【解決手段】レンズの周辺部に遮光膜を形成するための遮光性インクであって、可視光を遮蔽する遮光材料と、紫外線を含む光照射あるいは加熱により硬化が開始される光硬化型材料を含有し、遮光膜と前記レンズとの界面で生じる反射率を0.1%以下にしたレンズ光学素子用の遮光性インクである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、発明を実施するための実施形態について、図面を参照して説明する。尚、各図において同一箇所については同一の符号を付す。
【0011】
(第1の実施形態)
(レンズアレイ)
先ず、本実施形態のレンズアレイの構成について
図1を参照して説明する。
図1は、レンズアレイ10の構成図であり、(a)はレンズアレイ10の上面図、(b)は(a)の一点鎖線A−A’に沿う断面図、(c)は(b)の一部を拡大して示す拡大図である。
【0012】
図1に示すように、レンズアレイ10(マイクロレンズアレイとも言う)は、例えば透明な基板11上に配列した複数のレンズ12を備える。レンズアレイ10は、各レンズ12の間に、例えば膜厚12μmの黒色の遮光膜13を形成している。各レンズ12の間に遮光膜13を形成することにより、遮光膜13で覆われたレンズ部分は非レンズ部分となる。遮光膜13は、本実施形態の遮光性インクを用いて形成する。基板11及びレンズ12は、例えば金型成形される。
【0013】
尚、
図1では、基板11の片面にレンズ12を配置した例を示しているが、両面にレンズ12を形成することも可能である。レンズアレイ10と遮光膜13を合わせてレンズアレイユニットと称することもある。
【0014】
(遮光膜の形成)
遮光膜13の形成には、例えばインクジェットヘッドを備える遮光膜形成装置20が用いられる。
図2には、遮光膜形成装置20の概略構成図を示す。
図2に示すように、遮光膜形成装置20は、レンズアレイ10を搬送する搬送台21と、遮光性インク25を吐出するインクジェット印刷部22と、紫外線照射部23、及びインクジェット印刷部22と紫外線照射部23を制御する制御部24を備える。
【0015】
搬送台21は、複数のレンズ12を備える透明な基板11からなるレンズアレイ10を固定支持して、矢印X方向に移動し、レンズアレイ10の透明基板11をインクジェット印刷部22の位置及び紫外線照射部13の位置に搬送する。
【0016】
制御部24は、搬送台21の搬送速度と搬送タイミングを制御する。透明基板11がインクジェット印刷部22の位置まで移動すると、制御部14は、インクジェット印刷部22からの遮光性インク25の吐出量を制御し、インクジェット印刷部22は、基板11の上方から各レンズ12の間に遮光性インク25を吐出する。
【0017】
遮光性インク25の吐出量は、例えばインクを吐出させる電圧を調整して制御する。他の制御方法として、インクジェット印刷部22から吐出される微小な遮光性インク滴を複数回、同一位置に滴下させるマルチドロップ印刷により、その液滴数を調整して遮光性インクの吐出量を制御することも可能である。
【0018】
なお、基板11の両面にレンズ12を配置したレンズアレイの場合には、片面(表面)への遮光膜の形成の後、基板を反転して搬送台21にセットし、同様の操作を行うことで、もう一方の面(裏面)に遮光膜を形成することができる。
【0019】
次に制御部24は、
図3で示すように、搬送台21を紫外線照射部13の位置にまで搬送し、レンズアレイ10に塗付された遮光性インク25を紫外線照射部23から照射される紫外線26によって硬化する。制御部24は、紫外線26の照射量や紫外線の波長等を制御する。
【0020】
遮光膜形成装置20は、インクジェット方式ではなく、塗布によっても遮光性インクの供給を行うこともできる。また、搬送台21を固定して、インクジェット印刷部22と紫外線照射部23をレンズアレイ10に対して走査する態様としてもよい。また、インクジェット印刷部22と紫外線照射部23をそれぞれ複数設けた態様としてもよい。さらに、遮光性インク25を効率よく硬化させるため、搬送台21の透明基板11を取り付ける部分は、例えばガラス板として裏面側からも紫外線を照射するように構成することもできる。
【0021】
なお、後述のカチオン型の光硬化型材料を用いる場合には、紫外線照射後に加熱工程を加えることにより、効率的な硬化が可能になる。紫外線照射後の加熱を行うことにより発生したカチオンが拡散し効果的にモノマーやオリゴマーなどの反応性重合化合物を重合硬化させることができる。加熱工程における加熱温度や加熱時間は、レンズアレイのレンズ形状、レンズの光学特性等に影響を与えない範囲で適宜設定できる。
【0022】
(遮光性インク)
遮光膜13の形成に用いる遮光性インク25は、主として遮光材料、光硬化型材料から構成される。
【0023】
(遮光材料)
遮光材料は、光学的な遮光性及び反射特性が第一に求められる。また、インクジェット印刷法を用いる場合には、さらにインク特性としての飛翔性能、分散安定性などが求められる。これらの特性を考慮し、遮光材料には光吸収性の顔料が用いられる。
【0024】
このような遮光材料としては、例えばカーボンブラック、及びカーボンナノチューブのような炭素系顔料、鉄黒、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化クロム、及び酸化鉄のような金属酸化物顔料、硫化亜鉛のような硫化物顔料、フタロシアニン系顔料、金属の硫酸塩、炭酸塩、珪酸塩、及びリン酸塩のような塩からなる顔料、並びにアルミ粉末、ブロンズ粉末、及び亜鉛粉末のような金属粉末からなる顔料等を挙げることができる。これらは単独、または2種以上混合して用いることができる。
【0025】
(光硬化型材料)
一実施形態の遮光性インク25に用いられる光硬化型材料は、遮光膜の骨格となる材料であり、重合性官能基を有する反応性モノマー、オリゴマー等の光で重合する反応性重合化合物と、これらの重合を開始させる光開始剤から構成される。
【0026】
反応性重合化合物については、現在、多種多様なものが様々な用途で使用されているが、重合様式で大別するとラジカル型とカチオン型に分けることができる。
【0027】
ラジカル型は、アクリロイル官能基を有するアクリルモノマー・オリゴマーが代表的なもので、光照射された光開始剤から発生するラジカルにより重合が促進される。ラジカル型重合の際に酸素阻害が生じることや硬化後の体積収縮が比較的大きいことが欠点として上げられる。
【0028】
これに対して、カチオン型は、エポキシやオキセタン化合物に代表される環状エーテル化合物、またビニルエーテル基を有するビニルエーテル化合物等が挙げられ、光開始剤として光照射によるプロトン発生を利用し重合を開始させる光酸発生剤である。これらの中で環状エーテル化合物は重合後の体積収縮が少なく、それに伴い基材との密着性が優れていることが特徴に挙げられる。また、カチオン型重合では、酸素阻害を生じることなく重合でき、薄膜の形成能に優れている点でラジカル型とは異なる。
【0029】
レンズアレイ10用の遮光膜13としては、上記の特性を踏まえた上で、インクジェット法による遮光性インク25としてのインク特性を両立する材料を適宜選択することができる。即ち、一実施形態の遮光性インク25に用いる材料は、遮光性、反射特性、硬化膜強度、紫外線硬化条件などの性能とインクジェット法による紫外線硬化インク特性としての粘度、表面張力などの物性及び遮光性の分散安定性、ヘッド部材との適合性等を満足することができるものであれば特に制限はない。
【0030】
ラジカル型の反応性重合化合物は、分子中のアクリロイル基の有する数により、単官能アクリレート、2官能アクリレート、3つ以上の多官能アクリレートなどのモノマーや、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレートなどに代表されるオリゴマーが例示できる。
【0031】
この内、単官能のモノマーは反応性希釈剤として用いられることが多く、またインクジェットインクとしては、粘度の調整材料として重要な役割を果たす。具体的には、例えばイソボニルアクリレート、アクリロイルモルホリン、ジシクロペンタジエニルアクリレート、フェニルグリシジルエーテルのアクリル酸付加物、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシブチルアクリレート、2-ヒドロキシヘキシルアクリレート、エチルカルビトールアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2-アクリロイルオキシエチルフタレート、ベンジルアクリレートなどや、2-ヒドロキシヘキシルメタクリレート、アリルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレートなどのメタクリルアクリレートが挙げられる。また、アクリル系以外では、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタムなどは希釈剤としても有用である。
【0032】
2官能アクリレートは、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ノナンジオールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、ビスフェノールAのEO付加物アクリレートなどが挙げられる。多官能アクリレートは、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、イソシアヌル酸EO付加物のトリアクリレートなどが挙げられる。
【0033】
カチオン型の反応性重合化合物には、例えば脂環式エポキシ化合物、オキセタン化合物、ビニルエーテル化合物などが挙げられる。
【0034】
脂環式エポキシ化合物としては、2価の脂肪族骨格または脂環式骨格を有する炭化水素基、或いは脂肪族鎖または脂環式骨格を一部に有する2価の基の一方あるいは両方に、エポキシ基あるいは脂環式エポキシ基を有する化合物を挙げることができる。
【0035】
具体的には、例えばダイセル化学社のセロキサイド2021、セロキサイド2021A、セロキサイド2021P、セロキサイド2081、セロキサイド2000、セロキサイド3000に例示される脂環式エポキシ化合物、エポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物であるサイクロマーA200、サイクロマーM100、MGMA(メチルグリシジルメタクリレート)、低分子エポキシ化合物であるグリシドール、β−メチルエピクロルヒドリン、α−ピネンオキサイド、炭素数12〜14のα−オレフィンモノエポキシド、炭素数16〜18のα−オレフィンモノエポキシド、ダイマックS−300Kのようなエポキシ化大豆油、ダイマックL−500のようなエポキシ化亜麻仁油、エポリードGT301、エポリードGT401のような多官能エポキシ等が挙げられる。
【0036】
さらに、サイラキュアのような米国ダウケミカル社の脂環式エポキシ化合物や、水素添加し、且つ脂肪族化した低分子フェノール化合物の水酸基末端を、エポキシを有する基で置換した化合物、エチレングリコール、グリセリン、ネオペンチルアルコール、ヘキサンジオール、トリメチロールプロパンなどの多価脂肪族アルコール/脂環式アルコールなどのグリシジルエーテル化合物、ヘキサヒドロフタル酸や、水添芳香族の多価カルボン酸のグリシジルエステルなどが挙げられる。これら脂環式エポキシ化合物は、単独で、又は2種以上を使用してもよい。
【0037】
オキセタン化合物としては、例えば(ジ〔1−エチル(3−オキセタニル)〕メチルエーテル、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、〔(1−エチル−3−オキセタニル)メトキシ〕シクロヘキサン、ビス〔(1−エチル−3−オキセタニル)メトキシ〕シクロヘキサンや、ビス〔(1−エチル−3−オキセタニル)メトキシ〕ノルボルナンなどの脂環に1以上のオキセタン含有基が導入された化合物、エチレングリコールやプロピレンゴリコール、ネオペンチルアルコールなど脂肪族多価アルコールに、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタンのようなオキセタン含有アルコールを脱水縮合させたエーテル化合物)などが挙げられる。
【0038】
また、芳香族骨格を含むオキセタン化合物としては、例えば1,4−ビス((1−エチル−3オキセタニル)メトキシ)ベンゼン、1,3−ビス((1−エチル−3オキセタニル)メトキシ)ベンゼン、4,4’−ビス((3−エチル−3オキセタニル)メトキシ)ビフェニル、フェノールノボラックオキセタン類などが挙げられる。これらオキセタン化合物は、単独で、又は2種以上を使用してもよい。
【0039】
ビニルエーテル化合物としては、例えば2-エチルヘキシルビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、ジチレングリコールモノビニルエーテル、ジチレングリコールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテルなどが挙げられる。これらビニルエーテル化合物は、単独で、又は2種以上を使用してもよい。
【0040】
(光重合開始剤)
光重合開始剤としては、ラジカル系とカチオン系が挙げられ、配合する反応性重合化合物により適宜選択できる。ラジカル系としては、例えばベンゾインエーテル系、アセトフェノン系、フォスフィンオキサイド系があり、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1等の開裂型、ベンゾフェノン、2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン等の水素引き抜き型などが挙げられる。
【0041】
カチオン系としては、例えばオニウム塩、ジアゾニウム塩、キノンジアジド化合物、有機ハロゲン化物、芳香族スルフォネート化合物、バイスルフォン化合物、スルフォニル化合物、スルフォネート化合物、スルフォニウム化合物、スルファミド化合物、ヨードニウム化合物、スルフォニルジアゾメタン化合物、及びそれらの混合物などを使用することができる。
【0042】
具体的には、例えばトリフェニルスルフォニウムトリフレート、ジフェニルヨードニウムトリフレート、2,3,4,4−テトラヒドロキシベンゾフェノン−4−ナフトキノンジアジドスルフォネート、4−N−フェニルアミノ−2−メトキシフェニルジアゾニウムスルフェート、4−N−フェニルアミノ−2−メトキシフェニルジアゾニウムp−エチルフェニルスルフェート、4−N−フェニルアミノ−2−メトキシフェニルジアゾニウム2−ナフチルスルフェート、4−N−フェニルアミノ−2−メトキシフェニルジアゾニウムフェニルスルフェート、2,5−ジエトキシ−4−N−4’−メトキシフェニルカルボニルフェニルジアゾニウム−3−カルボキシ−4−ヒドロキシフェニルスルフェート、2−メトキシ−4−N−フェニルフェニルジアゾニウム−3−カルボキシ−4−ヒドロキシフェニルスルフェート、ジフェニルスルフォニルメタン、ジフェニルスルフォニルジアゾメタン、ジフェニルジスルホン、α−メチルベンゾイントシレート、ピロガロールトリメシレート、ベンゾイントシレートなどが挙げられる。
【0043】
(光増感剤)
光増感剤としては、例えば下記一般式(1)で表わされるアントラセンジエーテル化合物が挙げられる。
【化1】
【0044】
(式中、R
3は、炭素数1〜5の1価の有機基を表し、R
4及びR
5は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、アルキルスルホニル基またはアルコキシ基を表す。)
上記一般式(2)において、R
3として導入され得る1価の有機基としては、例えばアルキル基、アリール基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシアルキル基、アリル基、ベンジル基、及びビニル基などが挙げられる。
【0045】
アルキル基としては、具体的には、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、及びi−ペンチル基などが挙げられる。
【0046】
アリール基としては、例えばフェニル基、ビフェニル基、o−トリル基、m−トリル基、及びp−トリル基などが挙げられる。
【0047】
また、ヒドロキシアルキル基としては、例えば2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、2−メチル−2−ヒドロキシエチル基、及び2−エチル−2−ヒドロキシエチル基などが挙げられる。
【0048】
また、アルコキシアルキル基としては、例えば2−メトキシエチル基、3−メトキシプロピル基、2−エトキシエチル基、3−エトキシプロピル基などが挙げられる。
【0049】
また、アリル基としては、例えば2−メチルアリル基などが挙げられる。このような基を有する化合物は、例えばJ.Am.Chem.Soc.,Vol.124,No.8,1590(2002)に示されるような方法で合成することができる。
【0050】
また、R
4及びR
5は、式中に表わされたものであれば特に制限されないが、合成の簡便さを考慮すると、いずれも水素原子であることが好ましい。
【0051】
上記一般式(2)で表わされる化合物としては、具体的には、例えば9,10−ジメトキシアントラセン、9,10−ジエトキシアントラセン、9,10−ジプロポキシアントラセン、9,10−ジブトキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジエトキシアントラセン、2,3−ジエチル−9,10−ジエトキシアントラセンのようなジアルコキシアントラセン、9,10−ジフェノキシアントラセン、9,10−ジアリルオキシアントラセン、9,10−ジ(2−メチルアリルオキシ)アントラセン、9,10−ジビニルオキシアントラセン、9,10−ジ(2−ヒドロキシエトキシ)アントラセン、9,10−ジ(2−メトキシエトキシ)アントラセンなどが挙げられる。
【0052】
これらの化合物はいずれを用いても十分な効果を発揮するが、化合物もしくはその合成原料の入手コストや、化合物の安全性を考慮すると、9,10−ジブトキシアントラセン、及び9,10−ジビニルオキシアントラセンが特に好ましい。
【0053】
このような光増感剤の含有量は、用いられる化合物の種類にもよるが、一般的には、光酸発生剤に対して10〜50重量%程度の割合で配合されていれば、その効果を発揮することができる。
【0054】
また、本実施形態の遮光性インクは、必要に応じて重合禁止剤を用いることができる。重合禁止剤は、カチオン系、ラジカル系がある。カチオン系としては、例えばn−ヘキシルアミン、ドデシルアミン、アニリン、ジメチルアニリン、ジフェニルアミン、トリフェニルアミン、ジアザビシクロオクタン、ジアザビシクロウンデカン、3−フェニルピリジン、4−フェニルピリジン、ルチジン、27−ジ−t−ブチルピリジンなどが挙げられる。
【0055】
ラジカル系としては、DPPH(1,1−ジフェニル−2−ピクリルヒドラジル)、TEMPO(2,27,6−テトラメチルピペリジニル−1−オキシル)、p−ベンゾキノン、クロラニル、ニトロベンゼン、ハイドロキノン(HQ)、メチルハイドロキノン(MEHQ)、t−ブチルカテコール、ジメチルアニリンなどが挙げられる。
【0056】
(遮光性インクの調製)
これらの材料を用いて遮光性インクを調製するには、予め遮光材をモノマーに分散させる分散工程と、得られた分散液に適切なモノマー、オリゴマー等の反応性重合化合物及び光酸発生剤、さらに必要に応じて増感剤、重合禁止剤等の添加剤を加えて混合攪拌する混合工程を経て、最終的に粗粒子や不要な固形分を除去するろ過、或いは遠心分離などの精製工程を行い、紫外線硬化型の遮光性インクとする。
【0057】
なお、分散工程では、遮蔽材料の分散性を高めるために必要に応じて分散剤を添加することができる。分散剤としては、例えばノニオン系、イオン系の界面活性剤のような分散剤や、高分子系分散剤を挙げることができる。
【0058】
(ディスペンサーによる塗布)
なお、本実施形態のレンズアレイ10を形成するために遮光膜13及びレンズ部材料を塗布する方法として、ディスペサーによる微量液体の塗布により行うことができる。例えば、武蔵エンジニアリング社製の非接触ジェットディスペンサー(Cyber Jet2)、兵神装備社製のマイクロディスペンサー(ヘイシンマイクロディスペンサー)、マイクロドロップテクノロジー社製のマイクロディスペンサー(ナノジェット)などにより行うことが可能である。これらを用いレンズ基板上に所定量の遮光性インクやレンズ部材料液を塗布し、塗布直後に硬化を行い塗布と硬化を繰り返すことにより、レンズ構造を形成する。
【0059】
(反射率の測定)
反射率の測定は、まず測定用サンプルを作成する。サンプルはレンズに使用する樹脂材料と同じ材料でブロック形状のサンプルと、そのサンプルの一面に遮光性インクを塗布し、必要な硬化処理を行って硬化膜を形成する。
【0060】
反射率の測定は、
図4に示した構成で行う。
図4の測定器では、レーザー光源27、レーザー光量の検出器28、レンズのサンプルブロック110、遮光性インク130を有する。レーザー光源27は、SIGMA KOKIのLDU33−5Vを用いた。レーザー光量の検出器28は、アドバンテストのオプティカルパワーメータQ8230である。レーザー光源27から所定の角度でサンプルブロック110の側面にレーザー光を照射し、遮光性インク130塗布面を反射して出力されるレーザー光を検出器28で検出する。
【0061】
遮光性インク130が塗布されていないサンプルブロック110における検出器28での検出光量に対して、遮光性インク130が塗布されたときの検出器28での検出光量の割合を反射率とした。遮光性インク130を塗布したサンプルブロック110において検出器28の光量がゼロのとき、反射率は0%となりレーザー光は全吸収されたことになる。
【0062】
(屈折率の制御)
遮光膜の屈折率を調整するためのいくつかの材料的な方法を挙げる。遮光膜の機械的な骨格を形成するのがモノマー、オリゴマーなどの硬化性樹脂であり、各種類により屈折率は異なる。屈折率の異なるモノマーを配合することにより、所望の屈折率に調整することが可能となる。
【0063】
また、酸化チタンや酸化ジルコニウムなどの高屈折率の金属酸化物微粒子(無機酸化物微粒子)を樹脂中に分散させる方法がある。金属酸化物微粒子を用いる場合は、微粒子の含有量によって屈折率の調節が可能となるが粒子の微粒化やその分散特性を均一にすることが求められる。さらに、樹脂自体に工夫をして原子屈折の高い硫黄、ハロゲン、芳香環などを樹脂の構造中に導入することも可能である。
【0064】
図5は、遮光膜の屈折率の制御を概略的に示す説明図である。
図5(a)は、遮光膜13に遮光材料としてカーボンブラック(B)が含まれている例を示す。
図5(a)において、レンズ基板11と遮光膜13の両者の屈折率が同じ場合は、光は透過するが、両者の屈折率が異なると、レンズ基板11に入った光は、レンズ基板11と遮光膜13との界面部分で反射する(反射光を点線で示す)。
【0065】
図5(b)は、遮光膜13に遮光材料としてカーボンブラック(B)が含まれ、屈折率調整剤として無機酸化物粒子(C)が含まれている例である。屈折率調整剤が含まれているため、遮光膜13に入射した光は、カーボンブラック(B)によって吸収され、反射されない。無機酸化物粒子(C)は、例えば酸化チタンである。
【0066】
以下に、本実施形態の遮光性インク25の具体例を示し、さらに詳細に説明する。
【0067】
[遮光材分散液の調製]
以下に示す遮光材料、分散剤、及び溶媒分としての反応性重合化合物を混合し、遮光材料の配合比の異なる混合液を得た。なお、遮光材料としてカーボンブラック顔料を用いた。
【0068】
・遮光材料(カーボンブラック顔料) 20.0重量%
・分散剤(アビシア・ソルスパース32000) 5.5重量%
・分散剤(アビシア・ソルスパース22000) 0.7重量%
・反応性重合化合物 (TEGDVE) 73.8重量%
(TEGDVE:トリエチレングリコールジビニルエーテル)
得られた混合液を、それぞれ循環式のサンドミルに0.5mm径のビーズを充填して、約1時間の分散処理を施した。分散処理後、孔径5μmのフィルターを用いて粗粒子を除去し、カーボンブラック顔料の遮光材分散液を得た。なお、本実施例においてはインクジェットインクを例とするため、平均粒径を小さくすることと、粒子径分布をシャープにするべく上記フィルターによる処理を行ったが、インクジェットインクとして使用しない場合には上記処理を省略してもよい。
【0069】
[遮光性インクの調製]
調製した遮光性分散液に反応性重合化合物、光酸発生剤、及び増感剤を配合し、ホノジナイザーなどの攪拌機を用いて約1時間混合攪拌した。得られた混合液を5μmのメンブレンフィルターで濾過することにより、反応性重合化合物の含有量の異なるインクNo.1〜No.8を調製した。なお、インクジェットによるインク塗布以外の方法で、レンズを作成する場合は、濾過後の工程を省略することも可能である。
図6(a)は、No.1〜No.8の各インクの配合比を示す。なお、
図6(a)は、遮光材分散液を含めた配合比であり、分散剤についてはTEGDVE(反応性重合化合物)に含めた。
【0070】
尚、
図6(a)において、反応性重合化合物C2021として、ダイセル社のエポキシ樹脂モノマーを使用し、増感剤DBAとして、川崎化成社のジブトキシアントラセンを使用し、屈折率調整剤の酸化チタンとして、アルドリッチ社の
Cas.1317−70−0を使用した。
【0071】
図6(a)の処方により作成した遮光性インクを、反射率測定用のブロックサンプルにバーコーダで塗布し、HOYA UV照射装置(H−8LH4)を用いてUV照射処理を行い、遮光膜を形成した。作成したサンプルを用いて反射率測定を行ったところ、
図6(b)のような結果となった。No.1〜No.6及びNo.8のインクでは、いずれも反射率を0.1以下にすることができた。
【0072】
TEGDVEとC2021の屈折率は、TEGDVE<C2021と予想される。TEGDVEとC2021の配合比を制御することによって、屈折率の微量調整が可能であることが確認できる。C2021を含有していないNo.7のインクは反射率が大きく、実際のレンズに遮光膜を形成したとき光学特性が低下した。
【0073】
またインク(No.4−No.6、No.8)の結果から、酸化チタン微粒子を用いて屈折率を調整可能であることも確認できた。
【0074】
(画像形成装置)
図7は、一実施形態に係るレンズアレイ10を用いた光学装置の一例である画像形成装置の構成図である。
【0075】
図7に示すように、画像形成装置100は、原稿等の画像を読み取るスキャナ部30と、スキャナ部30で生成された画像データ等を処理して用紙に画像を形成するプリンタ部40と、プリンタ部40に用紙を給紙する給紙部70を備えている。
【0076】
スキャナ部30は、画像形成装置100の上部に設けられており、自動原稿搬送装置31によって送られる原稿または原稿台32上に置かれた原稿を読み取って画像データを生成するもので、イメージセンサ33を備えている。
【0077】
図8は、画像読取部のイメージセンサ33を拡大して示す断面図である。イメージセンサ33は、主走査方向(
図7,8では奥行き方向)に配置された1次元のセンサであり、筐体34を有する。筐体34は基板35上に配置され、筐体34の原稿台32側の上面には、原稿の方向に光を照射する光源(発光素子)36,37を主走査方向に延びるように設けている。
【0078】
光源36,37は、例えばLED、蛍光管、キセノン管、冷陰極管又は有機EL等を挙げることができる。筐体34上部の光源36と37の間には、レンズアレイ10が支持され、筐体34の底部にある基板35には、CCDやCMOSなどで構成されるセンサ38が実装されている。
【0079】
光源36,37は、原稿台32上の原稿の画像読み取り位置を照射し、画像読み取り位置で反射した光は、レンズアレイ10に入射する。レンズアレイ10は、正立等倍レンズとして機能し、レンズアレイ10に入射した光は、レンズアレイ10の出射面から出射され、センサ38上に結像する。結像した光は、センサ38によって電気信号に変換され、電気信号は、基板35のメモリ部(図示せず)に転送される。
【0080】
プリンタ部40は、画像形成装置100の中央部に設けられており、例えばイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像形成部41Y,41M,41C,41Kと、これら画像形成部に対応する走査ヘッド51Y、51M、51C、51Kを有する露光装置50を備えている。画像形成部41Y,41M,41C,41Kは、中間転写ベルト42の下側に、上流から下流側に沿って並列に配置している。
【0081】
図9は、画像形成部41Y,41M,41C,41Kのうち、画像形成部41Kを拡大して示す構成図である。なお、以下の説明において各画像形成部41Y,41M,41C,41Kは同じ構成であるため、画像形成部41Kを代表に説明する。
【0082】
図9に示すように、画像形成部41Kは、像担持体である感光体ドラム43Kを有する。感光体ドラム43Kの周囲には、回転方向tに沿って帯電チャージャ44K、現像器45K,1次転写ローラ46K、クリーナ47K、ブレード48K等を配置している。感光体ドラム43Kの露光位置には、走査ヘッド51Kから光を照射し、感光体ドラム43K上に静電潜像を形成する。
【0083】
帯電チャージャ44Kは、感光体ドラム43Kの表面を一様に全面帯電する。現像器45Kは、現像バイアスが印加される現像ローラによりブラックのトナー及びキャリアを含む二成分現像剤を感光体ドラム43Kに供給する。クリーナ47Kは、ブレード48Kを用いて感光体ドラム43K表面の残留トナーを除去する。
【0084】
次に露光装置50の走査ヘッド51Kの構成を説明する。走査ヘッド51Kは、感光体ドラム43Kと対向する。感光体ドラム43Kは、予め設定した回転速度で回転し、表面に電荷を蓄えることができ、走査ヘッド51Kからの光を感光体ドラム43Kに照射して露光し、感光体ドラム43Kの表面に静電潜像を形成する。
【0085】
走査ヘッド51Kは、レンズアレイユニット10Kを有し、レンズアレイユニット10Kは保持部材52Kに支持されている。また保持部材52Kの底部には支持体53Kを有し、支持体53Kには、LED等の光源である発光素子54Kを配置している。発光素子54Kは主走査方向に直線状に等間隔で設けている。
【0086】
また、支持体53Kには発光素子54Kの発光を制御するドライバICを含む基板(図示せず)を配置している。ドライブICは制御部を構成し、画像データに基づいて走査ヘッド51Kの制御信号を発生し、制御信号に従って所定の光量で発光素子54Kを発光させる。発光素子54Kから出射した光線は、レンズアレイユニット10Kに入射し、レンズアレイユニット10Kを通過して感光体ドラム43K上に結像し、像が感光体ドラム43K上に形成される。また走査ヘッド51Kの上部(出射側)にはカバーガラス55Kを取り付けている。
【0087】
図7に示すように、画像形成部41Y,41M,41C,41Kの上部には、現像器45Y,45M,45C,45Kにトナーを供給するトナーカートリッジ49を設けている。トナーカートリッジ49は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のトナーカートリッジ49Y,49M,49C,49Kを含む。
【0088】
中間転写ベルト42は、循環的に移動する。中間転写ベルト42は、駆動ローラ61及び従動ローラ62に張架される。また中間転写ベルト42は感光体ドラム43Y,43M,43C,43Kに対向して接触している。中間転写ベルト42の感光体ドラム43Kに対向する位置には、1次転写ローラ46Kにより1次転写電圧が印加され、感光体ドラム43K上のトナー像を中間転写ベルト42に1次転写する。
【0089】
中間転写ベルト42を張架する駆動ローラ61には、2次転写ローラ64を対向して配置している。駆動ローラ61と2次転写ローラ64間を用紙Sが通過する際に、2次転写ローラ64により2次転写電圧が用紙Sに印加される。そして中間転写ベルト42上のトナー像を用紙Sに2次転写する。中間転写ベルト42の従動ローラ62付近には、ベルトクリーナ65を設けている。
【0090】
給紙部70は、各種サイズの用紙を収容する複数の給紙カセット71を有する。給紙カセット71から2次転写ローラ64に至る間には、給紙カセット71内から取り出した用紙Sを搬送する搬送ローラ72を設けている。さらに2次転写ローラ64の下流には定着器66を設けている。
【0091】
また定着器66の下流には搬送ローラ73を設けている。搬送ローラ73は用紙Sを排紙トレイ74に排出する。さらに、定着器66の下流には、反転搬送路75を設けている。反転搬送路75は、用紙Sを反転させて2次転写ローラ64の方向に導くもので、両面印刷を行う際に使用する。
【0092】
以上説明した実施形態によれば、短時間に遮光膜の形成が可能であり、かつ精密な遮光膜特性を有するための反射率特性を制御することが可能な遮光性インクを提供することができる。またこの遮光性インクにより形成された遮光膜を有するレンズアレイ及び画像形成装置を提供することができる。
【0093】
尚、本発明のいくつかの実施形態を述べたが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。