【課題】電動機を冷却した後の冷媒液を、蒸発器において従来有効な伝熱面積として作用していなかった伝熱管部位に散布することができ、蒸発器の伝熱性能を向上させることができるターボ冷凍機を提供する。
冷水から熱を奪って冷媒が蒸発し冷凍効果を発揮する蒸発器と、冷媒を羽根車によって圧縮するターボ圧縮機と、ターボ圧縮機を駆動する電動機と、圧縮された冷媒ガスを冷却水で冷却して凝縮させる凝縮器とを備えたターボ冷凍機において、
前記蒸発器は、一端部側に冷水入口ノズルおよび冷水出口ノズルを有した2パスの蒸発器からなるか、または一端部側に冷水入口ノズルを有し他端部側に冷水出口ノズルを有した3パスの蒸発器からなり、
前記蒸発器が2パスの蒸発器の場合には、前記蒸発器に冷媒液を供給する冷媒供給配管を前記蒸発器の冷水入口ノズルおよび冷水出口ノズルの反対側に配置し、
前記蒸発器が3パスの蒸発器の場合には、前記蒸発器に冷媒液を供給する冷媒供給配管を前記蒸発器の冷水出口ノズル側に配置したことを特徴とするターボ冷凍機。
前記凝縮器から前記電動機に冷却用の冷媒液を供給し、前記冷媒供給配管を前記電動機に接続して前記電動機を冷却した後の冷媒液を前記蒸発器に供給することを特徴とする請求項1に記載のターボ冷凍機。
前記蒸発器の内部に、前記冷媒供給配管に接続されるとともに伝熱管群の上方から冷媒液を散布する冷媒散布ヘッダを設けたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のターボ冷凍機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ターボ冷凍機においては、蒸発器内の冷媒の沸騰状態は、不均一である。例えば、冷水2パスの蒸発器においては、冷水ノズル側の方が、冷媒と冷水の温度差が大きいため、沸騰が激しく、冷媒液面が高くなり、伝熱管が冷媒液に十分浸される。一方、冷水ノズル反対側は、前述の温度差が小さいため、沸騰状態が穏やかであり、冷媒液面が低下して、上段に配置される伝熱管が冷媒液に浸されないで露出した状態となる。
【0007】
図15は、冷水2パスの蒸発器を示す模式的断面図である。
図15に示すように、蒸発器3は、円筒形の缶胴31と缶胴31の両端部に設けられた管板32,32とにより形成された空間内に、多数の伝熱管33を配列した伝熱管群を配置して構成されている。伝熱管33は、内部に冷水が流通するようになっており、缶胴31の長手方向に延びている。管板32,32には、それぞれヘッダ部35R,35Lが接続されている。ヘッダ部35Rは仕切板(図示せず)により上下に区画されており、ヘッダ部35Rの下部には冷水入口ノズル35
INが設けられ、ヘッダ部35Rの上部には冷水出口ノズル35
OUTが設けられている。多数の伝熱管33は、冷水入口ノズル35
INに連通する下段の伝熱管群と冷水出口ノズル35
OUTに連通する上段の伝熱管群を形成している。冷水は、ヘッダ部35Rの冷水入口ノズル35
INから流入して下段の伝熱管群を流れた後にヘッダ部35Lで折り返し、上段の伝熱管群を流れた後に冷水出口ノズル35
OUTから流出するようになっている。
【0008】
図15に示すように、冷水2パスの蒸発器3においては、冷水入口ノズル35
INと冷水出口ノズル35
OUTがある冷水ノズル側の方が、冷媒と冷水の温度差が大きいため、沸騰が激しく、冷媒液面が高くなり、伝熱管33が冷媒液に十分浸される。一方、冷水ノズル反対側は、前述の温度差が小さいため、沸騰状態が穏やかであり、冷媒液面が低下して、上段の伝熱管33が冷媒液に浸されないで露出した状態となる。
したがって、同じ伝熱管でも、冷水ノズル反対側の部位は、伝熱面積として有効に働いていないという問題があった。その結果、蒸発器の伝熱性能が低下し、冷凍機の効率低下が生じていた。
【0009】
また、上述したように、従来の技術では、電動機を冷却した後の冷却冷媒液は、蒸発器に戻されるが、前述の伝熱に寄与しない冷水ノズル反対側の伝熱管の上部に積極的に戻す処置を講じていなかった。逆に、冷媒液に十分浸された伝熱管部位に電動機を冷却した後の冷媒液を戻していたので、折角、冷水の冷却源となりうる冷媒液を有効活用できていなかった。
【0010】
本発明は、上述の事情に鑑みなされたもので、冷媒液を、蒸発器において従来有効な伝熱面積として作用していなかった伝熱管部位に散布することができ、蒸発器の伝熱性能を向上させることができるターボ冷凍機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の目的を達成するため、本発明のターボ冷凍機は、冷水から熱を奪って冷媒が蒸発し冷凍効果を発揮する蒸発器と、冷媒を羽根車によって圧縮するターボ圧縮機と、ターボ圧縮機を駆動する電動機と、圧縮された冷媒ガスを冷却水で冷却して凝縮させる凝縮器とを備えたターボ冷凍機において、前記蒸発器は、一端部側に冷水入口ノズルおよび冷水出口ノズルを有した2パスの蒸発器からなるか、または一端部側に冷水入口ノズルを有し他端部側に冷水出口ノズルを有した3パスの蒸発器からなり、前記蒸発器が2パスの蒸発器の場合には、前記蒸発器に冷媒液を供給する冷媒供給配管を前記蒸発器の冷水入口ノズルおよび冷水出口ノズルの反対側に配置し、前記蒸発器が3パスの蒸発器の場合には、前記蒸発器に冷媒液を供給する冷媒供給配管を前記蒸発器の冷水出口ノズル側に配置したことを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、蒸発器に冷媒液を供給する冷媒供給配管を2パスの蒸発器の冷水ノズル反対側に配置することにより、冷媒液を、蒸発器において従来有効な伝熱面積として作用していなかった冷水ノズル反対側の伝熱管部位に積極的に散布することができる。これにより、蒸発器の伝熱性能を向上させることができ、冷凍機の効率改善が可能となる。また、冷媒液を供給する冷媒供給配管を3パスの冷水出口ノズル側に配置することにより、冷媒液を、蒸発器において従来有効な伝熱面積として作用していなかった冷水出口ノズル側の伝熱管部位に積極的に散布することができる。これにより、蒸発器の伝熱性能を向上させることができ、冷凍機の効率改善が可能となる。
【0013】
本発明の好ましい態様によれば、前記凝縮器から前記電動機に冷却用の冷媒液を供給し、前記冷媒供給配管を前記電動機に接続して前記電動機を冷却した後の冷媒液を前記蒸発器に供給することを特徴とする。
本発明によれば、電動機を冷却した後の冷媒液を、蒸発器において従来有効な伝熱面積として作用していなかった伝熱管部位に積極的に散布することができる。これにより、蒸発器の伝熱性能を向上させることができ、冷凍機の効率改善が可能となる。
【0014】
本発明の好ましい態様によれば、前記冷媒供給配管を前記蒸発器の底部に接続するとともに前記冷媒供給配管に冷媒散布ポンプを設けたことを特徴とする。
本発明によれば、蒸発器の底部から供給された冷媒液を、蒸発器において従来有効な伝熱面積として作用していなかった伝熱管部位に積極的に散布することができる。これにより、蒸発器の伝熱性能を向上させることができ、冷凍機の効率改善が可能となる。
【0015】
本発明の好ましい態様によれば、前記冷媒供給配管を前記エコノマイザの底部に接続したことを特徴とする。
本発明によれば、エコノマイザの底部から供給された冷媒液を、蒸発器において従来有効な伝熱面積として作用していなかった伝熱管部位に積極的に散布することができる。これにより、蒸発器の伝熱性能を向上させることができ、冷凍機の効率改善が可能となる。
【0016】
本発明の好ましい態様によれば、前記冷媒供給配管を前記凝縮器の底部に接続したことを特徴とする。
本発明によれば、凝縮器の底部から供給された冷媒液を、蒸発器において従来有効な伝熱面積として作用していなかった伝熱管部位に積極的に散布することができる。これにより、蒸発器の伝熱性能を向上させることができ、冷凍機の効率改善が可能となる。
【0017】
本発明の好ましい態様によれば、前記冷媒供給配管を複数個に分岐して分岐端を前記蒸発器に接続したことを特徴とする。
本発明によれば、冷媒供給配管を複数個に分岐して2パスの蒸発器の冷水ノズル反対側(3パスの蒸発器の冷水出口ノズル側)に接続することにより、蒸発器の長手方向の複数の位置で冷媒液を散布することができる。したがって、冷水ノズル反対側(又は冷水出口ノズル側)の伝熱管群の広い範囲に亘って冷媒液を散布することができる。
【0018】
本発明の好ましい態様によれば、前記蒸発器の内部に、前記冷媒供給配管に接続されるとともに伝熱管群の上方から冷媒液を散布する冷媒散布ヘッダを設けたことを特徴とする。
本発明によれば、冷媒散布ヘッダから2パスの蒸発器にあっては冷水ノズル反対側(3パスの蒸発器にあっては冷水出口ノズル側)の冷媒液に浸されずに露出した伝熱管に散布される。散布された冷媒液は、冷水と熱交換することで冷凍効果に寄与した後、蒸発ガス化して、圧縮機に導入される。このように、冷媒散布ヘッダを介して、冷媒液に浸されずに露出した伝熱管に万遍なく冷媒液を散布することができるので、蒸発器の伝熱性能が向上するため、冷凍機の効率向上が可能になる。
【0019】
本発明の好ましい態様によれば、前記冷媒散布ヘッダは、前記蒸発器の長手方向に対して直交する方向に延びていることを特徴とする。
本発明の好ましい態様によれば、前記冷媒散布ヘッダは、冷媒液散布用の複数の切欠き又は孔を有したパイプ又は筒状部材からなることを特徴とする。
【0020】
本発明の好ましい態様によれば、前記冷媒供給配管を複数個に分岐して分岐端に、それぞれ前記冷媒散布ヘッダを接続したことを特徴とする。
本発明によれば、蒸発器内に設置される冷媒散布ヘッダを蒸発器の長手方向に間隔をおいて複数個設けることにより、伝熱管群の広い範囲に亘って冷媒液を散布することができる。
【0021】
本発明の好ましい態様によれば、前記蒸発器は、上部に気液分離デミスタを備え、前記冷媒散布ヘッダは、前記気液分離デミスタと前記伝熱管群との間に配置されていることを特徴とする。
冷媒液を気液分離デミスタの上方から散布すると、蒸発器の伝熱性能向上のために散布した冷媒液が、既に冷水と熱交換して蒸発した冷媒ガスに同伴され、キャリーオーバーを生じる場合がある。本発明によれば、蒸発器内のキャリーオーバーを回避するために冷媒散布ヘッダを蒸発器内の気液分離デミスタの下方に配置している。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、以下に列挙する効果を奏する。
(1)冷媒液を、蒸発器において従来有効な伝熱面積として作用していなかった伝熱管部位に積極的に散布することができ、蒸発器の伝熱性能を向上させることができる。したがって、冷凍機の効率改善が可能となる。
(2)冷媒液を散布する冷媒散布ヘッダの位置を気液分離デミスタ下方に配置することで蒸発器のキャリーオーバーを回避することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係るターボ冷凍機の実施形態を
図1乃至
図14を参照して説明する。
図1乃至
図14において、同一または相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
図1は、本発明に係るターボ冷凍機の第1の実施形態を示す模式図である。
図1に示すように、ターボ冷凍機は、冷媒を圧縮するターボ圧縮機1と、圧縮された冷媒ガスを冷却水(冷却流体)で冷却して凝縮させる凝縮器2と、冷水(被冷却流体)から熱を奪って冷媒が蒸発し冷凍効果を発揮する蒸発器3と、凝縮器2と蒸発器3との間に配置される中間冷却器であるエコノマイザ4とを備え、これら各機器を冷媒が循環する冷媒配管5によって連結して構成されている。
【0025】
図1に示す実施形態においては、ターボ圧縮機1は、多段ターボ圧縮機から構成されており、電動機11によって駆動されるようになっている。ターボ圧縮機1は、電動機11が圧縮機とともに分割型のケーシングに密閉状態で収容されている半密閉型ターボ圧縮機である。ターボ圧縮機1は、流路8によってエコノマイザ4と接続されており、エコノマイザ4で分離された冷媒ガスはターボ圧縮機1の多段の圧縮段(この例では2段)の中間部分(この例では一段目と二段目の間の部分)に導入されるようになっている。
【0026】
図1に示すように構成されたターボ冷凍機の冷凍サイクルでは、ターボ圧縮機1と凝縮器2と蒸発器3とエコノマイザ4とを冷媒が循環し、蒸発器3で得られる冷熱源で冷水が製造されて負荷に対応し、冷凍サイクル内に取り込まれた蒸発器3からの熱量および電動機11から供給されるターボ圧縮機1の仕事に相当する熱量が凝縮器2に供給される冷却水に放出される。一方、エコノマイザ4にて分離された冷媒ガスはターボ圧縮機1の多段圧縮段の中間部分に導入され、一段目圧縮機からの冷媒ガスと合流して二段目圧縮機により圧縮される。2段圧縮単段エコノマイザサイクルによれば、エコノマイザ4による冷凍効果部分が付加されるので、その分だけ冷凍効果が増加し、エコノマイザ4を設置しない場合に比べて冷凍効果の高効率化を図ることができる。
【0027】
図1に示すように、凝縮器2から冷媒液を電動機11に導く配管6が設置されている。配管6は電動機11のケーシング11cに接続されており、凝縮器2で凝縮した冷媒液が電動機11のケーシング11c内に導入されるようになっている。電動機11のケーシング11c内に導入された冷媒液は、ケーシング11c内を流れる間に一部が蒸発し、このときの蒸発潜熱を利用して電動機11の熱を奪い電動機11を冷却するようになっている。電動機11を含むターボ圧縮機1は蒸発器3の上方に設置されている。電動機11を冷却した後の冷媒液は、その位置ヘッドにより冷媒供給配管7によって蒸発器3に供給される。
【0028】
図1に示す実施形態では、蒸発器3は、
図15に示す蒸発器3と同様に2パスの蒸発器である。そして、電動機11を冷却した後の冷媒液を蒸発器3に供給する冷媒供給配管7を2パスの蒸発器3の冷水入口ノズル35
IN,冷水出口ノズル35
OUTの反対側に配置している。すなわち、
図1において、蒸発器3の左側の管板32の近くに冷媒供給配管7の出口を接続している。ここで、冷水入口ノズル35
IN,冷水出口ノズル35
OUTの反対側とは、缶胴31の長手方向の中心面に対して、冷水入口ノズル35
IN,冷水出口ノズル35
OUT側の缶胴と反対の面対称側の缶胴を表している。
本発明者らは、実験により、
図15の冷水入口ノズル35
IN,冷水出口ノズル35
OUTと反対側の管板32から缶胴全体の長さの略1/4の箇所に設置された確認用ガラス窓36及び蒸発器缶胴内に設置した液面センサ37により、蒸発器において有効な伝熱面積として作用していなかった伝熱管部位が缶胴の略中心から冷水入口ノズル35
IN,冷水出口ノズル35
OUT側の反対側であることを確認した。
反対側の位置については、略中心に限定されるものではなく、機器の設計条件の異なる機器毎に実験を行い、効果的な位置を適宜定めれば良い。
【0029】
このように、冷媒供給配管7を2パスの蒸発器3の冷水ノズル反対側に配置することにより、電動機11を冷却した後の冷媒液を、蒸発器3において従来有効な伝熱面積として作用していなかった冷水ノズル反対側の伝熱管部位に積極的に散布することができる。これにより、蒸発器3の伝熱性能を向上させることができ、冷凍機の効率改善が可能となる。
【0030】
図2は、本発明に係るターボ冷凍機の第2実施形態を示す模式図である。
図2に示すように、本実施形態においては、蒸発器3は3パスの蒸発器から構成されている。すなわち、蒸発器3において、冷水は、ヘッダ部35Rの冷水入口ノズル35
INから流入して下段の伝熱管群を流れた後にヘッダ部35Lで折り返し、中段の伝熱管群を流れた後にヘッダ部35Rで折り返し、さらに上段の伝熱管群を流れた後にヘッダ部35Lの冷水出口ノズル35
OUTから流出する。
本実施形態においては、電動機11を冷却した後の冷媒液を蒸発器3に供給する冷媒供給配管7を3パスの蒸発器3の冷水出口ノズル側に配置している。このように、冷媒供給配管7を3パスの冷水出口ノズル側に配置することにより、電動機11を冷却した後の冷媒液を、蒸発器3において従来有効な伝熱面積として作用していなかった冷水出口ノズル側の伝熱管部位に積極的に散布することができる。これにより、蒸発器3の伝熱性能を向上させることができ、冷凍機の効率改善が可能となる。
【0031】
図3は、本発明に係るターボ冷凍機の第3の実施形態を示す模式的断面図である。
図3に示すように、蒸発器3の内部には、電動機11を冷却した後の冷媒液を散布する冷媒散布ヘッダ12が設置されている。冷媒散布ヘッダ12は、2パスの蒸発器3においては冷水ノズルの反対側に配置され、3パスの蒸発器3においては冷水出口ノズル側に配置されている。
冷媒散布ヘッダ12は、冷媒供給配管7の下端に接続されたパイプ又は溝型鋼を溶接で組合せて形成された筒状部材からなり、蒸発器3の伝熱管群の上方にあって蒸発器3の長手方向と直交する方向に延びている。
【0032】
冷媒散布ヘッダ12には、伝熱管との相対位置を考慮した複数の切欠き又は孔12nを設け、冷媒液は、切欠き又は孔12nを通過して2パスの蒸発器3にあっては冷水ノズル反対側(3パスの蒸発器3にあっては冷水出口ノズル側)の冷媒液に浸されずに露出した伝熱管に散布される。散布された冷媒液は、冷水と熱交換することで冷凍効果に寄与した後、蒸発ガス化して、圧縮機に導入される。
このように、冷媒散布ヘッダ12を介して、冷媒液に浸されずに露出した伝熱管に万遍なく冷媒液を散布することができるので、蒸発器3の伝熱性能が向上するため、冷凍機の効率向上が可能になる。
【0033】
図4は、本発明に係るターボ冷凍機の第4の実施形態を示す模式図である。
図4に示すように、2パスの蒸発器3では、蒸発器3に冷媒液を供給する冷媒供給配管7を複数個に分岐して冷水ノズル反対側へ接続してもよい。なお、3パスの蒸発器では、冷媒供給配管7を複数個に分岐して冷水出口ノズル側へ接続する。このように、冷媒供給配管7を複数個に分岐して2パスの蒸発器3の冷水ノズル反対側(3パスの蒸発器の冷水出口ノズル側)に接続することにより、蒸発器3の長手方向の複数の位置で冷媒液を散布することができる。したがって、冷水ノズル反対側(又は冷水出口ノズル側)の伝熱管群の広い範囲に亘って冷媒液を散布することができる。
【0034】
図5は、本発明に係るターボ冷凍機の第5の実施形態を示す模式的斜視図である。本実施形態において、蒸発器3内に設置される冷媒散布ヘッダ12を蒸発器の長手方向に間隔をおいて複数個設けている。このように、蒸発器3の長手方向の複数の位置に冷媒散布ヘッダ12を設けることにより、伝熱管群の広い範囲に亘って冷媒液を散布することができる。
【0035】
冷水ノズル反対側(2パス蒸発器)あるいは冷水出口ノズル側(3パス蒸発器)の伝熱管部位が有効な伝熱面として作動していないことは、本発明者らの実験から明らかであり、
図1乃至5に示すように、本発明によれば、冷媒液に浸されずに露出した伝熱管部位に対して、積極的に電動機11からの冷媒液を散布して蒸発器3の伝熱性能向上を図ることができる。
【0036】
また、蒸発器には、通常、沸騰蒸発した冷媒ガスと、それに同伴される冷媒液滴を分離する気液分離デミスタが設けられる場合が多い。これは、冷媒液が蒸発した冷媒ガスに同伴されて圧縮機に吸込まれるいわゆるキャリーオーバーを回避するためである。キャリーオーバーが生じると、圧縮機の効率低下、ひいては、長期間、圧縮機羽根車に液滴が衝突することによって羽根車自体が損傷を受ける可能性があり、冷凍機の安定運転が継続できなくなる。
【0037】
図1乃至5に示す実施形態においては、電動機11からの冷媒液を気液分離デミスタの上方から散布している。このようにして蒸発器の伝熱性能向上のために散布した冷媒液が、既に冷水と熱交換して蒸発した冷媒ガスに同伴され、キャリーオーバーを生じる場合がある。蒸発器内のキャリーオーバーを回避するために前述の冷媒散布ヘッダ12を蒸発器内の気液分離デミスタの下方に配置しても良い。
【0038】
図6は、本発明に係るターボ冷凍機の第6の実施形態を示す模式図である。本実施形態においては、蒸発器内のキャリーオーバーを回避するために冷媒散布ヘッダ12を蒸発器3内の気液分離デミスタの下方に配置している。
【0039】
図7は、本発明に係るターボ冷凍機の第7の実施形態を示す模式図である。
図7に示すように、蒸発器3の底部から冷媒液を蒸発器3の上部に導く冷媒供給配管16が設置されている。冷媒供給配管16には冷媒散布ポンプ17が設けられている。
【0040】
図7に示す実施形態では、蒸発器3は、
図15に示す蒸発器3と同様に2パスの蒸発器である。そして、蒸発器3の底部から冷媒液を蒸発器3の上部に導く冷媒供給配管16を2パスの蒸発器3の冷水入口ノズル35
IN,冷水出口ノズル35
OUTの反対側に配置している。すなわち、
図7において、蒸発器3の左側の管板32の近くに冷媒供給配管16の出口を接続している。
【0041】
このように、冷媒供給配管16を2パスの蒸発器3の冷水ノズル反対側に配置することにより、蒸発器3の底部から供給された冷媒液を、蒸発器3において従来有効な伝熱面積として作用していなかった冷水ノズル反対側の伝熱管部位に積極的に散布することができる。これにより、蒸発器3の伝熱性能を向上させることができ、冷凍機の効率改善が可能となる。
【0042】
図8は、本発明に係るターボ冷凍機の第8の実施形態を示す模式図である。
図8に示すように、本実施形態においては、蒸発器3は3パスの蒸発器から構成されている。すなわち、蒸発器3において、冷水は、ヘッダ部35Rの冷水入口ノズル35
INから流入して下段の伝熱管群を流れた後にヘッダ部35Lで折り返し、中段の伝熱管群を流れた後にヘッダ部35Rで折り返し、さらに上段の伝熱管群を流れた後にヘッダ部35Lの冷水出口ノズル35
OUTから流出する。
本実施形態においては、蒸発器3の底部から冷媒液を蒸発器3の上部に導く冷媒供給配管16を3パスの蒸発器3の冷水出口ノズル側に配置している。このように、冷媒供給配管16を3パスの冷水出口ノズル側に配置することにより、蒸発器3の底部から供給された冷媒液を、蒸発器3において従来有効な伝熱面積として作用していなかった冷水出口ノズル側の伝熱管部位に積極的に散布することができる。これにより、蒸発器3の伝熱性能を向上させることができ、冷凍機の効率改善が可能となる。
【0043】
図9は、本発明に係るターボ冷凍機の第9の実施形態を示す模式的断面図である。
図9に示すように、蒸発器3の内部には、蒸発器3の底部から供給された冷媒液を散布する冷媒散布ヘッダ12が設置されている。冷媒散布ヘッダ12は、2パスの蒸発器3においては冷水ノズルの反対側に配置され、3パスの蒸発器3においては冷水出口ノズル側に配置されている。
冷媒散布ヘッダ12は、冷媒供給配管16の下端に接続されたパイプ又は溝型鋼を溶接で組合せて形成された筒状部材からなり、蒸発器3の伝熱管群の上方にあって蒸発器3の長手方向と直交する方向に延びている。
【0044】
冷媒散布ヘッダ12には、伝熱管との相対位置を考慮した複数の切欠き又は孔12nを設け、蒸発器3の底部から供給された冷媒液は、切欠き又は孔12nを通過して2パスの蒸発器3にあっては冷水ノズル反対側(3パスの蒸発器3にあっては冷水出口ノズル側)の冷媒液に浸されずに露出した伝熱管に散布される。散布された冷媒液は、冷水と熱交換することで冷凍効果に寄与した後、蒸発ガス化して、圧縮機に導入される。
このように、冷媒散布ヘッダ12を介して、冷媒液に浸されずに露出した伝熱管に万遍なく冷媒液を散布することができるので、蒸発器3の伝熱性能が向上するため、冷凍機の効率向上が可能になる。
【0045】
図10は、本発明に係るターボ冷凍機の第10の実施形態を示す模式図である。
図10に示すように、2パスの蒸発器3では、冷媒供給配管16を複数個に分岐して冷水ノズル反対側へ接続してもよい。なお、3パスの蒸発器では、冷媒供給配管16を複数個に分岐して冷水出口ノズル側へ接続する。このように、冷媒供給配管16を複数個に分岐して2パスの蒸発器3の冷水ノズル反対側(3パスの蒸発器の冷水出口ノズル側)に接続することにより、蒸発器3の長手方向の複数の位置で冷媒液を散布することができる。したがって、冷水ノズル反対側(又は冷水出口ノズル側)の伝熱管群の広い範囲に亘って冷媒液を散布することができる。
【0046】
図11は、本発明に係るターボ冷凍機の第11の実施形態を示す模式的斜視図である。本実施形態において、蒸発器3内に設置される冷媒散布ヘッダ12を蒸発器の長手方向に間隔をおいて複数個設けている。このように、蒸発器3の長手方向の複数の位置に冷媒散布ヘッダ12を設けることにより、伝熱管群の広い範囲に亘って冷媒液を散布することができる。
【0047】
冷水ノズル反対側(2パス蒸発器)あるいは冷水出口ノズル側(3パス蒸発器)の伝熱管部位が有効な伝熱面として作動していないことは、本発明者らの実験から明らかであり、
図7乃至11に示すように、本発明によれば、冷媒液に浸されずに露出した伝熱管部位に対して、積極的に蒸発器3の底部からの冷媒液を散布して蒸発器3の伝熱性能向上を図ることができる。
【0048】
また、蒸発器には、通常、沸騰蒸発した冷媒ガスと、それに同伴される冷媒液滴を分離する気液分離デミスタが設けられる場合が多い。これは、冷媒液が蒸発した冷媒ガスに同伴されて圧縮機に吸込まれるいわゆるキャリーオーバーを回避するためである。キャリーオーバーが生じると、圧縮機の効率低下、ひいては、長期間、圧縮機羽根車に液滴が衝突することによって羽根車自体が損傷を受ける可能性があり、冷凍機の安定運転が継続できなくなる。
【0049】
図7乃至11に示す実施形態においては、蒸発器3の底部からの冷媒液を気液分離デミスタの上方から散布している。このようにして蒸発器の伝熱性能向上のために散布した冷媒液が、既に冷水と熱交換して蒸発した冷媒ガスに同伴され、キャリーオーバーを生じる場合がある。蒸発器内のキャリーオーバーを回避するために前述の冷媒散布ヘッダ12を蒸発器内の気液分離デミスタの下方に配置しても良い。
【0050】
図12は、本発明に係るターボ冷凍機の第12の実施形態を示す模式図である。本実施形態においては、蒸発器内のキャリーオーバーを回避するために冷媒散布ヘッダ12を蒸発器3内の気液分離デミスタの下方に配置している。
【0051】
図13は、本発明に係るターボ冷凍機の第13の実施形態を示す模式図である。本実施形態においては、エコノマイザ4の底部から冷媒液を蒸発器3の上部に導く冷媒供給配管18が設置されている。蒸発器3は、
図15に示す蒸発器3と同様に2パスの蒸発器である。そして、エコノマイザ4の底部から冷媒液を蒸発器3の上部に導く冷媒供給配管18を2パスの蒸発器3の冷水入口ノズル35
IN,冷水出口ノズル35
OUTの反対側に配置している。すなわち、
図13において、蒸発器3の左側の管板32の近くに冷媒供給配管18の出口を接続している。
【0052】
このように、冷媒供給配管18を2パスの蒸発器3の冷水ノズル反対側に配置することにより、エコノマイザ4の底部から供給された冷媒液を、蒸発器3において従来有効な伝熱面積として作用していなかった冷水ノズル反対側の伝熱管部位に積極的に散布することができる。これにより、蒸発器3の伝熱性能を向上させることができ、冷凍機の効率改善が可能となる。
【0053】
図14は、本発明に係るターボ冷凍機の第14の実施形態を示す模式図である。本実施形態においては、凝縮器2の底部から冷媒液を蒸発器3の上部に導く冷媒供給配管19が設置されている。蒸発器3は、
図15に示す蒸発器3と同様に2パスの蒸発器である。そして、凝縮器2の底部から冷媒液を蒸発器3の上部に導く冷媒供給配管19を2パスの蒸発器3の冷水入口ノズル35
IN,冷水出口ノズル35
OUTの反対側に配置している。すなわち、
図14において、蒸発器3の左側の管板32の近くに冷媒供給配管19の出口を接続している。
【0054】
このように、冷媒供給配管19を2パスの蒸発器3の冷水ノズル反対側に配置することにより、凝縮器2の底部から供給された冷媒液を、蒸発器3において従来有効な伝熱面積として作用していなかった冷水ノズル反対側の伝熱管部位に積極的に散布することができる。これにより、蒸発器3の伝熱性能を向上させることができ、冷凍機の効率改善が可能となる。
【0055】
これまで本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術思想の範囲内において、種々の異なる形態で実施されてよいことは勿論である。