【解決手段】誘電体層と、貫通孔と、第1の外部電極層と、第2の外部電極層と、第1の内部電極と、第2の内部電極とを具備する。誘電体層は、金属の陽極酸化によって形成されている。貫通孔は、誘電体層の第1の面と、第1の面の反対側の第2の面とを連通する複数の貫通孔である。第1の外部電極層は、第1の面に配設されている。第2の外部電極層は、第2の面に配設され、誘電体層を介して第1の外部電極層と対向する対向領域と、第1の外部電極層と対向しない非対向領域を有する。第1の内部電極は、複数の貫通孔の一部に形成され、第1の外部電極層に接続され、第2の外部電極層と離間している。第2の内部電極は、複数の貫通孔の他の一部に形成され、第2の外部電極層に接続され、第1の外部電極層と離間している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
誘電体に酸化アルミニウムを用いるポーラスコンデンサは、湿度環境に暴露されると水和反応が進行し、誘電体を構成する誘電材料が水和物に変質する。水和物は絶縁性に劣るため、外部導電体の周縁部において正負の内部電極をまたぐように水和物が形成されると、誘電体の表裏にそれぞれ積層された外部導電体が互いに導通してしまい、コンデンサの短絡故障を引き起こすという問題がある。
【0007】
通常、ポーラスコンデンサは、水和物による短絡故障を回避するため、外部導電体より一回り大きい保護層で外部導電体を被覆し、外部導電体の周縁部の誘電体層への湿度の侵入を防ぐ構成となっている。しかしながら、この構成においても、保護層にピンホール等が存在すると、ピンホールから侵入した湿度が外部導電体の周縁部の誘電体に到達し、短絡故障に至るという問題がある。
【0008】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、誘電体層における水和物の生成による短絡故障の発生を防止することが可能なポーラスコンデンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の一実施形態に係るコンデンサは、誘電体層と、第1の外部電極層と、第2の外部電極層と、第1の内部電極と、第2の内部電極とを具備する。
上記誘電体層は、金属の陽極酸化によって形成され、第1の面と、上記第1の面の反対側の第2の面とを有し、前記第1の面と前記第2の面に連通する複数の貫通孔を備える。
上記第1の外部電極層は、上記第1の面に配設されている。
上記第2の外部電極層は、上記第2の面に配設され、上記誘電体層を介して上記第1の外部電極層と対向する対向領域と、上記誘電体層を介して上記第1の外部電極層と対向しない非対向領域を有する。
上記第1の内部電極は、上記複数の貫通孔の一部に形成され、上記第1の外部電極層に接続され、上記第2の外部電極層と離間している。
上記第2の内部電極は、上記複数の貫通孔の他の一部に形成され、上記第2の外部電極層に接続され、上記第1の外部電極層と離間している。
【0010】
この構成によれば、誘電体層を介して対向する第1内部電極と第2内部電極が、コンデンサの対向電極として機能する。第1内部電極は第1外部電極層に、第2内部電極は第2外部電極層にそれぞれ接続され、これらを介して外部(接続端子等)と接続される。ここで、コンデンサが高湿度環境に暴露されると、誘電材料が水和反応を生じ、水和物が生成する場合がある。水和物は絶縁性に劣るため、外部電極層の周縁部において正負の内部電極をまたぐように水和物が生成すると、誘電体層の表裏にそれぞれ配設された外部電極層が互いに導通してしまい、コンデンサの短絡故障が発生する可能性がある。このような場合であっても、第2外部電極層が、誘電体層を介して、第1外部電極層と対向する領域(対向領域)と対向しない領域(非対向領域)を有する構成にすることで、誘電体層の周縁部で水和物が生成しても、内部電極を介して外部電極層が互いに導通せず、コンデンサの短絡故障を防止することが可能である。
【0011】
前記第1の外部電極層は、前記誘電体層を介して前記第2の外部電極層と対向する対向領域と、前記誘電体層を介して前記第2の外部電極層と対向しない非対向領域を有していてもよい。
【0012】
この構成によれば、水和物が形成されても内部電極を介した短絡が発生しない領域が第1の面と第2の面の両面に形成されるため、両面における短絡故障の発生確率を低減することが可能となる。
【0013】
上記対向領域は、上記非対向領域に囲まれていてもよい。
【0014】
対向領域が非対向領域に囲まれていると、水和物により第1内部電極と第2内部電極の短絡が発生する領域が誘電体層の第1の面側のみとなる。このため、コンデンサを基板に実装する際に、第1の面側が基板側となるように実装し、アンダーフィルを施すことにより、第1の面側への水分の浸入を防止し、第1の面側における水和物の生成を防止することができる。第2の面側は、上記のように水和物による導通が防止されているため、短絡故障の発生が防止され、コンデンサの信頼性をより高めることが可能である。
【0015】
上記非対向領域の幅は、0.1μm以上100μm以下であってもよい。
【0016】
この構成によれば、非対向領域の幅を0.1μm以上100μm以下にすることで、コンデンサの電気容量を確保しつつ、短絡故障する確率を低減させることが可能である。
【0017】
第1の内部電極と第2の外部電極層の間と、第2の内部電極と第1の外部電極層の間には、絶縁性材料が充填されていてもよい。
【0018】
この構成によれば、絶縁性材料を充填することによって、第1内部電極と第2外部電極層の間及び第2内部電極と第1外部電極層の間の絶縁を確実にすることが可能である。
【0019】
上記誘電体層は、陽極酸化されると自己組織化作用によりポーラスを形成する材料からなるものであってもよい。
【0020】
この構成によれば、材料を陽極酸化することによって、貫通孔(ポーラス)を有する誘電体層を形成することが可能となる。
【0021】
上記誘電体層は、アルミニウムの陽極酸化により形成された酸化アルミニウムからなるものであってもよい。
【0022】
アルミニウムを陽極酸化すると生じる酸化アルミニウムは、酸化の過程において自己組織化作用による貫通孔を生じる。即ち、アルミニウムを陽極酸化することによって、貫通孔を有する誘電体層を形成することが可能である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、誘電体層における水和物の生成による短絡故障の発生を防止することが可能なポーラスコンデンサを提供することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[コンデンサの構成]
図1は、本実施形態に係るコンデンサ100の斜視図であり、
図2はコンデンサ100の断面図である。これらの図に示すように、コンデンサ100は、誘電体層101、第1内部電極102、第2内部電極103、第1外部電極層104、第2外部電極層105、第1保護層106、第2保護層107、第1外部端子114及び第2外部端子115を具備する。
【0026】
誘電体層101は、コンデンサ100の誘電体として機能する。
図3は、誘電体層101の斜視図であり、
図4は誘電体層101の断面図である。誘電体層101は、誘電性材料であって、自己組織化によってポーラス(細孔)を形成する材料を利用することができる。このような材料としては、酸化アルミニウム(Al
2O
3)を挙げることができる。誘電体層101の厚みは特に限定されないが、例えば数μm〜数百μmとすることができる。
【0027】
図3及び
図4に示すように、誘電体層101には、複数の貫通孔101aが形成されている。誘電体層101の層面方向に平行な表面を第1の面101bとし、その反対側の面を第2の面101cとすると、貫通孔101aは第1の面101b及び第2の面101cに垂直な方向(誘電体層101の厚み方向)に沿って形成され、第1の面101b及び第2の面101cに連通するように形成されている。なお、
図3等に示す貫通孔101aの数や大きさは便宜的なものであり、実際のものはより小さく、多数である。また、貫通孔101aは分岐を有してもよく、隣接する貫通孔101aと合流していてもよい。また、誘電体層101において第1の面101b及び第2の面101cに対する側面を側面101dとする。
【0028】
第1内部電極102は、コンデンサ100の一方の対向電極として機能する。
図5は、コンデンサ100の一部の構成を示す断面図である。第1内部電極102は導電性材料、例えば、In、Sn、Pb、Cd、Bi、Al、Cu、Ni、Au、Ag、Pt、Pd、Co、Cr、Fe、Zn等の純金属やこれらの合金からなるものとすることができる。
【0029】
第1内部電極102は、
図5に示すように、第1外部電極層104に接続され、第2外部電極層105とは離間して形成されている。第1内部電極102と第2外部電極層105の間には、同図に示すように絶縁性材料からなる絶縁体102aが形成されている。また、絶縁体102aは第1内部電極102と第2外部電極層105の間に設けられた空隙であってもよい。
【0030】
ここで、第1内部電極102は、その全てが第1外部電極層104に接続されているのではなく、第1の面101bにおいて第1外部電極層104が配設されていない領域に位置する第1内部電極102は、第1外部電極層104とは接続されない。第1外部電極層104の配設領域については後述する。
【0031】
第2内部電極103は、コンデンサ100の他方の対向電極として機能する。第2内部電極103は導電性材料、例えば、In、Sn、Pb、Cd、Bi、Al、Cu、Ni、Au、Ag、Pt、Pd、Co、Cr、Fe、Zn等の純金属やこれらの合金からなるものとすることができる。
【0032】
第2内部電極103は、
図5に示すように、第2外部電極層105に接続され、第1外部電極層104とは離間して形成されている。第2内部電極103と第1外部電極層104の間には、同図に示すように絶縁性材料からなる絶縁体103aが形成されている。また、絶縁体103aは、第2内部電極103と第1外部電極層104の間に設けられた空隙であってもよい。
【0033】
ここで、第2内部電極103は、その全てが第2外部電極層105に接続されているのではなく、第2の面101cにおいて第2外部電極層105が配設されていない領域に位置する第2内部電極103は、第2外部電極層105とは接続されない。第2外部電極層105の配設領域については後述する。
【0034】
第1内部電極102と第2内部電極103は、
図5では交互に配列するように表されて
いるが、必ずしも交互でなくてもよく、ランダムに配列されてもよい。第1内部電極10
2と第2内部電極103が誘電体層101を介して対向配置されていれば、コンデンサが
構成されるためである。第1内部電極102と第2内部電極103の数は同等でなくても
よいが、同等とするほうがコンデンサの容量が大きくなり、好適である。
【0035】
第1外部電極層104は、
図5に示すように、第1の面101b上に配設される。第1外部電極層104は導電性材料、例えば、Cu、Ni、Cr、Ag、Pd、Fe、Sn、Pb、Pt、Ir、Rh、Ru、Al、Ti等の純金属やこれらの合金であるものとすることができる。第1外部電極層104の厚さは例えば数十nm〜数μmであるものとすることができる。また、第1外部電極層104は、複数層の導電性材料が積層されるように配設されたものとすることも可能である。
【0036】
図2に示すように、第1外部電極層104は、第1内部電極102と第1外部端子114を電気的に接続する。
図6は第1外部電極層104を示す斜視図である。第1外部電極層104は、
図5及び
図6に示すように、少なくとも第1の面101bに配設されていればよく、第1の面101bの全部を覆う構成でなくてもよい。
【0037】
第2外部電極層105は、
図5に示すように、第2の面101c上に配設される。第2外部電極層105は導電性材料、例えば、Cu、Ni、Cr、Ag、Pd、Fe、Sn、Pb、Pt、Ir、Rh、Ru、Al、Ti等の純金属やこれらの合金であるものとすることができる。第2外部電極層105の厚さは例えば数十nm〜数μmであるものとすることができる。また、第2外部電極層105は、複数層の導電性材料が積層されるように配設されたものとすることも可能である。
【0038】
図2に示すように、第2外部電極層105は、第2内部電極103と第2外部端子115を電気的に接続する。
図7は第2外部電極層105を示す斜視図である。第2外部電極層105は、
図5及び
図7に示すように、少なくとも第2の面101cに配設されていればよく、第2の面101cの全部を覆う構成でなくてもよい。
【0039】
ここで、第1外部電極層104及び第2外部電極層105は、互いに完全に対向しておらず、第1外部電極層104及び第2外部電極層のそれぞれの一部領域は、互いに対向していない。この第1外部電極層104及び第2外部電極層105の配設領域については後述する。
【0040】
第1保護層106は、
図2に示すように、第1外部電極層104を被覆し、第1外部電極層104と第2外部端子115とを絶縁する。
図8は、コンデンサ100の一部の構成を示す断面図であり、
図9は第1保護層106を示す斜視図である。第1保護層106は、第1の面101b上に配設され、さらに第1外部電極層104上に配設されている。第1保護層106には、
図8及び
図9に示すように、第1外部電極層104上において開口106aが形成され、開口106aから第1外部電極層104が露出するように構成されている。開口106aの形状や大きさ、数は特に限定されない。
【0041】
第2保護層107は、
図2に示すように、第2外部電極層105を被覆し、第2外部電極層105と第1外部端子114とを絶縁する。
図10は、第2保護層107を示す斜視図である。第2保護層107は、第2の面101c上に配設され、さらに第2外部電極層105上に配設されている。第2保護層107には、
図8及び
図10に示すように、第2外部電極層105上において開口107aが形成され、開口107aから第2外部電極層105が露出するように構成されている。開口107aの形状や大きさ、数は特に限定されない。
【0042】
第1保護層106及び第2保護層107は、絶縁性材料からなり、特に耐湿性に優れた
材料が好適である。耐湿性の指標として、吸湿性が2%以下、透湿性が1μm厚さあたり
1mg/mm
2以下であるものが好適である。このような材料としては、エポキシ樹脂、
シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂又はポリオレフィン樹脂を挙げることができる。
【0043】
第1外部端子114は、第1内部電極102の端子として機能する。第1外部端子114は、
図1及び
図2に示すように、第1保護層106、第2保護層107及び第1外部電極層104上に配設され、かつ、第1保護層106と第2保護層107の間で側面101d上に配設されている。第1外部端子114は、第1外部電極層104を介して第1内部電極102と電気的に接続されており、即ち、第1内部電極102と外部とを接続する端子として機能する。
【0044】
第2外部端子115は、第2内部電極103の端子として機能する。第2外部端子115は、
図1及び
図2に示すように、第1保護層106、第2保護層107及び第2外部電極層105上に配設され、かつ、第1保護層106と第2保護層107との間で側面101d上に配設されている。第2外部端子115は、第2外部電極層105を介して第2内部電極103と電気的に接続されており、即ち、第2内部電極103とを接続する端子として機能する。
【0045】
コンデンサ100は以上のような構成を有する。なお、上述のように、コンデンサ100は誘電体層101を介して第1内部電極102と第2内部電極103が対向し、コンデンサを形成する。即ち、第1内部電極102と第2内部電極103は、コンデンサの対向電極として機能する。なお、第1内部電極102と第2内部電極103はどちらが正極であってもよい。第1内部電極102は第1外部電極層104を介して、第2内部電極103は第2外部電極層105を介して、それぞれ外部の配線や端子等と接続される。
【0046】
[第1外部電極層及び第2外部電極層の配設領域について]
本実施形態に係るコンデンサが有する第1外部電極層104及び第2外部電極層105の配設領域について説明する。
【0047】
上述のように、第1外部電極層104と第2外部電極層105は、誘電体層101を介して互いに対向しない領域を有する。
図11はコンデンサ100の一部の構成を示す断面図であり、
図12は、コンデンサ100を第2の面101c側から見た一部の構成を示す平面図である。
【0048】
これらの図に示すように、第1外部電極層104と第2外部電極層105は、サイズが同等であり、誘電体層101を介して完全には対向せず、層面方向(厚みに直交する方向)にずれて配設されているものとすることができる。これにより、第1外部電極層104及び第2外部電極層105には対向領域と非対向領域が形成されている。
【0049】
図13は第1外部電極層104及び第2外部電極層105における対向領域及び非対向領域を示す模式図である。同図に示すように第1外部電極層104には、第2外部電極層105に対向する領域である対向領域L1と第2外部電極層105に対向しない領域である非対向領域L2が形成されている。また、第2外部電極層105には、第1外部電極層104に対向する領域である対向領域L3と第1外部電極層104に対向しない領域である非対向領域L4が形成されている。
【0050】
ここで、
図11に示すように、対向領域L1内に形成された第2内部電極103は、第2外部電極層105に接続され、非対向領域L2内に形成された第2内部電極103は、第2外部電極層105に接続されない。また、対向領域L3内に形成された第1内部電極102は、第1外部電極層104に接続され、非対向領域L4内に形成された第1内部電極102は、第1外部電極層104に接続されないものとすることができる。
【0051】
図13に示すように、非対向領域L2は第1外部電極層104の長辺と短辺のそれぞれ一辺ずつに沿って設けられ、非対向領域L4は、第2外部電極層105の長辺と短辺のそれぞれ一辺ずつに沿って設けられるものとすることができる。同図に示すように、非対向領域L2の幅(対向領域L1の周縁と非対向領域L2の周縁の距離)を幅D1及び幅D2とし、非対向領域L4の幅(対向領域L3の周縁と非対向領域LL4の周縁の距離)を幅D3及び幅D4とする。なお、幅D1乃至幅D4は互いに同一でもよく、異なっていてもよい。幅D1乃至幅D4は、特に限定されないが、0.1μm以上100μm以下が好適である。
【0052】
なお、第1外部電極層104及び第2外部電極層105の配設領域は上述のものに限られない。
図14乃至
図17は、第1外部電極層104及び第2外部電極層105の配設領域のバリエーションを示す模式図である。
図14(a)乃至
図17(a)は各コンデンサ100の断面図であり、
図14(b)乃至
図17(b)はそれぞれの断面図に対応する平面図である。なお、各平面図はコンデンサ100を第2の面101b側から見た図である。
【0053】
例えば、
図14に示すように、第1外部電極層104及び第2外部電極層105はサイズが同等であり、層面方向の一方向にずれて配設されていてもよい。これにより、非対向領域L2は対向領域L1の一つの短辺に沿って設けられ、非対向領域L4は、対向領域L3の一つの短辺にそって設けられるものとすることができる。
【0054】
あるいは、第1外部電極層104及び第2外部電極層105は、互いにサイズが異なっていてもよい。例えば、
図15に示すように第1外部電極層104及び第2外部電極層105は、長辺及び短辺の長さが異なっていてもよい。これにより、非対向領域L2は対向領域L1の長辺に沿って設けられ、非対向領域L4は対向領域L3の長辺に沿って設けられるものとすることができる。
【0055】
また、
図16に示すように、第2外部電極層105は全辺が第1外部電極層104より大きく、厚み方向から見て第2外部電極層105の全辺と第1外部電極層の全辺は離間していてもよい。これにより、対向領域L3は非対向領域L4に囲まれ、第1外部電極層104は非対向領域L2を有しないものとすることができる。
【0056】
さらに、
図17に示すように、第2外部電極層105は全辺が第1外部電極層104より大きく、厚み方向から見て第2外部電極層105の長辺及び短辺のそれぞれ一辺ずつと、第1外部電極層104の長辺及び短辺のそれぞれ一辺ずつは離間していてもよい。これにより、非対向領域L4は対向領域L3の短辺及び長辺のそれぞれ一辺に沿って設けられ、第1外部電極層104は非対向領域L2を有しないものとすることができる。
【0057】
これらの各構成においても、非対向領域L2の幅と非対向領域L4の幅(
図13参照)は特に限定されないが、0.1μm以上100μm以下が好適である。なお、上記のように第1外部電極層104において非対向領域L2が存在しない場合もある。
【0058】
第1外部電極層104及び第2外部電極層105の構成はここに示すものに限られず、少なくとも第2外部電極層105が対向領域L3及び非対向領域L4を有するものであればよい。第1外部電極層104及び第2外部電極層105の形状も矩形に限られず、円形や楕円形、多角形状であってもよい。
【0059】
[コンデンサの効果]
コンデンサ100の効果について、比較例を用いて説明する。
図18は、比較例に係るコンデンサ200の断面図である。同図に示すように、コンデンサ200は、誘電体層201、第1内部電極202、第2内部電極203、第1外部電極層204、第2外部電極層205、第1保護層206、第2保護層207、第1外部端子214及び第2外部端子215を備える。また、第1内部電極202と第2外部電極層205の間には絶縁体202aが充填され、第2内部電極203と第1外部電極層204の間には絶縁体203aが充填されている。
【0060】
誘電体層201には、
図18に示すように、第1の面201aに第1外部電極層204が配設され、第2の面201bに第2外部電極層205が配設されている。第1外部電極層204及び第2外部電極層205はサイズが同等であり、誘電体層201を介して、互いに完全に対向する構成となっている。
【0061】
図19及び
図20は、コンデンサ200の、第1外部電極層204及び第2外部電極層205の周縁部の拡大図であり、誘電体層201が第1外部電極層204及び第2外部電極層205の周縁部近傍で切断された状態を示す図である。なお、両図において第1保護層206、第2保護層207、第1外部端子214及び第2外部端子215は図示を省略する。
【0062】
ここで、コンデンサ200が湿度環境に暴露されると、誘電体層201において水和反応が発生し、ベーマイト等の水和物が生成する。誘電体層201は第1保護層206及び第2保護層207によって被覆されているが、第1保護層206及び第2保護層207にピンポールが存在すると、水分が誘電体層201に到達するおそれがある。
【0063】
誘電体層201の第1の面201a及び第2の面201bには第1外部電極層204及び第2外部電極層205が形成されているため、浸入した水分は第1外部電極層204及び第2外部電極層205の周縁部に到達する。
【0064】
これにより、例えば、
図19に示すように、誘電体層201における第1外部電極層204の周縁部に水和物Wが形成される。水和物Wは絶縁性に劣るため、第1内部電極202及び第2内部電極203をまたいで形成されると、
図20に示すように、第1内部電極202及び第2内部電極203が電気的に接続される。したがって、第1内部電極202に接続された第1外部電極層204と第2内部電極203に接続された第2外部電極層205が互いに導通(図中、導通経路D)し、短絡故障を引き起こすおそれがある。
【0065】
このような水和物による短絡故障は、第1外部電極層204の周縁部の、誘電体層201を介した反対側に第2外部電極層205が存在するために発生する。なお、ここでは第1外部電極層204の周縁部について説明したが、誘電体層201の反対側である第2外部電極層205の周縁部についても同様に水和物による短絡故障が発生するおそれがある。
【0066】
図21は、誘電体層201、第1内部電極202、第2内部電極203、第1外部電極層204及び第2外部電極層205の模式図である。同図において、第1外部電極層204と第2外部電極層205の周縁部であって、誘電体層201を介して反対側に第1外部電極層204又は第2外部電極層205が存在する領域を黒矢印で示す。なお、この領域は、第1外部電極層204及び第2外部電極層205の周縁に沿った領域である。黒矢印で示す領域に水和物が発生すると、第1外部電極層204及び第2外部電極層205において短絡故障が発生するおそれがある。以下、この領域を短絡発生領域T1とする。
【0067】
ここで、本実施形態に係るコンデンサ100は、上述のように、第1外部電極層104及び第2外部電極層105の少なくとも一方は対向領域及び非対向領域を有しており、即ち第1外部電極層104と第2外部電極層105は誘電体層101を介して互いに完全に対向せず、層面方向(厚みに直交する方向)にずれて配設されている。
【0068】
図22は、コンデンサ100の、第1外部電極層104及び第2外部電極層105の周縁部の拡大図であり、誘電体層101が第1外部電極層104及び第2外部電極層105の周縁部近傍で切断された状態を示す図である。
図22(a)は第1の面101b側からみた図、
図22(b)は第2の面101c側からみた図である。なお、同図において第1保護層106、第2保護層107、第1外部端子114及び第2外部端子115は図示を省略する。上述のように、第1外部電極層104と第2外部電極層105は完全には対向しておらず、第1外部電極層104は対向領域L1と非対向領域L2を有している。なお、第2外部電極層105は同図に示す範囲おいては、対向領域L3のみが表されている。
【0069】
これにより、比較例と同様に第1外部電極層104の周縁部の誘電体層101において水和物Wが形成され、第1内部電極102及び第2内部電極103が水和物Wを介して電気的に接続されても、第1外部電極層104と第2外部電極層105は電気的に接続されない。第1外部電極層104の非対向領域L2において、第2内部電極103は、第2外部電極層105に接続されていないからである(
図11参照)。
【0070】
図23は誘電体層101、第1内部電極102、第2内部電極103、第1外部電極層104及び第2外部電極層105の模式図である。同図において、第1外部電極層104と第2外部電極層105の周縁部であって、誘電体層101を介して反対側に第1外部電極層104又は第2外部電極層105が存在する領域を黒矢印で示す。なお、この領域は、第1外部電極層104の対向領域L1の周縁及び第2外部電極層105の対向領域L3の周縁に沿った領域である。以下、この領域を短絡発生領域T1とする。
【0071】
また、第1外部電極層104と第2外部電極層105の周縁部であって、誘電体層101を介して反対側に第1外部電極層104又は第2外部電極層105が存在しない領域を白矢印で示す。なお、この領域は、第1外部電極層104の非対向領域L2及び第2外部電極層105の非対向領域L4の周縁に沿った領域である。以下、この領域を短絡防止領域T2とする。
【0072】
短絡発生領域T1に水和物が発生すると、上述にように、第1外部電極層104及び第2外部電極層105において短絡故障が発生するおそれがある。しかしながら、短絡防止領域T2に水和物が発生した場合は、第1外部電極層104及び第2外部電極層105において短絡故障を引き起こすおそれがない。
図23に示すように、第1外部電極層104の非対向領域L2において、第2内部電極103は、第2外部電極層105に接続されていないからである。また、第2外部電極層105の非対向領域L4において、第1内部電極102は、第1外部電極層104に接続されていないからである。
【0073】
このように本実施形態に係るコンデンサ100においては、第1外部電極層104が対向領域L1及び非対向領域L2を有し、第2外部電極層105が対向領域L3及び非対向領域L4を有する。このため、誘電体層101に水和物が形成されても、比較例に係るコンデンサ200よりも短絡故障が発生する確率を低減させることが可能である。
【0074】
さらに、
図16に示すように、第2外部電極層105において、対向領域L3は、非対向領域L4に囲まれているものとすることができる。
図24はこの場合のコンデンサ100における誘電体層101、第1内部電極102、第2内部電極103、第1外部電極層104及び第2外部電極層105の模式図である。
【0075】
この場合、第2外部電極層105の周縁部は全周にわたって、誘電体層101を介した反対側に第1外部電極層104が存在しない。このため、同図に示すように、第2外部電極層105の周縁部の全周が短絡防止領域T2となる。また、第1外部電極層104の周縁部は全周にわたって、誘電体層101を介した反対側に第2外部電極層105が存在する。このため、同図に示すように、第1外部電極層104の周縁部の全周が短絡発生領域T1となる。
【0076】
即ちこの構成では、コンデンサ100の一面(第1の面101b側)のみに短絡発生領域T1が存在する。ここで、コンデンサ100を基板に実装する際に、当該面を実装基板側とすることができる。
図25は、この場合におけるコンデンサ100の実装態様を示す模式図である。
【0077】
同図に示すように、コンデンサ100を実装基板Bに実装する際、第1の面101b側を実装基板B側として実装することにより、コンデンサ100の第1の面101b側はアンダーフィルUで被覆される。これにより、第1の面101b側への水分の浸入をアンダーフィルUによって防止することが可能となり、水和物の形成を防止することが可能である。上記のように第2の面101c側には、短絡防止領域T2のみが存在するため、水和物が形成されても短絡故障を防止することが可能である。
【0078】
[コンデンサの製造方法]
本実施形態に係るコンデンサ100の製造方法について説明する。なお、以下に示す製造方法は一例であり、コンデンサ100は、以下に示す製造方法とは異なる製造方法によって製造することも可能である。
図26乃至
図32は、コンデンサ100の製造プロセスを示す模式図である。
【0079】
図26(a)は、誘電体層101の元となる基材301を示す。誘電体層101を金属酸化物(例えば酸化アルミニウム)からなるものとする場合、基材301はその酸化前の金属(例えばアルミニウム)である。
【0080】
例えば15℃〜20℃に調整されたシュウ酸(0.1mol/l)溶液中で基材301を陽極として電圧を印加すると、
図26(b)に示すように基材301が酸化(陽極酸化)され、基材酸化物302が形成される。この際、基材酸化物302の自己組織化作用によって、基材酸化物302に孔Hが形成される。孔Hは酸化の進行方向、即ち基材301の厚み方向に向かって成長する。
【0081】
なお、陽極酸化の前に基材301に規則的なピット(凹部)を形成しておき、このピットを基点として孔Hを成長させてもよい。このピットの配置により孔Hの配列を制御することが可能となる。ピットは、例えば基材301にモールド(型)を押圧することによって形成することが可能である。
【0082】
陽極酸化の開始から所定時間経過後、基材301に印加されている電圧を増加させる。自己組織化によって形成される孔Hのピッチは、印加電圧の大きさによって決定されるため、孔Hのピッチが拡大するように自己組織化が進行する。これにより、
図26(c)に示すように一部の孔Hについて孔の形成が継続すると共に、孔径が拡大する。一方で、孔Hのピッチが拡大したことによって、他の孔Hについては孔の形成速度が非常に遅くなる。以下、孔の形成速度が遅くなった孔Hを孔H1とし、孔の形成が継続した(拡大した)孔Hを孔H2とする。
【0083】
陽極酸化の条件は適宜設定可能であり、例えば、
図26(b)に示す1段階目の陽極酸化の印加電圧は数V〜数100V、処理時間は数分〜数日に設定することができる。
図26(c)に示す2段階目の陽極酸化の印加電圧では、電圧値を1段階目の数倍とし、処理時間は数分〜数十分に設定することができる。
【0084】
例えば、1段階目の印加電圧を40Vとすることにより孔径が100nmの孔Hが形成され、2段階目の印加電圧を80Vとすることにより孔H2の孔径が200nmに拡大される。2段階目の電圧値を上述した範囲内とすることにより、孔H1と孔H2の数を概ね同等とすることが可能である。また、2段階目の電圧印加の処理時間を上述の範囲内とすることにより、孔H2のピッチ変換が十分に完了しつつ、2段階目の電圧印加によって底部に形成される基材酸化物302の厚さを小さくすることができる。2段階目の電圧印加で形成される基材酸化物302は、後の工程で除去されるため、できるだけ薄いことが好ましい。
【0085】
続いて、
図27(a)に示すように、酸化されていない基材301を除去する。基材301の除去は、例えばウェットエッチングによってすることができる。以降、基材酸化物302の孔H1及び孔H2が形成された側の面を表面302aとし、その反対側の面を裏面302bとする。
【0086】
続いて、
図27(b)に示すように、基材酸化物302を裏面302b側から所定の厚さで除去する。これは反応性イオンエッチング(RIE:Reactive Ion Etching)によってすることができる。この際、孔H2が裏面302bに連通し、孔H1は裏面302bに連通しない程度の厚さで、基材酸化物302を除去する。
【0087】
続いて、
図27(c)に示すように、表面302aに導電性材料からなる第1導体層303を成膜する。第1導体層303は、スパッタ法、真空蒸着法等、任意の方法によって成膜することが可能である。
【0088】
続いて、
図28(a)に示すように、孔H2内に第1メッキ導体M1を埋め込む。第1メッキ導体M1は、第1導体層303をシード層として基材酸化物302に電解メッキを施すことによって埋め込むことが可能である。孔H1にはメッキ液が侵入しないため、孔H1内には第1メッキ導体M1は形成されない。
【0089】
続いて、
図28(b)に示すように、基材酸化物302を裏面302bから所定の厚さで再度除去する。これは、反応性イオンエッチングによってすることができる。この際、孔H1が裏面302bに連通する程度の厚さで基材酸化物302を除去する。
【0090】
続いて、
図28(c)に示すように、孔H1内に第2メッキ導体M2を埋め込み、同時に孔H2内に第3メッキ導体M3を埋め込む
【0091】
第2メッキ導体M2及び第3メッキ導体M3は、第1導体層303をシード層として基材酸化物302に電解メッキを施すことによって埋め込むことが可能である。この際、孔H2には、先の工程によって第1メッキ導体M1が形成されているため、第3メッキ導体M3の先端は第2メッキ導体M2の先端より突出する。以下、第1メッキ導体M1及び第3メッキ導体M3を第1内部導体304とし、第2メッキ導体M2を第2内部導体305とする。
【0092】
続いて、
図29(a)に示すように、基材酸化物302を裏面302bから所定の厚さで再度除去する。これは、機械研磨等によってすることができる。この際、第1内部導体304が裏面302bに露出し、第1内部導体305が裏面302bに露出しない程度の厚さで基材酸化物302を除去する。
【0093】
続いて、
図29(b)に示すように、孔H1の空隙に絶縁体306を埋め込む。絶縁体306は当該空隙に任意の絶縁性材料を充填することによって埋め込むことが可能である。
【0094】
続いて、
図29(c)に示すように、裏面302bに導電性材料からなる第2導体層307を成膜する。第2導体層307は、スパッタ法、真空蒸着法等、任意の方法によって成膜することが可能である。
【0095】
続いて、
図30(a)に示すように、第1導体層303を除去する。第1導体層303の除去は、ウェットエッチング法、ドライエッチング法、イオンミリング法、CMP(Chemical Mechanical Polishing)法等によってすることができる。
【0096】
続いて、
図30(b)に示すように、第2導体層307をシード層として、基材酸化物302に電解エッチングを施す。第1内部導体304は第2導体層307に導通しているため、電解エッチングによりエッチングされる。これにより、孔H2において第1内部導体304が除去された空隙が形成される。一方、第2内部導体305は第2導体層307と絶縁されているため、電解エッチングによりエッチングされない。
【0097】
続いて、
図30(c)に示すように、孔H2の空隙に絶縁体308を埋め込む。絶縁体308は当該空隙に任意の絶縁性材料を充填することによって埋め込むことが可能である。
【0098】
続いて、
図31(a)に示すように、導電性材料からなる第3導体層309を表面302aに成膜する。第3導体層309は、スパッタ法、真空蒸着法等、任意の方法によって成膜することが可能である。
【0099】
続いて、
図31(b)に示すように、第2導体層307を除去する。第2導体層307の除去は、ウェットエッチング法、ドライエッチング法、イオンミリング法、CMP(Chemical Mechanical Polishing)法等によってすることができる。
【0100】
続いて、
図31(c)に示すように、導電性材料からなる第4導体層310を裏面302bに成膜する。この際、第4導体層310は、第3導体層309に対して、層面方向にずらして成膜するものとすることができる。これにより、第4導体層310には、基材酸化物302を介して第3導体層309と対向する領域である対向領域L3と対向しない領域である非対向領域L4が形成される。また、第3導体層309にも、基材酸化物302を介して第4導体層310と対向する領域である対向領域L1と対向しない領域である非対向領域L2が形成される。
【0101】
続いて、
図32(a)に示すように、第3導体層309上に第1保護層311を配設し、第4導体層310上に第2保護層312を配設する。第1保護層311及び第2保護層312は、第3導体層309上及び第4導体層310上に樹脂材料を塗布し、フォトリソグラフィ等によってパターニングすることにより形成することが可能である。パターニングの際に第1保護層311に第3導体層309が露出する開口部311aを形成し、第2保護層312に第4導体層310が露出する開口部312aを形成する。
【0102】
続いて、
図32(b)に示すように、側面302c、第3導体層309、第1保護層311及び第2保護層312上に第1外部導体313を配設する。また、側面302c、第4導体層310、第1保護層311及び第2保護層312上に第2外部導体314を配設する。
【0103】
第1外部導体313及び第2外部導体314は、表面302a、側面302c及び裏面302b上に金属材料を塗布し、フォトリソグラフィ等によってパターニングすることにより形成することが可能である。パターニングの際に金属材料が分離されることで、第1外部導体313及び第2外部導体314が形成される。
【0104】
コンデンサ100は以上のようにして製造することが可能である。なお、基材酸化物302は誘電体層101に、第2内部導体305は第1内部電極102に、第1内部導体304は第2内部電極103にそれぞれ対応する。第3導体層309は第1外部電極層104に、第4導体層310は第2外部電極層105に、第1保護層311は第1保護層106に、第2保護層312は第2保護層107に、第1外部導体313は第1外部端子114に、第2外部導体314は第2外部端子115にそれぞれ対応する。