(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-196523(P2015-196523A)
(43)【公開日】2015年11月9日
(54)【発明の名称】積層剥離容器
(51)【国際特許分類】
B65D 83/00 20060101AFI20151013BHJP
B65D 1/02 20060101ALI20151013BHJP
B65D 41/04 20060101ALI20151013BHJP
B65D 51/24 20060101ALI20151013BHJP
B65D 85/00 20060101ALI20151013BHJP
B65D 53/02 20060101ALI20151013BHJP
B65D 53/04 20060101ALI20151013BHJP
A61L 9/12 20060101ALI20151013BHJP
【FI】
B65D83/00 F
B65D1/02 111
B65D41/04 B
B65D51/24 Z
B65D85/00 A
B65D53/02
B65D53/04 Z
A61L9/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-75100(P2014-75100)
(22)【出願日】2014年4月1日
(71)【出願人】
【識別番号】000104674
【氏名又は名称】キョーラク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120592
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 崇裕
(74)【代理人】
【識別番号】100184712
【弁理士】
【氏名又は名称】扇原 梢伸
(72)【発明者】
【氏名】政木 一
【テーマコード(参考)】
3E033
3E068
3E084
4C002
【Fターム(参考)】
3E033AA02
3E033BA13
3E033BA14
3E033BA16
3E033BA18
3E033BB08
3E033CA16
3E033CA20
3E033DA03
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3E033DC10
3E033DD01
3E033DD10
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3E033FA03
3E033GA02
3E068AA22
3E068AA35
3E068AB10
3E068CC03
3E068CE01
3E068CE03
3E068DD08
3E068DE02
3E068DE12
3E068EE19
3E068EE22
3E084AA04
3E084AA12
3E084AA24
3E084AA26
3E084AA37
3E084AB01
3E084BA02
3E084CA01
3E084CB10
3E084DA01
3E084DB12
3E084EA04
3E084FA09
3E084FB01
3E084GA01
3E084GB01
3E084HA03
3E084HB07
3E084HD03
3E084JA20
3E084KA20
3E084KB10
3E084LD30
4C002AA01
4C002BB03
4C002BB08
4C002BB09
4C002DD03
4C002DD12
4C002EE07
(57)【要約】
【課題】高い密封性を維持しながら内容物を徐々に容器外へ気化・拡散させることができる積層剥離容器を提供する。
【解決手段】積層剥離容器1は、外気に接する外層2と、この外層2から剥離可能な状態に積層されて内容物に接する内層4とによって筒状に形成され、その一端に口部18を有し、他端には底部24を有する容器本体16を備える。そして、口部18には天面の中央部を塞ぐ封止部材8と封止部材8を貫通して保持され内容物を吸い上げる吸出部材10とを有する蓋体6が装着されて、容器本体16に固定される。また、内層4が外層2から剥離したときに両層2,4の間に形成される空気室22に空気を流通させる空気導入口26を備えている。蓋体6が口部18に装着されることにより積層剥離容器1が完成し、積層剥離容器に望まれる作用効果を発揮することが可能となる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外気に接する外層と、前記外層に対し剥離可能に積層されて内容物に接する内層とにより形成され、一端に口部を有し且つ他端に底部を有する容器本体と、
前記容器本体に形成され、前記外層と前記内層との間にて空気を流通させる空気導入口と、
前記容器本体とは別体で予め前記口部に対し嵌め込み可能に形成され、その嵌め込み状態にて前記口部を封止可能な蓋体と、
前記蓋体に設けられ、前記口部に対して前記蓋体が嵌め込まれた状態で前記容器本体内に挿通されるとともに少なくともその一部が外気に露出した状態で密閉されることにより、前記容器本体内から前記内容物の吸い出しを可能とする吸出部材と
を備えた積層剥離容器。
【請求項2】
請求項1に記載の積層剥離容器において、
前記空気導入口が前記底部に形成されていることを特徴とする積層剥離容器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の積層剥離容器において、
前記蓋体は、その内面天部のコーナーに沿って接着されたシール部材を有することを特徴とする積層剥離容器。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の積層剥離容器において、
前記口部は、その外面壁部に略周方向に形成されたネジ山を有し、
前記蓋体は、その内面壁部に前記ネジ山に対応する溝が形成されており、前記口部に対して前記ネジ山に沿ってねじ込まれることにより前記容器本体に固定される
ことを特徴とする積層剥離容器。
【請求項5】
請求項4に記載の積層剥離容器において、
前記蓋体は、前記溝に沿って接着されたシール部材を有することを特徴とする積層剥離容器。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の積層剥離容器において、
前記蓋体は、その天面を略円筒状に形成された封止部材が貫通して蓋体上下に突出しており、
前記吸出部材は、前記封止部材の中央部を貫通して保持されている
ことを特徴とする積層剥離容器。
【請求項7】
請求項1から5のいずれかに記載の積層剥離容器において、
前記蓋体は、その内面天部に平板状に形成された封止部材が嵌合されて塞がれており、
前記吸出部材は、前記封止部材を貫通して保持されている
ことを特徴とする積層剥離容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い密封性を維持しながら内容物を徐々に容器外へ気化させ空気中に拡散させることができる積層剥離容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、容器に入れた液状薬剤の吸い上げや揮散、を効率よく行うことができる構造の薬剤揮散容器に代表される先行技術が知られており(例えば、特許文献1参照)、このような構造の容器は、液状芳香剤や液状消臭剤等の水溶性の液状薬剤の収容に用いられている。
【0003】
上記の先行技術に示される容器は、単一の素材で水溶性薬剤に対して高い吸液性及び揮散性を発現する能力を有しているだけでなく、多少のテンションでは破断しない植物繊維構造物でもある。その上、異なる材料や組成による吸い上げ部材と揮散体を組合せたり、層構造としたりする複雑な製造工程を経ることなく完成品としての容器を得られることから、製造コストを低く抑えて乾式で効率よく容器を製造することができると考えられる。
【0004】
この他にも、食品や化粧品等の様々な製品の保存に積層剥離容器を用いた別の先行技術が知られている(例えば、特許文献2参照)。
この先行技術では、可撓性の外層とこの外層から剥離可能な内層とで容器が形成されており、内容物は内層の内側に収容されている。また、容器の開口部には逆止弁が設けられているため、内層の内部から外部への内容物の流出は可能であるが、外部から内部へは流入できない構造となっている。
【0005】
上記の先行技術(特許文献2)によれば、容器を絞り変形させて内容物を取り出した後に容器の変形を解除すると、容器の外層と内層の間に空気が取り込まれることで容器の外層が元の形状に復元する。一方、逆止弁によって外部から容器の内層内への空気の流通は遮断されるため、内層の形状は外層の形状の復元に追従しない。これにより、容器としての外形を維持しつつ、内層の内側に空気が入り込むのを防止することにより、ある程度の期間を通じて内容物の劣化を防止することができると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−058550号公報
【特許文献2】特開平2−258563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前者の先行技術は、高い揮散性を実現すること等に主眼を置いて開発されてものであり、容器の密封性については一切考慮がなされていない。そのため、この技術によれば、必要とする量を超える内容物の揮散が急速に進行してしまい、揮散量を必要限度に抑制しながら使用状態を長期間維持することが困難である。
【0008】
一方で、後者の先行技術は、内容物を取り出した後に開口部が逆止弁により遮蔽されるため、内容物を空気に触れにくくすることが可能である。よって、前者の先行技術に比べれば密封性に優れており、内容物の劣化を防止することも可能である。ところが、容器本体が押圧されれば逆止弁が容易に開いて内容物が流出する構造であることから、内層内部の密封性を確保することが困難である。そのため、高い密封性を維持することは不可能である。
【0009】
そこで本発明は、高い密封性を維持しながら内容物を徐々に容器外へ気化させ空気中に拡散させることができる積層剥離容器の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明は以下の解決手段を採用する。
すなわち本発明に係る積層剥離容器は、外気に接する外層と、外層に対し剥離可能に積層されて内容物に接する内層とにより形成され、一端に口部を有し且つ他端に底部を有する容器本体と、容器本体に形成され、外層と内層との間にて空気を流通させる空気導入口と、容器本体とは別体で予め口部に対し嵌め込み可能に形成され、その嵌め込み状態にて口部を封止可能な蓋体と、蓋体に設けられ、口部に対して蓋体が嵌め込まれた状態で容器本体内に挿通されるとともに少なくともその一部が外気に露出した状態で密閉されることにより、容器本体内から内容物の吸い出しを可能とする吸出部材とを備えている。
【0011】
このように本発明は、蓋体と容器本体が別体として形成されており、蓋体が容器本体の一端を成す口部に嵌め込み可能な構成となっている。そして、蓋体が口部に嵌め込まれることにより、容器本体が封止される。蓋体の嵌め込みによって吸出部材が容器本体内に通され、容器本体内から内容物を吸い出すことが可能となる。
このような構成を採ることにより、使用する直前まで容器本体が封止体により封止され密封状態が保たれるため、高い気密性を維持し続けることができる。よって、蓋体が容器本体に嵌め込まれた状態で市場に流通する場合のように内容物の成分が空気中に徐々に揮散していくのを回避し、内容物の品質を長期間にわたり保持することができる。
【0012】
また、吸出部材が蓋体に予め設けられており、使用者が装着作業を行う必要がないことから、装着作業の困難性を排除でき、積層剥離容器としての使用を確実に開始することが可能となる。
【0013】
さらに、蓋体が容器本体に嵌め込まれた後は、吸出部材によって容器本体が密閉された状態となるため、使用中に容器が万一転倒した場合でも、内容物が容器の外部に流出するのを回避することができる。
【0014】
本発明において、空気導入口は、底部に形成されていることが好ましい。
これにより、容器本体の底部を除く他の部位に空気導入口を設ける場合よりも比較的容易に形成することができ、結果として低コスト化を図ることができる。
【0015】
また本発明において、蓋体は、その内面天部のコーナーに沿って接着されたシール部材を有することが好ましい。
この形態によれば、蓋体を口部に嵌め込んだ際に蓋体の内面天部と内面壁部の接合部にシール部材が圧着するため、ここに生じ得る小さな隙間をも塞ぐことができ、蓋体を口部に嵌め込んだのちに抗した隙間から容器内部に空気が流入するのを回避できる。これにより、内容物の劣化を防止することができる。
【0016】
そして、口部は、その外面壁部に略周方向に形成されたネジ山を有し、蓋体は、その内面壁部にネジ山に対応する溝が形成されており、口部に対してネジ山に沿ってねじ込まれることにより容器本体に固定されるものとする。
ネジ式を採用することにより、蓋体を口部に嵌め込む際の使用者の操作性が向上し、かつ確実に蓋体を固定させることが可能となる。
【0017】
さらに、蓋体は、内面壁部に形成された溝に沿って接着されたシール部材を有することが好ましい。
この形態によれば、口部に蓋体を嵌め込んだ際にシール部材がネジ山に圧着するため、ネジ山、ネジ谷及び溝の相互間に生ずる僅かな隙間をも塞いでこれらの嵌め合い状態を向上させることにより、容器内への空気の流入を完全に遮断でき、より優れた密封性を発揮することができる。
【0018】
蓋体は、その天面を略円筒状に形成された封止部材が貫通して蓋体上下に突出しており、吸出部材は、封止部材の中央部を貫通して保持されていることが好ましい。或いは、蓋体の内面天部に平板状に形成された封止部材が嵌合されて塞がれており、吸出部材が、封止部材を貫通して保持されていてもよい。
【0019】
この形態によれば、容器内外の通気口となり得る吸出部材と蓋体の接点が、封止部材に圧着されることにより確実に塞がれるため、蓋体を口部に嵌め込んで使用を開始した後も、容器の密封性ひいては内容物の品質を維持し続けることが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明の積層剥離容器によれば、使用の直前に蓋部を容器本体の口部に対し嵌め込むことにより、市場を流通する間に容器内に収容された内容物の品質を維持することができる。そして、吸出部材が予め蓋体に設けられていることにより、嵌め込み作業の操作性も向上させることが可能となる。さらに、使用開始後も、口部と蓋部との間に生じ得る小さな隙間を確実に塞いで、容器の密封性を確実に維持しながら、吸出部材を介して内容物を容器外に揮散させることができる。また、容器が密閉されていることにより、使用中に万一容器が転倒した場合でも、内容物の流出を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】一実施形態の積層剥離容器の片側縦断面図である。
【
図2】一実施形態の積層剥離容器の容器本体及び蓋体の斜視図である。
【
図3】多様な実施形態の積層剥離容器における蓋体の縦断面図(
図1を両側断面図とし蓋体6を拡大した図に相当するもの)である。
【
図4】一実施形態の積層剥離容器の底面図及び底部の縦断面図(
図4中(A)のIV−IV線に沿う断面図)である。
【
図5】一実施形態の積層剥離容器の使用例を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、添付の図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態で示す積層剥離容器は好ましい例示であり、本発明はこの例示に限定されるものではない。
【0023】
図1は、一実施形態の積層剥離容器1を長手方向の中心線に沿って縦断し、その右半分を正面図として表し、左半分を断面図として表したものである。
図1に示されるように、積層剥離容器1は、大きく分けて容器本体16及び蓋体6から構成されている。容器本体16は底付きの円筒形状をなしており、その上端部はネック状に縮径された口部となっている。蓋体6は、その天面中央部が封止部材8で塞がれており、さらに封止部材8の中央部には管状の吸出部材10が貫通している。容器本体16の口部に蓋体6が装着され固定されることにより積層剥離容器1が使用時の形態となり、積層剥離容器に望まれる作用効果を発揮することが可能となる。
【0024】
容器本体16は、互いに剥離自在に積層された外層2(外郭)及び内層4(内袋)で形成されている。外層2及び内層4は、互いを剥離自在とするために接着性のない樹脂同士を重ね合わせてブロー成形されている。例えば、内層2には、ポリプロピレン(PP)の他、臭気や酸素、水蒸気に対してバリア性を有するエチレンビニルアルコール樹脂(EVOH)、環状ポリオレフィン樹脂(COP)等が用いられ、外層4には、ポリプロピレン(PP)やポリエチレンテレフタレート(PET)等が用いられる。底部24に形成されたピンチオフ部28は、ブロー成形の過程で内層4同士を加熱融着したのちに上下方向に切断し、その切断面に生じるバリ等を取って成形されたものである。内層4が外層2から剥離することにより形成される空気室22には、容器本体16の外側から空気導入口26を介して空気が導入されるものとなっている。
【0025】
〔空気室への空気導入原理〕
本実施形態の積層剥離容器1は、吸出部材10を貫通させた封止部材8を天面中央部に有する蓋体6を容器本体16に装着し、収容室20(=内層4の内側)に収容された内容物を吸出部材10に浸透させて吸い上げ、空気中に揮散させて使用する容器である。
【0026】
収容室20は封止部材8により密封されているため、内容物が吸出部材10に浸透して吸い上げられると、吸い上げられた量に相当する容積の分だけ収容室20が萎む。これに伴い容器本体16内の圧力が低下傾向に転じるが、容器本体16には空気導入口26が設けられているため、容器本体16の外部から空気を引き込む作用が働く。このとき、内層4が外層2から剥離して、外層4及び内層2の間に引き込まれた空気を収容できるだけの空間、すなわち空気室22が形成される。
【0027】
このようにして、空気が空気導入口26を介して容器本体16の外側から空気室22に引き込まれ、収容室20は内容物が全て吸い上げられてなくなるまで萎むことができる。また、内容物の減少量に相当する分だけ収容室20が萎むことにより、容器本体16内が減圧状態のまま維持されることを防止できるため、容器本体16(外層2)が変形したり、内容物を吸い上げる機能が低下したりするのを防止することができる。なお、吸出部材10は完全な気密性を有してはいないものの、積極的に通気を促す素材ではないため、吸出部材10から容器内への空気の流入(逆流)が生じることは殆どない。
【0028】
図2は、一実施形態の積層剥離容器1の容器本体16及び蓋体6の斜視図である。なお、
図1には積層剥離容器1の使用形態を示したが、
図2に示す容器本体16及び蓋体6を合わせたものが積層剥離容器1の製品としての形態となる。
図2中(A):容器本体16の斜視図である。この図に示されるように、容器本体16は、その上端に口部18が形成されており、ここから内容物の充填がなされる。口部18の外面壁部には、略周方向にネジ山30及びネジ谷34が形成されており、後述する蓋体6を口部18に装着する際には、蓋体6がこれらネジ山30にガイドされてネックリング36の上側までねじ込まれる。
【0029】
図2中(B):蓋体6の斜視図である。この図に示されるように、蓋体6は、その天面中央部が封止部材8で塞がれており、さらに封止部材8の中央部には吸出部材10が貫通している。吸出部材10は、細長い管状に形成されており、蓋体6が口部18に装着されると放棄本体16に充填された内容物に浸された状態となる。そして、吸出部材10に浸透した内容物が容器外部まで吸い上げられることにより、内容物は吸出部材10を介して容器内部から容器外部に移動し、時間の経過に伴い徐々に気化して空気中に拡散する。
【0030】
また、図中の点線部分は、容器の密封性を向上させるために、蓋体6の内面壁部に接着されたシール部材を表したものである。蓋体6内面壁部の構造については、詳しく後述する。
【0031】
なお、吸出部材10には、浸透性に優れ液体を吸い上げることが容易な繊維状の素材等が採用される。例えば、竹、籐、木材製パルプなどの天然繊維やポリエステルやポリプロピレン製の合成繊維からなる不織布などがより好ましい。
【0032】
なお、本実施形態における積層剥離容器1は、主に揮発性物質から成る液体の収容に用いられる。一次製品としての容器本体18には、各種の使用目的に応じた液体が充填されたのち、口部18にアルミシール等が貼付されることにより密封される。そして、密封状態が保たれた容器本体16と蓋体6とは、各々装着されずに分離したままの状態で最終製品となり、これらがセット品として市場に流通することになる。そして、流通品を入手した者が、手作業でアルミシールを剥がし或はアルミシールを突き破って容器本体16の口部に蓋体6を装着し固定させることにより、本実施形態の積層剥離容器1が使用状態となって積層剥離容器1の本来の機能を発揮できる状態となる。
【0033】
このような流通形態を採り、使用直前に蓋体6を容器本体16に装着することによって、市場の流通過程において内容物が空気中に気化・揮散してしまうのを回避することができる。
【0034】
ここで、容器本体16の口部18を予めゴム栓等で密封しておき、使用者が使用する直前にこの栓に対して吸出部材10を刺通すという使用形態についても想定は可能である。しかしながら、高い密封性を有する素材で形成されたゴム栓等に吸出部材10を刺通す作業は容易ではなく熟練した技術が要求されるため、失敗する可能性が少なからず存在する。仮に失敗した場合、付属品としての吸出部材10は先端がほぐれて刺通せるだけの強度がなくなり、最悪の場合は付属品を使用できなくなる恐れがある。そこで、こうした懸念点を考慮し、本実施形態においては吸出部材10が既に刺通された状態の蓋体6を装着させる方式を採用した。
【0035】
ところで、一般的な積層剥離容器の蓋体は、本実施形態の封止部材8と同様の材質で形成した逆止弁で構成されるケースが多い。逆止弁は、流通方向の観点、すなわち容器内から外部への内容物の流出のみを可能とし、空気も含め外部から容器内への流入を遮断するという点では封止部材8と共通する。しかしながら、逆止弁は、容器を絞って圧力を加えることにより封止が解除されて内容物の流出が可能となる点で、封止部材8とは構造が大きく異なっている。逆止弁を採用した容器においては、その封止状態が容易に解除されるため、必ずしも容器の高い密封性を確保し続けることができるとは限らない。
【0036】
これに対し、本実施形態の口部18は、封止部材8で覆われた蓋体6を装着して容器本体16に固定させることにより容器を密封する形態を採っている。したがって、容器に圧力を加えても封止状態は解除されないため、容器の密封性を確実に維持し続けることが可能である。
【0037】
図3は、多様な実施形態の積層剥離容器における蓋体の縦断面図(
図1に示された蓋体6が両側断面図で表された図に相当するもの)である。
図3では、蓋体6の形態について2つの例が挙げられている。
【0038】
図3中(A):第1形態となる蓋体6の拡大断面図である。この第1形態では、口部18に対しネジ式の蓋体6がねじ込まれて装着され、容器本体16に固定されている。口部18の外面壁部には、その略円周方向に突起したネジ山30及びネジ山30に挟まれた位置の壁面に該当するネジ谷34が形成されている。そして、蓋体6の内面壁部には、これらネジ山30及びネジ谷34に対応する凹状の溝32が形成されている。蓋体6がネジ山30にガイドされ、ネジ山30・ネジ谷34と溝32が噛み合わさることによって口部18にねじ込まれて、最終的にネックリング36の上側まで到達して容器本体16に固定される。
【0039】
蓋体6は、その天面中央部において略円筒形状の封止部材8が圧入されており、さらにその封止部材8の中心線付近に細長い管状に形成された吸出部材10が貫通している。この形態では、封止部材8が吸出部材10を覆う幅が蓋体6天面の厚みよりも大きいため、封止部材をより安定的に蓋体6に固定させることができる。
【0040】
また、蓋体6には、内面天部のコーナー及び内面壁部の溝に沿ってシール部材が接着されている。こうしておくことにより、口部18に蓋体6をねじ込んだときにシール部材がネジ山30及びネジ谷34に圧着するため、ネジ山30、ネジ谷34及び溝32の相互間に生ずる僅かな隙間をも塞ぎ、これらの嵌め合い状態を向上させて、容器としてのより優れた密封性を発揮することができる。
【0041】
図3中(B):第2形態となる蓋体6の拡大断面図である。この第2形態においても、容器本体16の口部18に対し、ネジ式の蓋体6がねじ込まれて装着され固定されており、蓋体6の内面にシール部材が接着されている点においては
図3中(A)と同様であるが、蓋体6の天面中央部を覆う封止部材の形態が大きく異なっている。
【0042】
この形態における蓋体6は、その内部天面に、平板状に形成された封止部材8が嵌合されており、さらにその封止部材8の中心部に細長い管状に形成された吸出部材10が貫通している。この形態では、第1形態に比べて封止部材が吸出部材10を刺し通す厚みが小さく形成されているため、封止部材8に吸出部材10をより容易に貫通させることができる点で利便性がある。
【0043】
なお、封止部材8は、ブチルゴム等のゴムの他、スチレン系エラストマ―等の熱可塑性エラストマ―のような軟質樹脂により形成される。これら素材を採用することにより、優れた耐薬品性及び密封性を発揮することができる。封止部材8の硬度は、吸出部材10が封止部材8を貫通できかつ密封性を保てる硬度、具体的には、JISK6253の規格に準拠したデュロ硬度Aが30〜80であることがより好ましい。さらに、熱可塑性エラストマ―は、融点が135〜200℃であるスチレン系エラストマ―が好適である。
【0044】
図4は、一実施形態の積層剥離容器1の底部24を詳細に表した図である。このうち
図4中(A)は積層剥離容器1の容器本体16の底面図を、
図4中(B)は底部24の縦断面図(
図4中(A)のIV−IV線に沿う断面図)を、それぞれ表している。
【0045】
底部24には、その底面の略中心を通る直線に沿うようにしてピンチオフ部28が形成されている。このピンチオフ部28は、容器本体16をブロー成形する過程で内層4を加熱融着させることにより形成されたものであり、完全に封止された状態であるため、ここから収容室20内に空気等が進入することはない。そして、ピンチオフ部28の両側には、外層2と内層4との間に形成される空気室22に空気を取り込む空気導入口26が設けられている。底部24の表面を成しているのは外層2であり、この外層2は、ピンチオフ部28の両側で空気導入口26を挟んで対峙している。
【0046】
図5は、一実施形態の積層剥離容器1の使用例を斜視図で表したものである。この積層剥離容器1に収容された揮発性の物質から成る内容物Cは、封止部材8に貫通させた吸出部材10に浸透させて容器外部まで吸い上げ、空気中に露出した部分から徐々に気化させることにより内容物Cを空気中に揮散させて使用する。なお、内容物Cは、例えば芳香剤や消臭剤の他に、水、アルコール、グリセリンといった揮発性の溶液を想定している。
【0047】
図5中(A):積層剥離容器1の使用初期段階、すなわち使用者が蓋体6を口部18に装着し容器本体16に固定させた直後の段階の例を表した斜視図である。この図に示されるように、この段階ではまだ吸出部材10には内容物Cが浸透しておらず、容器外まで吸い上げられていない。
【0048】
図5中(B):積層剥離容器1の使用過程、すなわち使用者が蓋体6を口部18に装着し容器本体16に固定させてから時間が経過したときの例を表した斜視図である。この図に示されるように、時間の経過に伴い吸出部材10に浸透した内容物Cが容器外部まで吸い上げられる。吸い上げられた内容物Cは揮発性を有しているため、吸出部材10の空気中に露出した部分から徐々に気化する作用が生じる。これにより、揮発成分を空気中に揮散させることができる。
【0049】
いずれの使用例においても、積層剥離容器1は密封された状態が保たれているため、使用前段階の流通過程における内容物Cの品質劣化を回避することができる。
なお、吸出部材10の周囲には支持(保護)用の囲いが設けられていてもよい。
【0050】
このように、本実施形態の積層剥離容器1によれば、収容室20に収容された内容物が吸出部材10により吸い上げられて収容室20が萎むことにより容器内が減圧傾向に転じても、容器内に空気が流入しないため、内容物Cの品質を長期間にわたり保持することが可能となる。
【0051】
また、容器は蓋体6と容器本体16がそれぞれ別体として形成されて使用時にこれらを装着するため、内容物Cの充填した製品が市場を流通する過程で徐々に内容物が空気中に気化・揮散してしまうのを回避することができる。さらに、蓋体6には予め吸出部材10が刺通されているため、使用者が自ら刺通す作業を行うことによる失敗が生じることもない。
【0052】
蓋体6には、内面天部のコーナー及び内面壁部の溝に沿ってシール部材が接着されており、口部18に蓋体6をねじ込んだときにシール部材がネジ山30に圧着するため、ネジ山30、ネジ谷34及び溝32の相互間に生ずる僅かな隙間をも塞ぎ、これらの嵌め合い状態を向上させて、容器としてのより優れた密封性を発揮することができる。
【0053】
さらに、蓋体6の天面中央部は封止部材8が嵌合され又は圧入されており、その中心部に吸出部材10が貫通していることにより、使用時における容器の密封性を維持することができる。また、容器が密封されるため、使用時に容器が転倒した場合でも内容物の流出を回避することができる。
【0054】
なお、本発明は上述した実施形態に制約されることなく、種々に変形して実施することが可能である。
【0055】
例えば、上述した実施形態の積層剥離容器1においては、外層2及び内層4を構成する樹脂を単層構造としたが、これを多層構造とすることも可能であり、状況に応じて適宜選択してよい。
【0056】
また、吸出部材10は、細長い管状に形成されたものを1本だけ刺通した形態としたが、複数本の吸出部材10を用いることとしてもよく、太さについても状況に応じて適宜選択が可能である。
【0057】
さらに、内容物Cの気化・揮散を促すために、吸出部材10の上部にはろ紙がセットされていてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1 積層剥離容器
2 外層
4 内層
6 蓋体
8 封止部材
10 吸出部材
12 シール部材
14 蓋体内部天面
16 容器本体
18 口部
20 収容室
22 空気室
24 底部
26 空気導入口
28 ピンチオフ部
30 ネジ山
32 溝
34 ネジ谷
36 ネックリング