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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-191929(P2015-191929A)
(43)【公開日】2015年11月2日
(54)【発明の名称】回路構成体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/34 20060101AFI20151006BHJP
   H02G 3/16 20060101ALI20151006BHJP
   H05K 1/14 20060101ALI20151006BHJP
【FI】
   H05K3/34 502Z
   H02G3/16 A
   H05K1/14 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-66153(P2014-66153)
(22)【出願日】2014年3月27日
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】室野井 有
(72)【発明者】
【氏名】松井 克文
【テーマコード(参考)】
5E319
5E344
5G361
【Fターム(参考)】
5E319AA03
5E319AC02
5E319AC20
5E319BB05
5E319CC33
5E319CD29
5E319GG05
5E319GG15
5E344AA02
5E344AA23
5E344AA26
5E344BB02
5E344BB06
5E344BB09
5E344BB10
5E344CC05
5E344CD01
5E344CD21
5E344DD03
5E344EE21
5E344EE27
5G361BA01
(57)【要約】
【課題】製造工程を簡素化することができ、はんだ材のリフロー処理時におけるはんだ流れを抑制可能な回路構成体およびその製造方法を提供する。
【解決手段】回路構成体1は、表面にSn系めっきを有する複数本のバスバー2と、基板側開口部30を有する回路基板3と、基板側開口部30と対応する位置にシート側開口部40を有し、バスバー2と回路基板3との間に介在して両者を貼り合わせている粘着シート4と、基板側開口部30とシート側開口部40とを通じてバスバー2表面にはんだ付けされた電子部品5とを備える。粘着シート4は、シート両面が粘着成分による粘着性を有している。粘着成分は、アクリル系粘着成分又はシリコーン系粘着成分である。粘着成分がアクリル系粘着成分である場合、粘着シートの厚みは100μm以下である。粘着成分がシリコーン系粘着成分である場合、粘着シートの厚みは150μm以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面にSn系めっきを有する複数本のバスバーと、
基板厚み方向に貫通する基板側開口部を有する回路基板と、
上記基板側開口部と対応する位置にシート厚み方向に貫通するシート側開口部を有するとともにシート両面が粘着成分による粘着性を有しており、上記バスバーと上記回路基板との間に介在して両者を貼り合わせている粘着シートと、
上記基板側開口部と上記シート側開口部とを通じて上記バスバー表面にはんだ付けされた電子部品とを備え、
上記粘着成分は、アクリル系粘着成分またはシリコーン系粘着成分のいずれか一方であり、
上記粘着成分がアクリル系粘着成分である場合は、上記粘着シートの厚みが100μm以下であり、上記粘着成分がシリコーン系粘着成分である場合は、上記粘着シートの厚みが150μm以下であることを特徴とする回路構成体。
【請求項2】
上記粘着シートは、シート基材と、該シート基材の両面に設けられた上記粘着成分による粘着層とを有していることを特徴とする請求項1に記載の回路構成体。
【請求項3】
上記粘着シートは、シート状の上記粘着成分からなることを特徴とする請求項1に記載の回路構成体。
【請求項4】
表面にSn系めっきを有する複数本のバスバーと、基板厚み方向に貫通する基板側開口部を有する回路基板と、上記基板側開口部と対応する位置にシート厚み方向に貫通するシート側開口部を有するとともにシート両面が粘着成分による粘着性を有する粘着シートとを準備する準備工程と、
上記バスバーと上記回路基板との間に上記粘着シートを介在させた状態で上記バスバーと上記回路基板とを貼り合わせる貼り合わせ工程と、
上記基板側開口部内および上記シート側開口部内に露出する上記バスバーの表面に少なくともはんだ材を塗布するはんだ塗布工程と、
上記はんだ材上に電子部品を載置し、上記はんだ材をリフロー処理することにより、少なくとも上記バスバー表面と上記電子部品とをはんだ付けする実装工程とを有しており、
上記粘着成分は、アクリル系粘着成分またはシリコーン系粘着成分のいずれか一方であり、
上記粘着成分がアクリル系粘着成分である場合は、上記粘着シートの厚みが100μm以下であり、上記粘着成分がシリコーン系粘着成分である場合は、上記粘着シートの厚みが150μm以下であることを特徴とする回路構成体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路構成体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車載電源から各種電装品へ電力を分配するため、防水ケース内に回路構成体を収容した電気接続箱が用いられている。
【0003】
上記回路構成体は、通常、電力回路を構成する複数本のバスバーと、電力回路中に設けられる電子部品の駆動を制御する回路基板とをエポキシ系接着剤等の熱硬化性接着剤を介して接着した後、バスバー表面や回路基板に電子部品がはんだ付けされることにより製造されている(例えば、特許文献1参照)。上記はんだ付けは、リフローはんだ付けによって行なわれることが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−151624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術は、バスバーと回路基板とを接着させるために熱圧着が必要になる。そのため、従来技術は、熱圧着のための大掛かりな設備が必要となり、製造工程が複雑化する。
また、バスバーは、腐食等を抑制するため、一般に、表面にSnめっきが施されていることが多い。このSnめっきが施されたバスバーを用いた場合、電子部品の実装時におけるはんだ材のリフロー処理時に、Snめっきが溶融し、はんだ流れが生じやすくなる。
【0006】
本発明は、上記背景に鑑みてなされたものであり、製造工程を簡素化することができ、はんだ材のリフロー処理時におけるはんだ流れを抑制可能な回路構成体およびその製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、表面にSn系めっきを有する複数本のバスバーと、
基板厚み方向に貫通する基板側開口部を有する回路基板と、
上記基板側開口部と対応する位置にシート厚み方向に貫通するシート側開口部を有するとともにシート両面が粘着成分による粘着性を有しており、上記バスバーと上記回路基板との間に介在して両者を貼り合わせている粘着シートと、
上記基板側開口部と上記シート側開口部とを通じて上記バスバー表面にはんだ付けされた電子部品とを備え、
上記粘着成分は、アクリル系粘着成分またはシリコーン系粘着成分のいずれか一方であり、
上記粘着成分がアクリル系粘着成分である場合は、上記粘着シートの厚みが100μm以下であり、上記粘着成分がシリコーン系粘着成分である場合は、上記粘着シートの厚みが150μm以下であることを特徴とする回路構成体にある。
【0008】
本発明の他の態様は、表面にSn系めっきを有する複数本のバスバーと、基板厚み方向に貫通する基板側開口部を有する回路基板と、上記基板側開口部と対応する位置にシート厚み方向に貫通するシート側開口部を有するとともにシート両面が粘着成分による粘着性を有する粘着シートとを準備する準備工程と、
上記バスバーと上記回路基板との間に上記粘着シートを介在させた状態で上記バスバーと上記回路基板とを貼り合わせる貼り合わせ工程と、
上記基板側開口部内および上記シート側開口部内に露出する上記バスバーの表面に少なくともはんだ材を塗布するはんだ塗布工程と、
上記はんだ材上に電子部品を載置し、上記はんだ材をリフロー処理することにより、少なくとも上記バスバー表面と上記電子部品とをはんだ付けする実装工程とを有しており、
上記粘着成分は、アクリル系粘着成分またはシリコーン系粘着成分のいずれか一方であり、
上記粘着成分がアクリル系粘着成分である場合は、上記粘着シートの厚みが100μm以下であり、上記粘着成分がシリコーン系粘着成分である場合は、上記粘着シートの厚みが150μm以下であることを特徴とする回路構成体の製造方法にある。
【発明の効果】
【0009】
上記回路構成体は、バスバーと回路基板との間に粘着シートが介在されており、粘着シートの粘着力によってバスバーと回路基板とが貼り合わされている。そのため、上記回路構成体は、従来の回路構成体のように、バスバーと回路基板とを接着するために熱圧着する必要がない。そのため、上記回路構成体は、その製造時に、熱圧着のための大掛かりな設備が不要となり、製造工程を簡素化することができる。
【0010】
また、上記回路構成体は、粘着シートの粘着成分がアクリル系粘着成分またはシリコーン系粘着成分のいずれか一方であり、各粘着成分に応じて粘着シートの厚みが特定範囲内とされている。そのため、上記回路構成体は、表面にSn系めっきを有するバスバーを用いていても、電子部品の実装時におけるはんだ材のリフロー処理時にSn系めっきが溶融してはんだが流れ出るのを抑制することができる。
【0011】
上記回路構成体の製造方法は、上述した各工程を有しているので、上記回路構成体を好適に製造することができる。また、上記回路構成体の製造方法は、熱圧着のため設備が不要となるので、製造コストの低減に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例1の回路構成体の要部を模式的に示した斜視図である。
図2】実施例1の回路構成の要部を分解して模式的に示した分解斜視図である。
図3】実験例における回路構成体を模擬した試料の作製に用いた材料を説明するための説明図である。
図4】実験例における回路構成体を模擬した試料の構成を説明するための説明図であり、(a)は平面図、(b)は正面図である。
図5図4(a)におけるV−V断面図である。
図6】試料1の観察写真である。
図7】試料7の観察写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
上記回路構成体において、バスバーは、具体的には、バスバーを構成する母材金属の表面にSn系めっきを有する構成とすることができる。Sn系めっきは、具体的には、SnめっきまたはSn合金めっきから構成することができる。なお、バスバーを構成する母材金属には、銅または銅合金などを用いることができる。
【0014】
上記回路構成体において、粘着シートは、バスバーと回路基板との間に介在して両者を貼り合わせるものである。つまり、上記回路構成体において、バスバーの回路基板側の表面と粘着シートのバスバー側のシート面とが粘着成分による粘着力によって固定されている。また、回路基板のバスバー側の表面と粘着シートの回路基板側のシート面とが粘着成分による粘着力によって固定されている。なお、上記回路構成体において、回路基板の基板側開口部と粘着シートのシート側開口部とは、対応する開口部同士の位置が揃えられた状態とされている。
【0015】
粘着シートは、シート両面が粘着成分による粘着性を有している。したがって、粘着シートは、バスバーおよび回路基板に貼り合わせられるときに、熱圧着することなくそのままの状態で一方のシート面がバスバーに、他方のシート面が回路基板に濡れることが可能であり、貼り合わせ後は、剥離に対して抵抗する作用を発揮することができる。
【0016】
粘着シートは、具体的には、シート基材と、シート基材の両面に設けられた粘着成分による粘着層とを有する構成とすることができる。この場合には、シート基材によって粘着シートの剛性が向上する。そのため、回路構成体の製造時に、粘着シートの取扱い性が向上し、生産性に優れた回路構成体が得られる。
【0017】
また、粘着シートは、具体的には、シート状の粘着成分からなる構成とすることもできる。この場合には、粘着シートの厚みが比較的薄くされた場合でも、粘着成分を確保しやすい。そのため、バスバー、回路基板に粘着させたときに、バスバー、回路基板の表面凹凸に追従しやすく、バスバー、回路基板との密着力を確保しやすい回路構成体が得られる。
【0018】
上記回路構成体において、粘着シートの粘着成分は、アクリル系粘着成分またはシリコーン系粘着成分のいずれか一方である。粘着成分がアクリル系粘着成分からなる粘着シートとしては、具体的には、例えば、日栄化工社製のMHM−FWDシリーズ、寺岡製作所製の7620、7840、住友3M社製の9077、トーヨーケム社製のR310KS−1、R390S−K、デクセリアルズ社製のG4200Dシリーズ、T4100シリーズ等を用いることができる。また、粘着成分がシリコーン系粘着成分からなる粘着シートとしては、具体的には、例えば、寺岡製作所社製の7470シリーズ、760H、7602等を用いることができる。
【0019】
上記回路構成体において、粘着シートの粘着成分がアクリル系粘着成分である場合、粘着シートの厚みは、100μm以下とされる。上記場合に、粘着シートの厚みが100μmを超えると、電子部品の実装時におけるはんだ材のリフロー処理時にSn系めっきが溶融してはんだ流れが生じる。上記場合における粘着シートの厚みは、はんだ流れの抑制効果を確実なものにする等の観点から、好ましくは95μm以下、より好ましくは90μm以下、さらに好ましくは85μm以下とすることができる。一方、上記場合における粘着シートの厚みは、粘着成分を確保しやすくなる、貼り合わせ時における粘着シートの取扱い性向上等の観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上、さらに好ましくは20μm以上とすることができる。
【0020】
上記回路構成体において、粘着シートの粘着成分がシリコーン系粘着成分である場合、粘着シートの厚みは、150μm以下とされる。上記場合に、粘着シートの厚みが150μmを超えると、電子部品の実装時におけるはんだ材のリフロー処理時にSn系めっきが溶融してはんだ流れが生じる。上記場合における粘着シートの厚みは、はんだ流れの抑制効果を確実なものにする等の観点から、好ましくは145μm以下、より好ましくは140μm以下、さらに好ましくは135μm以下、さらにより好ましくは130μm以下とすることができる。一方、上記場合における粘着シートの厚みは、粘着成分を確保しやすくなる、貼り合わせ時における粘着シートの取扱い性向上等の観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上、さらに好ましくは20μm以上とすることができる。
【0021】
上記回路構成体において、電子部品は、具体的には、はんだ付けによりバスバーと電気的に接続されるとともに、回路基板と電気的に接続される。電子部品としては、例えば、半導体スイッチング素子、機械式リレースイッチ等のスイッチング素子などを挙げることができる。
【0022】
上記回路構成体の製造方法では、表面にSn系めっきを有する複数本のバスバーを準備する。具体的には、例えば、Sn系めっきが表面に施された金属板をプレス加工で打ち抜くことにより、複数のバスバーがばらばらにならないよう、バスバーとこれを取り囲む外枠とが連結片により連結されたバスバー構成板などを準備することができる。なお、バスバー構成板は、必要に応じて、各バスバー間が連結片により連結されていてもよい。
【0023】
上記回路構成体の製造方法では、上述した粘着成分、厚みを有する粘着シートが準備される。粘着シートは、取扱い性の向上、ゴミ等の付着防止等の観点から、具体的には、一対の剥離フィルムに挟持された状態のものを準備することができる。なお、この場合、剥離フィルムは、バスバーおよび回路基板に粘着シートを貼り合わせる前に適宜剥離される。
【0024】
上記回路構成体の製造方法では、バスバーと回路基板との間に粘着シートを介在させた状態でバスバーと回路基板とが貼り合わせられる。バスバー、粘着シート、回路基板の順で積層された状態が得られれば、各種の貼り合わせ手順を採用することができる。例えば、バスバー表面に粘着シートの一方面を貼りわせた後、この粘着シートの他方面に回路基板を貼りわせることができる。また、回路基板表面に粘着シートの一方面を貼りわせた後、この粘着シートの他方面にバスバーを貼りわせることができる。また、上記貼りわせ後、必要に応じて、ローラー等の押圧部材を用いて回路基板上を押圧してもよい。この場合には、押圧力により、バスバー、粘着シート、および、回路基板の間の密着性を向上させることが可能である。なお、上記貼り合わせは、回路基板の基板側開口部の位置と粘着シートのシート側開口部の位置とが一致するように行われる。回路基板の基板側開口部の位置と粘着シートのシート側開口部の位置とが一致するように貼り合わせがなされることにより、基板側開口部内およびシート側開口部内にバスバーの表面を露出させることができる。
【0025】
上記回路構成体の製造方法では、基板側開口部内およびシート側開口部内に露出するバスバーの表面に少なくともはんだ材が塗布される。はんだ材としては、例えば、クリームはんだなどを用いることができる。また、はんだ材の塗布には、例えば、スクリーン印刷法等の塗布方法を用いることができる。
【0026】
上記回路構成体の製造方法において、はんだ材のリフロー処理は、用いるはんだ材に最適な温度で実施すればよい。
【0027】
上記回路構成体の製造方法において、バスバー構成板を準備した場合には、電子部品をはんだ付けした後に、バスバーの曲げ加工、バスバーと枠体との分断などを行うことができる。
【0028】
以上により、回路構成体を製造することができる。
【0029】
なお、上述した各構成は、上述した各作用効果等を得るなどのために必要に応じて任意に組み合わせることができる。
【実施例】
【0030】
以下、実施例の回路構成体およびその製造方法について、図面を用いて説明する。なお、同一部材については同一の符号を用いて説明する。
【0031】
(実施例1)
実施例1の回路構成体について、図1図2を用いて説明する。図1図2に示すように、本例の回路構成体1は、複数本のバスバー2と、回路基板3と、粘着シート4と、電子部品5とを備えている。
【0032】
本例では、電子部品5は、具体的には、スイッチング素子である。スイッチング素子としては、具体的には、半導体スイッチング素子51と、機械式リレースイッチ52とが用いられる。また、本例では、バスバー2は、はんだ付けにより電子部品5と電気的に接続されて電力回路を構成する。回路基板3は、電子部品5を制御するための制御回路(不図示)を有しており、はんだ付けにより電子部品5と電気的に接続される。
【0033】
複数本のバスバー2は、表面にSn系めっきを有している。具体的には、複数本のバスバー2は、銅または銅合金からなる母材金属の表面にSnまたはSnめっきが施されることにより構成されている。本例では、複数本のバスバー2は、所定の金属板をプレス加工により打ち抜いて形成したバスバー構成板(不図示)が、適宜曲げ加工、分断されることにより構成されている。
【0034】
回路基板3は、基板厚み方向に貫通する基板側開口部30を複数有している。基板側開口部30は、基板側開口部30内に露出したバスバー2表面に電子部品5をはんだ付けするために、電子部品5の端子部が配置される部分である。なお、本例では、回路構成体1のバスバー2側の面をヒートシンク(不図示)に取り付けるため、回路基板3、粘着シート4、およびバスバー2を貫通するように複数のねじ穴31が形成されている。
【0035】
粘着シート4は、基板側開口部30と対応する位置にシート厚み方向に貫通するシート側開口部40を有している。粘着シート4は、シート両面が粘着成分による粘着性を有しており、バスバー2と回路基板3との間に介在して両者を貼り合わせている。
【0036】
粘着シート4の粘着成分は、アクリル系粘着成分またはシリコーン系粘着成分のいずれか一方である。そして、粘着成分がアクリル系粘着成分である場合は、粘着シートの厚みが100μm以下とされている。また、粘着成分がシリコーン系粘着成分である場合は、粘着シートの厚みが150μm以下とされている。
【0037】
電子部品5は、基板側開口部30とシート側開口部40とを通じてバスバー2表面にはんだ付けされている。本例では、具体的には、電子部品5としての機械式リレースイッチ52は、具体的には、バスバー接続端子521と、基板接続端子522とを有している。バスバー接続端子521は、基板側開口部30とシート側開口部40とを通じてバスバー2表面にはんだ付けされている。なお、基板接続端子522は、回路基板3のランド部32にはんだ付けされている。一方、電子部品5としての半導体スイッチング素子51は、ドレイン端子(不図示)、ソース端子(不図示)およびゲート端子(不図示)を有している。ドレイン端子およびソース端子は、基板側開口部30とシート側開口部40とを通じてバスバー2表面にはんだ付けされている。なお、ゲート端子は、回路基板3のランド部(不図示)にはんだ付けされている。
【0038】
(実施例2)
実施例2の回路構成体の製造方法について説明する。本例の回路構成体の製造方法は、準備工程と、貼り合わせ工程と、はんだ塗布工程と、実装工程とを有している。
【0039】
上記準備工程では、表面にSn系めっきを有する複数本のバスバーと、基板厚み方向に貫通する基板側開口部を有する回路基板と、基板側開口部と対応する位置にシート厚み方向に貫通するシート側開口部を有するとともにシート両面が粘着成分による粘着性を有する粘着シートとが準備される。
【0040】
本例では、複数本のバスバーとして、具体的には、バスバー構成板が準備される。バスバー構成板は、Sn系めっきが表面に施された金属板をプレス加工で打ち抜くことにより、複数のバスバーがばらばらにならないよう、バスバーとこれを取り囲む外枠とが連結片により連結されている。
【0041】
また、粘着シートとして、アクリル系粘着成分またはシリコーン系粘着成分のいずれか一方の粘着成分を有するものが準備される。この際、粘着成分がアクリル系粘着成分である場合、粘着シートの厚みは100μm以下とされる。粘着成分がシリコーン系粘着成分である場合、粘着シートの厚みは150μm以下とされる。
【0042】
上記貼り合わせ工程では、バスバーと回路基板との間に粘着シートを介在させた状態でバスバーと回路基板とが貼り合わせられる。上記貼り合わせは、具体的には、回路基板の基板側開口部の位置と粘着シートのシート側開口部の位置とが一致するように行われる。なお、本例では、上記貼りわせ後、押圧部材としてのローラーを用いて回路基板上が押圧される。
【0043】
上記はんだ塗布工程では、基板側開口部内およびシート側開口部内に露出するバスバーの表面に少なくともはんだ材が塗布される。本例では、基板側開口部内に、はんだ材としてのクリームはんだがスクリーン印刷よって塗布される。この際、電子部品と回路基板とを電気的に接続するためのランド部にもクリームはんだが塗布される。
【0044】
上記実装工程では、はんだ材上に電子部品が載置され、はんだ材がリフロー処理されることにより、少なくともバスバー表面と電子部品とがはんだ付けされる。本例では、上記リフロー処理により、回路基板と電子部品とがはんだ付けされる。
【0045】
本例の回路構成体の製造方法は、さらに、電子部品がはんだ付けされた後に、バスバー構成板におけるバスバーを所定形状に曲げるための曲げ加工を行う曲げ工程、バスバー構成板におけるバスバーと枠体との分断を行う分断工程を有している。
【0046】
<実験例>
以下、実験例を用いてより具体的に説明する。
表1に示されるように、試料1〜試料14を作製し、はんだ流れを評価した。具体的には、図3に示されるように、表面にSnめっきが施されたSnめっき銅板200と、厚み方向に貫通する3つの開口部301を有し、表面がソルダーレジストで覆われた基板300と、この基板300の開口部301と対応する位置にシート厚み方向に貫通する対応開口部401を有する粘着シート400とを準備した。
【0047】
Snめっき銅板200は、バスバーを模擬したものであり、外形は145.4mm×25mm、厚みは0.64mmである。基板300は、回路基板を模擬したものであり、外形は143.4mm×23mm、厚みは0.5mmである。基板300の開口部301の大きさは11mm×11mmであり、各開口部の間隔は50mmである。粘着シート400は、表1に示されるように、シート両面がアクリル系粘着成分あるいはシリコーン系粘着成分による粘着性を有している。粘着シート400の外形は、基板300と同じ大きさに形成されている。粘着シート400の厚みは、表1に示される通りである。なお、粘着成分がアクリル系粘着成分からなる粘着シートには、日栄化工社製のMHM−FWDシリーズを用いた。また、粘着成分がシリコーン系粘着成分からなる粘着シートには、寺岡製作所社製の7470シリーズを用いた。
【0048】
次いで、図4に示されるように、Snめっき銅板200と基板300との間に粘着シート400を介在させた状態で、Snめっき銅板200と基板300とを貼り合わせ、貼り合わせ体100を得た。なお、上記貼り合わせは、図5に示されるように、基板300の開口部301の位置と粘着シート400の対応開口部401の位置とが一致するように行った。また、上記貼り合わせ後、ローラーを用いて基板300上を押圧した。貼り合わせ体の密着状態を確認したところ、いずれの貼り合わせ体100も、粘着シート400の粘着力によってSnめっき銅板200と基板300とが十分に固定されていた。
【0049】
次いで、上記貼り合わせにより形成された貼り合わせ開口部34内をほぼ満たすようにクリームはんだを充填した。なお、クリームはんだは、田村製作所社製のLFSOLDER TLF−204−49RCである。
【0050】
次いで、クリームはんだを塗布した貼り合わせ体100を加熱することにより、クリームはんだをリフロー処理した。なお、上記加熱は、貼り合わせ体100をコンベアに載せ、コンベア速度0.8m/秒にてリフロー処理炉の加熱ゾーン1〜加熱ゾーン7までを330秒程度かけて通過させることにより行った。この際、加熱ゾーン1の温度設定は210℃、加熱ゾーン2の温度設定は190℃、加熱ゾーン3の温度設定は185℃、加熱ゾーン4の温度設定は185℃、加熱ゾーン5の温度設定は185℃、加熱ゾーン6の温度設定は260℃、加熱ゾーン7の温度設定は245℃とした。以上により、試料1〜試料14を作製した。
【0051】
次いで、作製した試料1〜試料14における基板を強制的に剥がし、はんだ流れの状態を目視にて観察した。貼り合わせ開口部の周囲であって粘着シートとSnめっき銅板との間の部位にはんだ流れがほとんど見られなかった場合を、はんだ流れ無しとした。一方、部位に著しくはんだ流れが見られた場合を、はんだ流れ有りとした。
【0052】
表1に、各試料の詳細構成およびはんだ流れの評価結果をまとめて示す。また、代表として、試料1および試料7の観察写真を、図6および図7に示す。
【0053】
【表1】
【0054】
上記結果によれば、以下のことがわかる。すなわち、試料1〜試料14は、粘着シートの粘着力によってSnめっき銅板と基板とが十分に固定されていた。この結果から、粘着シートの粘着力によってバスバーと回路基板とを貼り合わせて回路構成体を構成することが可能であるといえる。したがって、回路構成体の製造時に、熱圧着のための大掛かりな設備が不要となり、製造工程を簡素化することが可能であるといえる。
【0055】
また、試料1〜試料4は、粘着シートの粘着成分がアクリル系粘着成分であり、粘着成分に応じて粘着シートの厚みが特定範囲内とされている。同様に、試料8〜試料13は、粘着シートの粘着成分がシリコーン系粘着成分であり、粘着成分に応じて粘着シートの厚みが特定範囲内とされている。
【0056】
そのため、試料1〜試料4、試料8〜試料13は、表面にSn系めっきを有する銅板を用いていても、はんだ材のリフロー処理時にSnめっきが溶融してはんだが流れ出るのを抑制することができた(図6中、Hがはんだ材)。これに対し、粘着シートの厚みが上記特定範囲外である試料5〜試料7、試料14は、はんだ材のリフロー処理時にSnめっきが溶融し、はんだ流れが発生した(図7における丸Fで囲まれた部分)。
【0057】
この結果から、回路構成体において、粘着シートの粘着成分がアクリル系粘着成分またはシリコーン系粘着成分のいずれか一方であり、各粘着成分に応じて粘着シートの厚みが特定範囲内とされている場合には、表面にSn系めっきを有するバスバーを用いていても、電子部品の実装時におけるはんだ材のリフロー処理時にSn系めっきが溶融してはんだが流れ出るのを抑制することができるといえる。また、上記回路構成体の製造方法は、熱圧着のため設備が不要となるので、製造コストの低減に寄与することができるといえる。また、はんだ流れのない品質の高い回路構成体を得やすい。
【0058】
以上、本発明の実施例について詳細に説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲内で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 回路構成体
2 バスバー
3 回路基板
4 粘着シート
5 電子部品
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7