【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、核酸の光反応技術を鋭意研究してきたところ、光応答性修飾核酸と標的となる核酸をハイブリダイゼーションして二重鎖を形成させた後に、光照射によって光架橋を形成させて、インキュベーションを行うことによって、標的核酸中に一塩基置換を高い効率で実現できること、この光架橋性修飾核酸の塩基配列中に導入した光応答性塩基の5’側に隣接させてイノシン(I)を導入すると、イノシン(I)に相補的な位置のシトシン(C)がウラシル(U)へと塩基変換できること、これが室温や37℃の中性溶液という穏和な条件下で実現できること、を見いだして、本発明に到達した。
【0007】
したがって、本発明は次の(1)以下にもある。
(1)
次の式I:
【化1】
(ただし、式I中、
R1は、水素を表し、
R2は、水酸基を表し、
R3は、水素又は水酸基である)
で表されるイノシンが、式IでR1に結合しているOと一体となって形成されたリン酸基によってリン酸ジエステル結合して導入され、次の式II:
【化2】
(ただし、式II中、R11は、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、C2〜C7のアルコキシカルボニル基、又は水素であり、
R12及びR13は、それぞれ独立に、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、C2〜C7のアルコキシカルボニル基、又は水素であり、
R4は、水素を表し、
R5は、水酸基を表し、
R6は、水素又は水酸基である)
で表される光応答性修飾ヌクレオシドが、塩基配列中において上記イノシンの3’側に隣接した位置に、式IIでR4に結合しているOと一体となって形成されたリン酸基によってリン酸ジエステル結合して導入された、光応答性修飾核酸と、
上記光応答性修飾核酸と相補的な塩基配列を有し、塩基配列中の上記イノシンに対応する相補的な位置に、核酸塩基としてシトシン(C)を有する、標的核酸とを、
ハイブリダイズして二重鎖を形成する工程、
形成された二重鎖に対して光照射して、光応答性修飾核酸と標的核酸の間に光架橋を形成する工程、
光架橋が形成された二重鎖をインキュベーションして、標的核酸中のシトシン(C)をウラシル(U)へと塩基変換する工程、
を含む、標的核酸中のシトシン(C)をウラシル(U)へと塩基変換する方法。
(2)
光架橋が形成された二重鎖をインキュベーションして、標的核酸中のシトシン(C)をウラシル(U)へと塩基変換する工程、の後に、さらに、
光架橋が形成された二重鎖に対して、光照射して、光架橋を開裂させる工程、
を含む、(1)に記載の方法。
(3)
光架橋が形成された二重鎖をインキュベーションして、標的核酸中のシトシン(C)をウラシル(U)へと塩基変換する工程が、
光架橋が形成された二重鎖を、20℃〜40℃の範囲の温度でインキュベーションして行われる、(1)〜(2)のいずれかに記載の方法。
(4)
光架橋が形成された二重鎖をインキュベーションして、標的核酸中のシトシン(C)をウラシル(U)へと塩基変換する工程が、
光架橋が形成された二重鎖を、1時間〜10日間の範囲でインキュベーションして行われる、(1)〜(3)のいずれかに記載の方法。
(5)
光架橋が形成された二重鎖をインキュベーションして、標的核酸中のシトシン(C)をウラシル(U)へと塩基変換する工程が、
光架橋が形成された二重鎖を、pH6.2〜7.8の範囲のpHでインキュベーションして行われる、(1)〜(4)のいずれかに記載の方法。
(6)
形成された二重鎖に対して、光照射して、光応答性修飾核酸と標的核酸の間に光架橋を形成する工程が、
形成された二重鎖に対して、340nm〜380nmの範囲の波長を含む光を、光照射して行われる、(1)〜(5)のいずれかに記載の方法。
(7)
形成された二重鎖に対して、光照射して、光応答性修飾核酸と標的核酸の間に光架橋を形成する工程が、
形成された二重鎖に対して、0.1秒〜30秒の範囲で光照射して行われる、(1)〜(6)のいずれかに記載の方法。
(8)
光架橋が形成された二重鎖に対して、光照射して、光架橋を開裂させる工程が、
形成された二重鎖に対して、300nm〜330nmの範囲の波長を含む光を、光照射して行われる、(2)〜(7)のいずれかに記載の方法。
(9)
光架橋が形成された二重鎖に対して、光照射して、光架橋を開裂させる工程が、
形成された二重鎖に対して、0.1秒〜30秒の範囲で光照射して行われる、(2)〜(8)のいずれかに記載の方法。
(10)
光架橋が形成された二重鎖に対して、光照射して、光架橋を開裂させる工程の後に、さらに、
光架橋が開裂した二重鎖を解離して、シトシン(C)をウラシル(U)へと塩基変換された標的核酸の鎖を得る工程、
を含む、(2)〜(9)のいずれかに記載の方法。
(11)
(1)〜(10)のいずれかに記載の方法によって、シトシン(C)をウラシル(U)へと塩基変換された標的核酸を製造する方法。
【0008】
さらに、本発明は、次の(21)以下にもある。
(21)
次の式I:
【化3】
(ただし、式I中、
R1は、水素を表し、
R2は、水酸基を表し、
R3は、水素又は水酸基である)
で表されるイノシンが、式IでR1に結合しているOと一体となって形成されたリン酸基によってリン酸ジエステル結合して導入され、次の式II:
【化4】
(ただし、式II中、R11は、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、C2〜C7のアルコキシカルボニル基、又は水素であり、
R12及びR13は、それぞれ独立に、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、C2〜C7のアルコキシカルボニル基、又は水素であり、
R4は、式IIでR4に結合しているOと一体となって形成されたリン酸基を表し、
R5は、水酸基を表し、
R6は、水素又は水酸基である)
で表される光応答性修飾ヌクレオシドが、塩基配列中において上記イノシンの3’側に隣接した位置に、式IIでR4に結合しているOと一体となって形成されたリン酸基によってリン酸ジエステル結合して導入された、光応答性修飾核酸。
(22)
(21)に記載の光応答性修飾核酸からなる、核酸塩基変換剤。
(23)
(21)に記載の光応答性修飾核酸の、核酸塩基変換のための使用。
(24)
(21)に記載の光応答性修飾核酸と、
上記光応答性修飾核酸と相補的な塩基配列を有し、塩基配列中の上記イノシンに対応する相補的な位置に、核酸塩基としてシトシン(C)を有する、標的核酸とを、
ハイブリダイズして二重鎖を形成する工程、
形成された二重鎖に対して光照射して、光応答性修飾核酸と標的核酸の間に光架橋を形成する工程、
を含む、光架橋を形成する方法。
(25)
形成された二重鎖に対して、光照射して、光応答性修飾核酸と標的核酸の間に光架橋を形成する工程が、
形成された二重鎖に対して、340nm〜380nmの範囲の波長を含む光を、光照射して行われる、(24)に記載の方法。
(26)
形成された二重鎖に対して、光照射して、光応答性修飾核酸と標的核酸の間に光架橋を形成する工程が、
形成された二重鎖に対して、0.1秒〜30秒の範囲で光照射して行われる、(24)〜(25)のいずれかに記載の方法。
(27)
(24)〜(26)のいずれかに記載の方法によって、光架橋が形成された核酸を製造する方法。
(28)
(21)に記載の光応答性修飾核酸からなる、核酸光架橋剤。
(29)
(21)に記載の光応答性修飾核酸の、核酸光架橋のための使用。