3bH)を分離して求め、横軸を被測定光ファイバ37上の距離に換算すると
図8の(d)のように全距離範囲にわたって第1の入射偏波状態と第2の入射偏波状態に対応する結果を分離して得ることが出来る。
【0115】
なお、
図8の(c)のフーリエ変換結果のように、各期間におけるビート周波数の変化幅が異なる場合があるが、フーリエ変換結果の振幅(強度)によって周波数の両端を検出することが出来る。
【0116】
また、フーリエ変換時のスペクトルのサイドローブを低減するために、窓関数をかけた後フーリエ変換を行なうことも可能である。ただし、
図7の(b)のように時間領域を2分割して窓関数をかけると、窓関数の両端部に対応する位置のビートスペクトルが得られない問題が発生する。この場合、
図9の(a)のようにチャープFBGを一部オーバラップ(つまり実線部同士、破線部同士をオーバラップ)させ、
図9の(b)のように窓関数を一部オーバラップさせて3分割のフーリエ変換を行なうと、
図9の(c)のように第1の入射偏波状態のビートスペクトルと第2の入射偏波状態のビートスペクトルの両端が一部重複するものの、
図9の(d)のように光路長差ΔL1を補正し、ビートスペクトルの両端の一部重複部分を使用しないことで、領域1〜3に示すように全距離範囲にわたって第1の入射偏波状態と第2の入射偏波状態に対応する結果を分離して得ることが出来る。
【0117】
なお、チャープの方向、チャープ周期の数、光源の掃引方向、偏波多重部の光路長差は、上記例に限られるものではない。他の条件においても、ビートスペクトルのピークの数、時間的な傾斜の方向、フーリエ変換分割数が異なるものの同様の効果を得ることが出来る。
【0118】
従って、
図1に示した構成の測定装置100により、1回の波長掃引で第1の入射偏波状態に対応する結果と第2の入射偏波状態に対応する結果の両方が得られ、掃引毎に偏波コントローラ15の偏波を切替える必要が無い。
【0119】
前述したように、信号処理部101では、一回の波長掃引で得られたディジタル信号Ds、Dpに対して、それぞれ上記したような期間毎のフーリエ変換処理を行ない、第1の入射偏波状態に対応する結果と第2の入射偏波状態に対応する結果を得る。これより、第1の偏波状態に対応するディジタル信号Ds、Dpのフーリエ変換結果a、b、第2の偏波状態に対応するディジタル信号Ds、Dpのフーリエ変換結果c、dが得られ、4つのフーリエ変換結果a、b、c,dから、特許文献1に記載の方法にて被測定光ファイバ37の複屈折を補正することが出来る。
【0120】
なお、
図1の測定装置100の構成は一例であり、種々の変形が可能である。例えば、
図10の測定装置110のように、偏波分離手段45に対する基準光の偏波状態を調整するための偏波コントローラ25を分岐手段3の前に配置することもできる。この場合も、
図1の測定装置100と同様に偏波分離手段45、46で2つに分岐される基準光成分または全ての光の強度がほぼ等しくなるように偏波コントローラ25を調整しておく。
【0121】
また、合波手段41として、通常のシングルモードファイバを使用した光ファイバカプラを用いた場合、偏波分離手段45に入力される光Psum(+)と、偏波分離手段46に入力される光Psum(-)の偏波が異なる場合がある。その場合には、少なくとも一方の偏波分離手段の前に偏波コントローラを挿入して偏波を調整するか、あるいは、
図11に示すように、合波手段41としてハーフミラーを用い、偏波分離手段45、46としてPBSを用いた自由空間光学系とすることが望ましい。
【0122】
また、
図12に示すように、反射光Pret と基準光Prを、それぞれPBSからなる偏波分離手段45′、46′によって偏波分離した後に、合波手段としての2つのハーフミラー41、41′により反射光と基準光のそれぞれの偏波分離成分を合波しても良い。
【0123】
また、
図13に示す測定装置120のように、合波手段41、PBSのような偏波分離手段45、受光器57、58を用いてシングルエンドの受光にすることも可能である。この構成では、偏波コントローラ25を合波手段41の後に配置することができる(前記した理由により省略することも可能である)。また、この構成の場合、2つの偏波分離手段に入力される光の偏波が異なる問題は生じないため、光ファイバ光学系と自由空間光学系のどちらで構成することもできる。
【0124】
通常、被測定光ファイバ37からの反射光Pret の強度は、基準光Prの強度より小さいため、偏波分離手段45で2つに分岐される全ての光の強度がほぼ等しくなるように、すなわち受光器57の出力の直流成分と受光器58の出力の直流成分とが等しくなるように偏波コントローラ25を自動的に調整するようにしても良い。
【0125】
さらに、
図14に示す測定装置130のように、偏波多重部10を波長掃引光源1から分岐手段3に至る光路(第1光路)に挿入する構成も可能である。この場合、偏波コントローラ25の位置は、波長掃引光源1と偏波多重部10の間、偏波多重部10と分岐手段3の間、分岐手段3と合波手段41の間の基準光の経路、合波手段41と偏波分離手段45の間のいずれでも良い。この構成では、基準光も偏波多重された光になるため、基準光の経路の複屈折も含めて補正することが出来る特長を持つ。
【0126】
図14の構成では、偏波多重部10において第1の偏波状態の光と第2の偏波状態の光が多重化され、偏波多重部10からの出力光P0′が2分岐されて、その一方P1が測定光Pmes として被測定光ファイバ37に入射され、他方P2が基準光Prとなる。
【0127】
このため、第1の偏波状態の光が被測定光ファイバ37に入射されて反射した光Pret1と第1の偏波状態の基準光Pr1が干渉して生じるビート信号Baと、第2の偏波状態の光が被測定光ファイバ37に入射されて反射した光Pret2と第2の偏波状態の基準光Pr2が干渉して生じるビート信号Bbと、第2の偏波状態の光が被測定光ファイバに入射されて反射した光と第1の偏波状態の基準光Pr1が干渉して生じるビート信号Bcと、第1の偏波態の光が被測定光ファイバに入射されて反射した光と第2の偏波状態の基準光Pr2が干渉して生じるビート信号Bdが発生する。
【0128】
前2者Ba、Bbは、被測定光ファイバ37からの反射光と基準光の遅延時間の関係が等しいため同一のビート周波数となる。第3者Bcは、被測定光ファイバ37からの反射光が時間ΔT1だけ遅れているため、前2者Ba、Bbよりもビート周波数が高くなる。第4者Bdは、基準光が時間ΔT1だけ遅れているため、前2者Ba、Bbよりもビート周波数が低くなる。
【0129】
したがって、例えば、偏波多重部10の光路長差ΔL1をFBGのチャープ周期の往復分の光路長の1/3に設定すると、
図15の(a)のような3種類のビートスペクトルBn+、Bnc、Bndが3周期分等間隔に現れる(nはFBGの周期値、Bn+は同一周波数のBa、Bbのビートスペクトル)。
【0130】
これを
図15の(b)のように、ビート周波数が重複しないように、時間軸方向に3つの期間1〜3に等分割してフーリエ変換を行なうことで、
図15の(c)のように前2者Ba、Bbに対応するフーリエ変換結果(B1+L)〜(B3+L)、(B1+M)〜(B3+M)、(B1+H)〜(B3+H)、第3者Bcに対応するフーリエ変換結果(B1cL)〜(B3cL)、(B1cM)〜(B3cM)、(B1cH)〜(B3cH)および第4者Bdに対応するフーリエ変換結果(B1dL)〜(B3dL)、(B1dM)〜(B3dM)、(B1dH)〜(B3dH)が分離して得られる。
【0131】
そして、
図15の(c)の横軸を被測定光ファイバ37上の距離に変換すると、第3者は偏波多重部10の光路差ΔL1の1/2だけ近端側へ補正され、第4者は偏波多重部10の光路長差ΔL1の1/2だけ遠端側へ補正され、
図15の(d)のように、第3者Bcと第4者Bdから全ての距離範囲にわたって第1の入射偏波状態に対応する結果と第2の入射偏波状態に対応する結果の両方が得られる。なお、第3者Bcと第4者Bdは基準光の偏波状態が異なるが、それらの基準光の偏波状態は互いに直交しているため、第3者Bcと第4者Bdのどちらか一方について偏波分離手段45で分離して得られたディジタル信号Ds、Dpを入れ替える、またはディジタル信号Ds、Dpのどちらか一方を逆位相にすることにより、同一偏波状態の基準光の場合に変換することが出来る。
【0132】
この測定装置130の場合においても、被測定光ファイバ37の歪みによってビートスペクトルのピークが直線からずれる場合や、光路長差ΔL1の誤差によりビートスペクトルのピークの間隔がずれる場合や、チャープFBGがオーバラップしている場合、時間軸上の分割数を3分割より増やすことによりビートスペクトルの重複を回避することが出来る。また、前記同様に窓関数をかけた後にフーリエ変換を行なう場合は、時間軸上の分割数を3分割より増やすと共に窓関数の一部をオーバラップさせることにより、重複部分を使用せずに全距離範囲にわたって結果を得ることが出来る。
【0133】
図16は本発明を適用した測定装置140の別の変形例を示している。この測定装置140では、二つの偏波多重部10A、10Bを用いており、分岐手段3から方向性結合手段31に至る光路(第2光路)に偏波多重部10Aを挿入して一方の分岐光P1を与え、その出力を測定光Pmes として被測定光ファイバ37に与え、被測定光ファイバ37の反射光Pret を合波手段41に入力し、分岐手段3から合波手段41に至る光路(第3光路)に挿入された偏波多重部10Bに他方の分岐光P2を与え、その出力を基準光Prとして合波手段41に入力している。
【0134】
2つの偏波多重部10A、10Bの構成は前記偏波多重部10と同一であるが、多重する光の時間差ΔT1、ΔT2は異なる値に設定されている。
【0135】
合波手段41から出力される2つの光Psum(+)は、Psum(-)は、バランス受光器55に入力されて電気信号Aに変換され、A/D変換器61によってディジタル信号Dに変換される。なお、バランス受光器55の代わりにシングルエンドの受光器を用いてもよい。
【0136】
この測定装置140において、前記同様に、近端側より遠端側の格子間隔が短いチャープで、チャープ周期が3周期の被測定光ファイバ37に対し、光源の掃引が時間的に光の周波数が増加する方向で、分岐手段3から合波手段41までの基準光の光路長が、分岐手段3から被測定光ファイバ37の近端で反射して合波手段41に至る光路長よりも短い場合を考える。
【0137】
上記構成の測定装置140の場合、測定光Pmes には、第1の偏波状態の光と第2の偏波状態の光が多重化され、基準光Prには、s偏波状態の基準光Prsとp偏波状態の基準光Prpが多重化されている。
【0138】
このため、被測定光ファイバ37からの反射光Pret と基準光Prとが合波手段41で合波されると、第1の入射偏波状態に対する反射光のs偏波成分Pretsとs偏波状態の基準光Prsとが干渉してビート信号Basが発生し、第1の入射偏波状態に対する反射光のp偏波成分Pretpとp偏波状態の基準光Prpが干渉してビート信号Bapが発生し、第2の入射偏波状態に対する反射光のs偏波成分Prets′とs偏波状態の基準光Prsが干渉してビート信号Bbsが発生し、第2の入射偏波状態に対する反射光のp偏波成分Pretp′とp偏波状態の基準光Prpが干渉してビート信号Bbpが発生する。
【0139】
ここで、第2の入射偏波状態の光は、第1の入射偏波状態の光に比べて時間ΔT1だけ遅れているため、第2の入射偏波状態に対応するビートスペクトルのピークは第1の入射偏波状態に対応するビートスペクトルのピークよりも周波数が高くなる。また、p偏波状態の基準光Prpは、s偏波状態の基準光Prsに比べて時間ΔT2だけ遅れているため、反射光のp偏波成分Pretp、Pretp′に対応するビートスペクトルのピークは、反射光のs偏波成分Prets、Prets′に対応するビートスペクトルのピークよりも周波数が低くなる。
【0140】
例えば、偏波多重部10Aの光路長差ΔL1をFBGのチャープ周期の往復分の光路長の1/2に設定し、偏波多重部10Bの光路長差ΔL2をFBGのチャープ周期の往復分の光路長の1/4に設定すると、
図17の(a)のように第1の入射偏波状態に対する反射光のs偏波成分のビートスペクトルのピーク(実線)Bas1、Bas2、Bas3の中間に第2の入射偏波状態に対する反射光のs偏波成分のビートスペクトルのピーク(破線) Bbs1、Bbs2、Bbs3 が発生し、破線と実線の中間に第1の入射偏波状態に対する反射光のp偏波成分のビートスペクトルのピーク(一点鎖線)Bap1、Bap2、Bap3が発生し、実線と破線の中間に第2の入射偏波状態に対する反射光のp偏波成分のビートスペクトルのピーク(二点鎖線)Bbp1、Bbp2、Bbp3が発生する。
【0141】
逆に、偏波多重部10Aの光路長差ΔL1をFBGのチャープ周期の往復分の光路長の1/4に設定し、偏波多重部10Bの光路長差ΔL2をFBGのチャープ周期の往復分の光路長の1/2に設定しても同様の結果が得られる。
【0142】
図17の(b)のように時間軸方向に4つの期間1〜4に等分割してフーリエ変換(例えばCPUやFPGAを用いた高速フーリエ変換(FFT))を行なうと、
図17の(c)のように、各期間についての第1の入射偏波状態に対する反射光のs偏波成分に対応するフーリエ変換結果(Bas11)〜(Bas31)、(Bas12)〜(Bas32)、(Bas13)〜(Bas33)、(Bas14)〜(Bas34)、各期間についての第1の入射偏波状態に対する反射光のp偏波成分に対応するフーリエ変換結果(Bap11)〜(Bap31)、(Bap12)〜(Bap32)、(Bap13)〜(Bap33)、(Bap14)〜(Bap34)、各期間についての第2の入射偏波状態に対する反射光のs偏波成分に対応するフーリエ変換結果(Bbs11)〜(Bbs31)、(Bbs12)〜(Bbs32)、(Bbs13)〜(Bbs33)、(Bbs14)〜(Bbs34)、各期間についての第2の入射偏波状態に対する反射光のp偏波成分に対応するフーリエ変換結果(Bbp11)〜(Bbp31)、(Bbp12)〜(Bbp32)、(Bbp13)〜(Bbp33)、(Bbp14)〜(Bbp34)が分離して得られる。
【0143】
前記同様に、
図17の(c)の横軸を被測定光ファイバ37上の距離に変換すると、第2の入射偏波状態に対応するフーリエ変換結果は、偏波多重部10Aの光路長差ΔL1の1/2だけ近端側へ補正され、反射光のp偏波成分に対応するフーリエ変換結果は偏波多重部10Bの光路長差ΔL2の1/2だけ遠端側へ補正され、
図17の(d)のように全ての距離範囲にわたって第1の入射偏波状態に対する反射光のs偏波成分に対応する結果と第2の入射偏波状態に対する反射光のs偏波成分に対応する結果と第1の入射偏波状態に対する反射光のp偏波成分に対応する結果と第2の入射偏波状態に対する反射光のp偏波成分に対応する結果とが得られる。なお、
図17では、フーリエ変換結果を下線で、距離換算した結果を上線で区別している。
【0144】
このように、全測定時間内では第1の入射偏波状態に対する反射光のs偏波成分に対応するビートスペクトルと第1の入射偏波状態に対する反射光のs偏波成分に対応するビートスペクトルと第2の入射偏波状態に対する反射光のp偏波成分に対応するビートスクトルと第2の入射偏波状態に対する反射光のp偏波成分に対応するビートスペクトルとを重複させることにより、第1の入射偏波状態に対する反射光のs偏波成分に対応するビートスペクトルのみを測定する場合と比較して受光器やA/D変換器の帯域およびA/D変換器以降のサンプリング周波数を大幅に増加することなく、全測定時間を4以上の領域に分割してフーリエ変換することにより、1回の掃引で、且つ1組の受光器とA/D変換器で第1の入射偏波状態に対する反射光のs偏波成分に対応するビートスペクトルと第2の入射偏波状態に対する反射光のs偏波成分に対応するビートスペクトルと第1の入射偏波状態に対する反射光のp偏波成分に対応するビートスペクトルと第2の入射偏波状態に対する反射光のp偏波成分に対応するビートスペクトルの全てを分離して得ることができる。
【0145】
なお、この実施形態の場合においても、ビートスペクトルのピークが完全な直線からずれた場合、光路長差ΔL1、ΔL2の誤差がある場合、およびチャープFBGがオーバラップしビートスペクトルのピークの一部がオーバラップしている場合は、4分割のフーリエ変換では各成分が重複し分離できなくなる。その場合には、前記したように、時間軸上の分割数を増やすことにより重複を回避し、全距離範囲にわたって4つの結果を分離して得ることが出来る。
【0146】
また、窓関数をかけてフーリエ変換を行なう場合も、
図9で説明したように、チャープFBGを一部オーバラップさせ、時間軸上の分割数を増やして窓関数を一部オーバラップさせることにより、全距離範囲にわたって4つの結果を分離して得ることが出来る。
【0147】
なお、チャープの方向、チャープ周期の数、光源の掃引方向、偏波多重部の光路長差は、上記例に限られるものではない。他の条件においても、ビートスペクトルのピークの数、時間的な傾斜の方向、フーリエ変換分割数が異なるものの同様の効果を得ることが出来る。
【0148】
従って、
図16の構成の測定装置140により、1回の波長掃引かつ1組の受光器とA/D変換器で4つの結果が得られ、従来のように掃引毎に偏波コントローラ15の偏波を切り替えたり、2組の受光器とA/D変換器を使用する必要が無く、偏波分離手段45で2つに分岐される基準光の強度がほぼ等しくなるように偏波を調整する必要も無いという利点がある。
【0149】
また、この測定装置140においても、信号処理部102においてフーリエ変換処理を前記同様に期間毎に行い、得られた4つの結果a、b、c、dから、特許文献1に記載の方法にて被測定光ファイバ37の複屈折を補正することが出来るが、この構成では、基準光も偏波多重された光になるため、基準光の経路の複屈折も含めて補正することが出来る利点がある。
【0150】
次に、被測定光ファイバ37の長手方向に隣接したチャープFBGの領域が一部重複している場合の例について
図18を用いて説明する。前記したように、複数の領域のFBGを完全に隙間無く配置することは難しいので、このように各領域1〜3の一部が重複するようにしても良い。重複した部分には、格子間隔の異なる2つの回折格子が存在し、2つの波長で反射することになる。このため
図18の(b)に示すように、距離と反射波長の関係も重複した部分が存在する。なお、重複部分を多くして、3つ以上の領域が重複するようにしても良い。
図18の(b)の特性に対して、
図18の(c)のような制限された波長掃引を行なうことで、
図18の(d)に示すように、ビートスペクトルのピークが重複せず、隙間なく並ぶようにできる。
【0151】
また、
図19に、チャープFBGの領域が重複し、ビートスペクトルのピークも重複している場合の例を示す。
図19の(b)の特性に対して、波長掃引範囲を
図19の(c)のようにチャープFBGの反射波長範囲よりも若干狭く設定し、
図19の(d)のようにビート周波数の重複を発生させている。波長掃引光源1の波長掃引範囲はチャープFBGの反射波長範囲と等しいまたは広く設定しても良い。このように、チャープFBGの領域を重複させることによりチャープFBGを配置する位置精度が緩和され、ビートスペクトルのピークを重複させることにより、波長掃引光源1の波長掃引範囲の設定精度が緩和され、実施が容易になる。
【0152】
前記各実施形態では、被測定光ファイバ37がシングルコアの例を説明したが、
図20に、被測定光ファイバをマルチコアファイバとする測定装置150の構成例を示す。
【0153】
この測定装置150は、
図14に示した構成の測定装置130を4コアの被測定光マルチコアファイバ36を測定するために拡張した構成となっている。
【0154】
即ち、波長掃引光源1から出力された光P0を分岐手段2により2分岐し、その一方P1を偏波多重部10に与え、その出力光P1′を分岐手段30で4分岐して、その分岐光P3〜P6を分岐手段3A〜3Dに与える。分岐手段2と分岐手段3A〜3Dは8分岐の分岐手段1個で構成することも出来る。また、2分岐の分岐手段1個と、それに続く4分岐の分岐手段2個で構成することも出来る。
【0155】
各分岐手段3A〜3Dで分岐された一方の光は測定光Pmes1〜Pmes4として、方向性結合手段31A〜31Dおよびマルチコアファイバ用ファンアウト35を介して1本の被測定マルチコアファイバ36の各コアに導かれる。
【0156】
被測定マルチコアファイバ36は、空間多重光ファイバ伝送に用いられ、1つのクラッドの中に複数のコアを持つ。
【0157】
図21の(a)は、チャープFBGを有するマルチコアファイバの例であり、中心のコア36aの周囲に3つのコア36b〜36dが配置され、各コア36a〜36dにチャープFBGが形成されている。
【0158】
被測定光ファイバの3次元の位置または形状を測定するためには、ファイバの2方向の曲げとねじれの3次元の歪みを測定する必要がある。さらに、被測定光ファイバの温度補償を行なう必要があり、合計4本のコアが必要となる。もし2次元の位置または形状を測定する場合は3本のコアでよく、1次元の位置または形状を測定する場合は2本のコアでよい。
図21の(a)では全てのコア36a〜36dを直線状に描いているが、被測定光ファイバのねじれを測定するためには、被測定光ファイバに力を加えない状態において
図21の(b)のように中心のコアの周りに他のコアが螺旋状にねじれている必要がある。また、空間多重光ファイバ伝送用途において、
図21の(c)のように中心のコア1の周囲に6つのコア2〜7が配置された7コアファイバが用いられており、この7コアファイバの中心のコア1と周囲の3つのコアのみを3次元の位置または形状測定に使用することも出来る。
【0159】
分岐手段3A〜3D以降の構成は、
図14に示した構成の測定装置130の構成を4組分設けたものであり、方向性結合手段31A〜31Dおよびマルチコアファイバ用ファンアウト35により各コアへの測定光Pmes1〜Pmes4を与えるとともに、各コアからの反射光Pret1〜Pret4を合波手段41A〜41Dにそれぞれ入力させ、分岐手段3A〜3Dで分岐された基準光Pr1〜Pr4と合波させる。また、各合波手段41A〜41Dの出力を偏波コントローラ25A〜25Dにそれぞれ与え、基準光の偏波を調整して偏波分離手段45A〜45Dに入力させ、偏波分離された光s1〜s4、p1〜p4をそれぞれ受光器57A〜57D、58A〜58Dに入力し、その出力をA/D変換器65A〜65D、66A〜66Dでディジタル信号Ds1〜Ds4、Dp1〜Dp4に変換して信号処理部103に与えている。
【0160】
また、分岐手段2で分岐された他方の光P2は、監視部70に入力される。監視部70の構成および機能は、
図29に示したものと同じである。
【0161】
この構成の測定装置150では、被測定マルチコアファイバ36の各コアについて前記同様の測定を行なうことができ、それら複数のコアの状態から、被測定マルチコアファイバ36の各コアの歪みを正確に測定することができ、特許文献1に記載の方法にて被測定マルチコアファイバ36の位置または形状を測定することが出来る。
【0162】
図22は、マルチコアファイバの測定をより簡素な構成で実現する測定装置160を示している。この測定装置160は、
図16に示した測定装置140をマルチコアファイバ36に対応させるために拡張したものであり、分岐手段3で分岐された光P3、P4を偏波多重部10A、10Bに入力し、偏波多重部10Aの出力を分岐手段30Aで4分岐して、それぞれを測定光Pmes1〜Pmes4として方向性結合手段31A〜31Dおよびマルチコアファイバ用ファンアウト35を介して被測定マルチコアファイバ36の各コアに入力する。各コアからの反射光Pret1〜Pret4は、マルチコアファイバ用ファンアウト35および方向性結合手段31A〜31Dを介して合波手段41A〜41Dに与えられる。
【0163】
また、偏波多重部10Bの出力を分岐手段30Bで4分岐し、それぞれを基準光Pr1〜Pr4として、合波手段41A〜41Dに与える。
【0164】
各合波手段41A〜41Dの出力は、バランス受光器55A〜55Dに入力され、その出力がA/D変換器65A〜65Dによってディジタル信号に変換されて信号処理部103に与えられる。
【0165】
この測定装置160の場合も、各コアについての動作は前記
図16に示した測定装置140の場合と同じであり、極めて簡単な構成で、各コアについての測定が行なえる。
【0166】
なお、この構成でバランス受光器55A〜55Dの代わりにシングルエンドの受光器を用いてもよい。
【0167】
これにより、被測定マルチコアファイバ36の各コアの歪みを正確に測定することができ、特許文献1に記載の方法にて被測定マルチコアファイバ36の位置または形状を測定することが出来る。
【0168】
図23は、さらに簡素化した測定装置170構成例を示している。この測定装置170は、
図22の測定装置160の各コアからの反射光Pret1〜Prte4に対して、遅延ファイバ等からなる遅延手段51A〜51Dによりそれぞれ異なる遅延時間を与えて、合波手段48で合波している。
図23では、遅延手段51A〜51Dを方向性結合手段31A〜31Dから合波手段48の間に挿入しているが、分岐手段30から方向性結合手段31A〜31Dの間や、方向性結合手段31A〜31Dからマルチコアファイバ用ファンアウト35の間に遅延手段51A〜51Dを設けてもよい。
【0169】
合波手段48からの出力光と偏波多重部10Bからの出力光(基準光)Prを合波手段41に与え、その出力光Psum(+)、Psum(-)をバランス受光器55に入力し、その出力信号AをA/D変換器65でディジタル信号Dに変換して信号処理部104に与える。この場合、バランス受光器55の代わりにシングルエンドの受光器も使用できる。
【0170】
この測定装置170の場合、被測定マルチコアファイバ36の4つのコアからの反射光の遅延時間と、偏波多重部10Aおよび偏波多重部10Bの遅延時間を、例えば0、1、2、3、4、8の比率に設定し、時間軸上で16以上の領域に分割してフーリエ変換を行なうことにより、
図17で示したのと同様にして、被測定マルチコアファイバ36の4つのコアそれぞれの第1の入射偏波状態に対する反射光のs偏波成分に対応するフーリエ変換結果と第2の入射偏波状態に対する反射光のs偏波成分に対応するフーリエ変換結果と第1の入射偏波状態に対する反射光のp偏波成分に対応するフーリエ変換結果と第2の入射偏波状態に対する反射光のp偏波成分に対応するフーリエ変換結果の16個の信号を分離することが出来る。
【0171】
なお、マルチコアファイバ36を測定する場合の構成としては、上記構成例だけでなく、
図1の測定装置100、
図10の測定装置110、
図13の測定装置120を、コア数分拡張した構成も実現できる。
【0172】
また、前記実施形態で示した信号処理部102〜104の構成は、入力されるディジタル信号の系列数が異なるが、基本的な構成および動作は
図6に示した信号処理部101と同等である。
【0173】
以上、本発明の光周波数領域反射測定装置の実施形態について説明したが、上記実施形態でも述べたが、上記実施例装置により得られた光ファイバの情報から、その光ファイバが固定されている物体を被測定物とし、その各位置または形状を測定する装置に適用することができる。
【0174】
その場合の具体例としては、光ファイバを固定する被測定物として、医療用カテーテル、医療用検査プローブ、医療用センサ、建築物検査センサ、海底センサ、または地質センサが実現可能である。