(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-194028(P2015-194028A)
(43)【公開日】2015年11月5日
(54)【発明の名称】バックホウアタッチメント及び軌陸両用バックホウ
(51)【国際特許分類】
E02F 3/32 20060101AFI20151009BHJP
【FI】
E02F3/32 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-72748(P2014-72748)
(22)【出願日】2014年3月31日
(71)【出願人】
【識別番号】597110995
【氏名又は名称】株式会社レールテック
(71)【出願人】
【識別番号】514080693
【氏名又は名称】株式会社原商
(74)【代理人】
【識別番号】100113712
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 裕弘
(72)【発明者】
【氏名】池本 光典
(72)【発明者】
【氏名】松本 久
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 誠一
(57)【要約】
【課題】溝の浚渫に適したバックホウアタッチメント及び軌陸両用バックホウを提供する。
【解決手段】バックホウアタッチメント1は、バックホウのアーム6に設けられるものであり、固定部11と、バケット7とを備える。固定部11は、アーム6の先端に固定される。バケット7は、固定部11に取り付けられる。バケット7は、アーム6の長手方向に対するヨー角θが可変となるように固定部11に取り付けられる。バケット7は、ヨー角θを調整することにより、アーム6の先端を下に向けたとき、バケット7の先端71を水平に設定可能である。これにより、傾いた箇所で溝の浚渫に用いても、バケット7の先端71と溝の内底との間に掘り残しが生じ難い。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バックホウのアームに設けられるバックホウアタッチメントであって、
アームの先端に固定される固定部と、
前記固定部に取り付けられるバケットとを備え、
前記バケットは、前記アームの長手方向に対するヨー角が可変となるように前記固定部に取り付けられ、前記ヨー角を調整することにより、前記アームの先端を下に向けたとき、該バケットの先端を水平に設定可能であることを特徴とするバックホウアタッチメント
【請求項2】
前記バケットは、前記固定部の先端側に軸支され、
前記固定部は、前記ヨー角を調整する伸縮自在な駆動装置を有することを特徴とする請求項1に記載のバックホウアタッチメント。
【請求項3】
前記バケットは、平面状の外側面を有し、先端が直線状であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のバックホウアタッチメント。
【請求項4】
前記バケットは、水抜き孔が形成されていることを特徴とする請求項3に記載のバックホウアタッチメント。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のバックホウアタッチメントを備え、
陸上を走行するための走行装置と、レール上を走行するための車輪とをさらに備え、
前記走行装置による走行と、前記車輪による走行とが切替可能とされていることを特徴とする軌陸両用バックホウ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溝の浚渫に用いるバックホウアタッチメント及びそのバックホウアタッチメントを有する軌陸両用バックホウに関する。
【背景技術】
【0002】
図4に示されるように、鉄道の線路は、路盤上にバラストが敷かれ、バラストでマクラギが保持され、マクラギにレールが締結されている。線路の排水のために、線路脇に側溝と呼ばれる溝が設けられている。側溝には、土が流入して溜まっていく。側溝が土で埋まると、線路の排水に支障が生じ、線路の路盤が軟弱化するおそれがある。このため、従来は、人力で側溝を浚渫し、側溝内に溜まった土を取り除いていた。人力による側溝の浚渫は、効率が良くない。
【0003】
従来から、土を掘削する建設機械として、バックホウ(バックホー)が知られている(例えば、特許文献1参照)。このようなバックホウは、バックホウ全体の中心より左右方向に片寄った位置でバケットを前から後に移動させ、土を掘削することができる。本願発明の発明者は、側溝の浚渫にバックホウを用いることを考えた。しかし、通常のバックホウは、走行装置として無限軌道(履帯)を有するので、線路で用いることができない。
【0004】
従来から、鉄道の保守用車として、軌陸両用車が知られている(例えば、特許文献2参照)。軌陸両用車は、道路等の陸上及び線路のレール上の両方を走行することができる。
【0005】
そこで、本願発明の発明者は、
図5及び
図6に示されるように、無限軌道を有するバックホウに、レール上を走行するための車輪3を昇降可能に付加した軌陸両用バックホウを側溝の浚渫に試用した。この軌陸両用バックホウは、線路の直線区間では、側溝の浚渫に用いることができた。
【0006】
図7に示されるように、線路の曲線区間には、カントが設定され、曲線外軌側のレールが内軌側のレールよりも高くなっている。曲線区間において、側溝は傾いていない。
図8は、カントが設定された曲線区間における、試用した軌陸両用バックホウのバケット7と側溝Sとの位置関係を示す。カントによって軌陸両用バックホウ全体が左右方向に傾き、アーム6及びバケット7が左右方向に傾くため、バケット7の先端71が水平にならず、バケット7の先端71と側溝Sの内底との間に掘り残しS1が生じる。バケット7が左右方向に傾くと、バケット7の外側面73が鉛直にならず、バケット7の外側面73と側溝Sの側壁との間にも掘り残しS2が生じる。側溝Sにコンクリート製のU字溝S3が設けられている場合、傾いたバケット7の先端71がU字溝S3の継目を引掛け、側溝Sを壊すおそれがある。また、
図9に示されるように、側壁に笠石S4が積まれている古いタイプの側溝Sでは、傾いたバケット7の先端71が笠石S4を引掛け、側溝Sを壊すおそれがある。
【0007】
上述したような問題は、軌陸両用バックホウに限らず、地面が傾いている場所で通常のバックホウを用いて溝を浚渫する際にも生じる。例えば、道路でもカーブ外側がカーブ内側より高く設定された箇所がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−36359号公報
【特許文献2】特開平9−142116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記問題を解決するものであり、溝の浚渫に適したバックホウアタッチメント及び軌陸両用バックホウを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のバックホウアタッチメントは、バックホウのアームに設けられるものであって、アームの先端に固定される固定部と、前記固定部に取り付けられるバケットとを備え、前記バケットは、前記アームの長手方向に対するヨー角が可変となるように前記固定部に取り付けられ、前記ヨー角を調整することにより、前記アームの先端を下に向けたとき、該バケットの先端を水平に設定可能であることを特徴とする。
【0011】
このバックホウアタッチメントにおいて、前記バケットは、前記固定部の先端側に軸支され、前記固定部は、前記ヨー角を調整する伸縮自在な駆動装置を有することが好ましい。
【0012】
このバックホウアタッチメントにおいて、前記バケットは、平面状の外側面を有し、先端が直線状であることが好ましい。
【0013】
このバックホウアタッチメントにおいて、前記バケットは、水抜き孔が形成されていることが好ましい。
【0014】
本発明の軌陸両用バックホウは、前記バックホウアタッチメントを備え、陸上を走行するための走行装置と、レール上を走行するための車輪とをさらに備え、前記走行装置による走行と、前記車輪による走行とが切替可能とされていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明のバックホウアタッチメント及び軌陸両用バックホウによれば、傾いた箇所で溝の浚渫に用いても、バケットの先端を水平に設定することにより、バケットの先端と溝の内底との間に掘り残しが生じ難いので、溝の浚渫に適している。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係るバックホウアタッチメントの平面図。
【
図3】同バックホウアタッチメントを用いた溝の浚渫を示す図。
【
図8】従前の軌陸両用バックホウを用いた溝の浚渫を示す断面図。
【
図9】同軌陸両用バックホウを用いた笠石を有する溝の浚渫を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施形態に係るバックホウアタッチメント及びそのバックホウアタッチメントを有する軌陸両用バックホウを
図1乃至
図3を参照し、
図5及び
図6を流用して説明する。バックホウは、アームの先端にバックホウアタッチメントを有し、作業の内容に応じてバックホウアタッチメントが選択される。本実施形態の軌陸両用バックホウは、バックホウアタッチメント以外は、試用した従前の軌陸両用バックホウと同様の構成を有する。このため、本実施形態の軌陸両用バックホウの説明に、従前の軌陸両用バックホウの図面(
図5及び
図6)を流用する。
【0018】
図5に示されるように、軌陸両用バックホウは、陸上を走行するための走行装置2と、レール上を走行するための車輪3とを有する。この軌陸両用バックホウは、走行装置2による走行と、車輪3による走行とが切替可能とされている。
【0019】
本実施形態では、走行装置2は、無限軌道である。無限軌道の代わりに、タイヤを用いて走行装置2を構成してもよい。車輪3は、昇降可能に設けられ、陸上を走行するとき、上昇され、レール上を走行するとき、走行装置2の接地面より下に降下される。軌陸両用における陸上とは、道路上や地面上等である。車輪3の昇降機構は、従来の軌陸両用車のものと同様である(特許文献2参照)。軌陸両用バックホウを線路で用いる場合、作業現場に近い踏切からレール上に載線され、作業現場まで車輪3でレール上を走行する。車輪3による走行は、自走であっても、他の保守用車による牽引走行又は推進走行であってもよい。
【0020】
軌陸両用バックホウにおいて、旋回台4が走行装置2上に支持される。旋回台4は、走行装置2に対して水平面内で回転する。旋回台4には、第1ブーム5aの後端が接続される。第1ブーム5aは、前端側が上下動、すなわちピッチングする。第1ブーム5aの前端には、第2ブーム5bの後端が連結される。第2ブーム5bの前端には、支持ブラケット5cが連結される。支持ブラケット5cには、アーム6の基端が連結される。アーム6は、前後に搖動する。アーム6の先端には、バケット7が設けられる。
図6に示されるように、アーム6及びバケット7は、リンク機構により、前後方向に平行のまま、左右に変位する。このようなリンク機構は、従来のバックホウのものと同様である(特許文献1参照)。本実施形態では、バケット7及びその取付部分がバックホウアタッチメントとして構成される。
【0021】
図1及び
図2に示されるように、本実施形態のバックホウアタッチメント1は、バックホウのアーム6に設けられる。このバックホウアタッチメント1は、固定部11と、バケット7とを備える。固定部11は、アーム6の先端に固定される。本実施形態では、固定部11は、アーム6にボルト留めされる。固定部11を溶接等によってアーム6に恒久的に固定してもよい。バケット7は、固定部11に取り付けられる。このバケット7は、アーム6の長手方向に対するヨー角θが可変となるように固定部11に取り付けられる。
【0022】
バックホウアタッチメント1の構成を詳述する。バケット7は、固定部11の先端側に軸支される。固定部11は、ヨー角θを調整する伸縮自在な駆動装置12を有する。
【0023】
バケット7は、基端側に基部72を有し、基部72を介して固定部11に軸支される。基部72は、左右いずれかの一方に張り出した張出部72cを有する。駆動装置12は、張出部72cと、固定部11との距離を増減することによって、ヨー角θを調整する。駆動装置12は、本実施形態では油圧シリンダである。駆動装置12は、電動アクチュエータであってもよい。
【0024】
図1及び
図2において、アーム6の長手方向をX方向、アーム6の先端を前に向けたときの左右方向をY方向、X方向及びY方向に直交する方向をZ方向としている。ヨー角θは、XY平面における回転の角度、すなわち、Z方向を回転軸とする回転の角度である。ヨー角θが変化すると、バケット7は、ヨーイングし、先端側が左右方向(Y方向)に振られる。
【0025】
なお、バケット7の基部72は、固定部11に直接的に軸支される第1基部72aと、第1基部72aに対してアーム6の長手方向(X方向)を軸として回転可能に設けられた第2基部72bとを有する。第2基部72bを回転することによって、バケット7は、アーム6に対してローリングする。このような基部72の構成は、従来のバックホウにも用いられている。
【0026】
アーム6は、上下及び前後に平行な平面内(ZX平面内)において回転、すなわちピッチングする。上記のように構成されたバックホウアタッチメント1を有する軌陸両用バックホウは、
図3に示されるように、側溝Sを浚渫するとき、アーム6の先端を下に向け、バケット7を側溝S内に入れ、バケット7を前から後に移動する。
【0027】
軌陸両用バックホウは、カントが設定された曲線上にあるとき、曲線内軌側に傾く。このため、軌陸両用バックホウのアーム6は、左右方向に傾き、バケット7も傾く(
図3の2点鎖線)。
【0028】
バケット7は、ヨー角θを調整することにより、アーム6の先端を下に向けたとき、バケット7の先端71を水平に設定可能である。バケット7の先端71を水平に設定することにより、バケット7の先端71が側溝Sの内底と平行になる(
図3の実線)。
【0029】
バケット7は、平面状の外側面73を有し、先端71が直線状である。バケット7の先端に掘削用の爪は不要である。バケット7の左右幅は、浚渫対象の側溝Sの幅よりも小さい。バケット7の開口部74は、略矩形である。左右一対の外側面73を左右方向に接続する外底面75は、側面視で凸の曲面である(
図2参照)。バケット7の先端71を水平に設定したとき、バケット7の外側面73は、鉛直になり、側溝Sの側壁と平行になる(
図3参照)。
【0030】
バケット7は、水抜き孔76が形成されている。本実施形態では、水抜き孔76は、複数形成され、バケット7の側面及び底面を貫通している(
図1及び
図2参照)。水抜き孔76の径は、水を容易に通し、浚渫する土を通し難い大きさに設定される。
【0031】
以上、本実施形態に係るバックホウアタッチメント1によれば、傾いた箇所で側溝S等の溝の浚渫に用いても、バケット7の先端71を水平に設定することにより、バケット7の先端71と溝の内底との間に掘り残しが生じ難いので、溝の浚渫に適している。
【0032】
バケット7は、平面状の外側面73を有し、先端71が直線状であるので、断面が矩形の溝の浚渫に用いると、先端71と溝の内底との間に掘り残しが生じ難く、外側面73と溝の側壁との間に掘り残しが生じ難く、溝の内底や側壁に引掛け難いので、溝の浚渫に適している。
【0033】
バケット7は、水抜き孔76が形成されているので、溝を浚渫するときにバケット7内に入った水を排出することができる。
【0034】
本実施形態に係る軌陸両用バックホウは、レール上を走行するための車輪3を有するので、レール上で用いることができる。この軌陸両用バックホウは、本実施形態のバックホウアタッチメント1を有するので、カントが設定されている曲線区間で側溝Sの浚渫に用いても、バケット7の先端71を水平に設定することにより、バケット7の先端71と側溝Sの内底との間に掘り残しが生じ難いので、側溝Sの浚渫に適している。
【0035】
なお、本発明は、上記の実施形態の構成に限られず、発明の要旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、バックホウアタッチメント1を軌陸両用でない陸上用の通常のバックホウに取り付けてもよい。バックホウアタッチメント1を用いて浚渫する溝は、鉄道の側溝Sに限定されない。
【符号の説明】
【0036】
1 バックホウアタッチメント
11 固定部
12 駆動装置
3 車輪
6 アーム
7 バケット
71 先端
73 外側面
74 開口部
76 水抜き孔
S 側溝(溝)