【解決手段】光学フィルムは、透明基材フィルムと、前記透明基材フィルム上に形成された、樹脂粒子およびシリコーン系粘着剤を含む粘着層とを備える光学フィルムであって、波長380〜500nmの平均光透過率をTb(%)、波長700〜800nmの平均光透過率をTo(%)とすると、Tb−To(%)が1より大きい。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔光学フィルム〕
本発明の光学フィルムについて、以下に詳細に説明する。
【0013】
本発明の光学フィルムは、透明基材フィルムと、前記透明基材フィルム上に形成された、樹脂粒子およびシリコーン系粘着剤を含む粘着層とを備える光学フィルムであって、波長380〜500nmの平均光透過率をTb(%)、波長700〜800nmの平均光透過率をTo(%)とすると、Tb−To(%)が1より大きい。
【0014】
Tb−Toは、1より大きければよいが、2以上であることが好ましく、3以上であることがより好ましい。これにより、透過光の青色への着色度合いを向上させることができる。
【0015】
前記光学フィルムは、波長380〜800nmの分光透過率の極大点が波長380〜500nmの範囲内にあることが好ましい。これにより、透過光の青色への着色度合いを向上させることができる。
【0016】
前記光学フィルムの全光線透過率は、85%以上であることが好ましく、88%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。これにより、前記光学フィルムをディスプレイの表示画面に貼り付けたときの透過像輝度や、前記光学フィルムをLED照明等の照明の照明カバーに貼り付けたときの照明の照度を向上させることができる。
【0017】
前記光学フィルムのΔb
*値は、5以下であることが好ましく、3以下であることがより好ましく、1以下であることがさらに好ましい。これにより、黄色味の少ない光学フィルムを実現できる。
【0018】
〔透明基材フィルム〕
前記透明基材フィルムを構成する材料としては、特に限定されないが、一般的な材料を用いることができ、例えば、セルロースアシレート、前記アクリル樹脂((メタ)アクリレート系ポリマー)、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド等の樹脂を主体とする材料、ガラス等の無機材料が挙げられる。本明細書において、「(メタ)アクリレート」はアクリレートおよび/又はメタクリレートを意味するものとする。
【0019】
前記セルロースアシレートとしては、例えば、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルロースアセテートブチレート等が挙げられる。前記アクリル樹脂としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ブチル共重合体等が挙げられる。本明細書において、「(メタ)アクリル」はアクリルおよび/又はメタクリルを意味するものとする。前記ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略記する)、ポリエチレンナフタレート等が挙げられる。
【0020】
前記透明基材フィルムの厚さは、20〜300μmの範囲内であることが好ましく、20〜200μmの範囲内であることがより好ましい。
【0021】
〔粘着層〕
前記粘着層は、樹脂粒子およびシリコーン系粘着剤を含んでいればよく、自己吸着性層であってもよい。前記粘着層の厚さは、通常は5〜100μmの範囲内であり、好ましくは10〜60μmの範囲内である。
【0022】
前記粘着層に含まれる樹脂粒子の量は、シリコーン系粘着剤100重量部に対して1〜10重量部の範囲内であることが好ましい。樹脂粒子の量が1重量部未満であると、樹脂粒子の量が1重量部以上である場合と比較して、Tb−Toの値が小さくなり、透過光の青色への着色度合いが小さくなる。一方、樹脂粒子の量が10重量部を超えると、樹脂粒子の量が10重量部以下である場合と比較して、光学フィルムの全光線透過率が低下する。
【0023】
〔シリコーン系粘着剤〕
前記シリコーン系粘着剤は、25μm厚のポリイミドフィルム上にシリコーン系粘着剤の層を30μm厚で形成することによって粘着フィルムを作製し、被着体としてのステンレス板に前記粘着フィルムを粘着させて前記粘着フィルムの粘着力を測定したときの粘着力が0.01〜4N/25mmの範囲内であることが好ましく、0.01〜1.5N/25mmの範囲内であることがより好ましく、0.01〜0.5N/25mmの範囲内であることがさらに好ましい。前記測定による粘着力が0.01〜4N/25mmの範囲内にあるシリコーン系粘着剤を用いた光学フィルムは、いったん被着体に貼り付けた後に被着体から剥離するのが容易である。
【0024】
前記測定による粘着力が0.01〜4N/25mmの範囲内にあるシリコーン系粘着剤の市販品としては、商品名「KR−3704(X−40−3229)」(信越化学工業株式会社製、前記測定による粘着力が0.06N/25mm)、商品名「X−40−3323」(信越化学工業株式会社製、前記測定による粘着力が0.06N/25mm)、商品名「X−40−3270−1」(信越化学工業株式会社製、前記測定による粘着力が0.18N/25mm)、商品名「X−40−3306」(信越化学工業株式会社製、前記測定による粘着力が0.02N/25mm)、商品名「SD 4587 L PSA」(東レ・ダウコーニング株式会社製、粘着力が44N/1m)、商品名「DC 7651 ADHESIVE」(東レ・ダウコーニング株式会社製、粘着剤塗工厚30μmのときの粘着力が2N/1m)、商品名「DC 7652 ADHESIVE」(東レ・ダウコーニング株式会社製、粘着剤塗工厚30μmのときの粘着力が124N/1m)等が挙げられる。
【0025】
前記シリコーン系粘着剤は、全光線透過率が90%以上であることが好ましい。これにより、光透過性に優れた光学フィルムを実現できる。
【0026】
前記シリコーン系粘着剤は、液状のシリコーン組成物を硬化させることにより得ることができる。シリコーン組成物の硬化は、加熱により行うことができる。前記加熱の温度は、特に限定されないが、80〜130℃が好ましく、より好ましくは90〜120℃である。前記加熱の温度が80℃以上であると、十分に硬化させるのに長時間の加熱が必要となることはなく、生産性の点より好ましい。また、加熱の温度が130℃以下であると、熱による前記透明基材フィルムのしわの発生を抑制でき、好ましい。特に、前記透明基材フィルムがPETフィルムなどの熱に弱いフィルムであると、熱によるしわの発生が生じやすい。前記加熱の時間は、特に限定されないが、生産性向上の点および透明基材フィルムへの熱によるダメージ低減の点から、10秒間〜3分間が好ましい。
【0027】
シリコーン組成物の硬化は、加熱後に紫外線を照射することによって行ってもよい。紫外線の照射は、ピーク照度0.5〜4.0W/cm
2の紫外線を積算照射量が0.1〜2.0J/cm
2となるように照射することが好ましい。
【0028】
〔樹脂粒子〕
前記樹脂粒子としては、例えば、(メタ)アクリル系単量体およびスチレン系単量体の少なくとも一方の重合体からなる樹脂粒子、ポリカーボネート粒子、ポリエチレン粒子、ポリ塩化ビニル粒子、メラミン樹脂粒子等が挙げられる。
【0029】
前記樹脂粒子は、(メタ)アクリル系単量体およびスチレン系単量体の少なくとも一方の重合体からなる樹脂粒子であることが好ましい。この場合、樹脂粒子自体の光透過性が良好となるので、全光線透過率の良好な光学フィルムを実現できる。前記樹脂粒子は、(メタ)アクリル系単量体およびスチレン系単量体の少なくとも一方の重合体からなる場合、概ね樹脂粒子の屈折率は1.4〜1.6の範囲となる。具体的には、例えば、フッ素含有(メタ)アクリル酸アルキルを主成分とする(メタ)アクリル系単量体を重合させてなる重合体の屈折率は1.4程度であり、(メタ)アクリル酸アルキルを主成分とする(メタ)アクリル系単量体の単独重合体の屈折率は1.49程度であり、スチレンを主成分とするスチレン系単量体の単独重合体(ポリスチレン)の屈折率は1.59程度であり、(メタ)アクリル酸アルキルを主成分とする(メタ)アクリル系単量体とスチレンを主成分とするスチレン系単量体との共重合体の屈折率は1.49〜1.59程度である。これにより、前記粘着層におけるシリコーン系粘着剤と樹脂粒子との屈折率差が適度な差になり易く、したがって前記粘着層内部での光散乱が適度な程度となり易く、その結果として透過光の青色への着色度合いおよび全光線透過率の両方が良好な光学フィルムが実現され易い。
【0030】
(メタ)アクリル系単量体およびスチレン系単量体の少なくとも一方の重合体からなる樹脂粒子のうち、(メタ)アクリル系単量体を主成分とする単量体の重合体からなる樹脂粒子は、スチレン系単量体を主成分とする単量体の重合体からなる樹脂粒子と比較して、耐候性に優れているという利点がある。一方、スチレン系単量体を主成分とする単量体の重合体からなる樹脂粒子は、(メタ)アクリル系単量体を主成分とする単量体の重合体からなる樹脂粒子と比較してシリコーン系粘着剤との屈折率差を大きくすることが可能であるため、樹脂粒子とシリコーン系粘着剤との界面で散乱される光の量を多くすることが可能であり、その結果として透過光の青色への着色度合いを大きくし易いという利点がある。
【0031】
前記(メタ)アクリル系単量体およびスチレン系単量体の少なくとも一方の重合体は、(メタ)アクリル系単量体およびスチレン系単量体の少なくとも一方に由来する構成単位を含んでいる。
【0032】
前記(メタ)アクリル系単量体としては、少なくとも1つのアクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基を有する化合物であれば特に限定されるものではなく、1つのエチレン性不飽和基を有する単官能(メタ)アクリル系単量体であってもよく、2つ以上のエチレン性不飽和基を有する多官能(メタ)アクリル系単量体であってもよい。
【0033】
前記単官能(メタ)アクリル系単量体としては、特に限定されるものではなく、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル等の(メタ)アクリル酸アルキル;2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルメタクリレート、パーフルオロオクチルエチルアクリレート等のフッ素含有(メタ)アクリル酸エステル;アクリル酸テトラヒドロフルフリル等の複素環基含有(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸グリシジル等のグリシジル基含有(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル;ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。これら単官能(メタ)アクリル系単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0034】
前記多官能(メタ)アクリル系単量体としては、2つ以上のアクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基を有する化合物であれば特に限定されるものではなく、例えば、トリアクリル酸トリメチロールプロパン、ジメタクリル酸エチレングリコール、ジメタクリル酸ジエチレングリコール、ジメタクリル酸トリエチレングリコール、ジメタクリル酸デカエチレングリコール、ジメタクリル酸ペンタデカエチレングリコール、ジメタクリル酸ペンタコンタヘクタエチレングリコール、ジメタクリル酸1,3−ブチレン、メタクリル酸アリル、トリメタクリル酸トリメチロールプロパン、テトラメタクリル酸ペンタエリスリトール、ジメタクリル酸フタル酸ジエチレングリコール等が挙げられる。これら多官能(メタ)アクリル系単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0035】
前記スチレン系単量体としては、スチレン類(スチレンまたはスチレン誘導体)であれば特に限定されるものではなく、1つのエチレン性不飽和基を有する単官能スチレン系単量体であってもよく、2つ以上のエチレン性不飽和基を有する多官能スチレン系単量体であってもよい。
【0036】
前記単官能スチレン系単量体としては、特に限定されるものではなく、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン等が挙げられる。これら単官能スチレン系単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0037】
前記多官能スチレン系単量体としては、特に限定されるものではなく、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、およびこれらの誘導体等の芳香族ジビニル化合物等が挙げられる。これらの多官能スチレン系単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0038】
前記単官能(メタ)アクリル系単量体及び/又は単官能スチレン系単量体に由来する構成単位は、前記重合体100重量%に対して50〜95重量%の範囲内であることが好ましい。前記単官能(メタ)アクリル系単量体及び/又は単官能スチレン系単量体に由来する構成単位の量が50重量%未満であれば、それ以上の耐溶剤性の向上が期待できず、コストが上がってしまう。前記単官能(メタ)アクリル系単量体及び/又は単官能スチレン系単量体に由来する構成単位の量が前記範囲より多い場合、前記重合体の架橋度が低くなるので、樹脂粒子を含むコーティング剤を塗工する場合に、樹脂粒子が膨潤して塗料の粘度上昇が起こり塗工の作業性が低下する恐れがある。なお、前記重合体100重量%に対する、単量体に由来する構成単位の量は、全ての単量体の合計量100重量%に対する前記単量体の量に相当する。
【0039】
なお、前記重合体は、(メタ)アクリル系単量体の単独重合体であってもよく、スチレン系単量体の単独重合体であってもよく、(メタ)アクリル系単量体とスチレン系単量体との共重合体であってもよく、(メタ)アクリル系単量体およびスチレン系単量体の少なくとも一方と他のビニル系単量体(少なくとも1つのエチレン性不飽和基を有する化合物)との共重合体であってもよい。
【0040】
前記他のビニル系単量体としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等の飽和脂肪酸ビニル;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のα,β−不飽和ニトリル;(メタ)アクリル酸、クロトン酸、シトラコン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、α,β−不飽和ジカルボン酸のモノアルキルエステル(例えばマレイン酸モノブチル)等のα,β−不飽和カルボン酸;これらα,β−不飽和カルボン酸のアンモニウム塩またはアルカリ金属塩等のα,β−不飽和カルボン酸塩;無水マレイン酸等のα,β−不飽和カルボン酸無水物;(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、メチロール化ジアセトンアクリルアミド、アルコキシ基の炭素数が1〜8であるN−アルコキシメチルアクリルアミド(N−イソブトキシメチルアクリルアミド)等のα,β−不飽和アミド;ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート等のような、多官能(メタ)アクリル系単量体および多官能スチレン系単量体以外の多官能ビニル系単量体等が挙げられる。
【0041】
前記多官能ビニル系単量体に由来する構成単位の量は、前記単官能(メタ)アクリル系単量体および/又は単官能スチレン系単量体に由来する構成単位100重量部に対して5〜100重量部の範囲内であることが好ましく、また、前記重合体100重量%に対して5〜50重量%の範囲内であることが好ましい。前記多官能ビニル系単量体に由来する構成単位の量が前記範囲より少ない場合、前記重合体の架橋度が低くなる。その結果、シリコーン系粘着剤および樹脂粒子を含むコーティング剤を透明基材フィルム上に塗工する場合に、樹脂粒子が膨潤してコーティング剤の粘度上昇が起こり塗工の作業性が低下する恐れがある。
【0042】
前記樹脂粒子の体積平均粒子径をD(μm)、前記樹脂粒子の屈折率をn
P、前記シリコーン系粘着剤の屈折率をn
Aとすると、以下の不等式
0.3<D×(n
P−n
A)<0.9
を満たすことが好ましい。すなわち、D×(n
P−n
A)が0.3超0.9未満であることが好ましい。D×(n
P−n
A)が0.3以下である場合には、D×(n
P−n
A)が0.3超である場合と比較して、Tb−Toの値が小さくなるために透過光の青色への着色度合いが小さくなる。D×(n
P−n
A)が0.9以上である場合には、D×(n
P−n
A)が0.9未満である場合と比較して、光拡散効果が高くなり、光学フィルムから抜ける光は全波長散乱光となり、白く見える。D×(n
P−n
A)は、0.35〜0.8であることがより好ましく、0.35〜0.7であることがさらに好ましい。
【0043】
前記樹脂粒子の体積平均粒子径は、前記樹脂粒子が(メタ)アクリル系単量体を主成分とする単量体を重合してなる樹脂粒子である場合には4〜10μmの範囲内であることが好ましく、前記樹脂粒子がスチレン系単量体を主成分とする単量体を重合してなる樹脂粒子である場合には2〜5μmの範囲内であることが好ましい。前記樹脂粒子の体積平均粒子径が上記範囲外である場合、透過光の青色への着色度合いが小さくなる。
【0044】
前記樹脂粒子の粒子径の変動係数(以下、粒子径の変動係数を「CV値」と称する)は、30%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましく、15%以下であることがさらに好ましい。樹脂粒子のCV値が30%を超えると、樹脂粒子に含まれる大粒子が多くなるため、波長700〜800nmの特定波長の光を散乱する効果が低下し、その結果として透過光の青色への着色度合いが小さくなる恐れがある。
【0045】
〔粘着層の形成方法〕
前記粘着層の形成方法は、特に限定されるものではないが、例えば、溶剤中に樹脂粒子を分散させると共に溶剤中にシリコーン系粘着剤またはその前駆体(硬化前のシリコーン系粘着剤)を溶解または分散させることによってコーティング剤を調製し、そのコーティング剤で前記透明基材フィルムをコーティングした後、コーティング剤を乾燥させる(溶剤を蒸発させる)方法が好適である。
【0046】
前記コーティングは、コーター(塗工機)を用いて行ってもよい。前記コーターとしては、例えば、スリットコーター、グラビアコーター、バーコーター(例えば、マイヤーバーコーターなど)、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、ナイフコーター、スプレーコーター等が挙げられる。
【0047】
前記コーティング剤の調製は、例えば、溶剤中に樹脂粒子を高速攪拌により分散させ、得られた分散液をシリコーン系粘着剤中に入れて攪拌脱泡を行うことにより行うことができる。
【0048】
前記溶剤としては、特に限定されないが、例えば、ノルマルヘキサン、シクロヘキサン、ノルマルヘプタン等の炭化水素系溶剤;トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤;酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤;メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール系溶剤等が挙げられる。なお、溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0049】
〔他の構成要素〕
前記粘着層は、色素を含まないことが好ましい。これにより、全光線透過率の高い光学フィルムを実現できる。したがって、前記光学フィルムをディスプレイの表示画面に貼り付けたときの透過像輝度や、前記光学フィルムをLED照明等の照明の照明カバーに貼り付けたときの照明の照度を向上させることができる。
【0050】
本発明の光学フィルムにおいては、さらに、前記シリコーン系粘着剤層の上に、必要に応じて剥離フィルムを設けてもよい。前記剥離フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン等からなる各種プラスチックフィルムに、シリコーン樹脂等からなる剥離剤を塗布したもの等が挙げられる。前記剥離フィルムの厚さは、特に制限はないが、通常、20〜150μmの範囲内である。
【0051】
また、本発明の光学フィルムにおいては、透明基材フィルムにおける前記シリコーン系粘着剤層が形成されている面の裏面上に、ハードコート層、防眩層、反射防止層などの機能層を形成してもよい。
【0052】
前記ハードコート層の厚さは、3〜100μmであることが好ましく、5〜50μmであることがより好ましく、5〜20μmであることがさらに好ましい。前記ハードコート層の厚さが3μm未満であると、光学フィルムの表面硬度が不十分になる可能性がある。前記ハードコート層の厚さが100μmを超えると、前記ハードコート層を構成するのに必要な原料の量が多くなるので、不経済である。
【実施例】
【0053】
以下、実施例及び比較例により本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。まず、以下の実施例及び比較例で使用した樹脂粒子の体積平均粒子径、CV値、および屈折率の測定方法、以下の実施例及び比較例で使用したシリコーン系粘着剤の屈折率の測定方法、並びに、以下の実施例及び比較例で得た光学フィルムの分光透過率、全光線透過率、およびΔb
*値の測定方法を説明する。
【0054】
〔樹脂粒子の体積平均粒子径およびCV値の測定方法〕
樹脂粒子の体積平均粒子径およびCV値は、以下のようにしてコールター方式により測定した。
【0055】
体積平均粒子径は、コールターマルチサイザーIII(ベックマン・コールター株式会社製測定装置)により測定する。測定は、ベックマン・コールター株式会社発行のMultisizer
TM3ユーザーズマニュアルに従って校正されたアパチャーを用いて実施するものとする。
【0056】
なお、測定に用いるアパチャーの選択は、測定する樹脂粒子の想定の体積平均粒子径が1μm以上10μm以下の場合は50μmのサイズを有するアパチャーを選択し、測定する樹脂粒子の想定の体積平均粒子径が10μmより大きく30μm以下の場合は100μmのサイズを有するアパチャーを選択し、樹脂粒子の想定の体積平均粒子径が30μmより大きく90μm以下の場合は280μmのサイズを有するアパチャーを選択し、樹脂粒子の想定の体積平均粒子径が90μmより大きく150μm以下の場合は400μmのサイズを有するアパチャーを選択するなど、適宜行う。測定後の体積平均粒子径が想定の体積平均粒子径と異なった場合は、適正なサイズを有するアパチャーに変更して、再度測定を行う。
【0057】
また、50μmのサイズを有するアパチャーを選択した場合、Current(アパチャー電流)は−800、Gain(ゲイン)は4と設定し、100μmのサイズを有するアパチャーを選択した場合、Current(アパチャー電流)は−1600、Gain(ゲイン)は2と設定し、280μmおよび400μmのサイズを有するアパチャーを選択した場合、Current(アパチャー電流)は−3200、Gain(ゲイン)は1と設定する。
【0058】
測定用試料としては、架橋アクリル系樹脂粒子0.1gを0.1重量%ノニオン性界面活性剤水溶液10m1中にタッチミキサー(ヤマト科学株式会社製、「TOUCHMIXER MT−31」)および超音波洗浄器(株式会社ヴェルヴォクリーア社製、「ULTRASONIC CLEANER VS−150」)を用いて分散させ、分散液としたものを使用する。コールターマルチサイザーIIIの測定部に、ISOTON(登録商標)II(ベックマン・コールター株式会社製:測定用電解液)を満たしたビーカーをセットし、ビーカー内を緩く攪拌しながら、前記分散液を滴下して、コールターマルチサイザーIII本体画面の濃度計の示度を5〜10%に合わせた後に、測定を開始する。測定中はビーカー内を気泡が入らない程度に緩く攪拌しておき、粒子を10万個測定した時点で測定を終了する。架橋アクリル系樹脂粒子の体積平均粒子径は、10万個の粒子の体積基準の粒度分布における算術平均である。
【0059】
樹脂粒子の粒子径の変動係数(CV値)を、以下の数式によって算出する。
【0060】
樹脂粒子の粒子径の変動係数=(樹脂粒子の体積基準の粒度分布の標準偏差
÷樹脂粒子の体積平均粒子径)×100
〔樹脂粒子の屈折率の測定方法〕
樹脂粒子の屈折率の測定は、ベッケ法により行う。まず、スライドガラス上に樹脂粒子を載せ、屈折液(予想される屈折率辺りのCARGILLE社製のカーギル標準屈折液を屈折率差0.002刻みで複数準備する;例えば、屈折率(25℃での屈折率nD25)1.538〜1.562の屈折液を屈折率差0.002刻みで複数準備する)を滴下する。そして、樹脂粒子と屈折液とをよく混ぜた後、下方から岩崎電気株式会社製の高圧ナトリウムランプ「NX35」(中心波長589nm)の光を照射しながら、上方から光学顕微鏡により樹脂粒子の輪郭を観察する。なお、光学顕微鏡による観察は、樹脂粒子の輪郭が確認できる倍率での観察であれば特に問題ないが、粒子径5μmの粒子であれば500倍程度の観察倍率が適当である。
【0061】
上記操作により、屈折液の屈折率と樹脂粒子の屈折率とが近いほど樹脂粒子の輪郭が見えにくくなることから、屈折液中の樹脂粒子の輪郭が見えない、あるいは屈折液中の樹脂粒子の輪郭が最も判りにくい屈折液の屈折率が樹脂粒子の屈折率に等しいと判断する。また、屈折率差が0.002である2種類の屈折液の間で樹脂粒子の見え方に違いがない場合は、これら2種類の屈折液の中間の値を当該樹脂粒子の屈折率と判断する。例えば、屈折率1.554及び1.556の屈折液それぞれで試験をしたときに、両屈折液で樹脂粒子の見え方に違いがない場合は、これら屈折液の中間値1.555を樹脂粒子の屈折率と判する。上記の測定は、試験室気温23℃〜27℃の環境下で実施する。
【0062】
〔シリコーン系粘着剤の屈折率の測定方法〕
シリコーン系粘着剤の屈折率の測定は、樹脂粒子の屈折率の測定と同様にしてベッケ法により行う。
【0063】
〔光学フィルムの分光透過率の測定方法〕
気温20℃、相対湿度65%に設定した恒温恒湿室内で、積分球を装着していない紫外可視光分光光度計(UV−VISIBLE SPECTOOPHOTOMETER)(株式会社島津製作所製、型番「UV−2450」)に前記測定試料をセットして波長300nm〜800nmまでの光の直進光透過率を測定する。具体的には、まず、前記紫外可視光分光光度計に対して、前記紫外可視光分光光度計に付属のフィルムホルダをセットする。次に、前記紫外可視光分光光度計により波長300nm〜800nmの透過率を測定し、波長500nmの透過光強度が100%となるように前記紫外可視光分光光度計を補正する。次に、前記フィルムフォルダに前記測定試料をセットし、波長300nm〜800nmの透過率を測定する。測定条件および紫外可視光分光光度計のパラメーター(装置パラメーター)は、以下の通りとする。
【0064】
(測定条件)
・測定波長範囲:300nm〜800nm
・スキャンスピード:中速
・サンプリングピッチ:1nm
・測定モード:シングル
(装置パラメーター)
・測光値:透過
・スリット巾:2.0mm
・光源切替波長:360nm
・S/R切替:標準
分光透過率における波長380〜500nmの範囲に含まれる各波長で測定された透過率の値の相加平均(積分値に相当)を演算することにより、波長380〜500nmの平均光透過率を算出する。同様にして、分光透過率における波長700〜800nmの範囲に含まれる各波長で測定された透過率の値の相加平均を演算することにより、波長700〜800nmの平均光透過率を算出する。
【0065】
〔光学フィルムの全光線透過率の測定方法〕
光学フィルムの全光線透過率を、ヘイズメーター(日本電色工業株式会社製、商品名「NDH4000」)を使用して、JIS K 7361−1に従って測定する。また、2個の測定サンプルについてそれぞれ測定を実施し、得られた2つの測定値の平均値を最終的な測定値とする。
【0066】
〔光学フィルムのΔb
*値の測定方法〕
光学フィルムのΔb
*値は、色彩色差計「CR−400」(コニカミノルタオプティクス株式会社製)及びデータプロセッサ「DP−400」(コニカミノルタオプティクス株式会社製)を用いて測定した。具体的には、まず、色彩色差計「CR−400」とデータプロセッサ「DP−400」とを接続した。次いで、色彩色差計「CR−400」及びデータプロセッサ「DP−400」の電源を入れた後、データプロセッサ「DP−400」の「表色系」ボタンを押してYxy表色系の表示画面に設定した。次に、色彩色差計「CR−400」に付属の白色校正板(X=84.5、x=0.3159、y=0.3227)に色彩色差計「CR−400」の測定部位を当てて、データプロセッサ「DP−400」の「校正」ボタンを押して校正を行った。校正の後、白色校正板に色彩色差計「CR−400」の測定部位を当てて測定を行い、データプロセッサ「DP−400」の「表色系」ボタンを押してL
*a
*b
*表色系の表示画面に切り替え、L
*a
*b
*表色系のb
*値を読み取り、そのb
*値を白色校正板のb
*値とした。
【0067】
校正の後、白色校正板上に光学フィルムを貼り付け、光学フィルムに色彩色差計「CR−400」の測定部位を当てて測定を行い、データプロセッサ「DP−400」をL
*a
*b
*表色系の表示画面にした状態で、L
*a
*b
*表色系のb
*値を読み取り、そのb
*値を光学フィルムのb
*値とした。そして、光学フィルムのb
*値から白色校正板のb
*値を引いた値を光学フィルムのΔb
*値とした。
【0068】
〔実施例1〕
本実施例では、シリコーン系粘着剤として、主剤(信越化学工業株式会社製、型番「KR−3704(X−40−3229)」、有効成分60重量%)と硬化剤(信越化学工業株式会社製、型番「CAT−PL−50T)」、白金系触媒)とからなる、2液混合系の付加型シリコーン組成物であるシリコーン系粘着剤(硬化後の屈折率1.41)を用いた。まず、容器に、溶剤としてのトルエン5gに、樹脂粒子としての体積平均粒子径2.0μmの架橋ポリスチレン(以下「PS」と略記する)粒子(スチレン95重量%及びジビニルベンゼン5重量%からなる単量体混合物の重合体、CV値11%、屈折率1.59)0.5gを入れ、高速攪拌機にて5分間攪拌を行い、PS粒子をトルエン中に分散させた。これにより、粒子分散液を得た。
【0069】
その後、別の容器に、シリコーン系粘着剤の主剤(型番「KR−3704」)25gと、溶剤としてのトルエン7gと、シリコーン系粘着剤の硬化剤(型番「CAT−PL−50T」)0.12gとを入れ、次いで先に得た粒子分散液を入れ、攪拌棒にて良く攪拌を行った。得られた混合液の脱泡処理を行い、混合液中の気泡を取り除いた。これにより、コーティング剤を得た。
【0070】
次に、透明基材フィルムとしての厚み100μmのPETフィルム(東洋紡株式会社製、型番「A4300」)上に、スリット幅100μmのスリットコーターを用いて上記コーティング剤をコーティングした。このコーティング剤でコーティングされたPETフィルムを130℃で3分間加熱することによって、コーティング剤を乾燥させると共に硬化させた。これにより、シリコーン系粘着剤中にPS粒子が分散した粘着層がPETフィルム上に形成された。最後に、粘着層にセパレートフィルムを貼り付けて光学フィルムを得た。本実施例では、樹脂粒子の量は、シリコーン系粘着剤100重量部に対して3.3重量部である。
【0071】
〔実施例2〕
樹脂粒子として体積平均粒子径2.0μmのPS粒子に代えて体積平均粒子径3.0μmのPS粒子(スチレン95重量%及びジビニルベンゼン5重量%からなる単量体混合物の重合体、CV値11%、屈折率1.59)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、光学フィルムを得た。
【0072】
〔実施例3〕
樹脂粒子として体積平均粒子径2.0μmのPS粒子に代えて体積平均粒子径4.0μmの架橋ポリメタクリル酸メチル(以下「PMMA」と略記する)粒子(メタクリル酸メチル70重量%及びエチレングリコールジメタクリレート30重量%からなる単量体混合物の重合体、CV値10%、屈折率1.49)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、光学フィルムを得た。
【0073】
〔実施例4〕
樹脂粒子として体積平均粒子径2.0μmのPS粒子に代えて体積平均粒子径5.0μmのPMMA粒子(メタクリル酸メチル70重量%及びエチレングリコールジメタクリレート30重量%からなる単量体混合物の重合体、CV値9%、屈折率1.49)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、光学フィルムを得た。
【0074】
〔実施例5〕
樹脂粒子として体積平均粒子径2.0μmのPS粒子に代えて体積平均粒子径6.0μmのPMMA粒子(メタクリル酸メチル70重量%及びエチレングリコールジメタクリレート30重量%からなる単量体混合物の重合体、CV値12%、屈折率1.49)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、光学フィルムを得た。
【0075】
〔実施例6〕
PS粒子の添加量を0.1gに変更したこと以外は実施例2と同様にして、光学フィルムを得た。
【0076】
〔実施例7〕
PS粒子の添加量を0.2gに変更したこと以外は実施例2と同様にして、光学フィルムを得た。
【0077】
〔実施例8〕
PS粒子の添加量を1.0gに変更したこと以外は実施例2と同様にして、光学フィルムを得た。
【0078】
〔比較例1〕
樹脂粒子として体積平均粒子径2.0μmのPS粒子に代えて体積平均粒子径15μmのPMMA粒子(メタクリル酸メチル70重量%及びエチレングリコールジメタクリレート30重量%からなる単量体混合物の重合体、CV値9%、屈折率1.49)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、光学フィルムを得た。
【0079】
これら実施例および比較例で得られた光学フィルムについての、全光線透過率Tt、波長380〜500nmの平均光透過率Tb、波長700〜800nmの平均光透過率To、Tb−To、並びに波長380〜800nmの分光透過率の極大点の波長およびΔb
*値を、これら実施例および比較例の光学フィルムに使用した樹脂粒子の組成、体積平均粒子径D、添加量、および屈折率n
P、シリコーン系粘着剤の屈折率n
A、並びにn
P−n
AおよびD×(n
P−n
A)と共に、表1に示す。
【0080】
【表1】
【0081】
以上のように、比較例1では、波長380〜500nmの平均光透過率をTb(%)、波長700〜800nmの平均光透過率をTo(%)、としたときのTb−To(%)が1以下(詳細には−3.5)であったのに対し、実施例1〜8では、Tb−To(%)が1より大きい値(詳細には3.3〜15.2)である光学フィルムを実現することができた。