【解決手段】リン酸エステル構造を有するウレタン樹脂(成分(A))及び(メタ)アクリル樹脂(成分(B))からなり、かつ成分(A)と成分(B)の重量比[成分(A)の重量]/[成分(B)の重量]が20/80〜90/10である複合樹脂組成物を用いる。
下記成分(A)及び成分(B)からなり、かつ成分(A)と成分(B)の重量比[成分(A)の重量]/[成分(B)の重量]が20/80〜90/10である複合樹脂組成物。
・成分(A):リン酸エステル構造を有するウレタン樹脂
・成分(B):(メタ)アクリル樹脂
前記成分(A)が、ポリイソシアネート(a−1)と、少なくともリン酸エステル構造を有するポリオール(a−3)を含むポリオール(a−2)を反応させて得られるものである、請求項1に記載の複合樹脂組成物。
前記成分(A)が、ポリイソシアネート(a−1)と、少なくともリン酸エステル構造を有するポリオール(a−3)及びカルボキシル基を有するポリオール(a−4)を含むポリオール(a−2)を反応させて得られるものである、請求項2〜4のいずれか一項に記載の複合樹脂組成物。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されているウレタン−アクリル複合樹脂は、十分な難燃性を有していないものと考えられる。これは、リンの含有量が比較的少ないため、難燃特性を十分に発揮できていないこと、及びアクリル成分にリン含有モノマーを共重合するため、複合樹脂としては粒子内部にそのリン含有アクリル組成が配向し、塗膜形成時に表面に局在化するのはリンが導入されていないウレタン樹脂となるため、難燃性を更に発現しにくくなるためであると考えられる。
【0006】
また、特許文献2には、ウレタン樹脂の難燃化について記載されているが、この樹脂はウレタン樹脂単独からなるものであり、十分な塗膜耐久性が得られない場合がある。これはウレタン樹脂そのものが比較的低分子量であるためであり、補強剤(エポキシシラン)等を使用することにより架橋構造を形成させ、耐久性を向上させる必要性がある等、使用時に手間が掛かってしまう。
【0007】
そこで、この発明は、十分な塗膜耐久性及び難燃性を有するウレタン−アクリル複合樹脂組成物を得ることを目的とする。この発明はまた、このウレタン−アクリル複合樹脂組成物の製造方法、及び水性樹脂分散体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは前記課題に鑑み鋭意検討を重ねたところ、ウレタン−アクリル複合樹脂のウレタン組成にリン酸エステル構造を導入させることにより、十分な塗膜耐久性及び難燃性が得られることを見いだし、本発明を完成させた。すなわち、本発明の要旨は下記[1]〜[9]に存する。
【0009】
[1]下記成分(A)及び成分(B)からなり、かつ成分(A)と成分(B)の重量比[成分(A)の重量]/[成分(B)の重量]が20/80〜90/10である複合樹脂組成物。
・成分(A):リン酸エステル構造を有するウレタン樹脂
・成分(B):(メタ)アクリル樹脂
【0010】
[2]前記成分(A)が、ポリイソシアネート(a−1)と、少なくともリン酸エステル構造を有するポリオール(a−3)を含むポリオール(a−2)を反応させて得られるものである、[1]に記載の複合樹脂組成物。
【0011】
[3]前記リン酸エステル構造を有するポリオール(a−3)が、下記式(1)で表される化合物及び/又は式(2)で表される化合物である、[1]又は[2]に記載の複合樹脂組成物。
【0012】
【化1】
(前記式(1)中、R
1〜R
8は互いに異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜12の炭化水素基又はハロゲン元素から選ばれる基であり、R
9は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、フェニル基又はフェノキシ基であり、Xはそれぞれ独立して直接結合、炭素数1〜13の2価の炭化水素基、−O−、−S−、−SO
2−及び−CO−から選ばれる基であり、nは1〜20の自然数である。)
【0013】
【化2】
(式(2)中、R
11は炭素数1〜4のアルキル基又はN,N−ビス(ヒドロキシアルキル)基(ヒドロキシアルキル基の炭素数は1〜4である。)であり、R
12及びR
13はそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基である。)
【0014】
[4]前記リン酸エステル構造を有するポリオール(a−3)が、前記式(1)で表される化合物であり、式(1)中、R
1〜R
8は互いに異なっていてもよく、水素原子、メチル素基又はハロゲン元素から選ばれる基であり、R
9は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基又はフェノキシ基であり、Xはそれぞれ独立して直接結合、炭素数1〜13の2価の炭化水素基、−O−、−S−、−SO
2−及び−CO−から選ばれる基であり、nは1〜20の数である、[3]に記載の複合樹脂組成物。
【0015】
[5]前記成分(A)が、ポリイソシアネート(a−1)と、少なくともリン酸エステル構造を有するポリオール(a−3)及びカルボキシル基を有するポリオール(a−4)を含むポリオール(a−2)を反応させて得られるものである、[2]〜[4]のいずれか一項に記載の複合樹脂組成物。
【0016】
[6]前記カルボキシル基を有するポリオール(a−4)が下記式(3)で表される化合物である、[5]に記載の複合樹脂組成物。
【化3】
(式(3)中、R
14は炭素数1〜4のアルキル基である。)
【0017】
[7]成分(B)が下記式(4)で表わされる(メタ)アクリル系モノマーを重合して得られるものである、[1]〜[6]のいずれか1項に記載の複合樹脂組成物。
【化4】
(式(4)中、R
15は水素原子又はメチル基であり、R
16は炭素数1〜12のアルキル基、グリシジル基又はホスホン酸アルキル基である。)
【0018】
[8][1]〜[7]のいずれか1項に記載の複合樹脂組成物を水に分散してなる水性分散体。
[9][1]〜[7]のいずれか1項に記載の複合樹脂組成物の製造方法であり、前記成分(A)と、前記成分(B)の構成成分である(メタ)アクリル系モノマー(b−1)とが混合された状態で、この(メタ)アクリル系モノマー(b−1)を乳化重合させる複合樹脂組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0019】
この発明のウレタン−アクリル複合樹脂組成物及びこれを用いて得られる水性樹脂分散体は、塗膜耐久性、難燃性に優れたものである。このため、本発明のウレタン−アクリル複合樹脂組成物は、金属やプラスチック等のコーティング剤、紙や繊維の樹脂加工剤等の用途に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
この発明にかかる複合樹脂組成物は、リン酸エステル構造を有するウレタン樹脂(以下、「成分(A)」と称する。)と、(メタ)アクリル樹脂(以下、「成分(B)」と称する。)とを所定割合で複合した複合樹脂の組成物である。この複合樹脂組成物は、水に分散された水性分散体の状態であってもよい。
この発明のウレタン−アクリル複合樹脂組成物は、下記成分(A)及び成分(B)からなり、かつ成分(A)と成分(B)の重量比[成分(A)の重量]/[成分(B)の重量]が20/80〜90/10であるものである。
・成分(A):リン酸エステル構造を有するウレタン樹脂
・成分(B):(メタ)アクリル樹脂
【0021】
この発明のウレタン−アクリル複合樹脂組成物は、塗膜耐久性、難燃性に優れるという効果を奏する。優れた塗膜耐久性は、ウレタン樹脂とアクリル樹脂が複合化されていることに起因するものと考えられ、また、優れた難燃性は、ウレタン樹脂中のリン酸エステル構造に起因するものと考えられる。
【0022】
[成分(A)]
前記成分(A)のリン酸エステル構造を有するウレタン樹脂は通常、ポリイソシアネート(a−1)とリン酸エステル構造を有するポリオール(a−3)を含むポリオール(a−2)とを反応させて得られるものである。
【0023】
前記ポリイソシアネート(a−1)としては、各種の脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート等の有機系ポリイソシアネートが挙げられる。これらポリイソシアネートの具体例としては、ジシクロへキシルメタンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,3−シクロヘキシレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0024】
前記リン酸エステル構造を有するポリオール(a−2)とは、リン酸エステル基を有し、かつ水酸基を複数有する化合物である。リン酸エステル構造を有するポリオール(a−2)の中でも、下記式(1)で表される化合物や、下記式(2)で表される化合物は、ウレタン合成において、反応性が比較的良好に進行し易い点で好ましい。
【0026】
前記式(1)中、R
1〜R
8は互いに異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜12の炭化水素基又はハロゲン元素から選ばれる基であり、R
9は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、フェニル基又はフェノキシ基であり、Xはそれぞれ独立して直接結合、炭素数1〜13の2価の炭化水素基、−O−、−S−、−SO
2−及び−CO−から選ばれる基であり、nは1〜20の自然数である。
【0028】
前記式(2)中、R
11は炭素数1〜4のアルキル基又はN,N−ビス(ヒドロキシアルキル)基(ヒドロキシアルキル基の炭素数は1〜4である。)であり、R
12及びR
13はそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基である。
【0029】
前記式(1)で表される化合物の中でも、R
1〜R
8は互いに異なっていてもよく、水素原子、メチル基又はハロゲン元素から選ばれる基であるものが好ましい。また、R
9は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基又はフェノキシ基であるものが好ましい。R
1〜R
8及びR
9がこれらのような構造であると、難燃性と耐水性をより良好なものとする観点から好ましく、そのような化合物の具体的な例として、下記式(5)で表される化合物があげられる。
【0031】
また、前記式(2)で表される化合物の中でも、R
12とR
13が同一であり、R
11がN,N−ビス(ヒドロキシアルキル)基(ヒドロキシアルキル基の炭素数は1〜4である。)で示される化合物は、ウレタン組成の親水性付与の観点、及び反応性の観点でより好ましく、そのような化合物の具体的な例として、下記(6)で示される化合物があげられる。
【0033】
前記カルボキシル基を有するポリオール(a−4)は、カルボン酸基を有するポリオールであれば特に制限されないが、例として、下記式(3)に示す化合物等があげられる。
【0035】
式(3)中、R
14は炭素数1〜4のアルキル基である。
【0036】
このような化合物の例としては、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロールヘキサン酸等のジメチロールアルカン酸があげられる。
【0037】
前記その他のポリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンポリオール、1,3−ブタンポリオール、1,4−ブタンポリオール、1,5−ペンタンポリオール、3−メチル−1,5−ペンタンポリオール、1,6−ヘキサンポリオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、メチルペンタンポリオールアジペート、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、カーボネート基含有ポリオール等があげられる。
【0038】
[成分(B)]
前記成分(B)を構成するビニル重合体とは、ビニル基を有する単量体、すなわち、ラジカル重合性単量体の重合体をいう。特に、活性水素を含まないラジカル重合性単量体を用いると、目的外のイソシアネートの消費が起きにくいのでより好ましい。
【0039】
このラジカル重合性単量体としては、官能基として1つのビニル基のみを有する単官能性不飽和単量体でもよく、官能基として2つ以上ビニル基を有する多官能性不飽和単量体でもよい。さらに、多官能性不飽和単量体と単官能性不飽和単量体の混合物を用いてもよい。
【0040】
前記の単官能性不飽和単量体としては、下記式(4)に示すような(メタ)アクリル系単量体、ハロゲン化ビニル系化合物、芳香族ビニル化合物等があげられる。なお、この明細書において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル又はメタクリル」を意味する。
【0042】
式(4)中、R
15は水素原子又はメチル基であり、R
16は炭素数1〜12のアルキル基、グリシジル基又はホスホン酸アルキル基である。
【0043】
前記(メタ)アクリル系単量体とは、(メタ)アクリル酸のエステル化合物等をいい、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸ジフェニルオキシエチルホスフェート、(メタ)アクリル酸ジエチルオキシエチルホスフェート等があげられ、重合に際しては、その1種を用いても、それらの2種以上の混合物を用いてもよい。
【0044】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸イソボルニル等があげられる。
【0045】
また、前記多官能性不飽和単量体としては、ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸プロピレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ブチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ヘキサンジオール、ジ(メタ)アクリル酸ノナンジオール、ジ(メタ)アクリル酸ネオペンチルグリコール、(メタ)アクリル酸アリル等の(メタ)アクリル酸化合物、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン及びそれらの誘導体等の芳香族ジビニル化合物等があげられる。
【0046】
さらに、前記の他、N,N−ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルスルフィド、ジビニルスルホンや、3個以上のビニル基を持つ化合物があげられる。
なお、前記のビニル基を有する単量体は、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0047】
前記成分(B)は、前記ラジカル重合性単量体を重合して得られるが、この成分(B)のガラス転移温度(Tg)の上限は、80℃が良く、70℃が好ましい。ガラス転移温度が80℃以下であると、得られる塗膜が硬くなり過ぎず、クラックの発生を防ぎ易いために好ましい。一方、ガラス転移温度(Tg)の下限は、20℃が良く、30℃が好ましい。ガラス転移温度が20℃以上であると、密着性が向上し易いために好ましい。
【0048】
[複合樹脂組成物の製造]
次に、この発明にかかるウレタン−アクリルの複合樹脂組成物製造方法を具体的に説明する。
この製造方法は、前記成分(A)と、前記成分(B)の構成成分である(メタ)アクリル系モノマー(b−1)とが混合された状態で、この(メタ)アクリル系モノマー(b−1)を乳化重合させる製造方法であり、具体例としては下記の第1製造法〜第3製造法に示す製造方法等を挙げることができる。
【0049】
具体的には、第1製造法としては、まず、(メタ)アクリル系モノマー(b−1)の存在下に、前記リン酸エステル構造を有するポリオール(a−3)、及び必要に応じてカルボキシル基を有するポリオール(a−4)を含有するポリオール(a−2)と、ポリイソシアネート(a−1)とを反応させて、リン酸エステル構造を有するウレタン樹脂(成分(A))を製造する。
【0050】
上記の製造工程は、ウレタン反応をラジカル重合性単量体の存在下で行うので、反応時の粘度を低く保つことができ、反応を均一に進めることができる。
【0051】
前記リン酸エステル構造を有するポリオール(a−3)の含有量は、ポリオール(a−2)全量に対して、50.0重量%以上が良く、65.0重量%以上が好ましい。上記下限値以上であると、難燃性が発現し易いために好ましい。一方、含有量の上限は、95.0重量%が良く、92.0重量%が好ましい。上記上限値以下であると、ウレタン反応時の粘度が高くなり過ぎず、また、水分散性が低下しにくいために好ましい。
【0052】
前記カルボキシル基を有するポリオール(a−4)を用いる場合、この含有量は、ポリオール(a−2)全量に対して、5.0重量%以上が良く、7.0重量%以上が好ましい。上記下限値以上であると、樹脂の水分散性が低下しにくく、分散不良を起こしにくいために好ましい。一方、含有量の上限は、25.0重量%が良く、20.0重量%が好ましい。上記上限値以下であると、塗膜の耐水性が低下しにくいために好ましい。
【0053】
ポリイソシアネート(a−1)とポリオール(a−2)との混合比は、重量比で(a−1)/(a−2)=1.1/1〜2.5/1とすることが好ましく、1.2/1〜2.0/1とすることがより好ましい。両者の比を上記範囲内とすることで、反応中の粘度上昇が少なくなって反応を安定に行うことができ、かつ未反応イソシアネートの残留量を抑えることが可能となり、反応生成物の経時安定性が良好となる。
【0054】
前記(メタ)アクリル系モノマー(b−1)の混合量は、得られる複合樹脂組成物における成分(A)と成分(B)との重量比が、(A)/(B)で20/80以上となるような量とすることが必須である。重量比が20/80より小さいと、リン酸エステル構造を有するウレタン樹脂量が少なくなり過ぎ、難燃性を発現することが困難となるという問題点を生じる場合がある。難燃性をより発現させ易くする観点から、(A)/(B)が30/70以上であることが好ましい。一方、(A)と成分(B)との重量比の上限は、(A)/(B)で90/10となるような量とすることが必須である。重量比が90/10より小さいと、(メタ)アクリル系モノマー中でウレタン反応を行う上で、反応時の粘度が高くなり過ぎ、反応を均一に行うことが困難となるという問題点を生じる場合がある。この点をより改善する観点から、(A)/(B)は80/20以下であることが好ましい。
【0055】
次に、前記の重合で得られたウレタン樹脂にカルボキシル基が含まれる場合、塩基性化合物により中和する。これにより、得られる水分散液がより安定化する。
【0056】
前記塩基性化合物は、カルボキシル基を中和できるものであれば特に限定されるものではなく、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミン等の3級アミン類等があげられる。
【0057】
次いで、水を加えて前記ウレタン樹脂とラジカル重合性単量体との混合液を水中に分散させて、水性分散液を得る。続いて、前記(メタ)アクリル系モノマー(b−1)を乳化重合させて、(メタ)アクリル系重合体を得ることにより、ウレタン−アクリルの複合樹脂組成物の水性分散液を製造する。
【0058】
前記水分散液を得るために使用される水の量は、特に限定されないが、前記中和液に対して、0.5〜9重量倍量が好ましく、1〜4重量倍量がより好ましい。上記上限値以下であると、樹脂の含有割合が低下し過ぎず、厚めの塗膜を得易くなる傾向がある。一方、上記下限値以上であると、水分散時の粘度が高くなり過ぎず、取り扱い性の観点から好ましい。
【0059】
前記の水を加えて水性分散液を得る工程において、必要に応じて、乳化剤が用いられる。この乳化剤としては、例えば、アニオン性、カチオン性、両イオン性等のイオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤等があげられる。
【0060】
前記乳化重合工程において、乳化重合は、通常、重合開始剤を添加して行われる。この重合開始剤としては、通常の乳化重合で使用される重合開始剤を使用することができる。この重合開始剤の例としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物、過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等の過酸化物等のラジカル重合開始剤があげられ、これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができる。また、これらラジカル重合開始剤と、例えば亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、酒石酸、L−アスコルビン酸、二酸化チオ尿素等の還元剤とを併用してレドックス系重合開始剤として用いることもできる。
【0061】
前記乳化重合の重合温度は、通常50〜100℃程度、反応時間は、通常2〜16時間程度とすることが好ましい。
【0062】
次に、第2製造法としては、まず、(b−1)成分の一部の存在下で、(a−1)成分及び(a−3)成分を含む(a−2)成分のウレタン化反応を行い、次いで、残りの(b−1)成分を追加して(b−1)成分に相当する組成として中和後、水分散して次いで乳化重合する製造方法が挙げられる。
【0063】
さらに、第3製造法としては、まず、特定の成分(GMA、AN、ジフェニル−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート(下記化学式7))以外の(b−1)成分の存在下で、(a−1)成分及び(a−3)成分を含む(a−2)成分のウレタン化反応を行い、中和した後に水分散して、その後に残りの特定成分を加えて吸収させた後に乳化重合する製造方法があげられる。
【0064】
第2製造法や第3製造法における各成分の含有量は、第1製造法における各成分の含有量と同様にすることができる。なお、第2製造法における、最初に用いる(b−1)成分の一部の含有量は、(b−1)成分全体の20〜95重量%が良く、30〜90重量%が好ましい。この範囲を満たすことにより、最初に用いる(b−1)成分中でウレタン反応を行う上で、反応時の粘度が高くなり過ぎず、反応を均一に行うことができるという効果を奏することができる。
【0065】
このようにして得られた複合樹脂組成物に含まれるリンの含有量は、複合樹脂組成物中の成分(A)及び(B)の全固形分に対し、2.5重量%以上が良く、3.0重量%以上が好ましい。上記下限値以上であると、難燃性をより発現させ易くするという観点で好ましい。一方、リンの含有量の上限は、6.5重量%が良く、6.0重量%が好ましい。上記上限値以下であると、ウレタン反応を行う上で、反応時の粘度が高くなり過ぎ、反応を均一に行うことが困難となるという問題点を回避するという観点で好ましい。
【0066】
このようにして得られた複合樹脂組成物は、ウレタン組成によりアクリル組成を乳化して粒子内複合した構造とすることができ、必然的にウレタン組成が粒子表面に局在化した形態をとることになり、リン成分を樹脂表面に局在化させることが可能となる。
【0067】
このようにして得られた複合樹脂組成物の水性分散液は、各種コーティング剤や樹脂加工剤として使用でき、特に極性基材への密着性に優れ、形成される塗膜および加工物は難燃性を有しているという機能付与が可能である。
例えば、繊維基材に裏面コーティング剤としてこの複合樹脂組成物を施し、繊維加工することにより、難燃化されたカーマットやカーシートのバッキング剤としても有用に使用することができる。
【実施例】
【0068】
以下、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例により限定されるものではない。まず、評価方法及び使用した原材料について説明する。
【0069】
(評価方法)
[燃焼試験]
UL94垂直燃焼試験に準じて実施した。試験片の作成は、ガラスクロスに各種樹脂を30重量%になるように含浸させ、室温にて一晩乾燥させた。その後、長さ125mm、幅13mmの短冊状に切断し、8枚を重ね合わせ、120℃の乾燥機内で0.23kg/cm
2の荷重をかけて6時間積層を行い、試験片を作成した。
得られた試験片を用い、UL94垂直燃焼試験を実施し、1回目と2回目の燃焼時間を合計した値を各試験片の燃焼時間として、各々4回測定して、平均燃焼時間を求めた。
さらに、以下の基準で評価した。
◎…最長燃焼時間が10秒以下(V−0に相当)。
○…最長燃焼時間が10秒を越え、30秒以下(V−1に相当)。
△…最長燃焼時間が30秒を越え、60秒以下。
×…最長燃焼時間が60秒を越える。
【0070】
[耐水性試験]
各試料にNMP(N−メチル−2−ピロリドン)を6wt%添加した塗液を調整し、アルコール脱脂したガラス板上に100g/m
2塗布して、室温で3日間乾燥したものを試験片とした。作成した試験片を常温水に60分間浸漬し、水から引上げて塗膜を指で軽く擦り状態を目視観察した。以下の基準にて耐水性を評価した。
○:塗膜が皮膜として保持していたもの。
△:塗膜がポロポロと崩れたもの。
×:水から引上げた時に塗膜が崩れたもの。
【0071】
[耐イソプロピルアルコール性(耐IPA性)試験]
上記耐水性試験と同様の試験片を使用し、塗膜面にIPAをスポイトで1滴落とし、2分後の塗膜表面状態を目視観察し、表面を指で軽く押さえて塗膜表面のタックを確認した。以下の基準にて耐IPA性の評価を行った。
◎:塗膜表面状態に変化がなく、指で押さえた際にタックがなく、押さえた跡が残らなかったもの。
○:タックが僅かにあるもの。
△:塗膜表面状態に変化が確認されたもの。
×:塗膜表面状態に変化がなく、指で押さえた際に塗膜の溶解が確認され、押さえた状態が戻らなかったもの。
【0072】
(原材料)
[リン酸エステル構造を有するポリオール(a−3)]
・nofia(登録商標) OL1001(商品名)…FRX Polymers社製、前記式(1)に該当する化合物(R
1〜R
8が水素原子であり、R
9がメチル基であり、Xが−C(CH
3)
2−であるもの。)、重量平均分子量(Mw):2,000〜3,000(カタログ値)、固形分100重量%、リン含有率9.1重量%、水酸基価88mgKOH/g、以下「OL1001」と称する。
【0073】
[カルボキシル基を有するポリオール(a−4)]
・ジメチロールプロピオン酸…Perstorp Specialty Chemicals AB社製、以下「DPMA」と称する。
【0074】
[その他のポリオール]
・ポリカーボネートポリオール…ダイセル化学工業(株)製:プラクセルCD220、水酸基価56.7mgKOH/g、以下「CD220」と称する。
・ポリテトラメチレングリコール…三菱化学(株)製:PTMG1000、水酸基価111.1mgKOH/g、以下「PTMG1000」と称する。
【0075】
[ポリイソシアネート(a−1)]
・イソホロンジイソシアネート…エボニック デグサ社製:VESTANAT IPDI(商品名)、以下「IPDI」と称する。
・ヘキサメチレンジイソシアネート…昭和化学(株)製:試薬、以下「HDI」と称する。
【0076】
[塩基性化合物]
・トリエチルアミン…和光純薬工業(株)製:試薬、以下「TEA」と称する。
[鎖伸長剤]
・3重量%ヒドラジン水溶液…エムジーシー大塚ケミカル(株)製:水加ヒドラジン80%(商品名)をヒドラジン含有量が3重量%になるようにイオン交換水で調整したもの、以下「HD」と称する。
【0077】
[(メタ)アクリル系モノマー(b−1)]
・メタクリル酸メチル…三菱レイヨン(株)製:アクリエステルM(商品名)、以下「MMA」と称する。
・アクリル酸ブチル…三菱化学(株)製、以下「BA」と称する。
・メタクリル酸グリシジル…三菱ガス化学社製、以下「GMA」と称する。
・アクリロニトリル…ダイヤニトリックス(株)製 以下「AN」と称する。
[その他のモノマー]
・リン含有モノマー…ジフェニル−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート、大八化学工業(株)製:以下「MR−260」と称する。この化学式を下記(7)に示す。
この化合物は、リン含有量を増加させるために使用することができ、また、反応性モノマーとして複合樹脂組成物中に取り込まれる。
【0078】
【化11】
【0079】
[重合開始剤]
・レドックス系開始剤…7重量%t−ブチルハイドロパーオキサイド水溶液(化薬アクゾ(株)製:70重量%t−ブチルヒドロパーオキサイドの水溶液を7重量%に水で調整したもの、以下「t−BHP」と称する。)と、1重量%アスコルビン酸水溶液(BASFジャパン(株)製:アスコルビン酸を1重量%濃度でイオン交換水に溶解したもの、以下「AsA」と称する。)とを用いた。
【0080】
[溶媒]
・シクロヘキサノン…宇部興産(株)製(以下「CHN」と称する。)
[乳化剤]
・アデカリアソープSR−10…ADEKA社製、[({α−[2−(アリルオキシ)−1−({[アルキル(C=10〜14)]オキシ}メチル)エチル]−ω−ヒドロキシポリ(n=1〜100)(オキシエチレン)}を主成分とする、{アルカノール(C=10〜14、分岐型)と1−(アリルオキシ)−2,3−エポキシプロパンの反応生成物}のオキシラン重付加物)の硫酸エステル化物]のアンモニウム塩、以下「SR−10」と称する。
【0081】
[難燃剤]
・リン系難燃剤…大八化学工業(株)製:DAIGUARD880、脂肪族縮合リン酸エステル、リン含有量:14.8重量%、以下「DAIGUARD880」と称する。
【0082】
[実施例1]
温度計、撹拌装置及び還流冷却管を備えた4つ口フラスコに、リン酸エステル構造を有するポリオール(a−3)としてOL1001を44.6g、カルボキシル基を有するポリオール(a−4)としてDMPAを4.7g、(メタ)アクリル系モノマー(b−1)として、MMA20.8g及びBA20.8gを秤量し、窒素及び空気の混合ガス雰囲気下で70℃に加温撹拌して、OL1001を溶解した。その後、ポリイソシアネート(a−1)としてIPDIを20g添加し、90℃で5時間撹拌してイソシアネート基末端のプレポリマーを得た。
【0083】
60℃にフラスコ内温度を下げ、リン含有モノマーとしてMR−260を52.0g添加し、均一になったことを確認した上で、TEAを3.5g添加してカルボン酸を中和し、GMAを10.4g添加して均一に混合した。その後、イオン交換水235.7gを約15分かけて加え、転相乳化させ、リン酸エステル構造を有するウレタンプレポリマーを乳化成分として(メタ)アクリル系モノマーの乳化分散物を得た。
【0084】
更にリン酸エステル構造を有するウレタンプレポリマーを高分子量化させるため、鎖伸長剤として3重量%ヒドラジン水溶液(HD)を16.7g添加した後にフラスコ内温を50℃に昇温して、ラジカル開始剤のt−BHP14.9gを添加して1分間撹拌の後にAsA水溶液52g添加して(メタ)アクリル系モノマーを重合させた。重合反応により、内温の上昇がみられた後に内温を70℃に調整し、2時間熟成反応を実施してから冷却し、ウレタン樹脂とアクリル樹脂との複合樹脂組成物のエマルジョンを得た。得られた複合樹脂組成物のエマルジョンについて、燃焼試験、耐水性試験、耐IPA性試験を実施した。その結果を表−1に示す。
【0085】
[実施例2]
実施例1より、その他のポリオールとして、ポリカーボネートポリオールであるCD220を12.0g使用し、表−1に示すように原料の使用量を変更した以外は実施例1と同様の合成方法によりウレタン樹脂とアクリル樹脂との複合樹脂組成物のエマルジョンを得た。得られた複合樹脂組成物のエマルジョンについて、燃焼試験、耐水性試験、耐IPA性試験を実施した。その結果を表−1に示す。
【0086】
[実施例3]
実施例1より、その他のポリオールとして、PTMG1000を使用し、表−1に示すように原料の使用量を変更した以外は実施例1と同様の合成方法によりウレタン樹脂とアクリル樹脂との複合樹脂組成物のエマルジョンを得た。得られた複合樹脂組成物のエマルジョンについて、燃焼試験、耐水性試験、耐IPA性試験を実施した。その結果を表−1に示す。
【0087】
[実施例4、5]
実施例3より、リン含有モノマーMR260を用いなかった以外は表−1に示した各原料量にて実施例1と同様の合成方法によりウレタン樹脂とアクリル樹脂との複合樹脂組成物のエマルジョンを得た。得られた複合樹脂組成物のエマルジョンについて、燃焼試験、耐水性試験、耐IPA性試験を実施した。その結果を表−1に示す。
【0088】
[実施例6]
実施例4、5より、ポリイソシアネート(a−1)としてHDIを併用し、表−1に示すように原料の使用量を変更した以外は実施例1と同様の合成方法によりウレタン樹脂とアクリル樹脂との複合樹脂組成物のエマルジョンを得た。得られた複合樹脂組成物のエマルジョンについて、燃焼試験、耐水性試験、耐IPA性試験を実施した。その結果を表−1に示す。
【0089】
[実施例7]
実施例4、5より、モノマーのANを併用し、表−1に示すように原料の使用量を変更した以外は実施例1と同様の合成方法によりウレタン樹脂とアクリル樹脂とえの複合樹脂組成物のエマルジョンを得た。得られた複合樹脂組成物のエマルジョンについて、燃焼試験、耐水性試験、耐IPA性試験を実施した。その結果を表−1に示す。
【0090】
[実施例8]
実施例4より、モノマーのGMAを使用せず、表−1に示すように原料の使用量を変更した以外は実施例1と同様の合成方法によりウレタン樹脂とアクリル樹脂との複合樹脂組成物のエマルジョンを得た。得られた複合樹脂組成物のエマルジョンについて、燃焼試験、耐水性試験、耐IPA性試験を実施した。その結果を表−1に示す。
【0091】
【表1】
【0092】
[実施例9]
実施例4で得られた複合樹脂組成物にリン系難燃剤のDAIGUARD880を40.2g添加して撹拌混合し、難燃剤を配合した複合樹脂組成物のエマルジョンを得た。得られた複合樹脂組成物のエマルジョンについて、燃焼試験、耐水性試験、耐IPA性試験を実施した。その結果を表−2に示す。
【0093】
[実施例10]
実施例5で得られた複合樹脂組成物に実施例8と同様にDAIGUARD880を34.5g添加して撹拌混合し、難燃剤を配合した複合樹脂組成物のエマルジョンを得た。得られた複合樹脂組成物のエマルジョンについて、燃焼試験、耐水性試験、耐IPA性試験を実施した。その結果を表−2に示す。
【0094】
【表2】
【0095】
[比較例1]
温度計、撹拌装置及び還流冷却管を備えた4つ口フラスコに、PTMG1000を61.3g、カルボン酸含有ポリオールとしてDMPAを6.3g、MMA29.3g、BA29.3gを秤量し、窒素及び空気の混合ガス雰囲気下で70℃に加温撹拌して、IPDIを30g添加し、90℃で4時間撹拌してイソシアネート基末端のプレポリマーを得た。
60℃にフラスコ内温度を下げ、TEAを4.8g添加してカルボン酸を中和し、GMAを6.5g添加して均一に混合した。その後、イオン交換水234.4gを約15分かけて加え、転相乳化させ、ウレタンプレポリマーを乳化成分として(メタ)アクリル系モノマーの乳化分散物を得た。
更にウレタンプレポリマーの高分子量化の為、鎖伸長剤として3重量%ヒドラジン(HD)水溶液を22.5g添加した後にフラスコ内温を50℃に昇温して、ラジカル開始剤のt−BHP9.3gを添加して1分間撹拌の後にAsA33g添加して(メタ)アクリル系モノマーを重合させた。重合反応により、内温の上昇がみられた後に内温を70℃に調整し、2時間熟成反応を実施してから冷却し、ウレタン樹脂とアクリル樹脂との複合樹脂組成物のエマルジョンを得た。得られた複合樹脂組成物のエマルジョンについて、燃焼試験、耐水性試験、耐IPA性試験を実施した。その結果を表−3に示す。
【0096】
[比較例2]
比較例1より、PTMG1000の代わりにCD220を22.3g使用し、DMPAを6.9g、MMA10.8g、BA10.8gを秤量し、窒素及び空気の混合ガス雰囲気下で70℃に加温撹拌して、IPDIを25g添加し、90℃で4時間撹拌してイソシアネート基末端のプレポリマーを得た。
フラスコ内温を70℃まで冷却し、リン含有ポリオールとしてOL1001を81.2gとリン含有モノマーとしてMR−260を27.1g加え溶解させ、60℃にフラスコ内温度を下げ、TEAを5.2g添加してカルボン酸を中和し、GMAを5.4g添加して均一に混合する。その後、イオン交換水264.2gを約15分かけて加え、転相乳化させウレタンプレポリマーを乳化成分とした(メタ)アクリル系モノマーとリン含有ポリオールの乳化分散物を得た。
更にウレタンプレポリマーの高分子量化の為、鎖伸長剤として3重量%ヒドラジン水溶液(HD)を51g添加した後にフラスコ内温を50℃に昇温して、表−3に記載の触媒を用いアクリル重合を行い、リン含有ポリオールを混和したウレタン樹脂とアクリル樹脂との複合樹脂組成物のエマルジョンを得た。得られた複合樹脂組成物のエマルジョンについて、燃焼試験、耐水性試験、耐IPA性試験を実施した。その結果を表−3に示す。
【0097】
[比較例3]
比較例2より、表−3に示した各原料量にて比較例2と同様の合成方法によりリン含有ポリオールを混和したウレタン樹脂とアクリル樹脂との複合樹脂組成物のエマルジョンを得た。得られた複合樹脂組成物のエマルジョンについて、燃焼試験、耐水性試験、耐IPA性試験を実施した。その結果を表−3に示す。
【0098】
[比較例4]
温度計、撹拌装置及び還流冷却管を備えた4つ口フラスコに、リン含有ポリオールとしてOL1001を103.3g、PTMG1000を10.2g、DMPAを9.5g、溶媒としてCHNを72g秤量し、窒素ガス雰囲気下にて70℃に加温撹拌して、OL1001を溶解した。その後、IPDIを45g添加し、90℃で5時間撹拌してイソシアネート基末端のプレポリマーを得た。60℃にフラスコ内温度を下げ、トリエチルアミンを7.2g添加してカルボン酸を中和し、イオン交換水273.9gを約15分かけて加え、ウレタンプレポリマーを転相乳化させた乳化分散物を得た。更にウレタンプレポリマーの高分子量化の為、鎖伸長剤として3重量%ヒドラジン水溶液(HD)を33.8g添加し、リン含有ウレタン樹脂を得た。得られたリン含有ウレタン樹脂について、燃焼試験、耐水性試験、耐IPA性試験を実施した。その結果を表−3に示す。
【0099】
[比較例5]
温度計、撹拌装置及び還流冷却管を備えた4つ口フラスコに、イオン交換水207.5gと、乳化剤としてSR−10を3g、MMAを45g、BAを45g、GMAを10g加えて撹拌混合により乳化する。撹拌を続けながらフラスコ内温度を50℃に調整し、ラジカル開始剤のt−BHP7.1gを添加して1分間撹拌の後にAsA24.8gを添加して(メタ)アクリル系モノマーを重合させた。重合反応により、内温の上昇がみられた後に内温を70℃に調整し、2時間熟成反応を実施してから冷却し、アクリル樹脂エマルジョンを得た。得られたアクリル樹脂エマルジョンのエマルジョンについて、燃焼試験、耐水性試験、耐IPA性試験を実施した。その結果を表−3に示す。
【0100】
【表3】
【0101】
[結果の評価]
表−1及び表−2からわかるように、本発明の複合樹脂組成物に該当する実施例1〜10は難燃性、耐水性、耐IPA性に優れたものであった。一方、表−3からわかるように、リン酸エステル構造含有せず、本発明における成分(A)を含有しない比較例1〜3及び5は難燃性、耐水性、耐IPA性のいずれかが悪かった。また、本発明における成分(B)を含有しない比較例4は耐IPA性が悪かった。