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特開2015-192931平膜エレメントの製造方法および平膜エレメント
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-192931(P2015-192931A)
(43)【公開日】2015年11月5日
(54)【発明の名称】平膜エレメントの製造方法および平膜エレメント
(51)【国際特許分類】
   B01D 63/08 20060101AFI20151009BHJP
   C02F 1/44 20060101ALI20151009BHJP
【FI】
   B01D63/08
   C02F1/44 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-71220(P2014-71220)
(22)【出願日】2014年3月31日
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】特許業務法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 公博
(72)【発明者】
【氏名】岡田 恭幸
【テーマコード(参考)】
4D006
【Fターム(参考)】
4D006GA02
4D006HA48
4D006HA93
4D006JA07A
4D006JA07C
4D006JA18A
4D006JA19A
4D006JA22A
4D006JA31Z
4D006JB07
4D006KC02
4D006KC14
4D006MA03
4D006PA01
4D006PB08
4D006PC62
4D006PC67
(57)【要約】
【課題】ろ過膜をろ板上に緊張した状態に展張して溶着することができるとともに、ろ過膜の外周縁を滑らかに押し広げた状態にろ板に溶着できる平膜エレメントの製造方法および平膜エレメントを提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂からなるろ板21の表面にシート状のろ過膜22を配置し、加熱板51に設けられた複数の凸状部521、522を、各凸状部521、522がろ過膜22に当接するタイミングを異ならせて、ろ過膜22の周縁部の上からろ板21に押圧することで、深さの異なる複数の凹状接合部231、232をろ板21に形成するとともに、各凹状接合部231、232においてろ過膜22をろ板21に熱溶着で接合してろ過膜22とろ板21との間をろ過膜22の周縁部に沿ってシールする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂からなるろ板の表面にシート状のろ過膜を配置し、加熱板に設けられた複数の凸状部を、各凸状部がろ過膜に当接するタイミングを異ならせて、ろ過膜の周縁部の上からろ板に押圧することで、深さの異なる複数の凹状接合部をろ板に形成するとともに、各凹状接合部においてろ過膜をろ板に熱溶着で接合してろ過膜とろ板との間をろ過膜の周縁部に沿ってシールすることを特徴とする平膜エレメントの製造方法。
【請求項2】
複数の凹状接合部は、加熱板の高さの異なる複数の凸状部を平坦なろ板面に押圧して形成することを特徴とする請求項1に記載の平膜エレメントの製造方法。
【請求項3】
加熱板の複数の凸状部がろ過膜の外周形状に沿った多重の連続体をなし、加熱板の一度の押圧操作により複数の凹状接合部をろ過膜の周縁部に沿って多重に形成し、複数の凹状接合部において同時的にろ過膜とろ板との間をシールすることを特徴とする請求項1または2に記載の平膜エレメントの製造方法。
【請求項4】
加熱板の複数の凸状部は、ろ過膜の外周形状に沿って多重に、かつ内側にあるものが外側にあるものに比べて高く形成され、複数の凹状接合部は、ろ過膜の周縁部に沿って多重に、かつ内側にあるものが外側にあるものに比べて深く形成されることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の平膜エレメントの製造方法。
【請求項5】
加熱板の複数の凸状部は、高さを異ならせて形成され、かつ高く形成されるほどに単位長さ当たりにおけるろ過膜に当接する押圧面積が大きくなり、複数の凹状接合部は、深さを異ならせて形成され、かつ深く形成されるほどに単位長さ当たりにおけるろ過膜とろ板の溶着接合面積が大きくなることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の平膜エレメントの製造方法。
【請求項6】
ろ過膜の外周形状に沿って多重に、かつ異なる高さに形成された加熱板の複数の凸状部を、内側の凸状部から外側の凸状部へと順次にろ過膜に当接させた後に、複数の凸状部の全体でろ過膜の周縁部を多重に押え、ろ過膜を緊張した状態に保持しつつ、複数の凸状部を一度の押圧操作によりろ板に押し込んで、複数の凹状接合部をろ過膜の周縁部に沿って多重に、かつ同時的に形成し、ろ過膜とろ板との間をシールすることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の平膜エレメントの製造方法。
【請求項7】
熱可塑性樹脂からなるろ板の表面に、シート状のろ過膜が周縁部に沿って多重に形成された複数の凹状接合部で熱溶着により接合されてなり、凹状接合部はろ過膜表面からの深さが異なることを特徴とする平膜エレメント。
【請求項8】
複数の凹状接合部は、内側にあるものが外側にあるものに比べて深く形成されていることを特徴とする請求項7に記載の平膜エレメント。
【請求項9】
複数の凹状接合部は、深く形成されるほどに単位長さ当たりにおけるろ過膜とろ板の溶着接合面積が大きくなることを特徴とする請求項7または8に記載の平膜エレメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜分離活性汚泥法(MBR)に使用する浸漬型膜分離装置の平膜エレメントに関し、ろ過膜とろ板とを接合する技術に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に記載する膜エレメントの製造方法では、微孔を形成した微孔性ろ過膜が合成樹脂繊維からなる不織布を支持体としてなり、この微孔性ろ過膜を熱可塑性樹脂製ろ板の周縁に接合するものである。この製造方法では、微孔性ろ過膜と熱可塑性樹脂製ろ板の周縁とを、支持体となる不織布の荷重たわみ温度以下で、熱可塑性樹脂製ろ板のビカット軟化温度以上の温度に温度制御された熱板によって接合するものであり、熱可塑性樹脂製ろ板の周縁に凹部を形成するとともに該凹部に微孔性ろ過膜を引き込んで接合し、前記凹部の底部に位置する部分の合成樹脂繊維の断面形状が前記凹部の縁部に位置する部分の合成樹脂繊維の断面形状に対して変化しないように行うものである。
【0003】
また、特許文献2に記載する浸漬型平膜エレメントの製造方法では、樹脂製のろ板に複数の線状溶融代と線状溶融代の外側に位置する網目状溶融代とをろ板の表面から突出して、かつろ板の周縁部に沿って成形してあり、ろ板の表面に各線状溶融代および網目状溶融代を覆ってろ過膜を配置し、ろ過膜の上からアップダウンホーンをその平坦面において各線状溶融代および網目状溶融代に押圧し、アップダウンホーンの振動により各線状溶融代および網目状溶融代においてろ過膜を融着するものである。
【0004】
そして、内側の線状溶融代に形成する線状の内側固定部でろ過膜を緊張状態に保持し、中央の線状溶融代に形成する止水部でろ過膜の全周にわたって止水機能を確保し、外側の網目状溶融代に形成する網目状の固定部でろ過膜の周縁をろ板に断続的に固定するものであり、網目状溶融代と各線状溶融代との高さを違え、ろ板の表裏において各線状溶融代と網目状溶融代とを別途に融着するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5079984号
【特許文献2】特許第3778758号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の構成においては、熱板によって熱可塑性樹脂製ろ板に凹部を形成するとともに凹部に微孔性ろ過膜を引き込んで接合するので、微孔性ろ過膜を緊張した状態に設けることができるが、凹部から外側にはみ出した微孔性ろ過膜の周縁部はろ板と接合しておらず、この周縁部が曝気流等の処理槽内の流れの影響を受けて揺れ動き、凹部における微孔性ろ過膜と熱可塑性樹脂製ろ板との接合部に悪影響を与えて剥離や破断等を引き起こす問題がある。
【0007】
また、凹部へ微孔性ろ過膜を引き込む際に、凹部から外側にはみ出した微孔性ろ過膜の周縁部は自由状態であるので、凹部へ微孔性ろ過膜を引き込む際に生じるろ過膜の歪に起因して、微孔性ろ過膜の周縁部には皺が発生する。このため、熱板によって熱可塑性樹脂製ろ板と微孔性ろ過膜とを一条の凹部で接合して熱可塑性樹脂製ろ板と微孔性ろ過膜とを一重にシールした後に、さらに別途の後工程で微孔性ろ過膜の周縁部を熱可塑性樹脂製ろ板に接合しても、既に微孔性ろ過膜の周縁部に発生した皺を解消して接合することは困難であり、皺が曝気流等の処理槽内の流れの影響を受けて剥離や破断等を引き起こす要因となる問題がある。
【0008】
特許文献2の構成においては、ろ過膜は、内側の線状溶融代、中央の線状溶融代、網目状溶融代で融着されており、内側の線状溶融代、中央の線状溶融代、網目状溶融代がろ板の表面から突出しているので、融着の動作においてろ過膜とろ板の表面との間がろ過膜の全域にわたって密着するように作用しない。このため、平膜エレメントが処理槽内で曝気に伴う上昇流にさらされる状態において平膜エレメントに振動が発生し、この振動に起因するろ過膜のろ板からの膨出、張り付き動作によりろ過膜の融着部で屈曲ストレスが大きくなり、疲労で膜の破断や剥離が起こり易くなる問題があった。
【0009】
本発明は上記した課題を解決するものであり、ろ過膜をろ板上に緊張した状態に展張して溶着することができるとともに、ろ過膜の外周縁を滑らかに押し広げた状態にろ板に溶着できる平膜エレメントの製造方法および平膜エレメントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の平膜エレメントの製造方法は、熱可塑性樹脂からなるろ板の表面にシート状のろ過膜を配置し、加熱板に設けられた複数の凸状部を、各凸状部がろ過膜に当接するタイミングを異ならせて、ろ過膜の周縁部の上からろ板に押圧することで、深さの異なる複数の凹状接合部をろ板に形成するとともに、各凹状接合部においてろ過膜をろ板に熱溶着で接合してろ過膜とろ板との間をろ過膜の周縁部に沿ってシールすることを特徴とする。
【0011】
本発明の平膜エレメントの製造方法において、複数の凹状接合部は、加熱板の高さの異なる複数の凸状部を平坦なろ板面に押圧して形成することを特徴とする。
本発明の平膜エレメントの製造方法において、加熱板の複数の凸状部がろ過膜の外周形状に沿った多重の連続体をなし、加熱板の一度の押圧操作により複数の凹状接合部をろ過膜の周縁部に沿って多重に形成し、複数の凹状接合部において同時的にろ過膜とろ板との間をシールすることを特徴とする。
【0012】
本発明の平膜エレメントの製造方法において、加熱板の複数の凸状部は、ろ過膜の外周形状に沿って多重に、かつ内側にあるものが外側にあるものに比べて高く形成され、複数の凹状接合部は、ろ過膜の周縁部に沿って多重に、かつ内側にあるものが外側にあるものに比べて深く形成されることを特徴とする。
【0013】
本発明の平膜エレメントの製造方法において、加熱板の複数の凸状部は、高さを異ならせて形成され、かつ高く形成されるほどに単位長さ当たりにおけるろ過膜に当接する押圧面積が大きくなり、複数の凹状接合部は、深さを異ならせて形成され、かつ深く形成されるほどに単位長さ当たりにおけるろ過膜とろ板の溶着接合面積が大きくなることを特徴とする。
【0014】
本発明の平膜エレメントの製造方法において、ろ過膜の外周形状に沿って多重に、かつ異なる高さに形成された加熱板の複数の凸状部を、内側の凸状部から外側の凸状部へと順次にろ過膜に当接させた後に、複数の凸状部の全体でろ過膜の周縁部を多重に押え、ろ過膜を緊張した状態に保持しつつ、複数の凸状部を一度の押圧操作によりろ板に押し込んで、複数の凹状接合部をろ過膜の周縁部に沿って多重に、かつ同時的に形成し、ろ過膜とろ板との間をシールすることを特徴とする。
【0015】
本発明の平膜エレメントは、熱可塑性樹脂からなるろ板の表面に、シート状のろ過膜が周縁部に沿って多重に形成された複数の凹状接合部で熱溶着により接合されてなり、凹状接合部はろ過膜表面からの深さが異なることを特徴とする。
【0016】
本発明の平膜エレメントにおいて、複数の凹状接合部は、内側にあるものが外側にあるものに比べて深く形成されていることを特徴とする。
本発明の平膜エレメントにおいて、複数の凹状接合部は、深く形成されるほどに単位長さ当たりにおけるろ過膜とろ板の溶着接合面積が大きくなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
以上のように本発明によれば、シート状のろ過膜を加熱板の凸状部でろ板に押し込んで凹状接合部を形成してろ過膜をろ板に熱溶着で接合するので、ろ過膜とろ板の表面との間がろ過膜の全域にわたって密着するように作用する。このため、平膜エレメントが処理槽内で上昇流にさらされる状態においても平膜エレメントの振動に起因するろ過膜の振動が生じ難くなる。
【0018】
また、各凸状部がろ過膜に当接するタイミングが異なることで、加熱板に作用する負荷が段階的に増加するので、加熱板に一度に大きな負荷が作用することを抑制でき、加熱板の熱容量および電源容量を軽減できる。
【0019】
また、ろ板は平坦なろ板面でよいので、ろ板の構造が簡易なものとなる。
また、加熱板の一度の押圧操作により複数の凹状接合部で同時的にろ過膜をろ板に接合するので、接合操作を簡略化できる。
【0020】
また、加熱板の複数の凸状部は、高く形成されるほどにろ過膜の外周形状に沿う方向での単位長さ当たりにおけるろ過膜に当接する押圧面積が大きくなり、凹状接合部は、深く形成されるほどに溶着接合面積が大きくなるので、溶融着接合面積が大きくなる凹状接合部が先に溶着を開始することで凹状接合部における確実なシール性を実現できる。
【0021】
加熱板の複数の凸状部を、内側の凸状部から外側の凸状部へと順次にろ過膜に当接させた後に、複数の凸状部の全体でろ過膜の周縁部を多重に押え、ろ過膜を緊張した状態に保持しつつ、複数の凸状部を一度の押圧操作によりろ板に押し込んで、複数の凹状接合部をろ過膜の周縁部に沿って多重に、かつ同時的に形成するので、ろ過膜をろ板上に緊張した状態に展張して溶着することができるとともに、ろ過膜の外周縁を滑らかに押し広げた状態にろ板に溶着できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施の形態における膜エレメントを示す正面図
図2】同膜エレメントの要部拡大図
図3】同膜エレメントを使用する浸漬型膜分離装置を示す斜視図
図4】本発明の他の実施の形態における膜エレメントを示す要部拡大図
図5】本発明の膜エレメントの製造方法を示す工程図の1
図6】本発明の膜エレメントの製造方法を示す工程図の2
図7】本発明の膜エレメントの製造方法を示す工程図の3
図8】本発明の膜エレメントの製造方法を示す工程図の4
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図3に示すように、膜分離装置1は、複数枚の平膜エレメント2と、その下方より膜面洗浄気体を噴出する散気装置3とをケース4の内部に等間隔で配置したものである。ケース4は膜ケース5と散気ケース6とに分割形成し、散気装置3より噴出する膜面洗浄気体の全量が膜ケース5内に入り込むように形成している。
【0024】
平膜エレメント2は、ABS樹脂等の熱可塑性樹脂からなるろ板21の両表面にシート状をなす有機性のろ過膜22を配置し、ろ過膜22をその周縁部の凹状接合部23においてろ板21に溶着によって接合してろ過膜22とろ板21との間をろ過膜22の周縁部に沿ってシールしたものである。ろ板21とろ過膜22との間、およびろ板21の内部には透過液流路を形成し、透過液流路に連通する透過液取出口24をろ板21の上端縁に形成している。
【0025】
各平膜エレメント2は、透過液取出口24に接続したチューブ7を介して集水管8に連通しており、膜透過液を導出する透過液導出管9を集水管8に接続している。
図1図2に示すように、平膜エレメント2には直線状もしくは帯状に延びる複数条の凹状接合部231、232がシート状のろ過膜22の周縁部に沿って多重に、かつろ過膜22の外周縁部に沿って連続した溝状に形成されている。ここでは2つの凹状接合部231、232を形成した例を示すが、図4に示すように、3つ以上の凹状接合部23を設けることも可能である。
【0026】
本実施の形態では、内側の凹状接合部231が直線状をなし、外側の凹状接合部232が帯状に延びる網目状をなす。ここで網目の模様は方形状をなしているが、三角、円、楕円等のものでもよい。また、図4に示すように、凹状接合部23の形状は全てが直線状であってもよく、また他の形状、例えば波形とすることも可能である。
【0027】
複数の凹状接合部23を形成する以前において、ろ板21は凹状接合部23を形成する部位が平坦なろ板面をなしている。各凹状接合部231、232は溶着前の平坦なろ板面に配置したろ過膜22の表面から各凹状接合部231、232の底部におけるろ過膜22の表面までの距離、つまり深さが内側にある凹状接合部231と外側にある凹状接合部232とで異なっており、内側にある凹状接合部231が外側にある凹状接合部232に比べて深く形成されている。内側にある凹状接合部231の深さは最大で0.7mmに設定することができ、外側にある凹状接合部232の深さは最大で0.4mmに設定することができ、両者の差は0.05mmから0.5mmの間で設定される。
【0028】
両者の差が0.05mmよりも小さいとろ過膜22の厚みよりも大幅に小さくなる。このため、後述する平膜エレメント2の製造方法で説明するように、加熱板51の各凸状部521、522をタイミングを異ならせてろ過膜に当接させる作用効果が損なわれる。また、両者の差が0.05mmよりも大きいと溶着工程に過大な時間とエネルギーを要するため好ましくない。
【0029】
凹状接合部23は深く形成されるほどにろ過膜22の外周形状に沿う方向での単位長さ当たりにおけるろ過膜22とろ板21との溶着接合面積が大きくなり、ここでは内側にある凹状接合部231の溶着接合面積が外側にある帯状に延びる網目状の凹状接合部232の溶着接合面積よりも大きく設定されている。
【0030】
この平膜エレメント2を備えた膜分離装置1を活性汚泥処理施設において使用する場合には、曝気槽内部の活性汚泥混合液中に膜分離装置1を浸漬し、散気装置3より曝気空気を噴出させる状態において、原水中の有機物や窒素を活性汚泥により処理する。活性汚泥混合液は、槽内での水頭を駆動圧として平膜エレメント2により重力ろ過し、あるいは透過液導出管9に吸引ポンプを介装して吸引ろ過する。平膜エレメント2の膜面を透過した透過液を処理水として透過液導出管9を通じて槽外へ導出する。
【0031】
このとき、散気装置3より噴出する曝気空気の気泡およびそれにより生起される上昇流が、相互に隣接する平膜エレメント2の間の狭い流路(5〜10mmの幅)を流れることによって、平膜エレメント2の膜面を洗浄し、分離機能の低下を抑制して膜分離装置1が機能不全に至ることを防止する。
【0032】
本実施の形態の平膜エレメント2は、シート状のろ過膜22を凹状接合部231、232に押し込んでろ板21に熱溶着で接合しているので、ろ過膜22とろ板21の表面との間がろ過膜22の全域にわたって密着した状態になり、外側の凹状接合部232が網目状をなすことで、ろ過膜22の外周縁辺25が断続的に凹状接合部232に押し込まれてろ板21と接合するので、ろ過膜22の外周縁辺25が伸張した状態となり、ろ板21のろ板面から浮き上がることなく、ろ板面と密着した状態に保持される。
【0033】
このため、処理槽内で平膜エレメント2が曝気に伴う上昇流にさらされる状態においても、ろ過膜22に振動が発生することを抑制でき、振動に起因してろ過膜22がろ板21から膨出、張り付き動作することが抑制され、ろ過膜22の溶着部での屈曲ストレスを減少させて疲労を抑制できる。
【0034】
以下に、平膜エレメント2の製造方法を説明する。なお、図5から図8は、図2におけるA−A矢視断面図であり、平膜エレメント2の製造工程を示すものである。
図5に示すように、ろ板23の表面にシート状のろ過膜22を配置する。本実施の形態において、ろ板23は少なくともろ過膜22の周縁部に相当する部位が平坦なろ板面をなすので、ろ板の構造が簡易なものとなる。
【0035】
加熱板51には直線状の凸状部521と帯状に延びる網目状の凸状部522が設けてあり、複数の凸状部521、522はろ過膜22の外周形状に沿って連続体をなし、かつろ過膜22の外周形状に沿って多重に配置されている。複数の凸状部521、522は、高さを異ならせて形成されており、内側にある凸状部521が外側にある凸状部522に比べて高く形成され、かつろ過膜22の外周形状に沿う方向での単位長さ当たりにおけるろ過膜22に当接する押圧面積が大きくなる形状をなす。
【0036】
次に、図6に示すように、加熱板51をろ過膜22に向けて降下させ、内側の高い凸状部521を先にろ過膜22に当接させ、ろ過膜22のろ過有効領域を内側の凸状部521で囲む。
【0037】
次に、図7に示すように、さらに加熱板51をろ過膜22に向けて降下させ、内側の高い凸状部521を外側の低い凸状部522との高さの僅かの差、約0.2mm程度だけ先行させてろ板21に押し込みろ過膜22のろ過有効領域を緊張した状態に保持し、外側の低い凸状部522を遅れたタイミングでろ過膜22に当接させる。
【0038】
このように、各凸状部521、522がろ過膜22に当接するタイミングが異なり、外側の凸状部522がろ過膜22に当接しない状態で、内側の高い凸状部521によってのみろ過膜22をろ板21に僅かに押し込むことで、押し込み時にろ過膜22に作用するストレスを軽減できるとともに、加熱板51に作用する負荷が段階的に増加するので、加熱板51に一度に大きな負荷が作用することを抑制でき、加熱板51の熱容量および電源容量を軽減できる。
【0039】
また、内側の高い凸状部521で先行してろ過膜22をろ板21に僅かに押し込むことで、皺のない展張した状態のろ過膜22がろ板21と密着する状態で、ろ過膜22とろ板21の間をシールすることができ、先に溶着する内側の凹状接合部231が深く形成され、かつ単位長さ当たりにおけるろ過膜22とろ板21の溶着接合面積が大きく形成されることで、確実なシール性と確実な接合強度を実現できる。
【0040】
次に、図8に示すように、複数の凸状部521、522の全体でろ過膜22の周縁部を多重に押え、先に内側の凸状部521でろ過膜22を適切な引き込み力で緊張した状態に保持しつつ、その後に外側の凸状部522を伴って複数の凸状部521、522を一度の押圧操作によりろ板21に押し込んで、深さの異なる複数の凹状接合部231、232をろ過膜22の周縁部に沿って多重に、かつ内側にある凹状接合部231を外側にある凹状接合部232に比べて深く形成し、複数の凹状接合部231、232において同時的にろ過膜22をろ板21に熱溶着で接合してろ過膜22とろ板21の間をろ過膜22の周縁部に沿ってシールする。
【0041】
よって、加熱板51の一度の押圧操作により複数の凹状接合部231、232で同時的にろ過膜22をろ板21に接合するので、接合操作を簡略化できるとともに、ろ過膜22に過度なストレスが作用することを防止できる。
【0042】
また、以上の方法で製作された平膜エレメント2は、シート状のろ過膜22を加熱板51の凸状部521、522でろ板21に押し込んで凹状接合部231、232を形成して、ろ過膜22を緊張した状態でろ板21に熱溶着で接合するので、ろ過膜22とろ板21の表面との間がろ過膜22の全域にわたって密着した状態になる。
【0043】
さらに、ろ過膜22の外周縁を滑らかに押し広げた状態にろ板21に溶着できる。本実施の形態では、外側の凹状接合部232が網目状をなすことで、ろ過膜22の外周縁辺が断続的に凹状接合部232に押し込まれてろ板21と接合するので、ろ過膜22の外周縁辺が伸張した状態となり、ろ板21のろ板面から浮き上がることなく、ろ板面と密着した状態に保持される。
【0044】
図4に示すように、凹状接合部23は3本の直線状に形成することも可能である。この場合に、最外側の凹状接合部233は幅を広く形成することで、ろ過膜の寸法誤差や配置誤差を吸収してろ過膜22の外周縁辺を全周にわたってろ板21に熱溶着することも可能である。これによって、ろ過膜22の外周縁辺の剥離を確実に防止できる。
【符号の説明】
【0045】
1 膜分離装置
2 平膜エレメント
3 散気装置
4 ケース
5 膜ケース
6 散気ケース
7 チューブ
8 集水管
9 透過液導出管
21 ろ板
22 ろ過膜
23、231、232、233 凹状接合部
24 透過液取出口
51 加熱板
521、522 凸状部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8