【課題】タービン装置からの圧縮空気を焼却プロセス用空気として利用しながらも、設備の大型化を招くことなく燃焼温度を調整でき、さらには大きな電力を消費する誘引送風機を設けることなく炉内を負圧に維持可能な焼却処理設備及び焼却処理方法を提供する。
【解決手段】少なくとも燃焼プロセス、白煙防止プロセスまたは誘引送風プロセスの何れかの焼却プロセスに高温の圧縮空気が供給される焼却炉2と、前記焼却炉に配置され、炉内燃焼熱で圧縮空気を予熱する抽熱器50と、前記抽熱器で予熱された高温の圧縮空気により回転する第1タービン61と、前記第1タービンの回転により前記抽熱器50に圧縮空気を供給する第1コンプレッサ62とを含む第1タービン装置60と、前記焼却炉の燃焼温度が目標温度範囲に入るように前記抽熱器の熱交換量を調整する温度調整機構70とを備えて焼却処理設備を構成する。
圧縮空気により前記焼却炉から熱回収して得られた運動エネルギーを用いて前記煙道に導かれた排ガスを誘引する排ガス誘引装置を備えている請求項1または2記載の焼却処理設備。
タービンと連動するコンプレッサで圧縮空気を生成し、当該圧縮空気を焼却炉に備えた抽熱器に供給して予熱し、予熱された高温の圧縮空気でタービンを回転し、タービンから出力された高温の圧縮空気を、少なくとも燃焼プロセス、白煙防止プロセスまたは誘引送風プロセスの何れかの焼却プロセスに供給するように構成され、前記焼却炉の炉内燃焼温度が目標温度範囲に入るように前記抽熱器での熱交換量を調整するように構成されている焼却処理方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に開示された廃棄物処理設備で下水汚泥のようなバイオマスを焼却処理する場合には、地球温暖化の原因物質となる亜酸化窒素の発生量を抑制するために炉内燃焼温度を850℃以上の高温で焼却処理する必要がある。そのため、含水率の高い汚泥等を焼却処理する際には、燃焼バーナに化石燃料を供給して補助的に加熱する場合があった。
【0005】
しかし、含水率の低い下水汚泥等の高カロリーのバイオマスを焼却処理する場合には、逆に900℃を超えることもあり、処理対象物が焼結を開始して炉内内壁や煙道にクリンカが付着し、ガスの通流性が損なわれて閉塞に到る虞があった。
【0006】
そのために、炉内に水噴霧装置を設けて炉内の異常温度上昇を回避すると、発生蒸気により排ガス総量が増加して後段の排ガス処理設備の大型化を招き、設備の経済性を損ねるという問題があった。
【0007】
また、炉内を負圧に維持するために煙道に大きな電力を消費する誘引送風機を設ける必要があり、エネルギー効率を向上させるという点では、さらなる改良の余地もあった。
【0008】
さらに、誘引送風機を設置せずに燃焼用圧縮空気の残圧で煙道に排ガスを圧送する場合には、正圧となる炉室や煙道に配置される各排ガス処理設備から高温の排ガスが噴き出すことが無いように確実にシールする必要があり、そのために設備コストが上昇するという問題や、仮にシールが破れると高温の排ガスが噴き出して重大な事故につながる虞があるという問題もあった。
【0009】
本発明の目的は、上述した問題点に鑑み、タービン装置からの圧縮空気を焼却プロセス用空気として利用しながらも、設備の大型化を招くことなく燃焼温度を調整でき、さらには大きな電力を消費する誘引送風機を設けることなく炉内を負圧に維持可能な焼却処理設備及び焼却処理方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の目的を達成するため、本発明による焼却処理設備の第一特徴構成は、特許請求の範囲の請求項1に記載した通り、少なくとも燃焼プロセス、白煙防止プロセスまたは誘引送風プロセスの何れかの焼却プロセスに高温の圧縮空気が供給される焼却炉と、前記焼却炉に配置され、炉内燃焼熱で圧縮空気を予熱する抽熱器と、前記抽熱器で予熱された高温の圧縮空気により回転する第1タービンと、前記第1タービンの回転により前記抽熱器に圧縮空気を供給する第1コンプレッサとを含む第1タービン装置と、前記焼却炉の燃焼温度が目標温度範囲に入るように前記抽熱器の熱交換量を調整する温度調整機構と、を備えている点にある。
【0011】
第1コンプレッサで生成された圧縮空気が抽熱器に送られ、抽熱器で炉内燃焼熱と熱交換される結果、炉内温度の異常な上昇が抑制される。抽熱器で予熱された圧縮空気は燃焼プロセス、白煙防止プロセスまたは誘引送風プロセスの何れかの焼却プロセスに供給されて利用されるので、炉内燃焼熱を有効に回収して利用できるようになる。温度調整機構は、例えば抽熱器に供給される圧縮空気量を調整することにより、炉内温度を850℃から900℃の範囲に保つことで、亜酸化窒素の発生量を低減させながらも排ガス量の増加を招くことなく炉壁や煙道へのクリンカの付着を回避することができるようになる。
【0012】
同第二の特徴構成は、同請求項2に記載した通り、上述の第一の特徴構成に加えて、前記焼却炉の煙道に導かれる排ガスの保有熱により圧縮空気を予熱する第1熱交換器と、前記第1熱交換器で予熱された高温の圧縮空気により回転する第2タービンと、前記第2タービンの回転により前記第1熱交換器に圧縮空気を供給する第2コンプレッサとを含む第2タービン装置と、をさらに備えている点にある。
【0013】
焼却炉の煙道に導かれる排ガスの保有熱を回収する第2タービン装置を設けることにより、第1タービン装置で得られる高温の圧縮空気が不足するような場合であっても、第2タービン装置で得られた高温の圧縮空気を有効利用できるようになり、一層の安定稼働が可能になる。
【0014】
同第三の特徴構成は、同請求項3に記載した通り、上述の第一の特徴構成に加えて、圧縮空気により前記焼却炉から熱回収して得られた運動エネルギーを用いて前記煙道に導かれた排ガスを誘引する排ガス誘引装置を備えている点にある。
【0015】
焼却炉から熱回収した高温の圧縮空気によってタービンが駆動され、タービンと連結されるコンプレッサが駆動されて圧縮空気が生成される。排ガス誘引装置は、このとき回収した排ガスの保有熱または燃焼熱から生成される運動エネルギーを用いることによって煙道に導かれた排ガスが誘引されるので、誘引送風機を駆動するための電力のような別途のエネルギーが不要になり、エネルギー効率を一層に向上させることができ、また炉内を負圧に維持できる。
【0016】
同第四の特徴構成は、同請求項4に記載した通り、上述した第三の特徴構成に加えて、前記排ガス誘引装置は、前記煙道に導かれた排ガスを、高温の圧縮空気の流れによって誘引するエジェクタで構成されている点にある。
【0017】
タービンから排出される高温の圧縮空気がエジェクタの空気供給ポートに供給され、煙道の排ガスが真空ポートから吸引されてディフューザーに流出するようになるので、電力によって駆動される誘引送風機を備えなくても炉内が負圧に維持される。しかも、排ガスがディフューザーで高温の圧縮空気と混合して加熱されるので、排ガスの昇温及び湿度低下により、白防効果も併せて実現されるようになる。
【0018】
同第五の特徴構成は、同請求項5に記載した通り、上述した第一の特徴構成に加えて、圧縮空気により前記焼却炉から熱回収して得られた運動エネルギーを用いて前記煙道に導かれた排ガスを誘引する排ガス誘引装置を備え、前記排ガス誘引装置は、前記第1タービン装置の軸動力で回転軸が駆動される誘引送風機で構成されている点にある。
【0019】
焼却炉から熱回収した高温の圧縮空気によって駆動される第1タービンの軸動力で誘引送風機が回転駆動されて煙道の排ガスが誘引される。つまり、誘引送風機を回転駆動するために別途の電力が不要になる。
【0020】
同第六の特徴構成は、同請求項6に記載した通り、上述した第二の特徴構成に加えて、圧縮空気により前記焼却炉から熱回収して得られた運動エネルギーを用いて前記煙道に導かれた排ガスを誘引する排ガス誘引装置を備え、前記排ガス誘引装置は、前記第2タービン装置の軸動力で回転軸が駆動される誘引送風機で構成されている点にある。
【0021】
同様に、焼却炉から熱回収した高温の圧縮空気によって駆動される第2タービンの軸動力で誘引送風機が回転駆動されて煙道の排ガスが誘引される。つまり、誘引送風機を回転駆動するために別途の電力が不要になる。
【0022】
同第七の特徴構成は、同請求項7に記載した通り、上述した第一から第六の何れかの特徴構成に加えて、予熱前の圧縮空気を、前記焼却プロセスに供給する前の高温の圧縮空気で予熱する第2熱交換器を備えている点にある。
【0023】
第2熱交換器を設けることによってタービンに供給される圧縮空気の持ち込み熱量を高めることができ、コンプレッサによる圧縮空気の生成量を増すことが可能になる。例えば、タービンに発電機を接続した場合には発電量を一層高めることができるようになる。第2熱交換器は予熱源、予熱対象ともに空気であるため、酸性成分が含まれる排ガスと異なり、低温腐食を招くことが無いので予熱源の持つ熱量を高効率で回収できるようになる。
【0024】
同第八の特徴構成は、同請求項8に記載した通り、上述した第一から第七の何れかの特徴構成に加えて、前記焼却炉で焼却処理される被処理物が高カロリーバイオマスである点にある。
【0025】
焼却炉で焼却処理される被処理物が例えば木質系を含む高カロリーバイオマスであることが好ましく、エネルギー効率よく十分な高温で焼却処理可能になるため、地球温暖化の原因ガスである亜酸化窒素の発生量も極めて効果的に抑制することができるようになる。
【0026】
本発明による焼却処理方法の第一の特徴構成は、同請求項9に記載した通り、タービンと連動するコンプレッサで圧縮空気を生成し、当該圧縮空気を焼却炉に備えた抽熱器に供給して予熱し、予熱された高温の圧縮空気でタービンを回転し、タービンから出力された高温の圧縮空気を、少なくとも燃焼プロセス、白煙防止プロセスまたは誘引送風プロセスの何れかの焼却プロセスに供給するように構成され、前記焼却炉の炉内燃焼温度が目標温度範囲に入るように前記抽熱器での熱交換量を調整するように構成されている点にある。
【発明の効果】
【0027】
以上説明した通り、本発明によれば、タービン装置からの圧縮空気を焼却プロセス用空気として利用しながらも、設備の大型化を招くことなく燃焼温度を調整でき、さらには大きな電力を消費する誘引送風機を設けることなく炉内を負圧に維持可能な焼却処理設備及び焼却処理方法を提供することができるようになった。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明による焼却処理設備及び焼却処理方法の実施形態を説明する。
図1には、焼却処理設備1が示されている。焼却処理設備1は、バイオマスが貯留されたサイロ10と、バイオマス投入機構11と、流動用空気として高温の圧縮空気が供給される流動床式焼却炉2を備えている。流動床式焼却炉2の炉室には抽熱器50が設置されている。
【0030】
流動床式焼却炉2の煙道に沿って第1熱交換器20と、セラミックフィルタを備えた耐熱性の高い集塵装置16と、アルカリ剤を噴霧して排ガス中の酸性ガス成分を中和する排煙処理塔17及び煙突18が配置されている。符合12は燃焼バーナである。燃焼バーナ12は、専ら炉の立上げ時にのみ使用され、立上げ後は被処理物が自燃する。
【0031】
焼却処理設備1の被処理物であるバイオマスには、例えば下水汚泥を生物処理する活性汚泥法や、生物処理して膜ろ過する膜分離活性汚泥法等の方式を採用した汚水処理設備で発生した余剰汚泥を十分に脱水した乾燥汚泥や、食品工場等で発生した汚水を浄化処理して発生した汚泥等の高カロリーの有機性の汚泥等、様々な動植物由来の高カロリーバイオマスが含まれる。
【0032】
焼却処理設備1には、第1タービン装置60と第2タービン装置30の2系統のタービン装置が設けられている。第1タービン装置60は、抽熱器50で予熱された高温の圧縮空気により回転する第1タービン61と、第1タービン61の回転により抽熱器50に圧縮空気を供給する第1コンプレッサ62とを備えている。第2タービン装置30は、第1熱交換器20で予熱された高温の圧縮空気により回転する第2タービン31と、第2タービン31の回転により第1熱交換器20に圧縮空気を供給する第2コンプレッサ32とを備えている。そしてそれぞれの回転軸には発電機Gが接続されている。
【0033】
バイオマス投入機構11によって炉内に投入された高カロリーのバイオマスは、燃焼バーナ12を点火しなくても、流動床で加熱されて熱分解し、その熱分解ガスが約850℃から900℃で燃焼して煙道に流出するので、汚泥の燃焼時に地球温暖化ガスである亜酸化窒素の発生は抑制される。
【0034】
しかし、高カロリーのバイオマスを焼却する際に炉内温度が900℃を超えた異常な高温で燃焼する場合もあり、炉壁や煙道へクリンカが付着して煙道等が閉塞する虞がある。そのため、流動床式焼却炉2の燃焼温度が目標温度範囲に入るように抽熱器50が設けられ、抽熱器50での熱交換量を調整する温度調整機構70が設けられている。
【0035】
温度調整機構70は、温度センサTSで計測された炉内温度が所定温度範囲に維持されるようにバルブV2の開度を制御して、抽熱器50に供給される第1コンプレッサ62からの圧縮空気量を調整する。具体的に、炉内の燃焼温度が900℃を超えて上昇すると圧縮空気の供給量を増加させて抽熱量を増大させ、850℃を下回ると圧縮空気の供給量を減少させて抽熱量を減らす。以下では流量調整のための機械要素としてバルブを用いた例を説明するが、流量調整のための機械要素としてダンパを用いることも可能である。
【0036】
例えば、温度センサTSで計測された炉内温度が目標温度範囲に入るように、目標温度と炉内温度との差分値、微分値、積分値等に基づいて抽熱量を調整するPID演算が行なわれ、その結果に基づいてバルブV2の開度が制御されて、炉内温度が850℃から900℃の範囲に保たれる。これにより、亜酸化窒素の発生量を低減させながらも排ガス量の増加を招くことなく炉壁や煙道へのクリンカの付着を回避することができるようになる。
【0037】
そして、炉内温度調整のために増減する高温の圧縮空気によるエネルギーを第1タービン装置60に接続された発電機Gで吸収すると、安定的な操炉が可能になる。
【0038】
尚、圧縮空気の供給量の調整のみで炉内の燃焼温度の異常な上昇を抑制できない場合に備えて、流動床式焼却炉2の炉天井部に水噴霧機構を備え、または炉壁に水管を設置して、水噴霧または水管への冷却水の供給量の調整によって炉内温度を調整する温度調整補助機構を備えもよい。この場合、温度調整機構70は、温度調整補助機構に優先して圧縮空気の供給量を調整するように構成され、圧縮空気の供給量のみで目標温度範囲に調整できない場合に温度調整補助機構を制御するように構成されていることが好ましい。
【0039】
第1タービン61から排出された高温の圧縮空気量は炉内温度の調整により変動する。炉内温度を低下させるために抽熱器50へ供給する圧縮空気量を増加した場合に第1タービン装置60で増加する高温の圧縮空気は、炉内温度の上昇要因を減らすため、流動用の空気として全量を流動床式焼却炉2の燃焼プロセスに供給するのではなく、一部を後述の排ガス誘引装置40に供給するか、または白煙防止用に供給することが好ましく、また専ら発電に用いてもよい。
【0040】
このようにして、第1タービン61と軸連結される第1コンプレッサ62が駆動されて100〜150℃,0.2〜0.3MPaの圧縮空気が生成され、第1コンプレッサ62で生成された圧縮空気が抽熱器50に供給されて、流動床式焼却炉2の炉内燃焼温度が約850〜900℃に保たれるように抽熱し、650〜750℃,0.2〜0.3MPaに予熱される。尚、本明細書で説明する圧力はゲージ圧である。
【0041】
抽熱器50で予熱された圧縮空気が第1タービン61に供給されることによって第1タービン61が回転駆動され、さらに駆動軸と連結された第1コンプレッサ62が駆動されるようになる。第1タービン61から排出された500〜600℃,0.05〜0.15MPaの圧縮空気が焼却炉2の燃焼用空気として必要量だけ供給されるように、燃焼用空気調節機構80によってバルブV4の開度が調整され、一部が排煙処理塔17で処理されて約40℃に低下した排ガスに白防用空気として供給される。
【0042】
さらに、焼却処理設備1には、圧縮空気により焼却炉から熱回収して得られた運動エネルギーを用いて煙道に導かれた排ガスを誘引する排ガス誘引装置を備えている。具体的に、第2タービン装置30によって熱回収して得られた運動エネルギーを用いて煙道に導かれた排ガスを誘引する排ガス誘引装置40を備えている。
【0043】
排ガス誘引装置40は、抽熱器50または第1熱交換器20で回収した熱から生成される運動エネルギーを用いることによって煙道に導かれた排ガスを誘引して煙突18から排出する。以下に詳述する。
【0044】
排ガス誘引装置40は、煙道に導かれた排ガスを、タービン31から排出される高温の圧縮空気の流れよって誘引するエジェクタで構成されている。
【0045】
第2タービン31と軸連結される第2コンプレッサ32が駆動されて100〜150℃,0.2〜0.3MPaの圧縮空気が生成され、第2コンプレッサ32で生成された圧縮空気が第1熱交換器20に供給されて、流動床式焼却炉2の煙道に導かれる約900℃の排ガスの保有熱により650〜750℃,0.2〜0.3MPaに予熱される。
【0046】
第1熱交換器20で予熱された圧縮空気が第2タービン31に供給されることによって第2タービン31が回転駆動され、さらに駆動軸と連結された第2コンプレッサ32が駆動されるようになる。第2タービン31から排出された500から600℃,0.05〜0.15MPaの圧縮空気が、排ガス誘引装置40に供給される。必要に応じてバルブV1の調整により圧縮空気量が調整され、バルブV3でエジェクタへの給気量が調整される。
【0047】
第1タービン61から排出された圧縮空気の一部、及び第2タービン31から排出された圧縮空気の一部がエジェクタを構成する空気供給ポート40aに供給され、煙道の排ガスが真空ポート40bから吸引されてディフューザー40cに流出するようになるので、電力によって駆動される誘引送風機を備えなくても炉内が負圧に維持される。しかも、排煙処理塔17で40℃程度に低下した排ガスがディフューザー40cで高温の圧縮空気と混合して加熱されるので、排ガスの昇温及び湿度低下により、白防効果も併せて実現されるようになる。
【0048】
このような構成によれば、従来の誘引送風機を駆動するための電力のような別途のエネルギーが不要になり、エネルギー効率を一層に向上させることができ、また炉内を負圧に維持できるので、設備コストを要する特別のシール機構を備える必要もなくなる。
【0049】
尚、バルブV4の開度を調整することにより、第2タービン31から排出された圧縮空気の一部を白煙防止用の熱源として排煙処理塔17の下流側の排ガスと混合すべく煙突18に供給してもよい。
【0050】
高カロリーな被処理物を焼却処理する通常の燃焼状態では、専ら第1タービン61から排出された高温の圧縮空気のみが燃焼用空気としてバルブV4の調整を経て供給される。しかし、被処理物の性状が変化して燃焼状態が悪化すると、第1タービン61から排出された圧縮空気の温度等も低下し、十分な燃焼状態を回復できない場合もある。そのような場合に第2タービン31から排出された高温の圧縮空気が供給されるように構成されていてもよい。
【0051】
流動床式焼却炉2の立上げ時には、第1及び第2タービン装置60,30に接続された各発電機Gをモータとして動作させ、外部電力によって駆動されるモータで第1及び第2タービン61,31を回転させるとともに、燃焼バーナ12を点火し、炉が温まると被処理物を投入して焼却処理を開始し、モータとして動作させた発電機Gを停止し、その後発電機として動作させる。尚、発電機Gを備えていない場合には、第1及び第2タービン61,31に備えた燃焼器63,33に化石燃料を供給して起動することも可能である。
【0052】
上述した実施形態で示した圧力、温度等の数値は例示に過ぎず、本発明が当該数値に限定されるものではなく、また排ガス誘引装置40を含めて、焼却処理設備1を構成する各部の構造、大きさ、素材等の具体的な構成は、本発明の作用効果が奏される範囲で適宜変更して設計することが可能である。以下の説明でも同様である。
【0053】
図2には、第1タービン装置60から排出された高温の圧縮空気を排ガス誘引装置40に供給し、第2タービン装置30から排出された高温の圧縮空気を燃焼用空気として焼却炉2に供給する構成が示されている。この場合、燃焼用空気調節機構80によってバルブV3の開度が調整され、一部が排煙処理塔17で処理されて約40℃に低下した排ガスに白防用空気として供給される。
【0054】
図3及び
図4に示すように、第1コンプレッサ62で生成された圧縮空気を、第1タービン61から排出された高温の圧縮空気で予熱する第2熱交換器24、または第2コンプレッサ32で生成された圧縮空気を、第2タービン31から排出された高温の圧縮空気で予熱する第2熱交換器24を備え、第2熱交換器24で予熱された圧縮空気を抽熱器50または第1熱交換機20に供給するように構成されていることが好ましい。
【0055】
第2熱交換器24を設けることによって第1タービン61または第2タービン31に供給される圧縮空気の持ち込み熱量を高めることができ、第1コンプレッサ62または第2コンプレッサ32による圧縮空気の生成量を増すことが可能になる。例えば、第1タービン61または第2タービン31に発電機Gを接続した場合には発電量を一層高めることができるようになる。
【0056】
また、第2熱交換器24は予熱源、予熱対象ともに空気であるため、硫黄等の酸性成分が含まれる排ガスと異なり、低温腐食を招くことが無いので予熱源の持つ熱量を高効率で回収できるようになる。
【0057】
図5に示すように、排ガス誘引装置40は、第1タービン装置60または第2タービン装置30の軸動力で回転軸が駆動される誘引送風機Fで構成することも可能である。
【0058】
第1タービン61または第2タービン31の軸動力で誘引送風機Fが回転駆動されて煙道の排ガスが誘引される。つまり、誘引送風機Fを回転駆動するために別途の電力が不要になる。
【0059】
この場合も、第1タービン61または第2タービン31から出力された高温の圧縮空気を排煙処理塔17より下流側の煙道に案内することによって、別途の白煙防止用ファンを設けることなく白煙防止することができる。
【0060】
つまり、本発明による排ガス誘引装置40は、タービン装置60,30によって排ガスの保有熱を回収して得られた運動エネルギー、回転力という機械的な運動エネルギーや流体の流速という運動エネルギーを用いて煙道に導かれた排ガスを誘引する構成であればよい。
【0061】
尚、本実施形態では、第1タービン61及び第2タービン31から出力された高温の圧縮空気の双方が焼却炉2に燃焼用空気として供給され、燃焼用空気供給機構80によってバルブV3,V4の開度が調整される例が示されている。
【0062】
上述したように、流動床式焼却炉2で焼却処理される被処理物は下水汚泥を含むバイオマスであることが好ましく、エネルギー効率よく十分な高温で焼却処理可能になるため、地球温暖化の原因ガスである亜酸化窒素の発生量も極めて効果的に抑制することができるようになる。
【0063】
以上説明したように、本発明による焼却処理方法は、タービンと連動するコンプレッサで圧縮空気を生成し、当該圧縮空気を焼却炉に備えた抽熱器に供給して予熱し、予熱された高温の圧縮空気で第1タービンを回転し、第1タービンから出力された高温の圧縮空気を、少なくとも燃焼プロセス、白煙防止プロセスまたは誘引送風プロセスの何れかの焼却プロセスに供給するように構成され、焼却炉の炉内燃焼温度が目標温度範囲に入るように抽熱器での熱交換量を調整するように構成されている。
【0064】
また、タービンと連動するコンプレッサで圧縮空気を生成し、焼却炉の炉内燃焼熱及び/または煙道に導かれる排ガスの保有熱により圧縮空気を予熱し、予熱された高温の圧縮空気でタービンを回転し、タービンより排気した高温の圧縮空気を配管を経由して焼却炉に導入し、及び、煙突に配管を経由して白防用に、或いは排ガス誘引用に導入する焼却処理方法である。
【0065】
燃焼プロセスとは焼却炉内に燃焼用空気を供給して、被処理物の燃焼を促進するプロセスであり、白煙防止プロセスとは排煙処理塔17の下流側の排ガスが煙突18から排気される前に加熱するプロセスであり、誘引送風プロセスとは炉内及び煙道を負圧に維持すべく煙道の下流側から排ガスを誘引するプロセスである。
【0066】
上述した実施形態では、被処理物が低カロリーで第1タービン装置60のみでは、流動床式焼却炉2に供給する燃焼用空気が不足する場合に備えて第2タービン装置30を併設した例を説明したが、高カロリーな被処理物が安定供給される場合等には、第2タービン装置30を設ける必要がない。
【0067】
上述したタービンとコンプレッサが軸連結されたタービン装置として、過給機のみならず、冷熱発電等に用いられる膨張タービンにコンプレッサが軸連結された構成を採用することも可能である。
【0068】
上述した実施形態は、焼却炉として流動床式焼却炉を採用した場合について説明したが、本発明が適用される焼却炉は流動床式焼却炉に限らず、ストーカ炉、キルン炉、噴流炉、溶融炉等の他の形式の焼却炉にも適用可能である。
【0069】
つまり、本発明による焼却設備は、少なくとも燃焼プロセス、白煙防止プロセスまたは誘引送風プロセスの何れかの焼却プロセスに高温の圧縮空気が供給される焼却炉と、焼却炉に配置され、炉内燃焼熱で圧縮空気を予熱する抽熱器と、抽熱器で予熱された高温の圧縮空気により回転する第1タービンと、第1タービンの回転により抽熱器に圧縮空気を供給する第1コンプレッサとを含む第1タービン装置と、焼却炉の燃焼温度が目標温度範囲に入るように抽熱器の熱交換量を調整する温度調整機構と、を備えていればよい。
【0070】
上述した実施形態は、何れも本発明の一例であり、当該記載により本発明が限定されるものではなく、各部の具体的構成は本発明の作用効果が奏される範囲で適宜変更設計可能であることはいうまでもない。