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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-196569(P2015-196569A)
(43)【公開日】2015年11月9日
(54)【発明の名称】搬送装置及び天井走行車
(51)【国際特許分類】
   B65G 1/00 20060101AFI20151013BHJP
   B61B 3/02 20060101ALI20151013BHJP
   B61B 13/00 20060101ALI20151013BHJP
【FI】
   B65G1/00 501C
   B61B3/02 B
   B61B13/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-75311(P2014-75311)
(22)【出願日】2014年4月1日
(71)【出願人】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(72)【発明者】
【氏名】小林 誠
【テーマコード(参考)】
3D101
3F022
【Fターム(参考)】
3D101BA05
3D101BB05
3D101BB16
3D101BB36
3D101BB39
3D101BB49
3F022AA08
3F022BB09
3F022CC02
3F022EE05
3F022JJ11
3F022KK11
3F022LL12
3F022MM51
3F022NN02
(57)【要約】
【課題】物品に伝わる振動を低減しつつ、物品を水平に維持することができる搬送装置及び天井走行車を提供する。
【解決手段】搬送装置10は、FOUP50を保持する保持装置11を備え、保持装置11は、FOUP50を下方から支持する少なくとも一対のハンド13を備え、ハンド13は、本体部20と、本体部20に対して防振部36を介して設けられ、FOUP50を支持する支持部40と、を備えている。防振部36は、支持部40に加わる荷重が第1の荷重よりも大きいときに作用する第1の防振材33と、支持部40に加わる荷重が第1の荷重よりも大きい第2の荷重以上のときに作用する第2の防振材35と、を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を保持する保持装置を備えた搬送装置であって、
前記保持装置は、前記物品を下方から支持する少なくとも一対の支持機構を備え、
前記支持機構は、
本体部と、
前記本体部に対して防振部を介して設けられ、前記物品を支持する支持部と、を備え、
前記防振部は、
前記支持部に加わる荷重が第1の荷重よりも大きいときに作用する第1の防振材と、
前記支持部に加わる荷重が前記第1の荷重よりも大きい第2の荷重以上のときに作用する第2の防振材と、を有することを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記第2の防振材は、前記支持部に加わる荷重が前記第2の荷重より小さいときには前記支持部又は前記本体部のいずれか一方のみに接していることを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記物品は、前記支持機構によって支持されるフランジを上部に備え、
前記物品の重心位置は、平面視において前記フランジの中心位置から一方側にずれており、
前記支持機構は、前記物品を支持する状態において、前記一方側とは反対側に前記防振部を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の搬送装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の搬送装置を備えたことを特徴とする天井走行車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送装置及び天井走行車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、物品を支持するための保持装置を有する搬送装置及びそのような搬送装置を備えた天井走行車が知られている。例えば、特許文献1には、物品の上部に設けられたフランジを支持するための支持機構(チャック)を有する搬送装置を昇降台として備える天井走行車が示されている。この搬送装置(天井走行車)では、チャックの上面において物品のフランジと接触する部分に制振材としての粘弾性体が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−298535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示された搬送装置では、チャックの上面の所定位置に対して制振材が一様に設けられた構成となっている。そのため、チャックによって支持される物品の質量が変動する場合など、制振材に対する負荷が変化するときに適切に対応できない虞があり、さらなる改善の余地があった。また、物品の重心が偏っている場合に、制振材の沈み込みが不均一となり、物品の水平を維持できない虞があった。
【0005】
本発明は、物品に伝わる振動を低減しつつ、物品を水平に維持することができる搬送装置及び天井走行車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る搬送装置は、物品を保持する保持装置を備えた搬送装置であって、保持装置は、物品を下方から支持する少なくとも一対の支持機構を備え、支持機構は、本体部と、本体部に対して防振部を介して設けられ、物品を支持する支持部と、を備え、防振部は、支持部に加わる荷重が第1の荷重よりも大きいときに作用する第1の防振材と、支持部に加わる荷重が第1の荷重よりも大きい第2の荷重以上のときに作用する第2の防振材と、を有する。
【0007】
この搬送装置では、物品を支持する支持部が、本体部に対して防振部を介して設けられている。そのため、本体部の振動が防振材によって吸収されるため、物品に伝わる振動が低減される。そして、防振部は、第1の荷重より大きいときに作用する第1の防振材と、第1の荷重よりも大きい第2の荷重以上のときに作用する第2の防振材とを備えている。例えば、物品の重心が偏っていることにより、支持部に加わる荷重が場所によって相違するとしても、荷重が小さい場合には第1の防振材のみが作用し、荷重が大きい場合には第1の防振材に加えて第2の防振材が作用する。これにより、防振部の沈み込みが不均一になることが抑制され、物品の水平を維持しやすくなる。以上の構成により、この搬送装置では、物品に伝わる振動を低減しつつ、物品を水平に維持することができる。
【0008】
一実施形態においては、第2の防振材は、支持部に加わる荷重が第2の荷重より小さいときには支持部又は本体部のいずれか一方のみに接していてもよい。これによれば、支持部に第2の荷重以上の荷重が加わるまでは、本体部と支持部とが第2の防振材を介して接続されることがない。そのため、簡単な構成で、第2の防振材を第2の荷重以上のときのみに作用させることができる。
【0009】
一実施形態においては、物品は、支持機構によって支持されるフランジを上部に備え、物品の重心位置は、平面視においてフランジの中心位置から一方側にずれており、支持機構は、物品を支持する状態において、一方側とは反対側に防振部を有していてもよい。物品の重心位置がフランジの中心位置から一方側にずれている場合、フランジが支持部によって支持されると、物品は重心のある一方側に傾くことになる。このような場合であっても、物品の重心と反対側に第1の防振材及び第2の防振材が設けられているため、物品の水平を維持しやすくなる。
【0010】
また、本発明に係る天井走行車は、搬送装置を備えている。この天井走行車では、搬送装置によって、物品に伝わる振動を低減しつつ、物品を水平に維持することができるため、物品の揺れを抑え、物品をより確実に搬送することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、物品に伝わる振動を低減しつつ、物品を水平に維持することができる搬送装置及び天井走行車を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】FOUPを示す斜視図である。
図2】一実施形態に係る天井走行車を示す正面図である。
図3】(a)は、搬送装置の支持機構を示す斜視図であり、(b)は、搬送装置の支持機構を示す分解斜視図である。
図4】(a)は、搬送装置の支持機構を示す正面図であり、(b)は、搬送装置の支持機構を示す背面図である。
図5】搬送装置の支持機構によって物品が支持された状態を模式的に示す平面図である。
図6】(a)及び(b)は、物品を支持したときの支持機構の沈み込み量を模式的に示した図であり、(c)及び(d)は、比較例において、物品を支持したときの支持機構の沈み込み量を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明の一実施形態について詳細に説明する。便宜上、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。なお、本実施形態では、本発明に係る搬送装置をFOUP(Front−Opening Unified Pod)を搬送する天井走行車に適用した場合の一例について、天井走行車が移動する方向を左右方向とし、これに水平面内で直交する方向を前後方向として説明する。
【0014】
まず、本実施形態に係る天井走行車1(図2参照)によって搬送が行われるFOUP(物品)50について説明する。図1は、FOUP50を示す斜視図である。図1に示されるように、FOUP50は、開口部51が前面(一側面)側に形成された容器本体52と、この容器本体52の開口部51に装着される蓋体53と、を備えている。容器本体52の上面55の略中央部には、FOUP50を持ち上げるためのフランジ56が上方に突出するように設けられている。容器本体52の内側には図示しないウェハー保持手段が設けられており、FOUP50内にウェハーを収容できるようになっている。また、開口部51に蓋体53が装着されることで、FOUP50内が気密に保持されるようになっている。
【0015】
本実施形態におけるFOUP50では、蓋体53の質量が比較的大きく設計されている。そのため、容器本体52に蓋体53が装着されている状態では、図5に示されるように、FOUP50の重心位置Gは、平面視においてフランジ56の中心位置Cから前方側(一方側)にずれている。このようなFOUP50の重心位置の偏りは、FOUP50内にウェハーが収納されていない、空の状態で最も大きなものとなっている。FOUP50内にウェハーが収納され、収納物を含む容器全体での質量が大きくなると、当該質量に占める蓋体53の質量の割合が小さくなるため、重心位置がフランジ56の中心位置Cに近付くように後方側にずれることになる。
【0016】
次に、このようなFOUP50を搬送するための搬送装置10を備えた天井走行車1について説明する。図2は、天井走行車1を示した正面図である。天井走行車1は、クリーンルームの天井など、床面より高い位置に設けられる走行レール2に沿って走行するものであり、例えば保管設備のラックと所定のロードポートとの間でFOUP50を搬送する。
【0017】
図2に示されるように、天井走行車1は、走行駆動部3と、水平移動部5と、回転駆動部6と、昇降駆動部7と、搬送装置10と、を有している。また、天井走行車1には、水平移動部5、回転駆動部6、昇降駆動部7及び搬送装置10を覆うように左右に落下防止カバー8が設けられている。落下防止カバー8は、下端に形成された一対の落下防止片8aを左右方向に進退させることにより、FOUP50の落下を防止している。
【0018】
走行駆動部3は、天井走行車1を走行レール2に沿って移動させるものであり、走行レール2内に配置されている。走行駆動部3の下部には、軸3aを介して水平移動部5が接続されている。水平移動部5は、回転駆動部6、昇降駆動部7及び搬送装置10を水平面内で走行レール2に直交する方向に移動させる部分である。回転駆動部6は、水平面内で昇降駆動部7及び搬送装置10を回動させる部分である。昇降駆動部7は、ベルトの巻き上げ及び繰り出しにより搬送装置10を昇降させる部分である。なお、昇降駆動部7におけるベルトは、ワイヤ及びロープなど、適宜の吊持材を用いてもよい。本実施形態における搬送装置10は、昇降駆動部7によって昇降可能に設けられており、天井走行車1における昇降台として機能している。
【0019】
搬送装置10は、FOUP50を把持するための保持装置11を備えている。保持装置11は、L字状を呈する一対のアーム12,12と、各アーム12,12に固定されたハンド(支持機構)13,13と、一対のアーム12,12を開閉させる開閉機構15と、を備えている。
【0020】
一対のアーム12,12は、開閉機構15に接続されている。開閉機構15は、一対のアーム12,12を、互いに近接する方向及び互いに離間する方向に移動させる。開閉機構15の動作により、一対のアーム12,12は、左右方向に進退する。これにより、アーム12,12に固定された一対のハンド13,13が開閉する。本実施形態では、一対のハンド13,13が開状態のときに、ハンド13がフランジ56の下面56aの高さと略同じなるように、保持装置11(搬送装置10)の高さ位置が調整される。そして、この状態で一対のハンド13,13が閉状態となることで、一対のハンド13,13によってフランジ56が把持され、FOUP50の支持が行われる。
【0021】
続いて、ハンド13の詳細について説明する。左右に設けられる一対のハンド13,13は、それぞれ同様の構成であるため、正面図において左側に設けられた一方のハンド13について説明する。図3(a)は、ハンド13を示す斜視図であり、図3(b)は、ハンド13を示す分解斜視図である。また、図4(a)は、ハンド13を示す正面図であり、図4(b)は、ハンド13を示す背面図である。
【0022】
図3(a)及び(b)に示されるように、ハンド13は、アーム12に固定される本体部20と、本体部20に対して防振部32,36を介して設けられる支持部40と、を備えている。防振部32は、防振材31によって構成されている。防振部36は、防振材33及び防振材35によって構成されている。
【0023】
本体部20は、略U字状を呈した板状部材である。本体部20は、前後方向に延びる長辺部21と、長辺部21の長手方向の両端から長辺部21の長手方向に水平面内で直交する向きに延設された短辺部22F,22Rと、を備えている。短辺部22F,22Rは、同じ方向に延設されている。
【0024】
長辺部21の略中央には、本体部20をアーム12の下端に固定するための一対の固定用孔部21aが形成されている。本体部20は、固定用孔部21aに締結部材(不図示)が締結されることで、アーム12に固定される。また、長辺部21の長手方向の両端側には、後述する規制フランジ47を取り付けるための筒状部21bがそれぞれ配置されている。
【0025】
長辺部21の前方側に設けられた短辺部22Fには、その上面に、防振材配置部23Fが設けられている。防振材配置部23Fは、一つの防振材31が配置されるため、平坦に形成されている。防振材配置部23Fに配置される防振材31は、略直方体形状を呈しており、平面視において防振材配置部23Fと略同様の大きさの長方形状となっている。
【0026】
長辺部21の後方側に設けられた短辺部22Rには、その上面に、防振材配置部23Rが設けられている。防振材配置部23Rは、防振材(第1の防振材)33がそれぞれ配置される上段部23a,23aと、防振材(第2の防振材)35が配置される下段部23bと、を備えている。詳細には、上段部23a,23aは、短辺部22Rの長さ方向において互いに離間して設けられており、下段部23bは、一対の上段部23a,23aの間に設けられている。
【0027】
上段部23a及び下段部23bは、それぞれ平坦に形成されている。上段部23a及び下段部23bは、いずれも略同じ面積を有している。下段部23bの高さは、上段部23aよりも所定の高さだけ低く形成されている。上段部23aの高さと防振材配置部23Fの高さとは同じ高さとなっている。また、前方側の防振材配置部23Fの面積と、後方側の防振材配置部23Rの総面積とは、略同じとなっており、上段部23a及び下段部23bの各面積は防振材配置部23Rの面積の約1/3となっている。
【0028】
防振材配置部23Rに配置される防振材33,35は、いずれも略直方体形状を呈する同形状であり、平面視において、それぞれ上段部23a、下段部23bに収まる大きさとなっている。防振材33は、防振材配置部23Rの上段部23aに配置される。防振材35は、防振材配置部23Rの下段部23bに配置される。防振材33と防振材35とは、互いに所定の間隔をあけて配置されている。防振材31及び防振材33,35は、いずれも同じ高さ寸法を有するように形成されている。これにより、防振材31,33,35が配置された状態において、防振材31の上面と防振材33の上面とは、略同一の高さであり、防振材35の高さのみ所定の高さだけ低くなる。本実施形態における防振材31,33,35は、例えばシリコーン樹脂等によって形成されるゲル状の弾性体であり、振動や衝撃を吸収することができる。防振材31,33,35は、防振材配置部23F,23Rに対して例えば接着により固定される。
【0029】
支持部40は、本体部20に対して、防振部32,36を介して設けられている。支持部40は、防振部32,36に固定される一対の取付部40F,40Rと、FOUP50を支持する物品支持部45と、取付部40F,40R及び物品支持部45を連結する一対の連結部42F,42Rと、を備えている。
【0030】
取付部40Fは、短辺部22Fの防振材配置部23Fに配置された防振部32に固定されている。取付部40Fは、本体部20における長辺部21の前端側及び短辺部22Fを覆う略L字を呈する板状部材である。図4(a)に示されるように、防振材31の下面31aは、本体部20の防振材配置部23Fに接着されており、防振材31の上面31bは、取付部40Fに接着されている。これにより、取付部40Fは防振材31を介して本体部20に固定されることになる。
【0031】
取付部40Rは、短辺部22Rの防振材配置部23Rに配置された防振部36に固定されている。取付部40Rは、本体部20における長辺部21の後端側及び短辺部22Rを覆う略L字を呈する板状部材である。図4(b)に示されるように、防振材33,35の下面33a,35aはそれぞれ本体部20の防振材配置部23Rにおける上段部23a,下段部23bに接着されている。左右の防振材33の上面33bは、取付部40Fに接着されているが、中央の防振材35の上面35bは、取付部40Fとの間に所定の間隙が形成されている。このように、取付部40Rは、防振部36のうち左右の防振材33,33を介して本体部20に固定されることになる。中央の防振材35の上面35bには、例えば、摩擦係数の低いシート(不図示)が貼付されており、防振材35が取付部40Rに接触したときに接着等することが防止されている。
【0032】
連結部42Fは、取付部40Fの下面側においてL字の内側部分に沿うように略L字形状を呈しており、取付部40Fに形成された貫通孔(不図示)に対して締結部材42aによって固定されている。連結部42Fの下面側には、物品支持部45が締結部材42aによって固定されている。これにより、取付部40F、連結部42F及び物品支持部45が一体に設けられ、支持部40が本体部20に固定されている。
【0033】
連結部42Rは、取付部40Rの下面側においてL字の内側部分に沿うように略L字形状を呈しており、取付部40Rに形成された貫通孔(不図示)に対して締結部材42aによって固定されている。連結部42Rの下面側には、物品支持部45が締結部材42aによって固定されている。これにより、取付部40R、連結部42R及び物品支持部45が一体に設けられ、支持部40が本体部20に固定されている。なお、支持部40は、取付部40F,40R、連結部42F,42R及び物品支持部45が一体的に形成されるものであってもよい。
【0034】
連結部42F及び連結部42Rには、互いに向かい合うようにして、それぞれ傾斜面43F,43Rが形成されている。これにより、FOUP50を支持する際にフランジ56の位置が前後方向にずれている場合であっても、フランジ56が傾斜面43F又は43Rを滑って物品支持部45に収まるようになる。
【0035】
物品支持部45は、FOUP50のフランジ56の下面56aと接する(FOUP50を下方から支持する)部分である。物品支持部45は、短辺部22Fと短辺部22Rとの間に収まる平板状に形成されている。物品支持部45の上面45aには、前後方向において所定の間隔をあけて、複数(ここでは2個)の防振パッド46が設けられている。この防振パッド46は、FOUP50を支持する際の緩衝材として機能する。連結部42F,42Rは、防振部32,36と略同じ高さ位置に配置されているため、物品支持部45は、本体部20と略同一水平面内に位置する。なお、物品支持部45には、図示しない検知手段が設けられており、検知手段によって、FOUP50が適切に支持されたことが検知できるようになっている。
【0036】
図4(a)及び(b)に示されるように、本体部20に支持部40が取り付けられた状態において、本体部20に設けられた筒状部21bの上端には、規制フランジ47が取り付けられている。具体的には、取付部40F,40Rには、筒状部21bに対応する位置にそれぞれ貫通孔41が設けられており、規制フランジ47は、貫通孔41に挿通された筒状部21bの上端に取り付けられている。規制フランジ47の直径は、貫通孔41の内径よりも大きい。取付部40F,40Rの上面40aと規制フランジ47の下面47aとには、所定の間隙が形成されている。このため、本体部20に対する支持部40の水平方向の移動を規制することができ、また、万一防振材31,33,35が破断した場合であっても、本体部20から支持部40が落下するのを防止することができる。また、支持部40の沈み込みが所定値以上となった場合には、取付部40F,40Rから下方に突設された規制片40bが本体部20の上面21cに当接することで、それ以上の沈み込みが規制される。
【0037】
このように構成されたハンド13において、支持部40によってFOUP50等の物品が保持されると、支持部40に加わる荷重によって防振部32,36が押圧されるため、支持部40が沈み込む。この場合、前方側の防振部32では、荷重に応じて一定の割合で沈み込むことになる。
【0038】
一方、後方側の防振部36では、取付部40Rとの間に所定の間隙を有する防振材35を備えているため、沈み込みの割合が荷重によって変動することになる。後方側に設けられる防振部36のうち、左右の防振材33は、無負荷の状態において上面33bが取付部40Rと接しているため、支持部40に荷重が加わり始めると、沈み込み始める。一方、中央の防振材35は、無負荷の状態において上面35bが取付部40Rと接していないため、支持部40に荷重が加わり始めても、取付部40Rに押圧されることがなく、沈み込みが始まらない。防振材35は、荷重が大きくなって、左右の防振材33がさらに押圧され、防振材35の上面35bと取付部40Rとが接してから初めて沈み込みが始まる。このように、後方側の防振部36は、支持部40に荷重(第1の荷重)が加わり始めると作用する左右の防振材33と、支持部40に加わる荷重が所定の荷重(第2の荷重)以上のときに作用する中央の防振材35とを備えている。これにより、後方側では、第2の荷重以上の荷重が加わると、沈み込みの割合が小さくなることになる。
【0039】
続いて、一対のハンド13,13によってFOUP50を支持する状態について説明する。図5は、搬送装置10の一対のハンド13,13によってFOUP50が支持された状態における、ハンド13の本体部20、物品支持部45及び防振部32,36を模式的に示す平面図である。
【0040】
図5に示されるように、FOUP50は、一対のハンド13,13によってフランジ56が下方から支持されることによって保持される。このとき、ハンド13の前方側がFOUP50の前方側となっている。前述したように、FOUP50の重心位置Gは、FOUP50内が空の状態において、フランジ56の中心位置Cから前方側(一方側)にずれている。本実施形態では、FOUP50を支持する状態において、ハンド13の後方側(一方側とは反対側)に防振部36を設けている。
【0041】
図6(a)及び(b)は、FOUP50を支持したときのハンド13における支持部40の沈み込み量を模式的に示した図である。図6(a)に示す矢印A1及び図6(b)に示す矢印A2は、その位置と大きさとによって、重心位置と荷重の大きさとを模式的に示すものである。また、矢印B1,B2は、矢印A1による荷重が加わった場合における防振部32,36のそれぞれの沈み込み量を示し、矢印B3,B4は、矢印A2による荷重が加わった場合における防振部32,36のそれぞれの沈み込み量を示している。なお、図6において、図面左側がハンド13の前側である。
【0042】
図6(a)は、FOUP50内が空の状態を示し、図6(b)は、FOUP50内にウェハーが最大限に収容された状態(以下、「満載の状態」という)を示すものである。図6(a)に示されるように、FOUP50内が空の状態では、矢印A1として示されるように、重心がFOUP50の前方側に偏っている。この場合、後方側の防振部36に対しては、前方側の防振部32よりも小さな荷重が作用することになる。このとき、後方側の防振部36で実際に作用しているのは左右の防振材33(図6において不図示)のみであるため、防振部36の沈み込み量(矢印B2)は、前方側の防振部32の沈み込み量(矢印B1)と略同程度となっている。そのため、FOUP50(図6において不図示)は前方側に傾斜することなく、水平が保たれる。
【0043】
図6(b)に示されるように、FOUP50内が満載の状態においても、矢印A2として示されるように、FOUP50の重心位置はフランジ56の中心位置から前方側にずれている。そのため、後方側の防振部36には、前方側よりも小さな荷重が作用することになる。このとき、FOUP50が空の状態と比較して、FOUP50の重心位置が後方側にずれているため、後方側の防振部36に加わる荷重の比率は、FOUP50が空の状態に比べると増加している。この場合、後方側に加わる荷重が所定の大きさ(第1の荷重)を超えることで、中央の防振材35が作用し始めることになる。これにより、所定の大きさを超えた分の荷重については、防振材33,35に作用することで、防振部36全体としての沈み込みの割合が小さくなる。そのため、防振部36の沈み込み量(矢印B4)は、前方側の防振部32の沈み込み量(矢印B3)と略同程度となり、FOUP50は後方側に傾斜することなく、水平が保たれる。
【0044】
図6(c)及び(d)は、比較例であり、FOUP50を支持したときのハンド13Aにおける支持部40の沈み込み量を模式的に示した図である。ハンド13Aは、前方側の防振部30F及び後方側の防振部30Rがいずれも同じ防振材(例えば防振材31)によって構成されている点においてハンド13と相違する。図6(a),(b)と同様に、矢印A1及び矢印A2は、その位置と大きさとによって、重心位置と荷重の大きさとを模式的に示すものである。また、矢印B5,B6は、矢印A1による荷重が加わった場合における防振部30の沈み込み量を示し、矢印B7,B8は、矢印A2による荷重が加わった場合における防振部30の沈み込み量を示している。図6(c)はFOUP50内が空の状態を示し、(d)はFOUP50内が満載の状態を示すものである。
【0045】
図6(c)に示されるように、FOUP50内が空の状態では、重心がFOUP50の前方側に偏っている(矢印A1)。この場合、前方側の防振部30Fに対してより大きな荷重が作用するため、前方側の防振部30Fにおける沈み込み量(矢印B5)が後方側の防振部30Rにおける沈み込み量(矢印B6)よりも大きくなる。そのため、FOUP50は前方側に傾斜して支持されることになり、水平が保たれない。また、図6(d)に示されるように、FOUP50内が満載の状態になると、空の状態に比べて、重心の位置が後方側にずれる(矢印A2)。しかしながら、この状態でも、FOUP50の重心位置がフランジ56の中心位置から前方側にずれているため、前方側の防振部30Fにおける沈み込み量(矢印B7)が後方側の防振部30Rにおける沈み込み量(矢印B8)よりも大きくなる。そのため、FOUP50は前方側に傾斜して支持されることになり、水平が保たれない。
【0046】
比較例のように、前方側及び後方側の防振部30F,30Rがいずれも同じ防振材によって構成されている場合、FOUP50を支持したときに、FOUP50が前方側に傾斜するように支持部40が傾くことになる。そのため、FOUP50が支持された状態のときにFOUPが水平となるように、予めハンド13の前方側が高くなるように搬送装置10を傾けた状態でフランジ56を支持することが考えられる。しかしながら、このように搬送装置10が傾いている状態では、ハンド13の支持部40も傾いているため、ハンド13をフランジ56の下面56aの高さに合わせることが困難となる虞がある。また、ハンド13が傾いていることによって、FOUP50を支持する際にFOUP50に揺れが生じることがある。本実施形態では、予め搬送装置10を傾けておかなくてもFOUP50を水平に支持することができるため、ハンド13を略水平な状態としたままフランジ56の下面56aの高さに合わせることができる。また、FOUP50を支持する際においても、FOUP50に揺れが生じ難くなる。
【0047】
以上説明したように、本実施形態に係る搬送装置10では、FOUP50を支持する支持部40が、本体部20に対して防振部32,36を介して設けられている。そのため、本体部20の振動が防振部32,36によって吸収されるため、FOUP50に伝わる振動が低減される。そして、防振部36は、第1の荷重より大きいときに作用する防振材33と、第1の荷重よりも大きい第2の荷重以上のときに作用する防振材35とを備えている。そのため、FOUP50の重心が偏っていることにより、支持部40に加わる荷重が場所によって相違するとしても、荷重が小さい場合には防振材33のみが作用し、荷重が大きい場合には防振材33に加えて防振材35が作用する。そのため、防振部32、36の沈み込みが不均一になることが抑制され、FOUP50の水平を維持しやすくなる。以上の構成により、この搬送装置10では、FOUP50に伝わる振動を低減しつつ、FOUP50を水平に維持することができる。
【0048】
また、防振材35は、支持部40に加わる荷重が第2の荷重より小さいときには本体部20のみに接している。これによれば、支持部40に第2の荷重以上の荷重が加わるまでは、本体部20と支持部40とが防振材35を介して接続されることがない。そのため、簡単な構成で、防振材35を第2の荷重以上のときのみに作用させることができる。
【0049】
また、FOUP50の重心位置Gがフランジ56の中心位置Cから前方側にずれている場合には、フランジ56が物品支持部45によって支持されると、FOUP50は重心のある前方側に傾こうとする。このような場合であっても、FOUP50の重心と反対側である後方側に防振材33及び防振材35が設けられているため、FOUP50の水平を維持しやすくなる。
【0050】
また、本実施形態に係る天井走行車1は、前述のような搬送装置10を備えている。この天井走行車1では、搬送装置10によって、FOUP50に伝わる振動を低減しつつ、FOUP50を水平に維持することができるため、FOUP50の揺れを抑え、FOUP50をより確実に搬送することができる。
【0051】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、搬送装置10が天井走行車1に搭載されている例を示したが、これに限定されない。搬送装置は天井走行車以外にも、物品を支持した状態で搬送する様々な装置に利用できるものであり、例えばロボットハンドとして利用してもよい。
【0052】
また、本体部20に形成された下段部23bに防振材35が載置され、防振材35と取付部40Rとの間に間隙を形成する例を示したが、これに限定されない。本体部の上面から取付部の下面までに所定の間隙ができるように防振材が配置されていればよく、例えば、取付部の下面に対して防振材を接着して、防振材と本体部との間に間隙を形成してもよい。
【0053】
また、防振部32,36を構成する防振材31,33,35がシリコーン樹脂によって形成された弾性体である例を示したが、これに限定されず、他のゴムによって形成される弾性体や、バネ等の弾性体であってもよい。
【0054】
また、防振部36が左右に配置される防振材33と中央に配置される防振材35とによって構成される例を示したが、これに限定されない。防振部は、第1の荷重よりも大きいときに作用する第1の防振材と、第1の荷重よりも大きい第2の荷重以上のときに作用する第2の防振材とによって構成されていればよい。そのため、防振材の形状、個数、配置等は支持される物品によって適宜変更してよい。
【0055】
また、一対のハンド13によってFOUP50のフランジ56が支持される例を示したが、これに限定されない。例えば、ハンドは一対に限らず3個以上であってもよい。
【符号の説明】
【0056】
1…天井走行車、10…搬送装置、11…保持装置、13…ハンド(支持機構)、20…本体部、31…防振材、32,36…防振部、33…防振材(第1の防振材)、35…防振材(第2の防振材)、40…支持部、56…フランジ、G…重心位置、C…中心位置、50…FOUP(物品)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6