(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-194306(P2015-194306A)
(43)【公開日】2015年11月5日
(54)【発明の名称】焼却処理設備及び焼却処理方法
(51)【国際特許分類】
F23G 5/46 20060101AFI20151009BHJP
F23L 15/00 20060101ALI20151009BHJP
F23L 17/16 20060101ALI20151009BHJP
【FI】
F23G5/46 A
F23L15/00 Z
F23L17/16 A
F23G5/46 B
F23L15/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-72774(P2014-72774)
(22)【出願日】2014年3月31日
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100107478
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 薫
(72)【発明者】
【氏名】野邑 尚史
(72)【発明者】
【氏名】野島 智之
(72)【発明者】
【氏名】横田 修
(72)【発明者】
【氏名】村木 謙吾
(72)【発明者】
【氏名】堀井 孝浩
(72)【発明者】
【氏名】古北 克
【テーマコード(参考)】
3K023
3K065
【Fターム(参考)】
3K023QA11
3K023QA14
3K023QB03
3K023QB10
3K023QB19
3K023QC06
3K023QC08
3K065AA11
3K065AB01
3K065AC01
3K065BA06
3K065GA03
3K065GA12
3K065GA22
3K065GA27
3K065GA33
3K065GA53
(57)【要約】
【課題】タービン装置からの圧縮空気を燃焼用空気として利用しながらも、設備の大型化を招くことなく燃焼温度を調整でき、さらには大きな電力を消費する誘引送風機を設けることなく炉内を負圧に維持可能な焼却処理設備及び焼却処理方法を提供する。
【解決手段】流動用空気として高温の圧縮空気が供給される焼却炉2と、焼却炉の煙道に導かれる排ガスの保有熱により圧縮空気を予熱する熱交換器20と、熱交換器で予熱された高温の圧縮空気により回転するタービン31と、タービンの回転により第1熱交換器に圧縮空気を供給するコンプレッサ32とを含むタービン装置30とを備えている焼却処理設備であって、焼却炉に配置され、熱交換器20で予熱された高温の圧縮空気を炉内燃焼熱でさらに予熱する抽熱器50と、抽熱器の熱交換量を調整することにより、焼却炉の炉内燃焼温度を調整する温度調整機構70を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼用空気として高温の圧縮空気が供給される焼却炉と、
前記焼却炉の煙道に導かれる排ガスの保有熱により圧縮空気を予熱する熱交換器と、
前記熱交換器で予熱された高温の圧縮空気により回転するタービンと、前記タービンの回転により前記第1熱交換器に圧縮空気を供給するコンプレッサとを含むタービン装置と、
を備えている焼却処理設備であって、
前記焼却炉に配置され、前記熱交換器で予熱された高温の圧縮空気を炉内燃焼熱でさらに予熱する抽熱器と、
前記抽熱器の熱交換量を調整することにより、前記焼却炉の炉内燃焼温度を調整する温度調整機構を備えている焼却処理設備。
【請求項2】
前記温度調整機構は、前記第1熱交換器で予熱された圧縮空気と前記第1熱交換器で予熱される前の圧縮空気との混合比率を調整して前記抽熱器に供給する混合比率調整機構で構成されている請求項1記載の焼却処理設備。
【請求項3】
前記温度調整機構は、前記第1熱交換器で予熱された圧縮空気と前記第1熱交換器で予熱される前の圧縮空気とを、炉内に供給する圧縮空気の総量を一定にしながら混合比率を調整して前記抽熱器に供給する混合比率調整機構で構成されている請求項1記載の焼却処理設備。
【請求項4】
炉内燃焼熱及び/または排ガスの保有熱を回収して得られた運動エネルギーを用いて前記煙道に導かれた排ガスを誘引する排ガス誘引装置を備えている請求項1から3の何れかに記載の焼却処理設備。
【請求項5】
前記排ガス誘引装置は、前記煙道に導かれた排ガスを、前記タービンから排出された高温の圧縮空気の流れによって誘引するエジェクタで構成されている請求項4記載の焼却処理設備。
【請求項6】
前記排ガス誘引装置は、前記タービン装置の軸動力で回転軸が駆動される誘引送風機を備えて構成されている請求項4記載の焼却処理設備。
【請求項7】
前記コンプレッサから出力された圧縮空気を、前記タービンから排出された高温の圧縮空気で予熱する第2熱交換器を備え、前記第2熱交換器で予熱された圧縮空気を前記第1熱交換機に供給するように構成されている請求項1から6の何れかに記載の焼却処理設備。
【請求項8】
前記焼却炉で焼却処理される被処理物が高カロリーのバイオマスである請求項1から7の何れかに記載の焼却処理設備。
【請求項9】
タービンと連動するコンプレッサで圧縮空気を生成し、焼却炉の煙道に導かれる排ガスの保有熱により圧縮空気を予熱し、予熱された高温の圧縮空気でタービンを回転し、タービンを駆動した後の高温の圧縮空気を前記焼却炉へ燃焼用空気として供給する焼却処理方法であって、
前記タービンに供給される前の高温の圧縮空気を、前記焼却炉の炉内燃焼熱により予熱して、前記焼却炉の炉内燃焼温度を調整する焼却処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼却処理設備及び焼却処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、燃焼用圧縮空気や白煙防止用圧縮空気を生成し予熱器に供給するためのブロアを必要とせず、エネルギー効率に優れる廃棄物焼却設備及び処理方法を提供することを目的として、流動床式焼却炉と、流動床式焼却炉からの排ガスとの連続的なガス−ガス熱交換により流動床式焼却炉に供給する燃焼用圧縮空気の予熱を行う第1の予熱器と、第1の予熱器で加熱されて流動床式焼却炉に向かう燃焼用圧縮空気によってタービンを回転し、この回転によってコンプレッサで第1の予熱器に供給する圧縮空気の生成及び送風を行う第1の過給機となるタービン装置と、第1の予熱器より上流側に設けられ運転開始時にタービンを回転させる第1の始動用空気供給装置を備えた廃棄物処理設備が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4831309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された廃棄物処理設備で下水汚泥のようなバイオマスを焼却処理する場合には、地球温暖化の原因物質となる亜酸化窒素の発生量を抑制するために炉内燃焼温度を850℃以上の高温で焼却処理する必要がある。そのため、含水率の高い汚泥等を焼却処理する際には、燃焼バーナに化石燃料を供給して補助的に加熱する場合があった。
【0005】
しかし、含水率の低い下水汚泥等の高カロリーのバイオマスを焼却処理する場合には、逆に900℃を超えることもあり、処理対象物が焼結を開始して炉内内壁や煙道にクリンカが付着し、ガスの通流性が損なわれて閉塞に到る虞があった。
【0006】
そのために、炉内に水噴霧装置を設けて炉内の異常温度上昇を回避すると、発生蒸気により排ガス総量が増加して後段の排ガス処理設備の大型化を招き、設備の経済性を損ねるという問題があった。
【0007】
また、炉内を負圧に維持するために煙道に大きな電力を消費する誘引送風機を設ける必要があり、エネルギー効率を向上させるという点では、さらなる改良の余地もあった。
【0008】
さらに、誘引送風機を設置せずに燃焼用圧縮空気の残圧で煙道に排ガスを圧送する場合には、正圧となる炉室や煙道に配置される各排ガス処理設備から高温の排ガスが噴き出すことが無いように確実にシールする必要があり、そのために設備コストが上昇するという問題や、仮にシールが破れると高温の排ガスが噴き出して重大な事故につながる虞があるという問題もあった。
【0009】
本発明の目的は、上述した問題点に鑑み、タービン装置からの圧縮空気を燃焼用空気として利用しながらも、設備の大型化を招くことなく燃焼温度を調整でき、さらには大きな電力を消費する誘引送風機を設けることなく炉内を負圧に維持可能な焼却処理設備及び焼却処理方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の目的を達成するため、本発明による焼却処理システムの第一特徴構成は、特許請求の範囲の請求項1に記載した通り、燃焼用空気として高温の圧縮空気が供給される焼却炉と、前記焼却炉の煙道に導かれる排ガスの保有熱により圧縮空気を予熱する熱交換器と、前記熱交換器で予熱された高温の圧縮空気により回転するタービンと、前記タービンの回転により前記第1熱交換器に圧縮空気を供給するコンプレッサとを含むタービン装置と、を備えている焼却処理設備であって、前記焼却炉に配置され、前記熱交換器で予熱された高温の圧縮空気を炉内燃焼熱でさらに予熱する抽熱器と、前記抽熱器の熱交換量を調整することにより、前記焼却炉の炉内燃焼温度を調整する温度調整機構を備えている点にある。
【0011】
コンプレッサで生成された圧縮空気が第1熱交換器を経由してさらに抽熱器に送られ、抽熱器で炉内燃焼熱と熱交換される結果、炉内温度の異常な上昇が抑制される。温度調整機構は、例えば抽熱器に供給される圧縮空気量を調整することにより、炉内温度を850℃から900℃の範囲に保つことで、亜酸化窒素の発生量を低減させながらも排ガス量の増加を招くことなく炉壁や煙道へのクリンカの付着を回避することができるようになる。
【0012】
同第二の特徴構成は、同請求項2に記載した通り、上述の第一の特徴構成に加えて、前記温度調整機構は、前記第1熱交換器で予熱された圧縮空気と前記熱交換器で予熱される前の圧縮空気との混合比率を調整して前記抽熱器に供給する混合比率調整機構で構成されている点にある。
【0013】
混合比率調整機構によって、第1熱交換器で予熱された圧縮空気よりも第1熱交換器で予熱される前の圧縮空気の混合比率を大きくすれば、それだけ抽熱器での熱交換量が増して炉内燃焼温度を効果的に低下させることができる。
【0014】
同第三の特徴構成は、同請求項3に記載した通り、上述の第一の特徴構成に加えて、前記温度調整機構は、前記第1熱交換器で予熱された圧縮空気と前記第1熱交換器で予熱される前の圧縮空気とを、炉内に供給する圧縮空気の総量を一定にしながら混合比率を調整して前記抽熱器に供給する混合比率調整機構で構成されている点にある。
【0015】
混合比率調整機構によって、第1熱交換器で予熱された圧縮空気よりも第1熱交換器で予熱される前の圧縮空気の混合比率を大きくすれば、それだけ抽熱器での熱交換量が増して炉内燃焼温度を効果的に低下させることができ、しかも炉内に供給される圧縮空気の総量が一定に調整されるので、炉内に供給される圧縮空気で形成される燃焼状態を安定させることができる。
【0016】
同第四の特徴構成は、同請求項4に記載した通り、上述の第一から第三の何れかの特徴構成に加えて、炉内燃焼熱及び/または排ガスの保有熱を回収して得られた運動エネルギーを用いて前記煙道に導かれた排ガスを誘引する排ガス誘引装置を備えている点にある。
【0017】
第1熱交換器及び/または抽熱器によって排ガスの保有熱または燃焼熱を回収した高温の圧縮空気によってタービンが駆動され、タービンと連結されるコンプレッサが駆動されて圧縮空気が生成される。排ガス誘引装置は、このとき回収した排ガスの保有熱または燃焼熱から生成される運動エネルギーを用いることによって煙道に導かれた排ガスが誘引されるので、誘引送風機を駆動するための電力のような別途のエネルギーが不要になり、エネルギー効率を一層に向上させることができ、また炉内を負圧に維持できる。
【0018】
同第五の特徴構成は、同請求項5に記載した通り、上述した第四の特徴構成に加えて、前記排ガス誘引装置は、前記煙道に導かれた排ガスを、前記タービンから排出される高温の圧縮空気の流れよって誘引するエジェクタで構成されている点にある。
【0019】
タービンから排出され燃焼用空気として焼却炉に供給される高温の圧縮空気の一部がエジェクタの空気供給ポートに供給され、煙道の排ガスが真空ポートから吸引されてディフューザーに流出するようになるので、電力によって駆動される誘引送風機を備えなくても炉内が負圧に維持される。しかも、排ガスがディフューザーで高温の圧縮空気と混合して加熱されるので、排ガスの昇温及び湿度低下により、白防効果も併せて実現されるようになる。
【0020】
同第六の特徴構成は、同請求項6に記載した通り、上述した第四の特徴構成に加えて、前記排ガス誘引装置は、前記タービン装置の軸動力で回転軸が駆動される誘引送風機を備えて構成されている点にある。
【0021】
第1熱交換器によって排ガスの保有熱を回収した高温の圧縮空気によって駆動されるタービンの軸動力で誘引送風機が回転駆動されて煙道の排ガスが誘引される。つまり、誘引送風機を回転駆動するために別途の電力が不要になる。
【0022】
同第七の特徴構成は、同請求項7に記載した通り、上述した第一から第六の何れかの特徴構成に加えて、前記コンプレッサで生成された圧縮空気を、前記タービンから排出された高温の圧縮空気で予熱する第2熱交換器を備え、前記第2熱交換器で予熱された圧縮空気を前記第1熱交換機に供給するように構成されている点にある。
【0023】
第2熱交換器を設けることによってタービンに供給される圧縮空気の持ち込み熱量を高めることができ、コンプレッサによる圧縮空気の生成量を増すことが可能になる。例えば、タービンに発電機を接続した場合には発電量を一層高めることができるようになる。第2熱交換器は予熱源、予熱対象ともに空気であるため、酸性成分が含まれる排ガスと異なり、低温腐食を招くことが無いので予熱源の持つ熱量を高効率で回収できるようになる。
【0024】
同第八の特徴構成は、同請求項7に記載した通り、上述した第一から第七の何れかの特徴構成に加えて、前記焼却炉で焼却処理される被処理物が高カロリーのバイオマスである点にある。
【0025】
焼却炉で焼却処理される被処理物が例えば木質系を含む高カロリーのバイオマスであることが好ましく、エネルギー効率よく十分な高温で焼却処理可能になるため、地球温暖化の原因ガスである亜酸化窒素の発生量も極めて効果的に抑制することができるようになる。
【0026】
本発明による焼却処理方法の第一の特徴構成は、同請求項9に記載した通り、タービンと連動するコンプレッサで圧縮空気を生成し、焼却炉の煙道に導かれる排ガスの保有熱により圧縮空気を予熱し、予熱された高温の圧縮空気でタービンを回転し、タービンを駆動した後の高温の圧縮空気を前記焼却炉へ燃焼用空気として供給する焼却処理方法であって、前記タービンに供給される前の高温の圧縮空気を、前記焼却炉の炉内燃焼熱により予熱して、前記焼却炉の炉内燃焼温度を調整する点にある。
【発明の効果】
【0027】
以上説明した通り、本発明によれば、タービン装置からの圧縮空気を燃焼用空気として利用しながらも、設備の大型化を招くことなく燃焼温度を調整でき、さらには大きな電力を消費する誘引送風機を設けることなく炉内を負圧に維持可能な焼却処理設備及び焼却処理方法を提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明による焼却処理設備及び焼却処理方法の説明図
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明による焼却処理設備及び焼却処理方法の実施形態を説明する。
図1には、焼却処理設備1が示されている。焼却処理設備1は、バイオマスが貯留されたサイロ10と、バイオマス投入機構11と、流動用空気として高温の圧縮空気が供給される流動床式焼却炉2を備えている。流動床式焼却炉2の煙道に沿って第1熱交換器20と、セラミックフィルタを備えた耐熱性の高い集塵装置16と、アルカリ剤を噴霧して排ガス中の酸性ガス成分を中和する排煙処理塔17及び煙突18が配置されている。符合12は燃焼バーナである。
【0030】
焼却処理設備1の被処理物であるバイオマスには、例えば下水汚泥を生物処理する活性汚泥法や、生物処理して膜ろ過する膜分離活性汚泥法等の方式を採用した汚水処理設備で発生した余剰汚泥を十分に脱水した乾燥汚泥や、食品工場等で発生した汚水を浄化処理して発生した汚泥等の高カロリーの有機性の汚泥等、様々な動植物由来の高カロリーバイオマスが含まれる。
【0031】
焼却処理設備1には、第1熱交換器20で予熱された高温の圧縮空気により回転するタービン31と、タービン31の回転により第1熱交換器20に圧縮空気を供給するコンプレッサ32とを含むタービン装置30を備えている。
【0032】
タービン31と軸連結されるコンプレッサ32が駆動されて100〜150℃,0.2〜0.3MPaの圧縮空気が生成され、コンプレッサ32で生成された圧縮空気が第1熱交換器20に供給されて、流動床式焼却炉2の煙道に導かれる約900℃の排ガスの保有熱により650〜750℃,0.2〜0.3MPaに予熱される。尚、本明細書で説明する圧力はゲージ圧である。
【0033】
第1熱交換器20で予熱された圧縮空気がタービン31に供給されることによってタービン31が回転駆動され、さらに駆動軸と連結されたコンプレッサ32が駆動されるようになる。タービン31から排出された500〜600℃,0.05〜0.15MPaの圧縮空気の一部が流動用空気つまり燃焼用空気として流動床式焼却炉2に供給されて流動床が形成される。さらに、タービン装置30の出力軸に発電機Gが連結され、タービン31の回転動力によって発電可能に構成されている。
【0034】
バイオマス投入機構11によって炉内に投入された高カロリーのバイオマスは、燃焼バーナ12を点火しなくても、流動床で加熱されて熱分解し、その熱分解ガスが約850℃から900℃で燃焼して煙道に流出するので、汚泥の燃焼時に地球温暖化ガスである亜酸化窒素の発生は抑制される。
【0035】
さらに、焼却処理設備1には、タービン装置30によって排ガスの保有熱を回収して得られた運動エネルギーを用いて煙道に導かれた排ガスを誘引する排ガス誘引装置40を備えている。
【0036】
タービン31から排出された500〜600℃,0.05〜0.15MPaの圧縮空気の一部は、排ガス誘引装置40に供給される。排ガス誘引装置40は、第1熱交換器20で回収した排ガスの保有熱から生成される運動エネルギーを用いることによって煙道に導かれた排ガスを誘引して煙突18から排出する。
【0037】
排ガス誘引装置40は、煙道に導かれた排ガスを、タービン31から排出される高温の圧縮空気の流れよって誘引するエジェクタで構成されている。
【0038】
タービン31から排出され流動用空気として流動床式焼却炉2に供給される高温の圧縮空気の一部がエジェクタを構成する空気供給ポート40aに供給され、煙道の排ガスが真空ポート40bから吸引されてディフューザー40cに流出するようになるので、電力によって駆動される誘引送風機を備えなくても炉内が負圧に維持される。しかも、排煙処理塔17で40℃程度に低下した排ガスがディフューザー40cで高温の圧縮空気と混合して加熱されるので、排ガスの昇温及び湿度低下により、白防効果も併せて実現されるようになる。尚、高温の圧縮空気の一部を白防用としてエジェクタを経由することなく煙突18側に供給してもよい。
【0039】
流動床式焼却炉2の燃焼状態を制御するために、流動用空気の投入量または温度を調整する必要がある場合、流量調整バルブV1でコンプレッサ32への給気量を構成すればよい。また、タービン31から出力される圧縮空気の流動床式焼却炉2への供給量と排ガス誘引装置40への供給量を調整するバルブV4を圧縮空気の搬送経路に備えてもよい。以下では流量調整のための機械要素としてバルブを用いた例を説明するが、流量調整のための機械要素としてダンパを用いることも可能である。
【0040】
このような構成によれば、従来の誘引送風機を駆動するための電力のような別途のエネルギーが不要になり、エネルギー効率を一層に向上させることができ、また炉内を負圧に維持できるので、設備コストを要する特別のシール機構を備える必要もなくなる。
【0041】
焼却処理設備1には、第1熱交換器20で予熱された高温の圧縮空気を炉内燃焼熱でさらに予熱する抽熱器50を備え、流動床式焼却炉2の燃焼温度が目標温度範囲に入るように抽熱器50の熱交換量を調整する温度調整機構70を備えている。
【0042】
温度調整機構70は、コンプレッサ32で生成された圧縮空気を第1熱交換器20に供給する予熱経路L1の途中で分岐し、第1熱交換器20で予熱された圧縮空気を抽熱器50に導く経路と合流する分岐経路L2と、分岐経路L2に備えた流量調整用のバルブV2と、予熱経路L1に備えた流量調整用のバルブV3と、バルブV2,V3の開度を調整する制御部71とで構成されている。
【0043】
温度調整機構70は、温度センサTSで計測された炉内温度が所定温度範囲に維持されるようにバルブV2,V3の開度を制御して、抽熱器50に供給される圧縮空気量及び/または温度を調整する。具体的に、炉内の燃焼温度が900℃を超えて上昇すると圧縮空気の供給量を増加及び/または温度を低下させて抽熱量を増大させ、850℃を下回ると圧縮空気の供給量を減少及び/または温度を上昇させて抽熱量を減らす。
【0044】
例えば、温度センサTSで計測された炉内温度が目標温度範囲に入るように、目標温度と炉内温度との差分値、微分値、積分値等に基づいて抽熱量を調整するPID演算が行なわれてバルブV2,V3の開度が制御され、その結果炉内温度が850℃から900℃の範囲に保たれる。これにより、亜酸化窒素の発生量を低減させながらも排ガス量の増加を招くことなく炉壁や煙道へのクリンカの付着を回避することができるようになる。尚、バルブV2のみ設けられ、バルブV3が無い構成であってもよい。
【0045】
温度調整機構70を、第1熱交換器20で予熱された圧縮空気と第1熱交換器20で予熱される前の圧縮空気との混合比率を調整して抽熱器50に供給する混合比率調整機構で構成することが好ましく、第1熱交換器20で予熱された圧縮空気よりも第1熱交換器20で予熱される前の圧縮空気の混合比率を大きくすれば、それだけ抽熱器50での熱交換量が増して炉内燃焼温度を効果的に低下させることができる。
【0046】
さらに、温度調整機構70を、第1熱交換器20で予熱された圧縮空気と第1熱交換器20で予熱される前の圧縮空気とを、炉内に供給する圧縮空気の総量を一定にしながら混合比率を調整して抽熱器50に供給する混合比率調整機構で構成することがさらに好ましく、第1熱交換器20で予熱された圧縮空気よりも熱交換器で予熱される前の圧縮空気の混合比率を大きくすれば、それだけ抽熱器50での熱交換量が増して炉内燃焼温度を効果的に低下させることができ、しかも炉内に供給される圧縮空気の総量が一定に調整されるので、炉内に供給される圧縮空気で形成される流動床の状態を安定させることができる。
【0047】
このとき、余剰の圧縮空気は、排ガス誘引装置40に供給するか、または白煙防止用に供給することが好ましく、また専ら発電のためのエネルギーに用いてもよい。
【0048】
尚、圧縮空気の供給量の調整のみで炉内の燃焼温度の異常な上昇を抑制できない場合に備えて、流動床式焼却炉2の炉天井部に水噴霧機構を備え、または炉壁に水管を設置して、水噴霧または水管への冷却水の供給量の調整によって炉内温度を調整する温度調整補助機構を備えもよい。この場合、温度調整機構70は、温度調整補助機構に優先して圧縮空気の供給量を調整するように構成され、圧縮空気の供給量のみで目標温度範囲に調整できない場合に温度調整補助機構を制御するように構成されていることが好ましい。
【0049】
流動床式焼却炉2の立上げ時には、発電機Gをモータとして動作させ、外部電力によって駆動されるモータでタービンを回転させるとともに、燃焼バーナ12を点火し、炉が温まると被処理物を投入して焼却処理を開始し、モータとして動作させた発電機Gを停止し、その後発電機として動作させる。尚、発電機Gを備えていない場合には、タービン31に備えた燃焼器に化石燃料を供給して起動することも可能である。
【0050】
上述した実施形態で示した圧力、温度等の数値は例示に過ぎず、本発明が当該数値に限定されるものではなく、また排ガス誘引装置40を含めて、焼却処理設備1を構成する各部の構造、大きさ、素材等の具体的な構成は、本発明の作用効果が奏される範囲で適宜変更して設計することが可能である。以下の説明でも同様である。
【0051】
図2に示すように、コンプレッサ32で生成された圧縮空気を、タービン31から排出された高温の圧縮空気で予熱する第2熱交換器24を備え、第2熱交換器24で予熱された圧縮空気を第1熱交換機20に供給するように構成されていることが好ましい。
【0052】
第2熱交換器24を設けることによってタービン31に供給される圧縮空気の持ち込み熱量を高めることができ、コンプレッサ32による圧縮空気の生成量を増すことが可能になる。例えば、タービン31に発電機Gを接続した場合には発電量を一層高めることができるようになる。
【0053】
このとき、第2熱交換器24で熱交換する前の圧縮空気が排ガス誘引装置40に供給され、第2熱交換器24で熱交換された圧縮空気が白防用の空気として煙突18側に供給されるように構成することが好ましい。
【0054】
また、第3熱交換器24は予熱源、予熱対象ともに空気であるため、硫黄等の酸性成分が含まれる排ガスと異なり、低温腐食を招くことが無いので予熱源の持つ熱量を高効率で回収できるようになる。
【0055】
図3に示すように、排ガス誘引装置40は、タービン装置30の軸動力で回転軸が駆動される誘引送風機Fで構成することも可能である。
【0056】
第1熱交換器20によって排ガスの保有熱を回収した高温の圧縮空気によって駆動されるタービン31の軸動力で誘引送風機Fが回転駆動されて煙道の排ガスが誘引される。つまり、誘引送風機Fを回転駆動するために別途の電力が不要になる。
【0057】
この場合も、タービン31から出力された高温の圧縮空気を排煙処理塔17より下流側の煙道に案内することによって、別途の白煙防止用ファンを設けることなく白煙防止することができる。
【0058】
つまり、本発明による排ガス誘引装置40は、タービン装置30によって排ガスの保有熱を回収して得られた運動エネルギー、回転力という機械的な運動エネルギーや流体の流速という運動エネルギーを用いて煙道に導かれた排ガスを誘引する構成であればよい。
【0059】
上述したように、流動床式焼却炉2で焼却処理される被処理物は下水汚泥を含むバイオマスであることが好ましく、エネルギー効率よく十分な高温で焼却処理可能になるため、地球温暖化の原因ガスである亜酸化窒素の発生量も極めて効果的に抑制することができるようになる。
【0060】
以上説明したように、本発明による焼却処理方法は、タービン31と連動するコンプレッサ32で圧縮空気を生成し、流動床式焼却炉2の煙道に導かれる排ガスの保有熱により圧縮空気を予熱し、予熱された高温の圧縮空気でタービン31を回転し、タービン31を駆動した後の高温の圧縮空気を流動床式焼却炉2へ流動用空気として供給する焼却処理方法であって、タービン32に供給される前の高温の圧縮空気を、流動床式焼却炉2の炉内燃焼熱により予熱して、流動床式焼却炉2の炉内燃焼温度を調整する焼却処理方法である。
【0061】
また、タービンと連動するコンプレッサで圧縮空気を生成し、焼却炉の炉内燃焼熱及び/または煙道に導かれる排ガスの保有熱により圧縮空気を予熱し、予熱された高温の圧縮空気でタービンを回転し、タービンより排気した高温の圧縮空気を配管を経由して焼却炉に導入し、及び、煙突に配管を経由して白防用に、或いは排ガス誘引用に導入する焼却処理方法である。
【0062】
タービンとコンプレッサが軸連結されたタービン装置として、過給機のみならず、冷熱発電等に用いられる膨張タービンにコンプレッサが軸連結された構成を採用することも可能である。
【0063】
上述した実施形態は、焼却炉として流動床式焼却炉を採用した場合について説明したが、本発明が適用される焼却炉は流動床式焼却炉に限らず、ストーカ炉、キルン炉、噴流炉、溶融炉等の他の形式の焼却炉にも適用可能である。
【0064】
上述した実施形態は、何れも本発明の一例であり、当該記載により本発明が限定されるものではなく、各部の具体的構成は本発明の作用効果が奏される範囲で適宜変更設計可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0065】
1:焼却処理設備
2:流動床式焼却炉
10:サイロ
20:第1熱交換器
24:第2熱交換器
30:タービン装置
31:タービン
32:コンプレッサ
40:排ガス誘引装置
40a:空気供給ポート
40b:真空ポート
40c:ディフューザー
50:抽熱器
70:温度調整機構