【解決手段】尿検体を含む測定試料をフローセル31に流す。フローセル31を流れる測定試料に光を照射する。測定試料からの光の強度に基づいて時間軸に沿って波形状に振幅する信号を生成する。尿検体に含まれる各有形成分に対応する信号の波形の両端部のそれぞれの傾きに関する情報に基づいて、尿検体に含まれる円柱を粘液糸と区別して検出する。
前記信号波形の両端部のそれぞれの傾きに関する情報に基づいて、少なくとも一方側の端部の傾きが傾きの閾値よりも小さい信号波形に対応する有形成分を粘液糸であると特定する、請求項1に記載の尿検体分析方法。
前記信号波形の両端部のそれぞれの傾きに関する情報に基づいて、両端部の傾きが傾きの閾値よりも大きい信号波形に対応する有形成分を円柱であると特定する、請求項1または2に記載の尿検体分析方法。
前記信号波形の両端部のそれぞれの傾きに関する情報と、前記信号波形の両端部以外の部分の形状を反映する情報とに基づいて、前記尿検体に含まれる粘液糸と区別して円柱を検出する、請求項1または2に記載の尿検体分析方法。
前記信号波形の両端部のそれぞれの傾きが傾きの閾値よりも大きく、かつ、前記信号波形の面積を前記信号波形の幅で除した値が、閾値よりも大きいときに、前記有形成分を円柱であると特定する、請求項5に記載の尿検体分析方法。
前記信号波形の両端部のそれぞれの傾きが傾きの閾値よりも大きく、かつ、前記信号波形の極小値が信号レベルの閾値よりも高いときに、前記有形成分を円柱であると特定する、請求項7に記載の尿検体分析方法。
前記信号波形の両端部のそれぞれの傾きが傾きの閾値よりも大きく、かつ、前記信号波形の両端部以外の部分のうち、信号レベルの閾値よりも低い部分の幅の総和が閾値よりも小さいときに、前記有形成分を円柱であると特定する請求項4に記載の尿検体分析方法。
前記傾きに関する情報として、第1の信号レベルから、前記第1の信号レベルよりも高い第2の信号レベルに至るまでの時間、もしくは、前記第2の信号レベルから前記第1の信号レベルに至るまでの時間を用いる、請求項1〜9のいずれか一項に記載の尿検体分析方法。
前記信号波形と、第1の信号レベルと、前記第1の信号レベルよりも高い第2の信号レベルと前記信号波形との交点が位置する時間とにより囲まれた領域の面積を前記傾きに関する情報として用いる、請求項1〜9のいずれか一項に記載の尿検体分析方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施した好ましい形態の一例について説明する。但し、下記の実施形態は、単なる例示である。本発明は、下記の実施形態に何ら限定されない。
【0012】
[第1の実施形態]
(尿検体分析装置1)
図1は、本実施形態に係る尿検体分析装置1の略図的ブロック図である。
図1に示される尿検体分析装置1は、尿検体中の有形成分を分析する装置である。尿検体の有形成分は、赤血球、白血球、上皮細胞、細菌、円柱、粘液糸等を含む。円柱とは、例えば、Tomm−Horsfallムコ蛋白が、腎尿細管腔内において凝固沈殿したものである。円柱には基質内に血液細胞や腎尿細管上皮細胞などが包含されたものもある。粘液糸は、ムコ蛋白を含む、細長い紐状の有形成分である。
【0013】
尿検体分析装置1は、尿検体分配部10と、試料調製部20と、光学検出部30と、処理部40とを備えている。
【0014】
図2は、尿検体分配部10及び試料調製部20の模式図である。
図2に示されるように、尿検体分配部10は、吸引管11を用いて試験管12等に入れられた尿検体を所定量吸引する。尿検体分配部10は、吸引した尿検体を、試料調製部20に分注する。具体的には、尿検体分配部10は、試料調製部20の第1の反応槽21aと第2の反応槽21bとに尿検体のアリコートを分配する。
【0015】
第1の反応槽21aにおいて、アリコートは、第1の希釈液22a及び第1の染色液23aと混合される。これにより、第1の染色液23aに含まれる色素により測定試料中の有形成分が染色される。第1の染色液23aは、細胞膜及び蛋白質を染色する染色色素を含有している。第1の反応槽21aにおいて調製された第1の測定試料は、尿中の赤血球、円柱、粘液糸等の核酸を有さない粒子の分析に供される。
【0016】
第2の反応槽21bにおいて、アリコ−トは、第2の希釈液22b及び第2の染色液23bと混合される。これにより、第2の染色液23bに含まれる色素により測定試料中の有形成分が染色される。第2の染色液23bは、核酸を特異的に染色する染色色素を含有している。第2の反応槽21bにおいて調製された第2の測定試料は、尿中の白血球、上皮細胞、真菌、細菌等の核酸を有する細胞の分析に供される。
【0017】
第1及び第2の反応槽21a、21bは、それぞれ、光学検出部30のフローセル31に接続されている。第1及び第2の測定試料は、第1又は第2の反応槽21a、21bからフローセル31に供給される。測定試料は、フローセル31内において、加圧されたシース液の流れの中心を通過する。このとき、シース液による鞘状層流が生成される。測定試料に含まれた有形成分は、鞘状層流の中にひとつずつ引き込まれる。従って、測定試料中の有形成分は、ひとつずつフローセル31内を通過していく。
【0018】
図3は、光学検出部30の模式図である。
図3に示されるように、光学検出部30は、光源32を有する。光源32は、例えば、半導体レーザや、ガスレーザ等により構成することができる。光源32からの光は、集光光学系33によりフローセル31を流れる測定試料に集光する。これにより、測定試料に含まれている有形成分から、前方散乱光、側方散乱光及び蛍光が生じる。
【0019】
前方散乱光は、光学系34により受光部35に集光される。受光部35は、受光した前方散乱光の強度に応じた前方散乱光信号(FSC)を生成する。受光部35は、例えば、フォトダイオード等により構成することができる。
【0020】
側方散乱光は、光学系36及びダイクロイックミラー37を経由して受光部38に集光する。受光部38は、受光した側方散乱光の強度に応じた側方散乱光信号(SSC)を生成する。受光部38は、例えば、フォトマルチプライヤ等により構成することができる。
【0021】
蛍光は、光学系36及びダイクロイックミラー37を経由して受光部39に集光する。受光部39は、受光した蛍光の強度に応じた蛍光信号(FL)を生成する。受光部39は、例えば、フォトマルチプライヤ等により構成することができる。
【0022】
前方散乱光信号(FSC)、側方散乱光信号(SSC)及び蛍光信号(FL)は、それぞれ、処理部40に対して出力される。処理部40は、前方散乱光信号(FSC)、側方散乱光信号(SSC)及び蛍光信号(FL)を用いて各有形成分を計数する。処理部40は、尿検体分配部10、試料調製部20及び光学検出部30の制御を行う。
【0023】
(尿検体分析装置1において実行される尿検体分析方法)
尿検体分析装置1では、まず、処理部40は、尿検体分配部10及び試料調製部20に測定試料の調製を行わせる。具体的には、
図4に示されるように、処理部40は、尿検体分配部10に検体を吸引させ(ステップS1)、次に、試料調製部20に、その検体と希釈液22a、22b及び染色液23a、23bとから試料を調製させる(ステップS2)。その結果、第1の希釈液22a及び第1の染色液23aと尿検体とが混合された第1の測定試料と、第2の希釈液22b及び第2の染色液23bと尿検体とが混合された第2の測定試料とが調製される。
【0024】
次に、処理部40は、光学検出部30に、測定項目に合致した測定を行わせる(ステップS3)。フローセル31にシース液を送液しながら、第1の測定試料をフローセル31に供給する。光学検出部30は、前方散乱光、側方散乱光及び蛍光を検出し、前方散乱光信号(FSC)、側方散乱光信号(SSC)及び蛍光信号(FL)を生成する。前方散乱光信号(FSC)、側方散乱光信号(SSC)及び蛍光信号(FL)は、処理部40に対して出力される。
【0025】
次に、フローセル31にシース液を送液しながら、第2の測定試料をフローセル31に供給する。光学検出部30は、前方散乱光、側方散乱光及び蛍光を検出し、光の強度に関する信号である前方散乱光信号(FSC)、側方散乱光信号(SSC)及び蛍光信号(FL)を生成する。前方散乱光信号(FSC)、側方散乱光信号(SSC)及び蛍光信号(FL)は、処理部40に対して出力される。
【0026】
処理部40は、出力された信号の解析を行う(ステップS4)。具体的には、処理部40は、赤血球、白血球、上皮細胞、細菌、円柱、粘液糸等の有形成分の計数を行う。その後、処理部40は、解析結果を図示しない表示部に表示させる(ステップS5)。
【0027】
本実施形態では、処理部40が、蛍光信号(FL)に基づいて円柱と粘液糸とを計数する例について説明する。もっとも、本発明は、これに限定されない。処理部40は、蛍光信号(FL)以外の信号を用いて有形成分の特定を行うように構成されていてもよい。例えば、処理部40は、前方散乱光や側方散乱光などの散乱光の強度に関する信号を用いて有形成分の特定を行うように構成されていてもよい。
【0028】
図5は、円柱の時間軸の信号波形の一例である。円柱は、一般的に、太く、かつ、均一な太さを有する。このため、円柱に対する時間軸の信号波形の両端部の傾きが大きい。円柱に対する時間軸の信号波形の両端部は、急峻である。
【0029】
図6は、粘液糸の時間軸の信号波形の一例である。粘液糸は、一般的に、円柱よりも細く、かつ、先端側及び後端側の少なくとも一方に向かって先細る形状を有する。このため、粘液糸の時間軸の信号波形の少なくとも一方側の端部の傾きが小さい。粘液糸の時間軸の信号波形の少なくとも一方側の端部は、急峻ではない。
図6には、信号波形の粘液糸の信号波形の先端側の端部の傾きが小さい例を示している。粘液糸の時間軸の信号波形には、後端側の端部の傾きが小さい信号波形、及び先端側の端部と後端側の端部との両方の傾きが小さい信号波形が含まれる。
【0030】
なお、本明細書において「先端側」は、フローセル31の流れる方向の下流側を意味する。本発明において「後端側」は、フローセル31の流れる方向の上流側を意味する。
【0031】
尿検体分析装置1では、処理部40は、上述の円柱及び粘液糸のそれぞれに対応する時間軸の信号波形の特徴に鑑み、各有形成分に対応する時間軸の信号波形の少なくとも一方側の端部の傾きに関する情報に基づいて有形成分の種類を特定する。具体的には、処理部40は、信号波形の両端部のそれぞれの傾きに関する情報に基づいて、両端部の傾きが傾きの閾値よりも小さい信号波形に対応する有形成分を粘液糸であると判断する。円柱の信号波形は、少なくとも一方側の端部の傾きが傾きの閾値よりも小さいという条件を満たし得ない。従って、信号波形の両端部のそれぞれの傾きに関する情報に基づいて、両端部の傾きが傾きの閾値よりも大きい信号波形に対応する有形成分を円柱であると判断する。このようにすることにより、尿検体に含まれる円柱を高い識別精度で粘液糸と識別することができる。
【0032】
より具体的には、処理部40は、信号波形の端部の傾きに関する情報として、信号波形が第1の信号レベルTh1(
図5及び
図6を参照)に最初に達したときから、第1の信号レベルTh1よりも高い第2の信号レベルTh2に初めて至るまでの時間Taと、信号波形が第2の信号レベルTh2を最後に下回ったときから、第1の信号レベルTh1に至るまでの時間Tbとを用いている。時間Taは、信号波形の先端側の傾きの急峻性を表すパラメータである。時間Tbは、信号波形の後端側の傾きの急峻性を表すパラメータである。
【0033】
図7に示されるように、処理部40は、時間Taが予め定められた時間Ta1よりも大きいこと、及び時間Tbが予め定められた時間Tbよりも大きいことの少なくとも一方が満たされるときに、有形成分を粘液糸と特定する。すなわち、処理部40は、Ta>Ta1かつTb>Tb1が満たされるとき、Ta>Ta1かつTb≦Tb1が満たされるとき、及び、Ta≦Ta1かつTb>Tb1が満たされるときに、有形成分を粘液糸と特定する。処理部40は、Ta≦Ta1かつTb≦Tb1が満たされるときに、有形成分を円柱と特定する。
【0034】
このように、尿検体分析装置1では、尿検体に含まれる各有形成分に対応する信号の波形の両端部のそれぞれの傾きに関する情報に基づいて、尿検体に含まれる円柱を粘液糸と区別して検出する。このため、尿検体に含まれる円柱の識別性が高い。
【0035】
なお、第1の信号レベルTh1は、例えば、信号の最大強度の3%〜10%程度とすることができる。第2の信号レベルTh2は、例えば、信号の最大強度の50%〜80%程度とすることができる。
【0036】
〔第2の実施形態〕
第1の実施形態では、Ta≦Ta1かつTb≦Tb1が満たされるときに、有形成分を円柱と特定する例について説明した。しかしながら、この領域に含まれる信号波形を有する有形成分の全てが円柱であると断定できない場合がある。例えば、複数の粘液糸が絡まってひとつの塊を形成していたり、粘液糸に、例えば他の球状の有形成分などの夾雑物が付着している場合が考えられる。そのような場合には、粘液糸の信号波形であっても、Ta≦Ta1かつTb≦Tb1を満たす可能性がある。これに鑑み、第2の実施形態では、
図8に示されるように、Ta≦Ta1かつTb≦Tb1が満たされた場合には、円柱である可能性と、粘液糸である可能性とがあると認定し、さらなる判断を行う。具体的には、本実施形態では、信号波形の両端部のそれぞれの傾きに関する情報と、信号波形の両端部以外の部分の形状を反映する情報とに基づいて、尿検体に含まれる粘液糸と区別して円柱を検出する。そうすることにより、円柱をより高い識別精度で粘液糸と区別して検出することができる。なお、信号波形の両端部以外の部分の形状を反映する情報は、例えば、信号波形の幅と信号波形の面積との相関を表すパラメータであってもよい。
【0037】
例えば、
図9に模式的に示されるように、相互に絡み合った複数の粘液糸の塊の両端に夾雑物が付着している場合は、信号波形の両端部の傾きが急峻となり、Ta≦Ta1かつTb≦Tb1が満たされる場合がある。しかしながら、そのような場合であっても、夾雑物が粘液糸に対して全体的に付着していることは想定し難い。このため、複数の粘液糸を有する塊は、他の部分よりも細い部分を有するのが一般的である。これに鑑み、処理部40は、信号波形の両端部のそれぞれの傾きが傾きの閾値よりも小さい場合であっても、信号波形の幅Twと信号波形の面積Sとが所定の相関を有さないときに、有形成分を粘液糸であると特定する。一方、処理部40は、信号波形の両端部のそれぞれの傾きが傾きの閾値よりも小さく、かつ信号波形の幅Twと面積Sとが所定の相関を有するときに、有形成分を円柱であると特定する。
【0038】
すなわち、処理部40は、Ta>Ta1かつTb>Tb1が満たされるとき、Ta>Ta1かつTb≦Tb1が満たされるとき、Ta≦Ta1かつTb>Tb1が満たされるとき、及び、Ta≦Ta1、Tb≦Tb1かつ幅Twと面積Sとが所定の相関を有さないときのそれぞれにおいて、有形成分を粘液糸と特定する。処理部40は、Ta≦Ta1、Tb≦Tb1かつ幅Twと面積Sとが所定の相関を有するときに、有形成分を円柱と特定する。従って、尿検体分析装置1によれば、粘液糸と円柱とをより高精度に識別することができる。
【0039】
なお、「信号波形の幅」とは、
図10に示されるように、信号波形が初めに第2の信号レベルTh2に達したときから、信号波形が最後に第2の信号レベルTh2を下回ったときの間の期間をいうものとする。
【0040】
面積Sは、信号波形が初めに第2の信号レベルTh2に達したときから、信号波形が最後に第2の信号レベルTh2を下回ったときの間の期間において、信号波形と、信号強度=0を表す直線とにより囲まれた領域(
図10においてハッチングが附された領域)の面積である。
【0041】
信号波形の幅Twと信号波形の面積Sの相関を表す値Rは、例えば、R=S/(Tw×h)と表すことができる。hは定数である。定数hは、好ましくは、第2信号レベルTh2の高さである。分母(Tw×h)は、信号レベルが第2の信号レベルTh2を最初に超えてから、信号レベルが第2の信号レベルTh2を最後に下回るまでの期間の幅Twを底辺とし、Th2を高さとする長方形の面積に等しい。つまり、分母(Tw×h)は、
図5のハッチングで示した面積S2に等しい。従って、R=S/S2と表すことができる。
【0042】
上述の通り、相互に絡み合った複数の粘液糸の塊では、長さ方向における途中部に細い部分が生じやすい。一方、円柱では、長さ方向における途中部に細い部分が生じにくい。このため、面積Sは、粘液糸の場合は小さく、円柱の場合は大きい。面積Sを面積S2で除した値Rは、円柱の場合は1に近い値となり、粘液糸の場合は1よりも低い値となる。
【0043】
従って、幅Twと面積Sの相関を表す値Rを、閾値R1と比較することによって粘液糸と円柱とを高精度に識別することができる。
【0044】
閾値R1は、例えば、0.7程度に設定することが好ましい。つまり、面積S1が面積S2の70%未満である場合に、有形成分を粘液糸であると特定することが好ましい。
【0045】
(その他の実施形態)
上記第2実施形態における信号波形の幅Twと信号波形の面積Sとの相関を表す値Rは、信号波形の幅Twと信号波形の面積Sとの比R2であってもよい。例えば、比R2は、S/Twと表すこともできる。この場合、
図5に示されるように、信号波形の両端部以外の部分において、信号レベルが一度もTh2を下回らない場合に、比R2は最大値R
maxをとる。比R2を閾値R3と比較することによって、粘液糸と円柱を高精度に識別することができる。閾値R3は、最大値R
maxの70%程度とすることができる。
【0046】
上記第2実施形態における信号波形の幅Twは、例えば、信号波形のうち、第1の信号レベルTh1を最初に超えてから、第1の信号レベルTh1を最後に下回るまでの期間としてもよい。この場合、信号波形の面積Sは上記期間における領域(
図12においてハッチングが附された部分)の面積S1とすることができる。
【0047】
上記第2実施形態では、Ta≦Ta1かつTb≦Tb1が満たされる信号波形を有する有形成分が円柱及び粘液糸のいずれであるかを、信号波形の幅Twと信号波形の面積Sとの相関を表すパラメータを用いる例について説明した。但し、本発明は、これに限定されない。信号波形の両端部以外の部分の形状を反映する情報として、他のパラメータを用いることができる。
【0048】
例えば、他のパラメータとしては、有形成分における両端部よりも細い部分の細さを反映する情報を用いることができる。
【0049】
処理部40は、例えば、信号波形の両端部のそれぞれの傾きが傾きの閾値よりも大きく、かつ信号波形の極小値が信号レベルの閾値よりも低いときに、有形成分を粘液糸であると特定するように構成されていてもよい。
【0050】
例えば、
図11を参照し、処理部40は、信号波形の極小値Tsが、第3の信号レベルTh3よりも低いときに、有形成分を粘液糸であると特定するように構成されていてもよい。この場合、第3の信号レベルTh3は、第1の信号レベルTh1よりも高く、第2の信号レベルTh2よりも低いことが好ましい。第3の信号レベルTh3は、例えば、信号の最大強度の20%〜30%程度であることが好ましい。
【0051】
極小値は、例えば、第2の信号レベルTh2を最初に超えてから、第2の信号レベルTh2を最後に下回るまでの期間のうち、最も信号レベルが低くなったときの信号レベルであってもよい。
【0052】
処理部40は、信号波形の両端部のそれぞれの傾きが傾きの閾値よりも大きく、かつ、信号波形の極小値が信号レベルの閾値よりも高いときに、有形成分を円柱であると特定するように構成されていてもよい。
【0053】
例えば、処理部40は、Ta≦Ta1かつTb≦Tb1が満たされ、さらに、信号波形の極小値Tsが第3の信号レベルTh3よりも高いときに、有形成分を円柱であると特定するように構成されていてもよい。
【0054】
相互に絡み合った複数の粘液糸の塊では、長さ方向における途中部に細い部分が生じやすい。極小値Tsは、有形成分の途中部における細い部分の細さを反映している。従って、この信号波形の極小値Tsの第3の信号レベルTh3に対する高低を判断することによって、粘液糸と円柱とを高精度に識別することができる。
【0055】
なお、極小値Tsに対する閾値(Th3)は、固定の値でなくてもよい。極小値Tsに対する閾値(Th3)は、信号波形に応じて決まる可変の値であってもよい。例えば、波形の信号レベルの最大値の10〜20%の範囲内にある値を、極小値Tsに対する閾値としてもよい。
【0056】
有形成分の両端部よりも細い部分の細さを反映する情報として、極小値に代えて、両端部以外の部分における信号レベルの減少率を用いてもよい。減少率は、例えば、上記のようにして求めた極小値Tsと、波形の信号レベルの最大値との比で表すことができる。
【0057】
処理部40は、信号波形の両端部のそれぞれの傾きが傾きの閾値よりも大きく、かつ、信号波形のうち、信号レベルの一の閾値を最初に超えてから、一の信号レベルを最後に下回るまでの期間に位置する部分の、一の信号レベルよりも高い信号レベルを有する信号レベルの閾値よりも低い部分の幅の総和が、閾値より大きいときに、有形成分を粘液糸であると特定するように構成されていてもよい。
【0058】
例えば、
図13を参照して、処理部40は、信号波形のうち、第1の信号レベルTh1を最初に超えてから、第1の信号レベルTh1を最後に下回るまでの期間に位置する部分の第3の信号レベルTh3よりも低い部分の幅Td1,Td2の総和Tdが、閾値Tw1よりも大きいときに、有形成分を粘液糸であると特定するように構成されていてもよい。
【0059】
処理部40は、信号波形の両端部のそれぞれの傾きが傾きの閾値よりも大きく、かつ、信号波形のうち、一の信号レベルを最初に超えてから、一の信号レベルを最後に下回るまでの期間に位置する部分の他の信号レベルよりも低い部分の幅の総和が閾値よりも小さいときに、有形成分を円柱であると特定するように構成されていてもよい。
【0060】
例えば、処理部40は、信号波形のうち、第1の信号レベルTh1を最初に超えてから、第1の信号レベルTh1を最後に下回るまでの期間に位置する部分の第3の信号レベルTh3よりも低い部分の幅Td1,Td2の総和Tdが閾値Tw1よりも小さいときに、有形成分を円柱であると特定するように構成されていてもよい。
【0061】
上述の通り、相互に絡み合った複数の粘液糸の塊では、長さ方向における途中部に細い部分が生じやすい。一方、円柱では、長さ方向における途中部に細い部分が生じにくい。このため、幅の総和Tdは、粘液糸の場合は大きくなり、円柱の場合は小さくなる。従って、幅の総和Tdを閾値Tw1と比較することによって粘液糸と円柱とを高精度に識別することができる。
【0062】
閾値Tw1は、例えば、波形信号の幅Tw(Th2を最初に超えてから最後に下回るまでの期間)の30%程度であることが好ましい。
【0063】
上記第1及び第2実施形態では、傾きに関する情報として、時間Ta,Tbを用いる例について説明した。もっとも、本発明において、傾きに関する情報として、他の情報を用いてもよい。
【0064】
例えば、
図14を参照して、信号波形と第1の信号レベルTh1との交点を第1の交点C1とし、信号波形と第2の信号レベルTh2との交点を第2の交点C2とし、第2の交点C2が位置する時間と第1の信号レベルTh1との交点を第3の交点C3としたときに、第1の交点C1と、第2の交点C2と、第3の交点C3とにより囲まれる三角形の面積を傾きに関する情報として用いてもよい。
【0065】
例えば、
図15を参照して、信号波形と、第1の信号レベルTh1と、第2の信号レベルTh2及び信号波形との交点C4が位置する時間Tz1,時間Tz2とにより囲まれた領域A1,A2の面積を傾きに関する情報として用いてもよい。