活物質と請求項1に記載の電池電極用バインダーと水溶性増粘剤を含み、活物質の固形分100重量部に対して、水溶性増粘剤を0.05重量部以上、2重量部以下含有することを特徴とする電池電極用組成物。
高分子エマルションが、エチレン性不飽和カルボン酸単量体に由来する構造単位を持つ共役ジエン系共重合体エマルション、および/または、エチレン性不飽和カルボン酸単量体に由来する構造単位を持つアクリル系共重合体エマルションであることを特徴とする請求項2または3に記載の電池電極用組成物。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に本発明について詳しく説明する。
本発明の電池電極用バインダーは、高分子エマルションを含有し、該高分子エマルションは、粒子非結合酸量をS(meq/g)、粒子結合酸量をP(meq/g)とした場合、1.5≦P/S≦3を満たすことが必要である。P/Sが1.5未満であると、電池電極の結着力が低下する傾向にあり、3を超えると、電池電極用組成物の分散性に劣る傾向にある。好ましくは、1.8≦P/S≦2.8である。
【0009】
粒子非結合酸量S(meq/g)の値は特に限定されないが、0.03meq/g以上0.25meq/g以下であることが好ましい。粒子非結合酸量Sが0.03meq/g未満であると、電池電極用組成物の分散性に劣る傾向にあり、0.25meq/gを超えると電池電極の結着力が低下する傾向にある。
【0010】
粒子結合酸量P(meq/g)の値は特に限定されないが、粒子結合酸量Pが0.08meq/g未満であると電池電極の結着力に劣る傾向にあり、0.5meq/gを超えると電池電極用バインダーの粘度が高くなり取り扱いが困難となる傾向にある。
【0011】
なお、本発明では、高分子エマルション粒子に結合しているカルボン酸を粒子結合酸、共重合体ラテックス粒子に結合していないカルボン酸を粒子非結合酸とするものであるが、具体的には下記実施例に記載の滴定法により測定されるものである。
また、上記のP/Sの値は、共重合時の重合温度、重合速度、各単量体(特にエチレン性不飽和カルボン酸系単量体)の添加量や添加時期を調整することでコントロール可能である。具体的には、重合温度については高くすること、重合速度については速くすること、エチレン性不飽和カルボン酸系単量体の添加時期をより早くすることで、P/Sの値は大きくなる傾向にある。また、カルボン酸系重合体(例:ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸アンモニウム等)などの添加により、粒子非結合酸量Sを増やすことで調整することが可能である。
【0012】
本発明の電池電極用バインダーとして用いられる高分子エマルションの種類は特に限定されないが、スチレン・ブタジエン系共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン系共重合体、メタクリル酸メチル・ブタジエン系共重合体、ビニルピリジン・ブタジエン系共重合体などの共役ジエン系共重合体、アクリル系重合体、酢酸ビニル系重合体、エチレン・酢酸ビニル系共重合体、クロロプレン重合体、天然ゴムなどの水系分散体が上げられる。電池電極用組成物の分散性や電池電極の結着力の観点から、エチレン性不飽和カルボン酸単量体を共重合することが好ましく、中でもエチレン性不飽和カルボン酸単量体を共重合した共役ジエン系共重合体、アクリル系共重合体エマルションが好ましい。これらの内、1種、または2種以上を用いることができる。
【0013】
本発明にて使用されるエチレン性不飽和カルボン酸系単量体としては、エチレン性不飽和モノカルボン酸系単量体として、例えばアクリル酸、メタクリル酸など、エチレン性不飽和ジカルボン酸系単量体として、例えばイタコン酸、フマル酸、マレイン酸などが挙げられる。これらは1種単独で、あるいは2種以上を併用することも可能である。
これらのエチレン性不飽和カルボン酸系単量体は0.3〜7重量%(全単量体の合計は100重量%)の範囲で使用されることが好ましい。エチレン性不飽和カルボン酸系単量体が0.3重量%未満では共重合体の化学的安定性が劣る傾向にあり、好ましくない。一方、エチレン性不飽和カルボン酸系単量体が7重量%を越えると高分子エマルションの粘度が高くなり、取り扱いが困難となる傾向にあるので好ましくない。さらに好ましくは0.5〜5重量%である。
【0014】
共役ジエン系共重合体の場合、エチレン性不飽和カルボン酸単量体と脂肪族共役ジエン系単量体以外に、芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体、およびこれらと共重合可能なその他の単量体からなる群より選ばれる単量体を共重合したものであることが好ましい。
【0015】
脂肪族共役ジエン系単量体としては、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−クロル−1,3−ブタジエン、置換直鎖共役ペンタジエン類、置換および側鎖共役ヘキサジエン類などが挙げられ、1種または2種以上用いることができる。特に1,3−ブタジエンが好ましい。
脂肪族共役ジエン系単量体は、5〜85重量%(全単量体の合計は100重量%)であることが好ましく、さらに好ましくは、10〜70重量%である。5重量%未満であると、電池電極用バインダーとして機能せず電池電極の結着力が劣る傾向にあり、85重量%を超えると、共重合体ラテックスの重合安定性が劣り凝集物が増えるなど生産性が劣る傾向があり、好ましくない。
【0016】
芳香族ビニル系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、メチルα−メチルスチレン、ビニルトルエンおよびジビニルベンゼン等が挙げられ、1種または2種以上用いることができる。特にスチレンが好ましい。
芳香族ビニル系単量体は、10〜70重量%(全単量体の合計は100重量%)であることが好ましく、さらに好ましくは、15〜65重量%である。10重量%未満であると、共重合体の安定性に劣り、電池電極組成物作成時に凝集物が増加する傾向にあり、70重量%を超えると、電池電極用バインダーとして機能せず電池電極の結着力が劣る傾向があり、好ましくない。
【0017】
シアン化ビニル系単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロルアクリロニトリル、α−エチルアクリロニトリルなどが挙げられ、1種または2種以上用いることができる。特にアクリロニトリル、メタクリロニトリルが好ましい。
シアン化ビニル系単量体は、0〜45重量%(全単量体の合計は100重量%)であることが好ましく、さらに好ましくは、5〜40重量%である。40重量%を超えると、電池電極用バインダーとして機能せず電池電極の結着力が劣る傾向があり、好ましくない。
【0018】
不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体としては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルアクリレート、グリシジルメタクリレート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、ジメチルマレエート、ジエチルマレエート、ジメチルイタコネート、モノメチルフマレート、モノエチルフマレート、2−エチルヘキシルアクリレート等が挙げられ、1種または2種以上用いることができる。特にメチルメタクリレート、ブチルアクリレートが好ましい。
不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体は、0〜50重量%(全単量体の合計は100重量%)であることが好ましく、さらに好ましくは、2〜40重量%である。50重量%を超えると、電池電極用バインダーとして機能せず電池電極の結着力が劣る傾向があり、好ましくない。
【0019】
アクリル系共重合体の場合、エチレン性不飽和カルボン酸単量体と不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体、およびこれらと共重合可能なその他の単量体からなる群より選ばれる単量体を共重合したものであることが好ましい。
【0020】
不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体としては、先述の単量体が挙げられ、1種または2種以上用いることができる。特にメチルメタクリレート、ブチルアクリレートが好ましい。
不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体は、20〜95重量%(全単量体の合計は100重量%)であることが好ましく、さらに好ましくは、25〜90重量%である。この範囲とすることで、電池電極の結着力が良好となる傾向がある。
【0021】
これらと共重合可能なその他の単量体としては、例えば、先述の芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体、及びヒドロキシアルキル基含有不飽和単量体、不飽和カルボン酸アミド単量体、不飽和二重結合を2つ以上含有する多官能エチレン性不飽和単量体などが挙げられ、1種または2種以上用いることができる。
これらと共重合可能なその他の単量体は、0〜80重量%(全単量体の合計は100重量%)であることが好ましく、さらに好ましくは、5〜75重量%である。この範囲とすることで、電池電極の結着力が良好となる傾向がある。
【0022】
ヒドロキシアルキル基含有不飽和単量体としては、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ジ−(エチレングリコール)マレエート、ジ−(エチレングリコール)イタコネート、2−ヒドロキシエチルマレエート、ビス(2−ヒドロキシエチル)マレエート、2−ヒドロキシエチルメチルフマレートなどが挙げられ、1種または2種以上用いることができる。好ましくは、2−ヒドロキシエチルアクリレートが挙げられる。
【0023】
不飽和カルボン酸アミド単量体としては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミドなどが挙げられ、1種または2種以上用いることができる。好ましくは、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミドが挙げられる。
【0024】
不飽和二重結合を2つ以上含有する多官能エチレン性不飽和単量体としては、例えば、アリルメタクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、例えば、ジビニルベンゼンなどのジビニル化合物、などが挙げられ、1種または2種以上用いることができる。好ましくはアリルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジビニルベンゼンが挙げられる。
【0025】
本発明における高分子エマルションには、常用の乳化剤、重合開始剤、還元剤、酸化還元触媒、環内に不飽和結合を1つ有する環状の不飽和炭化水素以外の炭化水素系溶剤、電解質、重合促進剤、キレート剤等の重合助剤、また、その他の助剤として、必要により、例えば、老化防止剤、分散剤、増粘剤などを使用することができる。
【0026】
重合方法としては、特に制限されるものではなく、バッチ重合、セミバッチ重合、シード重合など公知の重合方法を用いることができる。また、各種成分の添加方法についても特に制限されるものではなく、一括添加方法、分割添加方法、連続添加方法、パワーフィード法などを用いることができる。これにより、単量体組成物が乳化重合され、得られた共重合体が水中で分散する水分散体(高分子エマルション)を得ることができる。得られた高分子エマルションの固形分は、例えば、35〜55重量%、好ましくは、40〜50重量%である。
【0027】
本発明における高分子エマルション固形分のトルエンに対する不溶分であるゲル含有量については、25〜95重量%であることが好ましい。25重量%未満では、電池電極の結着力、および電池電極用組成物の化学的安定性が劣る傾向にあり、、95重量%を超えると電池電極の結着力が低下する傾向にある。好ましくは30〜90重量%以上である。
【0028】
また、高分子エマルション粒子の数平均粒子径については特に制限はないが、好ましくは0.4μm以下である。より好ましくは、0.35μm以下であり、さらに好ましくは、0.05〜0.3μmである。
【0029】
本発明における高分子エマルションは、電池電極用バインダーとして使用されるものであり、電池電極用組成物中において、活物質の粒子同士及び、活物質と集電体との電池電極用バインダーとして作用するものである。
【0030】
本発明の電池電極用組成物は、本発明の電池電極用バインダーと、活物質とを含有する。
【0031】
正極活物質としては、特に限定されないが、非水電解液二次電池の場合、例えば、MnO
2、MoO
3、V
2O
5、V
6O
13、Fe
2O
3、Fe
3O
4などの遷移金属酸化物、LiCoO
2、LiMnO
2、LiNiO
2、Li
XCo
YSn
ZO
2などのリチウムを含む複合酸化物、LiFePO
4などのリチウムを含む複合金属酸化物、TiS
2、TiS
3、MoS
3、FeS
2などの遷移金属硫化物、CuF
2、NiF
2などの金属フッ化物が挙げられる。これらは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0032】
負極活物質としては、特に限定されないが、非水電解液二次電池の場合、例えば、フッ化カーボン、黒鉛、炭素繊維、樹脂焼成炭素、リニア・グラファイト・ハイブリット、コークス、熱分解気層成長炭素、フルフリルアルコール樹脂焼成炭素、メソカーボンマイクロビーズ、メソフェーズピッチ系炭素、黒鉛ウィスカー、擬似等方性炭素、天然素材の焼成体、およびこれらの粉砕物などの導電性炭素質材料、ポリアセン系有機半導体、ポリアセチレン、ポリ−p−フェニレンなどの導電性高分子、並びに、ケイ素、スズなどの金属単体、もしくは金属酸化物、もしくはその金属の合金を含む複合材料などが挙げられる。これらは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0033】
本発明の電池電極用組成物を配合する際、該高分子エマルションは、活物質100重量部に対して固形分で好ましくは0.1〜7重量部、さらに好ましくは0.3〜5重量部の割合で調製される。本発明の高分子エマルションの配合量が0.1重量部未満では、集電体などに対する良好な接着力が得られない傾向があり、7重量部を超えると電池として組み立てた際に過電圧が著しく上昇し電池特性に悪影響をおよぼす傾向があり、好ましくない。
【0034】
本発明の電池電極用組成物には、必要に応じて、さらに水溶性増粘剤などの各種添加剤が添加されていてもよい。例としてはカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロースなどのセルロース系増粘剤、およびその金属塩、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸(塩)、酸化スターチ、リン酸化スターチ、カゼインなどの水溶性増粘剤、ヘキサメタリン酸ソーダ、トリポリリン酸ソーダ、ピロリン酸ソーダ、ポリアクリル酸ソーダなどの分散剤、ラテックスの安定化剤としてのノニオン性、アニオン性界面活性剤などが挙げられる。その中でも、電池電極用組成物の分散安定性、電池電極の結着力の観点から水溶性増粘剤を添加することが好ましく、カルボキシメチルセルロース、およびその金属塩を添加することが特に好ましい。
【0035】
本発明の電池電極用組成物は、活物質の固形分100重量部に対して水溶性増粘剤を0.05重量部以上、2重量部以下含有することが好ましい。0.05重量部未満では電池電極用組成物の分散安定性が劣る傾向にあり、2重量部を越えると電池電極の結着力が低下する傾向にある。さらに好ましくは0.5重量部以上、1重量部以下である。
【0036】
本発明の電池電極用組成物は、集電体に塗布、乾燥して電池電極として用いるものである。また、電池電極用組成物を集電体に塗布する方法としてはリバースロール法、コンマバー法、グラビヤ法、エアーナイフ法など任意のコーターヘッドを用いることができ、乾燥方法としては放置乾燥、送風乾燥機、温風乾燥機、赤外線加熱機、遠赤外線加熱機などが使用できる。
【0037】
本発明の電池電極用組成物を用いて電池を製造する際に使用される集電体、セパレーター、非水系電解液、端子、絶縁体、電池容器等については既存のものが特に制限無く使用可能である。
【実施例】
【0038】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を変更しない限り、これらの実施例に限定されるものではない。なお実施例中、割合を示す部および%は重量基準によるものである。また実施例における諸物性の評価は次の方法に拠った。
【0039】
高分子エマルションの結合酸量、非結合酸量の測定
5重量%に希釈した高分子エマルションに0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液を50g、四塩化炭素を3g添加後、1時間攪拌した。その後、遠心分離装置にてラテックス粒子を遠心沈降させ上澄み層とラテックス粒子層を分離した。得られた二層をそれぞれ純水で希釈し、0.1Nの塩酸を過剰量添加した後、0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液で逆滴定し、得られた電気伝導度曲線から粒子結合酸量(P(meq/g))、および粒子非結合酸量(S(meq/g))をラテックス固形分1gあたりのミリ当量(meq)として求めた。
【0040】
共重合体ラテックスの数平均粒子径測定
透過型電子顕微鏡で撮影した粒子1000個について、画像解析装置を用いて面積円相当径を測定し、数平均粒子径を算出した。
【0041】
高分子エマルション固形分のゲル含有量の測定
室温雰囲気にて高分子エマルションフィルムを作成する。その後フィルムを約1g秤量し、これを400mlのトルエンに入れ48時間膨潤溶解させる。その後、これを300メッシュのステンレス金網で濾過し、金網に捕捉されたトルエン不溶部を乾燥後秤量し、この重量のはじめのフィルムの重量に占める割合をゲル含有量として重量%で算出した。
【0042】
高分子エマルション1の作製
耐圧性の重合反応機に、窒素雰囲気下で、表1の添加1に示す各単量体、t−ドデシルメルカプタン、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、純水を加えて65℃に昇温した後に、過硫酸カリウムを加えて重合を開始した。重合開始から8時間後に重合を停止し、アンモニア水溶液でpHを7に調整した。その後に、90℃にて水蒸気蒸留を15時間行い、未反応単量体および他の低沸点化合物を除去して、表1に示すP(粒子結合酸)、S(粒子非結合酸)、P/S、ゲル含有量、数平均粒子径の高分子エマルション1を得た。
【0043】
高分子エマルション2の作製
耐圧性の重合反応機に、窒素雰囲気下で、表1の添加1に示す各単量体、t−ドデシルメルカプタン、シクロヘキセン、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、純水を加えて75度に昇温した後に、過硫酸カリウムを加えて重合を開始した。重合開始から10時間後に重合を停止し、水酸化ナトリウム水溶液でpHを7に調整した。その後に、90℃にて水蒸気蒸留を15時間行い、未反応単量体および他の低沸点化合物を除去して、表1に示すP(粒子結合酸)、S(粒子非結合酸)、P/S、ゲル含有量、数平均粒子径の高分子エマルション2を得た。
【0044】
高分子エマルション3の作製
耐圧性の重合反応機に、窒素雰囲気下で、表1の添加1に示す各単量体、α−メチルスチレンダイマー、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、純水を加えて45度に昇温した後に、クメンハイドロパーオキサイド、L−アスコルビン酸を加えて重合を開始した。重合開始から12時間後に重合を停止し、水酸化リチウム水溶液でpHを7に調整した。その後に、90℃にて水蒸気蒸留を15時間行い、未反応単量体および他の低沸点化合物を除去して、表1に示すP(粒子結合酸)、S(粒子非結合酸)、P/S、ゲル含有量、数平均粒子径の高分子エマルション3を得た。
【0045】
高分子エマルション4の作製
耐圧性の重合反応機に、窒素雰囲気下で、表1の添加1に示す各単量体、t−ドデシルメルカプタン、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、純水を加えて60度に昇温した後に、過硫酸カリウムを加えて重合を開始した。重合開始から10時間後に表1の添加2に示す各単量体、t-ドデシルメルカプタン、純水を添加し、重合反応槽温度を70度に昇温し、重合を継続した。重合開始から13時間後に重合を停止し、アンモニア水溶液でpHを7に調整した。その後に、90℃にて水蒸気蒸留を15時間行い、未反応単量体および他の低沸点化合物を除去して、表1に示すP(粒子結合酸)、S(粒子非結合酸)、P/S、ゲル含有量、数平均粒子径の高分子エマルション4を得た。
【0046】
高分子エマルション5,11の作製
耐圧性の重合反応機に、窒素雰囲気下で、表1の添加1に示す各単量体、t−ドデシルメルカプタン、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、純水を加えて65度に昇温した後に、過硫酸カリウムを加えて重合を開始した。重合開始から8時間後に重合を停止し、アンモニア水溶液でpHを7に調整し、ポリアクリル酸ナトリウム(東亞合成株式会社製アロンT−50)0.5部を添加した。その後に、90℃にて水蒸気蒸留を15時間行い、未反応単量体および他の低沸点化合物を除去して、表1に示すP(粒子結合酸)、S(粒子非結合酸)、P/S、ゲル含有量、数平均粒子径の高分子エマルション5、および11を得た。
【0047】
高分子エマルション6の作製
耐圧性の重合反応機に、窒素雰囲気下で、表1の添加1に示す各単量体、t−ドデシルメルカプタン、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、純水を加えて35度に昇温した後に、クメンハイドロパーオキサイド、L−アスコルビン酸を加えて重合を開始した。重合開始から15時間後に重合を停止し、水酸化カリウム水溶液、およびアンモニア水溶液でpHを8.5に調整し、ポリアクリル酸ナトリウム(東亞合成株式会社製アロンT−50)0.5部を添加した。その後に、90℃にて水蒸気蒸留を15時間行い、未反応単量体および他の低沸点化合物を除去して、表1に示すP(粒子結合酸)、S(粒子非結合酸)、P/S、ゲル含有量、数平均粒子径の高分子エマルション6を得た。
【0048】
高分子エマルション7の作製
耐圧性の重合反応機に、窒素雰囲気下で、表1の添加1に示す各単量体、t−ドデシルメルカプタン、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、純水を加えて70度に昇温した後に、過硫酸カリウムを加えて重合を開始した。重合開始から7時間後に重合を停止し、水酸化リチウム水溶液でpHを7に調整した。その後に、90℃にて水蒸気蒸留を15時間行い、未反応単量体および他の低沸点化合物を除去して、表1に示すP(粒子結合酸)、S(粒子非結合酸)、P/S、ゲル含有量、数平均粒子径の高分子エマルション7を得た。
【0049】
高分子エマルション8の作製
耐圧性の重合反応機に、窒素雰囲気下で、表1の添加1に示す各単量体、t−ドデシルメルカプタン、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、純水を加えて60度に昇温した後に、過硫酸カリウムを加えて重合を開始した。重合開始から10時間後に表1の添加2に示す各単量体、t-ドデシルメルカプタン、純水を添加し、重合反応槽温度を70度に昇温し、重合を継続した。重合開始から13時間後に重合を停止し、アンモニア水溶液でpHを7に調整した。その後に、90℃にて水蒸気蒸留を15時間行い、未反応単量体および他の低沸点化合物を除去して、表1に示すP(粒子結合酸)、S(粒子非結合酸)、P/S、ゲル含有量、数平均粒子径の高分子エマルション8を得た。
【0050】
高分子エマルション9の作製
耐圧性の重合反応機に、窒素雰囲気下で、表1の添加1に示す各単量体、t−ドデシルメルカプタン、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、純水を加えて73度に昇温した後に、過硫酸カリウムを加えて重合を開始した。重合開始から8時間後に重合を停止し、水酸化ナトリウム水溶液でpHを7に調整した。その後に、90℃にて水蒸気蒸留を15時間行い、未反応単量体および他の低沸点化合物を除去して、表1に示すP(粒子結合酸)、S(粒子非結合酸)、P/S、ゲル含有量、数平均粒子径の高分子エマルション9を得た。
【0051】
高分子エマルション10の作製
耐圧性の重合反応機に、窒素雰囲気下で、表1の添加1に示す各単量体、t−ドデシルメルカプタン、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、純水を加えて60度に昇温した後に、過硫酸カリウムを加えて重合を開始した。重合開始から12時間後に重合を停止した。その後に、90℃にて水蒸気蒸留を15時間行い、未反応単量体および他の低沸点化合物を除去して、表1に示すP(粒子結合酸)、S(粒子非結合酸)、P/S、ゲル含有量、数平均粒子径の高分子エマルション10を得た。
【0052】
負極用組成物の作成
(実施例1)
負極活物質として平均粒子径が20μmの天然黒鉛を使用し、天然黒鉛100重量部に対して、増粘剤としてカルボキシメチルセルロースナトリウム(第一工業製薬株式会社製セロゲンEP)水溶液、電池電極用バインダーとして高分子エマルション1をそれぞれ固形分で表2に記載の量添加し、全固形分が40%となるように適量の水を加えて混練し、負極用組成物を調製した。
【0053】
(実施例2〜7、比較例1〜4)
電池電極用バインダーを高分子エマルション1から高分子エマルション2〜11へ変更した以外は、実施例1と同様の方法で負極用組成物を調整した。
【0054】
(実施例8〜11)
増粘剤の量を表2に記載の量へ変更したこと以外は、実施例1と同様に負極用組成物を調整した。
【0055】
電池電極用組成物の凝集物
上記のように得られた負極用組成物をワイヤーバー(#20)にてガラス板の上に塗工した。塗工中央部の10cm四方の正方形内の凝集物を目視で数え、下記のとおり評価した。結果を表2、表3に示す。
◎:10cm四方内の凝集物が0個
○:10cm四方内の凝集物が1〜3個
△:10cm四方内の凝集物が4〜10個
×:10cm四方内の凝集物が11個以上
【0056】
負極の作成
各々の負極用組成物を集電体となる厚さ20μmの銅箔に塗布し、130℃で5分間乾燥後、室温でロールプレスして、塗工層の厚みが100μmの負極を得た。
【0057】
結着力(180°はく離強度)の測定
上記の方法で得られた電極シートを7cm×2cmの短冊状に切り出し、集電体側に厚み1mmの鋼板を両面テープで接着し、塗工層側にセロハン粘着テープを貼り付け、引張試験機にて100mm/min.の速さで180°方向にはく離させる際の応力を測定し、下記のとおり評価した。結果を表2、表3に示す。
◎:300N/m以上
○:200N/m以上300N/m未満
△:100N/m以上200N/m未満
×:100N/m未満
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】
【表3】
【0061】
表1、2に示すとおり、本発明の電池電極用バインダーを用いることによって、分散性の良好な電池電極用組成物が得られ、さらには結着力に優れた電池電極が得られる。
【0062】
一方、表1、3に示すとおり、比較例1〜4は、P/Sが本願規定範囲外であるため、分散性の良好な電池電極用組成物および結着力に優れた電池電極は得られなかった。
【0063】
なお、上記発明は、本発明の例示の実施形態として提供したが、これは単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。当該技術分野の当業者によって明らかな本発明の変形例は、後記特許請求の範囲に含まれるものである。
活物質と請求項1に記載の電池電極用バインダーと水溶性増粘剤を含み、活物質の固形分100重量部に対して、水溶性増粘剤を0.05重量部以上、2重量部以下含有することを特徴とする電池電極用組成物。
高分子エマルションが、共役ジエン系共重合体エマルション、および/または、アクリル系共重合体エマルションであることを特徴とする請求項2または3に記載の電池電極用組成物。
本発明は、粒子非結合酸量をS(meq/g)、粒子結合酸量をP(meq/g)とした場合、1.5≦P/S≦3を満たす高分子エマルションを含有する電池電極用バインダー