【解決手段】複数の作業エリアごとに設けられた標識装置1と、前記作業エリアで作業する作業員に携帯されて複数の標識装置1を認識する作業支援端末2と、作業支援端末2と通信する管理装置3を備えた作業支援システムであって、作業支援端末2は、現在位置情報を取得する位置取得部7と、標識装置1を認識すると、認識した標識装置1の識別情報と現在位置情報を対応付けて記憶する記憶部14と、を備える。管理装置3は、各標識装置1の位置を示す既定位置情報を予め記憶する記憶部16と、作業支援端末2から対応付けられた識別情報と現在位置情報とを取得し、識別情報が示す標識装置1の既定位置情報と当該現在位置情報を比較する。
複数の作業エリアごとに設けられた標識装置と、前記作業エリアで作業する作業員に携帯されて前記標識装置を認識する作業支援端末と、前記作業支援端末と通信する管理装置を備えた作業支援システムであって、
前記作業支援端末は、
現在位置情報を取得する位置取得部と、
前記標識装置を認識すると、認識した前記標識装置の識別情報と前記現在位置情報を対応付けて記憶する記憶部と、を備え、
前記管理装置は、
前記各標識装置の位置を示す既定位置情報を予め記憶する記憶部と、
前記作業支援端末から前記対応付けられた識別情報と現在位置情報とを取得し、前記識別情報が示す前記標識装置の既定位置情報と当該現在位置情報を比較する位置情報比較部と、
前記位置情報比較部による比較の結果が所定範囲を超えている場合に前記作業エリアで前記標識装置が設置されている位置が異常と判定する位置判定部と、
を備えていることを特徴とした作業支援システム。
前記位置判定部は、前記標識装置に応じて異なる値を前記所定範囲として用い、前記標識装置の既定位置情報と当該現在位置情報との比較結果が異常であるか否かを判定する請求項1または2に記載の作業支援システム。
【背景技術】
【0002】
ビル管理等の業務では、会社の敷地内やビル内部等を対象施設として外部の清掃会社や清掃員に施設内の定期清掃を依頼することがある。このような場合、清掃員は、対象施設で清掃を行う清掃エリア(作業エリア)を所定の順序で定期的あるいは不定期に巡回し、各清掃エリア内の清掃を実施する。係る清掃業務においては、清掃員は予め施設内の清掃すべき箇所とその内容を覚える必要があり、その記憶に従って清掃を行わなければならない。
【0003】
上述した清掃業務では、外部の清掃員が清掃位置を熟知している必要があり、清掃員の負担が少なくない。これは、清掃業務だけに限らず、設備機器などの保守点検業務でも同様である。保守点検の分野では、こうした課題について以下に示すように作業員の負担を軽減するための発明も提案されている。
【0004】
特許文献1には、設備の点検保守を行なう作業員が所持し、その作業を支援することにより設備の点検保守を確実に行うことができる携帯端末装置の発明が開示されている。この携帯端末装置は、各設備に対して与えられた設備IDの各々と、設備の点検順序を示す点検順序情報が登録された点検スケジュール管理用の制御装置と、各種情報を表示するディスプレイと、設備に貼付された無線タグから出た設備IDを受信するインタフェース装置とを備えている。そして、制御装置は、インタフェース装置が設備IDを受け付けた際に、前述の点検順序情報をもとに、現時点で入力されるべき設備IDを点検スケジュールから抽出し、抽出した設備IDと、インタフェース装置が受け付けた設備IDとを比較して、その結果をディスプレイに表示する。この装置によれば、点検スケジュール上の設備の識別情報と、現場で取得する設備の識別情報との一致、不一致が表示手段に表示されるため、これから点検をはじめようとする設備が目的とする設備なのか否かがはっきりし、
作業員に無用な心配を抱かせるようなことがないとされている。
【0005】
特許文献2には、携帯入出力装置を用いることにより、作業員の熟練度に依存することなく、効率よくかつ確実に設備の点検を行える設備管理支援システムの発明が開示されている。このシステムのデータ管理装置の記憶手段には、巡回順序を含む設備点検情報を記憶させる。このデータ管理装置から通信インターフェイス装置を介して携帯入出力装置へ設備点検情報を転送すると、携帯入出力装置の画面上では「次ポイント」がタッチされる毎に、設備点検情報に含まれている巡回順序に基づいて、巡回対象が順次表示されて行く。点検が終了する毎にこの操作を行うことにより、次の巡回先が画面上で指し示され、データ管理装置で決められた巡回順序通りに設備の点検を進めて行くことが可能となる。この携帯入出力装置を用いれば、作業員の熟練度に依存することなく、効率よくかつ確実に設備の点検を行うことができるようになるものとされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の清掃業務では、先に述べたように、対象施設の清掃エリア、清掃箇所などについて清掃員が事前に熟知しておく必要があり、清掃員に対する個人的な負担が重く、特に新人の清掃員にとっては不安を感じながらの実施とならざるを得ないのが通常である。また、清掃業務を管理する清掃会社などにとっても、確実に清掃できたか把握するのが難しいといった問題があった。
【0008】
特許文献1、2に示したような装置は、構成の簡素な電子的なデバイスにより、このような各所を巡回しつつ作業を行うような場合に負担を軽減するものであり、これによって作業案内がわかりやすくなり、新人の作業員であっても漏れなく作業できるようなアシストが可能となる可能性はある。しかし、特許文献1、2に記載の装置は作業のアシスト以外の点においては、必ずしも満足な結果を得ることが難しいという問題がある。なぜなら、清掃業務など、顧客の目の届かないところで作業を行うような業務においては、その作業業務が正しく行われたことを客観的に証明することが必要だからである。また、清掃業務を管理する清掃会社などにとっても、遠隔の対象施設で確実に清掃できたか把握可能とすることが求められる。
【0009】
清掃業務など、顧客や管理者の目の届かないところで作業を行うような業務における係る要望に応えるためには、作業員(清掃員)による作業の進捗を客観的に確認可能として、作業員が「いつ」「どこ」にいたか、作業員自身あるいは作業員を管理する側から客観的に把握することが必要であると考えられる。
【0010】
しかしながら、特許文献1の発明のように、設備に貼り付けて使用する無線タグを用いる場合、仮に悪戯や不正行為によってタグが剥がされ、正規の位置から他の位置に移動されてしまうと、正しく作業が行われたか否かは、少なくとも作業員を管理する側からは判別できないといった事態が生じ得る。作業員の作業が正しく行われたという品質を客観的に証明するためには、顧客との間で予め決められた作業マニュアルどおりの位置にタグが存在することを客観的な手法で担保しなければならない。
【0011】
本発明は、以上説明した従来の清掃業務など作業員による作業の課題を解決するためになされたものであり、作業員による作業を客観的に把握可能とするための作業支援端末、そのシステムおよび方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために本発明による作業支援システムは、複数の作業エリアごとに設けられた標識装置と、前記作業エリアで作業する作業員に携帯されて前記標識装置を認識する作業支援端末と、前記作業支援端末と通信する管理装置を備えた作業支援システムであって、前記作業支援端末は、現在位置情報を取得する位置取得部と、前記標識装置を認識すると、認識した前記標識装置の識別情報と前記現在位置情報を対応付けて記憶する記憶部と、を備え、前記管理装置は、前記各標識装置の位置を示す既定位置情報を予め記憶する記憶部と、前記作業支援端末から前記対応付けられた識別情報と現在位置情報とを取得し、前記識別情報が示す前記標識装置の既定位置情報と当該現在位置情報を比較する位置情報比較部と、前記位置情報比較部による比較の結果が所定範囲を超えている場合に前記作業エリアで前記標識装置が設置されている位置が異常と判定する位置判定部と、を備えていることを特徴としている。
【0013】
また、本発明による作業支援システムは、前記標識装置は、記憶された前記識別情報が近接的に読み取り可能とされた識別タグであり、前記作業支援端末は、前記標識装置の識別情報を近接的に読み取る読取部を備えてもよい。
【0014】
さらに、本発明による作業支援システムは、前記位置判定部は、前記標識装置に応じて異なる値を前記所定範囲として用い、前記標識装置の既定位置情報と当該現在位置情報との比較結果が異常であるか否かを判定するようにしてもよい。
【0015】
また、上記の目的を達成するために本発明による作業支援端末は、複数の作業エリアで作業する作業員に携帯され、前記複数の作業エリアごとに設けられた標識装置を認識可能な作業支援端末であって、前記標識装置を認識して識別情報を取得する読取部と、現在位置情報を取得する位置取得部と、前記各標識装置の位置を示す既定位置情報を予め記憶するとともに、前記読取部が前記標識装置を認識すると該認識した標識装置の識別情報と前記現在位置情報を対応付けて記憶する記憶部と、前記対応付けられた識別情報と現在位置情報とにおいて、前記識別情報が示す標識装置の前記既定位置情報と当該現在位置情報を比較する位置情報比較部と、前記位置情報比較部による比較の結果が所定範囲を超えている場合に前記作業エリアで前記標識装置が設置されている位置が異常と判定する位置判定部と、 を備えていることを特徴としている。
【0016】
さらに、上記の目的を達成するために本発明による作業支援方法は、複数の作業エリアごとに標識装置を設け、当該標識装置を認識可能な作業支援端末により作業エリアで作業する作業員を支援する作業支援方法であって、前記各標識装置の位置を示す既定位置情報を予め記憶するステップと、現在位置情報を取得するステップと、前記標識装置を認識すると該認識した標識装置の識別情報と前記現在位置情報を対応付けて記憶するステップと、前記対応付けられた識別情報と現在位置情報とにおいて、前記識別情報が示す標識装置の前記既定位置情報と当該現在位置情報を比較するステップと、前記比較の結果が所定範囲を超えている場合に前記作業エリアで前記標識装置が設置されている位置が異常と判定するステップと、を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、作業エリアに設置された標識装置が、既定位置にあるか否かをチェックして、標識装置の位置異常を判定できる。これによって、標識装置の位置、つまり作業を行った位置が既定どおりの位置であるか否か、すなわち悪戯や不正行為により標識装置が正規の位置から移動されていないことを客観的に確認でき、正しく作業が遂行されたことを保証することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1〜
図6を参照して本実施形態の作業支援システム(以下、単にシステムとも称する)について説明する。
【0020】
まず本システムが対象とする作業及び本システムの概要について
図1及び
図2を参照して説明する。
図1は、作業の一例として清掃業務を例示し、清掃の対象施設となる建物T内に設定された清掃エリアを示している。この清掃エリアは、図中一点鎖線で区分した各領域に記号A〜Dを付して示したように、点検エリアと呼ばれる複数の区画に分けられている。各点検エリアA〜Dでは、図中記号ア〜チで示すように作業員となる清掃員Pが点検して清掃すべき点検項目が定められている。図中破線の矢印で示すように、清掃員Pは、所定の順序で各点検エリアを巡回し、各点検エリアA〜D内では所定の順序で各点検項目ア〜チを点検していく。
【0021】
図2は、清掃業務の対象となる建物Tの外に設定された清掃エリアを示している。詳細は図示しないが、この清掃エリアも複数の点検エリアに分けられており、各点検エリアごとに複数の点検項目が定められている。図中破線の矢印で示すように、清掃員Pは、清掃作業の開始時に、清掃エリアを訪問して所定の順序で各点検エリアを巡回し、各点検エリア内において定められた点検項目を順に点検して清掃作業を行う。この清掃エリア、あるいは清掃エリアに含まれる点検エリアが、本発明の作業エリアに対応している。
【0022】
例えば、
図1に示した建物T内の清掃エリアの例では、点検エリアAでは、点検項目アは窓、点検項目イは床や天井などの室内空間、点検項目ウは窓、点検項目エはコピー機である。点検エリアBでは、点検項目オは窓、点検項目カは床や天井などの室内空間である。点検エリアCでは、点検項目キは扉、点検項目クはキャビネット、点検項目ケは窓、点検項目コはテーブル、点検項目サは窓、点検項目シは床や天井などの室内空間、点検項目スは窓である。点検エリアDでは、点検項目セは扉、点検項目ソは床や天井などの室内空間、点検項目タは窓、点検項目チは灰皿である。
【0023】
なお、建物T内及び建物T外のいずれについても、清掃エリア内における点検エリアの区分や、各点検エリア内での点検項目は、予め清掃業務を管理する清掃会社と対象施設となる建物の管理者とが契約などにより定めるものであって、外観上識別できるようになっているわけではない。
【0024】
図1中には示していないが、
図1に示す清掃エリアの各点検エリアA〜Dには、各点検エリアごとに、点検エリアを示す識別標識である標識装置1がそれぞれ配置されている。また、清掃員Pは作業支援端末としての携帯端末2を所持しており、清掃エリアにおいて所定の順序で点検エリアを巡回して清掃を行う。清掃員Pは、各点検エリアA〜Dにおいて携帯端末2で標識装置1を認識することにより、現在清掃を行う各点検エリアA〜Dを識別し、この点検エリアA〜Dの点検項目を携帯端末2に表示させて点検を行う。また、
図1には示していないが、清掃エリアとは異なる離れた位置に清掃員Pの作業を管理する管理センターがあり、そこには管理装置3が設置されている。管理装置3は管理員によって運用されており、清掃業務中は適宜清掃員Pの携帯端末2と通信を行い、点検結果を保存し、また各点検エリアA〜Dを巡回する清掃員Pの進行ペースが標準的であるか否かを客観的な手法で常に監視し、清掃員Pによる清掃業務が正しく行なわれたことを客観的に保証する作業等を行なう。
【0025】
次に、以上概要を説明した本システムの詳細について、本システムのブロック図である
図3及び携帯端末2の表示・入力部11の画面を示す
図4を参照して説明する。
図3に示すように、清掃エリアを構成する各点検エリアA,B…には、それぞれ標識装置1が設けられている。標識装置1は、具体的にはNFCタグのような識別タグによって構成されており、各点検エリアに設けられた標識装置1であることを示す識別情報がそれぞれ記憶されていて、後述する携帯端末2の読取部6によって近接的に読み取ることにより当該標識装置1がいずれの点検エリアに設けられたものであるかを知ることができるようになっている。標識装置1は、壁面に貼付けられたり壁紙の裏側等に埋め込まれて設置される。
【0026】
標識装置1としては、少なくとも清掃エリアにおいて清掃員Pが最初に読み取る標識装置1(清掃エリアの始点標識装置)と、清掃エリアにおいて最後に通過する位置に設けられた標識装置1(清掃エリアの終点標識装置)とは、携帯端末2を所持する清掃員Pが意識的に携帯端末2を標識装置1に近接させるよう、非接触通信による読み取り可能距離が数cm程度となるようパッシブ方式によるRFタグとすることが好ましい。これらは清掃エリアの清掃開始と清掃エリアの清掃終了を示すものであり、清掃員Pが清掃中に近傍を通過したときに意図せず読み取ってしまわないようにする必要がある。一方で、清掃エリアの始点標識装置と清掃エリアの終点標識装置以外のその他の標識装置1については、清掃中に近傍を通過したときに読み取れるよう、非接触通信による読み取り可能距離が数mとなるような例えばBluetooth(登録商標)などによるアクティブ方式によるRFタグを採用してよく、また、始点標識装置および終点標識装置と同様にパッシブ方式によるRFタグとしてもよい。
【0027】
なお、ここで標識装置1とは、必ずしもNFCタグのように機械的又は電子的な内部構造を有するデバイスとの意味ではなく、要するに点検エリアの識別を行なう媒体となるものであればよく、より簡素な構成として、例えば各種バーコード類を用いることもできる。その場合、バーコードを携帯端末2の読取部6にて光学的に読み取るために、NFCタグとは異なり当該バーコードは各点検エリアにおいて視認可能な状態で設置する必要がある。
【0028】
また、
図3に示すように、清掃員Pが所持する携帯端末2は、マイクロコンピュータ等によって構成される制御部5を備えており、以下に説明するような機能を備えた携帯端末用プログラムを制御部5に読み込むことによって本システム用の携帯端末2とすることができる。かかる携帯端末2としては、ハード及びソフト共に専用に開発した装置を用意してもよいが、例えば必要な機能を備えたスマートフォンのような携帯端末に、必要な機能を備えた携帯端末用アプリケーションを搭載して利用することもできる。
【0029】
図3に示すように、携帯端末2は、前述した標識装置1を読み取って現在の作業エリアを検出する作業エリア検出部として、制御部5によって制御される読取部6を備えている。読取部6は、例えばNFCタグとしての標識装置1と近接通信により情報を読み取るタグリーダとして構成される。また標識装置1がバーコードなどである場合には、読取部6はカメラ等でバーコードを認識する撮像手段として構成される。清掃業務中、清掃員Pが携帯端末2を標識装置1に近接させれば、読取部6は標識装置1の識別情報を読み取ることができる。
【0030】
また、
図3に示すように、携帯端末2は、当該携帯端末2の現在位置を示す現在位置情報を取得するため、制御部5によって制御される位置取得部7を備えている。位置取得部7の原理は問わない。位置取得部7は、例えばGPS、Wi−Fi、携帯電話基地局からの電波を利用して、携帯端末2の現在位置に関する現在位置情報を取得することができる。
【0031】
図3に示すように、携帯端末2は、制御部5によって制御される記憶部8を備えている。この記憶部8には、清掃エリアに含まれる点検エリアとその標識装置1の情報、および、清掃業務に際して各点検エリアで行なうべき点検項目等についてのデータを記憶する。携帯端末2は、予め管理装置3から清掃エリアに含まれる点検エリアと点検項目に関するデータをダウンロードしてもよく、また、移動体通信網を介して、標識装置1を読み取ったことを管理装置3に送信し、その都度対応する点検エリアの点検項目のデータを管理装置3から受信するようにしてもよい。
【0032】
また、携帯端末2は、制御部5によって制御される記憶処理部14を備えている。記憶処理部14は、清掃業務中、読取部6が標識装置1を認識して取得した識別情報と、この標識装置1を認識した認識時刻と、その認識時刻において位置取得部7が取得した現在位置情報を、位置管理情報として互いに対応付けて記憶部8に記憶させる。なお、時刻の認識は制御部5内のクロックによって行なうことができる。
【0033】
また、
図3に示すように、携帯端末2は、制御部5によって制御される通信部9を備えている。通信部9は、管理センターに設置された管理装置3と、任意の手法によって通信し、必要な情報の伝達を行なうことができる。本システムでは、各点検エリアを作業する清掃員Pの進行ペースあるいは標識装置の位置が適正であるかを確認するため、制御部5の制御により、記憶部8に対応付けて記憶した識別情報と現在位置情報を管理装置3に送ることができる。通信部9より管理装置3に送信される信号には、携帯端末2を識別する情報あるいは携帯端末2を所持する清掃員Pを識別する情報が付加される。携帯端末を識別する情報は例えば電話番号やシリアル番号であり、清掃員Pを識別する情報は例えば社員番号などである。なお、通信部9の通信手法は問わない。電波によって直接的に通信してもよいし、各種電気通信回線10を用いて通信してもよい。
【0034】
図3に示すように、携帯端末2は、点検を行なおうとする点検エリアの点検項目を表示する点検項目表示手段かつ点検項目について点検結果情報を入力する点検情報入力手段として、表示・入力部11を備えている。点検結果情報(以下、単に点検情報とも称する)は、点検エリアの点検項目についての点検の状態に関する備考などを清掃員Pの入力により設定した情報である。本実施形態において、この表示・入力部11は、タッチスイッチ機能を有する表示装置であり、制御部5によって制御される。清掃業務中、ある点検エリアで清掃員Pが携帯端末2を標識装置1にかざし、携帯端末2の読取部6が標識装置1を認識すると、当該点検エリアに対応して記憶部8に予め記憶された点検項目のデータを制御部5が読み出し、
図4(a)に例示するように点検項目を点検画面11aに表示する。清掃員Pは、この表示を見て、漏れの無いように点検して清掃を行う。また、点検結果に問題があった場合等、必要に応じて
図4(b)に例示するコメント画面11bを表示し、未点検の理由等の入力を行う。これによって清掃員Pの清掃業務をアシストする。
【0035】
図4(a)に示すように、点検画面11aに表示される点検項目は、点検ポイント12aと、その点検ポイントに対応したコメントボタン12bから構成されている。清掃員Pは、各項目ごとの点検ポイントで、清掃を行う。例えば、点検ポイント「南東窓」については、拭き掃除を実施する。順次点検する中で、何らかの特記事項を記録すべきものについては、コメントボタン12bを押して
図4(b)に示すコメント画面11bを表示させる。コメント画面11bでは、チェック欄12cへのチェック又は自由入力欄12dへの記載によって、点検画面11aの対応する点検項目について未点検の理由などを記録することができる。コメント画面11bの記入後、確定ボタン12eを押せば点検画面11aに戻る。コメントが記録された場合には、点検画面11aの対応する点検項目のコメントボタン12bがコメント記録前とは異なる色彩で表示されている(例えば
図4(a)最下段参照)。
【0036】
図3に示すように、携帯端末2は、作業終了の入力を受け付ける作業終了検出部として、点検エリアの清掃が終了したか否かを判定する終了判定部13を備えている。終了判定部13は、清掃員Pが標識装置1に携帯端末2をかざして標識装置1の識別情報を読み出したときに、これを直前の点検エリアの作業終了として受け付けて、この標識装置1が設置された位置直前の点検エリアの清掃が終了したと判定する。このとき、標識装置1の識別情報と現在位置情報が位置管理情報として記憶部8に記憶されるとともに、管理装置3に送信される。
【0037】
また、終了判定部13は、清掃員Pが清掃エリア内の所定の標識装置1に携帯端末2をかざし、この所定の標識装置1の識別情報を読み出したときに、これらの操作がトリガーとなって終了判定を実行する。所定の標識装置1は、清掃エリアにおいて最後に通過する位置に設けられた標識装置1(清掃エリアの終点標識装置)であって、例えば清掃エリアの出入り口に設けられている。終了判定においては、記憶部8に位置管理情報として記憶した清掃業務中に認識した標識装置1の情報に、当該清掃エリアに含まれる全ての点検エリアの標識装置1が含まれるか判定する。清掃エリアの全ての標識装置1を読み取っていれば、当該清掃エリアの清掃終了と判定する。他方、清掃業務中に認識していない(読取部6にて読み取っていない)標識装置1があれば、点検漏れがあることを表示・入力部11に表示する。判定結果と点検結果情報が管理センターの管理装置3に送信されて保存、管理される。
【0038】
なお、本実施形態において、位置管理情報は標識装置1を認識するたびに管理装置3に送信する例について説明しているが、これに限らず、清掃エリアの清掃終了と判定したときに、位置管理情報として清掃エリア内で記憶していた全ての標識装置1の識別情報とこれに対応させて記憶した現在位置情報とが管理センターの管理装置3に送信されるようにしてもよい。
また、終了判定部13は、標識装置1の識別情報を読み出したときに直前の点検エリアあるいは清掃エリアの終了を判定する例に限定されず、携帯端末2の表示・入力部11から所定の入力を受け付けて直前の点検エリアあるいは清掃エリアの終了を判定するようにしてもよい。
【0039】
図3に示す管理装置3は、点検エリアA,B…から離れた場所に設置された管理センター内に配置されている。管理装置3は、マイクロコンピュータ等によって構成される制御部15を備えており、以下に説明するような機能を備えた管理装置用プログラムを制御部15に読み込むことによって本システム用の管理装置3とすることができる。かかる管理装置3としては、パソコンに必要な機能を備えた管理装置用アプリケーションを搭載して利用することもできる。
【0040】
図3に示すように、管理装置3は、清掃員Pの情報および清掃員Pが所持する携帯端末2の情報を対応付けて記憶するとともに、各対象施設の清掃エリアに含まれる点検エリアとその標識装置1の情報、および、清掃業務に際して各点検エリアで行なうべき点検項目等についてのデータを予め記憶した記憶部16を備えている。
また、記憶部16には、各標識装置1の位置を示す既定位置情報が予め記憶されている。
図1に示した建物T内の清掃エリアの例では、点検エリアA〜Dの各々において、標識装置1を実際に設置した位置(既定位置)の位置情報を、既定位置情報として記憶部16に記憶しておく。
【0041】
また、
図3に示すように、管理装置3は、制御部15によって制御される通信部17を備えている。通信部17は、清掃エリアを巡回する清掃員Pが携帯している携帯端末2と電気通信回線10又は任意の手段によって通信し、必要な情報の伝達を行なうことができる。本システムでは、各点検エリアを示す標識装置1が正規の位置にあるかどうかを確認するため、制御部15の制御により、対応付けられた識別情報と現在位置情報を携帯端末2から通信により取得することができる。これらの携帯端末2から取得した情報は、記憶部16に保存、管理され、また図示しないモニタなど表示手段に出力されて管理員による業務管理の情報把握に利用される。また、清掃エリアの清掃が終了したときに点検結果のデータを携帯端末2から通信により取得して保存、管理し、必要に応じて表示出力することもできる。
【0042】
図3に示すように、管理装置3は、制御部15によって制御され、携帯端末2から取得した現在位置情報と、記憶部16の規定位置情報とを比較する位置情報比較部18を備えている。制御部15は、携帯端末2から取得した識別情報から当該標識装置1を特定し、特定した当該標識装置1の既定位置情報を記憶部16から読み出し、位置情報比較部18において携帯端末2から取得した現在位置情報と読み出した既定位置情報とを比較する。
【0043】
また、
図3に示すように、管理装置3は、制御部15によって制御される位置判定部19を備えている。位置判定部19は、位置情報比較部18による比較の結果が所定範囲を超えている場合に、標識装置1が設けられている位置が異常であると判定する。これはすなわち、標識装置1が既定の設置位置から移動されていることを意味しており、清掃員の作業が正規に実施されたことを保証できない可能性や作業時に間違いなく点検エリアに居たことを証明できない可能性を意味している。この判定結果は、管理装置3の図示しない表示装置に表示されて管理員の注意を喚起する。また、このとき、通信部17、電気通信回線10を介して携帯端末2に判定結果を送信し、携帯端末2の表示・入力部11に判定結果を表示して清掃員Pの注意を促すようにしてもよい。
【0044】
ここで、位置判定部19が、現在位置情報と既定位置情報との比較において異常であると判定する所定範囲は、標識装置1の既定位置から現在位置が離れていることを判定するための距離情報によるしきい値である。これは対象施設Tの点検エリアにおいて、携帯端末2の位置取得部7が測位できる精度や考慮すべき誤差範囲、および読取部6が標識装置1を読取可能な距離に応じて、標識装置1ごとに設定される。例えば、標識装置1として清掃エリアの始点標識装置と終点標識装置を読み取り可能距離が相対的に短い(数cm)パッシブ方式によるRFタグにより構成し、それ以外の標識装置1については読み取り可能距離が相対的に長い(数m)アクティブ方式によるRFタグにより構成した場合には、両者で異なるしきい値が設定される。この場合、清掃エリアにおいて清掃員Pが最初に読み取る始点標識装置と最後に読み取る終点標識装置については、現在位置情報と既定位置情報との比較において両位置が離れている(異常である)と判定するための所定範囲(しきい値)は相対的に小さく、その他の標識装置については現在位置情報と既定位置情報との比較において位両位置が離れている(異常である)と判定するための所定範囲(しきい値)が相対的に大きく設定される。
【0045】
次に、本システムの動作例について、本システムの動作シーケンス例を示す
図5および
図6を参照して説明する。
図5に示すように、携帯端末2側の清掃業務手順においては、まず清掃業務の開始にあたり、携帯端末2に全点検エリアの点検項目に関するデータを記憶させる(S1)。そのデータ記憶の手段は、管理センターの管理装置3からのダウンロードでもよいし、その他の管理用サーバ等からのダウンロードでもよく、さらに点検項目に関するデータを記憶した記憶媒体を携帯端末2に接続して行なってもよい。
【0046】
図5に示すように、清掃員Pは、清掃エリアにおいて最初に読み取る標識装置1(清掃エリアの始点標識装置)を携帯端末2で読み取って、清掃エリアの巡回清掃を開始する(S2)。このとき、清掃エリアにおいて最初の標識装置1を読み取ると、携帯端末2から管理センターの管理装置3に対して清掃開始を通知する清掃開始信号が送信される。管理装置では清掃開始が記憶され(S3)、遠隔で清掃業務が開始したことを把握することができる。また、携帯端末2は、最初の標識装置1を読み取ったときに、位置取得部7にて現在位置情報が取得されて(S4)、この現在位置情報と標識装置1の識別情報とが位置管理情報として対応付けられて記憶部8に記憶される(S5)。そして、対応付けられた現在位置情報と標識装置1の識別情報とが管理装置3に対して送信される(S6)。
【0047】
管理装置3では、携帯端末2から送信された現在位置情報と標識装置1の識別情報を、記憶部16に格納、保存する(S7)。管理装置3の制御部15は、携帯端末2から取得した識別情報より点検エリアの標識装置1を特定し、特定した標識装置1の既定位置情報を記憶部16から読み出す(S8)。そして、制御部15は、位置情報比較部18を制御することにより、この標識装置1を読み取ったときの現在位置情報と読み出した既定位置情報を比較し、位置判定部19で判定を行なう(S9)。このとき両者間の距離が所定範囲を超えていれば、標識装置1が設置されている位置が異常であると判定する。判定結果は、管理装置3の表示画面に表示されて管理員の注意を喚起する。なお、このとき、携帯端末2に判定結果を送信され、携帯端末2にて清掃員Pに注意を促すようにしてもよい。
【0048】
また、清掃員Pは、清掃エリアの始点標識装置を読み取った後に、最初の点検エリア(
図1の例では点検エリアA)において携帯端末2を標識装置1にかざし、その識別情報を読み取る(S10)。携帯端末2では、標識装置1を読み取ったときに、位置取得部7にて現在位置情報が取得されて(S11)、この現在位置情報と標識装置1の識別情報とが位置管理情報として対応付けられて記憶部8に記憶される(S12)。そして、対応付けられた現在位置情報と標識装置1の識別情報とが管理装置3に対して送信される(S13)。管理装置3では、これを受けて、S7からS9と同様にして標識装置1を読み取ったときの現在位置と既定位置とが比較判定される(S14からS16)。
【0049】
また、携帯端末2が点検エリアの標識装置1を認識すると、携帯端末2の記憶部16に記憶させておいた点検項目のデータが読み出され、
図4(a)に例示するように点検項目が点検画面11aに表示される。点検員Pは、この表示を見て、漏れの無いように点検を行い清掃を実施して、必要に応じて
図4(b)に例示するコメント画面で必要なコメントなど点検結果情報を入力する。最初の点検エリアの清掃作業が終了すると、清掃員Pは次の点検エリアにおいて携帯端末2を標識装置1にかざし、その識別情報を読み取る(S17)。これにより、終了判定部13は、直前の点検エリアである最初の点検エリアの清掃が終了したと判定する(S18)。
【0050】
次の点検エリアに進んで標識装置1の識別タグを読み取った後における携帯端末2での手順は、手順S11〜S16で説明した内容と同様である。このように、標識装置1の位置がチェックされるとともに、清掃員Pは携帯端末2を用いながら清掃エリアの清掃を進める。そして、
図6に示すように、携帯端末2が清掃エリアの最後を示す所定の標識装置1(清掃エリアの終点識別装置)を読み取ると(S19)、S4からS9と同様にしてこの標識装置1の位置の確認が行われる(S20からS25)。
また、携帯端末2では、終了判定部13にて清掃作業が終了したか否かが判定される(S26)。終了判定部13は清掃業務中に認識していない(読取部6にて読み取っていない)標識装置1があれば、点検漏れがあることを表示部に表示する。また、清掃エリアの全ての標識装置1を読み取っていれば、当該清掃エリアの清掃終了と判定する。判定結果と点検結果情報、および清掃エリア内で計測された行動量の情報が管理センターの管理装置3に送信されて保存、管理される(S27)。
【0051】
以上説明したように、本システムでは、清掃員Pによる清掃業務が正しく行われたことを客観的に管理するようにした。すなわち、スマートフォン等の携帯端末2で識別タグを読んだときに、携帯端末2の現在位置情報を記憶して、識別タグが設置されているべき既定位置と現在位置情報とを比較することで、間違いなく既定の清掃位置で清掃を行ったことを管理センターの管理装置3でもチェックできるようにした。このように清掃業務の記録に位置的な不正がないことを判断することにより、清掃員Pによる清掃業務が正しく行なわれたことを客観的に保証し、以て清掃業務の品質を客観的に証明することができるという効果が得られる。
【0052】
なお、本システムでは、清掃員Pが持つ携帯端末2から管理装置3が情報を取得し、管理センター側で標識装置1を読み取った携帯端末2の現在位置情報と既定位置情報とを比較していたが、これに限定されない。例えば、清掃員Pが持つ携帯端末2の側で、携帯端末2の現在位置情報と標識装置1の既定位置情報とを比較して異常か否かを判定するようにしてもよい。以下、かかる変形例について説明する。
【0053】
この変形例において、管理装置3の位置情報比較部18および位置情報判定部19とこれらによる比較判定処理に用いる制御部15の制御プログラムを携帯端末2の構成要素として携帯端末2の制御部5にて制御するように構成し、管理装置3の記憶部16から清掃エリアの点検エリアと点検項目に関する情報を取得するときに各識別装置1に対応する既定位置情報も取得するようにする。そして、
図5および
図6に示した動作シーケンス例において、携帯端末2がS6の手続きの後にS7からS9の手続きを実行し、また携帯端末2がS13の手続きの後にS14からS16の手続きを実行し、さらに携帯端末2がS22の手続きの後にS23からS25の手続きを実行するようにすればよい。携帯端末2によるS9、S16、S25の判定結果は、携帯端末2の表示・入力部11に出力され清掃員Pに注意を促すとともに、管理装置3に送信されて管理装置3にて記憶および表示されて管理員の注意を喚起する。
【0054】
この変形例によれば、清掃エリアの各点検エリアに識別タグ等の構成の簡単な標識装置1を設け、清掃員Pはスマートフォン等で構成できる携帯端末2を所持して点検エリアを清掃しながら巡回するだけで、各点検エリアにおいて悪戯や不正行為により識別タグが正規の位置から移動されていれば各点検エリアにおいて清掃員Pがその場でその事実を知ることができるので直ちに適正な対応をとることができる。
【0055】
なお、本実施形態では、作業員による作業の一例として清掃員による清掃作業に本システムを用いて説明したが、本発明の適応範囲はこれに限定されない。設備機器などの保守点検業務や警備対象施設の警備巡回業務など、顧客や管理者の目の届かないところで作業を行うような業務において、作業員による作業の進捗を客観的に確認可能として、業務のサービス品質にムラが生じているか否かを、作業員自身あるいは作業員を管理する側から客観的に把握することが求められる種々の作業現場において適応することが可能である。