【実施例】
【0030】
以下、実施例の回路構成体およびその製造方法について、図面を用いて説明する。なお、同一部材については同一の符号を用いて説明する。
【0031】
(実施例1)
実施例1の回路構成体について、
図1、
図2を用いて説明する。
図1、
図2に示すように、本例の回路構成体1は、複数本のバスバー2と、回路基板3と、粘着シート4と、電子部品5とを備えている。
【0032】
本例では、電子部品5は、具体的には、スイッチング素子である。スイッチング素子としては、具体的には、半導体スイッチング素子51と、機械式リレースイッチ52とが用いられる。また、本例では、バスバー2は、はんだ付けにより電子部品5と電気的に接続されて電力回路を構成する。回路基板3は、電子部品5を制御するための制御回路(不図示)を有しており、はんだ付けにより電子部品5と電気的に接続される。
【0033】
複数本のバスバー2は、表面にSn系めっきを有している。具体的には、複数本のバスバー2は、銅または銅合金からなる母材金属の表面にSnまたはSnめっきが施されることにより構成されている。本例では、複数本のバスバー2は、所定の金属板をプレス加工により打ち抜いて形成したバスバー構成板(不図示)が、適宜曲げ加工、分断されることにより構成されている。
【0034】
回路基板3は、基板厚み方向に貫通する基板側開口部30を複数有している。基板側開口部30は、基板側開口部30内に露出したバスバー2表面に電子部品5をはんだ付けするために、電子部品5の端子部が配置される部分である。なお、本例では、回路構成体1のバスバー2側の面をヒートシンク(不図示)に取り付けるため、回路基板3、粘着シート4、およびバスバー2を貫通するように複数のねじ穴31が形成されている。
【0035】
粘着シート4は、基板側開口部30と対応する位置にシート厚み方向に貫通するシート側開口部40を有している。粘着シート4は、シート両面が粘着成分による粘着性を有しており、バスバー2と回路基板3との間に介在して両者を貼り合わせている。
【0036】
粘着シート4の粘着成分は、アクリル系粘着成分またはシリコーン系粘着成分のいずれか一方である。そして、粘着成分がアクリル系粘着成分である場合は、粘着シートの厚みが100μm以下とされている。また、粘着成分がシリコーン系粘着成分である場合は、粘着シートの厚みが150μm以下とされている。
【0037】
電子部品5は、基板側開口部30とシート側開口部40とを通じてバスバー2表面にはんだ付けされている。本例では、具体的には、電子部品5としての機械式リレースイッチ52は、具体的には、バスバー接続端子521と、基板接続端子522とを有している。バスバー接続端子521は、基板側開口部30とシート側開口部40とを通じてバスバー2表面にはんだ付けされている。なお、基板接続端子522は、回路基板3のランド部32にはんだ付けされている。一方、電子部品5としての半導体スイッチング素子51は、ドレイン端子(不図示)、ソース端子(不図示)およびゲート端子(不図示)を有している。ドレイン端子およびソース端子は、基板側開口部30とシート側開口部40とを通じてバスバー2表面にはんだ付けされている。なお、ゲート端子は、回路基板3のランド部(不図示)にはんだ付けされている。
【0038】
(実施例2)
実施例2の回路構成体の製造方法について説明する。本例の回路構成体の製造方法は、準備工程と、貼り合わせ工程と、はんだ塗布工程と、実装工程とを有している。
【0039】
上記準備工程では、表面にSn系めっきを有する複数本のバスバーと、基板厚み方向に貫通する基板側開口部を有する回路基板と、基板側開口部と対応する位置にシート厚み方向に貫通するシート側開口部を有するとともにシート両面が粘着成分による粘着性を有する粘着シートとが準備される。
【0040】
本例では、複数本のバスバーとして、具体的には、バスバー構成板が準備される。バスバー構成板は、Sn系めっきが表面に施された金属板をプレス加工で打ち抜くことにより、複数のバスバーがばらばらにならないよう、バスバーとこれを取り囲む外枠とが連結片により連結されている。
【0041】
また、粘着シートとして、アクリル系粘着成分またはシリコーン系粘着成分のいずれか一方の粘着成分を有するものが準備される。この際、粘着成分がアクリル系粘着成分である場合、粘着シートの厚みは100μm以下とされる。粘着成分がシリコーン系粘着成分である場合、粘着シートの厚みは150μm以下とされる。
【0042】
上記貼り合わせ工程では、バスバーと回路基板との間に粘着シートを介在させた状態でバスバーと回路基板とが貼り合わせられる。上記貼り合わせは、具体的には、回路基板の基板側開口部の位置と粘着シートのシート側開口部の位置とが一致するように行われる。なお、本例では、上記貼りわせ後、押圧部材としてのローラーを用いて回路基板上が押圧される。
【0043】
上記はんだ塗布工程では、基板側開口部内およびシート側開口部内に露出するバスバーの表面に少なくともはんだ材が塗布される。本例では、基板側開口部内に、はんだ材としてのクリームはんだがスクリーン印刷よって塗布される。この際、電子部品と回路基板とを電気的に接続するためのランド部にもクリームはんだが塗布される。
【0044】
上記実装工程では、はんだ材上に電子部品が載置され、はんだ材がリフロー処理されることにより、少なくともバスバー表面と電子部品とがはんだ付けされる。本例では、上記リフロー処理により、回路基板と電子部品とがはんだ付けされる。
【0045】
本例の回路構成体の製造方法は、さらに、電子部品がはんだ付けされた後に、バスバー構成板におけるバスバーを所定形状に曲げるための曲げ加工を行う曲げ工程、バスバー構成板におけるバスバーと枠体との分断を行う分断工程を有している。
【0046】
<実験例>
以下、実験例を用いてより具体的に説明する。
表1に示されるように、試料1〜試料14を作製し、はんだ流れを評価した。具体的には、
図3に示されるように、表面にSnめっきが施されたSnめっき銅板200と、厚み方向に貫通する3つの開口部301を有し、表面がソルダーレジストで覆われた基板300と、この基板300の開口部301と対応する位置にシート厚み方向に貫通する対応開口部401を有する粘着シート400とを準備した。
【0047】
Snめっき銅板200は、バスバーを模擬したものであり、外形は145.4mm×25mm、厚みは0.64mmである。基板300は、回路基板を模擬したものであり、外形は143.4mm×23mm、厚みは0.5mmである。基板300の開口部301の大きさは11mm×11mmであり、各開口部の間隔は50mmである。粘着シート400は、表1に示されるように、シート両面がアクリル系粘着成分あるいはシリコーン系粘着成分による粘着性を有している。粘着シート400の外形は、基板300と同じ大きさに形成されている。粘着シート400の厚みは、表1に示される通りである。なお、粘着成分がアクリル系粘着成分からなる粘着シートには、日栄化工社製のMHM−FWDシリーズを用いた。また、粘着成分がシリコーン系粘着成分からなる粘着シートには、寺岡製作所社製の7470シリーズを用いた。
【0048】
次いで、
図4に示されるように、Snめっき銅板200と基板300との間に粘着シート400を介在させた状態で、Snめっき銅板200と基板300とを貼り合わせ、貼り合わせ体100を得た。なお、上記貼り合わせは、
図5に示されるように、基板300の開口部301の位置と粘着シート400の対応開口部401の位置とが一致するように行った。また、上記貼り合わせ後、ローラーを用いて基板300上を押圧した。貼り合わせ体の密着状態を確認したところ、いずれの貼り合わせ体100も、粘着シート400の粘着力によってSnめっき銅板200と基板300とが十分に固定されていた。
【0049】
次いで、上記貼り合わせにより形成された貼り合わせ開口部34内をほぼ満たすようにクリームはんだを充填した。なお、クリームはんだは、田村製作所社製のLFSOLDER TLF−204−49RCである。
【0050】
次いで、クリームはんだを塗布した貼り合わせ体100を加熱することにより、クリームはんだをリフロー処理した。なお、上記加熱は、貼り合わせ体100をコンベアに載せ、コンベア速度0.8m/秒にてリフロー処理炉の加熱ゾーン1〜加熱ゾーン7までを330秒程度かけて通過させることにより行った。この際、加熱ゾーン1の温度設定は210℃、加熱ゾーン2の温度設定は190℃、加熱ゾーン3の温度設定は185℃、加熱ゾーン4の温度設定は185℃、加熱ゾーン5の温度設定は185℃、加熱ゾーン6の温度設定は260℃、加熱ゾーン7の温度設定は245℃とした。以上により、試料1〜試料14を作製した。
【0051】
次いで、作製した試料1〜試料14における基板を強制的に剥がし、はんだ流れの状態を目視にて観察した。貼り合わせ開口部の周囲であって粘着シートとSnめっき銅板との間の部位にはんだ流れがほとんど見られなかった場合を、はんだ流れ無しとした。一方、部位に著しくはんだ流れが見られた場合を、はんだ流れ有りとした。
【0052】
表1に、各試料の詳細構成およびはんだ流れの評価結果をまとめて示す。また、代表として、試料1および試料7の観察写真を、
図6および
図7に示す。
【0053】
【表1】
【0054】
上記結果によれば、以下のことがわかる。すなわち、試料1〜試料14は、粘着シートの粘着力によってSnめっき銅板と基板とが十分に固定されていた。この結果から、粘着シートの粘着力によってバスバーと回路基板とを貼り合わせて回路構成体を構成することが可能であるといえる。したがって、回路構成体の製造時に、熱圧着のための大掛かりな設備が不要となり、製造工程を簡素化することが可能であるといえる。
【0055】
また、試料1〜試料4は、粘着シートの粘着成分がアクリル系粘着成分であり、粘着成分に応じて粘着シートの厚みが特定範囲内とされている。同様に、試料8〜試料13は、粘着シートの粘着成分がシリコーン系粘着成分であり、粘着成分に応じて粘着シートの厚みが特定範囲内とされている。
【0056】
そのため、試料1〜試料4、試料8〜試料13は、表面にSn系めっきを有する銅板を用いていても、はんだ材のリフロー処理時にSnめっきが溶融してはんだが流れ出るのを抑制することができた(
図6中、Hがはんだ材)。これに対し、粘着シートの厚みが上記特定範囲外である試料5〜試料7、試料14は、はんだ材のリフロー処理時にSnめっきが溶融し、はんだ流れが発生した(
図7における丸Fで囲まれた部分)。
【0057】
この結果から、回路構成体において、粘着シートの粘着成分がアクリル系粘着成分またはシリコーン系粘着成分のいずれか一方であり、各粘着成分に応じて粘着シートの厚みが特定範囲内とされている場合には、表面にSn系めっきを有するバスバーを用いていても、電子部品の実装時におけるはんだ材のリフロー処理時にSn系めっきが溶融してはんだが流れ出るのを抑制することができるといえる。また、上記回路構成体の製造方法は、熱圧着のため設備が不要となるので、製造コストの低減に寄与することができるといえる。また、はんだ流れのない品質の高い回路構成体を得やすい。
【0058】
以上、本発明の実施例について詳細に説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲内で種々の変更が可能である。