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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-193008(P2015-193008A)
(43)【公開日】2015年11月5日
(54)【発明の名称】金型強化方法及び鍛造用金型
(51)【国際特許分類】
   B21J 13/02 20060101AFI20151009BHJP
   B21K 1/30 20060101ALI20151009BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20151009BHJP
   B23K 26/382 20140101ALI20151009BHJP
【FI】
   B21J13/02 G
   B21J13/02 K
   B21K1/30 C
   B23K26/00 G
   B23K26/382
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-71018(P2014-71018)
(22)【出願日】2014年3月31日
(71)【出願人】
【識別番号】000238360
【氏名又は名称】武蔵精密工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(74)【代理人】
【識別番号】100161355
【弁理士】
【氏名又は名称】野崎 俊剛
(72)【発明者】
【氏名】村田 真一
【テーマコード(参考)】
4E087
4E168
【Fターム(参考)】
4E087AA09
4E087ED01
4E087ED04
4E087HA03
4E168AD12
4E168AD14
4E168JA02
(57)【要約】
【課題】寸法精度を維持しつつ鍛造用金型を強化することができる強化技術を提供することを課題とする。
【解決手段】リングパンチ34は、中心に円筒穴36を有し、この円筒穴36を囲う円周上に交互に配置される成形凸部32と成形凹部33とを備える。成形凸部32に成形凸部32より硬度の高いピン50が埋設されている。
【効果】成形凸部32より硬度の高いピン50を成形凸部32に付加するため、ピン50が補強作用を発揮し、成形凸部32を強化する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周方向に成形凹部と成形凸部とが交互に配置されている鍛造用金型を強化する金型強化方法であって、
前記成形凸部に穴を開ける穴開け工程と、
前記成形凸部より硬度の高いピンを前記穴に嵌めるピン嵌め工程とを前記鍛造用金型へ施すことを特徴とする金型強化方法。
【請求項2】
前記穴開け工程では、前記穴はレーザ加工で開けることを特徴とする請求項1記載の金型強化方法。
【請求項3】
前記ピン嵌め工程では、前記ピンの少なくも一端が前記成形凸部から突出しており、
この突出部分を除去する除去工程が、前記ピン嵌め工程の後で実施されることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の金型強化方法。
【請求項4】
周方向に成形凹部と成形凸部とが交互に配置されている鍛造用金型であって、
前記成形凸部に穴が設けられ、前記穴には、前記成形凸部より硬度の高いピンが嵌められていることを特徴とする鍛造用金型。
【請求項5】
前記ピンの外径と前記穴の径は同じ大きさであることを特徴とする請求項4記載の鍛造用金型。
【請求項6】
前記穴は、前記成形凸部を貫通する貫通穴であることを特徴とする請求項4又は請求項5記載の鍛造用金型。
【請求項7】
前記ピンは、一端に円錐部を有する尖り先ピンであることを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項記載の鍛造用金型。
【請求項8】
前記鍛造用金型は、中心に円筒穴を有し、前記成形凹部と前記成形凸部は前記円筒穴を囲むように配置され、且つ前記円筒穴の中心を通る中心軸に対して前記貫通穴の中心軸が30°〜60°の範囲から選択される傾斜角で傾斜しており、前記円錐部の円錐角は前記傾斜角の2倍に設定されていることを特徴とする請求項7項記載の鍛造用金型。
【請求項9】
前記穴は、底部を有する非貫通穴であり、前記ピンは丸先ピンであることを特徴とする請求項4又は請求項5記載の鍛造用金型。
【請求項10】
前記鍛造用金型は、かさ歯車の鍛造に供する金型であり、前記ピンは前記かさ歯車のピッチ円上に配置されていることを特徴とする請求項4〜9のいずれか1項記載の鍛造用金型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、かさ歯車の鍛造に好適な鍛造用金型に関する。
【背景技術】
【0002】
駆動軸と従動軸が直交又は交差している部位に、かさ歯車が用いられる。かさ歯車は削り出しにより製造される他、鍛造でも製造される。鍛造は金型が必須であるが、大量生産であれば製造コストの低減が図れる。鍛造用金型は各種の構造のものが知られている(例えば、特許文献1(図1)参照。)。
【0003】
特許文献1の図1Bに示されるように、周方向に歯形成形部(12)(括弧付き数字は、特許文献1に記載された符号を示す。以下同様)と製品の歯底を成形する凸部(14)とが交互に配置されている。鍛造の際には大きな圧力や摩擦が歯形成形部(12)及び凸部(14)にが加わるため、金型の寿命は短くなる。金型は高価であるため、寿命を延ばすことが望まれる。
【0004】
寿命を延ばす対策を講じた金型構造が各種提案されてきた(例えば、特許文献2(図11)参照。)。
【0005】
特許文献2の図11に示されるように、補強ケース(2)(括弧付き数字は、特許文献2に記載された符号を示す。以下同様)に軸圧入穴(24)を開設し、該軸圧入穴(24)に軸(25)を圧入して、補強ケース(2)の内径を小さくする。必然的に補強ケース(2)の外径が大きくなる。
【0006】
補強ケース(2)の内径及び外径が変化する程の圧入を行うと、軸(25)の軸力が大きくなり、軸(25)が曲がることや、倒れる心配がある。よって、高度な圧入技術が求められ、圧入工数が嵩む。
特許文献2の技術より、容易に金型を強化することができる技術が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−198381号公報
【特許文献2】特許第2624629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、容易に鍛造用金型を強化することができる強化技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、周方向に成形凹部と成形凸部とが交互に配置されている鍛造用金型を強化する金型強化方法であって、
前記成形凸部に穴を開ける穴開け工程と、前記成形凸部より硬度の高いピンを前記穴に嵌めるピン嵌め工程とを前記鍛造用金型へ施すことを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る発明は、穴開け工程で、穴はレーザ加工で開けることを特徴とする。
【0011】
請求項3に係る発明は、ピン嵌め工程で、ピンの少なくも一端が前記成形凸部から突出しており、この突出部分を除去する除去工程が、ピン嵌め工程の後で実施されることを特徴とする。
【0012】
請求項4に係る発明は、周方向に成形凹部と成形凸部とが交互に配置されている鍛造用金型であって、
前記成形凸部に穴が設けられ、前記穴には、前記成形凸部より硬度の高いピンが嵌められていることを特徴とする。
【0013】
請求項5に係る発明では、ピンの外径と穴の径は同じ大きさであることを特徴とする。
【0014】
請求項6に係る発明では、穴は、成形凸部を貫通する貫通穴であることを特徴とする。
【0015】
請求項7に係る発明では、ピンは、一端に円錐部を有する尖り先ピンであることを特徴とする。
【0016】
請求項8に係る発明では、鍛造用金型は、中心に円筒穴を有し、成形凹部と成形凸部は円筒穴を囲むように配置され、且つ円筒穴の中心を通る中心軸に対して貫通穴の中心軸が30°〜60°の範囲から選択される傾斜角で傾斜しており、円錐部の円錐角は傾斜角の2倍に設定されていることを特徴とする。
【0017】
請求項9に係る発明では、穴は底部を有する非貫通穴であり、ピンは丸先ピンであることを特徴とする。
【0018】
請求項10に係る発明では、鍛造用金型は、かさ歯車の鍛造に供する金型であり、ピンはかさ歯車のピッチ円上に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に係る発明では、成形凸部に穴を開け、この穴に硬度の高いピンを嵌める。
成形凸部より硬度の高いピンを成形凸部に付加するため、ピンが補強作用を発揮し、成形凸部を強化する。
よって、本発明によれば、容易に鍛造用金型を強化することができる強化技術が提供される。
【0020】
請求項2に係る発明は、穴開け工程で、穴はレーザ加工で開ける。ごく硬い材質であってもレーザであれば金型に穴を開けることができる。よって、金型の材質の選択自由度が高まる。
【0021】
請求項3に係る発明では、ピン嵌め工程後に除去工程を実施し、この除去工程でピンの突出部分を除去する。ピンの全てを穴に嵌めようとすると高度な嵌め込み技術が必要となる。この点、ピン嵌め工程で突出部分を残すことが許容されれば、ピンの一端をチャックする形式のピン打ち具が採用できる。この種のピン打ち具は安価であり、ピン嵌めに係るコストを低減することができる。
【0022】
請求項4に係る発明では、成形凸部に穴を開け、この穴にピンを嵌める。成形凸部より硬度の高いピンを成形凸部に付加するため、ピンが補強作用を発揮し、成形凸部を強化する。
よって、本発明によれば、容易に鍛造用金型を強化することができる強化技術が提供される。
【0023】
請求項5に係る発明では、ピンの外径と穴の径は同じ大きさであるため、穴へピンを容易に嵌めることができ、ピン嵌め工数を低減することができる。
【0024】
請求項6に係る発明では、穴は、成形凸部を貫通する貫通穴である。穴をレーザ加工で開ける場合、底あり穴よりも貫通穴の方が、レーザ照射時間の管理が容易であり、穴開け作業が楽になる。
【0025】
請求項7に係る発明では、ピンは、一端に円錐部を有する尖り先ピンである。先が尖っているため、穴にピンを容易に嵌めることができ、ピン嵌め作業が楽になる。
【0026】
請求項8に係る発明では、鍛造用金型は、中心に円筒穴を有し且つ円筒穴の中心を通る中心軸に対して貫通穴の中心軸が30°〜60°の範囲から選択される傾斜角で傾斜しており、円錐部の円錐角は傾斜角の2倍に設定されている。円筒穴に嵌るダミー軸を準備し、このダミー軸を円筒穴に嵌める。貫通穴の一端はダミー軸で塞がれる。貫通穴の他端から尖り先ピンを嵌めると、このピンは先端がダミー軸に当たって止まる。ピン先端の傾斜角の1/2が、円筒穴の中心軸と貫通穴の中心軸のなす傾斜角と位置しているため、円錐部の円錐面が円筒穴の面と面一になる。結果、ピンの先端に除去加工を施す必要がなく、除去工数の低減を図ることができる。
【0027】
請求項9に係る発明では、穴は底部を有する非貫通穴であり、ピンは丸先ピンである。ピンの先端に除去加工を施す必要がなく、除去工数の低減を図ることができる。
【0028】
請求項10に係る発明では、鍛造用金型は、かさ歯車の鍛造に供する金型であり、ピンはかさ歯車のピッチ円上に配置される。ピンの位置は重要であり、一般に強度計算を重ねるなどしてピンの位置が決定される。一方、本発明では、強度計算を行うこと無しに、ピンの位置をピッチ円上に定める。ピンの位置が一義的に決まり、面倒な計算や検討を行う必要がないため、設計費用の低減が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明に係る鍛造用金型の断面図である。
図2】鍛造用金型の作用図である。
図3図2の3矢視図である。
図4図3の4−4線断面図である。
図5】穴開け工程とピン嵌め工程を説明する図である。
図6】ピンの補強効果を説明する図である。
図7】穴開け工程と別のピン嵌め工程を説明する図である。
図8】更なる別の穴開け工程とピン嵌め工程を説明する図である。
図9】別の形態のピンを説明する図である。
図10】ピンとピッチ円の相関を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
【実施例】
【0031】
図1に示すように、鍛造用金型10は、ダイ20とパンチ30とを備えている。
ダイ20は、基台11から上へ延ばした筒状ダイ21と、この筒状ダイ21を外から囲うと共に筒状ダイ21に対して上下に移動するフローチングダイ22と、基台11に設けられフローチングダイ22を所定の力で押し上げる油圧シリンダ23と、基台11を貫通し且つ筒状ダイ21を貫通しているノックアウトピン24と、このノックアウトピン24を軸方向に移動するノックアウトシリンダ25とを備えている。
【0032】
筒状ダイ21は、上部にワークとしてのかさ歯車40の背面を収納する凹部26を有する。
フローチングダイ22は上部に環状突起27を有する。環状突起27は、かさ歯車40の歯41の外周端42を規制する傾斜面28を有する。
【0033】
パンチ30は、かさ歯車40の正面中央部41を窪ませるセンタパンチ31と、このセンタパンチ31を囲うと共に成形凸部32及び成形凹部33を有するリングパンチ34と、このリングパンチ34及びセンタパンチ31を支えるパンチ支持板35とを備えている。
【0034】
ダイ20に対してパンチ30が相対的に移動する。相対的な移動であるから、基台11が静止していてパンチ支持板35が移動(昇降)するシステム、基台11が移動しパンチ支持板35が静止しているシステムと、基台11及びパンチ支持板35が共に移動するシステムの何れであってもよい。
【0035】
基台11が静止していてパンチ支持板35が移動(昇降)するシステムを、例に以下説明する。
図2にて、鍛造工程が終了すると、パンチ支持板35が上昇する。センタパンチ31及びリングパンチ34が一緒に上昇する。この上昇に伴って、フローチングダイ22が一定距離上昇する。ノックアウトシリンダ25で、ノックアウトピン24を上げると、このノックアウトピン24が、かさ歯車40を突き上げダイ20から浮かす。これで、かさ歯車40を鍛造用金型10から払い出すことができる。
【0036】
図2の後に、図1に戻って鍛造が実施されるが、この鍛造のときに、成形凸部32に大きな荷重が加わる。この荷重に対する対策を講じた例を以下に説明する。
図3に示すように、リングパンチ34は、中心に円筒穴36を有し、この円筒穴36を囲う円周上に交互に配置される成形凸部32と成形凹部33とを備える。すなわち、成形凸部32と成形凹部33が周方向に交互に配置されている。さらに、成形凸部32にピン50が埋設されている。
【0037】
図4に示すように、ピン50は、先端に円錐部51を有する尖り先ピンである。
成形凸部32は、JIS G 4404で規定される合金工具鋼(例えばSKD61)で製造される。SKD61は焼入れ焼戻し硬さがHRC(ロックウエルCスケール)で53以下である。
一方、ピン50は超硬合金で製造される。超硬合金は成分によって硬さが変化するが、HRA(ロックウエルAスケール)で84以上、HRCに換算すると65以上である。
よってピン50は、成形凸部32より、硬度の高い材料で造られている。
【0038】
図5(a)に示すように、レーザガン52からレーザ光53を照射して、貫通穴54を開ける(穴開け工程)。貫通穴54は、レーザ加工の他、放電加工やドリルでの機械加工で開けてもよい。ただし、リングパンチ34が特に硬い場合は、ドリルの交換頻度が高まるため、レーザ加工の方が適している。
【0039】
図5(b)に示すように、円筒穴36と同径のダミー軸56を円筒穴36に嵌める。また、円筒穴36の中心軸57と貫通穴54の中心軸55とのなす傾斜角θの2倍の角度2・θを円錐角とする尖り先ピン50を準備する。傾斜角θは30°〜60°の範囲から選択される。
この尖り先ピン50の外径は貫通穴54の穴径と同じである。
尖り先ピン50の基部59をピン打ち具58でチャックして貫通穴54に嵌める(ピン嵌め工程)。
【0040】
このピン嵌め工程のための尖り先ピン50の外径と貫通穴54の穴径との関係について、説明する。
ピン嵌め工程には、軽圧入法と挿入法が適用できる。
軽圧入法では、圧入代を1%以下となるような外径の尖り先ピン50を準備し、尖り先ピン50をピン打ち具58で貫通穴54に圧入する。圧入代が1%以下であるため、圧入作業はそれほど困難ではない。
【0041】
挿入法では、貫通穴54と同径の尖り先ピン50を挿入する。推奨される作業法としては、尖り先ピン50の外径を全て計測してリストを作成する。次に、貫通穴54の穴径を実測し、この穴径に近似した外径の尖り先ピン50を選択し、挿入する。
【0042】
図5(c)に示すように、尖り先ピン50の先端はダミー軸56に当たって止まる。基部59は成形凸部32から外へ突出する。この突出部分61は機械加工により切除する(除去工程)。
図5(d)に示すように、円錐部51の一面が円筒穴36の周面と面一であるため、尖り先ピン50の先端に除去加工を施す必用が無く。除去工程の工数を低減することができる。
【0043】
図6にて、ピン50の効果を説明する。
図6(a)に示す比較例では、成形凸部101にはピンが嵌められていない。成形凸部101の変形は予測が難しいが、ここでは、鍛造時に頂点102が左にL1だけ倒れたと仮定する。この倒れにより、成形凸部101の裾、すなわち成形凹部103、103に応力が集中する。応力が繰り返し集中して過大になると集中部位に亀裂が発生し、金型寿命を迎える。
【0044】
図6(b)に示す実施例では、ピン50は成形凸部32より硬度が高い材料で造られているため、成形凸部32の剛性(曲げ剛性、たわみ剛性)の増大に寄与する。結果、同じ荷重が加わっても頂点62が左にL2だけ倒れる。このL2はL1より格段に小さいため、成形凹部33、33に過大な応力が発生する心配はなく、金型の寿命を延ばすことができる。
【0045】
図5に対する変形例を、図7で説明する。
図7(a)にて、図5(a)と同様に、貫通穴54を開ける。
図7(b)にて、貫通穴54より十分に長いピン50Bを準備する。このピン50Bの先端形状は任意であるため、市販ピンをそのまま使用することができ、ピン50Bの調達コストを低減することができる。
【0046】
ピン50Bを貫通穴54に嵌める。ピン50Bの先端63と基部59が貫通穴54から突出する。すなわち、突出部分61、61はピン50Bの前後に存在する。そこで、先端と基部の突出部分61、61を機械加工などにより切除する。切除後の形態は、図7(c)に示す通りである。
図7(d)に示すように、ピン50Bの先端切断面64は楕円になる。正円の丸穴である貫通穴54に対して先端切断面64が楕円であるため、ピン50が空転(自転)する心配はない。
【0047】
図5に対するさらなる変形例を、図8で説明する。
図8(a)に示すように、レーザ加工により、底65を有する非貫通穴66を開ける。
図8(b)に示すように、非貫通穴66へ、先が丸い丸先ピン50Cを嵌める。丸先ピン50Cは市販ピンをそのまま使用することができ、ピン50Cの調達コストを低減することができる。また、丸先ピン50Cを使うことにより、底65にピン50Cの角が当たらないので、応力が集中するのを防ぐことができる。
【0048】
次に、基部59側の突出部分61を切除する。
レーザ加工が難しくなるため、図5図7に示す貫通穴よりは穴開け工程における加工費が嵩む。しかし、ピン50Cの先端を切除する必要がないので、除去工数における加工費の低減が図れる。
【0049】
図9(a)に示すように、貫通穴54の長さL3より、短い長さL4であるピン50Dを貫通穴54に嵌める。
図9(b)に示すように、ピン50Dの全てが貫通穴54に収納される。結果、ピン50Dの前後を除去する必要が無くなり、除去工数をゼロにすることができる。
【0050】
ところで、ピン50、50B、50C、50Dは、成形凸部32の任意の位置に嵌めることが可能であり、その位置は、一般に強度計算を重ねるなどして決定される。しかし、決定に要する費用を削減することができる、簡易的を次図にて提供することができる。
【0051】
本発明の鍛造用金型で、かさ歯車を鍛造する場合には、かさ歯車にピッチ円が存在する。
そこで、図10に示すように、成形凸部32において、ピン50、50B、50C、50Dをかさ歯車のピッチ円67上に配置する。すなわち、ピン50、50B、50C、50Dが成形凸部32の幅(図面左右方向幅)Wの中心線68上で且つピッチ円67上に位置決めされる。ピン50、50B、50C、50Dの位置が一義的に決まり、面倒な計算や検討を行う必要がないため、設計費用の低減が図れる。
【0052】
尚、本発明は、かさ歯車40の鍛造に好適であるが、等速ボールジョイントのカップ部材の鍛造にも適用できる。すなわち、カップ部材は、鋼球(ボール)を収納するトラック溝が環状に配列されており、トラック溝を成形凸部で形成する。よって、ワークはかさ歯車40に限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明はかさ歯車の鍛造に好適である。
【符号の説明】
【0054】
10…鍛造用金型、20…ダイ、30…パンチ、32…成形凸部、36…円筒穴、40…ワーク(かさ歯車)、50…ピン(尖り先ピン)、50B…ピン(長いピン)、50C…ピン(丸先ピン)、50D…ピン(短いピン)、51…円錐部、52…レーザガン、53…レーザ光、54…穴(貫通穴)、55…貫通穴の中心軸、57…円筒穴の中心軸、61…突出部分、66…穴(非貫通穴)、67…ピッチ円、θ…傾斜角、2・θ…円錐角。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10