(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-194035(P2015-194035A)
(43)【公開日】2015年11月5日
(54)【発明の名称】免震機能を具え多目的堤防
(51)【国際特許分類】
E02B 3/06 20060101AFI20151009BHJP
【FI】
E02B3/06 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2014-72846(P2014-72846)
(22)【出願日】2014年3月31日
(71)【出願人】
【識別番号】306024805
【氏名又は名称】株式会社 林物産発明研究所
(72)【発明者】
【氏名】林 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】林 和志郎
(72)【発明者】
【氏名】林 宏三郎
(72)【発明者】
【氏名】林 加奈子
【テーマコード(参考)】
2D118
【Fターム(参考)】
2D118AA11
2D118AA12
2D118BA05
2D118BA07
(57)【要約】
【課題】 非常用施設として利用可能とする空間を堤防内部に備え、当該空間に対する免震機能を付与して成る多目的堤防の提供を図る。
【解決手段】 内部に複数の矩形状空間を形成することによって多目的堤防Aを形成し、当該空間は、堤防の長手方向に多数の矩形箱状空間を同堤防の長手方向に1列状に、或いは複数列状に列設したもの、更には、堤防の縦方向にも多段的に形成し、各空間の互いの対向間隙部分に、弾性緩衝材を介在させるように構成した免震機能を具え多目的堤防。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に複数の直方体状空間を形成することによって多目的堤防を形成し、当該空間は、堤防の長手方向に多数の直方体状空間を同堤防の長手方向に1列状に、或いは複数列状に列設したもの、更には、堤防の高さ方向にも多段的に形成したものとし、各空間の互いの対向間隙部分に対して、弾性緩衝材を埋め込むように構成した免震機能を具え多目的堤防。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非常用施設として利用する空間を堤防内部に備え、当該空間に対する免震機能を付与して成る多目的堤防に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば貯水用空間等、堤防内部に複数の空間を形成する技術は存在する(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−246714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の堤防、すなわち、内部を利用して複数の所要空間を形成するように構成した堤防は、地震に対する対応は何ら採られていないものである。 従って、強い地震が発生した場合、形成されている複数の空間の互いの位置にズレが発生してしまうこととなる。
【0005】
すなわち、例えば堤防の長手方向に多数の貯水槽等を列状に整然と並べて形成しておいた場合、若しくは、堤防の上下方向に独立空間を多段的に整然と形成しておいた場合、地震発生に伴う揺れ動きに基づき、その全長方向、或いは上下方向の「並び」の位置関係(例えば一直線状の整列保持)に崩れが生じてしまい、一直線状のものが蛇行状等歪んだものに転化してしまうことが予想される。
【0006】
本発明は、地震発生に伴い免震作用が発揮されて、上記したような事態発生を未然に阻止し、常に整然たる「並び」状態に保持されるように構成した、新規の「免震機能を具え多目的堤防」の提供を図ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は請求項1に記載のように、複数の直方体状空間を形成することによって多目的堤防を形成し、当該空間は、堤防の長手方向に多数の直方体状空間を同堤防の長手方向に1列状に、或いは複数列状に列設したもの、更には、堤防の高さ方向にも多段的に形成したものとし、各空間の互いの対向間隙部分に対して、弾性緩衝材を埋め込むように構成した免震機能を具え多目的堤防に係るものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、複数の直方体状空間を形成することによって多目的堤防を形成し、当該空間は、堤防の長手方向に多数の直方体状空間を同堤防の長手方向に1列状に、或いは複数列状に列設したもの、更には、堤防の高さ方向にも多段的に形成したものとし、各空間の互いの対向間隙部分に対して、弾性緩衝材を埋め込むように構成したから、例えば直下型地震が発生した場合は、弾性緩衝材の上下方向の伸縮運動で、また、通常の横揺れ地震が発生した場合は、弾性緩衝材の横揺れ運動で、夫々の震動を吸収し、地震により位置ずれが生じることを阻止し、地震が終わった際には、当該弾性緩衝材の復元力に基づき元状に復帰し、互いの位置的ズレが生じることを阻止することとなる。
【0009】
従って、本発明によれば、地震発生に対しても多目的に利用される空間相互のズレ動きが阻止され、常に整然たる列設状態に保たれることとなるから、非常用多目的堤防としての価値を著しく高めることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の全体を表した説明用縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図において、Aは海岸線等に構築する津波阻止用等の非常用堤防であって、その内部には所要目的を達成するための複数の直方体空間を形成することによって、多目的堤防として機能する様に構成してある。
【0012】
そして、上記した空間は、堤防の長手方向に多数の直方体状空間を同堤防の長手方向に1列状に、或いは複数列状に列設したもの、更には、堤防の高さ方向にも多段的に形成したものである。
【0013】
図面に示す実施例にあっては、最下位にある空間を旱魃時の農業水貯蔵用空間B、及び、渇水時の生活用水貯蔵用空間Cとして使用し、その上段を、管理人出入り口Mを設けることによって植物工場・養殖所構成用空間Dとして使用し、堤防上面寄りには緊急用備品収容用空間Eとするように想定してある。
【0014】
そして、本発明は上記のような空間設定に限定されるものではない。 然し乍、各空間の隣り合う面は等距離にして水平または垂直な対向面とするように設定することが好ましい。
【0015】
ところで、本発明の要旨とするところは、堤防に対して多目的空間を形成し、この空間相互に免震作用を付与する様に構成したことにある。 すなわち本発明は、各空間の互いの対向間隙部分に、弾性緩衝材を埋め込む(介在させる)ように構成したことを要旨構成とするものである。 なお、当該介在とは、対向間隔部分にズレ動かない様に固く弾力的に挟み込む手段と、その挟み込み対象空間に対する接触面を、接着剤等を用いて固定する手段を含むものとする。 要は、地震発生時に弾性緩衝材の上下面が、空すべりしない様に、対象空間に対して安定的な接触が成されていることが重要である。
【0016】
図1に於いては、農業水貯蔵用空間Bと渇水時の生活用水貯蔵用空間Cの互いの側面部の間隙部分に弾性緩衝材P1を、また、農業水貯蔵用空間Bと渇水時の生活用水貯蔵用空間Cの上面と、植物工場・養殖所構成用空間Dの下面との間隙部分に、弾性緩衝材P2及びP3を、そして、
図2において示す、堤防の長さ方向に並べてある植物工場・養殖所構成用空間Dの各対向側面の部分には弾性緩衝材P4を、夫々埋め込むように構成してある。
【0017】
そして、当該弾性緩衝材は、上下方向への伸縮性と横方向への振れ動き性を具えたもの、例えばゴム材、ウレタン材、コイルスプリング材等で形成する。
【0018】
これにより、例えば直下型地震が発生した場合は、弾性緩衝材の上下方向の伸縮運動で、また、通常の横揺れ地震が発生した場合は、弾性緩衝材の横揺れ運動で、夫々の震動を吸収し、地震により位置ずれが生じることを阻止し、地震が終わった際には、当該弾性緩衝材の復元力に基づき元状に復帰し、互いの位置的ズレが生じることを阻止することとなる。
【0019】
なお、図面中、Fはソーラー発電用パネル、Gは緑化用植え込みを示す。
【符号の説明】
【0020】
A 非常用堤防
B 農業水貯蔵用空間
C 生活用水貯蔵用空間
D 植物工場・養殖所構成用空間
E 緊急用備品収容用空間
M 管理人出入り口
P1 弾性緩衝材
P2 弾性緩衝材
P3 弾性緩衝材
P4 弾性緩衝材