【解決手段】電力は、第一ユニット11と第二ユニット12との間で磁界共鳴を用いた高周波帯域による無線給電によって伝送される。位相制御部62は、電流センサ61で検出した電流に応じて、スイッチング素子44を駆動するキャリアクロックの位相φを制御する。第二ユニット12の位相φを制御することにより、第一ユニット11と第二ユニット12との間の高周波の位相差が制御される。その結果、第一ユニット11と第二ユニット12との間で伝送される電力は、その伝達効率だけでなく伝送方向が制御される。これにより、第一ユニット11と第二ユニット12との間の電力の伝達効率が向上するとともに、第二ユニット12に接続された負荷14における回生によって生じた電力は、第二ユニット12から第一ユニット11へ伝送される。
電源に接続されている第一ユニットと、負荷に接続され前記第一ユニットとの間において磁界共鳴を利用して無線で電力を伝送する第二ユニットとを備える無線給電装置において、
前記第一ユニットおよび前記第二ユニットは、スイッチング手段が設けられている共振型アンプ回路と、前記共振型アンプ回路で生成された高周波が供給され前記共振型アンプ回路における共振用のインダクタとして機能する共鳴コイルと、前記共振型アンプ回路に接続し充放電可能な蓄電手段と、をそれぞれ有し、
前記第二ユニットは、
前記蓄電手段に流れる電流を検出する電流検出手段と、
前記電流検出手段で検出した電流に応じて前記スイッチング手段の駆動位相を制御する位相制御手段と、
を有する無線給電装置。
前記位相制御手段は、前記スイッチング手段の駆動位相を制御することにより、前記第一ユニットから前記第二ユニットへ、および前記第二ユニットから前記第一ユニットへ双方向で電力を伝送する請求項1記載の無線給電装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、無線給電装置の複数の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、複数の実施形態において実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
(第1実施形態)
図1および
図2に示すように、第1実施形態による無線給電装置10は、第一ユニット11および第二ユニット12を備えている。第一ユニット11は、外部の電源13に接続している。第二ユニット12は、この第一ユニット11と対向して設けられ、例えばロボットなど電力を消費する負荷14に接続している。第一ユニット11と第二ユニット12との間は、数MHzから十数MHzの高周波による磁界共鳴によって無線で電力が伝送される。第一ユニット11は、電源13だけでなく、電力を消費する他の負荷と接続していてもよい。
【0014】
図1に示すように第一ユニット11は、共振型アンプ回路21、共鳴コイル22および蓄電部23を有している。共振型アンプ回路21は、スイッチング素子24、コンデンサ25、コンデンサ26およびコイル27を有している。共振型アンプ回路21および蓄電部23は、
図2に示すようにアンプ基板部28に実装されている。また、
図1に示すように共振型アンプ回路21は、第一ユニット11のキャリアクロックを生成するクロック生成部29を有している。スイッチング素子24は、クロック生成部29で生成されたキャリアクロックに基づいて共振型アンプ回路21をスイッチングする。このスイッチングで生成された高周波は、共鳴コイル22へ供給される。共鳴コイル22は、
図2に示すようにアンプ基板部28とは別体の基板31に形成された平面コイルである。共鳴コイル22は、
図1に示すようにコンデンサ25、コンデンサ26およびコイル27とともに共振回路を形成する。共鳴コイル22は、第一ユニット11から第二ユニット12へ電力を伝送するとき、つまり送電するとき、共振型アンプ回路21で生成された高周波を発振する。一方、共鳴コイル22は、第二ユニット12から第一ユニット11へ電力を伝送するとき、つまり受電するとき、第二ユニット12で発振された高周波を受信する。蓄電部23は、例えば二次電池やキャパシタなどで構成されており、共振型アンプ回路21を流れる電流を安定化させる。すなわち、蓄電部23は、第一ユニット11から第二ユニット12へ送電するとき電源として機能し、第二ユニット12から第一ユニット11へ受電するとき蓄電器として機能する。これら、共振型アンプ回路21および蓄電部23は、
図2に示すアンプ基板部28に設けられている。
【0015】
図1に示すように第二ユニット12は、第一ユニット11と同様に、共振型アンプ回路41、共鳴コイル42および蓄電部43を有している。共振型アンプ回路41は、スイッチング素子44、コンデンサ45、コンデンサ46およびコイル47を有している。共振型アンプ回路41および蓄電部43は、
図2に示すようにアンプ基板部48に実装されている。スイッチング素子44は、後述する移相器65で生成されたキャリアクロックに基づいて共振型アンプ回路41をスイッチングする。このスイッチングで生成された高周波は、共鳴コイル42へ供給される。第一ユニット11から高周波が発振されると、磁界共鳴によって第二ユニット12の共振型アンプ回路41で共振が生じ、生じた共振によって第二ユニット12の共振型アンプ回路41は電流を生成する。共鳴コイル42は、
図2に示すようにアンプ基板部48とは別体の基板51に形成された平面コイルである。共鳴コイル42は、
図1に示すようにコンデンサ45、コンデンサ46およびコイル47とともに共振回路を形成する。共鳴コイル42は、第一ユニット11から第二ユニット12へ電力を伝送するとき、つまり受電するとき、第一ユニット11で発振された高周波を受信する。一方、共鳴コイル42は、第二ユニット12から第一ユニット11へ電力を伝送するとき、つまり送電するとき、共振型アンプ回路41で生成された高周波を発振する。蓄電部43は、例えば二次電池やキャパシタなどで構成されており、共振型アンプ回路41を流れる電流を安定化させる。すなわち、蓄電部43は、第二ユニット12から第一ユニット11へ送電するとき電源として機能し、第一ユニット11から第二ユニット12へ受電するとき蓄電器として機能する。これら、共振型アンプ回路41および蓄電部43は、
図2に示すアンプ基板部48に設けられている。
【0016】
第二ユニット12は、上記に加え、制御ユニット60を備えている。制御ユニット60は、アンプ基板部48に実装されている。制御ユニット60は、
図1に示すように電流検出手段としての電流センサ61、および位相制御部62を有している。電流センサ61は、共振型アンプ回路41と蓄電部43とを接続する電気回路の途中に設けられており、この電気回路を流れる電流の大きさを検出する。電流センサ61は、電流の大きさとして電流の向きも検出する。位相制御部62は、電流センサ49、マイクロコンピュータ63、A/D変換器64および移相器65を有している。電流センサ49は、位相制御の元となる共振型アンプ回路41を流れる電流の移相をキャリアクロックとして検出する。すなわち、電流センサ49は、共振型アンプ回路41を流れる電流をサンプリングする。マイクロコンピュータ63は、図示しないCPU、ROMおよびRAMを有しており、ROMに記憶されているコンピュータプログラムによって位相制御部62、および移相器65のデジタルポテンションメータ66を制御し、電流センサ49から入力されたキャリアクロックの移相を制御する。A/D変換器64は、電流センサ61で検出した電流のアナログ値をデジタル値に変換してマイクロコンピュータ63へ出力する。移相器65は、例えば
図3に示すようにデジタルポテンションメータ66、およびボルテージフォロア回路68から構成されている。マイクロコンピュータ63は、電流センサ61で検出した電流に基づいて、電流センサ49から入力されるキャリアクロックの移相を、移相器65で制御する。これにより、マイクロコンピュータ63は、電流センサ61で検出した電流に応じてデジタルポテンションメータ66の値を変更し、移相器65から生成されるキャリアクロックの移相を変更する。その結果、スイッチング素子44を駆動するキャリアクロックの駆動位相が変更され、第二ユニット12の共振型アンプ回路41を流れる高周波の電流の位相が変化する。
【0017】
第一ユニット11のクロック生成部29は、以下の式(1)に示すキャリアクロックを生成する。
V1=V×sin(2πf×t) (1)
これに対し、第二ユニット12の移相器65は、以下の式(2)に示すキャリアクロックを生成する。
V2=V×sin(2πf×t+φ) (2)
これらの式(1)および式(2)に示すように、第一ユニット11から発振される高周波と第二ユニット12から発振される高周波との間には、位相φに相当する位相差が生じる。位相制御部62は、この位相φを変化させることにより、第一ユニット11と第二ユニット12との間の位相差を制御する。なお、移相器65は、
図3においてオールパス型を例に示しているが、制御可能であればこの例に限らない。
【0018】
上述のように、第一ユニット11と第二ユニット12との間で高周波による磁界共鳴が生じると、
図1に示すように第一ユニット11には電流I1が流れ、第二ユニット12には電流I2が流れる。電流センサ61は、この第二ユニット12に流れる電流I2を検出する。
図4に示すように、第一ユニット11と第二ユニット12との間に位相φの差が生じると、電流I1および電流I2の大きさおよび向きが変化する。すなわち、位相φの差を制御することによって、第一ユニット11と第二ユニット12との間における電力の伝達効率だけでなく、第一ユニット11と第二ユニット12との間の電力の伝送方向も変化する。一方、位相φの差が大きくなると、伝送される電力が不安定化しやすい。そこで、本実施形態の場合、−90°≦φ≦90°の範囲で位相φを制御している。すなわち、本実施形態の場合、位相φを制御する位相制御範囲は、−90°≦φ≦90°に設定している。この位相制御範囲は、一例であり、第一ユニット11および第二ユニット12の仕様や特性などに応じて任意に設定することができる。
【0019】
第一ユニット11および第二ユニット12で発振する高周波は、数MHzから十数MHzに設定されている。ここで、共鳴コイル22および共鳴コイル42のインダクタンスをL
resoとし、第一ユニット11および第二ユニット12の出力インピーダンスをR
Lとし、第一ユニット11および第二ユニット12の共振回路のQ値をQ
Lとし、キャリアクロックの周波数をf
dとしたとき、インダクタンスをL
resoは、以下の式(3)で算出される。
L
reso=(Q
L×R
L)/(2πf
d) (3)
上記の式(3)より、第一ユニット11および第二ユニット12で発振する高周波の周波数を高めるほど、インダクタンスL
resoは低下する。その結果、発振する高周波の周波数が高い本実施形態は、外部へ放出されるノイズが低減され、負荷であるロボットなどのような外部の設備への影響が低減される。
【0020】
次に、上記の構成による無線給電装置10の位相制御の流れを
図5および
図6に基づいて説明する。
(初期化)
無線給電装置10の第一ユニット11と第二ユニット12は、例えば個体差などにより高周波の発振特性に差が生じる。すなわち、第一ユニット11と第二ユニット12との間では、接続される電源や負荷、あるいは自身の個体差などによって、位相差が位相制御範囲外となるおそれがある。そこで、無線給電装置10は、起動されると、まず初期化の処理を実行する。初期化の処理は、制御ユニット60において実行される。
【0021】
初期化が開始されると、制御ユニット60のマイクロコンピュータ63は、電流センサ61からA/D変換器64を通して第二ユニット12の共振型アンプ回路41を流れる電流Imを検出する(S101)。制御ユニット60は、予め設定された一定期間が経過するまで電流Imを検出する。制御ユニット60は、設定された一定期間に応じて検出した電流Imから、この検出した電流ImのばらつきΔIを算出する(S102)。この電流ImのばらつきΔIは、例えば検出した電流の最大値と最小値との差などによって算出される。制御ユニット60は、S102において電流ImのばらつきΔIを算出すると、算出したばらつきΔIがしきい値BIより小さいか否かを判断する(S103)。しきい値BIは、無線給電装置10の特性などに応じて任意に設定されている。本実施形態の場合、しきい値BIは、電流の最大値および最小値から±10%に設定している。
【0022】
制御ユニット60は、ばらつきΔIがしきい値BI以上であるとき(S103:No)、位相φを加算する(S104)。ばらつきΔIがしきい値BI以上であるとき、第二ユニット12において設定されているキャリアクロックの位相が
図4に示す位相制御範囲外にあると考えられる。すなわち、第一ユニット11において設定されているキャリアクロックと第二ユニット12において設定されているキャリアクロックとの位相差が過大であり、第一ユニット11と第二ユニット12との間で安定した電力の伝送が行われていないと考えられる。そこで、制御ユニット60は、位相φを加算して双方の位相差を調整する。このとき、制御ユニット60は、例えば位相φを90°程度加算する。制御ユニット60は、S104において位相φを調整した後、S101へリターンし、電流ImのばらつきΔIがしきい値BIより小さくなるまで処理を繰り返す。
【0023】
一方、制御ユニット60は、ばらつきΔIがしきい値BIより小さいとき(S103:Yes)、電流センサ61で電流を検出し、検出した値を電流Ibとする(S105)。制御ユニット60は、電流Ibを検出すると、位相φを加算する(S106)。すなわち、制御ユニット60は、電流Ibを検出すると、第二ユニット12におけるキャリアクロックの位相φを加算する。制御ユニット60は、例えばφ=5°程度の値を加算する。制御ユニット60は、S106において位相φを加算すると、再び電流センサ61で電流を検出し、検出した値を電流Iaとする(S107)。そして、制御ユニット60は、S105で検出した電流Ibと、S107で検出した電流Iaとを比較し、Ia>Ibであるかを判断する(S108)。すなわち、制御ユニット60は、位相φの加算によって、検出した電流Iaが加算前の電流Ibに対して増大する傾向にあるか否かを判断する。
【0024】
制御ユニット60は、S108においてIa>Ibでないと判断したとき(S108:No)、位相φを変更した後の電流Iaがその前の電流Ib以下である、つまりIa≦Ibであると判断し(S109)、S108へリターンする。これにより、制御ユニット60は、検出した電流Iaが位相φの加算前の電流Ibに対して増大する傾向になるまで位相φの加算を繰り返す。
【0025】
一方、制御ユニット60は、S108においてIa>Ibであると判断したとき(S108:Yes)、電流センサ61で電流を検出し、検出した値を電流Imとする(S110)。そして、制御ユニット60は、このS110で検出した電流Imと初期目標電流Isとの差の絶対値が初期電流誤差ΔIsよりも小さいか否かを判断する(S111)。すなわち、制御ユニット60は、|Is−Im|<ΔIsであるか否かを判断する。ここで初期目標電流Isは、第一ユニット11と第二ユニット12との間で伝送する電流の目標値に相当する。また、初期電流誤差ΔIsは、予め誤差として許容できる電流の大きさに基づいて設定される。本実施形態の場合、初期電流誤差ΔIsは、位相制御範囲における電流の最大値および最小値の±10%に設定している。
【0026】
制御ユニット60は、S111において|Is−Im|<ΔIsでないと判断すると(S111:No)、電流Imと初期目標電流Isとの差が初期電流誤差ΔIsよりも大きいか否かを判断する(S112)。すなわち、制御ユニット60は、Is−Im>ΔIsであるか否かを判断する。制御ユニット60は、Is−Im>ΔIsであると判断したとき(S112:Yes)、位相φを加算する(S113)。一方、制御ユニット60は、Is−Im>ΔIsであると判断したとき、位相φを減算する(S114)。このように、制御ユニット60は、検出した電流Imに応じて、位相φを微調整する。制御ユニット60は、例えばS113において位相φとしてφ=1°を加算し、S114においてφ=1°を減算する。
【0027】
制御ユニット60は、S111において|Is−Im|<ΔIsであると判断すると(S111:Yes)、このときの位相φを初期位相φ0として設定する(S115)。すなわち、制御ユニット60は、S106で設定した位相φ、S113で設定した位相φ、またはS114で設定した位相φを初期位相φ0として設定する。
【0028】
このように、制御ユニット60は、S101からS109の処理において、第二ユニット12におけるキャリアクロックの位相φが位相制御範囲に収まるように位相φを調整する。これとともに、制御ユニット60は、第二ユニット12におけるキャリアクロックの位相φが位相制御範囲に収まると、S111からS115の処理において、初期目標電流Isが得られる位相φを探査し、初期位相φ0として設定する。
【0029】
(電力伝送中)
制御ユニット60は、初期化が完了すると、第一ユニット11と第二ユニット12との間で電力の伝送を実行する。電力を伝送しているときの制御ユニット60の処理の流れを
図6に基づいて説明する。
制御ユニット60は、第二ユニット12に接続している負荷14において電力が発生、すなわち回生電力が発生しているか否かを判断する(S201)。制御ユニット60は、回生電力が発生しているとき(S201:Yes)、第二ユニット12のキャリアクロックの位相φを加算する(S202)。一方、制御ユニット60は、回生電力が発生していないとき(S201:No)、第二ユニット12のキャリアクロックの位相φを減算する。すなわち、制御ユニット60は、第一ユニット11から第二ユニット12へ電力を伝送するとき、キャリアクロックの位相φを減算する。一方、制御ユニット60は、第二ユニット12側で発生した回生電力を第二ユニット12から第一ユニット11へ伝送するとき、キャリアクロックの位相φを加算する。これにより、電力は、第二ユニット12のキャリアクロックの位相φを調整することにより、第一ユニット11から第二ユニット12へだけでなく、第二ユニット12から第一ユニット11へも伝送される。
【0030】
以上説明した第1実施形態では、一対の第一ユニット11と第二ユニット12との間は、磁界共鳴を利用して数MHzから十数MHz以上の高周波で電力が無線で伝送される。すなわち、第一ユニット11と第二ユニット12との間では、電力は、磁界共鳴を用いて、高周波帯域による無線給電によって伝送される。したがって、共鳴コイル22および共鳴コイル42の大型化を回避することができるとともに、周辺設備の小型化も図ることができる。これとともに、磁界共鳴を利用した無線給電により、電磁誘導と比較して伝達効率の向上を図ることができる。
【0031】
また、第1実施形態では、第二ユニット12の位相制御部62は、電流センサ61で検出した電流に応じて、スイッチング素子44を駆動するキャリアクロックの位相φを制御する。第一ユニット11と第二ユニット12との間は、共振する高周波の位相差によって、伝送される電力の大きさが変化する。これにより、第一ユニット11と第二ユニット12との間で伝送される電力は、第一ユニット11から発振する高周波の位相を維持したまま、第二ユニット12において位相φを制御するだけで伝達効率が制御される。つまり、第二ユニット12の位相φを制御することにより、第一ユニット11と第二ユニット12との間の高周波の位相差が制御される。その結果、第一ユニット11と第二ユニット12との間で伝送される電力の伝達効率は、容易に制御される。したがって、簡単な構造で小型化および伝達効率の向上を図ることができる。
【0032】
また、第1実施形態では、第一ユニット11と第二ユニット12との間で位相差が生じているとき、この位相差は第一ユニット11の共鳴コイル22または第二ユニット12の共鳴コイル42におけるインピーダンスの上昇を招くに過ぎない。つまり、伝達効率が著しく低下するほどの位相差が生じても、第一ユニット11の共振型アンプ回路21または第二ユニット12の共振型アンプ回路41において電気的な抵抗が増加するだけであり、意図しない電流の流れや過大な電流の流れが生じることはない。したがって、第一ユニット11と第二ユニット12との間で大きな電力を伝送する場合でも、安全性を高めることができる。
【0033】
第1実施形態では、スイッチング素子44を駆動するキャリアクロックの位相φを制御して、第一ユニット11と第二ユニット12との間に位相差を形成することにより、この位相差によって電力の伝達効率だけでなく、伝送方向も制御する。これにより、第二ユニット12に接続された負荷14における回生によって生じた電力は、第二ユニット12から第一ユニット11へ伝送される。その結果、第二ユニット12に接続する負荷14で発生したエネルギーは、第一ユニット11を通して他の負荷へ伝送される。したがって、第二ユニット12におけるキャリアクロックの位相φの制御という簡単な制御により、第一ユニット11と第二ユニット12との間の双方向で電力を伝送することができ、設備全体の消費電力の低減を図ることができる。
【0034】
第1実施形態では、第一ユニット11の共鳴コイル22および第二ユニット12の共鳴コイル42はいずれも共振型アンプ回路21または共振型アンプ回路41の共振用のインダクタとして機能する。そのため、共振型アンプ回路21、41は、共振用のインダクタを別途必要としない。したがって、回路構成の簡略化が図られるとともに、機器の小型化を促進することができる。
【0035】
(第2実施形態)
第2実施形態による無線給電装置を
図7に示す。
第2実施形態による無線給電装置10は、一つの第一ユニット11に対して、二つの第二ユニット71、72が設けられている例である。第二ユニット71および第二ユニット72は、いずれも同一の構造である。この場合、第一ユニット11と第二ユニット71との間での電力の伝送、および第一ユニット11と第二ユニット72との間での電力の伝送だけでなく、第一ユニット11を中継として第二ユニット71と第二ユニット72との間の電力の伝送も可能である。
【0036】
図8は、
図7に示す無線給電装置10を用いた実験結果を示している。第一ユニット11を流れる電流はI1であり、第二ユニット71を流れる電流はI3であり、第二ユニット72を流れる電流はI5である。また、第二ユニット71におけるキャリアクロックの位相はφ3であり、第二ユニット72におけるキャリアクロックの位相はφ5である。
図8(A)は、第二ユニット71および第二ユニット72から第一ユニット11へ電力を伝送する動作パターン1を示している。このとき、第二ユニット71の位相φ3および第二ユニット72の位相φ5は、いずれもφ3=−90°、φ5=−90°に設定している。
図8(B)は、第一ユニット11から第二ユニット71および第二ユニット72へ電力を伝送する動作パターン2を示している。このとき、第二ユニット71の位相φ3および第二ユニット72の位相φ5は、いずれもφ3=+90°、φ5=+90°に設定している。
図8(C)は、第二ユニット71から第一ユニット11を経由して第二ユニット72へ電力を伝送する動作パターン3を示している。このとき、第二ユニット71の位相φ3は+90°に設定するとともに、第二ユニット72の位相φ5は−90°に設定している。この動作パターン3に示すように、第二ユニット71から第一ユニット11を中継して第二ユニット72へ電力を伝送できることがわかる。
【0037】
第2実施形態では、第一ユニット11を中継させることにより、第二ユニット71に接続された負荷14の回生によって生じた電力は第一ユニット11と対向する他の第二ユニット72へ伝送される。逆の場合、すなわち第二ユニット72から第二ユニット71への電力の伝送も同様である。したがって、複数の第二ユニット71、72に接続する負荷14の相互間で電力を融通することができ、設備全体の消費電力の低減を図ることができる。
【0038】
(第3実施形態)
第3実施形態による無線給電装置を
図9および
図10に示す。
第3実施形態の場合、第一ユニット11は、
図9に示すようにスイッチング素子24、コンデンサ25、コンデンサ26およびコイル27から構成される電力変換部81は、共鳴コイル22が形成されている基板31に実装されている。これに対し、キャリアクロックを生成するクロック生成部29は、基板31と別体のアンプ基板部82に実装されている。第一ユニット11の蓄電部23は、クロック生成部29とともにアンプ基板部48に設けられている。一方、第二ユニット12は、
図10に示すようにスイッチング素子44、コンデンサ45、コンデンサ46およびコイル47から構成される電力変換部83は、共鳴コイル42が形成されている基板51に実装されている。これに対し、制御ユニット60は、基板51と別体のアンプ基板部48に実装されている。第二ユニット12の蓄電部43は、制御ユニット60などとともにアンプ基板部48に設けられている。
【0039】
第3実施形態では、第一ユニット11において大電力の高周波を発生するスイッチング素子24は、共鳴コイル22が形成されている基板31とは別体のアンプ基板部28に設けられている。同様に、第二ユニット12において大電力の高周波を発生するスイッチング素子44は、共鳴コイル42が形成されている基板51とは別体のアンプ基板部48に設けられている。これにより、スイッチング素子24およびスイッチング素子44は、高周波を発振する共鳴コイル22および共鳴コイル42と別の基板に設けられる。したがって、アンプ基板部28およびアンプ基板部48の高周波に対するシールドが容易になり、ノイズ対策を容易にすることができる。
【0040】
(第4実施形態)
第4実施形態による無線給電装置を
図11に示す。
第4実施形態では、共鳴コイル基板90と対向する二つのコイルユニット91およびコイルユニット92を備えている。共鳴コイル基板90は、二つのコイルユニット91、92の双方に対向して設けられている。高周波を用いる無線給電装置10の場合、電力を消費しない共鳴コイル93は、電力を伝送する伝送路として機能する。第4実施形態の場合、二つのコイルユニット91、92は、いずれも電源13または負荷14の少なくともいずれか一方に接続している。これにより、二つのコイルユニット91、92は、いずれも第一ユニットとしても機能し、第二ユニットとしても機能する。すなわち、第4実施形態の場合、コイルユニット91が不足する電力を他のコイルユニット92へ伝送するとき、コイルユニット91が第一ユニットとして機能し、コイルユニット92が第二コイルユニットとして機能する。また、コイルユニット92が不足する電力を他のコイルユニット91へ伝送するとき、コイルユニット92が第一ユニットとして機能し、コイルユニット91が第二コイルユニットとして機能する。
【0041】
また、第4実施形態の場合、二つのコイルユニット91、92は、電気的な構造が第1実施形態における第二ユニット12と共通している。すなわち、第4実施形態では、コイルユニット91、92は、いずれも第一ユニットまたは第二ユニットとして機能する。そのため、コイルユニット91、92は、構造的にはより複雑な第二ユニットと共通している。そこで、
図11の場合、コイルユニット91、92には、第二ユニットと共通の符号を付している。
【0042】
以上のように、第4実施形態では、共鳴コイル基板90に形成された共鳴コイル93を用いて構成を共通化したコイルユニット91、92により、双方向の電力の伝送を実行することができる。
【0043】
以上説明した本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の実施形態に適用可能である。