(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-194254(P2015-194254A)
(43)【公開日】2015年11月5日
(54)【発明の名称】コイル用線材およびコイル成形体
(51)【国際特許分類】
F16L 1/00 20060101AFI20151009BHJP
B32B 27/04 20060101ALI20151009BHJP
F16L 55/16 20060101ALI20151009BHJP
B29C 63/32 20060101ALI20151009BHJP
【FI】
F16L1/00 J
B32B27/04
F16L55/16
B29C63/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-54121(P2015-54121)
(22)【出願日】2015年3月18日
(31)【優先権主張番号】特願2014-69642(P2014-69642)
(32)【優先日】2014年3月28日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】505142964
【氏名又は名称】クボタシーアイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090181
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 義人
(72)【発明者】
【氏名】越智 聡
(72)【発明者】
【氏名】堀 智明
(72)【発明者】
【氏名】中村 良一郎
(72)【発明者】
【氏名】山本 哲也
(72)【発明者】
【氏名】西島 賢太朗
(72)【発明者】
【氏名】原田 孝知
【テーマコード(参考)】
3H025
4F100
4F211
【Fターム(参考)】
3H025EA01
3H025EB21
3H025ED02
4F100AD11A
4F100AD11C
4F100AS00B
4F100BA03
4F100BA06
4F100DH01A
4F100DH01C
4F100GB90
4F211AD08
4F211AG08
4F211AH43
4F211SA05
4F211SC03
4F211SD01
4F211SD06
(57)【要約】
【構成】 コイル成形体(10)のためのコイル用線材(12)は、炭素繊維を長手方向に配向した炭素繊維強化プラスチックで形成した表面層(12a)および表面層(12a)の間に設けられる中間層(10b)を含み、中間層は表面層より厚い。
【効果】 土中への埋設や既設管内へ敷設するのに適したコイル用線材およびコイル成形体が得られる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイル成形体のためのコイル用線材であって、
炭素繊維を長手方向に配向した炭素繊維強化プラスチックで形成した表面層、および
前記表面層の間に設けられ、かつ前記表面層の厚みより厚い中間層を備える、コイル用線材。
【請求項2】
前記コイル成形体を土中に埋設したとき、コイル成形体に埋設土圧に対する耐外圧強度を付与する、請求項1記載のコイル用線材。
【請求項3】
請求項1または2のコイル用線材を、螺旋状に形成した、コイル成形体。
【請求項4】
既設管内に敷設して既設管を更生するためのコイル成形体であって、請求項1または2のコイル用線材を、外径が前記既設管の内径よりやや小さくまたはそれと同じか、それよりやや大きい螺旋状に形成した、コイル成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コイル用線材およびコイル成形体に関し、特にたとえば、老朽化した既設管を更生するために既設管内に敷設する、コイル成形体およびコイル成形体を形成するコイル用線材に関する。
【背景技術】
【0002】
この発明の背景となる背景技術の一例が、特許文献1‐4などに開示されている。この特許文献1‐4の技術では、既設管内にコイル成形体を敷設し、コイル成形体の内部にライニング材をライニングすることによって、既設管を更生する。
【特許文献1】特開2011‐158087号[F16L 1/00 B29C 63/34 F16L 55/16]
【特許文献2】特開2013‐202887号[B29C 63/32 F16L 1/00]
【特許文献3】特開2013‐204703号[F16L 1/00 B29C 63/34]
【特許文献4】特開2013‐226808号[B29C 63/34 F16L 55/16, 1/00]
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この発明の主たる目的は、新規な、コイル用線材およびコイル成形体を提供することである。
【0004】
この発明の他の目的は、既設管内に敷設して既設管を更生するのに好適する、コイル成形体およびコイル用線材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下の構成を採用した。なお、括弧内の参照符号および補足説明などは、本発明の理解を助けるために後述する実施の形態との対応関係を示したものであって、本発明を何ら限定するものではない。
【0006】
第1の発明は、コイル成形体のためのコイル用線材であって、炭素繊維を長手方向に配向した炭素繊維強化プラスチックで形成した表面層、および表面層の間に設けられ、かつ表面層の厚みより厚い中間層を備える、コイル用線材である。
【0007】
第1の発明では、炭素繊維強化プラスチックで表面層(12a)を形成する。このときの炭素繊維の配向方向はコイル用線材の長手方向である。中間層(12b)をたとえばポリエステル繊維で形成する。
【0008】
第1の発明では、長手方向の曲げ外力が掛かったときに高い応力が発生する表面層(12a)を、高価な高強度の炭素繊維強化プラスチックを少量用いて比較的肉薄に形成し、応力が小さい中間層(12b)を安価な素材たとえばポリエステル繊維を多量用いて比較的肉厚に形成して、曲げへの抵抗力(断面二次モーメント)を高めることによって、長手方向に対する曲げ強度を大きくするとともに、長期曲げクリープ特性を向上させる。
【0009】
第2の発明は、第1の発明に従属し、コイル成形体を土中に埋設したとき、コイル成形体に埋設土圧に対する耐外圧強度を付与する、コイル用線材である。
【0010】
第3の発明は、第1または2の発明のコイル用線材を螺旋状に形成した、コイル成形体である。
【0011】
第4の発明は、既設管内に敷設して既設管を更生するためのコイル成形体であって、第1または2の発明のコイル用線材を外径が既設管の内径よりやや大きい螺旋状に形成した、コイル成形体である。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、高強度のコイル用線材が比較的安価に得られ、したがって、土中への埋設や既設管内に敷設して既設管を更生するのに好適する、コイル成形体を得られる。
【0013】
この発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1はこの発明の一実施例のコイル成形体を示し、
図1(a)は定尺型のコイル成形体を示し、
図1(b)は長尺のコイル成形体を示す。
【
図2】
図2は
図1実施例のコイル成形体を形成する、この発明の一実施例のコイル用線材を示す概略図である。
【
図3】
図3は
図2実施例のコイル用線材の表面層に曲げ外力が掛かった状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1を参照して、この発明の一実施例のコイル成形体10は、
図2に示すような、長手のコイル用線材12を螺旋状に巻いたものであり、
図1(a)のような定尺型のコイル成形体10および
図1(b)の長尺型のコイル成形体10のいずれにおいても、コイル成形体の外径は、更生すべき老朽化した既設管(図示せず)の内径よりやや小さくまたはそれと同じか、それよりやや大きく設定される。
【0016】
なお、この発明のコイル成形体を利用して更生すべき既設管としては種々のものが考えられるが、たとえば、上下水道、ガス、通信ケーブル保護または電力ケーブル保護等の用途の既設管路であってよいし、また、これらの材質は、鉄筋コンクリート管(ヒューム管)、陶管、鋳鉄管、鋼管ならびに塩ビ管のような合成樹脂管等の材料で構成されるものであってよい。
【0017】
また、
図1のようなコイル成形体10を既設管内に敷設して既設管を更生する方法としては、先に挙げた特許文献1‐4などの方法を利用すればよい。
【0018】
図1に示すコイル成形体10は、
図2に示すような、長手のコイル用線材12を用いて形成する。コイル用線材12は、表面層12aと、これらの間の中間層12bからなり、表面層12aは、ともに、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)で形成される。炭素繊維の配向はコイル用線材12の長手方向である。中間層12bは、この実施例では、同じく長手方向が繊維の配向であるポリエステル繊維で形成される。
【0019】
ただし、中間層12bの材質はポリエステル繊維に限られるものではない。他に、たとえばガラス繊維、エポキシ樹脂などが利用可能である。繊維を使用する場合、表面層と異なる方向に配向させてもよいし、無配向でもよい。
【0020】
コイル成形体10を用いて更生した更生管としての代表的な要求性能は、(1) 新管(たとえば塩ビ管)と同等以上の扁平強度を有すること、(2) 新管(ヒューム管など)と同等以上の流下性能を有すること(断面縮小は、たとえばφ450でφ408まで)である。他方で、コイル成形体10はできるだけ安価である必要がある。
【0021】
発明者等は、
図2のコイル用線材12を用いたコイル成形体10で、このような要求性能を満足することを確認している。つまり、コイル成形体10に扁平外力が掛かったとき、すなわち
図3に示すようにコイル用線材12の表面層12aに曲げ外力が掛かったとき、高い応力が発生する表面層12aを、高価な高強度の炭素繊維強化プラスチックを少量用いて比較的肉薄に形成し、応力が小さい中間層12bを安価な素材たとえばポリエステル繊維を多量用いて比較的肉厚に形成して、曲げへの抵抗力(断面二次モーメント)を高めることによって、扁平強度が大きくなるとともに、長期曲げクリープ特性が向上する。したがって、このようなコイル用線材12で形成したコイル成形体10を土中に埋設したとき、コイル用線材12は、コイル成形体10に、埋設土圧に対する十分な耐外圧強度を付与することができる。
【0022】
発明者等の実験によれば、経済性と性能を考慮すれば、表面層12aの厚みと中間層12bの厚みの比率は、コイル用線材12の全体の厚みを「1」としたとき、0.05‐0.15:0.7‐0.9:0.05‐0.15が適当であり、この比率は、コイル成形体10の外径すなわち既設管の呼び径が変化してもあまり変化しない。
【0023】
なお、この発明に従ったコイル成形体は、実施例のような既設管の更生以外の用途にも使用可能である。その場合には、コイル成形体の径は任意に設定可能である。他の用途としては、土中に埋設する有孔管を代替する用途が考えられる。その場合、コイル成形体10のコイル用線材12どうしの隙間を通して、コイル成形体10内から水が外部に流出し、あるいは外部の水がコイル成形体10内に流入する。
【0024】
さらに、このようなコイル成形体10は、
図1に示すように軸線を水平方向にする用途の他、軸線が垂直方向になる用途にも利用可能である。
【符号の説明】
【0025】
10 …コイル成形体
12 …コイル用線材
12a …表面層
12b …中間層