は互いに異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜12の炭化水素基又はハロゲン元素から選ばれる基であり、R9は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、フェニル基又はフェノキシ基であり、Xはそれぞれ独立して直接結合、炭素数1〜13の2価の炭化水素基、−O−、−S−、−SO
前記多官能イソシアネートが、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4−ジイソシアネート及びイソホロンジイソシアネートからなる群のうちの少なくとも1つである、請求項1〜4のいずれか1項に記載のウレタン樹脂。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らの詳細な検討によれば、上記特許文献1、2において開示されている技術には次のような問題点があるものと考えられる。即ち、特許文献1に記載されているウレタン樹脂においては、実施例においてコーティング剤を調整し、得られたコーティング剤について難燃性を評価している。そして、このコーティング剤を調整する際、補強剤としてエポキシシランを使用することにより難燃性を得ているものと考えられる。しかしながら、特許文献1に記載のウレタン樹脂そのものは、十分な難燃性を有さないおそれがある。
【0007】
また、特許文献2に記載されているウレタン樹脂は、ポリエステルジオールを用いるため、ポリエステル系ウレタン樹脂となる。これはポリエステル構造を有するため、加水分解性という問題点を有することとなる。また、この特許文献2に記載のウレタン樹脂を実施例において難燃性評価を行う際、難燃剤であるポリリン酸アンモニウムを加えており、ウレタン樹脂そのものの難燃性は十分でないおそれがある。
【0008】
そこで、この発明は、加水分解性を有さず、かつ、ウレタン樹脂単独であっても十分難燃性を示すウレタン樹脂を得ることを目的とする。また、この発明は、このウレタン樹脂を用いて得られる水性ウレタン樹脂エマルジョンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは前記課題に鑑み鋭意検討を重ねたところ、ジオール成分として、エステル基を有さず、芳香族基を有する特定のリン含有ジオールを用いることにより、十分な難燃性を有するウレタン樹脂が得られることを見いだし、本発明を完成させた。すなわち、本発明の要旨は下記[1]〜[8]に存する。
【0010】
[1]少なくとも下記式(1)で表されるジオールに由来する構造単位と多官能イソシアネートに由来する構造単位とを有するウレタン樹脂。
【化1】
(上記式(1)中、R
1〜R
8は互いに異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜12の炭化水素基又はハロゲン元素から選ばれる基であり、R
9は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、フェニル基又はフェノキシ基であり、Xはそれぞれ独立して直接結合、炭素数1〜13の2価の炭化水素基、−O−、−S−、−SO
2−及び−CO−から選ばれる基であり、nは1〜20の数である。)
[2]重量平均分子量(Mw)が6,000〜200,000である、[1]に記載のウレタン樹脂。
[3]全ジオールに由来する構造単位に対し、前記式(1)で表されるジオールに由来する構造単位を、30.0重量%以上有する、[1]又は[2]に記載のウレタン樹脂。
[4]前記式(1)中、R
1〜R
8は互いに異なっていてもよく、水素原子、メチル基又はハロゲン元素から選ばれる基であり、R
9は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基又はフェノキシ基である、[1]〜[3]のいずれか1項に記載のウレタン樹脂。
[5]前記多官能イソシアネートが、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4−ジイソシアネート及びイソホロンジイソシアネートからなる群のうちの少なくとも1つである、[1]〜[4]のいずれか1項に記載のウレタン樹脂。
[6]更に下記式(2)で表されるカルボキシル基を有するジオールに由来する構造単位を有する、[1]〜[5]のいずれか1項に記載のウレタン樹脂。
【化2】
(式(2)中、R
11は炭素数1〜4のアルキル基である。)
[7]リン原子の含有量が2.5〜6.5重量%である、[1]〜[6]のいずれか1項に記載のウレタン樹脂。
[8][1]〜[7]のいずれか1項に記載のポリウレタンを水に分散してなる水性ウレタン樹脂エマルジョン。
【発明の効果】
【0011】
この発明のウレタン樹脂は、難燃性に優れる。また、このウレタン樹脂は水性ウレタン樹脂エマルジョンとして用いることができ、特にコーティング剤、繊維加工剤、高分子難燃剤として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
この発明にかかるウレタン樹脂は、特定のジオールに由来する構造単位と多官能イソシアネートに由来する構造単位とを有する樹脂である。この特定のジオールは、下記式(1)に示す芳香族基を有するリン系ジオールである。
【0014】
なお、上記式 (1)中、R
1〜R
8は互いに異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜12の炭化水素基又はハロゲン元素から選ばれる基であり、R
9は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、フェニル基又はフェノキシ基であり、Xはそれぞれ独立して直接結合、炭素数1〜13の2価の炭化水素基、−O−、−S−、−SO
2−及び−CO−から選ばれる基であり、nは1〜20の数である。
【0015】
本願発明にかかるウレタン樹脂は、多官能イソシアネート(a)とジオール(b)とを反応させて得られる重合体である。前記多官能イソシアネート(a)としては、各種の脂肪族、脂環式、芳香族等の有機系のジイソシアネートがあげられる。このジイソシアネート化合物の具体例としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,3−シクロヘキシレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート等を挙げることができ、これらの中でも、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4−ジイソシアネート及びイソホロンジイソシアネートからなる群のうちの少なくとも1つが、熱および光に対して黄変性が少ない点で特に好ましい。
【0016】
前記ジオール(b)は、少なくとも2つの水酸基を有する化合物であり、リン酸エステル構造を有するジオール(b−1)、カルボキシル基を有するジオール(b−2)、ポリカーボネート基を有するジオール、その他のジオール等があげられる。この中でも、リン酸エステル構造を有するジオール(b−1)を用いることが必要であり、さらに、カルボキシル基を有するジオール(b−2)を併用することがより好ましい。
【0017】
前記リン酸エステル構造を有するジオール(b−1)とは、リン酸エステル基を有するジオールであり、上記した式(1)で表される化合物を用いる。このジオールは、複数の芳香族基とリンを有するので、より高い難燃性を得ることができる。
【0018】
前記式(1)で表される化合物のうち、R
1〜R
8は互いに異なっていてもよく、水素原子、メチル基又はハロゲン元素から選ばれる基であり、R
9は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基又はフェノキシ基である化合物は、難燃性と耐水性の点でより好ましく、そのような化合物の具体的な例として、下記式(3)で示される化合物があげられる。この式(3)で示される化合物のうち、製品として入手可能なものの例としてはFRX Polymers社製:OL1001(商品名)、OL3001(商品名)等が挙げられる。
【化4】
【0019】
リン酸エステル構造を有するジオール(b−1)としては、前記の式(1)で示される化合物以外に、ジエチル−N,N−ビス(2ヒドロキシエチル)メチルフォスフォネート、n−ブチルービス(3−ヒドロキシプロビル)オスフォノキシド等を併用することができる。
【0020】
前記カルボキシル基を有するジオール(b−2)は、カルボキシル基を有し、かつ水酸基を2個有する化合物であれば特に制限されないが、下記式(2)で表される化合物が好ましい。
【0022】
なお、式(2)中、R
14は炭素数1〜4のアルキル基である。
【0023】
このような化合物の例としては、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロールヘキサン酸等のジメチロールアルカン酸等があげられる。
【0024】
前記その他のジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラメチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、メチルペンタンジオールアジペート、ポリエステルジオール、ポリエーテルジオール、カーボネート基含有ジオール等があげられる。
【0025】
前記ウレタン樹脂は、前記リン酸エステル構造を有するジオール(b−1)、及び必要に応じてカルボキシル基を有するジオール(b−2)を含有するジオール(b)と、多官能イソシアネート(a−1)とを反応させることによって製造することができる。
【0026】
前記ウレタン樹脂の全ジオールに由来する構造単位の含有割合は、50.0重量%以上が良く、65.0重量%以上が好ましい。上記下限値以上であると、多官能イソシアネート比率が高くなり過ぎず、ウレア結合の生成比率が低くなり柔軟性が向上する傾向にあるために好ましい。一方、含有割合の上限は、90.0重量%が良く、80.0重量%が好ましい。上記上限値以下であると、ウレタン合成時に高粘度となり過ぎず、取扱い作業の観点から好ましい。
【0027】
また、前記ウレタン樹脂の全ジオール(b)に由来する構造単位に対する、前記リン酸エステル構造を有するジオール(b−1)に由来する構造単位の含有割合は、30.0重量%以上が良く、55.0重量%以上が好ましい。上記下限値以上であることが、難燃性の観点から好ましい。一方、含有割合の上限は100重量%、すなわち、リン酸エステル構造を有するジオール単独でもよい。
【0028】
前記カルボキシル基を有するジオール(b−2)を使用する場合、前記ウレタン樹脂の全ジオール(b)に由来する構造単位に対する、前記カルボキシル基を有するジオール(b−2)に由来する構造単位の含有割合は、4.5重量%以上が良く、5.0重量%以上が好ましい。上記下限値以上であると、ウレタン樹脂を水系エマルジョン化する際に分散状態が良好となり易く、安定な水分散体が得られ易いために好ましい。一方、含有割合の上限は、13.0重量%が良く、10.0重量%が好ましい。上記上限値以下であると、塗膜の耐水性が良好となり易いために好ましい。
【0029】
前記多官能イソシアネート(a)とジオール(b)との混合比は、重量比で(a)/(b)=1.1/1〜2.5/1とすることが好ましく、1.2/1〜2/1とすることがより好ましい。両者の比を上記範囲内とすることで、反応中の粘度上昇が少なくなって反応を安定に行うことができ、かつ未反応イソシアネートの残留量を抑えることが可能となり、反応生成物の経時安定性が良好となる。
【0030】
この発明にかかるウレタン樹脂におけるリン原子の含有量は、ウレタン樹脂全体に対し、2.5重量%以上が良く、3.0重量%以上が好ましい。上記下限値以上であると、難燃性の観点から好ましい。一方、含有量の上限は、6.5重量%が良く、6.0重量%が好ましい。上記上限値以下であると、ウレタン化反応を行う上で、反応時の粘度が高くなり過ぎず、反応を均一に行い易くなるために好ましい。
【0031】
前記ジオール(b)としてカルボキシル基を有するジオール(b−2)を用いる場合、塩基性化合物により中和すると、得られるウレタン樹脂を水系エマルジョン化する場合、得られる水分散液がより安定化するので好ましい。
【0032】
前記塩基性化合物は、カルボキシル基を中和できるものであれば特に限定されるものではなく、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミン等の3級アミン類等があげられる。
【0033】
また、得られるウレタン樹脂は、中和工程の前又は後において、水中に分散させて、水性ウレタン樹脂エマルジョンとすることが好ましい。これにより、比較的高分子量のウレタン樹脂を低粘度の液体にして塗工することができ、コーティング剤として加工し易くすることができる。
【0034】
前記水性エマルジョンを得るために使用される水の量は、特に限定されないが、前記ウレタン樹脂に対して、0.5〜9重量倍量が好ましく、1〜4重量倍量がより好ましい。上記上限値以下であると、樹脂の含有割合が低下せず、厚めの塗膜を得易くなる傾向がある。一方、上記下限値以上であると、水分散時の粘度が高くなり過ぎず、取り扱い性が良好となる傾向にある。
【0035】
前記の水を加えて水性エマルジョンを得る工程において、必要に応じて、乳化剤が用いられる。この乳化剤としては、例えば、アニオン性、カチオン性、両イオン性等のイオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤等があげられる。
【0036】
この発明にかかるウレタン樹脂の重量平均分子量(Mw)は、6,000以上が良く、8,000以上が好ましい。上記下限値以上であると、ウレタン樹脂の強靭性の観点で好ましい。一方、Mwの上限は、200,000が良く、190,000が好ましい。上記上限値以下であると、溶液の粘度が高くなり過ぎず、そのままでの取り扱い性が良好となる傾向にあり、また、水性エマルジョン化する時に分散しやすくなるために好ましい。
【0037】
このようにして得られたウレタン樹脂の水性分散液は、コーティング剤として使用することができ、難燃性の塗膜を形成することができる。
【0038】
[ウレタン樹脂およびそのエマルジョンの製造方法]
次に、この発明にかかるウレタン樹脂の製造方法について説明する。
まず、前記した上記式(1)に示す芳香族基を有するリン系ジオールを含むジオールを溶剤に溶解し、これに前記多官能イソシアネートを加えてウレタン化反応を行う。この際、多官能イソシアネートの含有比率をジオールより高めることにより、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを得ることができるので好ましい。
【0039】
この場合の、含有比率は、(ジオールの水酸基当量)/(多官能イソシアネートのイソシアネート基当量)で、1/1.1〜1/2.5が良く、1/1.2〜1/2が好ましい。この範囲内であると、比較的高分子量のウレタンプレポリマーが形成でき、イソシアネート基末端を後で鎖伸長させることにより高分子量体のウレタンを得る事ができるという観点から好ましい。
【0040】
次いで、得られたイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを必要に応じて中和し、そのまま溶剤溶液下の状態で、もしくは、イオン交換水を加えて転相乳化した後、イソホロンジアミンやヒドラジン等の鎖伸長剤を用いて、鎖伸長反応を行うことにより、ウレタン樹脂の溶剤溶液又は水分散液を得ることができる。
【0041】
前記の中和は、水分散液を得る場合において、得られる水分散液をより安定化させることができる。この中和で使用する塩基化合物は、カルボキシル基を中和できるものであれば特に限定されるものではなく、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミン等の3級アミン類等があげられる。
【0042】
前記水分散液を得るために使用される水の量は、特に限定されないが、前記中和液に対して、0.5〜9重量倍量が好ましく、1〜4重量倍量がより好ましい。上記上限値以下であると、樹脂の含有割合が確保され、厚めの塗膜を得易くなる傾向がある。一方、上記下限値以上であると、水分散時の粘度が高くなり過ぎず、取り扱い性が良好となるために好ましい。
【0043】
前記の水を加えて水性分散液を得る工程において、必要に応じて、乳化剤が用いられる。この乳化剤としては、例えば、アニオン性、カチオン性、両イオン性等のイオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤等があげられる。
【実施例】
【0044】
以下、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例により限定されるものではない。まず、評価方法及び使用した原材料について説明する。
【0045】
(評価方法)
[燃焼試験]
UL94垂直燃焼試験に準じて実施した。試験片の作成は、ガラスクロスに各種樹脂を30重量%になるように含浸させ、室温にて一晩乾燥させた。その後、長さ125mm、幅13mmの短冊状に切断し、8枚を重ね合わせ、120℃の乾燥機内で0.23kg/cm
2の荷重をかけて6時間積層を行い、試験片を作成した。
得られた試験片の複数を用い、燃焼時間を測定し、最長値、最短値を見いだすと共に、平均値を算出した。さらに、以下の基準で評価した。
◎…最長燃焼時間が10秒以下(V−0に相当)。
○…最長燃焼時間が10秒を越え、30秒以下(V−1に相当)。
△…最長燃焼時間が30秒を越え、60秒以下。
×…最長燃焼時間が60秒を越える。
【0046】
(原材料)
[ジオール(b)]
[リン酸エステル構造を有するジオール(b−1)]
・nofia(登録商標) OL1001(商品名)…FRX Polymers社製前記式(1)に該当する化合物(R
1〜R
8が水素原子であり、R
9がメチル基であり、Xが−C(CH
3)
2−であるもの。)、重量平均分子量(Mw):2,000〜3,000(カタログ値)、固形分100重量%、リン含有率9.1重量%、水酸基価88mgKOH/g、以下「OL1001」と称する。
・ジアルキル−N,N−ビス(2−ハイドロキシエチル)アミノメタンホスホネート(リン酸エステル構造を有するジオールであるが、前記式(1)に該当しないもの。)…ADEKA製:アデカポリオールFC450(商品名))、以下「FC450」と称する。
[カルボキシル基を有するジオール(b−2)]
・ジメチロールプロピオン酸…Perstorp Specialty Chemicals AB社製、以下「DPMA」と称する。
【0047】
[その他のジオール]
・ポリテトラメチレングリコール…三菱化学(株)製:PTMG1000、水酸基価111.1mgKOH/g、以下「PTMG1000」と称する。
・ネオペンチルグリコール…三菱ガス化学(株)社製、以下「NPG」と称する。
・ポリカーボネートジオール…ダイセル化学工業(株)製:プラクセルCD220、水酸基価56.7mgKOH/g、以下「CD220」と称する。
【0048】
[多官能イソシアネート(a)]
・イソホロンジイソシアネート…エボニック デグサ社製:VESTANAT IPDI(商品名)、以下「IPDI」と称する。
・ヘキサメチレンジイソシアネート…昭和化学(株)製:試薬、以下「HDI」と称する。
・ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート…住化バイエルウレタン社製:商品名:ディスモジュールW、以下「H12MDI」と称する。
【0049】
[中和剤]
・トリエチルアミン…和光純薬工業(株)製:試薬、以下「TEA」と称する。
[鎖伸長剤]
・イソホロンジアミン…東京化成工業(株)製:試薬、以下「IPDA」と称する。
・3重量%ヒドラジン水溶液…エムジーシー大塚ケミカル(株)製:水加ヒドラジン80%(商品名)をヒドラジン含有量が3重量%となるようにイオン交換水で調整したもの、以下「HD」と称する。
[末端停止剤]
・モノエタノールアミン…(株)日本触媒製、以下「MEA」と称する。
【0050】
[溶媒]
・シクロヘキサノン…宇部興産(株)製、以下「CHN」と称する。
・メチルエチルケトン…丸善石油化学(株)製、以下「MEK」と称する。
・イソプロピルアルコール…(株)トクヤマ製:商品名:トクソーIPA、以下「IPA」と称する。
【0051】
[実施例1]
温度計、撹拌装置及び還流冷却管を備えた4つ口フラスコに、リン含有ポリオールとしてOL1001を97.5g、PTMG1000を13.6g、溶剤としてCHNを35.3g秤量し、窒素ガス雰囲気下で70℃に加温撹拌して、OL1001を溶解した。その後、多官能イソシアネートとしてIPDIを30g添加し、90℃で6時間撹拌してイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを得た。70℃にフラスコ内温度を下げ、MEKを105.9g添加し、IPDAを6.9g添加の上、よく撹拌して鎖伸長を実施した。その後、IPAを70.6g添加希釈して均一にした後にMEAを0.2g添加して末端停止反応を行い、ウレタン樹脂を得た。得られたポリウレタンについて、燃焼試験を実施した。その結果を表−1に示す。
【0052】
[実施例2]
実施例1より、リン含有ポリオールのOL1001量を57.4gに減量し、PTMG1000を45.4gに増量して、ウレタン樹脂のリン含有量を変更し、表−1に示すように原料の使用量を変更した以外は実施例1と同様の合成方法により、ウレタン樹脂を得た。得られたウレタン樹脂について、燃焼試験を実施した。その結果を表−1に示す。
【0053】
[実施例3]
温度計、撹拌装置及び還流冷却管を備えた4つ口フラスコに、リン含有ポリオールとしてOL1001を68.8g、カルボキシル基を有するポリオールとしてDMPAを6.3g、PTMG1000を6.8g、溶剤としてCHNを48g秤量し、窒素ガス雰囲気下で70℃に加温撹拌して、OL1001を溶解した。その後、多官能イソシアネートとして、IPDIを30g添加し、90℃で5時間撹拌してイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを得た。60℃にフラスコ内温度を下げ、TEAを4.8g添加してカルボン酸を中和し、イオン交換水182gを約15分かけて加え、転相乳化させてウレタンプレポリマーの乳化分散物を得た。更にウレタンプレポリマーの高分子量化の為、鎖伸長剤としてHD22.5g添加し、1時間以上攪拌混合してリン酸エステル基含有の水性ウレタン樹脂エマルジョンを得た。得られた水性ウレタン樹脂エマルジョンについて、燃焼試験を実施した。その結果を表−1に示す。
【0054】
[実施例4]
実施例3より、カルボキシル基を有するポリオールのDMPAを4.5gに減量し、減量分のポリオール成分をNPGに置換えて、他は表2に示した各原料量にて実施例3と同様の合成方法により水性ウレタン樹脂エマルジョンを得た。得られた水性ウレタン樹脂エマルジョンについて、燃焼試験を実施した。その結果を表−1に示す。
【0055】
[実施例5]
実施例3より、リン含有ポリオールのOL1001量を38.7gに減量し、PTMG1000を30.7gに増量して、ウレタン樹脂のリン含有量を変更し、表−2に示すように原料の使用量を変更した以外は実施例3と同様の合成方法により水性ウレタン樹脂エマルジョンを得た。得られた水性ウレタン樹脂エマルジョンについて、燃焼試験を実施した。その結果を表−1に示す。
【0056】
[実施例6]
実施例3より、PTMG1000に替えてポリカーボネートポリオールCD220を6.7g使用した以外は表−2に示した各原料量にて実施例3と同様の合成方法により水性ウレタン樹脂エマルジョンを得た。得られた水性ウレタン樹脂エマルジョンについて、燃焼試験を実施した。その結果を表−2に示す。
【0057】
[実施例7]
実施例6より、リン含有ポリオールのOL1001量を47.3gに減量し、ポリカーボネートポリオールCD220の量を45.4gに増量して、ウレタン樹脂のリン含有量を変更し、表−2に示すように原料の使用量を変更した以外は実施例3と同様の合成方法により水性ウレタン樹脂エマルジョンを得た。得られた水性ウレタン樹脂エマルジョンについて、燃焼試験を実施した。その結果を表−1に示す。
【0058】
[実施例8]
実施例3より、多官能イソシアネートとして、HDIを併用し、表−2に示すように原料の使用量を変更した以外は実施例3と同様の合成方法により水性ウレタン樹脂エマルジョンを得た。得られた水性ウレタン樹脂エマルジョンについて、燃焼試験を実施した。その結果を表−1に示す。
【0059】
[実施例9]
実施例3より、多官能イソシアネートとして、H12MDIを30g使用し、表−2に示すように原料の使用量を変更した以外は実施例3と同様の合成方法により水性ウレタン樹脂エマルジョンを得た。得られた水性ウレタン樹脂エマルジョンについて、燃焼試験を実施した。その結果を表−1に示す。
【0060】
[比較例1]
温度計、撹拌装置及び還流冷却管を備えた4つ口フラスコに、PTMG1000を61.3g、カルボキシル基を有するポリオールとしてDMPAを6.3g、溶剤としてCHNを41.9gを秤量し、窒素ガス雰囲気下で70℃に加温撹拌して、IPDIを30g添加し、90℃で4時間撹拌してイソシアネート基末端プレポリマーを得た。60℃にフラスコ内温度を下げ、TEAを4.8g添加してカルボン酸を中和し、イオン交換水260gを約15分かけて加え、転相乳化させ、ウレタンプレポリマーの乳化分散物を得た。更にウレタンプレポリマーの高分子量化の為、鎖伸長剤としてHD水溶液を22.5g添加して水性ウレタン樹脂エマルジョンを得た。得られた水性ウレタン樹脂について、燃焼試験を実施した。その結果を表−1に示す。
【0061】
[比較例2]
比較例1より、PTMG1000の一部をFC450に替え、表−2に示すように原料の使用量を変更した以外は比較例1と同様の合成方法により水性ウレタン樹脂エマルジョンを得た。得られた水性ウレタン樹脂について、燃焼試験を実施した。その結果を表−1に示す。
【0062】
【表1】
【0063】
[結果の評価]
表−1から明らかなように本発明のウレタン樹脂に該当する実施例1〜9はいずれも、本発明のウレタン樹脂に該当しない比較例1(リン含有ジオールを含有しないジオールのみを用いて得られたウレタン樹脂)及び比較例2(FC450(リン酸エステル構造を有するが、式(1)で表されるジオールに該当しないもの)を使用して得られたウレタン樹脂)に対して難燃性に優れたものであることがわかる。