【解決手段】容器1の開口部10が蓋用熱収縮性フィルム2で覆われた包装体であって、蓋用熱収縮性フィルム2が摘み部22を備えている。蓋用熱収縮性フィルム2は一軸側高延伸フィルムから構成されている。蓋用熱収縮性フィルム2における高延伸方向と直交する方向の両端部にそれぞれ摘み部22を備えている。該摘み部22には裏面のみに収縮抑制層が形成された裏抑制部が設けられている。摘み部22は、容器1の側面部12から外側に離れるように、表面側にカールしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
それゆえに本発明は上記従来の問題点に鑑みてなされ、開封しやすい包装体とそれに使用される蓋用熱収縮性フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決すべくなされたものであって、本発明に係る包装体は、容器の開口部が蓋用熱収縮性フィルムで覆われた包装体であって、蓋用熱収縮性フィルムは、一軸側高延伸フィルムから構成されると共に、容器の開口部を覆う天面部と該天面部から下側に延びるスカート部とを備え、該スカート部には、蓋用熱収縮性フィルムにおける高延伸方向と直交する方向の両端部のうち少なくとも一端部に容器の側面部から外側に離間している摘み部を備えていることを特徴とする。尚、高延伸方向と直交する方向とは、高延伸方向に対して厳密に90度の角度を意味するのではなく、好ましくは90度±8度以内であって、更に好ましくは90度±5度以内を意味する。
【0006】
該構成の包装体にあっては、蓋用熱収縮性フィルムが一軸側高延伸フィルムから構成されているので、容器の開口部を蓋用熱収縮性フィルムでキャッピングする際、容器の開口縁部から外側にはみ出した蓋用熱収縮性フィルムの周縁領域を熱収縮させると、高延伸方向には大きく収縮する一方、高延伸方向と直交する方向の収縮量は相対的に小さくなる。そのため、高延伸方向と直交する方向の端部は、他の部分に比して相対的に長く摘み状(舌片状)に延びて残った状態となりやすく、高延伸方向と直交する方向の端部を摘み部として容易に構成することができる。そして、その摘み部を摘んで容易に開封できる。
【0007】
また更に、前記摘み部には、裏面のみに収縮抑制層が形成された裏抑制部が設けられていることが好ましい。該構成によれば、裏抑制部において裏面側よりも表面側の収縮量が大きくなり、熱収縮によって摘み部は表面側に反り返るようにカールすることになる。従って、摘み部は容器の側面部から離れやすくなって、表面側にカールした摘み部を摘んで容易に開封することができる。また、裏抑制部が設けられることによって過度の収縮が抑制されることから、綺麗な摘み部が形成される。
【0008】
更に、前記スカート部には、表面のみに収縮抑制層が形成された表抑制部が設けられていることが好ましい。該構成によれば、表抑制部において表面側よりも裏面側の収縮量が大きくなるので、熱収縮時に、容器の開口縁部から外側にはみ出した蓋用熱収縮性フィルムの周縁領域がスムーズに裏面側にカールして綺麗なスカート部が形成されると共に、容器への保持力も高まって閉蓋状態がより一層確実に保持されることになる。
【0009】
また更に、前記スカート部において、前記天面部との境界と前記裏抑制部の内側縁との間に前記表抑制部が設けられていることが好ましい。該構成によれば、天面部との境界と裏抑制部の内側縁との間に位置する表抑制部によって、スカート部が内側の容器に向けて収縮する一方、裏抑制部によって摘み部が表面側にカールして容器から離れるように反り返るので、摘み部を容易に摘んで開封できて開封容易性が維持され、封緘機能と開封容易性の両立を図ることができる。
【0010】
また、前記摘み部の近傍に、蓋用熱収縮性フィルムの外縁から内側に所定長さ延びる弱め線が形成されていることが好ましい。該構成によれば、開封時に摘み部を摘んで持ち上げると、弱め線に沿って蓋用熱収縮性フィルムが外縁から内側に向けて切断されるので、より一層容易に開封することができる。
【0011】
また、本発明に係る蓋用熱収縮性フィルムは、このような包装体に使用されるものである。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、蓋用熱収縮性フィルムの摘み部によって開封容易性が確保される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態に係る蓋用熱収縮性フィルムとそれが装着された包装体について
図1〜
図7を参酌しつつ説明する。
図1に示す包装体は、上面開口の有底筒状であるカップ状の容器1に各種の内容物が収容されて、容器1の開口部10が蓋用熱収縮性フィルム2によって覆われて閉蓋状態とされているものである。内容物は特には限定されないが、包装袋に入れられて個別包装された構成のものが好ましい。内容物が個別包装されていると、蓋用熱収縮性フィルム2による閉蓋状態の密封性がそれほど高くなくても、内容物が包装体の外部に漏れ出すことがない。
【0015】
容器1の横断面形状(水平方向に切断した断面)や開口形状は任意であって角形等であってもよいが、本実施形態では円形の横断面形状と円形の開口形状を有するものである。従って、容器1は、円形の底面部11と、該底面部11の周縁から上方に向けて拡径しつつ立ち上がる円筒状の側面部12とを備えた構成であり、側面部12の上端、即ち、開口縁部には全周に亘ってフランジ部13が外側に向けて突設されている。容器1の開口縁部の外縁は、フランジ部13の外縁13aとなる。容器1は、例えば合成樹脂や紙材から構成される。合成樹脂の場合には射出成形やシート成形により形成される。また、紙材の場合には、例えば、側面部12と底面部11とを別々に形成して接合一体化する構成とすることができ、一枚のシートの左右両端部を重ね合わせて筒状の側面部12を形成すると共に、側面部12の下端に円形の底面部11を接合して容器1を形成することができる。
【0016】
蓋用熱収縮性フィルム2は、容器1への装着状態において、容器1の開口部10を覆う平坦且つ円形の天面部20と、該天面部20の周縁から下側に向けて延びる環状のスカート部21とを備えている。天面部20はその周縁部においてフランジ部13の上面と対峙し、スカート部21はフランジ部13の外側を覆うようにして下方に延びると共にフランジ部13の下側で内側に回り込んで側面部12の上部外周面に当接しそれを被覆している。天面部20から下方に延びるスカート部21の上下方向長さは、全周に亘って一定ではなく、180度対向した二箇所において相対的に長く、その二箇所と直交する180度対向した二箇所において相対的に短くなっており、相対的に長い箇所と相対的に短い箇所との間においては長さが徐々に変化している。
【0017】
そして、スカート部21の外縁部の全周のうち他の部分よりも相対的に下側に長く摘み状(舌片状)に延びた二箇所は、それぞれ容器1の側面部12から外側に離れるように表面側にカールした摘み部22となっている。該摘み部22には、裏面のみに収縮抑制層が形成された裏抑制部が設けられているが、裏抑制部の詳細については後述する。尚、
図1において裏抑制部の箇所にはクロスハッチングを施しており、後述の
図7においても同様である。また、後述のように蓋用熱収縮性フィルム2は一軸側に高延伸されたフィルムから構成されており、スカート部21の上下方向長さが相対的に長くなっている二箇所は、蓋用熱収縮性フィルム2の高延伸方向と直交する方向の両端部であり、また、スカート部21の上下方向長さが相対的に短くなっている二箇所は、蓋用熱収縮性フィルム2の高延伸方向の両端部である。
図1において矢印Xの方向が高延伸方向であり、
図2において矢印Yの方向が高延伸方向と直交する方向である。また、摘み部22の近傍には、蓋用熱収縮性フィルム2の外縁から内側に向けて所定長さ延びる弱め線38が左右一対形成されている。
【0018】
この蓋用熱収縮性フィルム2の具体的構成を、容器1への装着前の状態、即ち、熱収縮前の状態で説明する。
図3〜
図5に熱収縮前の状態における蓋用熱収縮性フィルム2を示しており、
図3は表面側から見た図、
図4は裏面側から見た図、
図5は
図3のA−A断面図である。
【0019】
蓋用熱収縮性フィルム2は、熱収縮前の状態において円形であり、これは容器1の開口部10の形状に対応したものである。
図3及び
図4に容器1のフランジ部13の外縁13aを二点鎖線で示しているが、容器1のフランジ部13の外縁13aよりも外側に所定量はみ出すように、熱収縮前の蓋用熱収縮性フィルム2はフランジ部13の外縁13aよりも大径となっている。
図3及び
図4において二点鎖線よりも外側の環状の領域が、蓋用熱収縮性フィルム2を容器1の上面に被せた際に、容器1のフランジ部13よりも外側にはみ出す領域であり、この領域を周縁領域30と称することにする。このように収縮前の状態において蓋用熱収縮性フィルム2は、円形の中央領域とその外側の環状の周縁領域30とを備えている。
【0020】
蓋用熱収縮性フィルム2は、
図5にも示しているように、基材フィルム31と、該基材フィルム31の表面に積層された表印刷層32と、基材フィルム31の裏面に積層された裏印刷層とから構成される。裏印刷層は、第一の裏印刷層35と第二の裏印刷層36とから構成される。そして、表印刷層32と第一の裏印刷層35は、何れも基材フィルム31の熱収縮を抑制する機能を発揮することから収縮抑制層を構成する。
【0021】
基材フィルム31は、いわゆるシュリンクフィルムと称されるものであって、一軸側高延伸フィルムからなる。表面に各種のデザインや文字等の表示層を形成する、いわゆる表印刷の場合には基材フィルム31は不透明なものであってもよいが、裏面に表示層を形成して基材フィルム31を介して裏面の表示層を見る構成、いわゆる裏印刷の場合には透明な基材フィルム31が使用される。ここで、一軸側高延伸フィルムとは、一の軸方向が他の軸方向に比べてより大きく延伸されているフィルムであって、いわゆるMD方向といわゆるTD方向との熱収縮率が異なるフィルムのことを意味し、何れかの方向に全く収縮しない(いわゆる熱収縮率がゼロである)フィルムのみを意味するものではない。一軸側高延伸フィルムは、TD方向がMD方向に比べてより延伸された横一軸延伸であってもよいし、MD方向がTD方向に比べてより延伸された縦一軸延伸であってもよい。一軸側高延伸フィルムにおけるTD方向の熱収縮率とMD方向の熱収縮率との差は、通常40%以上であり、好ましくは50%以上である。中でも特に、TD方向の熱収縮率とMD方向の熱収縮率のうち熱収縮率が小さい方の熱収縮率(例えば横一軸延伸の場合にはMD方向の熱収縮率)が10%以下であるものがより好ましい。
【0022】
図3及び
図4において、矢印Xで示している方向が高延伸方向であり、矢印Yで示している方向が高延伸方向と直交する方向であり、一軸側高延伸フィルムがTD方向がMD方向に比べてより延伸された横一軸延伸フィルムである場合には、矢印Xで示している方向がTD方向となり、矢印Yで示している方向がMD方向となる。尚、一軸側高延伸フィルムの高延伸方向とは、TD方向とMD方向のうち、より延伸されている方である。
【0023】
一軸側高延伸フィルムとしては、例えば、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル系、ポリスチレン系(PS)、並びにポリ乳酸(PLA)、ポリアミド、及び、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、ポリ塩化ビニル等のビニル系の樹脂からなるフィルムが挙げられる。また、これらの樹脂を二種以上混合した樹脂混合物を含むフィルムを用いることもでき、二種以上のフィルムを積層した積層フィルムを用いることもできる。これらのうち、適切な収縮応力と高い透明性を有することから、ポリエステル系、ポリオレフィン系、及び、ポリスチレン系のフィルムが好ましく、ポリエステル系のフィルムやポリスチレン系のフィルムが特に好ましい。一軸側高延伸フィルムの厚みは特には限定されないが、8〜100μmであることが好ましく、より好ましくは10〜80μm、特に好ましくは15〜60μmである。
【0024】
表印刷層32は、
図3において多数のドットを付して示されている。該表印刷層32は、高延伸方向と直交する方向の両端部を除いて基材フィルム31の表面全体に形成されている。従って、高延伸方向と直交する方向の両端部には、それぞれ表印刷層32が形成されていない表側の未印刷領域33が存在しており、該表側の未印刷領域33は何れも周縁領域30内にある。表側の未印刷領域33と表印刷層32との間の境界線34は、本実施形態においては高延伸方向に沿った直線となっているが、曲線等であってもよい。また、表側の未印刷領域33は、高延伸方向と直交する方向の寸法よりも高延伸方向の寸法の方が長いことが好ましい。表印刷層32は例えばクリアのニス層とすることができ、例えばUV硬化型のニスが使用できる。また、表印刷層32は、グラビア印刷等、各種の公知の印刷手法によって形成でき、後述の裏印刷層も同様である。
【0025】
裏印刷層は、高延伸方向と直交する方向の両端部にそれぞれ形成された第一の裏印刷層35と、第一の裏印刷層35から内側に離間して第一の裏印刷層35とは独立して形成された第二の裏印刷層36とからなる。
図4において、第一の裏印刷層35と第二の裏印刷層36には多数のドットが付されている。第一の裏印刷層35は、上述の表側の未印刷領域33と表裏対応関係にあって、表側の未印刷領域33の裏側の同じ箇所に同じ面積で形成されている。但し、第一の裏印刷層35は表側の未印刷領域33と同一面積でなくてもよい。
【0026】
第二の裏印刷層36は、周縁領域30よりも内側(中心側)に形成されている。第二の裏印刷層36は、周縁領域30の内側の領域全体(即ち
図4で二点鎖線よりも内側の領域全体)であってもよいし、周縁領域30に部分的にはみ出すように形成されていてもよいが、その全体が周縁領域30の内側に位置していることが好ましい。第二の裏印刷層36の大きさ、形状は任意であり、本実施形態のような正六角形には限られない。該第二の裏印刷層36は内容物を示す商品名やデザイン等の表示であり、上述したように透明の基材フィルム31を使用することにより、包装体が陳列棚の下段に陳列された場合であっても上方から容易に視認できる。第一の裏印刷層35や第二の裏印刷層36には、好ましくはアクリル系のインキが使用されるが、ウレタン系のもの等、各種のインキが使用できる。また、インキには顔料が含まれていても含まれていなくてもよく、また、UV硬化型のインキでもよい。
【0027】
このように基材フィルム31の裏面には第一の裏印刷層35と第二の裏印刷層36とが互いに離間して形成されているため、第一の裏印刷層35と第二の裏印刷層36との間には印刷されていない裏側の未印刷領域37が存在している。第二の裏印刷層36は周縁領域30の内側に位置している。従って、周縁領域30の裏面は、第一の裏印刷層35を除いて、全て裏側の未印刷領域37となる。即ち、周縁領域30の裏面の大部分は裏側の未印刷領域37となると共に、周縁領域30の全周に亘って裏側の未印刷領域37が存在していることになる。
【0028】
尚、本実施形態において裏面のみに収縮抑制層が形成された裏抑制部は、表面が表側の未印刷領域33とされて裏面には第一の裏印刷層35が形成された部分であり、この部分が熱収縮によって容器1に装着された際において摘み部22となる。裏抑制部の内側縁は、本実施形態のように表側の未印刷領域33と第一の裏印刷層35とが表裏対応関係にあって、表側の未印刷領域33と表印刷層32との間の境界線34と、第一の裏印刷層35と裏側の未印刷領域37との間の境界線39とが互いに一致している場合には、それらの境界線34,39が裏抑制部の内側縁となる。但し、表側の境界線34と裏側の境界線39が互いに異なっていてもよく、例えば、表側の境界線34が裏側の境界線39よりも内側に位置している場合には、裏側の境界線39が裏抑制部の内側縁となり、逆に、裏側の境界線39が表側の境界線34よりも内側に位置している場合には、表側の境界線34が裏抑制部の内側縁となる。また、本実施形態において表面のみに収縮抑制層が形成された表抑制部は、表面に表印刷層32が形成されて裏面が裏側の未印刷領域37とされた部分である。従って、本実施形態において、周縁領域30の大部分は表抑制部である。そして、周縁領域30の全周に亘って表抑制部が存在している。
【0029】
また、
図3及び
図4のように、高延伸方向と直交する方向の両端部における表側の未印刷領域33(第一の裏印刷層35)の近傍には、それぞれ弱め線38が左右一対ずつ形成されている。弱め線38は構成は種々であってよいが、例えば、ミシン目とすることができる。弱め線38は、蓋用熱収縮性フィルム2の外縁から内側に向けて延びており、具体的には、表側の未印刷領域33の内側に所定距離離間した位置に、蓋用熱収縮性フィルム2の外縁から高延伸方向に沿って内側に所定長さ形成されている。本実施形態において、表側の未印刷領域33と表印刷層32との間の境界線34は直線であるが、その境界線34と平行に弱め線38が形成されている。尚、左右の弱め線38は互いに対称関係にあって同一線上に位置しているが、左右の弱め線38の内端同士は互いに離間している。また、弱め線38は、周縁領域30に形成されている。
【0030】
以上のように構成された蓋用熱収縮性フィルム2を容器1の上面(フランジ部13の上面)に載せると、
図6のように、周縁領域30が容器1のフランジ部13から外側にはみ出した状態となる。そしてこの状態で、周縁領域30よりも内側の領域(中央領域)を図示しない押圧部材で被覆するように上から押さえてその領域が熱収縮しないようにして、蓋用熱収縮性フィルム2の主として周縁領域30を熱収縮させる。周縁領域30には表抑制部が設けられているので、周縁領域30は表印刷層32によって表側の熱収縮が抑制される結果、矢印αで示すように下側に曲がるようにカールしながらフランジ部13の下側に周り込んで内側の容器1の側面部12に接近し、側面部12の上部外周面に当接する。そして、周縁領域30の全周に亘って表抑制部が設けられている場合には、周縁領域30が側面部12の上部外周面に全周に亘って当接することになる。このように周縁領域30が熱収縮することによって上述のスカート部21が構成されている。また、周縁領域30よりも内側の円形の中央領域が天面部20となる。
【0031】
更に、蓋用熱収縮性フィルム2は一軸側に高延伸されたフィルムから構成されているので、高延伸方向には大きく収縮するが、高延伸方向と直交する方向の収縮量は小さい。従って、周縁領域30は、高延伸方向には大きく収縮する一方、高延伸方向と直交する方向にはそれ程大きく収縮することはなくその収縮量は小さいものとなる。その結果、周縁領域30の全周のうち、高延伸方向と直交する方向の両端部においては相対的に長い状態で残存し、高延伸方向の両端部においては相対的に短い状態となる。従って、天面部20からの垂れ下がり長さが相対的に長い部分である高延伸方向と直交する方向の両端部は、他の部分に比して相対的に摘みやすい状態の摘み部22となる。
【0032】
また、高延伸方向と直交する方向の両端部にはそれぞれ裏抑制部が設けられているので、周縁領域30のうち裏抑制部においては、第一の裏印刷層35によって裏側の熱収縮が抑制されて容器1の側面部12から外側に離れるようにカールした状態となる。このように裏抑制部が表面側に偏って熱収縮することによって、容器1の側面部12から外側に離間すると共に表面側に反り返るようにカールした摘み部22が構成される。更に、熱収縮前の状態では
図3や
図4のように高延伸方向に沿った直線状であった弱め線38は、
図1のように熱収縮後は高延伸方向と直交する方向に傾斜した状態となる。即ち、熱収縮後において弱め線38は、蓋用熱収縮性フィルム2の中心に向けて延びた状態となっている。
【0033】
以上のように構成された蓋用熱収縮性フィルムにあっては、周縁領域30に全周に亘って表抑制部が設けられているので、熱収縮時にスムーズに容器1の側面部12に向けてカールすることになり、良好な美観が得られると共に、蓋用熱収縮性フィルム2の容器1への装着状態も確実なものとなり、確実な封緘機能が発揮されることになる。特に、容器1にフランジ部13が形成されているので高い保持力が得られやすいうえに、表抑制部が設けられていることにより、スカート部21がフランジ部13の下側に確実に周り込むことになって、より一層確実な封緘特性が得られ、また、密封性も向上することになる。更に、周縁領域30に表抑制部を設けておくと加熱によって周縁領域30が自動的に裏面側にカールしようとするので、周縁領域30を例えば上から部材で押して下側に向かせる等のような機械的、強制的な曲げ設備が不要になったり、あるいは、それらの設備を使用する場合においても、簡単なものでよく、また、より一層確実且つスムーズに周縁領域30を容器1の側面部12に向かうように熱収縮させることができる。
【0034】
そして、蓋用熱収縮性フィルム2が一軸側に高延伸されたフィルムから構成されているので、スカート部21においては、高延伸方向と直交する方向の端部が他の部分に比して相対的に長く延びて摘み状に残った状態となるので、外縁部から突出した摘み部22が形成され、その摘み部22を摘んで容易に開封できる。従って、熱収縮前の状態において、径方向外側に突出した摘み片を形成しておく必要がなく、あるいは、仮に摘み片を形成しておく場合であっても小さな突出量で済み、そのため、長尺フィルムから蓋用熱収縮性フィルム2を打ち抜き等する際にフィルムの無駄が少なくなって高い生産性が確保される。更に、一軸側高延伸フィルムから構成されているので、摘み状に長く延びた状態となっている高延伸方向と直交する方向の端部が硬くなり過ぎることはなく、摘み部22を摘む際の触感に優れているという利点もある。しかも、摘み部22は、裏抑制部によって表面側にカールして容器1の側面部12から外側に離間しているので、該摘み部22を容易に摘んで開封することができる。
【0035】
また、摘み部22の左右両側の近傍位置には弱め線38がそれぞれ形成されているので、例えば、右利きの人が摘み部22を右手で摘んで開封する際には、
図7に示すように摘み部22を正面に見て、向かって左側の弱め線38に沿って蓋用熱収縮性フィルム2を切断していくことにより、簡単に開封することができる。また、左利きの人が摘み部22を左手で摘んで開封する場合には、摘み部22を正面に見て、向かって右側の弱め線38に沿って蓋用熱収縮性フィルム2を切断して開封することができる。蓋用熱収縮性フィルム2は容器1のフランジ部13等に接着されているわけではないので、蓋用熱収縮性フィルム2の全周のうちの所定部分をフランジ部13から取り外すことにより、容易に容器1から取り外すことができる。このように弱め線38を左右一対形成しておくと、左右何れの利き手であっても容易に開封できる。
【0036】
尚、表1の各種フィルムから蓋用熱収縮性フィルム2のサンプルを作成し、それらをそれぞれ容器1に装着して、摘み部22が形成されるか否かの評価と、弱め線38においてフィルムを確実に切断できるかどうかの評価を行った。その評価結果を表2に示す。尚、弱め線38としてはミシン目を形成した。
【0037】
熱収縮率の測定は、以下のようにして行った。測定用サンプルとして、長さ200mm(標線間隔150mm)、幅10mmの長方形のものを切り出して作成し、このサンプルを100℃の温水中で10秒間熱処理(無荷重下)し、熱処理前後の標線間隔の差を読み取って、以下の計算式にて熱収縮率を算出した。
熱収縮率(%)=(L0−L1)/L0×100
L0:熱処理前の標線間隔
L1:熱処理後の標線間隔
【0038】
また、フィルムの平均引き裂き強さの測定は、JIS K 7128 A法に準じて行った。平均引裂き強さが大きい程、ミシン目に沿ってフィルムを切っていく際に大きな力が必要となってミシン目の途中でフィルムにミシン目から離れていくように亀裂が入りやすく、逆に、平均引裂き強さが小さい程、小さな力でミシン目に沿ってフィルムを切断していくことができる。
【0039】
摘み部22が形成されるか否かの評価に関しては、熱収縮前の状態において蓋用熱収縮性フィルム2の外縁に予め摘み片を突設していない円形状のものと、熱収縮前の状態において蓋用熱収縮性フィルム2の外縁に摘み片を突設したものの両方について評価した。更には、延伸方向と直交する方向の端部に裏抑制部を設けた場合(裏抑制部有)と設けない場合(裏抑制部無)の両方についても評価した。そして、摘み部22が形成された場合を○、形成されなかった場合を×とした。
【0040】
「ミシン切れ評価」は、ミシン目に沿ってフィルムを切断していく途中でミシン目から外れていくようにフィルムに亀裂が入っていくか否かで評価した。ミシン目に沿ってフィルムがミシン目の終端まで切れた場合を○、ミシン目に沿ってフィルムが最後まで切れていかずにその途中でミシン目から逸脱してフィルムに亀裂が入った場合を×とした。
【0043】
表2の評価結果からもわかるように、蓋用熱収縮性フィルム2が円形状であって高延伸方向と直交する方向の端部に裏抑制部を設けない場合には、サンプルNo.1〜No.4においては摘み部22が形成されたものの、サンプルNo.5とサンプルNo.6では摘み部22が形成されなかった。このことから、TD方向の熱収縮率とMD方向の熱収縮率との差(表1においてTD−MD)については50%以上であることが好ましく、また更に、MD方向の熱収縮率は10%以下であることが好ましいことがわかる。
【0044】
また、蓋用熱収縮性フィルム2が円形状であっても高延伸方向と直交する方向の端部に裏抑制部を設けると、サンプルNo.5のように摘み部22が形成されることがわかった。このことから、高延伸方向と直交する方向の端部に裏抑制部を設けることにより、TD方向の熱収縮率とMD方向の熱収縮率との差が50%未満のフィルムであっても、摘み部22が形成されるものが存在し、フィルムの熱収縮率の方向性に関する許容範囲が拡大することがわかった。尚、熱収縮前の状態において予め外縁部の所定箇所に摘み片を突設しておけば、サンプルNo.6を含む全てのサンプルについて摘み部22が形成された。従って、TD方向の熱収縮率とMD方向の熱収縮率との差が50%未満のフィルムの場合には、熱収縮後に摘み部22となる部分に裏抑制部を設けておいたり、熱収縮前に予め摘み片を突設しておくとよい。尚、サンプルNo.2の周縁領域30に全周に亘って表抑制部を設けると、表抑制部を設けない場合と比較して、より簡単な設備で、確実且つスムーズに周縁領域30を容器1の側面部12に向けてカールすることができることが確認された。また、封緘性についても、表抑制部を設けない場合と比較して向上していることが確認された。
【0045】
一方、ミシン切れ評価については、サンプルNo.4における評価が良くなかった。このことから、MD方向の平均引裂き強さは30N/mm以下が好ましいことがわかる。
【0046】
尚、本実施形態においては、基材フィルム31の表面のうち、高延伸方向と直交する方向の両端部における表側の未印刷領域33を除いた略全体に表印刷層32を形成したが、例えば、
図8のように、周縁領域30のみに表印刷層32を環状に形成するようにして、その内側の部分(中央領域)は未印刷領域33としてもよく、少なくとも、周縁領域30に表印刷層32が形成されていればよい。第二の裏印刷層36についても、
図8のようにそれを省略してもよく、第二の裏印刷層36を形成する場合であっても、
図4のような大きさ、形状には限られず、また個数についても任意であって複数箇所に分散して配置された態様であってもよい。このような場合、表裏の収縮応力を均衡させるため、裏印刷層36の形状、個数、印刷箇所と対応する基材フィルム31の表面に表印刷層32を設けることが好ましい。
【0047】
また、上記実施形態においては、高延伸方向と直交する方向の両端部にそれぞれ裏抑制部を形成していたが、何れか一方のみに裏抑制部を形成するようにしてもよい。左右一対の弱め線38についても同様であって、例えば、高延伸方向と直交する方向の両端部のうち一端部のみに裏抑制部を備える場合にはその裏抑制部の近傍に弱め線38を左右一対形成すればよい。無論、弱め線38も左右一対形成する他、左側あるいは右側のみに形成してもよい。
【0048】
尚、蓋用熱収縮性フィルム2の形状を熱収縮前の状態において円形としたが、高延伸方向に長い楕円形や長円形としてもよく、また、多角形等としてもよい。但し、容器1の開口部10の形状に対して相似する形状としておくことが好ましい。上述した検討結果のように、熱収縮前の状態における蓋用熱収縮性フィルム2の外縁部の所定箇所に、摘み部22となる部分として、半円状や矩形状等の摘み片を突設しておいてもよい。