以下で、紙中灰分(525℃燃焼法)が10質量%以上の、顔料塗工層を設けていない新聞用紙であって、抄紙時に添加された軽質炭酸カルシウムを含み、525℃燃焼法と900℃燃焼法とで測定した灰分差が2.0質量%以上、比散乱係数が50m
ティシューソフトネス測定装置TSAにより、試料台に設置した前記新聞用紙のサンプルに対し、ブレード付きロータを100mNの押し込み圧力として上から押し込んだ後に回転数2.0(/sec)で回転させ、前記試料台の振動を振動センサで測定したとき、
TSA上のソフトウェアにて自動的に取得した、低周波数側からの最初のスペクトルの極大ピークの強度(TS750)が70dBV2rms以下であり、6500Hzを含むスペクトルの極大ピークの強度(TS7)が130dBV2rms以下であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の新聞用紙。
マクベス反射濃度計により測定した印刷面の印面濃度が1.15となるように印刷を施し、23℃、50RH%の環境下で24時間調湿した後に、マクベス反射濃度計により印刷面裏面の反射率を測定したとき、次式:
裏抜け値(%)=(印刷裏面の反射率/未印刷の裏面の反射率)×100
で算出される裏抜け値が85%以上のであることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の新聞用紙。
【背景技術】
【0002】
近年のオフセット印刷用紙、特にオフセット印刷用新聞用紙は、カラー印刷化、高速化、タワー化が急速に進んでおり、それに伴い印刷媒体である新聞用紙に対しても、より優れたカラー印刷品質や印刷作業性が求められている。また、大量印刷を短時間で行うため紙粉堆積による印刷面カスレなどの問題も重要視される。また、近年、新聞用紙では、環境保護、増頁あるいは持運び等の観点から、軽量化の要請が強まっている。しかしながら、軽量化のために、用紙の単位面積当たりの質量(坪量)を軽くすると、紙が薄くなり、用紙の不透明度や紙力低下が生じ得る。その結果、印刷前面の画像や文字が裏面に透き通って見える「裏抜け」や、印刷画像の鮮明性の低下等の印刷品質悪化が生じ得る。
【0003】
一方で、紙を広げた状態で記事を読み、ページをめくる新聞用紙では、ページをめくる際のしなやかさやめくりやすさが求められる。剛度が高く張りのある新聞用紙は、印刷後の折加工などの加工適性は良好であるものの、新聞を読む際にはごわつくので、ページをめくりにくい。そのため、印刷時の作業性を損なわない程度の紙のこわさを持ちつつ、しなやかでめくりやすい新聞用紙の開発も求められている。
【0004】
新聞用紙の裏抜けを少なくする方法としては、例えば、紙の不透明度、比散乱係数、および吸油度を上げることが効果的であることが知られている。
【0005】
不透明度を上げる技術としては、古紙パルプの配合率が60質量%以上で、フレッシュな炭酸カルシウムを含む一種以上の填料が3〜25質量%添加され、かつ、両面で1.5〜4.0g/m
2の顔料塗工層が設けられ、原紙及び顔料塗工層由来の灰分が7〜25重量%である新聞用紙に関するものや(特許文献1)、多価アルコールと、脂肪酸のエステル化合物(A)及び多価アルコールと脂肪酸のエステル化合物であって当該エステル化合物1モル当たり平均で0モル超12モル未満の炭素数2〜4のオキシアルキレン基を有するエステル化合物(B)から選ばれる融点が100℃以下のエステル化合物といった嵩高剤とを添加することにより、紙を嵩高化し、高不透明度な新聞用紙を提供する方法(特許文献2)などが提案されている。
【0006】
比散乱係数を上げる技術としては、酸化チタン填料や尿素−ホルマリン樹脂填料を内添する方法(非特許文献1)などが提案されている。
【0007】
吸油度を向上させて裏抜けを防止する技術としては、例えば、パルプと炭酸カルシウムとを含む紙料に水和ケイ酸スラリーを添加して抄造し、水和ケイ酸の吸油量、細孔容積、平均粒子径等を特定範囲内に設定した填料内添紙(特許文献3)や、ホワイトカーボン及び炭酸カルシウムを主体とし、灰分中のこれらの割合を特定範囲内に設定した新聞用紙(特許文献4)などが提案されている。
【発明を実施するための形態】
【0015】
上記のように、本発明では、古紙パルプを含有し、坪量が45g/m
2以下で、JIS―P8251に記載の525℃燃焼法で測定した紙中灰分が10質量%以上の、顔料塗工層を設けていない新聞用紙であって、抄紙時に添加された軽質炭酸カルシウムを含み、JIS―P8251に記載の525℃燃焼法で測定した紙中灰分とJIS−P8252に記載の900℃燃焼法で測定した紙中灰分との差が2.0質量%以上で、且つ比散乱係数が50m
2/kg以上の新聞用紙とすることで、古紙パルプを含有し、低坪量、高灰分でありながらも、適度な紙のこわさを持ち、裏抜けしにくく、めくりやすい新聞用紙を得ることができる。
【0016】
<新聞用紙>
1)パルプ
本発明の新聞用紙における原料パルプとしては、環境面への配慮から古紙パルプを含有し、古紙パルプの他に、針葉樹(N材)または広葉樹(L材)などの木材や、竹、藁、麻などの非木材繊維から得られる化学パルプ(KP、SP等)、機械パルプ(GP、CGP、RGP、PGW、TMP、CTMP等)、溶解パルプ等を任意の割合で混合して使用することができる。古紙パルプとしては、脱墨古紙パルプ(DIP)、脱墨しない古紙パルプを使用することができるが、白色性の観点からDIPを高配合することが望ましく、全パルプ絶乾質量あたりDIPを50質量%以上、好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上含有することが好ましい。また、機械パルプやDIPは、必要に応じて漂白して使用することもでき、漂白の程度も任意に行うことができる。また、十分な強度をもつ新聞用紙を製造するために、機械パルプを含有することが好ましく、パルプ製造時における繊維のダメージが少ないサーモメカニカルパルプ(TMP)又はリファイナーグラウンドパルプ(RGP)がさらに好ましい。機械パルプは任意の割合で混合して使用することができるが、紙の強度としなやかさを両立するためにも、5質量%以上、30質量%以下が好ましい。
【0017】
2)填料
本発明において添加される填料(内添填料)の種類としては、比散乱係数を高くし、さらに吸油性が高く裏抜けなど印刷品質の向上に効果的なことから、軽質炭酸カルシウムが好適であり、特に、これまでに紙中に配合されたことのない「フレッシュな」軽質炭酸カルシウムが好適である。フレッシュな軽質炭酸カルシウムは、再生填料などに比べて制御された形状を有しているため、吸油性や光散乱性に優れるとともに、しなやかさの発現に寄与すると考えられる。填料は、軽質炭酸カルシウム単独でもよいし、また、軽質炭酸カルシウムに他の填料を1又は複数組み合わせて使用しても良い。軽質炭酸カルシウム以外の填料としては、重質炭酸カルシウム、水和珪酸、ホワイトカーボン、タルク、カオリン、クレー、酸化チタン、合成樹脂填料等の公知の製紙用填料を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0018】
本発明では、「JIS−P8251 紙、板紙及びパルプ− 灰分試験方法 −525℃燃焼法」に記載の方法で測定される紙中灰分が、裏抜け防止の観点から、10質量%以上であることが好ましい。さらに好ましくは11.5質量%以上である。紙中灰分の量の上限は特に限定されないが、製造時の操業性、印刷時の加工適性を考慮すれば、通常、40質量%以下程度であり、好ましくは30質量%以下である。
【0019】
本発明においては、紙の不透明度や白色度を比較的低コストで向上させることができるため、軽質炭酸カルシウムを内添填料として添加することが好ましい。また、しなやかな新聞用紙を得るためにも、軽質炭酸カルシウム添加率は高いことが望ましく、全パルプ絶乾質量当たり4質量%以上が好ましく、5質量%以上であることがさらに好ましい。上限は特に限定されないが、前記紙中灰分の上限と、古紙パルプからの持ち込み灰分を考慮すれば、通常35質量%以下程度であろう。
【0020】
本発明では、「JIS−P8251 紙、板紙及びパルプ− 灰分試験方法 −525℃燃焼法」に記載の方法で測定された灰分と、「JIS−P8252 紙、板紙及びパルプ− 灰分試験方法 −900℃燃焼法」に記載の方法で測定された灰分との差が2.0質量%以上であることが好ましい。新聞用紙では、古紙由来の持ち込み灰分が一定量存在するなど、多様な無機成分(填料や顔料)が存在するため、紙中の特定の無機成分の含有量を簡便にかつ直接的に測定するのは困難である。しかし、炭酸カルシウムについては、一般的に、900℃程度の高温で燃焼させた際に、燃焼によって二酸化炭素と水に分解する灼減という現象が知られており、525℃燃焼法と900℃燃焼法における灰分差を利用して、紙中の炭酸カルシウム含有量を推測することが可能である。即ち、この灰分差が大きいほど、炭酸カルシウムの含有量が多いことが示される。本発明では、新聞用紙の525℃と900℃で燃焼させた際の灰分差を2.0質量%以上とし、紙中の炭酸カルシウム含有量を高めることで、効果的に裏抜けやページのめくりやすさを向上させることができる。灰分差の上限は特に限定されないが、紙中灰分の上限を考慮すれば、通常35質量%以下程度であろう。
【0021】
3)抄紙系
本発明の新聞用紙は、酸性抄造される酸性紙でも、紙面pHが6〜9になるように中性抄造される中性紙でも、どちらでもよく、特に限定されるものではないが、中性抄造の場合には填料として炭酸カルシウムを高配合することが可能であるから、裏抜けやしなやかさ等の品質の面において、中性紙が好ましい。
【0022】
4)内添薬品等
酸性抄造、中性抄造で使用する内添薬品の種類や添加量はそれぞれ異なるが、従来公知の内添サイズ剤である、アルキルケテンダイマー(AKD)系サイズ剤、アルケニル無水コハク酸(ASA)系サイズ剤、中性ロジンサイズ剤等を使用できる。
【0023】
この他、従来から使用されている各種のノニオン性、カチオン性の歩留まり向上剤、濾水度向上剤、紙力向上剤、嵩高剤等の製紙用内添薬品を必要に応じて適宜選択して使用することができる。また、例えば、硫酸バンド、塩化アルミニウム、塩基性塩化アルミニウム、塩基性ポリ水酸化アルミニウム等の塩基性アルミニウム化合物等が内添されてもよい。その他製紙用補助剤として各種澱粉類、ポリアクリルアミド、尿素樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミド、ポリアミン樹脂、ポリアミン、ポリエチレンイミン、ポリアミドエピクロロヒドリン、ポリアミンエピクロロヒドリン、植物ガム、ポリビニルアルコール、ラテックス、ポリエチレンオキサイド、親水性架橋ポリマー粒子分散物及びこれらの誘導体あるいは変成物等の各種化合物を使用できる。更に、染料、蛍光増白剤、pH調整剤、消泡剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤等の抄紙用内添薬品を用途に応じて適宜添加することも可能である。
【0024】
5)表面処理剤
表面強度や印刷適性を高めるために、新聞用紙原紙の上に表面紙力剤や表面サイズ剤等を含有する表面処理剤を塗工し、クリア塗工層を設けることができる。
【0025】
表面紙力剤としては、澱粉、酵素変性澱粉、熱化学変性澱粉、酸化澱粉、エステル化澱粉、エーテル化澱粉、ヒドロキシエチル化澱粉、カチオン化澱粉などに代表される澱粉系、ポリビニルアルコール(PVA)、カルボキシル変性ポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコールなどのポリビニルアルコール系、ポリアクリルアミド、カチオン性ポリアクリルアミド、両性ポリアクリルアミド、ノニオン性ポリアクリルアミドなどのポリアクリルアミド系、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロースなどのセルロース系等の水溶性高分子、スチレン・ブタジエン系、スチレン・アクリル系、エチレン・酢酸ビニル系、ブタジエン・メチルメタクリレート系、酢酸ビニル・ブチルアクリレート系等の各種共重合体(ラテックス)が挙げられる。これらは、単独で、または2種類以上混合して用いられる。
【0026】
表面サイズ剤としては、中性抄造の場合はカチオン性表面サイズ剤が好ましく、例えばスチレン/(メタ)アクリル酸共重合体(なお「(メタ)アクリル酸」は、「アクリル酸及び/またはメタクリル酸」を意味する。)、スチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン/(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン/マレイン酸共重合体、スチレン/マレイン酸半エステル共重合体、スチレン/マレイン酸エステル共重合体、エチレン/(メタ)アクリル酸共重合体、イソブチレン/(メタ)アクリル酸共重合体、n−ブチレン/(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸エステル共重合体、プロピレン/マレイン酸共重合体、エチレン/マレイン酸共重合体、α−オレフィン−マレイン酸系共重合体などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの共重合体は、ナトリウム塩、カリウム塩、あるいはアンモニウム塩として使用してもよい。また、所望の品質を阻害しない範囲で、ノニオン性表面サイズ剤やアルキルケテンダイマー系サイズ剤等も併用することができる。
【0027】
この他、ネッパリ防止剤、湿潤紙力剤、ポリエチレングリコール、防腐剤、消泡剤、紫外線防止剤、蛍光増白剤、染料、退色防止剤、粘度安定剤、防滑剤、滑剤、ポリエチレンワックス、インク定着剤、金属塩などの助剤を適宜使用できる。
【0028】
6)抄紙方法
抄紙機の型式は特に限定は無く、長網抄紙機、ギャップフォーマー、ハイブリッドフォーマー(オントップフォーマー)等の公用の抄紙機で抄紙することができる。プレス線圧は通常の操業範囲内で用いられる。表面処理剤は塗工しても良いし、しなくても良い。表面処理剤によるクリア塗工層を設ける場合、表面処理剤の成分には特に限定は無く、またサイズプレスの型式も限定はなく、2ロールサイズプレスや、ゲートロールサイズプレス、シムサイザーのような液膜転写方式サイズプレスなどを適宜用いることができる。
【0029】
7)紙質、その他
本発明の新聞用紙の坪量は、30g/m
2以上、50g/m
2以下程度となるように製造されるが、本発明の裏抜けの向上、しなやかさなどの効果がより高く発現されるため、好ましくは45g/m
2以下の低坪量な新聞用紙である。より好ましくは、43g/m
2以下である。また、表面処理剤を塗工する場合(クリア塗工層)、塗工量は、特に限定されるものではないが、片面あたり0.1g/m
2以上で、5.0g/m
2以下であることが望ましい。クリア塗工層を乾燥させる方法としては、例えば蒸気加熱シリンダー、加熱熱風エアドライヤー、ガスヒータードライヤー、電気ヒータードライヤーなどの各種方法が単独で、あるいは、併用して用いられる。また、マシンカレンダーまたは、スーパーカレンダー、高温ソフトニップカレンダー等で平滑化処理を行ってもよく、未カレンダー処理でもよい。なお、平滑度が高すぎると十分な紙厚が得られず腰の弱い紙となり、一方、平滑度が低すぎると印刷した際にインキの着肉不良が起こるため、本発明ではJIS−P8119:1998に準じて測定したベック平滑度が30〜70秒、好ましくは35〜60秒になるようにカレンダー処理することが望ましい。新聞用紙の水分は、印刷作業性やインキ着肉性などの点から、1.0%以上、9.0%以下程度である。
【0030】
本発明の新聞用紙は、顔料塗工層を有しない。顔料塗工層とは、原紙の抄造後に原紙の表面上に塗工される顔料とバインダーとを含む層をいう。
【0031】
本発明の新聞用紙の比散乱係数は、50m
2/kg以上である。比散乱係数は、TAPPI T425(ISO 9426)に規定される式に基づいて算出することができる。比散乱係数が高いと、たとえ不透明度が同等であったとしても、より裏抜けの生じにくい紙となる。比散乱係数の上限は、限定されないが、前記紙中灰分の上限の目安である40質量%を考慮すれば、通常、80m
2/kg程度であろう。灰分や、曲げこわさ等の強度とのバランスから、70m
2/kg以下が、より好ましい。比散乱係数は、主に用いる填料の種類や量などにより調整することができる。
【0032】
本発明の新聞用紙の曲げこわさは、70μN・m以下であることが好ましい。曲げこわさは、ISO2493に則り、MD方向(抄紙方向)の曲げこわさとして測定することができる。曲げこわさが適度に低いことにより、しなやかさや柔らかさが向上し、めくりやすい紙となる。曲げこわさの下限値は、限定されないが、印刷機(特に折り機)での加工適正及び作業性を考慮すれば、通常、30μN・m程度であろう。めくりやすさと加工適性を高いレベルで両立するためには、45μN・m以上、65μN・m以下であることが望ましい。
【0033】
また、本発明では、新聞のめくりやすさがティシューソフトネス測定装置TSA(Tissue Softness Analyzer)により測定した値と相関し、この測定値を指標とすることができることを見出した。TSAはティシュペーパー製品や衛生薄用紙ロールの分野において、ハンドフィール(手触り感)の定量評価に用いられており、例えば特開2013−236903号公報、特開2014−233363号公報に記載されているものである。
【0034】
本発明では、印刷後の新聞用紙をサンプルとして、試料台に設置した1枚のサンプルに対し、ブレード付きロータを100mNの押し込み圧力として上から押し込んだ後に回転数2.0(/sec)で回転させ、試料台の振動を振動センサで測定したとき、TSA上のソフトウェアにて自動的に取得した、低周波数側からの最初のスペクトルの極大ピークの強度(TS750)が70dBV
2rms以下であることが好ましく、より好ましくは67dBV
2rms以下、さらに好ましくは65dBV
2rmsである。下限としては、50dBV
2rms以上である。TS750は滑らかさ、粗さを表し、TS750が高すぎると滑らかさに劣り、低すぎると平滑性だけが際立ち、良好な触感が得られない場合がある。
【0035】
また、TSA上のソフトウェアにて自動的に取得した、6500Hzを含むスペクトルの極大ピークの強度(TS7)が130dBV
2rms以下であることが好ましく、より好ましくは125dBV
2rms以下、最も好ましくは120dBV
2rms以下である。下限としては、90dBV
2rms以上である。TS7はふんわり感(表面ソフトネスおよびバルクソフトネス)を示し、TS7が高すぎると十分な柔らかさが得られず、低すぎると柔らかさだけが際立ち、良好な触感を得ることができない場合がある。
【0036】
さらに、本発明では、TSAによる剛性(D)の測定値が0.75〜0.85mm/Nであることが好ましく、より好ましくは0.78〜0.80mm/Nである。この測定値が低すぎると新聞用紙全体のしなやかさに劣り、高すぎるとしなやかさが際立ち、全体のバランスを欠く場合がある。剛性(D)は、試料台に設置したサンプルに対し、ブレード付きロータを回転させずに100mNと600mNの押し込み圧力でそれぞれ上から押し込んだとき、それぞれ押し込み圧力100mNと600mNの間でのサンプルの上下方向の変形変位量で表される。
【0037】
測定方法の詳細は、
図1に示されるように、ティシューソフトネス測定装置TSA110は、紙試料(サンプル)106の上から、回転したブレード付きロータ104を押付けたときの各種センサで検知した振動データを、振動解析してパラメータ化(TS値)することにより、紙のソフトネス(手触り感)を定量評価するものであり、ドイツのエムテック社(Emtec Electronic GmbH、日本代理店は日本ルフト株式会社)製の商品名である。
【0038】
TSAを用いた具体的な測定は、
(i)円形の試料台105を外側から覆うようサンプル106(emtec社のサンプルパンチを使用して直径が約112.8mmの円形に加工したサンプル)を設置し、サンプル106の外周をサンプル固定リング108で保持し、
(ii)ブレード付きロータ104を100mNの押し込み圧力でサンプル106の上から押し込んだ後、ロータ104を回転数2.0(/sec)で回転させ、
(iii)試料台105の振動を、試料台105内部に設置した振動センサ103で測定し、振動周波数を解析する。
【0039】
(iv)次に、押し込み圧力100mNと600mNで、ロータ104を回転させずにそれぞれサンプル106を変形させたときの上下方向の変形変位量(mm/N、剛性D)を計測する。
【0040】
以上の手順により、1サンプルについて5回測定を行い、平均化する。
【0041】
なお、試料台105はベースプレート101上に設置され、試料台105とベースプレート101の間には、力センサ102が配置されている。そして、力センサ102の検出値により、ブレード付きロータ104の押し込み圧力を制御する。また、ブレード付きロータ104はモータ109によって回転する。
【0042】
また、振動解析してパラメータ化(TS値)するソフトウェアは、emtec measurement systemを用いる。本ソフトウェアには、各種アルゴリズム(例えば、Base Tissue、Facial、TP等)が備えられ、TS750、TS7、D(剛性)をソフトウェア上で自動的に取得し、これらTS750、TS7、D、および坪量、厚さ、Ply数等から各種アルゴリズムの種類によって、HF(ハンドフィール)値が計算される。本発明では、HF値ではなく、TS750、TS7、Dのみを規定しており、上記測定条件を満たせば、アルゴリズムは何を使用しても良く、TS750、TS7、Dの値はアルゴリズムの種類によって変わることはない。
【0043】
図2は、TSAによる紙試料サンプルの振動周波数の解析結果の一例を示す。低周波数側からの最初のスペクトルの極大ピークAの強度をTS750とし、6500Hzを含む(6500Hzの前後の)スペクトルの極大ピークBの強度をTS7とする。極大ピークBは、通常、約6500Hzに位置する。
【0044】
図3は、TSAによる紙試料サンプルの剛性Dの測定方法を示す。
【0045】
紙試料サンプルの振動周波数は、紙の構造及びロータ104の回転数に依存し、振幅(スペクトルの強度)は、クレープの高さ等の紙の構造の高さに依存する。TS7が現れる周波数(5000〜8000Hzの範囲、通常は6500Hz近傍)は、ロータ104の共振周波数であり、水平振動となって紙表面を進むときに紙繊維による瞬間的な遮断とロータ104の振動に起因する。
【0046】
本発明の新聞用紙の不透明度は、高いと裏抜けしにくいので好ましく、93%以上が好ましい。不透明度は、JIS―P8149:2000に従って測定することができる。不透明度の上限値は、限定されないが、新聞用紙の低い坪量を考慮すると、96%程度である。また、本発明では、裏抜け値が85%以上であることが好ましい。ここで、裏抜け値は、マクベス反射濃度計により測定した印刷面の印面濃度が1.15となるように印刷し、23℃、50RH%の調湿条件下で24時間放置した後に印刷面の裏面の反射率を測定して、印刷裏面の反射率を未印刷の裏面の反射率で除した値である。この値が大きいほど、裏抜けが少ないことが示される。
【0047】
本発明においては、摩擦係数が高すぎると新聞を読む際に頁同士のくっつきが生じめくりにくく、低すぎても滑りが生じめくりにくい。そこで、JIS−P8147:2010に準じてISO水平法により測定した静摩擦係数が0.62〜0.69であることが好ましく、同じく動摩擦係数が0.59〜0.62であることが好ましく、摩擦係数がこれらの範囲であることにより、めくりやすくて読みやすい新聞を得ることができる。
【0048】
本発明の新聞用紙は、通常、紙管に巻取り新聞巻取紙とされるが、これに限定されるものではない。製造された新聞用紙を巻き取り、新聞巻取紙とする方法は特に限定されるものではなく、本発明の新聞用紙を、ワインダー(巻取機)で巻き取って行うことができる。巻取速度やテンション(引張強さ)は、求められる新聞用紙の特性に合わせて適宜調整すればよい。
【0049】
また、本発明の新聞用紙を新聞巻取紙とする際に巻取る紙管は、特に限定するものではないが、シワ発生を抑制したしなやかな新聞巻取紙とすることができるため、段ボール古紙を主体とした紙管原紙とライナーとが巻きつけてなり、最外層はライナーを1回以上巻きつけ、それ以外の層が紙管原紙を19回以上巻きつけてなる紙管原紙を使用してもよい。好ましくは、紙管原紙およびライナーを合わせた巻き回数が24回以上である。平滑性の高いライナーを外側に巻くことで、紙管表面を滑らかにし、紙管の表面の形状に沿ってできる新聞用紙のシワ、ボコツキなどを防ぐことができる。また、得られた紙管は、シーズニングを常温(室温)にて5日間以上行い、紙管の水分を6.5〜9.0%に調整する。この方法で調整すると、紙管の内側と外側の水分差がすくなくなるため、紙管の変形や寸法変化に伴う新聞巻取紙や印刷時のシワの発生を抑制することができるため好ましい。
【実施例】
【0050】
以下、本発明について実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、例中の部、および%は、特に断らない限り、それぞれ質量部および質量%を示し、数値範囲はその端点を含むものとして記載される。
【0051】
(1)坪量の測定
JIS―P8124に記載の「坪量測定方法」に準拠して測定した。
【0052】
(2)紙厚の測定
JIS―P8118に記載の「紙および板紙―厚さ及び密度の試験方法」に準拠して測定した。
【0053】
(3)不透明度
JIS―P8149:2000に準拠して測定した。
【0054】
(4)比散乱係数
TAPPI T425(ISO 9426)に規定される式に基づいて算出した。
【0055】
(5)ISO曲げこわさ
ISO2493に則り、MD方向(抄紙方向)の曲げこわさを測定した。
【0056】
(6)JIS摩擦係数
JIS−P8147:2010に記載のISO水平法に準拠して、静摩擦係数、動摩擦係数を測定した。
【0057】
(7)TS750、TS7、D値の測定
上記ティシューソフトネス測定装置TSAを用いて行った。測定条件も上記の通りである。
【0058】
(8)裏抜け値
RI印刷機を用いてオフセット用新聞インキを使用し、マクベス反射濃度計により測定した印面濃度が1.15となるよう片面印刷を施した。印刷後の用紙を、23℃、50RH%の雰囲気に放置し、24時間調湿した後に、マクベス反射濃度計で印刷面の裏面の反射率を測定し、次式により裏抜け値を算出した:
裏抜け値(%)=(印刷裏面の反射率/未印刷の裏面の反射率)×100。
【0059】
(9)灰分(525℃)
JIS―P8251に記載の「紙、板紙およびパルプ―灰分試験方法―525℃燃焼法」に準拠して測定した。
【0060】
(10)灰分(900℃)
JIS―P8252に記載の「紙、板紙およびパルプ―灰分試験方法―900℃燃焼法」に準拠して測定した。
【0061】
(11)裏抜け(目視評価)
オフセット輪転機(東芝オフセット輪転機:OA−4B2T−600)を用いて東洋インキ製造株式会社製のオフセット用エコインキである高粘度AFインキを使用して印刷した。印刷後の用紙を、23℃、50RH%の雰囲気に放置し、放置から24時間後の裏抜けについて以下の基準で目視評価を行なった。
◎:印刷裏面にインキが浸透していない。
○:印刷裏面にほとんどインキが浸透していない。
△:印刷裏面に若干インキが浸透している。
×:印刷裏面にインキが浸透している。
【0062】
(12)めくりやすさ
上記オフセット輪転印刷機にて印刷した後、抄紙方向が短辺となるように545×813(mm)のサイズで断裁し、10枚重ねて2つ折りにした。2つ折りにした新聞用紙を配達されるサイズである4つ折りの状態にした。2つ折りの状態に展開した新聞用紙を手に持った状態で1枚ずつめくった際のページのめくりやすさを以下の基準で評価した。
◎:非常にしなやかでめくりやすい。
○:しなやかでめくりやすい。
△:ごわごわしてめくりにくい。
×:非常にごわごわしてめくりにくい。
【0063】
(13)填料の平均粒子径
レーザー回折/散乱式粒度分布測定器(マルバーン(株)製、機器名:マスターサイザー2000)を用いて、体積累積分布の50%点を平均粒子径とした。
【0064】
(実施例1)
<新聞用紙の製造>
製紙用パルプとして、新聞脱墨パルプ(ろ水度150mlCSF)、TMP(ろ水度80mlCSF)、NKP(ろ水度500mlCSF)を80:15:5質量%の配合割合で混合したパルプスラリーに、填料として軽質炭酸カルシウム(平均粒子径4.1μm)をパルプ絶乾質量当たり4.0質量%添加して紙料を調製した。この紙料を用いて、ギャップフォーマー型ツインワイヤー抄紙機で抄速1000m/分にて新聞用紙原紙を抄造し、更に、オンマシンのゲートロールコーターで、ヒドロキシエチル化澱粉を塗工量がフェルト面、ワイヤー面共に0.2g/m
2となるように塗工し、坪量約42g/m
2(42.3g/m
2)のオフセット印刷用新聞用紙を得た。この紙質、灰分、裏抜け、めくりやすさを測定し、結果を表1に示した。
【0065】
(実施例2)
填料の添加率を5.0%、坪量を約44g/m
2とした以外は実施例1と同様に行い、オフセット印刷用新聞用紙を得た。
【0066】
(実施例3)
填料の添加率を5.0%、坪量を約43g/m
2とした以外は実施例1と同様に行い、オフセット印刷用新聞用紙を得た。
【0067】
(実施例4〜8)
填料の添加率をそれぞれ、5.0%、6.0%、7.0%、10.0%、及び11.0%とした以外は実施例1と同様に行い、オフセット印刷用新聞用紙を得た。
【0068】
(実施例9)
填料の添加率を11.0%、坪量を37.5g/m
2とした以外は実施例1と同様に行い、オフセット印刷用新聞用紙を得た。
【0069】
(実施例10)
新聞脱墨パルプ、TMP、NKPの配合割合を65:30:5質量%とし、填料の添加率を6.0%とした以外は実施例1と同様に行い、オフセット印刷用新聞用紙を得た。
【0070】
(実施例11)
新聞脱墨パルプ、TMP、NKPの配合割合を85:10:5質量%とし、填料の添加率を6.0%とした以外は実施例1と同様に行い、オフセット印刷用新聞用紙を得た。
【0071】
(実施例12)
新聞脱墨パルプ、TMP、NKPの配合割合を92:3:5質量%とし、填料の添加率を6.0%とした以外は実施例1と同様に行い、オフセット印刷用新聞用紙を得た。
【0072】
(実施例13)
新聞脱墨パルプ、TMP、NKPの配合割合を95:0:5質量%とし、填料の添加率を6.0%とした以外は実施例1と同様に行い、オフセット印刷用新聞用紙を得た。
【0073】
(比較例1)
新聞脱墨パルプ、TMP、NKPの配合割合を65:30:5質量%とし、填料の添加率を0%、坪量を約44g/m
2とした以外は実施例1と同様に行い、オフセット印刷用新聞用紙を得た。
【0074】
(比較例2)
新聞脱墨パルプ、TMP、NKPの配合割合を70:25:5質量%とし、填料の添加率を0%、坪量を約44g/m
2とした以外は実施例1と同様に行い、オフセット印刷用新聞用紙を得た。
【0075】
(比較例3)
新聞脱墨パルプ、TMP、NKPの配合割合を75:20:5質量%とし、填料の添加率を0%、坪量を約44g/m
2とした以外は実施例1と同様に行い、オフセット印刷用新聞用紙を得た。
【0076】
(比較例4)
填料の添加率を0%、坪量を約45g/m
2とした以外は実施例1と同様に行い、オフセット印刷用新聞用紙を得た。
【0077】
(比較例5)
填料の添加率を0%、坪量を約43g/m
2とした以外は実施例1と同様に行い、オフセット印刷用新聞用紙を得た。
【0078】
(比較例6)
填料の添加率を0%、坪量を約41g/m
2とした以外は実施例1と同様に行い、オフセット印刷用新聞用紙を得た。
【0079】
(比較例7)
填料の添加率を1.0%とした以外は実施例1と同様に行い、オフセット印刷用新聞用紙を得た。
【0080】
(比較例8)
填料の添加率を3.0%とした以外は実施例1と同様に行い、オフセット印刷用新聞用紙を得た。
【0081】
(比較例9)
填料として重質炭酸カルシウム(平均粒子径3.8μm)を用いて、填料添加率を5.0%とした以外は実施例1と同様に行い、オフセット印刷用新聞用紙を得た。
【0082】
(比較例10)
填料として重質炭酸カルシウム(平均粒子径3.8μm)を用いて、填料添加率を11.0%とした以外は実施例1と同様に行い、オフセット印刷用新聞用紙を得た。
【0083】
(比較例11)
填料としてカオリン(平均粒子径6.2μm)を用いて、填料添加率を5.0%とした以外は実施例1と同様に行い、オフセット印刷用新聞用紙を得た。
【0084】
(比較例12)
填料としてカオリン(平均粒子径6.2μm)を用いて、填料添加率を11.0%とした以外は実施例1と同様に行い、オフセット印刷用新聞用紙を得た。
【0085】
【表1】
【0086】
表1に示される通り、本発明の新聞用紙は、古紙パルプ含有率が高く、45g/m
2以下という低坪量で、10質量%以上という高灰分(525℃灰分)であるにもかかわらず、裏抜けが生じにくく、かつ、めくりやすいことがわかる。本発明の新聞用紙は、適度な紙のこわさとしなやかさ(柔らかさ)とを併せ持っており、薄い状態の比較的大判の紙を1枚ずつめくりながら読むような新聞の用途に最適である。