【実施例】
【0026】
[酸化防止用組成物の製造]
(1)原材料
1)中鎖脂肪酸トリグリセリド(商品名:アクターM−4N;理研ビタミン社製)
2)なたね油(ボーソー油脂社製)
3)抽出トコフェロール(商品名:理研Eオイル400;総トコフェロール含有量34%;理研ビタミン社製)
4)d−α−トコフェロール(商品名:理研Eオイル805;総トコフェロール含有量80%;d−α−トコフェロール含有量40%;理研ビタミン社製)
5)L−アスコルビン酸パルミチン酸エステル(商品名;DSMニュートリションジャパン社製)
【0027】
(2)酸化防止用組成物の配合
上記原材料を用いて製造した酸化防止用組成物1〜11の配合組成を表1に示した。酸化防止用組成物1〜11の内、酸化防止用組成物1〜4は本発明に係る実施例であり、酸化防止用組成物5〜11はそれらに対する比較例である。
【0028】
【表1】
【0029】
(3)酸化防止用組成物の製造
表1に示した原材料の配合割合に基づいて、所定の原材料を500ml容ガラス製ビーカーに入れ、ガラス棒で攪拌しながら100℃まで加熱して溶解した後、同温度にてさらに10分間撹拌を続けた。その後、これらを室温まで冷却し、酸化防止用組成物1〜8を得た。また、各製剤の作製量は100gとした。なお、酸化防止用組成物9〜11は、表1に示した原材料をそのまま酸化防止用組成物として用いる比較例であるため、上記の製造は行っていない。
【0030】
[試験例]
(1)ナッツ類の被覆処理
表2に示した原材料を1L容ポリ袋に入れ、その袋の口を縛ったものを手で持ち5分間撹拌して均一に混合し、その表面が酸化防止用組成物により均一に被覆されたスライスアーモンド1〜11を各約100g得た。また、対照として、被覆処理をしていないものをスライスアーモンド12とした。
【0031】
【表2】
【0032】
なお、表2に記載の酸化防止剤組成物1〜11の使用量は、スライスアーモンドに対するトコフェロールの添加量及びL−アスコルビン酸脂肪酸エステルの添加量がそれぞれ約36ppm及び約100ppmとなるように調整されている。
【0033】
(2)官能評価試験
(1)のスライスアーモンド1〜12を60℃の恒温器内で3週間及び9週間それぞれ保存した後、ポリ袋を開封して喫食し、下記表3に示す評価基準に従い、アーモンドに含まれる油脂が酸化することによる劣化風味について評価した。官能試験では、下記表3に示す評価基準に従い10名のパネラーで評価を行ない、評点の平均点を求め、以下の基準にしたがって記号化した。結果を表4に示す。
◎:極めて良好 平均点3.5以上
○:良好 平均点3.0以上、3.5未満
△:やや悪い 平均点2.0以上、3.0未満
×:悪い 平均点2.0未満
【0034】
【表3】
【0035】
【表4】
【0036】
表4の結果より、本発明の酸化防止用組成物1〜4により被覆されたスライスアーモンド1〜4は、「60℃、9週間」という長期間の過酷な保存条件下においても、酸化の進行が抑制され、劣化風味は殆ど感じられなかった。これに対し、比較例の酸化防止用組成物5〜11により被覆されたスライスアーモンド5〜11及び対照のスライスアーモンド12は、「60℃、9週間」の保存条件ではいずれも劣化風味が感じられた。
【0037】
(3)臭気成分の測定
(1)のスライスアーモンド1〜12を60℃の恒温器内で3週間及び9週間それぞれ保存した後に、酸化の進行により生じた臭気成分(n−ヘキサナール)を「ヘッドスペースソープティブエクストラクション法」により測定した。
先ず、20mLヘッドスペースバイアル(GLScience社製)にサンプル2gを入れ、その中にTwister(100%ポリジメチルシロキサン(PDMS)をコーティングさせた攪拌子;膜厚0.5mm;長さ10mm;GERSTEL社製)を1本入れてシリコンマグネティックキャップ(GLScience社製)で蓋をし、40℃恒温槽内で2時間放置して臭気成分を吸着させた。
次いで、このTwisterをバイアルから取り出し、加熱脱着装置(形式:TDU;温度条件:30℃から60℃/分の速度で180℃まで昇温し、同温度で10分間保持する;GERSTEL社製)にセットしてGC/MS装置による分析に供した。GC/MS分析条件を以下に示す。
【0038】
[GC/MS分析条件]
GC装置:6890N(形式;Agilent Technologies社製)
MS装置:5975B(形式;MS四重極温度:150℃;MSイオン源温度:230℃;Agilent Technologies社製)
オーブン温度プログラム:40℃で3分間保持後、10℃/分の速度で140℃まで昇温し、さらに5℃/分の速度で240℃まで昇温し、同温度で7分間保持する。
注入口:Gerstel CIS4(形式;GERSTEL社製)
コールドトラップ温度プログラム:−150℃から12℃/分の速度で220℃まで昇温し、同温度で10分間保持する。
注入モード:スプリットレスモード
注入口圧力:131kPa
カラム:DB−WAXETR(形式;30m×0.25mmI.D.×0.25μmdf;J&W社製)
カラム流量:1.7mL/分
平均線速度:35cm/sec
キャリアガス:ヘリウム
スキャンモード:EI 70eV
【0039】
上記GC/MS分析後、データ処理装置によりクロマトグラム上に記録された各臭気成分に対応するピークについて、積分計を用いてピーク面積を測定した。対照のスライスアーモンド12の臭気成分のピーク面積を基準として、実施例及び比較例のスライスアーモンド1〜11の臭気成分について下式によりピーク面積相対値(%)を求めた。結果を表5に示す。
【0040】
【数1】
【0041】
【表5】
【0042】
表5の結果より、本発明の酸化防止用組成物1〜4により被覆されたスライスアーモンド1〜4は、「60℃、9週間」という長期間の過酷な保存条件下においても、酸化の進行による臭気成分の発生が十分に抑制されていた。これに対し、比較例の酸化防止用組成物5〜11により被覆されたスライスアーモンド5〜11は、「60℃、9週間」の保存条件では臭気成分の発生の抑制は不十分であった。