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特開2015-191527作業支援システム、作業支援端末、作業支援方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-191527(P2015-191527A)
(43)【公開日】2015年11月2日
(54)【発明の名称】作業支援システム、作業支援端末、作業支援方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/16 20120101AFI20151006BHJP
   G06K 17/00 20060101ALI20151006BHJP
【FI】
   G06Q50/16 102
   G06K17/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-69428(P2014-69428)
(22)【出願日】2014年3月28日
(71)【出願人】
【識別番号】000108085
【氏名又は名称】セコム株式会社
(72)【発明者】
【氏名】宮本 伸朗
(72)【発明者】
【氏名】沙魚川 久史
【テーマコード(参考)】
5B058
5L049
【Fターム(参考)】
5B058CA15
5B058KA40
5B058YA20
5L049CC29
(57)【要約】
【課題】 作業の進捗と品質を客観的に確認可能できる作業支援システムを提供する。
【解決手段】 作業員に携帯される作業支援端末と、前記作業支援端末と通信する管理装置を備えた作業支援システムであって、前記作業支援端末は、現在の作業エリアを検出する作業エリア検出部と、振動の検出に基づき作業員の現在行動量を検出する行動量検出部と、前記現在の作業エリアにおいて検出される前記現在行動量を記憶する記憶部とを備え、前記管理装置は、前記作業支援端末から前記現在の作業エリアと前記現在行動量を受信する通信部と、予め前記作業エリアにおける基準行動量を記憶する記憶部と、前記作業支援端末が前記現在行動量を検出した作業エリアに対応する前記基準行動量と前記現在行動量とを比較する行動量比較部と、前記行動量比較部による比較の結果が所定範囲を外れているか否かを判定する判定部とを備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の作業エリアで作業する作業員に携帯される作業支援端末と、前記作業支援端末と通信する管理装置を備えた作業支援システムであって、
前記作業支援端末は、
現在の作業エリアを検出する作業エリア検出部と、
振動を検出する手段であって該振動の検出に基づき作業員の現在行動量を検出する行動量検出部と、
前記現在の作業エリアにおいて検出される前記現在行動量を記憶する記憶部と、を備え、
前記管理装置は、
前記作業支援端末から前記現在の作業エリアと前記現在行動量を受信する通信部と、
予め前記作業エリアにおける基準行動量を記憶する記憶部と、
前記作業支援端末が前記現在行動量を検出した作業エリアに対応する前記基準行動量と前記現在行動量とを比較する行動量比較部と、
前記行動量比較部による比較の結果が所定範囲を外れているか否かを判定する判定部と、
を備えていることを特徴とした作業支援システム。
【請求項2】
さらに、
前記行動量検出部により検出される前記現在行動量を監視して、単位時間当たりの前記現在行動量がしきい値に満たない状態が所定時間継続すると作業の滞留を判定する滞留判定部を備える請求項1に記載の作業支援システム。
【請求項3】
前記行動量比較部によって比較される前記現在行動量と前記基準行動量は、
前記作業エリアごとに把握される全行動量に係る情報と、前記作業エリアごとに把握される単位時間当りの行動量に係る情報と、前記作業エリアの作業を開始してから任意の作業エリアに至るまでに把握される全行動量に係る情報と、前記作業エリアの作業を開始してから任意の作業エリアに至るまでに把握される単位時間当りの行動量に係る情報と、からなる群から選択された一の情報に係るものである請求項1または2に記載の作業支援システム。
【請求項4】
前記作業支援端末において、
前記記憶部は、前記作業エリアごとに設けられた標識装置と作業エリアとを対応させて予め記憶し、
前記作業エリア検出部は、作業エリアごとに設けられた標識装置を認識する手段であって、該認識した標識装置に基づき前記現在の作業エリアを検出し、
前記作業終了検出部は、標識装置の認識を当該標識装置に対応する作業エリアの作業終了の入力として受け付ける請求項1から3のいずれかに記載の作業支援システム。
【請求項5】
複数の作業エリアで作業する作業員に携帯される作業支援端末であって、
現在の作業エリアを検出する作業エリア検出部と、
振動を検出する手段であって該振動の検出に基づき作業員の現在行動量を検出する行動量検出部と、
予め前記作業エリアにおける基準行動量を記憶するとともに、前記現在の作業エリアにおいて検出される前記現在行動量を記憶する記憶部と、
作業終了の入力を受け付ける作業終了検出部と、
前記作業終了の入力があると、前記現在の作業エリアに対応する前記基準行動量と前記現在行動量とを比較する行動量比較部と、
前記行動量比較部による比較の結果が所定範囲を外れているか否かを判定する判定部と、
を備えていることを特徴とした作業支援端末。
【請求項6】
複数の作業エリアで作業する作業員を支援する作業支援方法であって、
予め前記作業エリアにおける基準行動量を記憶するステップと、
現在の作業エリアを検出するステップと、
振動の検出に基づき作業員の現在行動量を検出するステップと、
前記現在の作業エリアにおいて検出される前記現在行動量を記憶するステップと、
作業終了の入力を受け付けると、前記現在の作業エリアに対応する前記基準行動量と前記現在行動量とを比較するステップと、
前記基準行動量と前記現在行動量の比較の結果が所定範囲を外れているか否かを判定するステップと、
を有することを特徴とした作業支援方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の作業エリアを作業員が巡回しながら作業を行う業務において、作業員の作業負担あるいは管理負担を軽減する作業支援システム、作業支援端末、作業支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ビル管理等の業務では、会社の敷地内やビル内部等を対象施設として外部の清掃会社や清掃員に施設内の定期清掃を依頼することがある。このような場合、清掃員は、対象施設で清掃を行う清掃エリア(作業エリア)を所定の順序で定期的あるいは不定期に巡回し、各清掃エリア内の清掃を実施する。係る清掃業務においては、清掃員は予め施設内の清掃すべき箇所とその内容を覚える必要があり、その記憶に従って清掃を行わなければならない。
【0003】
上述した清掃業務では、外部の清掃員が清掃位置を熟知している必要があり、清掃員の負担が少なくない。これは、清掃業務だけに限らず、設備機器などの保守点検業務でも同様である。保守点検の分野では、こうした課題について以下に示すように作業員の負担を軽減するための発明も提案されている。
【0004】
特許文献1には、設備の点検保守を行なう作業員が所持し、その作業を支援することにより設備の点検保守を確実に行うことができる携帯端末装置の発明が開示されている。この携帯端末装置は、各設備に対して与えられた設備IDの各々と、設備の点検順序を示す点検順序情報が登録された点検スケジュール管理用の制御装置と、各種情報を表示するディスプレイと、設備に貼付された無線タグから出た設備IDを受信するインタフェース装置とを備えている。そして、制御装置は、インタフェース装置が設備IDを受け付けた際に、前述の点検順序情報をもとに、現時点で入力されるべき設備IDを点検スケジュールから抽出し、抽出した設備IDと、インタフェース装置が受け付けた設備IDとを比較して、その結果をディスプレイに表示する。この装置によれば、点検スケジュール上の設備の識別情報と、現場で取得する設備の識別情報との一致、不一致が表示手段に表示されるため、これから点検をはじめようとする設備が目的とする設備なのか否かがはっきりし、
作業員に無用な心配を抱かせるようなことがないとされている。
【0005】
特許文献2には、携帯入出力装置を用いることにより、作業員の熟練度に依存することなく、効率よくかつ確実に設備の点検を行える設備管理支援システムの発明が開示されている。このシステムのデータ管理装置の記憶手段には、巡回順序を含む設備点検情報を記憶させる。このデータ管理装置から通信インターフェイス装置を介して携帯入出力装置へ設備点検情報を転送すると、携帯入出力装置の画面上では「次ポイント」がタッチされる毎に、設備点検情報に含まれている巡回順序に基づいて、巡回対象が順次表示されて行く。点検が終了する毎にこの操作を行うことにより、次の巡回先が画面上で指し示され、データ管理装置で決められた巡回順序通りに設備の点検を進めて行くことが可能となる。この携帯入出力装置を用いれば、作業員の熟練度に依存することなく、効率よくかつ確実に設備の点検を行うことができるようになるものとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−222543号公報
【特許文献2】特開2001−159916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の清掃業務では、先に述べたように、対象施設の清掃エリア、清掃箇所などについて清掃員が事前に熟知しておく必要があり、清掃員に対する個人的な負担が重く、特に新人の清掃員にとっては不安を感じながらの実施とならざるを得ないのが通常である。また、清掃業務を管理する清掃会社などにとっても、確実に清掃できたか把握するのが難しいといった問題があった。
【0008】
特許文献1、2に示したような装置は、構成の簡素な電子的なデバイスにより、このような各所を巡回しつつ作業を行うような場合に負担を軽減するものであり、これによって作業案内がわかりやすくなり、新人の作業員であっても漏れなく作業できるようなアシストが可能となる可能性はある。しかし、特許文献1、2に記載の装置は作業のアシスト以外の点においては、必ずしも満足な結果を得ることが難しいという問題がある。なぜなら、清掃業務など、顧客の目の届かないところで作業を行うような業務においては、その作業業務が正しく行われたことを客観的に証明することが必要だからである。また、清掃業務を管理する清掃会社などにとっても、遠隔の対象施設で確実に清掃できたか把握可能とすることが求められる。
【0009】
清掃業務など、顧客や管理者の目の届かないところで作業を行うような業務における係る要望に応えるためには、作業員(清掃員)による作業の進捗を客観的に確認可能として、業務のサービス品質にムラが生じているか否かを、作業員自身あるいは作業員を管理する側から客観的に把握することが必要であると考えられる。例えば、作業員を管理する側では、作業員が手を抜いていないか、必要程度の作業品質が担保されているか把握する必要がある。
【0010】
本発明は、以上説明した従来の清掃業務など作業員による作業の課題を解決するためになされたものであり、作業員による業務の品質を確認することができる作業支援端末、そのシステムおよび方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために本発明による作業支援システムは、複数の作業エリアで作業する作業員に携帯される作業支援端末と、前記作業支援端末と通信する管理装置を備えた作業支援システムであって、前記作業支援端末は、現在の作業エリアを検出する作業エリア検出部と、振動を検出する手段であって該振動の検出に基づき作業員の現在行動量を検出する行動量検出部と、前記現在の作業エリアにおいて検出される前記現在行動量を記憶する記憶部と、を備え、前記管理装置は、前記作業支援端末から前記現在の作業エリアと前記現在行動量を受信する通信部と、予め前記作業エリアにおける基準行動量を記憶する記憶部と、前記作業支援端末が前記現在行動量を検出した作業エリアに対応する前記基準行動量と前記現在行動量とを比較する行動量比較部と、前記行動量比較部による比較の結果が所定範囲を外れているか否かを判定する判定部と、を備えていることを特徴としている。
【0012】
また、本発明による作業支援システムは、さらに、前記行動量検出部により検出される前記現在行動量を監視して、単位時間当たりの前記現在行動量がしきい値に満たない状態が所定時間継続すると作業の滞留を判定する滞留判定部を備えるようにしてもよい。
【0013】
さらに、本発明による作業支援システムは、前記行動量比較部によって比較される前記現在行動量と前記基準行動量は、前記作業エリアごとに把握される全行動量に係る情報と、前記作業エリアごとに把握される単位時間当りの行動量に係る情報と、前記作業エリアの作業を開始してから任意の作業エリアに至るまでに把握される全行動量に係る情報と、前記作業エリアの作業を開始してから任意の作業エリアに至るまでに把握される単位時間当りの行動量に係る情報と、からなる群から選択された一の情報に係るものとしてもよい。
【0014】
また、本発明による作業支援システムは、前記作業支援端末において、前記記憶部は、前記作業エリアごとに設けられた標識装置と作業エリアとを対応させて予め記憶し、前記作業エリア検出部は、作業エリアごとに設けられた標識装置を認識する手段であって、該認識した標識装置に基づき前記現在の作業エリアを検出し、前記作業終了検出部は、標識装置の認識を当該標識装置に対応する作業エリアの作業終了の入力として受け付けるようにしてもよい。
【0015】
また、上記の目的を達成するために本発明による作業支援端末は、複数の作業エリアで作業する作業員に携帯される作業支援端末であって、現在の作業エリアを検出する作業エリア検出部と、振動を検出する手段であって該振動の検出に基づき作業員の現在行動量を検出する行動量検出部と、予め前記作業エリアにおける基準行動量を記憶するとともに、前記現在の作業エリアにおいて検出される前記現在行動量を記憶する記憶部と、作業終了の入力を受け付ける作業終了検出部と、前記作業終了の入力があると、前記現在の作業エリアに対応する前記基準行動量と前記現在行動量とを比較する行動量比較部と、前記行動量比較部による比較の結果が所定範囲を外れているか否かを判定する判定部と、を備えることを特徴としている。
【0016】
さらに、上記の目的を達成するために本発明による作業支援方法は、複数の作業エリアで作業する作業員を支援する作業支援方法であって、予め前記作業エリアにおける基準行動量を記憶するステップと、現在の作業エリアを検出するステップと、振動の検出に基づき作業員の現在行動量を検出するステップと、前記現在の作業エリアにおいて検出される前記現在行動量を記憶するステップと、作業終了の入力を受け付けると、前記現在の作業エリアに対応する前記基準行動量と前記現在行動量とを比較するステップと、前記基準行動量と前記現在行動量の比較の結果が所定範囲を外れているか否かを判定するステップと、を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、作業エリアにおける作業員の行動量を検出して、これが基準値から外れているか否かを判定することができる。これにより、作業員による作業がどのように進捗しているかを客観的に確認可能とすることができ、作業員による業務の推測することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態における建物内の清掃エリアを示す図。
図2】本実施形態における建物外の清掃エリアを示す図。
図3】本実施形態における作業支援システムの構成を示すブロック図。
図4】本実施形態における携帯端末の表示・入力手段と、その表示例を示す図。
図5】本実施形態における携帯端末と管理装置における動作順序を示すシーケンス。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1図5を参照して本実施形態の作業支援システム(以下、単にシステムとも称する)について説明する。
【0020】
まず本システムが対象とする作業及び本システムの概要について図1及び図2を参照して説明する。
図1は、作業の一例として清掃業務を例示し、清掃の対象施設となる建物T内に設定された清掃エリアを示している。この清掃エリアは、図中一点鎖線で区分した各領域に記号A〜Dを付して示したように、点検エリアと呼ばれる複数の区画に分けられている。各点検エリアA〜Dでは、図中記号ア〜チで示すように作業員となる清掃員Pが点検して清掃すべき点検項目が定められている。図中破線の矢印で示すように、清掃員Pは、所定の順序で各点検エリアを巡回し、各点検エリアA〜D内では所定の順序で各点検項目ア〜チを点検していく。
【0021】
図2は、清掃業務の対象となる建物Tの外に設定された清掃エリアを示している。詳細は図示しないが、この清掃エリアも複数の点検エリアに分けられており、各点検エリアごとに複数の点検項目が定められている。図中破線の矢印で示すように、清掃員Pは、清掃作業の開始時に、清掃エリアを訪問して所定の順序で各点検エリアを巡回し、各点検エリア内において定められた点検項目を順に点検して清掃作業を行う。この清掃エリア、あるいは清掃エリアに含まれる点検エリアが、本発明の作業エリアに対応している。
【0022】
例えば、図1に示した建物T内の清掃エリアの例では、点検エリアAでは、点検項目アは窓、点検項目イは床や天井などの室内空間、点検項目ウは窓、点検項目エはコピー機である。点検エリアBでは、点検項目オは窓、点検項目カは床や天井などの室内空間である。点検エリアCでは、点検項目キは扉、点検項目クはキャビネット、点検項目ケは窓、点検項目コはテーブル、点検項目サは窓、点検項目シは床や天井などの室内空間、点検項目スは窓である。点検エリアDでは、点検項目セは扉、点検項目ソは床や天井などの室内空間、点検項目タは窓、点検項目チは灰皿である。
【0023】
なお、建物T内及び建物T外のいずれについても、清掃エリア内における点検エリアの区分や、各点検エリア内での点検項目は、予め清掃業務を管理する清掃会社と対象施設となる建物の管理者とが契約などにより定めるものであって、外観上識別できるようになっているわけではない。
【0024】
図1中には示していないが、図1に示す清掃エリアの各点検エリアA〜Dには、各点検エリアごとに、点検エリアを示す識別標識である標識装置1がそれぞれ配置されている。また、清掃員Pは作業支援端末としての携帯端末2を所持しており、清掃エリアにおいて所定の順序で点検エリアを巡回して清掃を行う。清掃員Pは、各点検エリアA〜Dにおいて携帯端末2で標識装置1を認識することにより、現在清掃を行う各点検エリアA〜Dを識別し、この点検エリアA〜Dの点検項目を携帯端末2に表示させて点検を行う。また、図1には示していないが、清掃エリアとは異なる離れた位置に清掃員Pの作業を管理する管理センターがあり、そこには管理装置3が設置されている。管理装置3は管理員によって運用されており、清掃業務中は適宜清掃員Pの携帯端末2と通信を行い、点検結果を保存し、また各点検エリアA〜Dを巡回する清掃員Pの進行ペースあるいは作業に伴う行動量が標準的であるか否かを客観的な手法で常に監視し、清掃員Pによる清掃業務が正しく行なわれたことを客観的に保証する作業等を行なう。
【0025】
次に、以上概要を説明した本システムの詳細について、本システムのブロック図である図3及び携帯端末2の表示・入力部11の画面を示す図4を参照して説明する。
図3に示すように、清掃エリアを構成する各点検エリアA,B…には、それぞれ標識装置1が設けられている。標識装置1は、具体的にはNFCタグのような識別タグによって構成されており、各点検エリアに設けられた標識装置1であることを示す識別情報がそれぞれ記憶されていて、後述する携帯端末2の読取部6によって近接的に読み取ることにより当該標識装置1がいずれの点検エリアに設けられたものであるかを知ることができるようになっている。標識装置1は、壁面に貼付けられたり壁紙の裏側等に埋め込まれて設置される。
【0026】
標識装置1としては、少なくとも清掃エリアにおいて清掃員Pが最初に読み取る標識装置1(清掃エリアの始点標識装置)と、清掃エリアにおいて最後に通過する位置に設けられた標識装置1(清掃エリアの終点標識装置)とは、携帯端末2を所持する清掃員Pが意識的に携帯端末2を標識装置1に近接させるよう、非接触通信による読み取り可能距離が数cm程度となるようパッシブ方式によるRFタグとすることが好ましい。これらは清掃エリアの清掃開始と清掃エリアの清掃終了を示すものであり、清掃員Pが清掃中に近傍を通過したときに意図せず読み取ってしまわないようにする必要がある。一方で、清掃エリアの始点標識装置と清掃エリアの終点標識装置以外のその他の標識装置1については、清掃中に近傍を通過したときに読み取れるよう、非接触通信による読み取り可能距離が数mとなるような例えばBluetooth(登録商標)などによるアクティブ方式によるRFタグを採用してよく、また、始点標識装置および終点標識装置と同様にパッシブ方式によるRFタグとしてもよい。
【0027】
なお、ここで標識装置1とは、必ずしもNFCタグのように機械的又は電子的な内部構造を有するデバイスとの意味ではなく、要するに点検エリアの識別を行なう媒体となるものであればよく、より簡素な構成として、例えば各種バーコード類を用いることもできる。その場合、バーコードを携帯端末2の読取部6にて光学的に読み取るために、NFCタグとは異なり当該バーコードは各点検エリアにおいて視認可能な状態で設置する必要がある。
【0028】
また、図3に示すように、清掃員Pが所持する携帯端末2は、マイクロコンピュータ等によって構成される制御部5を備えており、以下に説明するような機能を備えた携帯端末用プログラムを制御部5に読み込むことによって本システム用の携帯端末2とすることができる。かかる携帯端末2としては、ハード及びソフト共に専用に開発した装置を用意してもよいが、例えば必要な機能を備えたスマートフォンのような携帯端末に、必要な機能を備えた携帯端末用アプリケーションを搭載して利用することもできる。
【0029】
図3に示すように、携帯端末2は、前述した標識装置1を読み取って現在の作業エリアを検出する作業エリア検出部として、制御部5によって制御される読取部6を備えている。読取部6は、例えばNFCタグとしての標識装置1と近接通信により情報を読み取るタグリーダとして構成される。また標識装置1がバーコードなどである場合には、読取部6はカメラ等でバーコードを認識する撮像手段として構成される。清掃業務中、清掃員Pが携帯端末2を標識装置1に近接させれば、読取部6は標識装置1の識別情報を読み取ることができる。
【0030】
また、図3に示すように、携帯端末2は、当該携帯端末2を携帯して清掃エリア内を進行する清掃員Pの行動量を検出するための行動量検出部7を備えている。本実施形態において、行動量検出部7は携帯端末2に生じた振動数から行動量を検出する。清掃作業は、清掃員が身体を使って各所を掃除する作業あり、作業の進展に応じて振動が計測され得る。すなわち本実施形態では、清掃エリア内を進行する清掃員Pの清掃作業の状況を把握するために、清掃などの作業行動あるいは歩行移動が滞留なく正常であるかを客観的に把握することを目的としており、そのための指標として、清掃エリア内における清掃員Pの振動をカウントしてこれを作業の行動量として検出し、後述する基準値と比較することとしたものである。このため、本実施形態の行動量検出部7は、加速度センサを内蔵しており、これによって検出した清掃員Pの加速度の変化をソフトウエアによって処理し、その処理結果から加速度の増減の繰り返し数をカウントして清掃員Pの振動数を計数する。もちろんこれは一例であり、振動カウントの原理を限定するものではない。
【0031】
そして、制御部5は、この行動量検出部7が検出した清掃員Pの行動量を時間的要素に基づいて適宜演算処理することにより、本システムにおいて制御に使用される現在行動量を得ている。例えば、現在行動量としては、点検エリア内で計測された行動量の積算に係る情報(点検エリア内の全行動量)でもよいし、点検エリアごとに把握される行動量を点検エリアの作業に要した時間で除して得た単位時間当りの行動量に係る情報でもよい。この場合、具体的には、各点検エリアの点検を開始してから終了するまでの点検に要した時間で点検エリア内の点検に要した全行動量を除して1分当りの平均行動量を算出し、後に、基準行動量である1分当りの基準値と比較して所定以上の差があれば作業が不適切として判定するようにしてよい。
また、清掃エリアの点検を開始してから清掃エリア内の任意の点検エリアに至るまでに累積的にカウントされた行動量に係る情報でもよいし、清掃エリアの点検を開始してから清掃エリア内の任意の点検エリアに至るまでに累積的にカウントされた行動量をそれまでの点検に要した時間で除して得た単位時間当りの行動量に係る情報であってもよい。この場合、具体的には、清掃エリアの点検を開始してから任意の時点までの時間で、そこまでの点検に要した全行動量を除して1分当りの平均行動量を算出し、後に、基準行動量である基準値と比較して所定以上の差があれば作業が不適切として判定するようにしてよい。現在行動量としていずれを採用するも任意であるが、いずれにしても清掃員Pが清掃エリアを移動して任意の点検エリアの標識装置1を携帯端末2で読み取ったとき、その読取時である認識時刻における行動量として現在行動量が取得される。また、標識装置1を読み取ったときに取得された現在行動量は管理センターの管理装置3に送信され、直前の点検エリアにおける作業が適切であったかの比較に利用される。
【0032】
また、携帯端末2は、行動量検出部7が検出する現在の行動量を監視するために、制御部5によって制御される滞留判定部14を備えている。これは、清掃員Pが清掃作業中に行動量が少ない場合、清掃作業の品質を担保する上で問題となる可能性(例えば、手を抜いていたり清掃エリアにある客先の情報を不要に見ているなど)があり、これを検出しようとするものである。このために、滞留判定部14は、行動量検出部7が検出する現在の行動量が身体が動いていることを判定するための所定閾値に満たない場合に作業の滞留を判定する。具体的には、本実施形態において滞留判定部14は、行動量検出部7が検出する現在の行動量を単位時間(例えば1分)ごとに滞留を判定するための所定閾値と比較し、所定閾値に満たない場合に、滞留予備状態と判定する。そして、滞留判定部14は、滞留予備状態が作業の滞留を判定するための所定時間(例えば5分)継続すると、作業の滞留と判定する。作業の滞留と判定されると、管理センターの管理装置3に滞留信号が送信される。
【0033】
図3に示すように、携帯端末2は、制御部5によって制御される記憶部8を備えている。この記憶部8には、清掃エリアに含まれる点検エリアとその標識装置1の情報、および、清掃業務に際して各点検エリアで行なうべき点検項目等についてのデータを記憶する。携帯端末2は、予め管理装置3から清掃エリアに含まれる点検エリアと点検項目に関するデータをダウンロードしてもよく、また、移動体通信網を介して、標識装置1を読み取ったことを管理装置3に送信し、その都度対応する点検エリアの点検項目のデータを管理装置3から受信するようにしてもよい。また、制御部5は、清掃業務中、読取部6が標識装置1を認識して取得した識別情報と、この標識装置1を認識した認識時刻と、その認識時刻において行動量検出部7がカウントしている行動量に基づく現在行動量を、経過情報として互いに対応付けて記憶部8に記憶させる。また、作業の滞留と判定された場合にはその情報も判定時刻の情報とともに記憶する。なお、時刻の認識は制御部5内のクロックによって行なうことができる。
【0034】
また、図3に示すように、携帯端末2は、制御部5によって制御される通信部9を備えている。通信部9は、管理センターに設置された管理装置3と、任意の手法によって通信し、必要な情報の伝達を行なうことができる。本システムでは、各点検エリアを作業する清掃員Pの進行ペースあるいは作業に伴う行動量が適正なものであるかを確認するため、制御部5の制御により、記憶部8に対応付けて記憶した識別情報と現在行動量を管理装置3に送ることができる。通信部9より管理装置3に送信される信号には、携帯端末2を識別する情報あるいは携帯端末2を所持する清掃員Pを識別する情報が付加される。携帯端末を識別する情報は例えば電話番号やシリアル番号であり、清掃員Pを識別する情報は例えば社員番号などである。なお、通信部9の通信手法は問わない。電波によって直接的に通信してもよいし、各種電気通信回線10を用いて通信してもよい。
【0035】
図3に示すように、携帯端末2は、点検を行なおうとする点検エリアの点検項目を表示する点検項目表示手段かつ点検項目について点検結果情報を入力する点検情報入力手段として、表示・入力部11を備えている。点検結果情報(以下、単に点検情報とも称する)は、点検エリアの点検項目についての点検の状態に関する備考などを清掃員Pの入力により設定した情報である。本実施形態において、この表示・入力部11は、タッチスイッチ機能を有する表示装置であり、制御部5によって制御される。清掃業務中、ある点検エリアで清掃員Pが携帯端末2を標識装置1にかざし、携帯端末2の読取部6が標識装置1を認識すると、当該点検エリアに対応して記憶部8に予め記憶された点検項目のデータを制御部5が読み出し、図4(a)に例示するように点検項目を点検画面11aに表示する。清掃員Pは、この表示を見て、漏れの無いように点検して清掃を行う。また、点検結果に問題があった場合等、必要に応じて図4(b)に例示するコメント画面11bを表示し、未点検の理由等の入力を行う。これによって清掃員Pの清掃業務をアシストする。
【0036】
図4(a)に示すように、点検画面11aに表示される点検項目は、点検ポイント12aと、その点検ポイントに対応したコメントボタン12bから構成されている。清掃員Pは、各項目ごとの点検ポイントで、清掃を行う。例えば、点検ポイント「南東窓」については、拭き掃除を実施する。順次点検する中で、何らかの特記事項を記録すべきものについては、コメントボタン12bを押して図4(b)に示すコメント画面11bを表示させる。コメント画面11bでは、チェック欄12cへのチェック又は自由入力欄12dへの記載によって、点検画面11aの対応する点検項目について未点検の理由などを記録することができる。コメント画面11bの記入後、確定ボタン12eを押せば点検画面11aに戻る。コメントが記録された場合には、点検画面11aの対応する点検項目のコメントボタン12bがコメント記録前とは異なる色彩で表示されている(例えば図4(a)最下段参照)。
【0037】
図3に示すように、携帯端末2は、作業終了の入力を受け付ける作業終了検出部として、点検エリアの清掃が終了したか否かを判定する終了判定部13を備えている。終了判定部13は、清掃員Pが標識装置1に携帯端末2をかざして標識装置1の識別情報を読み出したときに、これを直前の点検エリアの作業終了として受け付けて、この標識装置1が設置された位置直前の点検エリアの清掃が終了したと判定する。このとき、携帯端末2が取得している現在行動量が管理センターの管理装置3に送信され、直前の点検エリアにおける作業が適切であったかの比較に利用される。
【0038】
また、終了判定部13は、清掃員Pが清掃エリア内の所定の標識装置1に携帯端末2をかざし、この所定の標識装置1の識別情報を読み出したときに、これらの操作がトリガーとなって終了判定を実行する。所定の標識装置1は、清掃エリアにおいて最後に通過する位置に設けられた標識装置1(清掃エリアの終点標識装置)であって、例えば清掃エリアの出入り口に設けられている。終了判定においては、記憶部8に経過情報として記憶した清掃業務中に認識した標識装置1の情報に、当該清掃エリアに含まれる全ての点検エリアの標識装置1が含まれるか判定する。清掃エリアの全ての標識装置1を読み取っていれば、当該清掃エリアの清掃終了と判定する。他方、清掃業務中に認識していない(読取部6にて読み取っていない)標識装置1があれば、点検漏れがあることを表示・入力部11に表示する。判定結果と点検結果情報、および清掃エリア内で計測された行動量の情報が管理センターの管理装置3に送信されて保存、管理される。
【0039】
なお、終了判定部13は、標識装置1の識別情報を読み出したときに直前の点検エリアあるいは清掃エリアの終了を判定する例に限定されず、携帯端末2の表示・入力部11から所定の入力を受け付けて直前の点検エリアあるいは清掃エリアの終了を判定するようにしてもよい。
【0040】
図3に示す管理装置3は、点検エリアA,B…から離れた場所に設置された管理センター内に配置されている。管理装置3は、マイクロコンピュータ等によって構成される制御部15を備えており、以下に説明するような機能を備えた管理装置用プログラムを制御部15に読み込むことによって本システム用の管理装置3とすることができる。かかる管理装置3としては、パソコンに必要な機能を備えた管理装置用アプリケーションを搭載して利用することもできる。
【0041】
図3に示すように、管理装置3は、清掃員Pの情報および清掃員Pが所持する携帯端末2の情報を対応付けて記憶するとともに、各対象施設の清掃エリアに含まれる点検エリアとその標識装置1の情報、および、清掃業務に際して各点検エリアで行なうべき点検項目等についてのデータを予め記憶した記憶部16を備えている。
また、記憶部16には、各標識装置1に対応する基準行動量が予め記憶されている。標識装置1に対応する基準行動量とは、標識装置1が設置された位置までの点検エリアおいて通常通りに清掃した場合に計測される行動量であって、点検エリアにおける作業が適切であったかを判定するための行動量の水準値である。基準行動量は、清掃員Pの性別や年齢、体格といったそれぞれ異なる要因を考慮しつつ点検エリアの清掃作業に要する標準的な行動量として予め設定される。
【0042】
ここで、この基準行動量は、前述した現在行動量と同様、標識装置1が設置された位置に対し直前の点検エリア内で計測された行動量の積算に係る情報(点検エリア内の全行動量)でもよいし、単位時間当りの行動量に係る情報でもよいし、清掃エリアの点検を開始してから清掃エリア内の任意の点検エリアに至るまでに累積的にカウントされた行動量の情報でもよいし、清掃エリアの点検を開始してから当該点検エリアまでの単位時間当りの行動量の情報でもよい。また、各点検エリアに共通した行動量の基準値であってもよく、各点検エリアに共通した単位時間当りの行動量でもよい。もちろん、基準行動量と現在行動量は同じ規則のものを採用する必要がある。図1に示した建物T内の清掃エリアの例では、点検エリアA〜Dの各々において、各所に設置した標識装置1ごとにその直前の点検エリア内で計測される行動量の積算値(点検エリア内の全行動量)を基準行動量として記憶部16に記憶しておく。
【0043】
図3に示すように、管理装置3は、制御部15によって制御される通信部17を備えている。通信部17は、清掃エリアを巡回する清掃員Pが携帯している携帯端末2と電気通信回線10又は任意の手段によって通信し、必要な情報の伝達を行なうことができる。本システムでは、各点検エリアにおける清掃員Pの行動量が適切か否かを客観的に確認するため、制御部15の制御により、携帯端末2が認識した標識装置1の識別情報と現在行動量を携帯端末2から通信により取得することができる。また、携帯端末2にて作業の滞留と判定されると、携帯端末2から滞留信号を受信する。これらの携帯端末2から取得した情報は、記憶部16に保存、管理され、また図示しないモニタなど表示手段に出力されて管理員による業務管理の情報把握に利用される。さらに、清掃エリアの清掃が終了したときに点検結果のデータを携帯端末2から通信により取得して保存、管理し、必要に応じて表示出力することもできる。
【0044】
また、図3に示すように、管理装置3は、制御部15によって制御され、携帯端末2から取得した現在行動量と、記憶部16の基準行動量とを比較する行動量比較部18を備えている。制御部15は、携帯端末2から取得した識別情報から当該標識装置1を特定し、特定した当該標識装置1に対応する基準行動量を記憶部16から読み出し、行動量比較部18において携帯端末2から取得した現在行動量と読み出した基準行動量とを比較する。
【0045】
図3に示すように、管理装置3は、制御部15によって制御される行動量判定部19を備えている。行動量判定部19は、行動量比較部18による比較の結果が所定範囲を外れている場合、すなわち所定範囲を超えたり、下回っている場合には、当該点検エリア内における清掃員Pの清掃業務が不適切であると判定する。具体的には、現在行動量が、基準行動量に対する所定の許容範囲(基準行動量±一定量)の範囲にあるか否かを判定する。例えば、現在行動量が基準行動量を一定量下回っている場合には、清掃行動が想定より少ないことが推測され得る。また、現在行動量が基準行動量を一定量超えている場合には、清掃エリア内で不審な行動を取っていることが推測され得る。この判定結果は、管理装置3の図示しない表示装置に表示されて管理員の注意を喚起する。また、このとき、通信部17、電気通信回線10を介して携帯端末2に判定結果を送信し、携帯端末2の表示・入力部11に判定結果を表示して清掃員Pの注意を促すようにしてもよい。
【0046】
次に、本システムの動作例について、本システムの動作シーケンス例を示す図5を参照して説明する。
図5に示すように、携帯端末2側の清掃業務手順においては、まず清掃業務の開始にあたり、携帯端末2に全点検エリアの点検項目に関するデータを記憶させる(S1)。そのデータ記憶の手段は、管理センターの管理装置3からのダウンロードでもよいし、その他の管理用サーバ等からのダウンロードでもよく、さらに点検項目に関するデータを記憶した記憶媒体を携帯端末2に接続して行なってもよい。
【0047】
図5に示すように、清掃員Pは、清掃エリアにおいて最初に読み取る標識装置1(清掃エリアの始点標識装置)を携帯端末2で読み取って、清掃エリアの巡回清掃を開始する(S2)。このとき、清掃エリアにおいて最初の標識装置1を読み取ると、携帯端末2から管理センターの管理装置3に対して清掃開始を通知する清掃開始信号が送信される。管理装置では清掃開始が記憶され(S3)、遠隔で清掃業務が開始したことを把握することができる。清掃員Pは、最初の点検エリア(図1の例では点検エリアA)において携帯端末2を標識装置1にかざし、その識別情報を読み取る(S4)。また、ここで読み取った最初の点検エリアの標識装置1の識別情報と、行動量検出部7が計測を開始する行動量の初期値と、読み取り時の時刻である認識時刻は関連づけて記憶部16に記憶される(S5)。
【0048】
そして、携帯端末2は、行動量検出部7により現在行動量の検出を開始する(S6)。本実施形態では、一例として、各点検エリアごとに点検エリア内の全行動量を積算して計測する例について説明する。すなわち、この最初の点検エリアの標識装置1を読み取ると行動量が計測開始され、次の標識装置1を読み取って、当該最初の点検エリアが終了すると、この点検エリアにおける現在行動量として取得される。本実施形態の行動量検出部7は、加速度センサによる加速度の増減繰り返し数を振動数としてカウントしてこれを現在行動量として検出する。行動量検出部7をこのような振動計(例えば万歩計(登録商標))として構成した場合には、この最初の点検エリアの標識装置1読み取り時点で計測されている行動量が初期値となり、当該点検エリアの点検が終了したときに計測されている行動量と当該初期値との差分によって得られた当該点検エリア内の清掃に伴う行動量(すなわち最初の点検エリアにおける作業の程度)が現在行動量として取得されることとなる。
【0049】
このように、携帯端末2が標識装置1を認識すると、携帯端末2の記憶部16に記憶させておいた点検項目のデータが読み出され、図4(a)に例示するように点検項目が点検画面11aに表示される。点検員Pは、この表示を見て、漏れの無いように点検を行い清掃を実施して、必要に応じて図4(b)に例示するコメント画面で必要なコメントなど点検結果情報を入力する。
【0050】
ここで、この最初の点検エリアの清掃中において、行動量検出部7が検出する現在の行動量を単位時間(例えば1分)ごとに滞留を判定するための所定閾値と比較し、所定閾値に満たない状態(滞留予備状態)が所定時間(例えば5分)継続すると、滞留判定部14が作業の滞留と判定する(S7)。作業の滞留と判定されると、管理センターの管理装置3に滞留信号が送信され、管理装置3にてこの情報が記憶されるとともに異常情報として表示あるいは鳴動出力される(S8)。なお、作業の滞留と判定されると、携帯端末2においても図示しないブザーあるいは表意・入力部11により報知出力されてよい。
【0051】
最初の点検エリアの清掃作業が終了すると、清掃員Pは次の点検エリアにおいて携帯端末2を標識装置1にかざし、その識別情報を読み取る(S9)。これにより、終了判定部13は、直前の点検エリアである最初の点検エリアの清掃が終了したと判定する(S10)。このとき、携帯端末2では最初の点検エリアにおける清掃員の行動量として現在行動量、および、清掃した最初の点検エリアを識別する情報を、管理センターの管理装置3に送信する(S11)。直前の点検エリアにおける作業が適切であったかの比較に利用される。
【0052】
管理装置3では、携帯端末2から送信された現在行動量と点検エリアを識別する情報を、記憶部16に格納、保存する(S12)。管理装置3の制御部15は、携帯端末2から取得した識別情報より点検エリアの標識装置1を特定し、特定した標識装置1の基準行動量を記憶部16から読み出す(S13)。そして、制御部15は、行動量比較部18を制御することにより、この点検エリアの清掃に伴う作業の程度である現在行動量と読み出した基準行動量を比較し、行動量判定部19で判定を行なう。このとき両者の差が所定の許容範囲を超えていれば当該点検エリアにおける清掃業務の進行ペースが不適切であると判定する。判定結果は、管理装置3の表示画面に表示されて管理員の注意を喚起する。なお、このとき、携帯端末2に判定結果を送信され、携帯端末2にて清掃員Pに注意を促すようにしてもよい。
【0053】
また、携帯端末2では、読み取った新しい点検エリアの標識装置1の識別情報と、読み取ったときまで計測されていた行動量と、読み取り時の時刻である認識時刻が関連づけて記憶部16に記憶される(S15)。そして、この新しい点検エリアについて行動量検出部7により現在行動量の検出を開始する(S16)。
【0054】
次の点検エリアに進んで標識装置1の識別タグを読み取った後における携帯端末2での手順は、手順S5〜S10で説明した内容と同様である。清掃員Pはこのように携帯端末2を用いながら清掃エリアの清掃を進める。そして、携帯端末2が清掃エリアの最後を示す所定の標識装置1(清掃エリアの終点識別装置)を読み取ると(S17)、終了判定部13は清掃作業が終了したか否かを判定する(S18)。終了判定部13は清掃業務中に認識していない(読取部6にて読み取っていない)標識装置1があれば、点検漏れがあることを表示部に表示する。また、清掃エリアの全ての標識装置1を読み取っていれば、当該清掃エリアの清掃終了と判定する。判定結果と点検結果情報、および清掃エリア内で計測された行動量の情報が管理センターの管理装置3に送信されて保存、管理される(S19)。
【0055】
以上説明したように、本システムでは、清掃員Pによる清掃業務の作業の度合いを客観的に管理するようにした。すなわち、スマートフォン等の携帯端末2で識別タグを読んだときに、携帯端末2の現在行動量を計測して、各点検エリアにおける清掃員Pの清掃業務の作業行動の程度を清掃員Pの携帯端末2だけでなく、管理センターの管理装置3でもチェックできるようにした。
【0056】
このため、本システムによれば、各点検エリアにおける清掃員Pの清掃業務の作業度合いの適否を、清掃員Pだけでなく、管理装置3においても確認できる。すなわち、何らかの理由で清掃員Pの清掃中の行動量が少ないといったことを清掃員Pを管理する側から把握できる。このように清掃業務の品質を定量的に判断することにより、清掃員Pによる清掃業務が正しく行なわれたことを客観的に保証し、以て清掃業務の品質を客観的に証明することができるという効果が得られる。
【0057】
なお、本システムでは、清掃員Pが持つ携帯端末2から管理装置3が情報を取得し、管理センター側で清掃員Pの清掃業務の行動量の適否を判定していたが、これに限定されない。例えば、清掃員Pが持つ携帯端末2の側で清掃業務の行動量の適否を判定するようにしてもよい。以下、かかる変形例について説明する。
【0058】
この変形例において、管理装置3の行動量比較部18および行動量判定部19とこれらによる比較判定処理に用いる制御部15の制御プログラムを携帯端末2の構成要素として携帯端末2の制御部5にて制御するように構成し、管理装置3の記憶部16から清掃エリアの点検エリアと点検項目に関する情報を取得するときに各識別装置1に対応する基準行動量も取得するようにする。そして、図5に示した動作シーケンス例において、携帯端末2がS11の手続きの後に、S12からS14の手続きを実行するようにすればよい。携帯端末2によるS14の判定結果は、携帯端末2の表示・入力部11に出力され清掃員Pに注意を促すとともに、管理装置3に送信されて管理装置3にて記憶および表示されて管理員の注意を喚起する。
【0059】
この変形例によれば、清掃エリアの各点検エリアに識別タグ等の構成の簡単な標識装置1を設け、清掃員Pはスマートフォン等で構成できる携帯端末2を所持して点検エリアを清掃しながら巡回するだけで、各点検エリアにおいて適正な行動量で正しく清掃が行われたか否かを現場で確実に判別でき、アシストを受けて適正品質の清掃作業を確実に行なうことができる。
【0060】
また、本実施形態では、行動量判定部19は、行動量比較部18による比較の結果が所定範囲を外れている場合として、所定範囲を超えたり下回っている場合に、当該点検エリア内における清掃員Pの清掃業務が不適切であると判定する例について説明したが、これに限定されない。行動量判定部19は、行動量比較部18による比較の結果が所定範囲を外れている場合として、少なくとも、現在行動量が基準行動量を所定量下回っている場合、すなわち、基準行動量よりも一定以上少ない場合に、当該点検エリア内における清掃員Pの清掃業務が不適切であると判定してよい。これにより、清掃員の作業行動の度合いが想定される一定水準に達しているか否かが判定でき、清掃作業の品質を把握することが可能となる。
【0061】
さらに、本実施形態では、作業員による作業の一例として清掃員による清掃作業に本システムを用いて説明したが、本発明の適応範囲はこれに限定されない。設備機器などの保守点検業務や警備対象施設の警備巡回業務など、顧客や管理者の目の届かないところで作業を行うような業務において、作業員による作業の進捗を客観的に確認可能として、業務のサービス品質にムラが生じているか否かを、作業員自身あるいは作業員を管理する側から客観的に把握することが求められる種々の作業現場において適応することが可能である。
【符号の説明】
【0062】
P…清掃員
A〜F…点検エリア
ア〜チ…点検項目
1…標識装置(識別タグ)
2…携帯端末
3…管理装置
5…携帯端末の制御部
6…携帯端末の読取部
7…携帯端末の行動量検出部
8…携帯端末の記憶部
13…携帯端末の終了判定部
14…携帯端末の滞留判定部
15…管理装置の制御部
16…管理装置の記憶部
17…管理装置の通信部
18…管理装置の行動量比較部
19…管理装置の行動量判定部

図1
図2
図3
図4
図5