【課題】 事業所内の担当者がいない場合でも商品の払い出しが可能であり、停電時であっても非常用電源をより長い時間保たせることができるようにした自動販売機を提供する。
【解決手段】 前面扉11には外部操作ボタン8が設けられていて、利用者が操作可能である。電源供給が必要な自動販売機の各部は、商用電源5につながる主入力ライン6に接続され、電源制御ユニット4は、停電時に外部操作ボタン8が押された場合に非常用電源3を主入力ライン6を介して各部に接続して電力を供給し、タイマー回路45で設定された時間に達した際、商品の払い出しが可能な状態であることを示すスタンバイ信号がOFFの場合に限り非常用電源3からの電力供給を自動的に停止させる。
前記電源制御ユニットは、前記非常用電源からの電力供給を開始した後、タイマーで設定された時間に達した際に前記非常用電源からの電力供給を自動的に停止させるものであることを特徴とする請求項1記載の自動販売機。
前記主制御部は、前記電源制御ユニットにより前記非常用電源からの電力供給が各部に行われている際、停電が発生していない時と同じ条件により商品の払い出しを行うものであることを特徴とする請求項1、2又は3記載の自動販売機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自動販売機については、種々のものが各社から販売されているが、このうち、災害対応型の自動販売機というものが知られている。この種の自動販売機は、非常用電源を備えており、通常時は商用電源からの電力で非常用電源を充電しておき、商用電源の停電により自動販売機への給電が停止された場合に、非常用電源により自動販売機内の商品の払い出しを可能としたものである。
【0006】
上記災害対応型の自動販売機は、非常用電源を動作させるモードでは、無料にて自動販売機内の商品を払い出すものとなっている。この種の自動販売機は、主として、公園、ショッピングセンタ、役所などの公共性が高く、不特定多数の者が利用する場所に設置されることを想定しているためである。即ち、災害時には所持金も無い被災者にも提供できるよう、無料にて商品の払い出しを行うようにしている(無料モード)。
【0007】
このような災害対応型の自動販売機では、非常用電源への切り替えや無料モードでの動作を、専用キー(以下、災害対応用キーという)で行うようになっている。この種の自動販売機の前面扉には、通常の鍵穴に加え、災害時に操作される鍵穴が設けられている。通常の鍵穴は、自動販売機で商品を販売する業者(以下、自販機業者)のサービスマンがルートサービスの際に持参した鍵穴で操作するものであり、商品の補充や代金の回収をする際に開けるものである。災害時に操作される鍵穴(以下、災害対応用鍵穴)は、災害対応用キーにより操作されるものであり、この鍵穴を操作すると、停電時であっても非常用電源がONして自動販売機が動作し、且つ無料モードにて商品が払い出されるようになるものである。
【0008】
上記災害対応型の自動販売機は、災害対応という点では好適なものであるが、災害対応用キーの管理が問題となる。災害対応用キーは、商品の払い出しが無料でできてしまうキーであるので、厳格な管理が必要となる。公共施設などでは、施設の管理人や警備会社がこの災害対応用キーを保有、管理することになるが、肝心の災害時に自動販売機に駆けつけて災害対応用鍵穴を操作できるようにしておかなければならず、24時間態勢の管理が必要になってくる。
【0009】
一方、災害に関連した事項として、帰宅困難者に対する施策も重要性が増している。例えば平成25年4月に施行された東京都の帰宅困難者対策条例では、一般企業や各種事業所に対しても帰宅困難者用に非常用飲料の備蓄などの対策を求めている。このようなことから、上記災害対応型の自動販売機を事業所内に設置し、非常用飲料の備蓄の一環とすることが検討されている。つまり、自動販売機内の商品を帰宅困難者用の飲料として利用する試みである。
【0010】
しかしながら、上述したように従来の災害対応型の自動販売機では、災害対応用キーの管理が問題となっており、この点は事業所においても同様である。一般企業等の事業所の場合、事業所内で担当者を決め、担当者が災害対応用キーを管理することになる。この場合、災害発生時にたまたま担当者が出張でいなかったり、事業所内担当者も災害に巻き込まれてしまっていなかったりした場合、上記操作ができない。災害対応用鍵穴の操作は無料での商品の払い出しを可能にするものであるため、災害対応用キーを誰でも使えるような場所に保管しておく訳にもいかない。
【0011】
また、別の問題として、災害時に停電となった際の非常用電源を切り忘れの問題もある。担当者が災害対応用キーを操作して非常用電源をONにするともに無料にて商品の払い出しを行った場合、元に戻すのを忘れてしまうと、短時間に非常用電源を使い切ってしまうことになる。災害発生時には、飲料を小出しにして提供する必要がある。例えば、災害発生直後にある程度の数量を提供し、半日程度経った際にさらにある程度の数量で提供するといった具合である。また、途中から帰宅困難者が新たに発生することもあるから、その分も考慮して小出しにして自動販売機から取り出す必要がある。
【0012】
現在市販されている上記災害対応型の自動販売機の場合、災害対応用キーを操作して非常用電源のオンオフを逐次行うようにすれば、48時間程度の間に500本程度の飲料の取り出しが可能になっている。しかしながら、ある回の飲料の取り出しの際、非常用鍵穴を元に戻す(非常用電源を切る)のを忘れてしまうと、自動販売機全体が通常の電力消費状態となるので、1〜2時間程度で非常用電源を使い切ってしまう。こうなると、停電状態が続いている場合、自動販売機内に飲料が残っていても取り出すことができなくなってしまう。
【0013】
本願の発明は、このような点を考慮して為されたものであり、事業所内に設置されると好適な災害対応型の自動販売機であって、事業所内の担当者がいない場合でも商品の払い出しが可能であり、停電時であっても非常用電源をより長い時間保たせることができるようにした自動販売機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、本願の請求項1記載の発明は、筐体と、
筐体の前面開口を開閉する前面扉と、
筐体内に設けられた商品収容部及び商品払い出し機構と、
前面扉に設けられた商品選択ボタン、金銭投入口、及び商品払い出し口と、
金銭投入口に投入された金銭を検出して真正なものであるかを判断する金銭検出部と、
商品選択ボタンで選択された商品を金銭投入口で検出された金銭に従って商品払い出し機構により商品取り出し口に払い出す主制御部と
を備えた自動販売機であって、
非常用電源と、外部操作スイッチと、電源制御ユニットとが設けられており、
外部操作スイッチは、自動販売機の利用者が操作可能な位置に設けられており、
電力供給が必要な各部は商用電源につながる主入力ラインに接続されており、電源制御ユニットは、停電時であって外部操作スイッチが操作された場合に非常用電源を主入力ラインを介して各部に接続して電力を供給させるものであるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項2記載の発明は、前記請求項1の構成において、前記電源制御ユニットは、前記非常用電源からの電力供給を開始した後、タイマーで設定された時間に達した際に前記非常用電源からの電力供給を自動的に停止させるものであるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項3記載の発明は、前記請求項2の構成において、前記主制御部は、前記金銭検出部からの信号に従い、商品の払い出しが可能な状態であることを示すスタンバイ信号を出力するスタンバイ信号出力部を備えており、
前記電源制御ユニットは、前記タイマー回路で設定された時間に達した以後、スタンバイ信号出力からのスタンバイ信号がOFFの場合に限り非常用電源からの電力供給を自動的に停止させるものであるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項4記載の発明は、前記請求項1、2又は3の構成において、前記主制御部は、前記電源制御ユニットにより前記非常用電源からの電力供給が各部に行われている際、停電が発生していない時と同じ条件により商品の払い出しを行うものであるという構成を有する。
【発明の効果】
【0015】
以下に説明する通り、本願の請求項1記載の発明によれば、非常用電源への切り替えを災害対応用キーによるのではなく自動販売機の利用者が操作可能な外部操作ボタンによって行うので、管理人や警備会社が鍵を管理したり、事業所内で担当者を定めて鍵を管理させたりすることは不要である。災害対応用キーによるものではないので、肝心の災害時になって担当者等が不在で自動販売機が使えないという問題は、この出願の発明では生じない。
また、請求項2記載の発明によれば、上記効果に加え、タイマーで設定された時間が経過した際には自動的に非常用電源による電力供給が停止されるので、利用終了後も非常用電源による電力供給が継続されることで非常用電源を短時間に使い切ってしまう問題が無くなる。
また、請求項3記載の発明によれば、上記効果に加え、購入操作の途中で電力供給が停止することで利用者が苛立たしさを感じることがなくなり、また投入した金銭が払い戻し不可の状態になるのが防止される。
また、請求項4記載の発明によれば、上記効果に加え、外部操作スイッチが操作された場合でも商品の払い出しの条件は通常時と同様であるので、外部操作スイッチの悪用の問題は生じず、事業所内に設置される自動販売機として好適なものになる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、この出願の発明を実施するための形態(以下、実施形態)について説明する。
図1は、実施形態の自動販売機の概略図である。
図1に示す自動販売機は、前面開口を有する筐体1と、筐体1の前面開口を開閉する前面扉11とを備えている。
図1の(1)は前面扉11を閉じた状態、(2)は開いた状態を示す。
【0018】
図1(1)に示すように、前面扉11には、下側位置に商品取り出し口12が設けられている。前面扉11の上側位置には、販売している商品の見本を表示した見本表示部13が設けられている。そして、各商品見本の下側の位置には、商品選択ボタン14が設けられており、前面扉11の右側には金銭投入口15が設けられている。そして、金銭投入口15から投入された金銭が真正なものであるかどうかを検出し、真正なものである場合にその合計の金額を算出する金銭検出部(
図1中不図示)が前面扉11の裏側に設けられている。金銭検出部は、硬貨についてコインメックと呼ばれるユニットであり、紙幣についてはビルバリと呼ばれるユニットである。これらを総称して金銭検出部という。金銭投入口15の下側の位置には、釣り銭払い出し口16が設けられている。
【0019】
また、
図1(2)に示すように、筐体10内には、商品収容部17と、商品払出機構18とが設けられている。商品収容部17は、詳細の図示は省略するが、商品選択ボタン14に対応して仕切られた構造になっており、仕切られた各部(カラム)に、対応する商品選択ボタン14で選択する商品を収容するようになっている。これらの機構や部位は、清涼飲料を販売する通常の自動販売機1と同様なので、詳細な図示及び説明は省略する。尚、見本表示部13は、商品の写真を表示するパネルや液晶ディスプレイであり得るし、金銭投入口15に加えて、非接触ICカードや携帯電話による電子マネーのリーダーが設けられることもである。
【0020】
図1(2)に示すように、前面扉11の裏側には制御ボックス20が固定されており、制御ボックス20内に主制御部(
図1中不図示)が設けられている。
図2は、
図1に示す自動販売機の制御ブロック図である。主制御部2は、商品選択ボタン14で選択された商品と金銭投入口15から投入された金銭とに従って商品払出機構18を制御するもので、選択された商品の価格以上の金銭が投入されたことが金銭検出部150で検出されると、商品払出機構18を制御して当該商品を商品取り出し口12に払い出す。これらの制御は、通常の自動販売機におけるものと同様なので、詳細な説明は省略する。
【0021】
実施形態の自動販売機は、災害時を考慮し、非常用電源3と、電源制御ユニット4と、外部操作スイッチとを備えている。外部操作スイッチは、この実施形態では押しボタン(以下、外部操作ボタンという)8となっている。
図1に示すように、外部操作ボタン8は、前面扉11に設けられている。外部操作ボタン8は、ほぼ中央の高さの操作し易い位置に設けられている。外部操作ボタン8が設けられた場所の近くには、外部操作ボタン8についての説明文を表示したステッカー81が貼られている。この説明文は、停電時にはボタンを押すと商品の購入ができる旨を説明している。
【0022】
図1に示すように、非常用電源3は、
図1に示すように、筐体1の上面に固定されている。非常用電源3は、外装ボックス30内に収められている。非常用電源3に対する悪戯などの防止や、自動販売機が屋外に設けられる場合の風雨からの保護の観点から、外装ボックス30内に非常用電源3を収容している。
【0023】
非常用電源3は、無停電電源装置(UPS)の名前で各社市販されているものであり、適宜選定して使用することができる。
図2に示すように、非常用電源3は、商用電源5からの主入力ライン6上に直列に設けられた整流器31及びインバータ32と、整流器31とインバータ32の間から分岐させて設けられた蓄電池(コンデンサ等)43等から構成されている。主入力ライン6は、電力供給が必要な自動販売機の各部を商用電源5に接続したものであり、各部に対しては主入力ライン6から分岐した線路を介して電力が供給される。
非常用電源3は、通常時には、整流器31を通して給電して蓄電池33を充電しておき、停電時には、蓄電池33に溜めた電力をインバータ32により交流に戻して供給する装置である。
【0024】
また、非常用電源3の出力側の主入力ライン6上には、主スイッチ7が設けられている。尚、電源制御ユニット4は、非常用電源3と主スイッチ7との間から分岐させた不図示の線路を介して電力の供給を受けるようになっている。即ち、電源制御ユニット4は、停電時には非常用電源3から給電されて動作するようになっている。
【0025】
主スイッチ7は、通常時はONのスイッチであり、電源制御ユニット4から信号を受けた場合にのみOFFになるスイッチである。そして、電源制御ユニット4は、主スイッチ7を制御する切断回路41を有している。非常用電源3には停電の発生を検出する停電センサ34が内蔵されており、切断回路41には、停電センサ34からの信号が入力されるようになっている。
【0026】
切断回路41は、停電センサ34からの信号がON(停電発生)であり、電源制御制ユニット5からの信号がOFFの場合にのみ、主スイッチ7をOFFにする回路である。このような切断回路41は、
図2に示すように、電源制御ユニット4側が負論理入力であるAND回路によって達成できる。切断回路41は、条件が成立した場合に限り、主スイッチ駆動回路71を動作させ、主スイッチ7をOFFにする。
【0027】
また、電源制御ユニット4は、外部操作ボタン8につながる出力回路42、動作終了を判断する終了判断回路43、出力回路42をリセットするリセット回路44、外部操作ボタン8と終了判断回路43との間の線路上に設けられたタイマー回路45等を有している。
出力回路42は、通常はOFFを出力している回路であり、外部操作ボタン8が押された際に出力をOFFからONにする回路である。リセット回路44は、出力回路42をOFFにリセットする回路である。出力回路42は、外部操作ボタン8によりONとなった後は、リセット回路44からリセット信号があるまでON状態を保持する。
【0028】
終了判断回路43は、ともに負論理入力の回路であって、一方はタイマー回路45に接続されており、他方は、主制御部2のスタンバイ信号出力部21に接続されている。
タイマー回路45は、外部操作ボタン8が押された後、設定時間の間はONとなる回路であり、設定時間経過時にOFFとなる回路である。
【0029】
主制御部2のスタンバイ信号出力回部21は、金銭検出部150からの信号に従って商品払い出し可能状態である場合にON信号を出力する回路である。この回路は、自動販売機に通常備えられているもので、スタンバイ信号がONである間、各商品選択ボタン14のランプが点灯したり、投入した金銭の合計金額を表示する表示部(
図1中不図示)が点灯したりする。
【0030】
終了判断回路43は、共に負論理入力の回路であるので、タイマー回路45がOFF(設定時間経過後)であり、且つスタンバイ信号がOFFの場合にのみ出力がONになる回路である。終了判断回路43がONになると、リセット回路44が動作して出力回路42の出力がOFFとされるようになっている。
尚、上述した電源制御ユニット4や切断回路41、主スイッチ7等は、主制御部2と同様、前面扉11の裏面に設けられている。
【0031】
上記構成に係る実施形態の自動販売機の動作について、以下に説明する。
通常時は、停電センサ34の出力はOFFであり、また外部操作ボタン8は押されていないので、出力回路42の出力はOFFである。従って、切断回路41の出力はOFFであり、主スイッチ7はONとなっている。商用電源5からの電力は、主入力ライン6を通して供給され、非常用電源3の蓄電池33を充電する他、主制御部2及びその他の自動販売機の各部に供給される。
【0032】
利用者は、通常通り自動販売機を利用する。即ち、利用者は、商品の価格以上の金銭を金銭投入口に投入する。金銭検出部150が正しく金銭を検出し、商品の価格以上であると、主制御部2はスタンバイ信号をONにする。この状態で、利用者が商品選択ボタン14を押すと、主制御部2は商品払い出し機構18を制御し、当該商品を商品払い出し口12に払い出す。
【0033】
このような動作が随時行われる状態において、災害等のために停電が発生すると、商用電源5の入力がゼロになり、非常用電源3内の停電センサ34がONになる。この場合、電源制御ユニット4の出力はOFFであるので、切断回路41が動作し、主スイッチ7が切断される。従って、非常用電源3から電力供給が可能であるものの、主スイッチ7がOFFになっているため、自動販売機の各部には電力は供給されない。但し、電源制御ユニット4については、非常用電源3から電力が供給される。
【0034】
この状態で、外部操作ボタン8が押されると、出力回路42が動作し、切断回路41の他方の入力にON信号を入力する。この結果、切断回路41はOFF信号を出力し、主スイッチ7を再びONにする。これにより、自動販売機の各部に電力が供給され、通常状態(停電が発生していない状態)と同様に商品の購入が行える状態となる。
【0035】
外部操作ボタン8が押されたことにより、タイマー回路45がONになる。タイマー回路45は、設定時間をカウントし、設定時間経過時にOFFになる。従って、この時点で終了判断回路43の一方の入力はOFFに切り替わる。この時点で、主制御部2のスタンバイ信号出力回路42からの信号がOFFであると、即ち、商品の購入が終了して釣り銭の払い出しが完了していると、終了判断回路43の他方の入力もOFFになるので、終了判断回路43の出力がONになる。この結果、リセット回路44が動作し、出力回路42の出力をOFFにリセットする。これにより、切断回路41の他方の入力がOFFになるので、切断回路41が再び動作し、主スイッチ7をOFFにする。この結果、非常用電源3からの電力供給は切断され、自動販売機の各部への電力供給は停止される。
【0036】
タイマー回路45のカウントが終了した際、まだスタンバイ信号がONであったら(まだ商品購入が可能な状態であったら)、終了判断回路43の出力はOFFのままなので、リセット回路44は動作せず、出力回路42はリセットされない(出力はONのまま)。従って、主スイッチ7はOFFにはならず、非常用電源3による電力供給は継続される。スタンバイ信号がOFFになった時点で、終了判断回路43の出力がONになり、出力回路42がOFFにリセットされて電力供給が切断される。
【0037】
上記説明から解るように、実施形態の自動販売機では、停電となった際に自動的には非常用電源3による電力供給は行われず、外部操作ボタン8が押された場合にのみ非常用電源3による電力供給が行われる。そして、電力供給はタイマー回路45における設定時間内は継続され、設定時間経過後もスタンバイ信号がONの場合には継続され、スタンバイ信号がOFFになった場合のみ、電力供給は終了される。
【0038】
このような構成を有する実施形態の自動販売機は、以下のような顕著な効果を有する。
まず、非常用電源3への切り替えについては、従来の災害対応型の自動販売機のような災害対応用キーによるのではなく、自動販売機の利用者が操作可能な外部操作ボタン8により切り替えを行うものとなっている。従って、非常用電源3への切り替えのために管理人や警備会社が鍵を管理したり、事業所内で担当者を定めて鍵を管理させたりすることは不要である。災害対応用キーによるものではないので、肝心の災害時になって担当者等が不在で自動販売機が使えないという問題は、実施形態の自動販売機では無縁である。
【0039】
また、実施形態の自動販売機は、タイマー回路45を備えており、タイマー回路45で設定された時間が経過した際には自動的に非常用電源3による電力供給は停止される。従って、自動販売機の利用終了後も非常用電源3による電力供給が継続されることで非常用電源3を短時間に使い切ってしまう(蓄電量ゼロになってしまう)問題はない。タイマー回路45における設定時間は、自動販売機の1回の利用の平均的な時間を目安にして定められ、20秒から40秒程度(例えば30秒)とされる。
【0040】
さらに、実施形態の自動販売機では、タイマー回路45での設定時間が経過した後も、スタンバイ信号がONの場合には非常用電源3による電力供給は停止せず、スタンバイ信号がOFFになった時点で停止させる。この点は、購入操作の途中で電力供給が停止することで利用者が苛立たしさを感じることがないようにする効果があるのに加え、投入した金銭が払い戻し不可の状態になるのを防止する効果もある。
【0041】
後者の点について多少詳しく説明すると、現在市販されている自動販売機では、スタンバイ信号がONの状態(即ち、金銭検出部150で金銭が正しく検出されて商品購入が可能となっている状態)で万が一停電になると、投入した金銭の払い戻しがされない結果となる。この点は、一般には知られていないことであるが、発明者は実際に実験をして確認している。発明者は、市販の自動販売機において、スタンバイ状態でコンセントを抜いてて強制的に電源をOFFにし、その後、コンセントを接続して電源をONに戻す実験を行った。この際、電源をONを戻すと、自動販売機は全体にリセットされ、金銭検出部で検出している金銭の額はゼロという状態になってしまうことが判明した。即ち、釣り銭払い戻しレバーを操作しても、金銭は払い戻されない。
【0042】
現実には、自動販売機で商品を購入しているその最中に停電が発生することは極めて稀であるので、上記の点は問題になることは殆どないと思われる。但し、実施形態の自動販売機では、非常用電源3による電力供給をこまめに停止させるようにしているため、単に設定時間の経過だけで電力供給を停止させると、スタンバイ状態で電源がOFFになってしまう事態があり得る。このため、実施形態の自動販売機では、終了判断回路43を設け、スタンバイ信号がOFFの場合に限って非常用電源3による電力供給を停止させるようにしている。
【0043】
実施形態のさらに別の顕著な意義を有する構成は、非常用電源3がいわゆる無料モードとは連動していない点である。即ち、上記説明から解るように、外部操作ボタン8が押されて非常用電源3により電力供給が開始されても、主制御部2における商品の払い出し条件は通常時と同様であり、金銭投入口15から正しく金銭が投入され、商品選択ボタン14が押された場合に商品が払い出される。
【0044】
この点は、上記非常用電源3の制御の構成と密接に関連した重要な意義を有する。実施形態の自動販売機についても、無料モードで動作するよう構成することは可能である。具体的には、切断回路41に連動して主制御部2に信号を送る制御回路を新たに設ける。この制御回路は、非常用電源3が使われる場合、主制御部2における各商品の価格情報の設定値をゼロに切り替える信号を出力するものとされる。
【0045】
このような無料モードの構成は、災害時に被災者に無料にて飲料を提供できるようになるため、その点では大きな意義がある。しかしながら、実施形態の自動販売機では、外部操作ボタン8は自動販売機を利用する誰もが操作できるものである。従って、悪用があり得る。即ち、外部操作ボタン8を連続して押して自動販売機内の商品を無料にて大量に払い出す悪用である。
【0046】
その一方、実施形態の自動販売機は、事業所内に設置されることを想定しており、所属者によって利用されることを想定している。つまり、実施形態の自動販売機は、帰宅困難者対策とはいっても、事業所に勤務する者や来訪者が帰宅困難者となるのであり、所持金が全くない者が利用することは考えにくいものである。従って、無料モードとすることの必要性はあまりない。かえって、無料モードにすることの問題(上記悪用)が懸念される。実施形態の自動販売機は、これらの点を考慮し、外部操作ボタン8が押されたとしても商品の払い出しについては通常モードで行われるようにしている。
【0047】
次に、上記実施形態における電源制御ユニット4の構成について、ソフトウェア的な説明を補足して行う。
図3は、
図2に示す電源制御ユニット4をソフトウェア的に実現する例について示した概略図である。
上記説明では、電源制御はハードウェア的に実現されるように説明したが、電源制御は、ソフトウェア的に実現することも可能である。例えば、電源制御ユニットとしてプロセッサとROMのようなメモリとを備えた構成とし、メモリ中にこのソフトウェア(以下、電源制御プログラム)を記憶しておく。電源制御プログラムは、
図2に示す停電センサ34がON信号を出力した際に自動的に実行されるようにしておく。
【0048】
電源制御プログラムが起動すると、
図3に示すように、まず主スイッチ7をOFFにするよう制御信号を出力する。そして、外部操作ボタン8からの信号の入力待ちとなる。外部操作ボタン8が押されると、電源制御プログラムは、主スイッチ7をONに戻す。これにより、非常用電源3による電力供給が開示される。
【0049】
これととともに電源制御プログラムはタイマーをスタートさせる。タイマーのカウントが終了した際、電源制御プログラムは、主制御部2からのスタンバイ信号がONであるかOFFであるかを判断し、ONであれば、そのままの状態を保持する(ループする)。スタンバイ信号がOFFであれば、ループを抜け出て主スイッチ7をOFFにし、操作ボタンからの信号待ちの状態に戻る。
【0050】
尚、
図3に示すように、停電センサ34の信号がOFFになったら(即ち復電したら)、電源制御プログラムは、主スイッチ7をONに戻した後、終了される。タイマーのカウント中やスタンバイ信号がONの場合であっても、強制的にプログラムを終了させるようにする場合もある。この場合も、商用電源5からの電力が自動販売機の各部に供給されるので、万が一購入操作中であっても金銭の払い戻し不可の状態になることはない。尚、主スイッチ7は、僅かでも供給電力停止(瞬停)が生じないようACスイッチを使用することが好ましい。この点は、上記ハードウェアにより実現される場合も同様である。
【0051】
上記実施形態の構成において、電源制御ユニット4は停電時に非常用電源3から電力の供給を受けると説明したが、自前の電源を備えていても良い。例えば電源制御ユニット4を電池駆動のものとし、停電センサ34からON信号を受信した際にこの電池から電力供給を受けるようにしても良い。電源制御ユニット4は消費電力の小さいものであるが、それでも非常用電源3の電力を使うとその分だけ非常用電源3を消費してしまうので、自前の電源とすることが好ましい。但し、電池の場合には定期的な交換等のメンテナンスが必要なので、これが不要であるという点では非常用電源3を利用するメリットがある。
【0052】
また、外部操作ボタン8は、前面扉11に設けられるとしたが、他の場所でも良い。例えば、筐体1の側面でも良い。また、非常用電源3に設けても良く、例えば外装ボックス30の前面に設けることができる。利用者が操作できる位置であれば、外部操作ボタン8はどの位置でも良い。一般的には、前面扉11に設けられるのが一番操作し易いので好適である。但し、市販の自動販売機を改良することで実施形態の自動販売機を構成する場合、非常用電源3又はその外装ボックス30に設けると、前面扉11に対する加工は不要となるので好適である。
【0053】
上述した実施形態の自動販売機は、事業所内に設置されると好適であると説明したが、事業所以外の場所に設置されるものであっても構わない。例えば、道路に面した民家の軒先や道路脇の空き地などに設置されても良い。このような場合でも、停電時に一定時間動作を続けることができるので、自販機業者としては売上の増大が見込めるし、災害時にたまたま通りがかった者にとっては停電時に商品を購入できるので便利である。
【0054】
また、無料モードとすることは上記のようなデメリットがあるが、それでも被災者支援を考慮して無料モードの構成が採用されることもある。この場合には、外部操作ボタン8とは別に無料モード用の専用鍵穴を設ける。そして、前述したのと同様に無料モード用の鍵を作っておき、担当者がその鍵を管理しておくようにする。
【0055】
尚、外部操作スイッチは押しボタンスイッチ(外部操作ボタン8)であったが、レバースイッチのような他のスイッチでも良い。
また、上記説明では自動販売機で販売される商品は飲料であったが、飲料以外の商品は販売する自動販売機について本願発明を適用することも可能である。例えばパンや菓子のような食品を販売する自動販売機が知られているが、このような自動販売機について本願発明を適用すると、災害時に非常用食料の提供が行えるようになるので、好適である。