【解決手段】磁性体コア14は、磁性粉の圧縮成形体である第1及び第2の磁性体と、第1及び第2の磁性体間に介在し、第1及び第2の磁性体に接続された接合体13と、を備える。
前記第1の磁性体の前記端面は、前記平滑部に囲まれた凹部又は凸部をさらに有し、該凹部又は凸部は前記接合体に形成された凸部又は凹部と係合していることを特徴とする、請求項4に記載の磁性コア体。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。ただし、本発明の範囲は以下の実施例に限定されるものではない。
【0011】
図1(A)は、本発明の一実施形態に係る磁性コア体14の正面図である。また
図1(C)は、
図1(A)のA1−A1’線に沿う、磁性コア体14の断面図である。
【0012】
図1(C)に示されるように、磁性コア体14は、第1の磁性体11と、第2の磁性体12と、接合体13とによって構成される。より具体的には、接合体13は、第1の磁性体11及び第2の磁性体12(第1及び第2の磁性体間)に介在しており、第1の磁性体11及び第2の磁性体12に接続されている。
【0013】
また磁性コア体14は、コイルが巻回されるティース部15と、回転軸が挿通される軸孔16とを有する。本実施形態において、第1の磁性体11、第2の磁性体12、及び接合体13は、軸孔16の方向(軸方向)に沿って積層されている。
【0014】
本実施形態に係る磁性コア体14のティース部15の、軸孔16から離れる方向(径方向)の端部には、軸方向に張り出すツバ部17が設けられている。それぞれのティース部15に、第1の磁性体11及び第2の磁性体12が内部に入るようにコイルを巻回することにより、回転子を作製することができる。本実施形態においては、こうして巻回されたコイルに通電することで発生する磁束が通る方向と平行に、第1の磁性体11及び第2の磁性体12が積層されている。
【0015】
次に、第1の磁性体11及び第2の磁性体12について説明する。第1の磁性体11及び第2の磁性体12は、磁性粉の圧縮成形体である。
【0016】
磁性粉としては軟磁性粉が好ましく用いられる。軟磁性粉の種類は特に限定されず、従来から圧粉磁芯の原料粉として用いられている軟磁性粉を用いることができる。具体的な例としては、センダスト粉、パーマロイ粉、ケイ素鋼粉、及び純鉄粉が挙げられる。また、これらの軟磁性粉を主たる成分とする合金よりなる軟磁性粉末を用いることもできる。磁性粉として、1種類の材料を用いてもよいし、2種類以上の材料を任意の比率で混合して用いてもよい。
【0017】
磁性粉としてはまた、上記の軟磁性粉に絶縁物を被覆したものも用いられる。絶縁物の種類は特に限定されないが、例えば、リン酸鉄、リン酸マンガン、リン酸亜鉛、リン酸カルシウム、リン酸アルミニュウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、鉱物などを用いることができる。より好ましくはリン酸鉄が用いられる。被覆を十分とするために、被覆の厚さは5nm以上であることが好ましく、10nm以上であることがより好ましい。また、磁性コアの特性を向上させるために、被覆の厚さは100nm以下であることが好ましく、70nm以下であることがより好ましい。
【0018】
磁性粉の形状は、例えば粒度又は粒子形状は、圧縮成形が可能であれば特に限定されない。高磁束密度及び低ヒステリシス損を実現するためには、磁性粉の重量平均粒子径が70μm以上であることが好ましく、100μm以上であることがより好ましい。
【0019】
磁性粉には、他の材料が添加されていてもよいし、他の材料が被覆されていてもよい。例えば、磁性体の強度を高めるために結合剤を添加することができる。さらに、磁性体と型との摩擦、又は原料粉同士の摩擦を低減するために、潤滑剤を添加してもよい。潤滑剤としては特に限定されないが、脂肪酸モノアミド、及び脂肪酸ビスアミドなどの非金属石鹸系粉末潤滑剤;並びに、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸アルミニウム、及び12−ヒドロキシステアリン酸亜鉛などの金属石鹸系粉末潤滑剤;から選ばれる1種以上が、好ましい例として挙げられる。高磁束密度、低ヒステリシス損を実現するために磁性体中の軟磁性粉量を多くする観点からは、潤滑剤の量は成形に問題のない範囲で少ないことが好ましい。
【0020】
第1の磁性体11及び第2の磁性体12の作製方法は、上述の材料を圧縮成形するのであれば特に限定されないが、例えば
図3に示される金型30を用いて作製することができる。金型30は主に、側面(ダイス32)と、下面(下パンチ34)と、上面(上パンチ33)とで構成される。これらの側面、下面、及び上面で囲まれた空間に磁性粉を含む材料を投入し、上面と下面との間に圧力をかけることにより、磁性体を圧縮成形することができる。
【0021】
以下に、
図3に示される金型30についてより詳しく説明する。
図3(A)は、金型30の断面図であり、
図3(B)は、
図3(A)のC1−C1’線に沿う、金型30の断面図である。
【0022】
ダイス32は、貫通孔31を有する型枠であり、上下に昇降可能である。貫通孔31の一端には、下パンチ34をはめることができる。また、貫通孔31の他端には、上パンチ33をはめることができる。この上パンチ33もまた、上下に昇降可能である。そして、上パンチ33と下パンチ34とで区切られる貫通孔31内の空間が、磁性粉を含む材料が充填されるキャビティとなる。
【0023】
ダイス32の貫通孔31内壁面と、上パンチ33及び下パンチ34の対向する壁面の表面粗さRaは、金型30と磁性粉を含む材料との凝着を防ぐ観点から、0.20μm以下であることが好ましく、0.15μm以下であることがより好ましく、0.10μm以下であることがさらに好ましい。
【0024】
ダイス32、上パンチ33及び下パンチ34の材料としては、任意の金型材料を用いることができる。金型30と磁性粉を含む材料との凝着を防ぐ観点から、ダイス32の貫通孔31内壁面と、上パンチ33及び下パンチ34の対向する壁面は、コーティングされていることが好ましい。具体的な方法としては、表面を窒化した後に、DLC、Cr
2N、CrN、TiN、TiCN、TiCrNなどの材料をコーティングする方法が挙げられる。
【0025】
圧縮成形時には、温間成形を行ってもよい。例えばダイス32はヒータ36を有してもよく、こうして圧縮成形時に加熱を行うことができる。また、ダイス32の貫通孔31内壁面に潤滑剤を塗布してもよい(型潤滑)。温間成形と型潤滑を組み合わせて使用することはより好ましい。
【0026】
型潤滑に使用する潤滑剤は特に限定されないが、金属石鹸のような固体潤滑性を示す潤滑剤を用いることが好ましい。固体潤滑性を示す潤滑剤を用いることにより、磁性粉を含む材料と金型との間での、液切れを防止することができる。具体的には、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸カルシウム、又はステアリン酸亜鉛などを用いることが好ましい。
【0027】
ダイス32の貫通孔31内壁面に潤滑剤を塗布する際は、ダイス32を加熱し、貫通孔31内壁面に水又は有機溶剤などの液体に分散させた潤滑剤を噴霧することが好ましい。潤滑剤が融解することを防ぐために、ダイス32の加熱温度は、潤滑剤の融点よりも低いことが好ましい。例えば潤滑剤としてステアリン酸リチウムを用いる場合、加熱温度は220℃未満であることが好ましい。一方で、液体を十分に揮発させるために、液体の沸点よりも高い温度で加熱することも好ましい。
【0028】
圧縮成形の成形圧は特に限定されない。例えば磁性コア体をモータに用いる場合、高磁束密度を実現するためには磁性粉の密度を向上させることが好ましい。この観点から、磁性コア体をモータに用いる場合には、700MPa以上で加圧することが好ましく、800MPa以上で加圧することがより好ましく、900MPa以上で加圧することがさらに好ましい。
【0029】
圧縮成形後には、通常熱処理が行われる。磁性粉、絶縁物、結合剤などの種類に応じて、加熱雰囲気及び温度は任意に選択することができる。例えば、磁性粉の絶縁被膜としてリン酸鉄を用いた場合は、熱処理は大気中450℃以上550℃以下で行うことが好ましい。450℃以上で熱処理を行うことにより歪がよりよく除去され、550℃以下で熱処理を行うことにより絶縁被膜の絶縁効果を維持することができる。また、加熱処理後に、さらにスチーム処理行ってもよい。スチーム処理により、強度を向上させることができる。
【0030】
次に、接合体13について説明する。
図1(B)は、
図1(A)と同じ方向からみた、本実施形態に係る接合体13の断面図である。接合体13は、第1の磁性体11と第2の磁性体12との間に介在する部材であり、第1の磁性体11及び第2の磁性体12と相補的な形状の面を有するように形成することにより、任意の形状の第1の磁性体11及び第2の磁性体12を接続することができる。
【0031】
接合体13は、第1の磁性体11に接続される接続面13aと、第2の磁性体12に接続される接続面13bと、を有する。具体的には、接続面13aは、第2の磁性体12に対向する第1の磁性体11の端面11aと接続される。また、接続面13bは、第1の磁性体11に対向する第2の磁性体12の端面12aと接続される。モータ用の磁性コアを作製する場合、通常接続面13aと接続面13bとは平行である。
【0032】
接合体13の材料は任意であるが、磁性コア体の性能を向上させる観点から、接合体13の材料は磁性材料で形成されていること好ましい。磁性材料としては、電磁鋼板、電磁ステンレス、鉄基アモルファス、Fe−Co合金、センダスト、パーマロイ、及びフェライトなどが挙げられる。接合体13の材料は1種類の材料であってもよく、2種類以上の材料の組み合わせであってもよい。接合体13の材料としては、特に、電磁鋼板を用いることが、磁気特性が向上しうる点で好ましい。接合体13は、例えば、板状部材をプレスにより打ち抜くことにより作製することができる。この場合、2枚以上の部材を接着して接合体13として用いてもよい。
【0033】
接合体13の接続面13a,13bは、第1及び第2の磁性体の端面11a,12aに対応する形状を有し、第1の磁性体11及び第2の磁性体12と接続する。具体的な一例として、接合体13は、第1の磁性体11及び第2の磁性体12よりも大きさ(軸孔16に垂直な方向の断面積)が小さいことが好ましい。
図1(B)にはこのような接合体13が示される。このような接合体13は、端面11a,12aの一部に接続することができる。言い換えればこのような接合体13は、端面11a,12aの特定部分を避けるように接続することができる。
【0034】
圧縮成形された第1の磁性体11及び第2の磁性体12の周縁端部には、バリ(突起部)が生じることが多い。特に
図3に示される金型を用いて第1の磁性体11又は第2の磁性体12を作製した場合、端面11a,12aの周縁端部には、ダイス32の貫通孔31と、上パンチ33との隙間に対応するバリが生じる。言い換えれば、端面11a,12aには、平滑部分と、この平滑部分外(平滑部外)に位置する突起部とが存在する。
【0035】
第1の磁性体11と第2の磁性体12とを直接接続するためにはバリを取る必要がある。バリを取るための方法としてはバレル処理、ブラスト処理などが挙げられるが、これらの処理によっては圧縮成形体が破損する可能性がある。本実施形態のように、第1の磁性体11及び第2の磁性体12よりも小さい接合体13を用いることにより、接合体13と、第1の磁性体11及び第2の磁性体12の周縁端部に存在するバリ以外の部分、すなわち平滑部分とを接続することが可能となる。
【0036】
バリを取ることなく第1の磁性体11及び第2の磁性体12を接続するためには、接合体13が
図1(B)に示される形状を有することが好ましい。すなわち、第1の磁性体11及び第2の磁性体12と接合体13とを位置合わせした際に、接合体13の接続面13aの周縁端部が、第1の磁性体11の端面11aの周縁端部よりも内側にあることが好ましい。この周縁端部間の距離は、ダイス32の貫通孔31と、上パンチ33との隙間の長さよりも大きいことが好ましい。同様に、接合体13の接続面13bの周縁端部は、第2の磁性体12の端面12aの周縁端部よりも内側にあることが好ましい。このような接合体13は、
図1(C)に示されるように、第1及び第2の磁性体の端面11a,12aのうち、周縁端部以外の部分に接続することができる。
図1(C)に示すように、接合体13によって形成された第1の磁性体11の端面と第2の磁性体12の端面との間に形成される隙間に、バリを収容する空間が形成される。
【0037】
また、バリを取ることなく第1の磁性体11及び第2の磁性体12を接続するために、接合体13の高さ(軸孔16と平行な方向の厚さ)は、端面11a,12aの周縁端部に生じたバリの高さ以上であることが好ましい。
【0038】
第1の磁性体11、接合体13、及び第2の磁性体を積層することにより、本実施形態に係る磁性コア体14を作製することができる。具体的には、第1の磁性体11、接合体13、及び第2の磁性体を接着剤を用いて接着すればよい。接着剤としては特に限定されないが、渦電流を減少させうる点で、非導電性の接着剤を用いることが好ましい。
【0039】
第1の磁性体11と接合体13との接続をより強固なものとするためには、第1の磁性体11と接合体13との接続部分において、端面11aと接続面13aとが相補的な形状を有することが好ましい。例えば、第1の磁性体11と接合体13との接続部分において、端面11aと接続面13aとは共に平滑面でありうる。上述のように、平滑な接続面13aを、端面11aのうち平滑な部分と接続することにより、このような接続が達成されうる。
【0040】
また、第1の磁性体11と接合体13との接続部分において、端面11aが凸部又は凹部を有してもよく、この場合接続面13aは相補的な凹部又は凸部を有する。例えば、端面11aの全体が凸形状を有していてもよいし、端面11aがその一部に凸部を有してもよい。
図1(C)には後者の例が示されており、第1の磁性体11の端面11aは、接合体13との接続部分に、凸部19を有している。また、接合体13の接続面13aは、第1の磁性体11との接続部分のうち、凸部19に対応する位置に凹部18を有している。このような凸部及び凹部が係合することにより、第1の磁性体11と接合体13との接続がより強固となるため、第1の磁性体11及び接合体13が、互いに相補的な凸部及び凹部を有することは好ましい。
【0041】
また、このような凸部及び凹部は、第1の磁性体11と接合体13とを接続する際に位置決めを行うためにも利用可能である。特に、接合体13を、第1の磁性体の端面11aのうち周縁端部以外の部分に接続しようとする場合、端面11aの周縁端部の位置と接続面13aの周縁端部の位置とが一致しないため、位置決めは容易ではない。しかしながら、このような凸部及び凹部を形成することにより、位置決めを容易に行うことができる。
【0042】
このような凸部又は凹部の数は任意である。例えば、
図1(A)に示されるような複数のティース部15を備える磁性コア体14を作製する場合、それぞれのティース部15に1以上の凸部又は凹部が形成されることは好ましい。また、端面11aは凸部と凹部との双方を有していてもよい。
【0043】
また、上述のように圧縮成形された第1の磁性体11の端面11aが、平滑部分と、この平滑部分外に位置する突起部とを有する場合、凸部又は凹部はこの平滑部分に囲まれていることが、接続強度が向上しうる点で好ましい。
【0044】
第1の磁性体11と接合体13との接続部分についてここまで説明したが、第2の磁性体12と接合体13についても、同様に接続部分において相補的な形状を有することが好ましい。第1の磁性体11及び第2の磁性体12についての凸部又は凹部については、対応する形状の上パンチ33を用いることにより、容易に形成することができる。また、接合体13の凸部又は凹部については、打ち抜き成形により形成することができる。
【0045】
製造の容易性の観点から、第1の磁性体11と第2の磁性体12とは同じ磁性体であることが好ましい。本実施形態の磁性コア体14は2つの磁性体11,12を備えるが、別の実施形態に係る磁性コア体は、3つ以上の磁性体を有してもよい。この実施形態に係る磁性コア体が有する磁性体のうち2つ以上、好ましくは全ては、上述の実施形態と同様に、接合体を介して互いに接続されている。
【0046】
本発明の磁性コア体は、導線を巻回してコイルを作製するために用いることができる。また、このようなコイルを用いて、モータの回転子、電磁石、誘導コイル、変圧器、などを作製することができる。例えば、軸孔16に回転軸を固定し、5か所のティース部15のそれぞれにコイルを巻回することにより、回転子を作製することができる。
【0047】
巻回された導線(コイル)と磁性コア体14との間には、絶縁体を介在させることが好ましい。絶縁体を用いることで、仮にコイルの絶縁被膜が損傷しても、コイルと磁性コア体14との絶縁を確保することができる。絶縁体は、粉体塗装により磁性コア体14に被覆してもよいし、射出成形の一種であるインサート成形により形成してもよい。また、絶縁体である樹脂成形品を磁性コア体14に被せてもよい。ここで、磁性コア体14(特に磁性体11,12)がバリを有する場合、バリとコイルとの間に絶縁体を形成することにより、バリによるコイルへの損傷を防ぐことができる。また、樹脂成形品を被せる場合、樹脂成形品には、磁性コア体14が有するバリを収めるための、バリよりも大きい空間が設けられていることが好ましい。
【実施例】
【0048】
以下実施例により本発明を詳細に説明するが、これらは本発明を何ら限定するものではない。
【0049】
[実施例1]
磁性体である、
図2(A)に示される磁性粉形成体21は以下のように成形した。
図2(C)は、
図2(A)のB1−B1’線に沿う、磁性粉形成体21の断面図である。磁性粉形成体21の半径は17mm、ティース部25の幅は2.8mm、高さは8.75mmであった。
【0050】
軟磁性粉を含む磁性体原料として、Somaloy700 3P(製品名、ヘガネス社製)を用意した。Somaloy700 3Pは絶縁被膜を有する純鉄粉末であり、潤滑剤を含み、平均粒径は250μmである。
【0051】
磁性粉形成体21を形成するために、
図3に模式的に示される金型30を用意した。金型30は、ダイス32と、上パンチ33と、下パンチ34と、コア35とを備える。上下に昇降可能なダイス32は貫通孔31を有し、貫通孔31には下パンチ34がはめられる。貫通孔31にはさらに上パンチ33が上下に昇降可能にはめられる。ダイス32の貫通孔31内壁面と、上パンチ33と、下パンチ34とで囲まれる空間が、磁性体原料が充填されるキャビティとなる。
【0052】
上パンチ33と下パンチ34との互いに対向する面はそれぞれ加圧面であり、
図2に示される磁性粉形成体21の形状と相補的な形状を有する。より具体的には、上パンチ33の加圧面は、凸部29を有する磁性粉形成体21の面21bに対応する形状を有する。また、下パンチ34の加圧面は、磁性粉形成体21の面21aに対応する形状を有する。コア35は磁性粉形成体21の貫通孔を成形するためのものであり、上パンチ33、下パンチ34、及び貫通孔31を貫通している。さらにダイス32にはヒータ36が埋め込まれている。
【0053】
貫通孔31内壁面と、上パンチ33及び下パンチ34の加圧面と、上パンチ33及び下パンチ34がダイス32と接触する面とを含む、ダイス32、上パンチ33及び下パンチ34の表面は、窒化した後に、プラズマCVDによりTiCNがコーティングされている。
【0054】
磁性粉形成体21の成形は以下のように行った。まず、ヒータ36を使用し、ダイス32を80℃まで加熱した。その後、ダイス32の貫通孔31内壁面に、アセトンに分散させたステアリン酸リチウムを噴霧した。アセトンが揮発した後、上記の磁性体原料をキャビティ内に充填し、上パンチ33と下パンチ34との間に900MPaの成形圧を加えて圧縮成形を行った。さらに、得られた成形体を大気中530℃で20分間熱処理した。
【0055】
また、
図2(B)に示される接合体23は以下のように作製した。
図2(D)は、
図2(D)のB2−B2’線に沿う、接合体23の断面図である。
【0056】
材料として厚さ0.35mmの電磁鋼板を用い、プレスによって接合体23を打ち抜いた。接合体23の形状は、磁性粉形成体21の面21bの端部周縁部形状より0.03mm小さい。また、このプレスによって接合体23の、磁性粉形成体21の凸部29に対向する位置には、両面に凹部28が形成された。
【0057】
続いて、2個の磁性粉形成体21と接合体23とを接着剤で貼り合わせることにより、磁性コア体を作製した。具体的には、一方の磁性粉形成体21の面21bと、接合体23の一方の面とを、凸部29と凹部28とが係合するように貼り合わせた。また、他方の磁性粉形成体21の面21bと、接合体23の他方の面とを、凸部29と凹部28とが係合するように貼り合わせた。こうして、磁性粉形成体21の面21bの端部周縁部よりも0.03mm内側に、接合体23を接続した。
【0058】
得られた磁性コア体を用いてブラシ付きDCモータを作製した。具体的には、磁性コア体の軸孔26に回転軸を固定し、コイルを巻回する部分に粉体塗装により絶縁体(材料:エポキシ樹脂)を成形した。その後、回転軸に整流子を固定した。次いで、5か所のティース部25に被覆銅線(直径0.16mm)を124回ずつ巻回して、整流子へ結線することにより、モータを作製した。こうして作製したモータについて、既存のモータに接続し回転させ、発生する電圧を測定する方法を用いて逆起定数を求めた。測定結果を表1に示す。また、こうして作製したモータについて、回転速度と無負荷電流との関係を測定した。測定結果を
図5に示す。
【0059】
[比較例1]
実施例1と同様に、
図4に示される磁性粉形成体41を作製した。具体的には、実施例1と同様に圧縮成形を行った後、メディアとしてHv550、粒径200μmのガラスビーズ((株)不二製作所社製、製品名フジガラスビーズ)を用い、噴射圧力0.2MPaにて成形体に対してブラスト加工を行い、バリを除去した。さらに、バリを除去した成形体を大気中530℃で20分間熱処理することにより、磁性粉形成体41を作製した。
【0060】
このブラスト加工により、いくつかの成形体には欠損が生じた。具体的には、300個中54個の成形体に欠損が生じた。
【0061】
圧縮成形に用いる金型は、得られる成形体のティース部の高さが実施例1のものよりも0.175mm高く、得られる成形体が凸部29は有さない他は、実施例1と同様のものを用いた。
【0062】
欠損を有さない磁性粉形成体41を2個選択し、面41b同士を接着剤で貼り合わせることにより、磁性コア体を作製した。その後、この磁性コア体を用いて実施例1と同様にブラシ付きDCモータを作製し、実施例1と同様に逆起定数を求めた。測定結果を表1に示す。また、こうして作製したモータについて、回転速度と無負荷電流との関係を測定した。測定結果を
図5に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
表1に示すように、実施例1に係るモータの方が逆起定数が大きいことが分かる。このことは、実施例1に係る磁性コア体の方が磁束密度が高いことを示唆している。実施例1においてはバリ取り処理を行っていないために、磁束密度の高さが維持されているものと考えられる。
【0065】
図5は、モータの回転数が2000〜8500rpmである場合についての無負荷電流値を示す。
図5に示すように、実施例1に係るモータの方が無負荷電流が小さいことが分かる。このことは、実施例1に係る磁性コア体の方が鉄損が低いことを示唆している。実施例1においてはバリ取り処理を行っていないために、磁性コア内の歪が減少し、ヒステリシス損が低くなり、その結果鉄損が低くなったとものと考えられる。
【0066】
以上のように、バリ取り処理を行った2個の磁性粉形成体を接着して得た比較例1に係る磁性コア体よりも、2個の磁性粉形成体を接合体を介して接着した実施例1に係る磁性コアは、良好な特性を有することが分かる。