特開2015-194014(P2015-194014A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-194014(P2015-194014A)
(43)【公開日】2015年11月5日
(54)【発明の名称】フロントローダ
(51)【国際特許分類】
   E02F 3/43 20060101AFI20151009BHJP
【FI】
   E02F3/43 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-72107(P2014-72107)
(22)【出願日】2014年3月31日
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】松本 厚
(72)【発明者】
【氏名】灘岡 龍一
(72)【発明者】
【氏名】杉岡 真宏
【テーマコード(参考)】
2D003
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB04
2D003BA02
2D003BB10
2D003CA02
2D003DA04
2D003DB04
2D003FA02
(57)【要約】
【課題】より精度良くバケットの対地揺動角度を一定に維持できるようにする。
【解決手段】対地角維持制御部26は、ブーム停止状態でのブーム12の上下揺動角度θaが上昇規制角度θaoから設定角度以内か否かを判定し、指令操作具32がブーム下降指令を出力すると、判定結果にかかわらず、その指令に基づいて手動用制御部22がブーム用アクチュエータ16に対する下降用の制御作動を開始するのに先行してバケット用アクチュエータ17に対する上昇用の制御作動を開始し、指令操作具32がブーム上昇指令を出力すると、判定結果が設定角度外の場合は、その指令に基づいて手動用制御部22がブーム用アクチュエータ16に対する上昇用の制御作動を開始するのに先行してバケット用アクチュエータ17に対する下降用の制御作動を開始し、判定結果が設定角度以内の場合は、バケット用アクチュエータ17に対する制御作動を行わないように構成する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブームを走行車体に対して左右向きの第1支軸を支点にして上下方向に揺動駆動するブーム用アクチュエータと、
バケットを前記ブームに対して左右向きの第2支軸を支点にして上下方向に揺動駆動するバケット用アクチュエータと、
前記ブームの上下揺動角度を検出するブーム角検出器と、
前記ブームに対する前記バケットの上下揺動角度を検出するバケット角検出器と、
前記ブーム角検出器の出力と前記バケット角検出器の出力とに基づいて前記バケットの対地揺動角度を演算する演算部と、
指令操作具が出力する操作指令に基づいて前記ブーム用アクチュエータ及び前記バケット用アクチュエータの作動を制御する手動用制御部と、
前記演算部の出力に基づいて、前記ブームの上下揺動にかかわらず前記バケットの対地揺動角度が一定になるように前記バケット用アクチュエータの作動を制御する対地角維持制御部と、
を備え、
前記対地角維持制御部は、
ブーム停止状態での前記ブームの上下揺動角度が前記ブームの上昇規制角度から設定角度以内か否かを判定し、
前記指令操作具がブーム下降用の操作指令を出力すると、判定結果にかかわらず、その操作指令に基づいて前記手動用制御部が前記ブーム用アクチュエータに対する下降用の制御作動を開始するのに先行して前記バケット用アクチュエータに対する上昇用の制御作動を開始し、
前記指令操作具がブーム上昇用の操作指令を出力すると、
前記判定結果が設定角度外の場合は、その操作指令に基づいて前記手動用制御部が前記ブーム用アクチュエータに対する上昇用の制御作動を開始するのに先行して前記バケット用アクチュエータに対する下降用の制御作動を開始し、
前記判定結果が設定角度以内の場合は、前記バケット用アクチュエータに対する制御作動を行わないように構成しているフロントローダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブームを走行車体に対して左右向きの第1支軸を支点にして上下方向に揺動駆動するブーム用アクチュエータと、バケットを前記ブームに対して左右向きの第2支軸を支点にして上下方向に揺動駆動するバケット用アクチュエータとを備えたフロントローダに関する。
【背景技術】
【0002】
上記のようなフロントローダにおいては、ブームの人為制御時における角速度をブームセンサからの信号に基づいて計測し、この計測結果に基づいてバケットが対車体姿勢を維持するに必要な目標角速度を求め、この目標角速度がバケットセンサで計測されるようバケットアクチュエータの作動速度を制御する速度制御手段を制御装置に備えるように構成したものがある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−245866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の構成では、バケットアクチュエータの作動速度を制御することから、ブームの上下揺動にかかわらずバケットの対地揺動角度を一定にする上において、ブームの上下揺動に対するバケットの姿勢補正を応答性良く行うことができる。
【0005】
しかしながら、ブームセンサが検出するブームの角速度に基づいてバケットアクチュエータの作動速度を制御するものであることから、ブームの上下揺動に対するバケットの姿勢補正で生じる制御の遅れを解消するには至っておらず、より精度良くバケットの対地揺動角度を一定に維持する上において改善の余地がある。
【0006】
本発明の目的は、より精度良くバケットの対地揺動角度を一定に維持できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の課題解決手段は、
ブームを走行車体に対して左右向きの第1支軸を支点にして上下方向に揺動駆動するブーム用アクチュエータと、
バケットを前記ブームに対して左右向きの第2支軸を支点にして上下方向に揺動駆動するバケット用アクチュエータと、
前記ブームの上下揺動角度を検出するブーム角検出器と、
前記ブームに対する前記バケットの上下揺動角度を検出するバケット角検出器と、
前記ブーム角検出器の出力と前記バケット角検出器の出力とに基づいて前記バケットの対地揺動角度を演算する演算部と、
指令操作具が出力する操作指令に基づいて前記ブーム用アクチュエータ及び前記バケット用アクチュエータの作動を制御する手動用制御部と、
前記演算部の出力に基づいて、前記ブームの上下揺動にかかわらず前記バケットの対地揺動角度が一定になるように前記バケット用アクチュエータの作動を制御する対地角維持制御部と、
を備え、
前記対地角維持制御部は、
ブーム停止状態での前記ブームの上下揺動角度が前記ブームの上昇規制角度から設定角度以内か否かを判定し、
前記指令操作具がブーム下降用の操作指令を出力すると、判定結果にかかわらず、その操作指令に基づいて前記手動用制御部が前記ブーム用アクチュエータに対する下降用の制御作動を開始するのに先行して前記バケット用アクチュエータに対する上昇用の制御作動を開始し、
前記指令操作具がブーム上昇用の操作指令を出力すると、
前記判定結果が設定角度外の場合は、その操作指令に基づいて前記手動用制御部が前記ブーム用アクチュエータに対する上昇用の制御作動を開始するのに先行して前記バケット用アクチュエータに対する下降用の制御作動を開始し、
前記判定結果が設定角度以内の場合は、前記バケット用アクチュエータに対する制御作動を行わないように構成している。
【0008】
この手段によると、ブームを下降揺動させる場合には、対地角維持制御部が、指令操作具からのブーム下降用の操作指令に基づいて、手動用制御部がブーム用アクチュエータに対する下降用の制御作動を開始するのに先行して、バケット用アクチュエータに対する上昇用の制御作動を開始するフィードフォワード制御と、演算部の出力に基づいて、ブームの上下揺動にかかわらずバケットの対地揺動角度が一定になるようにバケット用アクチュエータの作動を制御するフィードバック制御とを行う。
【0009】
又、ブーム停止状態でのブームの上下揺動角度がブームの上昇規制角度から設定角度外であるときにブームを上昇揺動させる場合には、対地角維持制御部が、指令操作具からのブーム上昇用の操作指令に基づいて、手動用制御部がブーム用アクチュエータに対する上昇用の制御作動を開始するのに先行して、バケット用アクチュエータに対する下降用の制御作動を開始するフィードフォワード制御と、演算部の出力に基づいて、ブームの上下揺動にかかわらずバケットの対地揺動角度が一定になるようにバケット用アクチュエータの作動を制御するフィードバック制御とを行う。
【0010】
そして、ブーム停止状態でのブームの上下揺動角度がブームの上昇規制角度から設定角度内であるときにブームを上昇揺動させようとした場合には、対地角維持制御部がバケット用アクチュエータに対する制御作動を行わないようになる。
【0011】
つまり、ブームを下降揺動させる場合、及び、ブーム停止状態での左右のブームの上下揺動角度がブームの上昇規制角度から設定角度外であるときにブームを上昇揺動させる場合は、フィードフォワード制御とフィードバック制御との併用により、バケット用アクチュエータの制御遅れを招くことなく、高い精度で、バケットの対地揺動角度を一定に維持することができる。
【0012】
又、ブーム停止状態でのブームの上下揺動角度がブームの上昇規制角度から設定角度以内であるときにブームを上昇揺動させる場合は、フィードフォワード制御を行わないことにより、ブームが上昇規制角度から設定角度以内であることによって殆ど上昇揺動しない状態であるにもかかわらず、バケットが先行して下降揺動することにより、バケットの対地揺動角度を一定に維持することができなくなる不都合の発生を回避することができる。
【0013】
従って、ブームの上下揺動にかかわらず、バケットの対地揺動角度を、より精度良く一定に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】フロントローダを装備したトラクタの左側面図である。
図2】フロントローダの作動状態を示す左側面図である。
図3】フロントローダに関する制御構成を示すブロック図である。
図4】バケット自動停止時の作動速度を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態の一例として、本発明に係るフロントローダを、走行車体の一例であるトラクタに装備した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
図1に示すように、この実施形態において走行車体Aとして例示するトラクタAは、車体フレーム1の前部側に原動部2及び左右の前輪3などを備えている。又、車体フレーム1の後部側に搭乗運転部4を形成するキャビン5及び左右の後輪6などを備えている。車体フレーム1の前後中間部には、フロントローダBの装着を可能にする左右の支持ブラケット7を装備している。搭乗運転部4には、ステアリングホイール8及び運転座席9などを配備している。
【0017】
図1〜3に示すように、フロントローダBは、対応する支持ブラケット7に着脱可能に装着した左右の固定ブラケット10、対応する固定ブラケット10に左右向きの第1支軸11を介して上下揺動可能に連結した左右のブーム12、対応するブーム12の遊端部に左右向きの第2支軸13を介して上下揺動可能に連結した左右の揺動ブラケット14、左右の揺動ブラケット14に着脱可能に連結したバケット15、ブーム用アクチュエータとして使用する油圧式で複動型の左右のブームシリンダ16、バケット用アクチュエータとして使用する油圧式で複動型の左右のバケットシリンダ17、左右いずれか一方のブーム12の上下揺動角度θaを検出するブーム角検出器18、及び、左右のブーム12に対するバケット15の上下揺動角度θbを検出するバケット角検出器19、などを備えている。
【0018】
左右のブームシリンダ16は、対応するブーム12をトラクタAに対して第1支軸11を支点にして上下方向に揺動駆動する。左右のバケットシリンダ17は、左右の揺動ブラケット14とともにバケット15を各ブーム12に対して第2支軸13を支点にして上下方向に揺動駆動する。ブーム角検出器18及びバケット角検出器19には回転式のポテンショメータを採用している。
【0019】
図3に示すように、トラクタAは、左右のブームシリンダ16及び左右のバケットシリンダ17に対するオイルの流れを制御するバルブユニット20、及び、バルブユニット20を介して左右のブームシリンダ16及び左右のバケットシリンダ17の作動を制御するフロントローダ用の電子制御ユニット(以下、LD−ECUと称する)21を備えている。
【0020】
図示は省略するが、油圧制御ユニット20は、左右のブームシリンダ16に対するオイルの流れを制御するブーム用の電子制御バルブ、及び、左右のバケットシリンダ17に対するオイルの流れを制御するバケット用の電子制御バルブ、などを備えている。
【0021】
図2及び図3に示すように、LD−ECU21は、CPUやEEPROMなどを備えたマイクロコンピュータにより構成している。そして、左右のブーム12及びバケット15の手動動作を可能にする手動用制御部22、各種の演算処理を行う演算部23、各種のデータを記憶する記憶部24、及び、バケット15の対地揺動角度θcを一定に維持する対地角維持制御を行う対地角維持制御部26、などを備えている。
【0022】
手動用制御部22は、搭乗運転部4に備えた十字揺動式で中立復帰型の操作レバー30と、操作レバー30の操作位置を検出するレバー操作検出器31とから構成したフロントローダ操作用の指令操作具32が出力する操作指令に基づいて、左右のブームシリンダ16及び左右のバケットシリンダ17の作動を制御する手動操作制御を行う。
【0023】
手動操作制御では、指令操作具32が出力する操作指令がブーム上昇用の操作指令である場合は、この操作指令が継続して出力されている間は左右のブーム12が上昇揺動するように左右のブームシリンダ16を伸長作動させる。指令操作具32が出力する操作指令がブーム下降用の操作指令である場合は、この操作指令が継続して出力されている間は左右のブーム12が下降揺動するように左右のブームシリンダ16を収縮作動させる。指令操作具32が出力する操作指令がバケット上昇用の操作指令である場合は、この操作指令が継続して出力されている間はバケット15が上昇揺動(掬い揺動)するように左右のバケットシリンダ17を収縮作動させる。指令操作具32が出力する操作指令がバケット下降用の操作指令である場合は、この操作指令が継続して出力されている間はバケット15が下降揺動(ダンプ揺動)するように左右のバケットシリンダ17を伸長作動させる。指令操作具32が操作指令の出力を停止している場合は、その出力停止状態が継続されている間は左右のブーム12及びバケット15が上下揺動を停止するように左右のブームシリンダ16及び左右のバケットシリンダ17の伸縮作動を停止させる。
【0024】
レバー操作検出器31には、操作レバー30の各操作位置への揺動操作を検出する複数のスイッチ、又は、操作レバー30の前後方向への揺動操作を検出する回転式のポテンショメータと左右方向への揺動操作を検出する回転式のポテンショメータ、などを採用することができる。
【0025】
演算部23は、ブーム角検出器18の出力とバケット角検出器19の出力とに基づいてバケット15の対地揺動角度θcを演算する。そして、その演算結果を記憶部24及び対地角維持制御部26などに出力する。
【0026】
記憶部24は、搭乗運転部4に備えた制御目標角度設定用の設定スイッチ33が押圧操作された場合に、そのときに演算部23が出力しているバケット15の対地揺動角度θcを対地角維持制御用の制御目標角度θcoとして記憶する。つまり、操作レバー30を操作して、左右のブームシリンダ16及び左右のバケットシリンダ17を作動させて、バケット15を所望の対地揺動角度θcまで操作した後、設定スイッチ33を押圧操作することにより、このときのバケット15の対地揺動角度θcを対地角維持制御用の制御目標角度θcoとして記憶部24に記憶することができる。尚、図2においては、対地角維持制御用の制御目標角度θcoを、バケット15の底面が水平になる角度に設定した状態を例示している。
【0027】
又、バケット15の上昇限界角度θbaよりも設定角度(例えば2度)だけ小さく設定したバケット15の上昇規制角度θbbと、バケット15の下降限界角度θbcよりも設定角度(例えば2度)だけ大きく設定したバケット15の下降規制角度θbdとを記憶している。
【0028】
図2〜4に示すように、対地角維持制御部26は、対地角維持制御の実行停止中に搭乗運転部4に備えた対地角維持制御用の指令スイッチ34が押圧操作された場合に対地角維持制御を行う。又、対地角維持制御の実行中に対地角維持制御用の指令スイッチ34が押圧操作された場合は対地角維持制御を終了する。
【0029】
対地角維持制御では、先ず、ブーム角検出器18の出力に基づいて、ブーム停止状態での左右のブーム12の上下揺動角度θaが左右のブーム12の上昇規制角度θaoから設定角度(例えば2度)以内か否かを判定する。
【0030】
その後、指令操作具32がブーム下降用の操作指令を出力すると、上記の判定結果にかかわらず、その操作指令に基づいて手動用制御部22が左右のブームシリンダ16に対する下降用の制御作動を開始するのに先行して、左右のバケットシリンダ17に対する上昇用の制御作動を開始する。そして、記憶部24が記憶した対地角維持制御用の制御目標角度θcoと演算部23が出力するバケット15の対地揺動角度θcとに基づいて、左右のブーム12の下降揺動にかかわらず、バケット15の対地揺動角度θcが対地角維持制御用の制御目標角度θcoに一致する(制御目標角度θcoの不感帯幅内に収まる)ように左右のバケットシリンダ17の作動を制御する。
逆に、指令操作具32がブーム上昇用の操作指令を出力すると、上記の判定結果を反映して、判定結果が設定角度外の場合は、その操作指令に基づいて手動用制御部22が左右のブームシリンダ16に対する上昇用の制御作動を開始するのに先行して、左右のバケットシリンダ17に対する下降用の制御作動を開始する。
又、判定結果が設定角度以内の場合は、左右のバケットシリンダ17に対する制御作動を行わずにバケット15を現在の揺動姿勢にて維持する。
【0031】
つまり、指令操作具32がブーム下降用の操作指令を出力した場合、及び、ブーム停止状態での左右のブーム12の上下揺動角度θaが左右のブーム12の上昇規制角度θaoから設定角度外であるときに指令操作具32がブーム上昇用の操作指令を出力した場合は、フィードフォワード制御とフィードバック制御との併用により、左右のバケットシリンダ17の制御遅れを招くことなく、高い精度で、バケット15の対地揺動角度θcを対地角維持制御用の制御目標角度θco(所望の対地揺動角度)に維持することができる。
【0032】
又、ブーム停止状態での左右のブーム12の上下揺動角度θaが左右のブーム12の上昇規制角度θaoから設定角度以内であるときに指令操作具32がブーム上昇用の操作指令を出力した場合は、フィードフォワード制御を行わないことにより、左右のブーム12が上昇揺動しない状態で、バケット15が先行して下降揺動することに起因して、バケット15の対地揺動角度θcが対地角維持制御用の制御目標角度θcoから大きく外れる不都合の発生を回避することができる。
【0033】
対地角維持制御部26は、対地角維持制御では、上記の制御作動に加えて、バケット角検出器18の出力と記憶部24に記憶したバケット15の上昇規制角度θbb及び下降規制角度θbdとに基づいて、バケット15の上下揺動角度θbが上昇規制角度θbb又は下降規制角度θbdよりも設定角度(例えば10度)手前の減速角度θbxに達したことを検知した場合は、指令操作具32の操作指令に基づく手動用制御部22の制御作動に優先して、バケット15が減速角度θbxから設定角度(例えば5度)の減速領域H内に位置する間、左右のバケットシリンダ17に対するオイルの分流比が徐々に低下するようにバケット用の電子制御バルブに対するデューティー比を変更して、左右のバケットシリンダ17の作動速度を目標速度まで徐々に低下させ、減速領域Hの通過後は目標速度に維持する。
その後、バケット15の上下揺動角度θbが上昇規制角度θbb又は下降規制角度θbdに達したことを検知した場合に、左右のバケットシリンダ17を自動停止させて、バケット15の上下揺動角度θbが上昇規制角度θbb又は下降規制角度θbdに維持する。
【0034】
これにより、対地角維持制御において、バケット15の上下揺動角度θbが上昇限界角度θba又は下降限界角度θbcに達することに起因して、バルブユニット20に備えたリリーフバルブが作動することにより、左右のブームシリンダ16に供給するオイル量が減少してブーム12の駆動速度が低下する、又は、油温が上昇するなどの不都合の発生を防止することができる。
【0035】
又、自動停止前に左右のバケットシリンダ17の作動速度を徐々に低下させることにより、自動停止時におけるショックの発生を抑制することができるとともに、上昇規制角度θbb又は下降規制角度θbdでのバケットの停止精度を高めることができる。
【0036】
図示は省略するが、記憶部24に、ブーム12の上下揺動角度θaと、バケット15の対地揺動角度θcに対する上昇限界角度θcaよりも設定角度だけ小さく設定した上昇規制角度θcbと、バケット15の対地揺動角度θcに対する下降限界角度θccよりも設定角度だけ大きく設定した下降規制角度θcdとの関係を示す関係データを記憶し、この関係データとブーム角検出器18の出力とに基づいてブーム12の上下揺動角度θaに応じたバケット15の上昇規制角度θcbと下降規制角度θcdとを設定する設定部を設けて、対地角維持制御部26が、演算部23が出力するバケット15の対地揺動角度θcと設定部の出力とに基づいて、バケット15の対地揺動角度θcが上昇規制角度θcb又は下降規制角度θcdに達したことを検知した場合に、左右のバケットシリンダ17を自動停止させるように構成してもよい。
【0037】
〔別実施形態〕
【0038】
〔1〕走行車体Aは、ローダ作業用の専用車、フロントローダ及びモーアを装備するローダ草刈兼用車、及び、フロントローダ及びバックホーを装備するローダ掘削兼用車、などであってもよい。
【0039】
〔2〕ブーム用アクチュエータ16及びバケット用アクチュエータ17として油圧モータなどを採用してもよい。
【0040】
〔3〕指令操作具32として、ブーム専用の指令操作具とバケット専用の指令操作具とを備えるようにしてもよい。又、指令操作具30として、ブーム12の上昇揺動を指令するスイッチ、ブーム12の下降揺動を指令するスイッチ、バケット15の掬い揺動を指令するスイッチ、及び、バケット15のダンプ揺動を指令するスイッチを備えるようにしてもよい。
【0041】
〔4〕ブーム角検出器18として、ブームシリンダ16の伸縮長さをブーム12の上下揺動角度θaとして検出する摺動式のポテンショメータを採用してもよい。又、バケット角検出器19として、バケットシリンダ17の伸縮長さをバケット15の上下揺動角度θbとして検出する摺動式のポテンショメータを採用してもよい。
【0042】
〔5〕対地角維持制御部26がバケット用アクチュエータ17に対する制御作動を行わないブーム12の上昇規制角度θaoからの設定角度は、バケット15の対地揺動角度θcを一定に維持する上において支障のない範囲であれば種々の変更が可能である。例えば、設定角度を3度又は4度などに設定してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、トラクタなどの走行車体に装備するフロントローダに適用することができる。
【符号の説明】
【0044】
11 第1支軸
12 ブーム
13 第2支軸
15 バケット
16 ブーム用アクチュエータ
17 バケット用アクチュエータ
18 ブーム角検出器
19 バケット角検出器
22 手動用制御部
23 演算部
26 対地角維持制御部
32 指令操作具
A 走行車体
θa ブームの上下揺動角度
θb バケットの上下揺動角度
θc バケットの対地揺動角度
図1
図2
図3
図4