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特開2015-196150清浄水生成装置、血液浄化装置及び清浄水生成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-196150(P2015-196150A)
(43)【公開日】2015年11月9日
(54)【発明の名称】清浄水生成装置、血液浄化装置及び清浄水生成方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/44 20060101AFI20151013BHJP
   B01D 61/36 20060101ALI20151013BHJP
   A61M 1/14 20060101ALI20151013BHJP
【FI】
   C02F1/44 H
   B01D61/36
   A61M1/14 511
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-76382(P2014-76382)
(22)【出願日】2014年4月2日
(71)【出願人】
【識別番号】507365204
【氏名又は名称】旭化成メディカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】和田 朋之
【テーマコード(参考)】
4C077
4D006
【Fターム(参考)】
4C077AA05
4C077BB01
4C077DD01
4C077DD14
4C077DD18
4C077DD26
4C077EE03
4C077HH02
4C077HH14
4C077HH15
4C077JJ02
4C077JJ15
4C077JJ16
4C077KK03
4C077LL02
4C077LL05
4D006GA13
4D006GA27
4D006HA01
4D006HA41
4D006JA53Z
4D006JA66Z
4D006KA12
4D006KA72
4D006KB17
4D006KE02Q
4D006KE07P
4D006KE08P
4D006KE16Q
4D006KE19P
4D006KE23Q
4D006LA03
4D006MA01
4D006MA03
4D006PA01
4D006PB06
4D006PB09
4D006PC44
(57)【要約】
【課題】膜蒸留法を用いて装置をコンパクト化しつつ、装置の稼働コストを低減できる清浄水生成装置を提供する。
【解決手段】清浄水生成装置1は、原水をヒータ10に供給する原水供給回路11と、ヒータ10で加温された原水を蒸留膜12の一次側に供給し、その後ヒータ10に戻して循環させる循環回路13と、蒸留膜12の二次側に生成された蒸気を送流する送流回路14と、送流回路14の蒸気と原水供給回路11の原水との間で熱交換を行う熱交換器15とを有している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透析液調製用の清浄水を生成する清浄水生成装置であって、
原水をヒータに供給する原水供給回路と、
前記ヒータで加温された原水を蒸留膜の一次側に供給し、その後前記ヒータに戻して循環させる循環回路と、
前記蒸留膜の二次側に生成された蒸気を送流する送流回路と、
前記送流回路の蒸気と前記原水供給回路の原水との間で熱交換を行う熱交換器と、を有する、清浄水生成装置。
【請求項2】
前記蒸留膜の二次側を減圧可能な減圧手段を有する、請求項1に記載の清浄水生成装置。
【請求項3】
前記送流回路の蒸留水を貯留する貯留タンクと、
前記貯留タンク内を真空吸引する真空ポンプと、をさらに有し、
前記減圧手段は前記真空ポンプである、請求項2に記載の清浄水生成装置。
【請求項4】
前記送流回路内を減圧しながら送液する減圧ポンプと、
前記送流回路の前記減圧ポンプの下流側に設けられ、前記送流回路の蒸気と蒸留水を分離する脱気槽と、をさらに有し、
前記減圧手段は前記減圧ポンプである、請求項2に記載の清浄水生成装置。
【請求項5】
前記熱交換器で凝縮される蒸留水の温度を制御する温度制御システムをさらに有する、請求項1〜4のいずれかに記載の清浄水生成装置。
【請求項6】
前記温度制御システムは、
前記熱交換器で熱交換した原水を前記原水供給回路から分岐する分岐回路と、
前記分岐回路に分岐される原水の流量を調整する流量調整装置と、を有し、
前記流量調整装置により前記分岐回路に分岐される原水の流量を調整して、蒸留水の温度を調整する、請求項5に記載の清浄水生成装置。
【請求項7】
前記熱交換器で凝縮される蒸留水の電導度を測定する電導度測定装置をさらに有する、請求項1〜6のいずれかに記載の清浄水生成装置。
【請求項8】
前記蒸留膜の二次側の圧力を検出する圧力センサと、
前記ヒータを停止し、減圧装置により前記蒸留膜の二次側を減圧して密閉し、前記圧力センサによる圧力測定結果に基づいて前記蒸留膜の液漏れを検出する液漏れ検出装置と、を有する、請求項1〜7のいずれかに記載の清浄水生成装置。
【請求項9】
前記蒸留膜の一次側の圧力を検出する圧力センサと、
前記ヒータを停止し、前記蒸留膜の一次側を加圧して密閉し、前記圧力センサによる圧力測定結果に基づいて前記蒸留膜の液漏れを検出する液漏れ検出装置と、を有する、請求項1〜7のいずれかに記載の清浄水生成装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の清浄水生成装置と、
前記清浄水生成装置に接続された透析液調製部と、を有する血液浄化装置。
【請求項11】
透析液調製用の清浄水を生成する方法であって、
原水をヒータで加温して蒸留膜の一次側に供給し、その後前記ヒータに戻して循環させ、前記蒸留膜を通じて前記蒸留膜の二次側に生成された蒸気と前記ヒータに供給する前の原水との間で熱交換して前記蒸気を冷却し原水を加温する、清浄水生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透析液調製用の清浄水生成装置、血液透析装置、血液浄化装置及び清浄水生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、透析液を調製するために用いられる清浄水は、一般的に水道水等の原水を軟水器、活性炭素吸着装置、フィルタ、ROモジュール(逆浸透膜モジュール)等を通過させる、いわゆる逆浸透膜法(RO法)を用いて生成されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−18403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のようにRO法を用いた場合、原水を浄化するための部材や装置が複数必要になるため、清浄水生成装置全体が大型化してしまう。
【0005】
そこで、本願発明者は、原水を膜を用いて蒸留する、いわゆる膜蒸留法を用いて清浄水を生成することを考えている。この膜蒸留法を用いた場合、装置が小型化できるうえ、清浄水の純度をさらに上げることができる。一方、この膜蒸留法の場合、原水をヒータにより加温したり蒸気を冷却する必要があるため、装置の稼働コストがかかるという欠点がある。
【0006】
本出願はかかる点に鑑みてなされたものであり、膜蒸留法を用いて装置をコンパクト化しつつ、装置の稼働コストを低減できる清浄水生成装置、血液透析装置などの血液浄化装置及び清浄水生成方法を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明には、透析液調製用の清浄水を生成する清浄水生成装置であって、原水をヒータに供給する原水供給回路と、前記ヒータで加温された原水を蒸留膜の一次側に供給し、その後前記ヒータに戻して循環させる循環回路と、前記蒸留膜の二次側に生成された蒸気を送流する送流回路と、前記送流回路の蒸気と前記原水供給回路の原水との間で熱交換を行う熱交換器と、を有する、清浄水生成装置が含まれる。
【0008】
前記清浄水生成装置は、前記蒸留膜の二次側を減圧可能な減圧手段を有するものであってもよい。
【0009】
前記清浄水生成装置は、前記送流回路の蒸留水を貯留する貯留タンクと、前記貯留タンク内を真空吸引する真空ポンプと、をさらに有し、前記減圧手段は前記真空ポンプであってもよい。
【0010】
前記清浄水生成装置は、前記送流回路内を減圧しながら送液する減圧ポンプと、前記送流回路の前記減圧ポンプの下流側に設けられ、前記送流回路の蒸気と蒸留水を分離する脱気槽と、をさらに有し、前記減圧手段は前記減圧ポンプであってもよい。
【0011】
前記清浄水生成装置は、前記熱交換器で凝縮される蒸留水の温度を制御する温度制御システムをさらに有していてもよい。
【0012】
前記温度制御システムは、前記熱交換器で熱交換した原水を前記原水供給回路から分岐する分岐回路と、前記分岐回路に分岐される原水の流量を調整する流量調整装置と、を有し、前記流量調整装置により前記分岐回路に分岐される原水の流量を調整して、蒸留水の温度を調整するようにしてもよい。
【0013】
前記清浄水生成装置は、前記熱交換器で凝縮される蒸留水の電導度を測定する電導度測定装置をさらに有していてもよい。
【0014】
前記清浄水生成装置は、前記蒸留膜の二次側の圧力を検出する圧力センサと、前記ヒータを停止し、減圧装置により前記蒸留膜の二次側を減圧して密閉し、前記圧力センサによる圧力測定結果に基づいて前記蒸留膜の液漏れを検出する液漏れ検出装置と、を有するようにしてもよい。
【0015】
前記清浄水生成装置は、前記蒸留膜の一次側の圧力を検出する圧力センサと、前記ヒータを停止し、前記蒸留膜の一次側を加圧して密閉し、前記圧力センサによる圧力測定結果に基づいて前記蒸留膜の液漏れを検出する液漏れ検出装置と、を有するようにしてもよい。
【0016】
別の観点による本発明には、上記清浄水生成装置と、前記清浄水生成装置に接続された透析液調製部と、を有する血液浄化装置が含まれる。
【0017】
別の観点による本発明には、透析液調製用の清浄水を生成する方法であって、原水をヒータで加温して蒸留膜の一次側に供給し、その後前記ヒータに戻して循環させ、前記蒸留膜を通じて前記蒸留膜の二次側に生成された蒸気と前記ヒータに供給する前の原水との間で熱交換して前記蒸気を冷却し原水を加温する、清浄水生成方法が含まれる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、膜蒸留法を用いて清浄水生成装置をコンパクト化しつつ、装置の稼働コストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】清浄水生成装置の構成の概略を示す模式図である。
図2】他の清浄水生成装置を有する清浄水生成装置の構成の概略を示す模式図である。
図3】温度調整システムを有する清浄水生成装置の構成の概略を示す模式図である。
図4】蒸留水の電導度を測定可能な清浄水生成装置の構成の概略を示す模式図である。
図5】蒸留膜の液漏れを検出可能な清浄水生成装置の構成の概略を示す模式図である。
図6】蒸留膜の液漏れを検出可能な他の清浄水生成装置の構成の概略を示す模式図である。
図7】清浄水生成装置を有する血液浄化装置の構成の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態の一例について説明する。なお、図面の上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。図面の寸法比率は、図示の比率に限定されるものではない。さらに、以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をその実施の形態のみに限定する趣旨ではない。また、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、さまざまな変形が可能である。
【0021】
図1は、本実施の形態に係る透析液調製用の清浄水生成装置1の構成の概略を示す説明図である。清浄水生成装置1は、例えば水道水などの原水をヒータ10に供給する原水供給回路11と、ヒータ10で加温された原水を蒸留膜12の一次側に供給し、その後ヒータ10に戻して循環させる循環回路13と、蒸留膜12の二次側に生成された蒸気を透析液調製部に送流する送流回路14と、送流回路14の蒸気と原水供給回路11の原水との間で熱交換し、蒸気を凝縮させる熱交換器15と、制御装置16を有している。
【0022】
原水供給回路11は、例えば水道管などの外部原水供給源に接続されている。原水供給回路11は、熱交換器15の低温側通路を通ってヒータ10に通じている。循環回路13には、循環ポンプ20が設けられている。蒸留膜12は、平板膜、中空糸膜などの疎水性多孔質膜であり、モジュール内に配置されており、原水を通過させる一次側通路と蒸気が生成される二次側通路を備えている。
【0023】
送流回路14は、例えば蒸留膜12の二次側から熱交換器15の高温側通路を通って透析液調製部に通じている。
【0024】
送流回路14には、例えば蒸留水を貯留する貯留タンク40と、貯留タンク40内を真空吸引する真空ポンプ41を有している。この真空ポンプ41は、蒸留膜12の二次側を減圧する減圧手段としても機能する。なお、貯留タンク40内には、図示しないレベルセンサが設けられ、貯留タンク40内の液面を監視している。
【0025】
送流回路14の貯留タンク40の下流側には、送液ポンプ42が設けられている。
【0026】
制御装置16は、例えば清浄水生成装置1の全体の動作を制御するコンピュータであり、例えばヒータ10、循環ポンプ20、真空ポンプ41、送液ポンプ42等の動作を制御して、清浄水を生成する処理を実行できる。
【0027】
清浄水を生成する処理では、先ず、原水が水道管などの外部原水供給源から原水供給回路11を通じてヒータ10に供給され加温される。ヒータ10で加温された原水は、循環ポンプ20により循環回路13を通じて蒸留膜12の一次側に供給される。高温の原水の一部は、蒸留膜12を挟んだ蒸気圧差を駆動力として、蒸留膜12の低温の二次側に蒸気になって流入する。残りの原水は循環回路13を通じて再びヒータ10に供給され、循環する。蒸留膜12の二次側に生成された蒸気は、送流回路14を通じて熱交換器15の高温側に供給され、低温側を流れる原水供給回路11の原水と熱交換する。これにより、蒸気が冷やされ凝縮する。凝縮してできた蒸留水は、送流回路14を通じて貯留タンク40に送られ貯留する。貯留タンク40では、真空ポンプ41により真空吸引され、凝縮されずに蒸留水に混じって存在する蒸気が排気される。排気後、貯留タンク40の蒸留水は、送液ポンプ42により清浄水として透析液調製部に送られる。
【0028】
本実施の形態によれば、膜蒸留法を用いて透析液調製用の清浄水を生成できるので、装置全体をコンパクト化できる。そのうえで、送流回路14の蒸気と原水供給回路11の原水との間で熱交換を行うことができるので、原水の加温効率や蒸気の冷却効率を高めることができ、この結果、この系全体の熱効率が上がり、ヒータ10の消費電力を抑えることができる。よって、装置をコンパクト化しつつ、装置の稼働コストを低減できる。
【0029】
清浄水生成装置1は、蒸留水を貯留する貯留タンク40と、貯留タンク40内を真空吸引する真空ポンプ41を有するので、送流回路14内の蒸留水と気体を分離できる。よって、気体が分離された蒸留水を直接透析液調製部に送って透析液を調製することができる。また、真空ポンプ41は、蒸留膜12の二次側を減圧できるので、蒸留膜12における原水の蒸発を促進できる。さらに真空ポンプ41を用いて蒸留膜12の二次側を減圧できるので、他に減圧手段を設ける必要がなく、装置構成を簡略化できる。
【0030】
上記実施の形態で記載した送流回路14は、貯留タンク40、真空ポンプ41に代えて、図2に示すように送流回路14内を減圧する減圧手段としての減圧ポンプ50と、送流回路14の脱気を行う脱気槽51を有していてもよい。この場合、熱交換器15で凝縮した蒸留水は、減圧ポンプ50により減圧され、脱気槽51に送られる。脱気槽51では、送流回路14内の蒸留水と気体が分離され、気体が排出される。その後脱気槽51の蒸留水は、清浄水として透析液調製部に送られる。
【0031】
本実施の形態によれば、送流回路14内の蒸留水と気体が分離されるので、清浄水生成装置1で生成された蒸留水をそのまま透析液調製部に送り透析液を調製できる。つまり、清浄水生成装置1を直接透析液調製部に接続できる。また、減圧ポンプ50は、蒸留膜12の二次側を減圧できるので、蒸留膜12における原水の蒸発を促進できる。また減圧ポンプ50を用いて蒸留膜12の二次側を減圧できるので、他に減圧手段を設ける必要がなく、装置構成を簡略化できる。さらに、減圧ポンプ50を用いて蒸留水を透析液調製部に送ることができるので、装置構成を簡略化できる。
【0032】
以上の実施の形態において、清浄水生成装置1は、図3に示すように熱交換器15で凝縮される蒸留水の温度を制御する温度制御システム60をさらに備えていてもよい。例えば温度制御システム60は、熱交換器15で熱交換した原水を原水供給回路11から分岐する分岐回路70と、分岐回路70に分岐される原水の流量を調整する流量調整装置71を有している。流量調整装置71には、例えば流量調整弁や流量可変ポンプが用いられる。そして、例えば制御装置16により、流量調整装置71により分岐回路70に分岐される原水の流量が調整され、これによりヒータ10によって加温される原水の温度が調整され、蒸留膜12における蒸気温度が調整される。この結果熱交換器15で凝縮される蒸留水の温度が調整される。例えば分岐回路70への原水の分岐流量が増えると、熱交換器15の原水の供給流量が増えて、蒸留水の温度が下がり、逆に分岐回路70への原水の分岐流量が減ると、熱交換器15の原水流量が減って蒸留水の温度も上がる。本装置における分岐回路70への原水の分岐流量と蒸留水の温度との相関を予め知得しておき、その相関に基づいて、原水の分岐流量を調整することによって蒸留水の温度を制御してもよい。本実施の形態によれば、蒸留水の温度を調整して、透析液調製に必要な所望の温度の清浄水を生成することができる。この結果、生成後の蒸留水を温度調整を行わずにそのまま透析液調製部に送ることができる。
【0033】
以上の実施の形態において、清浄水生成装置1は、図4に示すように熱交換器15で凝縮される蒸留水の電導度を測定する電導度測定装置80をさらに備えていてもよい。電導度測定装置80のセンサは、送流回路14の熱交換器15の下流側、例えば貯留タンク40の下流側に設けられる。電導度測定装置80により蒸留水の電導度を測定することによって、蒸留膜12の性能低下や破損等を検出することができる。なお、電導度測定装置80の設置位置は図4の例に限られず、他の位置であってもよい。また、この例は、上記図2図3に示した構成の清浄水生成装置1にも適用できる。
【0034】
また、清浄水生成装置1は、図5に示すように蒸留膜12の二次側の圧力を検出する圧力センサ90を有し、液漏れ検出装置としての制御装置16は、ヒータ10を停止し、減圧装置である減圧ポンプ50により蒸留膜12の二次側を減圧して電磁弁91で密閉し、圧力センサ90による圧力測定結果に基づいて蒸留膜12の液漏れを検出するようにしてもよい。この場合、ヒータ10を停止することによって蒸留膜12に蒸気圧差ができないので、原水の蒸留が停止する。蒸留膜12に液漏れがなければ、蒸留膜12の二次側の圧力は変化しないので、圧力センサ90により圧力変化を検出することで蒸留膜12の液漏れを検出できる。蒸留膜12の液漏れを検出した場合には、直ちに蒸留膜12を交換する。なお、この例は、上述の図2の構成の清浄水生成装置1に適用した例であるが、他の図1図3及び図4の構成の清浄水生成装置1にも適用できる。
【0035】
また、清浄水生成装置1は、図6に示すように蒸留膜12の一次側の圧力を検出する圧力センサ100を有し、制御装置16は、ヒータ10と循環ポンプ20を停止し、電磁弁91を閉じることで原水圧を蒸留膜12の一次側である循環路に閉じ込めて、圧力センサ100による圧力測定結果に基づいて蒸留膜12の液漏れを検出してもよい。この場合、ヒータ10を停止することによって原水の蒸留を停止する。蒸留膜12に液漏れがなければ、蒸留膜12の一次側の圧力は変化しないので、圧力センサ100により圧力変化を検出することで蒸留膜12の液漏れを検出できる。蒸留膜12の液漏れを検出した場合には、直ちに蒸留膜12を交換する。なお、この例は、上述の図2の構成の清浄水生成装置1に適用した例であるが、他の図1図3及び図4の構成の清浄水生成装置1にも適用できる。
【0036】
以上の清浄水生成装置1は、多人数用透析液供給装置の透析液調製部に接続されていてもよいし、血液透析装置の透析液調製部に接続されていてもよい。また、清浄水生成装置1は、透析液調製部を有する血液浄化装置に設けられていてもよい。以下にかかる場合の血液浄化装置の構成の一例を示す。
【0037】
図7に示すように血液浄化装置120は、その装置内に例えば血液処理部130と、透析液補充部131と、清浄水生成装置1を備えている。
【0038】
血液処理部130は、例えば患者の血液を浄化する中空糸膜などの血液浄化膜を有する血液浄化器140を備えている。血液浄化器140には、患者の血液を血液ポンプ141により血液浄化器140の血液浄化膜の一次側140aに供給し患者に戻す血液回路142が接続されている。また、血液浄化器140には、例えば透析液貯留容器150の透析液を送液ポンプ151によって血液浄化膜の二次側140bに供給する透析液供給回路152と、血液浄化膜の二次側140bの透析液を送液ポンプ153によって排液容器154に排液する排液回路155が接続されている。なお、透析液供給回路152は、血液回路142にも接続可能であり、血液回路142に補液として透析液を供給できる。
【0039】
透析液補充部131は、例えば透析液を調製する透析液調製部160と、透析液調製部160で調製された透析液を送液ポンプ165によって透析液貯留容器150に補充する補充回路163を備えている。
【0040】
透析液調製部160は、例えば水供給源170と、A原液供給源171と、B原液供給源172を有し、それらの液体を所定の割合で混合して透析液を調製できる。水供給源70には、清浄水生成装置1が接続されており、清浄水生成装置1で生成された清浄水を貯留できる。A原液供給源171には、A原液として例えば重炭酸ナトリウムを含まない溶液原液が貯留され、B原液供給源172には、B原液として例えば重炭酸ナトリウムを含む溶液原液が貯留される。なお、透析液の水以外の成分の種類やその数はこれに限られない。
【0041】
血液浄化装置120には、例えば水道管などの外部原水供給源と清浄水生成装置1の原水供給回路11とを接続するための接続部Aが設けられている。
【0042】
以上の血液浄化装置120では、患者に対して例えば持続緩除式の血液浄化治療が行われる。例えば持続緩除式血液濾過(CHF)治療が行われる場合、患者の血液が、血液ポンプ141により血液回路142を通じて血液浄化器140に供給される。血液浄化器140において血液から膜を通じて除去された老廃物等は、送液ポンプ153により排液回路155を通じて排液容器154に排出される。また、送液ポンプ151により透析液貯留容器150の透析液が、補液として透析液供給回路152を通じて血液回路142に供給される。血液浄化器140で浄化された血液は、血液回路142を通じて患者に戻される。
【0043】
持続緩除式血液透析(CHD)治療が行われる場合には、透析液貯留容器150の透析液が送液ポンプ151により血液浄化器140の膜の二次側140bに供給され、送液ポンプ153により血液浄化器140の二次側140bの透析液が排液容器154に排液される。血液浄化器140において、血液の一部成分が膜の二次側140bに流出して血液が浄化される。
【0044】
透析液補充部131では、透析液調製部160において、水、A液及びB液が混合され、透析液が調製される。このとき、上述の清浄水生成装置1で生成された清浄水は水供給源170に供給され、その水供給源170の水が用いられる。
【0045】
透析液調製部160で調製された透析液は、透析液貯留容器150に供給され貯留される。
【0046】
本実施の形態によれば、清浄水生成装置1が血液浄化装置120に搭載されているので、血液浄化装置120をどこでも水道管に接続するだけで、透析治療を行うことが可能となる。特に持続緩徐式の血液浄化治療においては透析液を継続的に生成できるので、医療従事者が透析液の補充を行う必要がなく、医療従事者の負担を低減できる。
【0047】
血液浄化装置120は、外部原水供給源を清浄水生成装置1に接続するための接続部Aを有するので、外部原水供給源との接続を簡単かつ適正に行うことができる。
【0048】
なお、上記実施の形態では、持続緩徐式の治療を行う血液浄化装置120に清浄水生成装置1を搭載していたが、持続緩徐式以外の血液透析などの他の血液浄化治療を行う血液浄化装置に清浄水生成装置1を搭載してもよい。
【0049】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0050】
例えば清浄水生成装置1や血液浄化装置120の構成は、上記実施の形態で記載した構成に限られない。清浄水生成装置1は透析液調製部に直接接続されておらず、単独のものであってもよい。また、送流回路14、温度制御システム60等の構成の他のものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、膜蒸留法を用いて清浄水生成装置を小型化しつつ、装置の稼働コストを低減する際に有用である。
【符号の説明】
【0052】
1 清浄水生成装置
10 ヒータ
11 原水供給回路
12 蒸留膜
13 循環回路
14 送流回路
15 熱交換器
20 循環ポンプ
40 貯留タンク
41 真空ポンプ
50 減圧ポンプ
51 脱気槽
60 温度制御システム
80 電導度測定装置
90、100 圧力センサ
120 血液浄化装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7