(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-193397(P2015-193397A)
(43)【公開日】2015年11月5日
(54)【発明の名称】球形タンクの支柱及び又はブレースの補強施工法
(51)【国際特許分類】
B65D 90/12 20060101AFI20151009BHJP
B65D 88/04 20060101ALI20151009BHJP
B65D 90/22 20060101ALI20151009BHJP
【FI】
B65D90/12 C
B65D88/04 Z
B65D90/22 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-72140(P2014-72140)
(22)【出願日】2014年3月31日
(71)【出願人】
【識別番号】000147729
【氏名又は名称】株式会社石井鐵工所
(72)【発明者】
【氏名】石井 宏治
(72)【発明者】
【氏名】奥山 晴彦
【テーマコード(参考)】
3E070
【Fターム(参考)】
3E070AA04
3E070AB31
3E070AB32
3E070QA10
3E070SA02
3E070SA04
3E070VA22
(57)【要約】
【課題】 既設の球形タンクについて地震や強風などによる横揺れに対する剛性と強度を高め耐久性と安全性を向上させるために、支柱及び又はブレースの切断除去と補強施工および新規部材の接続を作業能率良く実施する球形タンクの支柱及び又はブレースの補強施工法を提供する。
【解決手段】 球形タンク1の球殻体2の外周面に所定間隔を置いて固定した複数本の支柱3を基礎4上に固定し、隣接する相互の支柱3間にX字状に交差するブレース5で連結し、前記支柱3は上部支柱3aと下部支柱3bからなる既設の球形タンク1の支柱3及び又はブレース5の補強施工法において、既設の下部支柱3bの中間部3b3を撤去し、続いて新規の補強中間支柱3Aを設置することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
球形タンク1の球殻体2の外周面に所定間隔を置いて固定した複数本の支柱3を基礎4上に固定し、隣接する相互の支柱3間にX字状に交差するブレース5で連結し、前記支柱3は上部支柱3aと下部支柱3bからなる既設の球形タンク1の支柱3及び又はブレース5の補強施工法において、既設の下部支柱3bの中間部3b3を撤去し、続いて新規の補強中間支柱3Aを設置することを特徴とする既設の球形タンクの支柱の補強施工法。
【請求項2】
球形タンク1の球殻体2の外周面に所定間隔を置いて固定した複数本の支柱3を基礎4上に固定し、隣接する相互の支柱3間にX字状に交差するブレース5で連結し、前記支柱3は上部支柱3aと下部支柱3bからなる既設の球形タンク1の支柱3及び又はブレース5の補強施工法において、既設の下部支柱3bの中間部3b3を撤去し、次いで上下に位置する上部ブレース接続箇所3b1及び下部ブレース接続箇所3b2夫々の中空内部に嵌合する補強円板6を設置し、続いて新規の補強中間支柱3Aを設置することを特徴とする既設の球形タンクの支柱の補強施工法。
【請求項3】
球形タンク1の球殻体2の外周面に所定間隔を置いて固定した複数本の支柱3を基礎4上に固定し、隣接する相互の支柱3間にX字状に交差するブレース5で連結し、前記支柱3は上部支柱3aと下部支柱3bからなる既設の球形タンク1の支柱3及び又はブレース5の補強施工法において、既設のブレース交差部5cを除去し、次いで八角形状のガセット板7を有する新規の補強交差ブレース5Aを設置することを特徴とする既設の球形タンクのブレースの補強施工法。
【請求項4】
球形タンク1の球殻体2の外周面に所定間隔を置いて固定した複数本の支柱3を基礎4上に固定し、隣接する相互の支柱3間にX字状に交差するブレース5で連結し、前記支柱3は上部支柱3aと下部支柱3bからなる既設の球形タンク1の支柱3及び又はブレース5の補強施工法において、先ず既設の下部支柱3bの中間部3b3を撤去し、次いで上下に位置する上部ブレース接続箇所3b1及び下部ブレース接続箇所3b2夫々の中空内部に嵌合する補強円板6を設置し、続いて新規の補強中間支柱3Aを設置し、次に既設のブレース交差部5cを除去し、次いで八角形状のガセット板7を有する新規の補強交差ブレース5Aを設置することを特徴とする既設の球形タンクの支柱及び又はブレースの補強施工法。
【請求項5】
上記既設の球形タンク1の支柱3及び又はブレース5の補強施工の際に、取替えを行う支柱3及び又はブレース5の近傍位置に、荷重を支持する仮設の補強材8を設置して施工することを特徴とする請求項1乃至4記載の球形タンクの支柱及び又はブレースの補強施工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、圧縮ガスや液化ガス等を貯蔵する既設の球形タンクの支柱及び又はブレースについて、耐震性の向上を目的とした補強を行うための施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図12に示すように、既設の球形タンク1の球殻体2は支柱3と基礎4によって支持され、支柱3の相互間には傾斜しX字状に交差させたブレース5を設けている。
図示例のブレース5は、円筒状鋼管のパイプブレースの場合を示している。
支柱3は、球殻体2へ接続する上部支柱3aと基礎4へ接続する下部支柱3bとで構成されている。
このような既設の球形タンク1の支柱3及びブレース5の要部を部分的に補強するためには、図示はしないが通常大掛かりな足場や支持架台を設置して任意な手順で施工を行っている。
【0003】
従来技術の発明には、例えば本出願人による特許文献1の特開2011−184056号公報「球形タンクの脚部耐震補強構造」の発明がある。この発明は、球形タンクの球殻体を支持する基礎から球殻体に至る既設脚部の支持部及び接続部外周の全体又は一部に、半割り円筒管を用いて新規の円筒支持部材を被覆し溶接で一体形成することが開示されている。
【0004】
また、本出願人による特許文献2の特開2013−154932号公報「球形タンク脚部のパイプブレース交差部の構造」の発明がある。この発明は、球形タンクの球殻体を支持する支柱間に傾斜して設けるパイプブレースの交差部の一方のパイプブレースの中央に、八角形の補強用接続プレートを差込んで溶接固着し、交差する他の二方向のパイプブレースをこの補強用接続プレートに差込んで溶接固着して一体に形成することが開示されている。
【0005】
さらにまた、本出願人による特許文献3の特開2013−180780号公報「球形タンク脚部のブレース取付部構造」の発明がある。この発明は、球形タンクの球殻体を支持する支柱は、該支柱相互間に傾斜するタイロッドブレース又はパイプブレースで連結した中空の下部支柱と、該下部支柱の上端を塞ぐようにして設けた鍔状に広がるエンドプレートと、該エンドプレートの裏面に設け前記中空の下部支柱に嵌合するガイドプレートと、前記エンドプレートの表面で接合した上部支柱とを備える球形タンク脚部のブレース取付け構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−184056号公報
【特許文献2】特開2013−154932号公報
【特許文献3】特開2013−180780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図12に示す既設の球形タンク1の支柱3及び又はブレース5の要部を取替え補強するためには、この支柱3及び又はブレース5の所定部位に対して、大掛かりで煩雑な作業となることなく有効的な補強構造に手順良く施工していくことが望まれていた。
【0008】
従来の特許文献1の「球形タンクの脚部耐震補強構造」の発明は、球形タンクの既設脚部の支持部及び接続部外周の全体又は一部に半割り円筒管を用いて新規の円筒支持部材を被覆し溶接で一体形成するものであるが、支柱及びブレースの要部を取替え補強する施工法に関するものではない。
【0009】
従来の特許文献2の「球形タンク脚部のパイプブレース交差部の構造」の発明は、パイプブレースの交差部に、八角形の補強用接続プレートを差込んで溶接固着して剛性を高め安全性を向上させたものであるが、支柱及びブレースの要部を取替え補強する施工法に関するものではない。
【0010】
また、従来の特許文献3の「球形タンク脚部のブレース取付部構造」の発明は、球形タンクの支柱にエンドプレートとガイドプレートと円板リブとガセットプレートを設けて、ブレース取付部の剛性と強度を高め耐久性と安全性を向上させたものであるが、支柱及びブレースの要部を取替え補強する施工法に関するものではない。
【0011】
この発明は上述のような従来技術が有する問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、既設の球形タンクについて地震や強風などによる横揺れに対する剛性と強度を高め耐久性と安全性を向上させるために、支柱及び又はブレースの切断除去と補強施工および新規部材の接続を作業能率良く実施する球形タンクの支柱及び又はブレースの補強施工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1の発明に係る球形タンクの支柱の補強施工法は、球形タンク1の球殻体2の外周面に所定間隔を置いて固定した複数本の支柱3を基礎4上に固定し、隣接する相互の支柱3間にX字状に交差するブレース5で連結し、前記支柱3は上部支柱3aと下部支柱3bからなる既設の球形タンク1の支柱3及び又はブレース5の補強施工法において、既設の下部支柱3bの中間部3b3を撤去し、続いて新規の補強中間支柱3Aを設置することを特徴とする。
【0013】
請求項2の発明に係る球形タンクの支柱の補強施工法は、球形タンク1の球殻体2の外周面に所定間隔を置いて固定した複数本の支柱3を基礎4上に固定し、隣接する相互の支柱3間にX字状に交差するブレース5で連結し、前記支柱3は上部支柱3aと下部支柱3bからなる既設の球形タンク1の支柱3及び又はブレース5の補強施工法において、既設の下部支柱3bの中間部3b3を撤去し、次いで上下に位置する上部ブレース接続箇所3b1及び下部ブレース接続箇所3b2夫々の中空内部に嵌合する補強円板6を設置し、続いて新規の補強中間支柱3Aを設置することを特徴とする。
【0014】
請求項3の発明に係る球形タンクのブレースの補強施工法は、球形タンク1の球殻体2の外周面に所定間隔を置いて固定した複数本の支柱3を基礎4上に固定し、隣接する相互の支柱3間にX字状に交差するブレース5で連結し、前記支柱3は上部支柱3aと下部支柱3bからなる既設の球形タンク1の支柱3及び又はブレース5の補強施工法において、既設のブレース交差部5cを除去し、次いで八角形状のガセット板7を有する新規の補強交差ブレース5Aを設置することを特徴とする。
【0015】
請求項4の発明に係る球形タンクの支柱及び又はブレースの補強施工法は、球形タンク1の球殻体2の外周面に所定間隔を置いて固定した複数本の支柱3を基礎4上に固定し、隣接する相互の支柱3間にX字状に交差するブレース5で連結し、前記支柱3は上部支柱3aと下部支柱3bからなる既設の球形タンク1の支柱3及び又はブレース5の補強施工法において、先ず既設の下部支柱3bの中間部3b3を撤去し、次いで上下に位置する上部ブレース接続箇所3b1及び下部ブレース接続箇所3b2夫々の中空内部に嵌合する補強円板6を設置し、続いて新規の補強中間支柱3Aを設置し、次に既設のブレース交差部5cを除去し、次いで八角形状のガセット板7を有する新規の補強交差ブレース5Aを設置することを特徴とする。
【0016】
請求項5の発明に係る球形タンクの支柱及び又はブレースの補強施工法は、上記請求項1乃至4記載の既設の球形タンク1の支柱3及び又はブレース5の補強施工の際に、取替えを行う支柱3及び又はブレース5の近傍位置に、荷重を支持する仮設の補強材8を設置して施工することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明に係る球形タンクの支柱の補強施工法は、球形タンク1の球殻体2の外周面に所定間隔を置いて固定した複数本の支柱3を基礎4上に固定し、隣接する相互の支柱3間にX字状に交差するブレース5で連結し、前記支柱3は上部支柱3aと下部支柱3bからなる既設の球形タンク1の支柱3及び又はブレース5の補強施工法において、既設の下部支柱3bの中間部3b3を撤去し、続いて新規の補強中間支柱3Aを設置するので、
施工手順良く作業能率良く既設の下部支柱3bの中間部3b3を切断除去して新規の補強中間支柱3Aに取替え施工することができ、地震や強風などによって球形タンク1が横揺れして支柱3に引張力や圧縮力が掛かった場合に、下部支柱3bの押し潰れや変形、損傷するのを防止し、耐久強度の高い球形タンク1となる。
【0018】
請求項2の発明に係る球形タンクの支柱の補強施工法は、球形タンク1の球殻体2の外周面に所定間隔を置いて固定した複数本の支柱3を基礎4上に固定し、隣接する相互の支柱3間にX字状に交差するブレース5で連結し、前記支柱3は上部支柱3aと下部支柱3bからなる既設の球形タンク1の支柱3及び又はブレース5の補強施工法において、既設の下部支柱3bの中間部3b3を撤去し、次いで上下に位置する上部ブレース接続箇所3b1及び下部ブレース接続箇所3b2夫々の中空内部に嵌合する補強円板6を設置し、続いて新規の補強中間支柱3Aを設置するので、
施工手順良く作業能率良く既設の下部支柱3bの中間部3b3を切断除去して新規の補強中間支柱3Aに取替え施工し、かつ上下に位置する上部ブレース接続箇所3b1及び下部ブレース接続箇所3b2夫々の中空内部に嵌合する補強円板6を設置して補強施工することができ、地震や強風などによって球形タンク1が横揺れして支柱3に引張力や圧縮力が掛かった場合に、下部支柱3bの押し潰れや変形、損傷するのを防止し、耐久強度の高い球形タンク1となる。
【0019】
請求項3の発明に係る球形タンクのブレースの補強施工法は、球形タンク1の球殻体2の外周面に所定間隔を置いて固定した複数本の支柱3を基礎4上に固定し、隣接する相互の支柱3間にX字状に交差するブレース5で連結し、前記支柱3は上部支柱3aと下部支柱3bからなる既設の球形タンク1の支柱3及び又はブレース5の補強施工法において、既設のブレース交差部5cを除去し、次いで八角形状のガセット板7を有する新規の補強交差ブレース5Aを設置するので、
施工手順良く作業能率良く既設のブレース交差部5cを新規ブレース交差部5Aに取替え補強施工することができ、地震や強風などによって球形タンク1が横揺れしてブレース5に引張力や圧縮力が掛かった場合に、新規ブレース交差部5Aの押し潰れや変形、損傷するのを防止し、耐久強度の高い球形タンク1となる。
【0020】
請求項4の発明に係る球形タンクの支柱及び又はブレースの補強施工法は、球形タンク1の球殻体2の外周面に所定間隔を置いて固定した複数本の支柱3を基礎4上に固定し、隣接する相互の支柱3間にX字状に交差するブレース5で連結し、前記支柱3は上部支柱3aと下部支柱3bからなる既設の球形タンク1の支柱3及び又はブレース5の補強施工法において、先ず既設の下部支柱3bの中間部3b3を撤去し、次いで上下に位置する上部ブレース接続箇所3b1及び下部ブレース接続箇所3b2夫々の中空内部に嵌合する補強円板6を設置し、続いて新規の補強中間支柱3Aを設置し、次に既設のブレース交差部5cを除去し、次いで八角形状のガセット板7を有する新規の補強交差ブレース5Aを設置するので、
施工手順良く作業能率良く既設の支柱3及びブレース5を補強施工することができ、地震や強風などによって球形タンク1が横揺れして支柱3やブレース5に引張力や圧縮力が掛かった場合に、下部支柱3bや新規ブレース交差部5Aの押し潰れや変形、損傷するのを防止し、耐久強度の高い球形タンク1となる。
【0021】
請求項5の発明に係る球形タンクの支柱及び又はブレースの補強施工法は、上記請求項1乃至4記載の既設の球形タンク1の支柱3及び又はブレース5の補強施工の際に、取替えを行う支柱3及び又はブレース5の近傍位置に、荷重を支持する仮設の補強材8を設置して施工するので、
球形タンク1から支柱3及び又はブレース5にかかる荷重を仮設の補強材8で受けて、安全に施工手順良く既設の支柱1及び又はブレース5を補強施工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】この発明に係る球形タンクの支柱及び又はブレースの補強施工法を説明するための球形タンク正面図である。
【
図2】球形タンクの支柱及びブレースの補強構造を示す説明図である。
【
図3】既設の球形タンクの支柱及びブレースの要部である下部支柱とブレース交差部を取替えて補強する事例の施工手順の第一ステップを示す図である。
【
図9】既設の球形タンクの支柱及びブレースの補強施工の状況を示す図である。
【
図12】従来一般のパイプブレースを備えた球形タンクを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
この発明に係る球形タンクの支柱及び又はブレースの補強施工法の実施形態について、
図1乃至
図11を参照して説明する。
図1乃至
図11にわたって同一の用語には同一の符号を使用し、各符号の説明は一部を省略している。
本発明は下記の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で下記の実施形態に変更(例えば構成要素の省略又は付加、構成要素の形状の変更等)を加えることが出来るのはもちろんである。
【0024】
図1は、球形タンクの支柱及びブレースの補強施工法によって構築された球形タンクの構造を示す正面説明図で、球殻体(球殻板)2を複数本の支柱3で基礎4上に支持し、この支柱3の相互間に傾斜させX字状に交差させて設けたブレース5で連結している。ブレース5は、円筒状鋼管のパイプブレースの場合を示す。
支柱3は、球殻体2に接続する上部支柱3aと、ブレース5を固着する下部支柱3bとからなる。
地震や強風などによって球形タンクが横揺れして支柱やブレースに引張力と圧縮力が掛かる図の網線に示す部位に、下部支柱3bの中間部に耐久性を向上させた補強中間支柱3Aを設け、ブレース5の交差部に耐久性を向上させた補強交差ブレース5Aを設けた場合を示す。
【0025】
図2は、
図1の下部支柱3b及びブレース5補強部位を拡大して示す。
3Aは下部支柱3bの中間部に位置する補強中間支柱で、6はその上部及び下部夫々の円筒状中空内部に設ける補強円板である。この補強円板6は、ダイヤフラム状の仕切り盤となって引張力や圧縮力を分散し、円筒部の押し潰れや変形、損傷することのない必要強度を得るために、ブレース5の接続部に位置する補強中間支柱3Aの上端部及び下端部の内部に設ける。
5Aはブレース5のX字状の交差部に位置する補強交差ブレースで、7はその交差部を補強するガセット板である。このガセット板7は、必要強度を得るように板厚と寸法を選定しパイプの交差部を連結して一体化するように設置する。
【0026】
このように、球形タンク1の支柱3のうち、地震や強風などで損傷するおそれのある下部支柱3bに補強中間支柱3Aと補強円板6を設けることにより、支柱の剛性が向上し強度が増し変形や損傷をすることがない。また、ブレース5の交差部にガセット板7を有する補強交差ブレース5Aを設けることにより、変形や損傷するのを防止し強度の高いブレース構造が得られる。
【0027】
図3から
図9は、既設の球形タンクにおける支柱及びブレースの要部である下部支柱と左右に位置するブレース交差部を取替えて補強する事例の施工手順を示す。
図3は、その第一ステップを示す図である。
取替え補強施工を行う既設の下部支柱3bに対して、ブレース5の接続箇所である上部ブレース接続箇所3b1と下部ブレース接続箇所3b2を残して上下各3xの位置で切断し、この切断した中間部支柱3b3を除去する。この施工の際に、必要に応じて設ける荷重を受ける仮設の補強材は図示を省略している。
【0028】
図4は、第二ステップを示す図である。
続いて、上記切断した上下3xの位置から、上部ブレース接続箇所3b1と下部ブレース接続箇所3b2の中空内部に、補強円板6を挿入し周縁を溶着する。
このように、上部ブレース接続箇所3b1と下部ブレース接続箇所3b2の中空内部に補強円板6を設けることにより、ブレース5の接続箇所近傍に掛かる引張力や圧縮力はダイヤフラム状の補強円板6によって分散されるため、押し潰れや変形、損傷を防止し強度の高い取付部構造となる。
【0029】
図5は、第三ステップを示す図である。
次いで、上記切断した上下3xの位置に、強度を増加させた新規の補強中間支柱3Aを溶着設置する。
このように、新規の補強中間支柱3Aを設置することにより、支柱全体の耐久強度を向上することができる。
【0030】
図6は、第四ステップを示す図である。
取替え補強施工するブレース交差部5cにおける切断箇所5xを囲うように、仮設の補強材8をブレース5に架け渡して設置する。この補強材8の事例は、工事施工の際にブレース5を枠体で固定し安定化させるように設けた場合を示したが、ブレース5の荷重を支えるように地面から立ち上げて設置しても良い。
【0031】
図7は、第五ステップを示す図である。
続いて、ブレース交差部5cを切断箇所5xで切断して撤去する。順次隣接するブレース交差部5cの切断撤去を施工する。
【0032】
図8は、第六ステップを示す図である。
次いで、撤去部5dにガセット板材7を有する新規の補強ブレース交差部5Aを当て嵌めて溶接固定する。順次、隣接する新規の補強ブレース交差部5Aの施工を行う。
【0033】
図9は、既設の球形タンクの支柱及びブレースを取替え補強施工した状況を示す。
上記第一ステップから第六ステップの施工手順に示すように、新規の補強中間支柱3A、補強円板6、ガセット板材7付き新規の補強交差ブレース5Aの施工作業は、既設の球形タンクの下部支柱3bに対して、円周方向に沿って順次、または対称位置にわたって、作業性良く連続して取替え補強施工をすることができる。
【0034】
図10は、補強円板6の事例を示す図で(a)は平板10に形成した場合を示し、(b)は平板10に十文字状のガイド板11を設けて形成した場合を示す。
このような補強円板6を下部支柱の上部ブレース接続箇所及び下部ブレース接続箇所の円筒内部に挿入し、嵌合させて平板10の外周縁を溶接して固定する。
このようなダイヤフラム状の補強円板6によって引張力や圧縮力が分散されるため、下部支柱の押し潰れや変形、破損を防止し、強度の高い支柱が得られる。
【0035】
図11は、新規の補強交差ブレース5Aを示す図である。
7は八角形状のガセット板で、円筒状鋼管のブレースの交差部に貫通させて溶着固定した場合を示す。
このように補強交差ブレース5Aを取付けることにより、曲げ荷重や引張り荷重及び圧縮荷重に対する強度が向上する。また、このガセット板7を有する補強交差ブレース5Aは、予め工場で溶接により一体化し検査を実施することにより、適正に製作することができる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
この発明に係る球形タンクの支柱及び又はブレースの補強施工法は既設の球形タンクについて耐震性を向上するために適用するものであるが、この支柱やブレースの補強構造については新規球形タンクの耐震性を向上するためにも適用することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 球形タンク
2 球殻体
3 支柱
3a 上部支柱
3b 下部支柱
3b1 上部ブレース接続箇所
3b2 下部ブレース接続箇所
3b3 中間部
3A 補強中間支柱
4 基礎
5 ブレース
5c ブレース交差部
5A 補強交差ブレース
6 補強円板
7 ガセット板
8 補強材