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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-194464(P2015-194464A)
(43)【公開日】2015年11月5日
(54)【発明の名称】接触燃焼式ガスセンサ
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/16 20060101AFI20151009BHJP
【FI】
   G01N27/16 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-196976(P2014-196976)
(22)【出願日】2014年9月26日
(31)【優先権主張番号】特願2014-69001(P2014-69001)
(32)【優先日】2014年3月28日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000190301
【氏名又は名称】新コスモス電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 洋
【テーマコード(参考)】
2G060
【Fターム(参考)】
2G060AA02
2G060AF07
2G060BA03
2G060BD02
2G060BD08
2G060JA01
(57)【要約】
【課題】検出素子および補償素子を取り付ける作業を容易に行える接触燃焼式ガスセンサを提供する。
【解決手段】可燃性ガスと感応する検出素子10および補償素子20を並列接続してある接触燃焼式ガスセンサXにおいて、検出素子10および補償素子20を配設する基板部30と、検出素子10を収容する検出素子収容部41a、および、補償素子20を収容する補償素子収容部42aを形成したキャップ部40と、を備え、キャップ部40は、可燃性ガスを検出素子収容部41aに導入する検出素子側開口部41bと、可燃性ガスを補償素子収容部42aに導入する補償素子側開口部42bと、を備えた。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可燃性ガスと感応する検出素子および補償素子を並列接続してある接触燃焼式ガスセンサにおいて、
前記検出素子および前記補償素子を配設する基板部と、
前記検出素子を収容する検出素子収容部、および、前記補償素子を収容する補償素子収容部を形成したキャップ部と、を備え、
前記キャップ部は、可燃性ガスを前記検出素子収容部に導入する検出素子側開口部と、
可燃性ガスを前記補償素子収容部に導入する補償素子側開口部と、を備えた接触燃焼式ガスセンサ。
【請求項2】
前記キャップ部は、単一の部材で構成してある請求項1に記載の接触燃焼式ガスセンサ。
【請求項3】
前記検出素子側開口部を検出素子の直上となる位置に形成し、前記補償素子側開口部を補償素子の直上となる位置に形成してある請求項1または2に記載の接触燃焼式ガスセンサ。
【請求項4】
前記キャップ部を円柱状に形成し、その外周面の一部を切欠いた切欠部を形成してある請求項1〜3の何れか一項に記載の接触燃焼式ガスセンサ。
【請求項5】
前記検出素子が備えるガス感応部が存在する空間である検出素子側空間部の容積が14.6mm以下である請求項1〜4に記載の接触燃焼式ガスセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可燃性ガスと感応する検出素子および補償素子を並列接続してある接触燃焼式ガスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
接触燃焼式ガスセンサは、ヒータと温度計を兼ねる白金線コイルに貴金属触媒を担持させたアルミナを球状に焼結させた構造のセンサで、可燃性ガスの接触燃焼に伴う検出素子の温度変化を検知して可燃性ガスの濃度を検出するガスセンサである。一般的には、同じく触媒のないアルミナのみを焼結させた補償素子と共にブリッジ接続することで、爆発下限界(LEL)までの可燃性ガスの濃度を、環境温度、湿度の影響が少なく安定して検出することができる。
【0003】
尚、本発明における従来技術となる上述した接触燃焼式ガスセンサは、一般的な技術であるため、特許文献等の従来技術文献は示さない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した接触燃焼式ガスセンサは、検出素子および補償素子を別異のキャップに収容して基板部に配設してあった。そのため、これら素子を基板部に配設する作業が煩雑であった。
【0005】
従って、本発明の目的は、検出素子および補償素子を取り付ける作業を容易に行える接触燃焼式ガスセンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明に係る接触燃焼式ガスセンサは、可燃性ガスと感応する検出素子および補償素子を並列接続してある接触燃焼式ガスセンサであって、その特徴構成は、前記検出素子および前記補償素子を配設する基板部と、前記検出素子を収容する検出素子収容部、および、前記補償素子を収容する補償素子収容部を形成したキャップ部と、を備え、前記キャップ部は、可燃性ガスを前記検出素子収容部に導入する検出素子側開口部と、可燃性ガスを前記補償素子収容部に導入する補償素子側開口部と、を備えた点にある。
【0007】
本構成によれば、検出素子および補償素子を単一のキャップ部内に収容できるため、基板部に検出素子および補償素子を取り付ける場合は、キャップ部に検出素子および補償素子を収容した状態で、このキャップ部を基板部に取り付ければよい。このため、検出素子および補償素子を別異に取り付ける場合より取り付け作業が容易となる。
【0008】
本発明に係る接触燃焼式ガスセンサの第二特徴構成は、前記キャップ部を、単一の部材で構成した点にある。
【0009】
本構成では、キャップ部を簡便に構成することができる。
【0010】
本発明に係る接触燃焼式ガスセンサの第三特徴構成は、前記検出素子側開口部を検出素子の直上となる位置に形成し、前記補償素子側開口部を補償素子の直上となる位置に形成した点にある。
【0011】
本構成によれば、検出素子側開口部を検出素子の直上となる位置に形成すれば、検出素子側開口部から導入された可燃性ガスを直ちに検出素子と接触させることができ、補償素子側開口部を補償素子の直上となる位置に形成すれば、補償素子側開口部から導入された可燃性ガスを直ちに補償素子と接触させることができる。
【0012】
本発明に係る接触燃焼式ガスセンサの第四特徴構成は、前記キャップ部を円柱状に形成し、その外周面の一部を切欠いた切欠部を形成した点にある。
【0013】
本構成では、例えば基板部に固定用切欠部が形成してある場合、キャップ部を基板部に取り付ける際には、キャップ部の切欠部の取り付け位置を固定用切欠部に一致させることで、容易に取り付け作業を行うことができる。従って、本構成のようにキャップ部に切欠部を形成することで、キャップ部の位置決めが容易となる。
【0014】
本発明に係る接触燃焼式ガスセンサの第五特徴構成は、前記検出素子が備えるガス感応部が存在する空間である検出素子側空間部の容積を14.6mm以下とした点にある。
【0015】
本構成のように検出素子側空間部の容積を設定すれば、安定した出力を得ることができる接触燃焼式ガスセンサとなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の接触燃焼式ガスセンサを示す概略図である。
図2】キャップ部の別実施形態を示した概略図である。
図3】連続駆動および間欠駆動においてメタンガス(25%LEL)に対する検出素子のガス感度に変動が生じるかを調べた結果を示すグラフである。
図4】干渉ガスに対する耐久性を調べた結果を示すグラフである(実施例3)。
図5】メタンガス濃度/%LELとガス感度ΔV/mVの関係について調べた結果を示すグラフである(実施例4)。
図6】干渉ガスに対する耐久性を調べた結果を示すグラフである(実施例4)。
図7】メタンガス濃度/%LELとガス感度ΔV/mVの関係について調べた結果を示すグラフである(実施例5)。
図8】干渉ガスに対する耐久性を調べた結果を示すグラフである(実施例5)。
図9】メタンガス濃度/%LELとガス感度ΔV/mVの関係について調べた結果を示すグラフである(実施例6)。
図10】干渉ガスに対する耐久性を調べた結果を示すグラフである(実施例6)。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に示したように、本発明の接触燃焼式ガスセンサXは、可燃性ガスと感応する検出素子10および補償素子20を並列接続して備え、検出素子10および補償素子20を配設する基板部30と、検出素子10を収容する検出素子収容部41a、および、補償素子20を収容する補償素子収容部42aを形成したキャップ部40と、を備える。
また、キャップ部40は、可燃性ガスを検出素子収容部41aに導入する検出素子側開口部41bと、可燃性ガスを補償素子収容部42aに導入する補償素子側開口部42bと、を備える。
【0018】
検出素子10は、電気抵抗に対する温度係数が高い白金やタングステン等を含む金属線のコイルの表面が、被検出ガスである可燃性ガスに対して活性な白金やパラジウムといった貴金属等からなる触媒を坦持するアルミナ等の坦体で被覆されて形成されているガス感応部10aを備える。当該検出素子10は、可燃性ガス中に置かれたとき、通電により発熱することで自身が備える触媒が加熱されて可燃性ガスと反応し、その反応熱に応じて(可燃性ガスの濃度に応じて)出力値が変化する。
【0019】
補償素子20は、検出素子と同様に可燃性ガス中に置かれて通電されることで、検出素子の温度補償を行うための素子であり、検出素子が有する触媒による燃焼熱に応じた出力値の変化分のみ取り出すために用いられる。
補償素子20は、例えば検出素子10と同等のコイルの表面がアルミナ等の坦体で被覆されて形成されているガス感応部20aを備える。補償素子20は触媒を有しないため、触媒反応による可燃性ガスの燃焼が生じないため、被検出ガスに対して不活性とされる。当該補償素子20は、通電されることにより発熱してその周囲を覆うアルミナ等の坦体を加熱するものであり、熱により自らの抵抗値が変化する。
【0020】
通常、接触燃焼式ガスセンサXは、可燃性ガスが検出素子10の触媒に接触した際に生じる燃焼反応の発熱により高温となった検出素子10と、被検出ガスによる燃焼反応が発生せず検出素子10よりも低温の補償素子20との間に電気抵抗値の差が生ずることを利用し、雰囲気温度による電気抵抗値の変化分を相殺して可燃性ガスの濃度を検出することができる。
【0021】
補償素子20は、周囲温度の変化の影響を相殺するために使用する。すなわち、センサ素子のガスとの反応による温度変化は数10℃程度と小さく、周囲温度が例えば0℃〜40℃の範囲で変化すると、ガスとの反応によるセンサ出力変化と周囲温度の変化によるセンサ出力変化が区別できないため、検出素子10と同程度の抵抗値を有し周囲温度に対して同じような抵抗変化をする補償素子20を検出素子10と並列に接続して、検出素子10の検出電圧に周囲温度の影響が現れないようにしている。
【0022】
検出素子10および補償素子20は、2つの抵抗を介して電源部の電流供給端子に並列接続される。これら検出素子10、補償素子20、抵抗によって検知回路(ブリッジ回路)を形成している。
【0023】
基板部30は、検出素子10および補償素子20を配設する板状の基板であれば、公知の基板を使用することができる。通常、単一の基板部30に検出素子10および補償素子20を配設するが、このような態様に限定されるものではない。
【0024】
キャップ部40は、検出素子10および補償素子20を覆うことができ、かつ検出素子10および補償素子20を別異に収容できる検出素子収容部41aおよび補償素子収容部42aがそれぞれ形成してあればよい。
即ち、キャップ部40は、単一の部材に検出素子収容部41aおよび補償素子収容部42aをそれぞれ形成したものとなっている。
検出素子収容部41aの一部は、ガス感応部10aが存在する空間である検出素子側空間部S1となっており、当該検出素子側空間部S1は検出素子側開口部41bに通じる。当該検出素子側空間部S1の容積を14.6mm以下、好ましくは2.9〜14.6mmとすれば、安定した出力を得ることができる。
また、補償素子収容部42aの一部は、ガス感応部20aが存在する空間である補償素子側空間部S2となっており、当該補償素子側空間部S2は補償素子側開口部42bに通じる。
【0025】
検出素子側開口部41bは検出素子10の直上となる位置に形成すれば、検出素子側開口部41bから導入された可燃性ガスを直ちに検出素子10と接触させることができる。また、補償素子側開口部42bについても補償素子20の直上となる位置に形成すれば、補償素子側開口部42bから導入された可燃性ガスを直ちに補償素子20と接触させることができる。
【0026】
キャップ部40の形状は限定されるものではないが、例えば外形が円柱状、立方体状などの種々の形状を取り得る。本態様のキャップ部40は、円柱状の本体部40aの上に、本体部40aより小径とした円柱状の頂部40bを載置した態様とした場合について説明する。また、キャップ部40を円柱状に形成した場合、検出素子10および補償素子20が、直径上かつ円の中心に対する点対称となる位置に収容できるように、検出素子収容部41aおよび補償素子収容部42aを形成すればよい。
また、キャップ部40を構成する材料は、特に限定されるものではないが、発熱した素子の温度を逃がしやすくするため、伝熱性に優れたアルミニウムなどの金属製とするのがよい。
【0027】
本発明のようにキャップ部40を備えることにより、検出素子10および補償素子20を単一のキャップ部内に収容できるため、接触燃焼式ガスセンサXをコンパクトに構成することができる。また、基板部30に検出素子10および補償素子20を取り付ける場合は、キャップ部40に検出素子10および補償素子20を収容した状態で、このキャップ部40を基板部30に取り付ければよい。このため、検出素子10および補償素子20を別異に取り付ける場合より取り付け作業が容易となる。
さらに、検出素子10および補償素子20をキャップ部40内で別異の収容部に収容できるため、何れかの素子の温度が上昇したとしても、他の素子に直接的な影響を与え難くなる。
【0028】
〔別実施例〕
上述した実施形態では、キャップ部40の形状は外形が円柱状(図1)とした場合について説明したが、これに限定されない。例えばキャップ部40を円柱状に形成し、その外周面の一部を切欠いたキャップ切欠部41を形成してもよい(図2)。
【0029】
本態様では、キャップ部40は、その側面視において、外周面の一部を切欠いたキャップ切欠部41を形成してあり、具体的にはキャップ部40の本体部40aの下半分の一部を切欠いたキャップ切欠部41を形成することが可能であるが、この態様に限定されるものではない。
【0030】
このようにキャップ切欠部41を形成することで、例えば基板部30に固定用切欠部31が形成してある場合、キャップ部40を基板部30に取り付ける際には、キャップ切欠部41の取り付け位置を固定用切欠部31に一致させることで、容易に取り付け作業を行うことができる。従って、本態様のようにキャップ切欠部41を形成することで、キャップ部40の位置決めが容易となる。
【実施例】
【0031】
〔実施例1〕
本発明の実施例について説明する。
以下のようにして本発明の接触燃焼式ガスセンサXを作製した。
接触燃焼式ガスセンサXにおけるキャップ部40を、円柱状(直径11.3mm、高さ6mm)に形成し、検出素子収容部41aに検出素子10を、補償素子収容部42aに補償素子20をそれぞれ収容した。検出素子側空間部S1および補償素子側空間部S2の容積は、それぞれ6.5mmとした。検出素子側開口部41bの孔径は、0.5mm、1mmとしたものをそれぞれ作製した。補償素子側開口部42bの孔径についても、0.5mm、1mmとしたものをそれぞれ作製した。
【0032】
検出素子10は、白金をコイル加工したものに、内層としてアルミナにパラジウムを10wt%担持し、外層としてアルミナに白金・パラジウムを10wt%担持したガス感応部10aを被覆した。当該ガス感応部10aは、直径が0.2mm程度(内層の粒子径0.17mm)の略球形となるように形成した。外層は、1150℃で焼成し、内層は1300℃で焼成した。
【0033】
〔実施例2〕
実施例1で作製した接触燃焼式ガスセンサXを使用して、連続駆動および間欠駆動においてメタンガス(25%LEL)に対する検出素子10のガス感度に変動が生じるかを調べた。検出素子側空間部S1の容積を6.5mmとし、検出素子側開口部41bの孔径を1mmとしたものを使用した(本発明例1)。印加電圧を1.5Vとし、間欠駆動はオン時間を1秒とし、オフ時間を15秒までの複数の秒数を設定した。
比較例として、検出素子および補償素子を別異のキャップに収容し、検出素子側空間部の容積を127mmとし、孔径を1mmとした接触燃焼式ガスセンサを使用した。結果を図3に示した。
【0034】
この結果、比較例のセンサは、連続駆動および間欠駆動においてガス感度に変化が生じることが確認できたが、本発明例1のセンサは、連続駆動および間欠駆動においてガス感度に変化は認められなかった。従って、本発明例1のセンサのように、検出素子側空間部S1の容積を小さくすることで、ガス感度が安定化するものと認められた。
【0035】
〔実施例3〕
実施例2で使用したセンサを使用して、干渉ガスに対する耐久性を調べた。干渉ガスはヘキサメチルジシロキサン(HMDS)1ppmを使用し、HMDSに0〜60分間暴露させた後に、メタンガス(25%LEL)に対する検出素子10のガス感度に変動が生じるかを調べた。劣化率は、HMDS暴露からの経過時間0分の検出素子10の劣化率を0%として算出した。印加電圧を1.5Vとし、間欠駆動はオン時間を1秒とし、オフ時間を14秒とした。結果を図4に示した。
【0036】
この結果、比較例のセンサは、HMDSに60分間暴露した後の劣化率は20%以上であったのに対して、本発明例1のセンサは、HMDSに60分間暴露した後の劣化率は10%程度であった。従って、本発明例1のセンサのように、検出素子側空間部S1の容積を小さくすることで、耐久性が向上するものと認められた。
【0037】
〔実施例4〕
実施例1で作製した接触燃焼式ガスセンサXにおいて、検出素子側開口部41bの孔径を0.5mmとし、検出素子側空間部S1の容積を2.9mm、4.2mm、6.5mm、10.5mm、14.6mmとしたセンサをそれぞれ作製した(本発明例2〜6)。比較例として、検出素子および補償素子を別異のキャップに収容し、検出素子側空間部の容積を127mmとし、孔径を0.5mmとした接触燃焼式ガスセンサを使用した。
【0038】
これら本発明例2〜6のセンサおよび比較例のセンサにおいて、メタンガス濃度/%LELとガス感度ΔV/mVの関係について調べた。印加電圧を1.5Vとし、間欠駆動はオン時間を1秒とし、オフ時間を14秒とした。結果を図5に示した。
【0039】
この結果、本発明例2〜6については同様の結果が得られたが、比較例については本発明例2〜6とは異なる傾向となる結果が得られた。即ち、本発明例2〜6については、メタンガス濃度によるガス感度の変動が、比較例に比べて小さいものと認められた。また、本発明例2〜6については同様の結果が得られているため、これらの検出素子側空間部S1の容積範囲で出力が安定していると考えられた。
【0040】
また、本発明例3,5,6において、干渉ガス(ヘキサメチルジシロキサン(HMDS)10ppm)に対する耐久性を調べた。HMDSに0〜3時間暴露させた後に、メタンガス(25%LEL)に対する検出素子10のガス感度に変動が生じるかを調べた。劣化率は、HMDS暴露からの経過時間0分の検出素子10の劣化率を0%として算出した。印加電圧を1.5Vとし、間欠駆動はオン時間を1秒とし、オフ時間を14秒とした。結果を図6に示した。
【0041】
この結果、本発明例3,5,6のセンサは、HMDSに3時間暴露した後の劣化率は何れも20%未満であった。従って、出力が安定する容積を有する本発明例のセンサにおいては、干渉ガスに対する耐久性が同等であるものと認められた。
【0042】
〔実施例5〕
キャップ部40において、検知素子側開口部41b(補償素子側開口部42b)の長さを種々変更したものを作製し、メタンガス濃度/%LELとガス感度ΔV/mVの関係について調べた。検知素子側開口部41bの長さは、キャップ部40の頂部40bの上面から検出素子収容部41aまでの寸法である。
【0043】
キャップ部40は円柱状(直径11.3mm、高さ6mm)に形成し、検知素子側開口部41bおよび補償素子側開口部42bの孔径を0.5mmとし、検出素子側空間部S1の容積を4.2mmとし、さらにガス感応部10aの直径を0.3mm程度となるようにそれぞれ設定した。検知素子側開口部41bの長さは、0.5mm、1.0mm、2.0mm、5.0mmとした(本発明例7〜10)。
印加電圧を1.5Vとし、間欠駆動はオン時間を1秒とし、オフ時間を14秒とした。結果を図7に示した。
【0044】
この結果、本発明例7〜10において、ガス濃度が上昇するに従い、ガス感度も良好に上昇するものと認められた。本発明例7,8(0.5〜1.0mm)であれば特に良好なガス感度を有することが判明した。
【0045】
また、本発明例7〜10において、実施例4の手法に準じて干渉ガス(ヘキサメチルジシロキサン(HMDS)10ppm)に対する耐久性を調べた。結果を図8に示した。
【0046】
この結果、本発明例7〜10のセンサは、HMDSに3時間暴露した後の劣化率は何れも40%未満であった。本発明例9,10(2.0〜5.0mm)であれば特に良好な耐久性を有することが判明した。
【0047】
このように感度特性および暴露試験の結果、検知素子側開口部41bの長さは、0.5〜5.0mmであればセンサ性能に影響を与えるものではないと認められた。また両試験結果から、検知素子側開口部41bの長さが1.0〜2.0mmの範囲であれば、感度特性および耐久性のバランスがよく、特に優れていると認められた。尚、本実施例においてガス感応部10aの直径を0.2mmとした場合であっても、同様の結果が得られた(データは示さない)。
【0048】
〔実施例6〕
キャップ部40において、検知素子側開口部41b(補償素子側開口部42b)の開口径を種々変更したものを作製し、メタンガス濃度/%LELとガス感度ΔV/mVの関係について調べた。
【0049】
キャップ部40は円柱状(直径11.3mm、高さ6mm)に形成し、検知素子側開口部41bおよび補償素子側開口部42bの長さを1.0mmとし、検出素子側空間部S1の容積を4.2mmとし、さらにガス感応部10aの直径を0.3mm程度となるようにそれぞれ設定した。検知素子側開口部41bの開口径は、0.5mm、0.6mm、0.7mm、0.8mm、0.9mm、1.0mmとした(本発明例11〜16)。
印加電圧を1.5Vとし、間欠駆動はオン時間を1秒とし、オフ時間を14秒とした。結果を図9に示した。
【0050】
この結果、本発明例11〜16において、ガス濃度が上昇するに従い、ガス感度も良好に上昇するものと認められた。また、開口径が大きくなるに従い、ガス感度が大きくなることが判明した。
【0051】
また、本発明例11〜16において、実施例4の手法に準じて干渉ガス(ヘキサメチルジシロキサン(HMDS)10ppm)に対する耐久性を調べた。結果を図10に示した。
【0052】
この結果、本発明例11〜16のセンサは、HMDSに3時間暴露した後の劣化率は何れも70%未満であった。また、開口径が大きくなるに従い、劣化率が大きくなることが判明した。
【0053】
このように感度特性および暴露試験の結果、検知素子側開口部41bの開口径は、0.5〜1.0mmであればセンサ性能に影響を与えるものではないと認められた。従って、開口径が0.5〜1.0mmの範囲となるように、被検知ガスに適した範囲を選択するとよい。即ち、開口径は0.5〜1.0mmの範囲で被検知ガスによって適宜変更するように運用することが可能である。例えばメタン用のセンサの場合には開口径を0.5〜0.7mmとし、イソブタン用のセンサの場合には1.0mmとすることが可能である。
【0054】
尚、本実施例においてガス感応部10aの直径を0.2mmとした場合であっても、同様の結果が得られた(データは示さない)。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、可燃性ガスと感応する検出素子および補償素子を並列接続してある接触燃焼式ガスセンサに利用できる。
【符号の説明】
【0056】
X 接触燃焼式ガスセンサ
10 検出素子
20 補償素子
30 基板部
40 キャップ部
41a 検出素子収容部
41b 検出素子側開口部
42a 補償素子収容部
42b 補償素子側開口部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10