【解決手段】ネットワークを介して接続された端末装置と、サーバーコンピュータとを備える建ち精度管理システムであって、所定の施工図を示すCADデータのうち、一つの形状を構成するデータを柱データとして抽出する柱抽出手段202と、前記抽出された柱データから、柱の縦寸法、横寸法、柱芯の設定座標値を算出する柱情報算出手段203と、前記抽出された柱データの最大外形の総距離と、前記柱データを構成する線分の総距離と、前記最大外形の総距離と前記線分の総距離との関係から予め設定された柱形状とに基づいて、前記柱データの柱形状を特定する柱形状特定手段204とを備える。
前記柱の建ち精度を表示する際に、当該柱の建ち精度の絶対値と、予め設定された管理値又は当該管理値よりも大きい値の限界値とを少なくともXY方向の各成分毎に比較して、少なくとも一成分の建ち精度の絶対値が前記限界値より大きい場合は、前記柱の建ち精度に、危険を示す色を表示し、全成分の建ち精度の絶対値が前記限界値以下で、且つ、少なくとも一成分の建ち精度の絶対値が前記管理値より大きい場合は、前記柱の建ち精度に、注意を示す色を表示し、全成分の建ち精度の絶対値が前記管理値以下である場合は、前記柱の建ち精度に、安全を示す色を表示する建ち精度表示手段
を備える
請求項2に記載の建ち精度管理システム。
前記柱の建ち精度を表示する際に、当該柱の建ち精度の絶対値と、予め設定された管理値又は当該管理値よりも大きい値の限界値とを少なくともXY方向の各成分毎に比較して、少なくとも一成分の建ち精度の絶対値が前記限界値より大きい場合は、前記柱の建ち精度に、危険を示す色を表示し、全成分の建ち精度の絶対値が前記限界値以下で、且つ、少なくとも一成分の建ち精度の絶対値が前記管理値より大きい場合は、前記柱の建ち精度に、注意を示す色を表示し、全成分の建ち精度の絶対値が前記管理値以下である場合は、前記柱の建ち精度に、安全を示す色を表示するステップ
を備える
請求項5に記載の建ち精度管理方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、柱の建ち精度の測定対象となる建築物の施工図は、汎用性の高いCAD(Computer Aided Design)ソフトウェアのCADデータが用いられており、DXF(Drawing Exchange Format)等の形式を採用している。このCADデータの施工図では、元々、デザイン的な観点で構成された図面であるから、柱の建ち精度の測定に必要な柱情報が存在しない。そのため、測量業務者が、建築業者からCADデータを受け取ると、このCADデータの施工図を紙又は画面に表示させて、手作業で柱情報を計算し、抽出していた。この柱情報の抽出作業は、測量業務者にとって大きな負担であり、測量業務者がCADデータの施工図を受け取ってから測量を開始するまでに時間が掛かるという問題があった(例えば、1日から2日)。又、前記柱情報の抽出作業は、基本的に、人の目視、手作業であるため、確認ミス、算出ミスが生じるという問題があった。
【0006】
又、測量作業者が柱の建ち精度の計測を終えた後に、当該計測した柱の建ち精度を建築業者に確認させる場合に、建築物の各工程において、どの柱が適正か、どの程度ズレているか、前記計測後の柱の建ち精度が許容範囲内かを一見して理解し難いという問題があった。このような問題に対して、特許文献1−4に記載の発明では、解決することが出来ない。
【0007】
そこで、本発明は、前記問題を解決するためになされたものであり、本発明者が鋭意研究を行った結果、画期的なアイデアに基づきなされたものである。即ち、本発明は、測量作業者及び建築業者の利便性を向上させることが可能な建ち精度管理システム及び建ち精度管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る建ち精度管理システムは、ネットワークを介して接続された端末装置と、サーバーコンピュータとを備える建ち精度管理システムであって、以下の構成を採用する。即ち、本発明は、所定の施工図を示すXY方向のCADデータのうち、一つの形状を構成するデータを柱データとして抽出する柱抽出手段と、前記抽出された柱データから、柱の縦寸法、横寸法、柱芯のXY方向の設定座標値を算出する柱情報算出手段と、前記抽出された柱データのXY方向の最大外形の総距離と、前記柱データを構成するXY方向の線分の総距離と、前記最大外形の総距離と前記線分の総距離との関係から予め設定された柱形状とに基づいて、前記柱データの柱形状を特定する柱形状特定手段と、前記算出された柱の縦寸法、横寸法、柱芯のXY方向の設定座標値、柱形状を、前記サーバーコンピュータの所定のメモリに記憶させる制御手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
又、前記ネットワークを介して接続された携帯端末装置と、当該携帯端末装置に接続された三次元計測機とを更に備え、前記三次元計測機により、前記施工図が示す建築物の柱に設置されたターゲットシールのXY方向の実測座標値が計測されると、当該ターゲットシールのXY方向の実測座標値と、当該柱の柱芯のXY方向の設定座標値と、縦寸法と、横寸法とに基づいて、当該柱芯のXY方向の実測座標値を算出し、当該算出した柱芯のXY方向の実測座標値と、前記柱芯のXY方向の設定座標値とに基づいて、前記柱のXY方向の建ち精度を算出する建ち精度算出手段と、前記算出された柱のXY方向の建ち精度を表示するとともに、前記柱の柱芯のXY方向の設定座標値に関連付けて前記メモリに記憶させる表示受付手段とを備える。
【0010】
又、前記柱の建ち精度を表示する際に、当該柱の建ち精度の絶対値と、予め設定された管理値又は当該管理値よりも大きい値の限界値とを少なくともXY方向の各成分毎に比較して、少なくとも一成分の建ち精度の絶対値が前記限界値より大きい場合は、前記柱の建ち精度に、危険を示す色を表示し、全成分の建ち精度の絶対値が前記限界値以下で、且つ、少なくとも一成分の建ち精度の絶対値が前記管理値より大きい場合は、前記柱の建ち精度に、注意を示す色を表示し、全成分の建ち精度の絶対値が前記管理値以下である場合は、前記柱の建ち精度に、安全を示す色を表示する建ち精度表示手段を備える。
【0011】
又、本発明は、建ち精度管理方法として提供することが出来る。即ち、本発明は、所定の施工図を示すXY方向のCADデータのうち、一つの形状を構成するデータを柱データとして抽出するステップと、前記抽出された柱データから、柱の縦寸法、横寸法、柱芯のXY方向の設定座標値を算出するステップと、前記抽出された柱データのXY方向の最大外形の総距離と、前記柱データを構成するXY方向の線分の総距離と、前記最大外形の総距離と前記線分の総距離との関係から予め設定された柱形状とに基づいて、前記柱データの柱形状を特定するステップと、前記算出された柱の縦寸法、横寸法、柱芯のXY方向の設定座標値、柱形状を、前記サーバーコンピュータの所定のメモリに記憶させるステップとを備えることを特徴とする。
【0012】
又、前記三次元計測機により、前記施工図が示す建築物の柱に設置されたターゲットシールのXY方向の実測座標値が計測されると、当該ターゲットシールのXY方向の実測座標値と、当該柱の柱芯のXY方向の設定座標値と、縦寸法と、横寸法とに基づいて、当該柱芯のXY方向の実測座標値を算出し、当該算出した柱芯のXY方向の実測座標値と、前記柱芯のXY方向の設定座標値とに基づいて、前記柱のXY方向の建ち精度を算出するステップと、前記算出された柱のXY方向の建ち精度を表示するとともに、前記柱の柱芯のXY方向の設定座標値に関連付けて前記メモリに記憶させるステップとを備える。
【0013】
又、前記柱の建ち精度を表示する際に、当該柱の建ち精度の絶対値と、予め設定された管理値又は当該管理値よりも大きい値の限界値とを少なくともXY方向の各成分毎に比較して、少なくとも一成分の建ち精度の絶対値が前記限界値より大きい場合は、前記柱の建ち精度に、危険を示す色を表示し、全成分の建ち精度の絶対値が前記限界値以下で、且つ、少なくとも一成分の建ち精度の絶対値が前記管理値より大きい場合は、前記柱の建ち精度に、注意を示す色を表示し、全成分の建ち精度の絶対値が前記管理値以下である場合は、前記柱の建ち精度に、安全を示す色を表示するステップを備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る建ち精度管理システム及び建ち精度管理方法によれば、測量作業者及び建築業者の利便性を向上させることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、添付図面を参照して、本発明に係る判定装置の実施形態について説明し、本発明の理解に供する。尚、以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0017】
本発明に係る建ち精度管理システム1は、
図1に示すように、会社、事務所等に設置される端末装置2及びサーバーコンピュータ3と、測量作業者が建設現場に携帯する携帯端末装置4と、ターゲットシールの3次元の実測座標値を測定する三次元測量機5とから基本的に構成される。端末装置2とサーバーコンピュータ3と携帯端末装置4は、インターネットなどのネットワーク6を介して有線又は無線で通信可能に接続されている。又、携帯端末装置4と三次元測量機5は、有線又は無線で通信可能に接続されている。
【0018】
端末装置2は、一般に使用されるコンピュータであり、キーボード、マウス、液晶ディスプレイ等を備える。又、サーバーコンピュータ3は、一般に使用されるコンピュータである。又、携帯端末装置4は、一般に使用される携帯用のコンピュータであり、タッチパネル等を備える。又、三次元測量機5は、一般に建設現場で使用される測量機であり、ターゲットシールに対して自動視準する機能を備えている。
【0019】
尚、端末装置2、サーバーコンピュータ3、携帯端末装置4、三次元測量機5は、図示しないCPU、ROM、RAM、HDDを内蔵しており、CPUは、例えば、RAMを作業領域として利用し、ROM、HDD等に記憶されているプログラムを実行する。又、後述する各手段(
図2に示す)についても、CPUがプログラムを実行することで当該各手段を実現する。
【0020】
次に、
図2、
図3を参照しながら、本発明に係る構成及び実行手順について説明する。先ず、測量作業者が、建築業者からCADデータを受け取ると、事務所等の端末装置2でCADソフトウェア(例えば、AutoCAD)を起動させる。次に、測量作業者が端末装置2のキーボードやマウスを用いて、XY方向のCADデータを読み込ませる指示を入力すると、端末装置2の制御手段201が、当該指示を受けて前記CADデータを読み込み、所定のメモリに記憶させる(
図3:S101)。
【0021】
次に、測量作業者が、柱の建ち精度の測定に必要な柱情報(柱パラメータ)の抽出の指示を入力すると、制御手段201が、当該指示を受けて(
図3:S102)、その旨を柱抽出手段202に通知する。当該通知を受けた柱抽出手段202は、所定の施工図を示すXY方向のCADデータのうち、一つの形状を構成するデータを柱データ(柱オブジェクト)として抽出する(
図3:S103)。
【0022】
ここで、柱抽出手段202が抽出する方法は、特に限定は無いが、所定の施工図を示すXY方向のCADデータは、各種XY方向のデータにより構成され、一本の線分を示す線分データ、円弧を示す円弧データ、円を示す円データ、複数の線分で構成されるポリラインデータ、文字を示す文字データ等で構成される。これらのデータには、予め設定されたXY座標軸の原点(UCS原点)に対して始点(XY座標値)及び終点(XY座標値)が各データ毎に設定されている。例えば、
図4には、CADデータ400として、線分データ401、ポリラインデータ402、文字データ403が存在する。
【0023】
通常、柱を示す柱データは、一つの形状を構成するデータであり、柱形状が四角形状(又は円形状、楕円形状)である柱データ404aは、データの始点と終点が交点として一致している(閉じたデータである)。又、柱形状がH形状(又はクロスH形状)である柱データ404bは、データ間で交点が存在する。
【0024】
そこで、柱抽出手段202は、XY方向のCADデータ400を構成するデータのうち、データの始点と終点が交点として一致しているデータ404a又はデータ間で交点が存在する(ポリライン)データ404bを検索(トレース)し、これらのデータ404a、404bを柱データとして抽出する。
【0025】
ここで、例えば、柱抽出手段202が、前記抽出した柱データ404a、404bを、始点のX座標値(又はY座標値)の小さい順に整列させ、当該整列させた順番に、柱を一義的に識別することが可能な柱識別情報(例えば、P1、P2等)を付与するよう構成しても良いし、測量作業者が、前記抽出した柱データ404a、404bに対して任意に所望の柱識別情報を付与するよう構成しても良い。
【0026】
さて、柱抽出手段202が抽出を完了すると、その旨を柱情報算出手段203に通知し、当該通知を受けた柱情報算出手段203は、前記抽出された柱データ404a、404bから、柱の(X方向の)縦寸法、(Y方向の)横寸法、XY方向の柱芯の設定座標値を算出する。
【0027】
ここで、柱情報算出手段203が算出する方法は、特に限定は無いが、例えば、
図5に示すように、柱情報算出手段203が、一つの柱データ404a、404bが有するX座標値のうち、最大値(Xmax)と最小値(Xmin)とを読み取り、この最大値から最小値を減算した減算値(Xmax−Xmin)を柱データ404a、404bの柱の縦寸法(Wx=a1)として算出する。次に、柱情報算出手段203が、前記柱データ404a、404bが有するY座標値のうち、最大値(Ymax)と最小値(Ymin)とを読み取り、この最大値から最小値を減算した減算値(Ymax−Ymin)を柱データ404a、404bの柱の横寸法(Wy=a2)として算出する(
図3:S104)。
【0028】
次に、柱情報算出手段203は、
図5に示すように、一つの柱データ404a、404bのうち、X座標値の最大値(Xmax)とY座標値の最大値(Ymax)の最大点500と、X座標値の最小値(Xmin)とY座標値の最小値(Ymin)の最小点501とを算出し、最大点500と最小点501の中心点(Sx=(Xmax−Xmin)/2、Sy=(Ymax−Ymin)/2)を、前記柱データ404a、404bの柱芯のX座標値(Sx)とY座標値(Sy)として算出する。これにより、各柱データ404a、404bに対して、柱の縦寸法、横寸法、XY方向の柱芯の設定座標値(Sx、Sy)を自動的に算出する。尚、前記CADデータ400から、前記柱データ404a、404bの柱芯のZ座標値(Sz)を直接読み取ることは出来ないため、例えば、柱情報算出手段203は、前記CADデータ400から、前記柱データ404a、404bが存在する階層情報(例えば、1階、2階等)を取得し、当該階層情報から前記柱データ404a、404bの柱芯のZ座標値(Sz)を算出しても良いし、測量作業者が、前記CADデータ400に示される柱データ404a、404bのZ座標値(Sz)を入力することで、当該柱芯のZ座標値(Sz)としてもよい。これにより、柱情報算出手段203は、前記柱データ404a、404bの柱芯のXYZ方向の設定座標値(Sx、Sy、Sz)を算出する(
図3:S105)。これにより、
図6に示すように、各柱データ404a、404bに対して柱芯のXYZ方向の設定座標値(Sx、Sy、Sz)を自動的に算出することが可能となる。
【0029】
さて、柱情報算出手段203が算出を完了すると、その旨を柱形状特定手段204に通知し、当該通知を受けた柱形状特定手段204は、前記抽出された柱データ404a、404bのXY方向の最大外形の総距離(Δa)と、前記柱データ404a、404bを構成するXY方向の線分の総距離(Δb)と、前記最大外形の総距離(Δa)と前記線分の総距離(Δb)との関係から予め設定された柱形状(例えば、四角形状、H形状等)とに基づいて、前記柱データ404a、404bの柱形状を特定する(
図3:S106)。ここで、最大外形とは、(XY方向の)平面においてデータの中心を基準に最も外側に出ている点のみをつなぎ合わせて形成される外側形状を意味する。
【0030】
柱形状特定手段204が特定する方法は、特に限定は無いが、例えば、
図5に示すように、柱のXY方向の最大外形の総距離(Δa)は、当該柱の縦寸法(a1)の2倍と横寸法(a2)の2倍を加算した値(Δa=2*a1+2*a2)であるため、柱形状特定手段204が、これに基づいて柱のXY方向の最大外形の総距離(Δa)を算出する。一方、前記柱データ404a、404bを構成するXY方向の線分の総距離(Δb)は、当該柱データ404a、404bを構成するXY方向の線分の長さを全て加算した値である。例えば、
図5に示すように、前記柱データ404aの柱形状が四角形状である場合は、前記線分の総距離(Δb)は、単純に、柱の縦寸法(a1)の2倍と横寸法(a2)の2倍を加算した値(Δb=2*a1+2*a2)となる。一方、前記柱データ404bの柱形状がH形状である場合は、前記線分の総距離(Δb)は、柱の縦寸法(a1)の2倍と横寸法(a2)を加算した値(Δb=2*a1+a2)となる。
【0031】
次に、柱形状特定手段204は、前記最大外形の総距離(Δa)から前記線分の総距離(Δb)を除算した値(Δa/Δb)を柱特定係数として算出し、予め設定された柱形状テーブルを参照する。この柱形状テーブルには、0.8以上、1.0以下である前記柱特定係数(Δa/Δb)に、柱形状として四角形状が設定され、1.0より大きく、1.5以下である前記柱特定係数(Δa/Δb)に、柱形状としてH形状が設定されている。柱形状特定手段204は、前記算出した柱特定係数を、前記柱形状テーブルの柱特定係数に対応させることで、当該柱形状テーブルの柱形状を、前記柱データ404a、404bの柱形状として特定する。これにより、前記柱データ404a、404bから柱形状を適切に特定することが出来る。
【0032】
さて、柱形状特定手段204が特定を完了すると、その旨を通り情報取得手段205に通知し、当該通知を受けた通り情報取得手段205は、前記施工図を示すXY方向のCADデータ400のうち、通り芯を示すXY方向のデータを通り芯データとして抽出し、当該抽出した通り芯データの通り方向を特定する(
図3:S107)。
【0033】
具体的には、通り情報取得手段205が、前記CADデータ400から、長さが予め設定された設定値(例えば、数m)よりも長いXY方向の線分データを通り芯データとして抽出し、当該抽出した通り芯データの始点のXY座標値及び終点のXY座標値を取得する。次に、通り情報取得手段205が、前記取得した通り芯データの始点のXY座標値及び終点のXY座標値のうち、始点のX座標値と終点のX座標値が同一であれば、この通り芯データを縦方向(X方向)(90度、270度)の通り芯データとして特定し、始点のY座標値と終点のY座標値が同一であれば、この通り芯データを横方向(Y方向)(0度、180度)の通り芯データとして特定する。
【0034】
通り情報取得手段205が特定を完了すると、前記特定した縦方向の通り芯データを、始点のX座標値の小さい順に整列させ、当該整列させた順番に、縦方向の通り芯を一義的に識別することが可能な縦方向の通り名(例えば、1〜N等)を付与する。又、通り情報取得手段205が、前記特定した横方向の通り芯データを、始点のY座標値の小さい順に整列させ、当該整列させた順番に、横方向の通り芯を一義的に識別することが可能な横方向の通り名(例えば、A〜Z等)を付与する(
図3:S108)。これにより、前記CADデータ400から、通り芯データを簡単に抽出することが可能となる。
【0035】
さて、通り情報取得手段205が付与を完了すると、その旨を制御手段201に通知し、当該通知を受けた制御手段201は、ネットワーク6を介して通信可能に接続されたサーバーコンピュータ3にアクセスし、当該サーバーコンピュータ3の記憶手段206へ前記算出された柱情報等を記憶させて、データベース化する(
図3:S109)。
【0036】
ここで、制御手段201がデータベース化する方法は、特に限定は無いが、例えば、
図7に示すように、柱のデータベースとして、柱テーブル700には、柱識別情報701、柱芯のXYZ方向の設定座標値(Sx、Sy、Sz)702、縦寸法(Wx)703、横寸法(Wy)704、柱形状705が関連付けて記憶され、通りテーブル706には、通り方向707、通り名708、始点のXY座標値709、終点のXY座標値710が関連付けて記憶される。これにより、CADデータからの柱情報の抽出作業に要する時間を数秒に短縮することが出来るとともに、測量作業者の負担を軽減し、確認ミス、算出ミスの発生を確実に防止することが可能となる。
【0037】
尚、上述では、柱情報を、柱識別情報701、柱芯のXYZ方向の設定座標値(Sx、Sy、Sz)702、縦寸法(Wx)703、横寸法(Wy)704、柱形状705としたが、更に、他のパラメータを追加しても構わない。例えば、柱長、柱の回転角度、柱の材質等を追加パラメータとして関連付けて記憶させるよう構成しても良い。
【0038】
さて、測量作業者は、前記データベース化を完了すると、携帯端末装置4と三次元測量機5を携帯して、建築現場へ赴き、前記CADデータの施工図に対応する建築物の柱の建ち精度の計測を開始する。先ず、測量作業者は、携帯端末装置4を起動させると、携帯端末装置4の表示受付手段207が、所定の画面を表示する。測量作業者は、前記画面を見ながら、前記建築現場における現在の工程(例えば、溶接後)を入力すると、表示受付手段207は、前記建築現場における工程を受け付けて、ネットワーク6を介してサーバーコンピュータ3の記憶手段206にアクセスし、当該記憶手段206の柱テーブル700に前記工程(溶接後)を指定させる(
図3:S201)。
【0039】
次に、測量作業者は、
図8に示すように、所定の場所に三次元測量機5を設置するとともに、前記建築現場の柱(P1−P4)の柱頭に、ターゲットシール(T1−T4)を設置する。ここで、前記ターゲットシール(T1−T4)が設置される位置は、前記柱(P1−P4)の柱頭の縦寸法(Wx)の中心又は横寸法(Wy)の中心とする。そして、測量作業者は、前記画面に計測の指示を入力すると、表示受付手段207は、当該計測の指示を受け付けて、三次元計測機5を起動し、ターゲットシール(T1−T4)のXYZ方向の実測座標値(Tx、Ty、Tz)を計測する(
図3:S202)。
【0040】
三次元計測機5が計測を完了すると、その旨を携帯端末装置4の建ち精度算出手段208に通知する。当該通知を受けた建ち精度算出手段208が、サーバーコンピュータ3の記憶手段206にアクセスし、前記計測されたターゲットシール(T1−T4)のXYZ方向の実測座標値(Tx、Ty、Tz)に対して、これに最も近い柱芯のXYZ方向の設定座標値(Sx、Sy、Sz)を対応付ける(
図3:S203)。そして、建ち精度算出手段208は、前記ターゲットシール(T1−T4)のXYZ方向の実測座標値(Tx、Ty、Tz)と、前記対応付けた柱芯のXYZ方向の設定座標値(Sx、Sy、Sz)と、この柱(P1−P4)の縦寸法(Wx)と、横寸法(Wy)とに基づいて、前記ターゲットシール(T1−T4)のXYZ方向の実測座標値(Tx、Ty、Tz)から柱芯のXYZ方向の実測座標値(Mx、My、Mz)を算出する(
図3:S204)。
【0041】
例えば、
図8に示すように、ターゲットシールT1のXYZ方向の実測座標値(Tx、Ty、Tz)が、柱P1の柱芯C1のXYZ方向の設定座標値(Sx、Sy、Sz)よりもY方向側に大きい場合、建ち精度算出手段208は、前記ターゲットシールT1のXYZ方向の実測座標値(Tx、Ty、Tz)のうち、Y座標値(Ty)から横寸法(Wy)/2を減算した実測座標値(Tx、Ty−Wy/2、Tz)を柱芯C1のXYZ方向の実測座標値(Mx、My、Mz)として算出する。又、ターゲットシールT2のXYZ方向の実測座標値(Tx、Ty、Tz)が、柱P2の柱芯C2のXYZ方向の設定座標値(Sx、Sy、Sz)よりもX方向側に大きい場合、建ち精度算出手段208は、前記ターゲットシールT2のXYZ方向の実測座標値(Tx、Ty、Tz)のうち、X座標値(Tx)から縦寸法(Wx)/2を減算した実測座標値(Tx−Wx/2、Ty、Tz)を柱芯C1のXYZ方向の実測座標値(Mx、My、Mz)として算出する。尚、Y方向側に小さい場合又はX方向側に小さい場合は、横寸法(Wy)/2又は縦寸法(Wx)/2を加算することになる。そして、建ち精度算出手段208が柱芯(C1−C4)のXYZ方向の実測座標値(Mx、My、Mz)の算出を完了すると、柱(P1−P4)の柱芯(C1−C4)のXYZ方向の実測座標値(Mx、My、Mz)から、当該柱芯(C1−C4)のXYZ方向の設定座標値(Sx、Sy、Sz)をXYZ方向の各成分(X、Y、Z)毎に減算し、その値(Mx−Sx、My−Sy、Mz−Sz)を前記柱(P1−P4)のXYZ方向の建ち精度(Δx、Δy、Δz)として算出する(
図3:S205)。これにより、ターゲットシール(T1−T4)のXYZ方向の実測座標値(Tx、Ty、Tz)を計測するだけで、自動的に、当該ターゲットシール(T1−T4)を設置した柱(P1−P4)のXYZ方向の建ち精度(Δx、Δy、Δz)を算出することが可能となる。
【0042】
さて、建ち精度算出手段208が算出を完了すると、その旨を表示受付手段207に通知し、当該通知を受けた表示受付手段207は、前記算出結果を前記画面に表示させる。この際、表示受付手段207が、前記算出結果の訂正、修正を測量作業者から受け付けても良い。そして、表示受付手段207は、ネットワーク6を介してサーバーコンピュータ3の記憶手段206にアクセスし、
図9に示すように、当該記憶手段206の柱テーブル700の柱識別情報701と工程900(溶接後)とに、前記算出された柱芯(C1−C4)のXYZ方向の実測座標値(Mx、My、Mz)901と、柱(P1−P4)のXYZ方向の建ち精度(Δx、Δy、Δz)902とを関連付けて記憶させて、データベース化する(
図3:S206)。これにより、所定の工程における建築物の柱(P1−P4)のXYZ方向の建ち精度(Δx、Δy、Δz)を蓄積することが可能となる。
【0043】
ここで、建物施工の工程(溶接後)が次の工程(建直し後)に進めば、測量作業者が、S201からS206までの一連の作業を実行することで、
図9に示すように、建物施工の工程毎(溶接後、建直し後等)の柱(P1−P4)のXYZ方向の建ち精度(Δx、Δy、Δz)を計測し、蓄積することが可能となる。
【0044】
さて、測量作業者が建ち精度の計測及び蓄積を完了すると、事務所等へ帰還して、端末装置2を起動させる。そして、測量作業者が、前記端末装置2に、前記計測結果の表示の指示を入力すると、当該端末装置2の制御手段201が、当該指示を受けて、その旨を建ち精度表示手段209に通知する。当該通知を受けた建ち精度表示手段209は、測量作業者から、柱の建ち精度の表示形態を示す図面の種類(平面図、軸組図、断面図、レベル図等)の指定を受け付け(
図3:S301)、当該指定された図面に対応して、ネットワーク6を介してサーバーコンピュータ3の記憶手段206にアクセスし、当該記憶手段206の柱テーブル700から、前記柱の建ち精度及び前記図面を表示させるために必要な情報を取得する(
図3:S302)。そして、建ち精度表示手段209は、前記取得した柱のXYZ方向の建ち精度の絶対値と、予め設定された管理値又は当該管理値よりも大きい値の限界値とをXYZ方向の各成分(X、Y、Z)毎に比較して、少なくとも一成分の建ち精度の絶対値が前記限界値より大きい場合は、前記柱の建ち精度に、危険を示す色(例えば、赤色等)を表示し、全成分の建ち精度の絶対値が前記限界値以下で、且つ、少なくとも一成分の建ち精度の絶対値が前記管理値より大きい場合は、前記柱の建ち精度に、注意を示す色(例えば、黄色等)を表示し、全成分の建ち精度の絶対値が前記管理値以下である場合は、前記柱の建ち精度に、安全を示す色(例えば、緑色、青色等)を表示する(
図3:S303)。
【0045】
例えば、測量作業者が、前記図面のうち、平面図を指定すると、建ち精度表示手段209は、前記サーバーコンピュータ3の記憶手段206の柱テーブル700から、所定の工程(例えば、溶接後)900における建築物の所定の階層に存在する柱(柱識別情報701)の柱芯のXYZ方向の設定座標値(Sx、Sy、Sz)702、柱形状705、柱の建ち精度(Δx、Δy、Δz)902を取得し、通りテーブル706から、通り方向707、通り名708、始点のXY座標値709、終点のXY座標値710を取得する。そして、建ち精度表示手段209は、前記取得した柱のXYZ方向の建ち精度(Δx、Δy、Δz)902の絶対値を、前記管理値又は前記限界値とをXYZ方向の各成分(X、Y、Z)毎に比較して、当該柱の建ち精度に表示する色を特定し、当該判定結果を平面図として表示する。
【0046】
前記平面
図1000には、
図10に示すように、所定の階層における柱が、前記柱芯のXYZ方向の設定座標値(Sx、Sy、Sz)702に基づいて表示されるとともに、当該柱に、対応する柱形状(例えば、□、H等)705が表示される。又、前記柱には、対応する柱のXYZ方向の建ち精度(Δx、Δy、Δz)が吹き出し形式で表示され、当該吹き出しに、前記特定された色が付されて表示される。又、前記平面
図1000には、所定の建築物を構成する通り方向707及び通り名708が、前記始点のXY座標値709及び終点のXY座標値710に基づいて表示される。これにより、所定の工程において、どの柱が適正か、どの程度ズレているか、前記計測後の柱の建ち精度が許容範囲内かを一見して理解することが可能となる。尚、前記工程(溶接後)は、測量作業者の指定により切り換えることが可能である。
【0047】
又、測量作業者が、前記図面のうち、軸組図を指定すると、建ち精度表示手段209は、柱テーブル700から、建築物の所定の横方向の通り名に存在する柱(柱識別情報701)の柱芯のXYZ方向の設定座標値(Sx、Sy、Sz)702、工程900、柱のXYZ方向の建ち精度(Δx、Δy、Δz)902を取得し、通りテーブル706から、通り方向707、通り名708、始点のXY座標値709、終点のXY座標値710を取得する。そして、建ち精度表示手段209は、前記取得した柱のXYZ方向の建ち精度(Δx、Δy、Δz)902のうち、縦方向(X方向)の建ち精度(Δx)の絶対値を、前記管理値又は前記限界値と比較して、当該柱の建ち精度に表示する色を特定し、当該判定結果を軸組図として表示する。
【0048】
前記軸組
図1100には、
図11に示すように、所定の横方向の通り名における柱が、前記柱芯のXYZ方向の設定座標値(Sx、Sy、Sz)702に基づいて表示され、当該柱に、対応する柱のXYZ方向の建ち精度(Δx)が吹き出し形式で表示される。又、前記柱の吹き出しに、前記特定された色が付されて表示され、対応する工程が表示される。又、前記軸組
図1100には、所定の横方向の通り名に存在する通り方向707及び通り名708が、前記始点のXY座標値709及び終点のXY座標値710に基づいて表示される。これにより、建築物の所定の横方向の通り名における高さ方向を基準として、どこの柱が不適切か、一目瞭然で理解することが可能となる。尚、所定の横方向の通り名は、測量作業者の指定により切り換えることが可能である。
【0049】
又、測量作業者が、前記図面のうち、断面図を指定すると、建ち精度表示手段209は、柱テーブル700から、建築物の所定の縦方向の通り名及び所定の横方向の通り名に存在する柱(柱識別情報701)の柱芯のXYZ方向の設定座標値(Sx、Sy、Sz)702、工程900、柱のXYZ方向の建ち精度(Δx、Δy、Δz)902を取得し、通りテーブル706から、通り方向707、通り名708、始点のXY座標値709、終点のXY座標値710を取得する。そして、建ち精度表示手段209は、
図12に示すように、前記取得した柱のXYZ方向の建ち精度(Δx、Δy、Δz)902のうち、所定の縦方向の通り名に存在する柱の横方向(Y方向)の建ち精度(Δy)をX断面図として、所定の横方向の通り名に存在する柱の縦方向(X方向)の建ち精度(Δx)をY断面図としてそれぞれ表示する。これにより、建築物の所定の縦方向の通り名及び所定の横方向の通り名における高さ方向を基準として、どこの柱が不適切か、一目瞭然で理解することが可能となる。尚、所定の縦方向の通り名及び所定の横方向の通り名は、測量作業者の指定により切り換えることが可能である。
【0050】
又、測量作業者が、前記図面のうち、レベル図を指定すると、建ち精度表示手段209は、柱テーブル700から、建築物の所定の横方向の通り名に存在する柱(柱識別情報701)の柱芯のXYZ方向の設定座標値(Sx、Sy、Sz)702、工程900、柱のXYZ方向の建ち精度(Δx、Δy、Δz)902を取得し、通りテーブル706から、通り方向707、通り名708、始点のXY座標値709、終点のXY座標値710を取得する。そして、建ち精度表示手段209は、
図13に示すように、前記取得した柱のXYZ方向の建ち精度(Δx、Δy、Δz)902のうち、所定の横方向の通り名に存在する柱の縦方向(X方向)の建ち精度(Δx)を、各工程(溶接後、建直し後等)毎に色分け(青色、赤色等)してそれぞれ表示する。これにより、各種工程の進捗に応じて、どこの柱がどのように変化していくかを一見して理解することが可能となる。尚、所定の横方向の通り名は、測量作業者の指定により異なる横方向の通り名又は所定の横方向の通り名に切り換えることが可能である。
【0051】
尚、上述では、測量作業者が、端末装置2を用いて各種図面を表示したが、前記サーバーコンピュータ3にアクセス可能な端末装置であれば、特に限定は無い。例えば、建築業者が、別の端末装置を用いて前記サーバーコンピュータ3にアクセスし、各種図面を表示しても良い。これにより、測量作業者及び建築業者は、建築現場の建築物の柱の建ち精度を容易に確認することが可能となる。
【0052】
又、上述では、柱芯の設定座標値をXYZ座標値とし、柱の建ち精度をXYZ方向の値としたが、柱芯の設定座標値をXY座標値とし、柱の建ち精度をXY方向の値としても構わない。
【0053】
又、本発明の実施形態では、柱抽出手段202、柱情報算出手段203、柱形状特定手段204、通り情報取得手段205、建ち精度表示手段209が端末装置2に設けられ、建ち精度算出手段208が、携帯端末装置4に設けられるよう構成したが、他の構成でも良い。例えば、柱抽出手段202、柱情報算出手段203、柱形状特定手段204、通り情報取得手段205、建ち精度算出手段208、建ち精度表示手段209が、全てサーバーコンピュータ3に設けられ、全ての処理を当該サーバーコンピュータ3が実行し、端末装置2及び携帯端末装置4が、各種処理結果を表示するだけであっても良い。
【0054】
又、本発明では、建ち精度管理方法として提供する場合、電気通信回線などを介して個別に流通する、コンピュータに実行させるためのプログラムとして提供することができる。この場合、中央演算処理装置(CPU)が、本発明のプログラムに従ってCPU以外の各回路と協働して制御動作を実現する。又、前記プログラム及びCPUを用いて実現される各手段は、専用のハードウェアを用いて構成することもできる。又、当該プログラムは、CD−ROMなどのコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録された状態で流通させることも可能である。