【解決手段】血液分析装置は、血液試料を測定して測定データを出力する測定部3と、測定部3から出力された測定データを分析し、赤血球、白血球、および血小板を含む複数の血球それぞれに関する分析データを生成し、分析データにおける、複数の血球のうち所定の血球に関する第1分析データと、所定の血球以外の血球に関する第2分析データと、を用いて、所定の血球の減少原因の鑑別を支援する支援情報を生成する制御部51と、前記支援情報を出力する出力部と、を備える。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0009】
[1.血液分析装置]
図1は、血液分析装置(多項目血球計数装置)1を示している。血液分析装置1は、血液試料に含まれる血球(白血球、赤血球、血小板)を計数し、血液の分析を行う。血液分析装置1は、測定ユニット(測定部)3と、測定ユニット3を制御可能な情報処理ユニット5と、を備えている。
【0010】
[2.測定ユニット]
図2及び
図3は、測定ユニット3の構成を示している。測定ユニット3は、吸引部301、試料調製部302、検出部303、及び通信部305などを備えている。吸引部301は、試料容器Wに収容された血液試料から血液試料を吸引する。吸引部301は、試料容器W内の血液試料を吸引するためのピアサ33を備えている。
試料調製部302は、吸引部301により吸引した血液試料から測定に用いられる測定試料を調製する。検出部303は、試料調製部302により調製された測定試料から血球を検出する。
通信部305は、測定ユニット3が情報処理ユニット5との通信を行う。通信部305は、情報処理ユニット5からの制御指令を受信する。また、通信部305は、検出部303による検出で得られた測定データを情報処理ユニット5に送信する。
【0011】
吸引部301、試料調製部302及び検出部303は、流体回路を有して構成されている。この流体回路は、ピアサ33によって吸引された血液から測定試料を調製し、その測定試料を検出部303に与えるよう動作する。試料調整部302は、試料を調製するための第1反応チャンバC1〜第5反応チャンバC5を備えている。検出部303は、測定試料を検出する第1検出器D1〜第3検出器D3を備えている。
【0012】
試料調整部302を構成する流体回路は、第1流体回路E1〜第3流体回路E3を含んでいる。流体回路E1〜E4は、図示しないバルブ及びポンプなどを備えており、バルブによって流路の切替を行い、ポンプによって流体回路中に血液試料などの流体を搬送させることができる。第1流体回路E1は、ピアサ33から各反応チャンバC1〜C7へ血液試料を分注する。なお、第1流体回路E1は、各反応チャンバC1〜C7へ、希釈液、溶血剤、染色液などを必要に応じて供給する。希釈液、溶血剤、染色液などの液体(試料調製用液)は、測定試料の調製に用いられる。
第2流体回路E2は、第1反応チャンバC1〜第5反応チャンバC5において調製された測定試料を第1検出部D1に搬送する。第3流体回路E3は、第6反応チャンバC6において調製された測定試料を、第2検出部D2に搬送する。第4流体回路E4は、第7反応チャンバC7において調製された測定試料を第3検出部D3に搬送する。検出が終了すると、検出部D1〜D3内の測定試料は、廃液チャンバ(図示省略)へ排出される。
【0013】
第1反応チャンバC1は、白血球/有核赤血球に関する分析を行うための試料(第1試料)を調製するための反応チャンバである。
第2反応チャンバC2は、白血球分類に関する分析を行うための試料(第2試料)を調製するための反応チャンバである。
第3反応チャンバC3は、異常細胞/幼若細胞数に関する分析を行うための試料(第1試料)を調製するための反応チャンバである。
第4反応チャンバC4は、網赤血球に関する分析を行うための試料(第4試料)を調製するための反応チャンバである。
第5反応チャンバC5は、血小板に関する分析を行うための試料(第5試料)を調製するための反応チャンバである。
第6反応チャンバC6は、赤血球及び血小板に関する分析を行うための試料(第6試料)を調製するための反応チャンバである。
第7反応チャンバC7は、ヘモグロビンに関する分析を行うための試料(第7試料)を調製するための反応チャンバである。
【0014】
第1検出部D1は、半導体レーザを使用したフローサイトメトリー法により測定を行うためのフローセルと光学検出器を有する。光学検出器により、試料中の血球(白血球、赤血球、血小板など)から光学情報(側方蛍光信号、前方散乱光信号、側方散乱光信号)が、測定データとして検出される。
第1検出部D1は、第1試料に対する測定(第1測定:白血球/有核赤血球に関する分析用の測定)、第2試料に対する測定(第2測定:白血球分類に関する分析用の測定)、第3試料に対する測定(第3測定:異常細胞/幼若細胞数に関する分析用の測定)、第4試料に対する測定(第4測定:網赤血球に関する分析用の測定)、及び第5試料に対する測定(第5測定:血小板に関する分析用の測定)を行う。
【0015】
第2検出部D2は、シースフローDC検出法により測定を行う。第2検出部D2は、第6試料に対する測定(第6測定:赤血球及び血小板に関する分析用の測定)を行う。
第3検出部D3は、SLS−ヘモグロビン法により測定を行う。第3検出部D3は、第7試料に対する試料(第7測定:ヘモグロビンに関する分析用の測定)を行う。
【0016】
[3.情報処理ユニット]
情報処理ユニット5は、コンピュータにより構成されている。
図4は、情報処理ユニット5の構成を示すブロック図である。
図4に示すように、コンピュータ5は、本体(制御部)51と、表示部(出力部)52と、入力部53とを備えている。本体51は、CPU51a、ROM51b、RAM51c、ハードディスク51d、読出装置51e、入出力インタフェース51f、通信インタフェース51g、及び画像出力インタフェース51hを備えており、CPU51a、ROM51b、RAM51c、ハードディスク51d、読出装置51e、入出力インタフェース51f、通信インタフェース51g、及び画像出力インタフェース51hは、バス51iによって接続されている。
【0017】
CPU51aは、コンピュータプログラムを実行することが可能である。
ハードディスク(記憶装置)51dは、オペレーティングシステム及びアプリケーションプログラム等、CPU51aに実行させるための種々のコンピュータプログラム54a及び当該コンピュータプログラムの実行に用いられるデータがインストールされている。
コンピュータプログラム54aには、測定ユニットの制御、測定データの分析、情報の出力などを行うプログラムが含まれる。コンピュータプログラム54aは、CD−ROMなどの可搬型記録媒体54に記録することができる。読出装置51eは、記録媒体54に記録されたコンピュータプログラム54aを読み出すことができる。
コンピュータプログラム54aは、可搬型記録媒体54によって提供されるのみならず、電気通信回線(有線、無線を問わない)によってコンピュータ5と通信可能に接続された外部の機器から前記電気通信回線を通じて提供することも可能である。
【0018】
また、ハードディスク51dは、各種データを記憶する記憶部(測定データ記憶部54b、分析データ記憶部54c、スコアリング情報記憶部54d、及び支援情報記憶部54e)としても機能する。
測定データ記憶部54bは、測定ユニット3から受信した測定データを記憶する。分析データ記憶部54cは、測定データを分析して生成された分析データを記憶する。スコアリング情報記憶部54dは、分析データをスコアリングするための情報(スコアリング情報)を記憶する。スコアリング情報は、スコアリング情報記憶部54dにおいて予め設定されている。支援情報記憶部54eは、分析データに基づいて生成された支援情報を記憶する。
【0019】
入出力インタフェース51fは、測定ユニット3に接続されている。これにより、情報処理ユニット5は、測定ユニット2を制御し、測定ユニット3から測定データを受信することができる。
画像出力インタフェース51hは、ディスプレイ等で構成された表示部(出力部)52に接続されている。したがって、情報処理ユニット5は、支援情報などの各種情報を表示(出力)することができる。
【0020】
図5は、情報処理ユニット5(CPU51a)によって実行される測定・分析の処理手順を示している。
図5の処理は、コンピュータプログラム54aがCPU51aによって実行されることよって実現される。
まず、情報処理ユニット5は、測定制御処理を実行する(ステップS1)。測定制御処理によって、測定ユニット3が測定試料の測定のために制御される。測定ユニット3は、測定試料を測定して得られた測定データを情報処理ユニット5へ出力する。情報処理ユニット5は、その測定データを受信する(ステップS2)。続いて、情報処理ユニット5は、受信した測定データを分析して、分析データを生成する(ステップS3)。情報処理ユニット5は、分析データを用いて、支援情報を生成する(ステップS4)。情報処理ユニット5は、生成された分析データ及び支援情報を表示部(出力部)52に出力する(ステップS5)。
【0021】
図6は、測定制御処理(ステップS1)から支援情報生成処理(ステップS4)までの処理に関して情報処理ユニット5によって発揮される機能を示す機能ブロック図である。
図6に示す機能ブロックには、測定制御部56、測定データ記憶部54b、測定データ分析部(第1生成部)57、分析データ記憶部54c、及び支援情報生成部(第2生成部)58が含まれる。なお、
図6の機能ブロックで示す機能は、コンピュータプログラム54aがCPU51aによって実行されることよって、情報処理ユニット5において発揮される機能である。
【0022】
測定制御部56は、測定ユニット3における各測定を制御するものであり、第1測定部56a〜第7測定部56gを備えている。第1測定制御部56aは、白血球/有核赤血球に関する分析用の測定(第1測定)を制御する。第2測定制御部56bは、白血球分類に関する分析用の測定(第2測定)を制御する。第3測定制御部56cは、異常細胞/幼若細胞数に関する分析用の測定(第3測定)を制御する。第4測定制御部56dは、網赤血球に関する分析用の測定(第4測定)を制御する。第5測定制御部56eは、血小板に関する分析用の測定(第5測定)を制御する。第6測定制御部56fは、赤血球及び血小板に関する分析用の測定(第6測定)を制御する。第7測定制御部56gは、ヘモグロビンに関する分析用の測定(第7測定)を制御する。
【0023】
測定データ記憶部54bは、測定ユニット3から受信した測定データを記憶するものであり、第1測定データ記憶部54b−1〜第7測定データ記憶部54b−7を備えている。
第1測定データ記憶部54b−1は、白血球/有核赤血球に関する分析用の測定(第1測定)によって得られた第1測定データ(白血球/有核赤血球測定データ)を記憶する。
第2測定データ記憶部54b−2は、白血球分類に関する分析用の測定(第2測定)によって得られた第2測定データ(白血球分類測定データ)を記憶する。
第3測定データ記憶部54b−3は、異常細胞/幼若細胞数に関する分析用の測定(第3測定)によって得られた第3測定データ(異常細胞/幼若細胞数測定データ)を記憶する。
第4測定データ記憶部54b−4は、網赤血球に関する分析用の測定(第4測定)によって得られた第4測定データ(網赤血球測定データ)を記憶する。
第5測定データ記憶部54b−5は、血小板に関する分析用の測定(第5測定)によって得られた第5測定データ(血小板測定データ)を記憶する。
第6測定データ記憶部54b−6は、赤血球及び血小板に関する分析用の測定(第6測定)によって得られた第6測定データ(赤血球及び血小板測定データ)を記憶する。
第7測定データ記憶部54b−7は、ヘモグロビンに関する分析用の測定(第7測定)によって得られた第7測定データ(ヘモグロビン測定データ)を記憶する。
【0024】
測定データ分析部57は、各測定データ記憶部54b−1〜54b−7に記憶された各測定データを用いて分析データを生成するものであり、第1測定データ分析部57a〜第7測定データ分析部57gを備えている。
第1測定データ分析部57aは、第1測定データを用いて、白血球/有核赤血球に関する分析データを生成する。
第2測定データ分析部57bは、第2測定データを用いて、白血球分類に関する分析データを生成する。
第3測定データ分析部57cは、第3測定データを用いて、異常細胞/幼若細胞数に関する分析データを生成する。
第4測定データ分析部57dは、第4測定データを用いて、網赤血球に関する分析データを生成する。
第5測定データ分析部57eは、第5測定データを用いて、血小板に関する分析データを生成する。
第6測定データ分析部57fは、第6測定データを用いて、赤血球及び血小板に関する分析データを生成する。
第7測定データ分析部57gは、第7測定データを用いて、ヘモグロビンに関する分析データを生成する。
【0025】
第1測定データ分析部57a〜第5測定データ分析部57eは、それぞれ、第1検出部D1から出力された測定データである光学情報(側方蛍光信号、前方散乱光信号、側方散乱光信号)を用いて、スキャッタグラムを形成する。各分析部57a〜57eは、それぞれが形成したスキャッタグラムに基づいて、血球数及びその他の分析項目に関する分析データを生成する。
【0026】
各測定データ分析部57a〜57eが形成するスキャッタグラムの例として、第5測定データ分析部57eが形成するスキャッタグラムを
図7(a)に示し、第4測定データ分析部57dが形成するスキャッタグラムを
図7(b)に示した。
【0027】
図7(a)のスキャッタグラムは、(側方)蛍光強度を横軸にとり、前方散乱光(FSC)を縦軸にとった2次元座標であり、第5試料中の各粒子について、蛍光強度及び前方散乱光強度を座標上にプロットしたものである。
図7(a)のスキャッタグラムには、血小板が出現する領域(PLT領域)と、幼若血小板が出現する領域(IPF領域)とが設定されている。第5測定データ分析部57eは、PLT領域に出現しているプロット数(血小板数;PLT)及びIPF領域に出現しているプロット数(幼若血小板数;IPF)を計数する。このようにして、血小板に関する分析データとしての血小板数(PLT)及び幼若血小板数(IPF)を生成することができる。
さらに、第5測定データ分析部57eは、血小板数(PLT)及び幼若血小板数(IPF)を用いて、幼若血小板比率(IPF%)を、血小板に関する分析データとして生成する。なお、ここでは、幼若血小板比率(IPF%)=幼若血小板数(IPF)/血小板数(PLT)である。
【0028】
図7(b)のスキャッタグラムは、(側方)蛍光強度を横軸にとり、前方散乱光(FSC)を縦軸にとった2次元座標であり、第4試料中の各粒子について、蛍光強度及び前方散乱校強度を座標上にプロットしたものであり、
図7(b)のスキャッタグラムには、網赤血球が出現する領域(RET領域)が設定されている。第4測定データ分析部57dは、RET領域に出現しているプロット数(網赤血球数;RET#)を計数する。このようにして、網赤血球に関する分析データとしての網赤血球数(RET#)を生成することができる。
【0029】
第1検出部D1から得られた測定データを分析する他の測定データ分析部57a〜57cも、それぞれがスキャッタグラムを形成して、分析データを生成する。
【0030】
第6測定データ分析部57fは、第2検出部D2から出力された第6測定データを用いて、赤血球及び血小板に関する分析データとして、赤血球数、血小板数、及び赤血球及び血小板に関するその他の分析項目に関する分析データを生成する。
第7測定データ分析部57gは、第3検出部D3から出力された第7測定データを用いて、ヘモグロビン濃度などのヘモグロビンに関する分析データを生成する。
【0031】
分析データ記憶部54cは、各測定データ分析部57a〜57gによって生成された分析データを記憶するものであり、第1分析データ記憶部54c−1、第2分析データ記憶部54c−2、第3分析データ記憶部54c−3、第4分析データ記憶部54c−4、第5分析データ記憶部54c−5、第6分析データ記憶部54c−6、及び、第7分析データ記憶部54c−7を備えている。
【0032】
図6に示すように、血液分析装置1は、試料を測定して分析データを生成するまでの処理に関し、複数の分析チャンネル61〜67を有している。複数のチャンネル61〜67は、白血球/有核赤血球に関する分析を行う第1分析チャンネル61、白血球分類に関する分析を行う第2分析チャンネル62、異常細胞/幼若細胞数に関する分析を行う第3分析チャンネル63、網赤血球に関する分析を行う第4分析チャンネル64、血小板に関する分析を行う第5分析チャンネル65、赤血球及び血小板に関する分析を行う第6分析チャンネル66、及びヘモグロビンに関する分析を行う第7分析チャンネル67を含んでいる。
分析データを生成することに関し、複数の分析チャンネル(測定系)は、それぞれ独立している。すなわち、ある分析チャンネルの分析データを生成する際には、その分析チャンネルの測定データが用いられ、他の分析チャンネルの測定データは用いられることはない。例えば、血小板に関する分析を行う第5分析チャンネル65の場合、第5測定データ分析部57eは、血小板に関する分析データ分析データを生成する際には、第5試料を測定して得られた第5測定データのみを用い、他の分析チャンネル61〜64,66,67の測定データは用いない。
【0033】
[4.分析データ]
以下、複数の測定データ分析部57a〜57eそれぞれによって生成される分析データについて説明する。なお、分析データは、以下において具体的に列挙したものに限定されるわけではない。
第1白血球/有核赤血球に関する分析データには、白血球/有核赤血球に関する複数の分析項目に対応した複数の分析データが含まれる。白血球/有核赤血球に関する複数の分析項目に対応した複数の分析データには、例えば、白血球数(WBC)、好塩基球数(BASO)、有核赤血球数(NRBC#)などが含まれる。
【0034】
白血球分類に関する分析データには、白血球分類に関する複数の分析項目に対応した複数の分析データが含まれる。白血球分類に関する複数の分析項目に対応した複数の分析データには、例えば、好中球数(Neut#)、リンパ球数(Lymph#)、単球数(MONO#)、好酸球数(EO#)、幼若顆粒球数比率(IG%)などが含まれる。なお、幼若顆粒球数比率(IG%)は、全白血球数に対する幼若顆粒球数の比率である。
【0035】
異常細胞/幼若細胞数に関する分析データには、異常細胞/幼若細胞数に関する複数の分析項目に対応した複数の分析データが含まれる。異常細胞/幼若細胞数に関する複数の分析項目に対応した複数の分析データには、例えば、白血球数(WBC−P)、総有核細胞数(TNC−P)などが含まれる。なお、総有核細胞数(TNC−P)=白血球数+有核赤血球数である。
【0036】
網赤血球に関する分析データには、網赤血球に関する複数の分析項目に対応した複数の分析データが含まれる。網赤血球に関する複数の分析項目に対応した複数の分析データには、例えば、網赤血球数(RET#)、破砕赤血球の指標(FRC#)などの分析データが含まれる。
【0037】
血小板に関する分析データには、血小板に関する複数の分析項目に対応した複数の分析データが含まれる。血小板に関する複数の分析項目に対応した複数の分析データには、例えば、血小板数(PLT)、幼若血小板比率(IPF%)などの分析データが含まれる。
【0038】
赤血球及び血小板に関する分析データには、赤血球及び血小板に関する複数の分析項目に対応した複数の分析データが含まれる。赤血球及び血小板に関する複数の分析項目に対応した複数の分析データには、例えば、赤血球数(RBC#)、平均赤血球容積(MCV)、赤血球分布幅(RDW−SD)、平均血小板容積(MPV)などの分析データが含まれる。
【0039】
ヘモグロビンに関する分析データには、例えば、ヘモグロビン濃度(Hgb)などの分析データが含まれる。
【0040】
[5.血球減少症の鑑別]
[5.1 血球減少症について]
血球減少症は、血液中の血球が減少する疾患である。血球減少症には、血小板減少症、赤血球減少症、白血球減少症、汎血球減少症がある。
血小板減少症では、末梢血中の血小板が減少する。血小板減少症の原因となる疾患としては、例えば、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、再生不良性貧血(AA)、骨髄異形成症候群(MDS)などがある。血液中の血小板が減少する原因としては、主に、血小板の破壊亢進及び産生不良が挙げられる。特発性血小板減少性紫斑病(ITP)の原因は破壊亢進であり、再生不良性貧血(AA)及び骨髄異形成症候群(MDS)の原因は産生不良である。
【0041】
破壊亢進が原因である疾患(ITP)と、産生不良が原因の疾患(AA/MDS)とでは、治療法が大きく異なるため、これらの鑑別が重要である。現在の臨床現場では、血液分析装置による検査結果だけで、血球減少症の鑑別をすることは行われておらず、骨髄検査などの他の検査が利用されている。とりわけ、骨髄における血球の産生不良が原因として疑われる場合には、骨髄検査が必要となる。しかし、骨髄検査は、患者への負担が大きい。また、無駄な検査が行われる可能性も高くなる。
したがって、原因となる疾患の鑑別が簡易になることが望まれ、少なくとも、治療法が大きく異なる破壊亢進か産生不良かの鑑別が簡易になることが望まれる。
【0042】
以上のような状況は、血小板減少症以外の他の血球減少症でも同様である。例えば、末梢血中の赤血球が減少する赤血球減少症の原因となる疾患としては、鉄欠乏性貧血(IDA)、再生不良性貧血(AA)、骨髄異形成症候群(MDS)、溶血性貧血(HA)などがある。血液中の赤血球が減少する原因としては、赤血球の破壊亢進及び産生不良のほか、鉄不足など多数ある。溶血性貧血(HA)の原因は破壊亢進であり、再生不良性貧血(AA)、骨髄異形成症候群(MDS)、及び鉄欠乏性貧血(IDA)の原因は産生不良である。また、鉄欠乏性貧血(IDA)の原因としては鉄不足も挙げられる。
したがって、赤血球減少症(及び他の血球減少症)においても、原因となる疾患の鑑別が簡易になることが望まれ、少なくとも、治療法が大きく異なる破壊亢進か産生不良かの鑑別が簡易になることが望まれる。
【0043】
[5.2 血球減少症の鑑別について]
図8(a)は、特許文献1と同様に、幼若血小板比率(IPF%)による血球減少症の鑑別能の評価を行った結果を示している。なお、ここでは、特許文献1とは異なり、疾患として、血小板減少症である特発性血小板減少性紫斑病(ITP)及び再生不良性貧血(AA)のほか、同じく血小板減少症である骨髄異形成症候群(MDS)を含めた。
図8(a)では、幼若血小板比率(IPF%)を縦軸にとり、AA,ITP,MDSそれぞれの患者の幼若血小板比率がプロットされている。なお、
図8(a)において、AAの症例数N=142、ITPの症例数N=309、MDSの症例数N=147である。幼若血小板比率(IPF%)に対するカットオフ値を16%とした場合、AAの偽陽性率は3.5%となり、ITPの真陽性率は17.5%となり、MDSの偽陽性率は29.9%となった。なお、幼若血小板比率(IPF%)がカットオフ値を上回った場合が陽性である。
図8による結果によれば、幼若血小板比率(IPF%)を用いるだけでは、ITPとMDSとの鑑別は必ずしも容易ではないことがわかる。
【0044】
また、本発明者らは、幼若血小板比率(IPF%)だけでなく、他の複数のパラメータをスコア化した血小板破壊亢進スコア(ITPスコア)を独自に算出し、このITPスコアによる血小板減少症の鑑別能の評価を行った。
図8(b)はその結果を示している。
なお、ここでのITPスコアの算出には、リンパ球数(Lymph#)、好中球数(Neut#)、赤血球分布幅(RDW−SD)、ヘモグロビン濃度(Hgb)、網赤血球数(RET#)、平均赤血球容積(MCV)、血小板数(PLT)、平均血小板容積(MPV)、幼若血小板比率(IPF%)などを用いた。
図8(b)では、ITPスコアを縦軸にとり、AA,ITP,MDSそれぞれの患者のITPスコアがプロットされている。なお、
図8(b)において、AAの症例数N=118、ITPの症例数N=228、MDSの症例数N=103である。ITPスコアに対するカットオフ値を2.4とした。この場合、AAの偽陽性率は2.5%となり、幼若血小板比率だけを用いる場合に比べて偽陽性率が1.0%低下した。ITPの真陽性率は70.6%となり、幼若血小板比率だけを用いる場合に比べて真陽性率が53.1%増大した。MDSの偽陽性率は3.9%となり、幼若血小板比率だけを用いる場合に比べて偽陽性率が20.0%低下した。
【0045】
以上の結果から、本発明者らは、所定の血球(
図8では、血小板)の減少原因の鑑別を支援する情報を提供する場合、当該所定の血球に関する情報(
図8では、幼若血小板比率)だけでなく、当該所定の血球以外の血球に関する情報をも反映させた情報の方が、血液分析装置1から提示される情報の精度を向上させることができ、医師による鑑別に役立つという知見を得た。
そこで、本実施形態の血液分析装置1は、特許文献1のように血小板減少症の鑑別を支援する情報として単に血小板に関する分析データを用いるのではなく、複数の血球の分析データを統合して、支援情報を生成する。
【0046】
[6.血球減少症の鑑別を支援する情報の生成]
[6.1 支援情報]
本実施形態では、血液分析装置1から出力される支援情報による鑑別支援の対象となる血球減少原因としては、主に、破壊亢進及び産生不良が採用される。ただし、支援情報による鑑別支援の対象となる血球減少原因は、破壊亢進及び産生不良に限定されるものではなく、原料(鉄、ビタミンB12,葉酸など)の不足、造血因子不足(エリスロポエチンなど)、出血などであってもよい。
また、支援情報による鑑別支援の対象となる血球減少原因は、ITP,AA,MDSなどの疾患であってもよい。
【0047】
支援情報は、鑑別支援の対象となる複数の血球減少原因に対応する複数の原因情報によって構成されるのが好ましい。例えば、破壊亢進及び産生不良の鑑別の場合、支援情報は、破壊亢進に関する第1原因情報(破壊亢進らしさを示す情報)、及び、産生不良に関する第2原因情報(産生不良らしさを示す情報)を含んで構成されるのが好ましい。単一の指標だけを複数の原因の鑑別支援情報とするのではなく、それぞれの原因に対応した情報を示すことで支援情報としての精度が向上し、医師による鑑別が容易となる。
また、支援情報は、ITPに関する第1原因情報(ITPらしさを示す情報)、MDSに関する第2原因情報(MDSらしさを示す情報)、AAに関する第3原因情報(AAらしさを示す情報)によって構成されていてもよい。
【0048】
[6.2 支援情報生成に用いられる分析データ]
本実施形態では、血球減少症の鑑別の支援情報生成に用いられる分析データとして、複数種類の血球に関する分析データを用いる。本実施形態では、支援情報の精度向上の観点から、支援情報生成には、白血球、赤血球、及び血小板の3種類の血球の分析データを用いる。ただし、2種類の血球(例えば、血小板と赤血球)の分析データを用いても良い。
支援情報生成に用いられる分析データは、一種類の血球について、複数個であるのが、情報の精度向上の観点からみて好ましいが、一種類の血球について1個であっても良い。
【0049】
血球減少症の鑑別の支援情報生成に用いられる分析データのうち、白血球に関する分析データとしては、異常細胞/幼若細胞数に関する分析データ(第3チャンネルから生成される分析データ)、白血球分類に関する分析データ(第2チャンネルから生成される分析データ)、及び、白血球/有核赤血球に関する分析データ(第1チャンネルから生成される分析データ)からなる群から選択される1又は複数の分析データであるのが好ましく、幼若顆粒球比率(IG%)、好中球数(Neut#)、単球数(Mono#)、及びリンパ球数(Lymph#)からなる群から選択される1又は複数の分析データであるのがより好ましい。
【0050】
血球減少症の鑑別の支援情報生成に用いられる分析データのうち、赤血球に関する分析データとしては、網赤血球に関する分析データ(第4チャンネルから生成される分析データ)、赤血球及び血小板に関する分析データ(第6チャンネルから生成される分析データ)、及び、ヘモグロビンに関する分析データ(第7チャンネルから生成される分析データ)からなる群から選択される1又は複数の分析データであるのが好ましく、ヘモグロビン濃度(Hgb)、平均赤血球容積(MCV)、網赤血球数(RET#)、赤血球数(RBC#)、赤血球分布幅(RDW−SD)、及び破砕赤血球の指標(FRC#)からなる群から選択される1又は複数の分析データであるのがより好ましい。
【0051】
血球減少症の鑑別の支援情報生成に用いられる分析データのうち、血小板に関する分析データとしては、網赤血球に関する分析データ(第4チャンネルから生成される分析データ)、血小板に関する分析データ(第5チャンネルから生成される分析データ)、赤血球及び血小板に関する分析データ(第6チャンネルから生成される分析データ)からなる群から選択される1又は複数の分析データであるのが好ましく、血小板数(PLT)、幼若血小板比率(IPF%)、及び平均血小板容積(MPV)からなる群から選択される1又は複数の分析データであるのがより好ましい。
【0052】
血小板減少症の原因の鑑別を支援する場合(所定の血球が血小板である場合)、支援情報生成に用いられる情報には、少なくとも、所定の血球(血小板)に関する分析データ(第1分析データ)が含まれるべきであり、他の血球(赤血球又は白血球)に関する分析データ(第2分析データ)も含まれる。
【0053】
赤血球減少症の原因の鑑別を支援する場合(所定の血球が赤血球である場合)、支援情報生成に用いられる情報には、少なくとも、所定の血球(赤血球)に関する分析データ(第1分析データ)が含まれるべきであり、他の血球(血小板又は白血球)に関する分析データ(第2分析データ)も含まれる。
【0054】
白血球減少症の原因の鑑別を支援する場合(所定の血球が白血球である場合)、支援情報生成に用いられる情報には、少なくとも、所定の血球(白血球)に関する分析データ(第1分析データ)が含まれるべきであり、他の血球(赤血球又は血小板)に関する分析データ(第2分析データ)も含まれる。
【0055】
血小板減少に関する支援情報(原因情報)を生成する場合(所定の血球が血小板である場合)、所定の血球(血小板)に関する分析データ(第1分析データ)には、少なくとも幼若血小板比率(IPF%)が含まれているのが好ましい。血小板破壊亢進(ITP)の場合、幼若血小板比率が高値になる傾向があるからである。
また、血小板産生不良(AA/MDS)の場合、幼若血小板比率は、AAでは低値になることが多く、MDSでは広範囲に分布する。このため、血小板破壊亢進に関する第1原因情報(破壊亢進らしさを示す情報)及び血小板産生不良に関する第2原因情報(産生不良らしさを示す情報)の双方を生成する場合、幼若血小板比率は、血小板破壊亢進に関する第1原因情報を生成する場合により重視されるべきである。
【0056】
血小板減少に関する支援情報(原因情報)を生成する場合(所定の血球が血小板である場合)、所定の血球以外の第1の他の血球(赤血球)に関する分析データ(第2分析データ)には、ヘモグロビン濃度(Hgb)が含まれているのが好ましい。血小板産生不良(AA/MDS)の場合、ヘモグロビン濃度が低値になる傾向があるのに対し、血小板破壊亢進(ITP)の場合、ヘモグロビン濃度は正常値になる傾向があるからである。
【0057】
血小板減少に関する支援情報(原因情報)を生成する場合(所定の血球が血小板である場合)、所定の血球以外の第1の他の血球(赤血球)に関する分析データ(第2分析データ)には、赤血球数(RBC#)が含まれているのが好ましい。血小板産生不良(AA/MDS)の場合、赤血球数が低下する傾向があるのに対し、血小板破壊亢進(ITP)の場合、赤血球数は正常値になる傾向があるからである。
【0058】
血小板減少に関する支援情報(原因情報)を生成する場合(所定の血球が血小板である場合)、所定の血球以外の第1の他の血球(赤血球)に関する分析データ(第2分析データ)には、平均赤血球容積(MCV)が含まれているのが好ましい。血小板産生不良の場合、赤血球の異常も生じて、平均赤血球容積が正常範囲から外れやすくなるからである。
【0059】
血小板減少に関する支援情報(原因情報)を生成する場合(所定の血球が血小板である場合)、所定の血球以外の第2の他の血球(白血球)に関する分析データ(第2分析データ)には、好中球数(Neut#)が含まれているのが好ましい。血小板産生不良(AA/MDS)の場合、好中球数が低下する傾向があるのに対し、血小板破壊亢進(ITP)の場合、好中球数は正常値になる傾向があるからである。
【0060】
血小板減少に関する支援情報(原因情報)を生成する場合(所定の血球が血小板である場合)、所定の血球以外の第2の他の血球(白血球)に関する分析データ(第2分析データ)には、単球数(Mono#)が含まれているのが好ましい。血小板産生不良(AA)の場合、単球数が低下する傾向があるのに対し、血小板破壊亢進(ITP)の場合、好中球数は正常値になる傾向があるからである。
【0061】
以上に鑑みると、血小板破壊亢進に関する支援情報(第1原因情報)を生成する場合(所定の血球が血小板である場合)、所定の血球以外の第2の他の血球(白血球)に関する分析データ(第2分析データ)には、好中球数(Neut#)及び単球数(Mono#)からなる群から選択される1又は複数の分析データが含まれているのが好ましい。また、血小板破壊亢進に関する支援情報(第1原因情報)を生成する場合(所定の血球が血小板である場合)、所定の血球以外の第1の他の血球(赤血球)に関する分析データ(第2分析データ)には、ヘモグロビン濃度(Hgb)が含まれているのが好ましい。
さらに、血小板産生不良に関する支援情報(第2原因情報)を生成する場合(所定の血球が血小板である場合)、所定の血球以外の第2の他の血球(白血球)に関する分析データ(第2分析データ)には、好中球数(Neut#)が含まれているのが好ましい。また、血小板産生不良に関する支援情報(第2原因情報)を生成する場合(所定の血球が血小板である場合)、所定の血球以外の第1の他の血球(赤血球)に関する分析データ(第2分析データ)には、赤血球数(RBC#)、ヘモグロビン濃度(Hgb)、及び平均赤血球容積(MCV)からなる群から選択される1又は複数の分析データが含まれているのが好ましい。
【0062】
赤血球減少に関する支援情報(原因情報)を生成する場合(所定の血球が赤血球である場合)、所定の血球(赤血球)に関する分析データ(第1分析データ)には、網赤血球数(RET#)が含まれているのが好ましい。赤血球破壊亢進の場合、破壊(消費)された分を補うべく産生亢進状態となり、網赤血球数が多くなるのに対し、赤血球産生不良の場合、赤血球が産生されにくいため網赤血球数が低値になる傾向があるからである。
【0063】
赤血球減少に関する支援情報(原因情報)を生成する場合(所定の血球が赤血球である場合)、所定の血球(赤血球)に関する分析データ(第1分析データ)には、平均赤血球容積(MCV)が含まれているのが好ましい。赤血球産生不良の場合、赤血球異常のため、平均赤血球容積が正常範囲から外れやすくなるのに対し、赤血球破壊亢進の場合、赤血球異常は小さいため、平均赤血球容積は正常範囲に近くなる傾向があるからである。
【0064】
赤血球減少に関する支援情報(原因情報)を生成する場合(所定の血球が赤血球である場合)、所定の血球(赤血球)に関する分析データ(第1分析データ)には、破砕赤血球の指標(FRC#)が含まれているのが好ましい。赤血球破壊亢進の場合、赤血球破壊によって生じるかけら(破砕赤血球)が多くなる傾向があるからである。
【0065】
赤血球減少に関する支援情報(原因情報)を生成する場合(所定の血球が赤血球である場合)、所定の血球(赤血球)に関する分析データ(第1分析データ)には、赤血球数(RBC#)が含まれているのが好ましい。赤血球産生不良(AA/MDS)の場合、重篤な貧血になりがちだからである。
【0066】
赤血球減少に関する支援情報(原因情報)を生成する場合(所定の血球が赤血球である場合)、所定の血球(赤血球)に関する分析データ(第1分析データ)には、赤血球分布幅(RDW−SD)が含まれているのが好ましい。赤血球産生不良(AA/MDS)の場合、赤血球の産生状態にばらつきがでるからである。
【0067】
赤血球減少に関する支援情報(原因情報)を生成する場合(所定の血球が赤血球である場合)、所定の血球以外の第1の他の血球(白血球)に関する分析データ(第2分析データ)には、好中球数(Neut#)が含まれているのが好ましく、血小板に関する分析データ(第2分析データ)には、血小板数(PLT)が含まれているのが好ましい。好中球数や血小板数が産生不良(AA/MDS)を示唆する場合があるからである。
【0068】
以上に鑑みると、赤血球破壊亢進に関する支援情報(第1原因情報)を生成する場合(所定の血球が赤血球である場合)、所定の血球(赤血球)に関する分析データ(第1分析データ)には、平均赤血球容積(MCV)、網赤血球数(RET#)、及び破砕赤血球の指標(FRC#)からなる群から選択される1又は複数の分析データが含まれているのが好ましい。
また、赤血球破壊亢進に関する支援情報(第1原因情報)を生成する場合(所定の血球が赤血球である場合)、第2分析データには、好中球数(Neut#)及び血小板数(PLT)からなる群から選択される1又は複数の分析データが含まれているのが好ましい。
さらに、赤血球産生不良に関する支援情報(第2原因情報)を生成する場合(所定の血球が赤血球である場合)、所定の血球(赤血球)に関する分析データ(第1分析データ)には、赤血球数(RBC#)、網赤血球数(RET#)、平均赤血球容積(MCV)及び赤血球分布幅(RDW−SD)からなる群から選択される1又は複数の分析データが含まれているのが好ましい。
また、赤血球産生不良に関する支援情報(第2原因情報)を生成する場合(所定の血球が赤血球である場合)、第2分析データには、好中球数(Neut#)及び血小板数(PLT)からなる群から選択される1又は複数の分析データが含まれているのが好ましい。
【0069】
[6.3 血小板減少症の鑑別を支援する情報の生成]
図9は、
図5の支援情報生成ステップ(ステップS4)における処理手順を示している。なお、
図6の支援情報生成部(第2生成部)58は、この支援情報生成ステップを実行する機能部に相当する。
図6の支援情報生成部58は、血球の破壊亢進に関する鑑別支援情報(第1原因情報)を生成する破壊亢進スコア生成部(第1原因情報生成部)58aと、血球の産生不良不スコア生成部(第2原因情報生成部)58bと、を備えている。
【0070】
破壊亢進スコア生成部58a及び産生不良スコア生成部58bは、それぞれ、スコアリング情報記憶部54dに記憶されたスコアリング情報(支援情報生成用情報)を参照して、分析データ記憶部54cに記憶された複数の分析データから、鑑別支援情報を生成する。
【0071】
スコアリング情報記憶部54dは、血小板破壊亢進の鑑別支援情報を生成するための情報である血小板破壊亢進スコアリング情報54d−1(
図10参照)と、血小板産生不良の鑑別支援情報を生成するための情報である血小板産生不良スコアリング情報54d−2(
図11参照)と、を記憶している。
なお、スコアリング情報記憶部54dは、後述の赤血球減少症の鑑別支援情報を生成するための情報54d−3,54d−4(
図12,13参照)も記憶している。これらの情報54d−3,54−4については後述する。
【0072】
血小板減少症の鑑別支援情報生成のため、破壊亢進スコア生成部58aは、血小板破壊亢進スコアリング情報54d−1を参照して、分析データ記憶部54cに記憶されている複数の分析データのうち、血小板の破壊亢進に関する鑑別支援情報(第1原因情報)の生成に用いられる分析データ(第1対象分析データ)を選択する(ステップS11)。
血小板破壊亢進スコアリング情報54d−1には、血小板破壊亢進の第1対象分析データとして、幼若顆粒球数比率(IG%)、好中球数(Neut#)、ヘモグロビン濃度(Hgb)、平均赤血球容積(MCV)、網赤血球数(RET#)、血小板数(PLT)、幼若血小板比率(IPF%)、及び単球数(Mono#)が設定されている。破壊亢進スコア生成部58aは、これらの複数の第1対象分析データを分析データ記憶部54cから読み込む。
【0073】
同様に、産生不良スコア生成部58bは、血小板産生不良スコアリング情報54d−2を参照して、分析データ記憶部54cに記憶されている複数の分析データのうち、血小板の産生不良に関する鑑別支援情報(第2原因情報)の生成に用いられる分析データ(第2対象分析データ)を選択する(ステップS11)。
血小板産生不良スコアリング情報54d−2には、血小板産生不良の第2対象分析データとして、好中球数(Neut#)、赤血球数(RBC#)、ヘモグロビン濃度(Hgb)、平均赤血球容積(MCV),血小板数(PLT),幼若血小板比率(IPF%)が設定されている。産生不良スコア生成部58bは、これらの複数の第2対象分析データを分析データ記憶部54cから読み込む。
【0074】
前述のように本実施形態では、分析データを生成するまでは、複数の分析チャンネル(測定系)61〜67は独立しており、ある分析チャンネルの分析データを生成する際には、その分析チャンネルの測定データが用いられ、他の分析チャンネルの測定データは用いられることはない。
一方、本実施形態では、血球減少症の鑑別の支援情報を生成する際(所定の血球が血小板である場合)には、所定の血球(血小板)に関する分析データ以外に第1の他の血球(赤血球)に関する分析データ及び第2の他の血球(白血球)に関する分析データを用いる。
つまり、血小板減少症の鑑別の支援情報を生成する際には、所定の血球(血小板)に関する分析データ(例えば、幼若血小板比率(IPF%))を生成する第5分析チャンネル65によって生成された分析データだけでなく、他の分析チャンネル(第2分析チャンネル62、第4分析チャンネル64、第6分析チャンネル66、第7分析チャンネル67など)によって生成された分析データも用いられる。このように、本実施形態では、支援情報を生成する際には、複数の分析チャンネル(測定系)における複数の分析データが横断的に用いられる。
【0075】
続いて、破壊亢進スコア生成部58aは、複数の第1対象分析データの値を、
図10に示す血小板破壊亢進スコアリング情報(測定範囲値表)54d−1に従って、スコアリング(規格化)する。
血小板破壊亢進スコアリング情報(測定範囲値表)54d−1では、第1対象分析データそれぞれについて、分析データの値とスコア(0点〜3点)との対応関係が規定されている。破壊亢進スコア生成部58aは、このスコアリング情報54d−1に従って、第1対象分析データそれぞれの値をスコア(第1スコア)に変換する(ステップS12)。
【0076】
同様に、産生不良スコア生成部58bは、複数の第2対象分析データの値を、
図11に示す血小板産生不良スコアリング情報(測定範囲値表)54d−2に従って、スコアリング(規格化)する。
血小板産生不良スコアリング情報(測定範囲値表)54d−2においても、第2対象分析データそれぞれについて、分析データの値とスコア(0点〜3点)との対応関係が規定されている。産生不良スコア生成部58bは、このスコアリング情報54d−2に従って、第2対象分析データそれぞれの値をスコア(第2スコア)に変換する(ステップS12)。
【0077】
このようなスコアリングを行うことにより、複数の分析データを統合した支援情報生成が容易となる。本実施形態では、複数の血球(血小板、赤血球、白血球)それぞれに関する分析データを総合的に考慮するが、それぞれの分析データには全く異なる単位の値も含まれているため、複数の分析データをそのままの値で総合的に考慮するには困難を伴う。これに対し、本実施形態のようにスコアリング情報54d−1〜54d−4を予め設定しておき、そのスコアリング情報にしたがって、複数の分析データそれぞれをスコアリングすることで、後述のような簡単な算出式を用いてスコアを算出することができる。
【0078】
そして、破壊亢進スコア生成部58aは、第1対象分析データそれぞれの第1スコアについて、破壊亢進状態における特徴としての重要度に応じた重み付け(第1スコアに対する重みの乗算)を行い、重みづけされた第1スコアの合計を求め、その合計を第1対象分析データ数で除算し、血小板の破壊亢進スコア(鑑別支援情報;第1原因情報)を得る(ステップS13)。なお、各対象分析データの重みも、スコアリング情報54d−1に設定されている。
また、第1対象分析データの値が、破壊亢進状態における特徴を強く示す第1特別条件に合致する場合には、上記のようにして求めた破壊亢進スコアに対して、第1特別条件に応じて設定された値を加算して破壊亢進スコアとしてもよい。
また、重みづけされた第1スコアの合計を第1対象分析データ数で除算する工程は省略してもよい。
【0079】
同様に、産生不良スコア生成部58bは、第2対象分析データそれぞれの第2スコアについて、産生不良状態における特徴としての重要度に応じた重み付け(第2スコアに対する重みの乗算)を行い、重みづけされた第2スコアの合計を求め、その合計を第2対象分析データ数で除算し、血小板の産生不良スコア(鑑別支援情報;第2原因情報)を得る(ステップS13)。なお、各対象分析データの重みも、スコアリング情報54d−2に設定されている。
また、第2対象分析データの値が、産生不良状態における特徴を強く示す第2特別条件に合致する場合には、上記のようにして求めた産生不良スコアに対して、第2特別条件に応じて設定された値を加算して産生不良スコアとしてもよい。
また、重みづけされた第2スコアの合計を第2対象分析数で除算する工程は省略してもよい。
【0080】
以上のようにして算出されるスコアの算出式は、以下の通りである。
B
all=A
1×B
1+A
2×B
2+A
3×B
3+・・+A
n×B
n
C=B
all÷n
スコアE=C+(D
1+D
2+・・+D
m)
なお、除算する工程を省略する場合、スコアEは、E=B
all+(D
1+D
2+・・+D
m)の式で算出される。
【0081】
ここで、
n:対象分析データの数
A
i:対象分析データのスコア(i:1〜n)
B
i:重み(i:1〜n)
D
j:特別条件X
jに応じた加算値(j:1〜m;mは特別条件の数)
【0082】
破壊亢進に関する第1特別条件としては、例えば、以下の2つの条件X
1,X
2を設定できる。
X
1:幼若血小板比率(IPF%)>10%の場合は、D
1=15であり、そうでなければ、D
1=0
X
2:ヘモグロビン濃度(Hgb)<12.0g/dlの場合、かつ好中球数(Neut#)>2000/uLの場合は、D
2=40であり、そうでなければ、D
2=0
【0083】
産生不良に関する第2特別条件としては、例えば、以下の2つの条件X
1,X
2を設定できる。
X
1:幼若血小板比率(IPF%)<6%の場合は、D
1=20であり、そうでなければ、D
1=0
X
2:ヘモグロビン濃度(Hgb)<10.0g/dL及び好中球数(Neut#)<1500の場合は、D
2=10であり、そうでなければ、D
2=0
【0084】
前述の算出式に従うと、破壊亢進に関する第1対象分析データが
図10に示す通りである場合、破壊亢進スコアは、以下の算出式で求められる。
B
all=[幼若顆粒球数比率(IPF%)スコア×1]+[好中球数(Neut#)スコア×1.5]+[ヘモグロビン濃度(Hgb)スコア×2]+[平均赤血球容積(MCV)スコア×1]+[網赤血球数(RET#)スコア×1]+[血小板数(PLT)スコア×1]+[幼若血小板比率(IPF%)スコア×3]+[単球数(Mono#)スコア×1.2]
C=B
all÷8
破壊亢進スコア=C+(D
1+D
2)
【0085】
また、産生不良に関する第2対象分析データが
図11に示す通りである場合、産生不良スコアは、以下の算出式で求められる。
B
all=[好中球数(Neut#)×1]+[赤血球数(RBC#)×3]+[ヘモグロビン濃度(Hgb)×1.2]+[平均赤血球容積(MCV)×1.1]+[血小板数(PLT)×1]+[幼若血小板比率(IPF%)×2]
C=B
all÷6
産生不良スコア=C+(D
1+D
2)
【0086】
なお、破壊亢進スコアの算出式における幼若血小板比率の重みは3であるのに対し、産生不良スコアの算出式における幼若血小板比率の重みは2であり、破壊亢進スコア算出時の方が、幼若血小板比率が重視されている。
【0087】
以上のようにして算出された血小板の破壊亢進スコア及び産生不良スコアは、ハードディスク51dの支援情報記憶部54eに支援情報として記憶される(ステップS14)。
【0088】
上記の破壊亢進スコア算出式にて得られた破壊亢進スコアによる鑑別能の評価を、破壊亢進状態の疾患(ITP)227例と、破壊亢進が進んでいない疾患(AA/MDS)221例にて実施した。上記の破壊亢進スコア算出式にて得られた破壊亢進スコアに対するカットオフ値を1.8とした場合、前者(ITP)の陽性率は73.6%であり、後者(AA/MDS)の陽性率は14.5%であった。なお、スコアがカットオフ値を上回った場合が陽性であり、カットオフ値を下回った場合が陰性である。
【0089】
また、上記の産生不良スコア算出式にて得られた産生不良スコアによる鑑別能の評価を、産生不良状態の疾患(AA/MDS)221例と、産生不良が進んでいない疾患(ITP)227例にて実施した。上記の産生不良スコア算出式にて得られた産生不良スコアに対するカットオフ値を1.4とした場合、前者(AA/MDS)の陽性率は86.4%であり、後者(ITP)の陽性率は18.1%であった。なお、スコアがカットオフ値を上回った場合が陽性であり、カットオフ値を下回った場合が陰性である。
【0090】
以上のように、破壊亢進スコアと産生不良スコアは、それぞれ、破壊亢進らしさ及び産生不良らしさを良く示していることがわかる。このように、血小板減少症の鑑別を支援する情報として、血小板に関する分析データだけでなく、赤血球や白血球に関する分析データも考慮した支援情報とすることで、鑑別が容易となる。
しかも、破壊亢進スコアと産生不良スコアの双方が医師に提示されることで、いずれか一方のスコアが提示される場合に比べて、医師による鑑別が容易となる。
【0091】
[6.4 赤血球減少症の鑑別を支援する情報の生成]
前述の破壊亢進スコア生成部58a及び産生不良不スコア生成部58bは、血小板減少症の鑑別を支援する情報を生成するだけなく、赤血球減少症の鑑別を支援する情報(赤血球破壊亢進スコア及び赤血球産生不良スコア)も生成することができる。
赤血球の破壊亢進及び産生不良のスコアを生成する手順は、
図9に示す血小板の場合と同様であり、
図9における「血小板」を「赤血球」と読み替えればよい。
【0092】
赤血球の破壊亢進及び産生不良のスコアを生成するための具体的な処理手順は、以下の通りである。
まず、破壊亢進スコア生成部58aは、
図12に示す破壊亢進スコアリング情報54d−3を参照して、分析データ記憶部54cに記憶されている複数の分析データのうち、赤血球の破壊亢進に関する鑑別支援情報(第1原因情報)の生成に用いられる分析データ(第1対象分析データ)を選択する(ステップS11)。
赤血球破壊亢進スコアリング情報54d−3には、赤血球破壊亢進の第1対象分析データとして、平均赤血球容積(MCV)、好中球数(Neut#)、網赤血球数(RET#)、血小板数(PLT)、破砕赤血球の指標(FRC#)が設定されている。破壊亢進スコア生成部58aは、これらの複数の第1対象分析データを分析データ記憶部54cから読み込む。
【0093】
同様に、産生不良スコア生成部58bは、
図13に示す産生不良スコアリング情報54d−4を参照して、分析データ記憶部54cに記憶されている複数の分析データのうち、赤血球の産生不良に関する鑑別支援情報(第2原因情報)の生成に用いられる分析データ(第2対象分析データ)を選択する(ステップS11)。
赤血球産生不良スコアリング情報54d−4には、赤血球産生不良の第2対象分析データとして、好中球数(Neut#)、赤血球数(RBC#)、血小板数(PLT),網赤血球数(RET#)、平均赤血球容積(MCV)、赤血球分布幅(RDW−SD)が設定されている。産生不良スコア生成部58bは、これらの複数の第2対象分析データを分析データ記憶部54cから読み込む。
【0094】
続いて、破壊亢進スコア生成部58aは、複数の第1対象分析データの値を、
図12に示す赤血球破壊亢進スコアリング情報(測定範囲値表)54d−3に従って、スコアリング(規格化)する。
赤血球破壊亢進スコアリング情報(測定範囲値表)54d−3では、第1対象分析データそれぞれについて、分析データの値とスコア(0点〜3点)との対応関係が規定されている。破壊亢進スコア生成部58aは、このスコアリング情報54d−3に従って、第1対象分析データそれぞれの値をスコア(第1スコア)に変換する(ステップS12)。
【0095】
同様に、産生不良スコア生成部58bは、複数の第2対象分析データの値を、
図13に示す赤血球産生不良スコアリング情報(測定範囲値表)54d−4に従って、スコアリング(規格化)する。
赤血球産生不良スコアリング情報(測定範囲値表)54d−4においても、第2対象分析データそれぞれについて、分析データの値とスコア(0点〜3点)との対応関係が規定されている。産生不良スコア生成部58bは、このスコアリング情報54d−2に従って、第2対象分析データそれぞれの値をスコア(第2スコア)に変換する(ステップS12)。
【0096】
そして、破壊亢進スコア生成部58aは、第1対象分析データそれぞれの第1スコアを用いて、破壊亢進スコアを算出する(ステップS13)。
同様に、産生不良スコア生成部58bは、第2対象分析データそれぞれの第2スコアを用いて、産生不良スコアを算出する(ステップS13)。
【0097】
前述の算出式に従うと、破壊亢進に関する第1対象分析データが
図12に示す通りである場合、赤血球の破壊亢進スコアは、以下の算出式で求められる。なお、ここでは、特別条件は考慮しないが、血小板の場合と同様に考慮してもよい。
B
all=[平均赤血球容積(MCV)スコア×2]+[好中球数(Neut#)スコア×1]+[網赤血球数(RET#)スコア×3]+[血小板数(PLT)スコア×1]+[破砕赤血球の指標(FRC#)スコア×2]
赤血球の破壊亢進スコア=B
all÷5
【0098】
また、産生不良に関する第2対象分析データが
図13に示す通りである場合、赤血球の産生不良スコアは、以下の算出式で求められる。なお、ここでは、特別条件は考慮しないが、血小板の場合と同様に考慮してもよい。
B
all=[好中球数(Neut#)スコア×1]+[赤血球数(RBC#)スコア×1.5]+[血小板数(PLT)スコア×1.2]+[網赤血球数(RET#)スコア×3]+[平均赤血球容積(MCV)スコア×2]+[赤血球分布幅(RDW−SD)スコア×1]
赤血球の産生不良スコア=B
all÷6
【0099】
以上のようにして算出された赤血球の破壊亢進スコア及び産生不良スコアは、ハードディスク51dの支援情報記憶部54eに支援情報として記憶される(ステップS14)。
【0100】
[7.支援情報の出力]
図14及び
図15は、
図5の情報出力ステップS5において、表示部(出力部)52に出力される支援情報の出力例を示している。
図14(a)は、第1原因情報としての血小板破壊亢進スコア(血小板減少破壊亢進suspectスコア)、及び第2原因情報としての血小板産生不良スコア(血小板減少産生不良suspectスコア)それぞれをグラフ(棒グラフ)にて表示した例を示している。
支援情報生成ステップS4において複数のスコア(破壊亢進スコア及び産生不良スコア)が算出される場合において、出力ステップS5で出力されるスコアは、より大きい(最も大きい)スコアだけであってもよい。しかし、
図14(a)に示すように、算出された複数のスコアそれぞれを出力する方が、鑑別が容易となる。例えば、破壊亢進スコアが100点満点で50点であり、産生不良スコアが100点満点で20点である場合を考える。この場合、破壊亢進スコアが50点であることだけを出力するよりも、産生不良スコアが20点であることも表示する方が、産生不良状態ではなく破壊亢進状態であることをより強く示唆する。よって、複数のスコアを比較可能に表示する方が、鑑別が容易となる。なお、表示部(出力部)52において複数のスコアを同時に出力するなどして、複数のスコアが表示部52においていずれも表示されている状態が生じるようにすることで、複数のスコアの比較が容易となる。
【0101】
図14(b)は、支援情報が、第1原因情報としてのITPsuspectスコア(ITPらしさを示す情報)、第2原因情報としてのMDSsupectスコア(MDSらしさを示す情報)、第3原因情報としてのAAsuspectスコア(AAらしさを示す情報)によって構成されている場合の支援情報出力例を示している。
なお、ITPsuspectスコアは、血小板破壊亢進スコアと同様に算出できる。MDSsupectスコアは、前述の血小板産生不良スコアの算出式において、MDSを強く特徴付ける分析データの重みを大きくするなどの変更を加えた算出式を用いることで算出できる。同様に、AAsuspectスコアは、前述の血小板産生不良スコアの算出式においてAAを強く特徴付ける分析データの重みを大きくするなどの変更を加えた算出式を用いることで算出できる。
【0102】
図15(a)は、第1原因情報としての赤血球破壊亢進スコア(赤血球減少破壊亢進suspectスコア)、及び第2原因情報としての赤血球産生不良スコア(血小板減少産生低下suspectスコア)それぞれをグラフ(棒グラフ)にて表示した例を示している。なお、
図15(a)においても、いずれか一方のスコアだけを出力してもよいが、複数のスコアを出力する方が、鑑別が容易となる。
【0103】
図15(b)は、支援情報が、赤血球減少破壊亢進suspectスコア及び赤血球減少産生低下suspectスコアのほか、赤血球減少鉄不足suspectスコアを含んでいる場合の支援情報出力例を示している。
なお、赤血球減少鉄不足suspectスコアは、前述の赤血球産生不良スコアの算出式において、鉄不足を強く特徴付ける分析データの重みを大きくするなどの変更を加えた算出式を用いることで算出できる。
【0104】
図14及び
図15のようにスコアを表示する場合、スコアに応じて、次の検査を誘導するようなメッセージを出力してもよい。メッセージとしては、例えば、「○○を測定してください。」「××を確認してください。」「△△検査の□□を確認してください。」などを採用できる。
【0105】
また、支援情報の出力態様は、
図14及び
図15のように算出式で求めたスコアの値を示す棒グラフとして出力されるものに限らず、
図16に示すようにレーダーチャートのような他の形式のグラフで出力しても良い。
図16のレーダーチャートでは、分析データのスコアそれぞれが各軸の値として設定されており、複数の分析データのスコア(又は重みづけされた分析データのスコア)が、レーダーチャートに表示される。この場合、レーダーチャートで囲まれた部分の面積の大小が、破壊亢進スコア算出式で求めた破壊亢進スコアなどのスコアに対応する。
【0106】
図14〜
図16に示す支援情報の出力態様は一例であり、他の様々な形式を採用することができる。
【0107】
[8.付記]
なお、本発明は、前述した実施の形態及び変形例に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。