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特開2015-196635赤外線遮蔽材料微粒子の製造方法、赤外線遮蔽材料微粒子分散液の製造方法、赤外線遮蔽材料微粒子、赤外線遮蔽材料微粒子粉末、赤外線遮蔽材料微粒子分散液、赤外線遮蔽材料微粒子分散体および被覆基材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-196635(P2015-196635A)
(43)【公開日】2015年11月9日
(54)【発明の名称】赤外線遮蔽材料微粒子の製造方法、赤外線遮蔽材料微粒子分散液の製造方法、赤外線遮蔽材料微粒子、赤外線遮蔽材料微粒子粉末、赤外線遮蔽材料微粒子分散液、赤外線遮蔽材料微粒子分散体および被覆基材
(51)【国際特許分類】
   C01G 23/053 20060101AFI20151013BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20151013BHJP
【FI】
   C01G23/053
   C09K3/00 105
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2014-77169(P2014-77169)
(22)【出願日】2014年4月3日
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】100091362
【弁理士】
【氏名又は名称】阿仁屋 節雄
(74)【代理人】
【識別番号】100090136
【弁理士】
【氏名又は名称】油井 透
(74)【代理人】
【識別番号】100105256
【弁理士】
【氏名又は名称】清野 仁
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏幸
(72)【発明者】
【氏名】村松 淳司
(72)【発明者】
【氏名】蟹江 澄志
【テーマコード(参考)】
4G047
【Fターム(参考)】
4G047CA05
4G047CB06
4G047CC03
4G047CD04
4G047CD07
(57)【要約】
【課題】Nbがドープされた酸化チタン微粒子であって、赤外線遮蔽材料としての機能を十分に発揮する赤外線遮蔽材料微粒子を製造する際に良好な回収率および良好な作業性を実現可能な手法を提供することを目的とする。
【解決手段】Ti含有化合物と錯化剤Aとを反応させて得られるTi錯体、および、Nb含有化合物と錯化剤Bとを反応させて得られるNb錯体を含む水溶液内で、各錯体に対して加水分解をもたらす水熱合成を行う水熱合成工程と、水熱合成工程後、析出物である赤外線遮蔽材料微粒子を回収する回収工程と、を有し、水熱合成工程は、加水分解を進行させることにより水溶液をゲル化させるゲル化工程と、ゲル化工程によりゲル化された水溶液を、加水分解を進行させることによりゾル化させるゾル化工程と、を有する手法を提供する。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外線遮蔽材料微粒子を製造する方法であって、
Ti含有化合物と錯化剤Aとを反応させて得られるTi錯体、および、Nb含有化合物と錯化剤Bとを反応させて得られるNb錯体を含む水溶液内で、各錯体に対して加水分解をもたらす水熱合成を行う水熱合成工程と、
前記水熱合成工程後、析出物である前記赤外線遮蔽材料微粒子を回収する回収工程と、
を有し、
前記水熱合成工程は、
前記加水分解を進行させることにより前記水溶液をゲル化させるゲル化工程と、
前記ゲル化工程によりゲル化された前記水溶液を、前記加水分解を進行させることによりゾル化させるゾル化工程と、
を有する、赤外線遮蔽材料微粒子の製造方法。
【請求項2】
前記Ti含有化合物はTiアルコキシドであり、前記Nb含有化合物はNbアルコキシドである、請求項1に記載の赤外線遮蔽材料微粒子の製造方法。
【請求項3】
前記錯化剤Aおよび前記錯化剤Bのうち少なくともいずれかはトリエタノールアミンである、請求項1または2に記載の赤外線遮蔽材料微粒子の製造方法。
【請求項4】
前記水熱合成工程前の前記水溶液におけるTiとNbのモル比は、[Ti]:[Nb]=90:10〜60:40とする、請求項1〜3のいずれかに記載の赤外線遮蔽材料微粒子の製造方法。
【請求項5】
赤外線遮蔽材料微粒子分散液を製造する方法であって、
Ti含有化合物と錯化剤Aとを反応させて得られるTi錯体、および、Nb含有化合物と錯化剤Bとを反応させて得られるNb錯体を含む水溶液内で、各錯体に対して加水分解をもたらす水熱合成を行う水熱合成工程と、
前記水熱合成工程後、析出物である前記赤外線遮蔽材料微粒子を回収する回収工程と、
回収された前記赤外線遮蔽材料微粒子を液体媒質に分散させる際に前記赤外線遮蔽材料微粒子を当該液体媒質内にて解砕する解砕処理工程と、
を有し、
前記水熱合成工程は、
前記加水分解を進行させることにより前記水溶液をゲル化させるゲル化工程と、
前記ゲル化工程によりゲル化された前記水溶液を、前記加水分解を進行させることによりゾル化させるゾル化工程と、
を有し、
前記解砕処理工程における解砕処理時間を10時間未満とする、赤外線遮蔽材料微粒子分散液の製造方法。
【請求項6】
Tiの酸化物において、Tiの一部をNbで置換したアナターゼ型の結晶構造を有し、かつ、以下の条件のうち少なくとも1つの条件を満たす、赤外線遮蔽材料微粒子。
(1)当該微粒子の体積平均径をD90で除した値(Mv/D90)が0.70〜1.00である。
(2)当該微粒子のD90を体積平均径で除した値(D10/Mv)が0.80〜1.00である。
(3)当該微粒子のD10をD90で除した値(D10/D90)が0.70〜1.00である。
【請求項7】
前記赤外線遮蔽材料微粒子の結晶子径が13nm〜30nmである、請求項6に記載の赤外線遮蔽材料微粒子。
【請求項8】
前記赤外線遮蔽材料微粒子の体積平均径が結晶子径の1.0倍〜2.2倍である、請求項6または7に記載の赤外線遮蔽材料微粒子。
【請求項9】
a軸の格子定数が3.79Åを超えた値であり、かつ、c軸の格子定数が9.51Åを超えた値である、請求項6〜8のいずれかに記載の赤外線遮蔽材料微粒子。
【請求項10】
TiとNbのモル比は、[Ti]:[Nb]=90:10〜60:40である、請求項6〜9のいずれかに記載の赤外線遮蔽材料微粒子。
【請求項11】
請求項6〜10のいずれかに記載の赤外線遮蔽材料微粒子を乾燥して得られる、赤外線遮蔽材料微粒子粉末。
【請求項12】
請求項6〜10のいずれかに記載の赤外線遮蔽材料微粒子が液体媒質中に分散している、赤外線遮蔽材料微粒子分散液。
【請求項13】
請求項6〜10のいずれかに記載の赤外線遮蔽材料微粒子が固体媒質中に分散している、赤外線遮蔽材料微粒子分散体。
【請求項14】
請求項6〜10のいずれかに記載の赤外線遮蔽材料微粒子を含有する被膜が基材表面に設けられている、被覆基材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線遮蔽材料微粒子の製造方法、赤外線遮蔽材料微粒子分散液の製造方法、赤外線遮蔽材料微粒子、赤外線遮蔽材料微粒子粉末、赤外線遮蔽材料微粒子分散液、赤外線遮蔽材料微粒子分散体および被覆基材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
赤外線遮蔽材料としては、ITO、ATO、CWO、LaBを原料としたものが知られている。近年、酸化チタン(説明の便宜上、以降、TiOとも言う。)を用いた赤外線遮蔽材料が公開されている(例えば特許文献1)。特許文献1においては、酸化チタンを主成分としつつNbまたはTaを含有させたものを赤外線遮蔽材料として使用することが記載されている。
【0003】
ちなみに、赤外線遮蔽材料としてではなく導電性酸化チタンを作製する際に、酸化チタンにおいてTiの一部をNbやTaで置換(以降、「ドープ」とも言う。)した状態とする技術が知られている(例えば特許文献2や3)。
【0004】
特許文献2においては、ペルオキソチタン酸水溶液にNbCl水溶液を加え、陰イオン交換処理、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)の添加を行い、その後水熱処理を行い、導電性酸化チタンの分散液を作製している。そして、この分散液を蒸発乾燥および550℃で焼成し、Nbがドープされた酸化チタン(説明の便宜上、以降、Nb−TiOとも言う。)の粉末を得ている(特許文献2の[0069])。
【0005】
特許文献3においては、Tiアルコキシドと、NbアルコキシドまたはTaアルコキシドとに対して加水分解を行い、各々の金属アルコキシドを互いに脱水縮合可能とし、それらが互いに脱水縮合することで酸化物を形成し、Nb−TiOの分散液を得ている(特許文献3の[0020])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−90011号公報
【特許文献2】特開2007−320821号公報
【特許文献3】特開2011−167620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の通り、赤外線遮蔽材料としてのNb−TiOを作製する技術ではないけれども、酸化チタンにNbをドープする技術としては特許文献2や3が知られている。本発明者は、まず、赤外線遮蔽材料としてNb−TiOを作製する手法として特許文献2や3が適切か否かについて検討した。その結果、単に特許文献2や3を適用するのでは、以下の課題が生じることが、本発明者の検討により明らかとなった。
【0008】
(課題1)例えば特許文献3の場合、Tiアルコキシドと、NbアルコキシドまたはTaアルコキシドとを加水分解させるにしても、−30℃に保持しなければならない(特許文献3の[0037])。詳しくは後述するが、金属アルコキシドに対する加水分解は高速で行われるためである(特許文献3の[0021])。そのため、特許文献3の手法だと、Nb−TiOを作製する際の室温での作業性が著しく低下する。
【0009】
(課題2)上記の課題と関係するが、特許文献3の場合、アルコキシドの加水分解が速やかに行われるために核生成期と微粒子成長期を分離することが難しい。そのため、酸化物微粒子を十分に成長させることができず、結晶子径が著しく小さくなってしまう(特許文献3の表1)。特許文献2や3のように、Nb−TiOを導電性材料として使用する場合はそれでもよいのかもしれない。しかしながら、赤外線遮蔽材料としてNb−TiOを使用する場合、結晶子径が小さすぎると、赤外線遮蔽材料としての機能が発揮できない。
【0010】
(課題3)また、赤外線遮蔽材料としてNb−TiOの微粒子を作製するという観点から見ると、Nb−TiOの微粒子において極端に径が大きいものが含まれていると、Nb−TiOの微粒子に対して光を通過させた場合、散乱光が多く生じてしまう。そうなると、例えば窓ガラスに対して当該赤外線遮蔽材料を適用させようとしても、赤外線を遮蔽する以前に、可視光を透過させるはずの窓ガラスとしては体を成さなくなってしまう。ちなみに極端に径が小さいものが存在する場合は、赤外線遮蔽材料としての機能が十分に発揮できないおそれが生じる。
【0011】
(課題4)散乱光に関する課題は、Nb−TiOの微粒子の凝集度合いによっても生じる。例えば特許文献2の場合、Nb−TiOを作製する際に550℃での焼成が行われている。そのため、Nb−TiOが相当凝集していると考えられ、上記の散乱光の問題が顕著になるおそれがある。
【0012】
(課題5)例えば特許文献3の場合、Nb−TiOを作製する前に、まず、Ti原料(例えばTiアルコキシド)とNb原料(例えばNbアルコキシド)とを混合させる(以降、「仕込む」とも言う。)ことになる。ところがこの原料比、具体的に言うとNbの金属原子数比(モル比、以降、単にNb比率とも言う。)が、最終的に得られるNb−TiOの結晶内におけるTiとNbとの組成比に、必ずしも反映されていない。その結果、Nbアルコキシドを過剰に用意しなければならず、無駄が生じてしまう。この傾向はTi原料の加水分解速度と、Nb原料の加水分解速度の差が大きいほど、またNbドープ量が多いほど顕著になる。
【0013】
本発明は、上記の課題を鑑み、Nbがドープされた酸化チタン微粒子であって、赤外線遮蔽材料としての機能を十分に発揮する赤外線遮蔽材料微粒子を製造する際に良好な回収率および良好な作業性を実現可能な手法を提供し、さらには赤外線遮蔽性能を向上させた赤外線遮蔽材料微粒子およびその関連物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、上記課題について鋭意研究を重ねた。上述の通り、TiOに対し、異なる金属であるNbをドープする手法としては、特許文献2や3に記載の技術が知られている。しかしながら、本発明者の検討の結果、赤外線遮蔽材料の作製に対して特許文献2や3を単に適用しただけでは、上記の各課題を全て解決するには至らないという知見を得た。
【0015】
そこで本発明者は、ゲル−ゾル法と呼ばれる画期的な技術に着目した。このゲル−ゾル法に基づき鋭意検討を行った結果、ゲル−ゾル法において用いていたTi錯体に加え、ドープ対象となるNbの原料においても錯体を使用する、つまりNb錯体を使用するという手法を想到した。詳しく言うと、
(1)金属を錯化することにより加水分解の速度を抑えつつ、
(2)TiもNbも錯化することにより両者の加水分解の速度を近づける。
その上で、
(3)Ti錯体とNb錯体とを共存させた状態で加水分解を開始する。
という3つのステップを踏襲する手法を想到した。
【0016】
以上の知見に基づいて成された本発明の態様は、以下の通りである。
本発明の第1の態様は、
赤外線遮蔽材料微粒子を製造する方法であって、
Ti含有化合物と錯化剤Aとを反応させて得られるTi錯体、および、Nb含有化合物と錯化剤Bとを反応させて得られるNb錯体を含む水溶液内で、各錯体に対して加水分解をもたらす水熱合成を行う水熱合成工程と、
前記水熱合成工程中、前記加水分解を進行させることにより前記水溶液をゲル化させるゲル化工程と、
前記水熱合成工程後、析出物である前記赤外線遮蔽材料微粒子を回収する回収工程と、
を有し、
前記水熱合成工程は、
前記加水分解を進行させることにより前記水溶液をゲル化させるゲル化工程と、
前記ゲル化工程によりゲル化された前記水溶液を、前記加水分解を進行させることによりゾル化させるゾル化工程と、
を有する、赤外線遮蔽材料微粒子の製造方法である。
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載の発明において、
前記Ti含有化合物はTiアルコキシドであり、前記Nb含有化合物はNbアルコキシドである。
本発明の第3の態様は、第1または第2の態様に記載の発明において、
前記錯化剤Aおよび前記錯化剤Bのうち少なくともいずれかはトリエタノールアミンである。
本発明の第4の態様は、第1〜第3のいずれかの態様に記載の発明において、
前記水熱合成工程前の前記水溶液におけるTiとNbのモル比は、[Ti]:[Nb]=90:10〜60:40とする。
本発明の第5の態様は、
赤外線遮蔽材料微粒子分散液を製造する方法であって、
Ti含有化合物と錯化剤Aとを反応させて得られるTi錯体、および、Nb含有化合物と錯化剤Bとを反応させて得られるNb錯体を含む水溶液内で、各錯体に対して加水分解をもたらす水熱合成を行う水熱合成工程と、
前記水熱合成工程後、析出物である前記赤外線遮蔽材料微粒子を回収する回収工程と、
回収された前記赤外線遮蔽材料微粒子を液体媒質に分散させる際に前記赤外線遮蔽材料微粒子を当該液体媒質内にて解砕する解砕処理工程と、
を有し、
前記水熱合成工程は、
前記加水分解を進行させることにより前記水溶液をゲル化させるゲル化工程と、
前記ゲル化工程によりゲル化された前記水溶液を、前記加水分解を進行させることによりゾル化させるゾル化工程と、
を有し、
前記解砕処理工程における解砕処理時間を10時間未満とする、赤外線遮蔽材料微粒子分散液の製造方法である。
本発明の第6の態様は、
Tiの酸化物において、Tiの一部をNbで置換したアナターゼ型の結晶構造を有し、かつ、以下の条件のうち少なくとも1つの条件を満たす、赤外線遮蔽材料微粒子である。
(1)当該微粒子の体積平均径をD90で除した値(Mv/D90)が0.70〜1.00である。
(2)当該微粒子のD90を体積平均径で除した値(D10/Mv)が0.80〜1.00である。
(3)当該微粒子のD10をD90で除した値(D10/D90)が0.70〜1.00である。
本発明の第7の態様は、第6の態様に記載の発明において、
前記赤外線遮蔽材料微粒子の結晶子径が13nm〜30nmである。
本発明の第8の態様は、第6または第7の態様に記載の発明において、
前記赤外線遮蔽材料微粒子の体積平均径が当該結晶子径の1.0倍〜2.2倍である。
本発明の第9の態様は、第6〜第8のいずれかの態様に記載の発明において、
a軸の格子定数が3.79Åを超えた値であり、かつ、c軸の格子定数が9.51Åを超えた値である。
本発明の第10の態様は、第6〜第9のいずれかの態様に記載の発明において、
TiとNbのモル比は、[Ti]:[Nb]=90:10〜60:40である。
本発明の第11の態様は、第6〜第10のいずれかの態様に記載の赤外線遮蔽材料微粒子を乾燥して得られる、赤外線遮蔽材料微粒子粉末である。
本発明の第12の態様は、第6〜第10のいずれかの態様に記載の赤外線遮蔽材料微粒子が液体媒質中に分散している、赤外線遮蔽材料微粒子分散液である。
本発明の第13の態様は、第6〜第10のいずれかの態様に記載の赤外線遮蔽材料微粒子が固体媒質中に分散している、赤外線遮蔽材料微粒子分散体である。
本発明の第14の態様は、第6〜第10のいずれかの態様に記載の赤外線遮蔽材料微粒子を含有する被膜が基材表面に設けられている、被覆基材である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、Nbがドープされた酸化チタン微粒子であって、赤外線遮蔽材料としての機能を十分に発揮する赤外線遮蔽材料微粒子を製造する際に良好な回収率および良好な作業性を実現可能な手法を提供し、さらには赤外線遮蔽性能を向上させた赤外線遮蔽材料微粒子およびその関連物を提供することを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態における赤外線遮蔽材料微粒子の製造方法を示すフローチャートである。
図2】ゲル−ゾル法のメカニズムを説明するための概念図である。
図3】本実施例におけるTEM観察の結果を示す写真である。
図4】本実施例におけるXRD測定の結果を示すグラフである。
図5】本実施例におけるXRD測定により得られたa軸およびc軸の格子定数がNbの量に応じて直線的に変化する様子を示すグラフである。(a)がa軸の格子定数の結果であり、(b)がc軸の格子定数の結果である。
図6】本実施例におけるXRD測定により得られた結晶子径がNbの量に応じて変化する様子を示す表である。
図7】本実施例におけるTEM−EDS点分析の結果を示すグラフおよび表である。
図8】本実施例におけるTEM−EDS面分析の結果を示す写真(元素マップ)である(その1)。
図9】本実施例におけるTEM−EDS面分析の結果を示す写真(元素マップ)である(その2)。
図10】本実施例において、試料をトルエンに分散させたときの、動的光散乱法による粒度分布測定の結果を示すグラフである。
図11】本実施例において、試料をトルエンに分散させたときの、動的光散乱法による粒径測定の結果を示すグラフ(体積平均径MvおよびD90)および表である。
図12】本実施例において、試料をトルエンに分散させかつ解砕処理時間を変動させた場合の動的光散乱法による粒径測定の結果を示すグラフ(a)および表(b)である。
図13】本実施例において、試料をトルエンに分散させたときの、透過スペクトルの結果を示すグラフである。
図14】本実施例において、試料をトルエンに分散させた後に再び微粒子を乾燥させて作製した粉末に対するXRD測定の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本実施形態においては、次の順序で説明を行う。
1.赤外線遮蔽材料微粒子の製造方法
1−A)準備工程
1−B)水熱合成工程
1−B−a)ゲル化工程
1−B−b)ゾル化工程
1−C)回収工程
1−D)その他
2.赤外線遮蔽材料微粒子
3.赤外線遮蔽材料微粒子の関連物
なお、本実施形態は、ゲル−ゾル法をベースとした手法である。そのため、以下の内容において特記の無い事項に対しては、ゲル−ゾル法に関する公知の技術(例えば特開2007−290887号公報や公知の論文など)を適宜用いても構わないし、Nb−TiOに限らず赤外線遮蔽材料微粒子の製造の際に適宜必要な技術についても、公知の技術を適宜用いても構わない。
【0020】
<1.赤外線遮蔽材料微粒子の製造方法>
以下、本実施形態における赤外線遮蔽材料微粒子の製造方法について説明する。図1は本実施形態における赤外線遮蔽材料微粒子の製造方法を示すフローチャートである。
【0021】
1−A)準備工程
本工程においては、まず、Ti含有化合物と錯化剤Aとを反応させて得られるTi錯体、および、Nb含有化合物と錯化剤Bとを反応させて得られるNb錯体を準備する。
【0022】
なお、Ti含有化合物および錯化剤Aの具体的な化合物としては、Ti錯体が得られれば特に限定は無い。最終的にTi錯体が加水分解してTi水酸化物となるように、Ti含有化合物および錯化剤Aを選択すればよい。Nb含有化合物および錯化剤Bについても同様である。
【0023】
Ti含有化合物の具体例としては、Tiアルコキシドが挙げられる。Tiアルコキシドとしては、例えばチタンテトライソプロポキシド(TIPO)が挙げられるが、これに限定されない。それ以外にも、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラ−i−ブトキシチタン、テトラ−sec−ブトキシチタン、テトラ−t−ブトキシチタン、テトラキス(ジメチルアミノ)チタン、テトラキスジエチルアミノチタン、ジ(イソプロポキシ)ビス(ジピバロイルメタナト)チタン等を用いることができる。チタンアルコキシドは、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
同様に、Nb含有化合物の具体例としては、Nbアルコキシドが挙げられる。Nbアルコキシドとしては、例えばニオブエトキシドが挙げられるが、これに限定されない。それ以外にも、ペンタメトキシニオブ、ペンタエトキシニオブ、ペンタ−i−プロポキシニオブ、ペンタ−n−プロポキシニオブ、ペンタ−i−ブトキシニオブ、ペンタ−n−ブトキシニオブ、ペンタ−sec−ブトキシニオブ等を用いることができる。ニオブアルコキシドは、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0024】
錯化剤Aの具体例としては、トリエタノールアミン(TEOA)が挙げられる。それ以外にも、アミンとしては、トリエチレンジアミン(TMD)、N,N−ジメチルエチレンジアミン(DMED)、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラアミン(TETA)、トリス(2−アミノエチル)アミン(TAEA)などが挙げられる。アミノ酸としては、L−アスパラギン酸(AA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、エチレンジアミン−N,N,N’,N’−四酢酸(EDTA)などが挙げられる。これらの化合物のうち1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
同様に、錯化剤Bの具体例としては、トリエタノールアミンが挙げられる。それ以外にも、上記に列挙したアミンやアミノ酸が挙げられる。
なお、後述の実施例が示すように、錯化剤Aおよび錯化剤Bのうち少なくともいずれかはトリエタノールアミンであるのが好ましく、両方ともトリエタノールアミンであるのが非常に好ましい。
【0025】
1−B)水熱合成工程
本工程においては、Ti錯体およびNb錯体、そして溶媒を水とした水溶液を用意する。本発明の知見として述べたように、本実施形態においては、酸化物となる金属の錯体と、ドープする金属の錯体とを準備することが特に重要である。これらの金属錯体を準備した後、当該水溶液内で、各錯体に対して加水分解をもたらす水熱合成を行う。なお、水熱合成の具体的な手法については、以下に特記の無い内容については、公知の手法を用いても構わない。また、以下に特記する本工程の条件はあくまで好ましい例であり、本発明の効果を奏する限り、以下の例以外の条件で本工程を行ってももちろん構わない。
【0026】
まず、水熱合成工程前の水溶液におけるTiとNbのモル比は、[Ti]:[Nb]=90:10〜60:40とするのが好ましい。別の言い方をすると、[Nb]/([Ti]+[Nb])を0.1以上0.4以下とするのが好ましい。0.1以上ならば、最終的に得られるNb−TiOに対して赤外遮蔽性能を備えさせることが可能となる。上限値についてであるが、現在までの本発明者の調べによれば、NbをTiOにドープする際に上記の値が0.4以下ならば赤外遮蔽性能を十分に備えさせつつも上記の各課題を解決可能であることを確認している。なお、赤外遮蔽性能を向上させるために、好ましくは0.2を超えかつ0.4以下とする。もちろん、当該範囲の上限値が更に大きくなっても構わない可能性は十分にある。
なお、以降「〜」は所定の数値以上かつ所定の数値以下のことを表すものとする。
【0027】
以上の内容を踏まえて、水熱合成工程を行う。そして、本実施形態においては、水熱合成工程中、加水分解を進行させることにより水溶液をゲル化させるゲル化工程、そしてさらに加水分解を進行させて、ゲル化した水溶液をゾル化させるゾル化工程を行う。
【0028】
1−B−a)ゲル化工程
ここで、ゲル化工程において生じる反応機構について、推測を含むところもあるが、説明する。
【0029】
このゲル−ゾル法と呼ばれる技術としては、例えば、本発明者が成した発明(特開2007−290887号公報)が挙げられる。ゲル−ゾル法とは、掻い摘んで言うと、金属酸化物微粒子を作製するための技術であって、ゲル混濁液を出発にして最終的には金属酸化物のゾル(コロイド)を得る方法である。そのメカニズムとしては、特開2007−290887号公報の[0017]〜[0020]に記載のものが挙げられる。
【0030】
本実施形態においてはTi錯体とNb錯体とを用いるが、まず、Nb−TiOのベースとなるTi錯体に着目して説明する。
【0031】
Ti錯体を形成し、これを加水分解することで、得るべき金属酸化物微粒子の生成に必要な物質(チタン化合物)を、当該錯体から徐々に放出することが可能となる。詳しく言うと、Ti錯体に対して加水分解を行うことにより、アモルファス(非晶質)の水酸化チタンが形成される。この非晶質水酸化チタンがゲル化の基となる。加水分解を続行することにより、非晶質水酸化チタン濃度が上昇し、各々の間で水素結合が形成されることで非晶質水酸化チタンがゲルとして析出する。一方、溶存する非晶質水酸化チタン濃度の上昇はアナターゼ相酸化チタンの核生成をもたらす。生じた核はゲルからチタン源(前駆体モノマー)の供給を受け、アナターゼ相からなる結晶構造を有する酸化チタンが得られる。
【0032】
上述の通り、非晶質水酸化チタンによりゲル化が行われ、ゲル網が形成される。その様子を図2に示す。ゲル−ゾル法においては、非晶質水酸化チタンの濃度が高くなった部分から「非晶質水酸化チタン→前駆体モノマー→酸化チタン(TiO)」という流れの反応が起き、当該部分からTiOの結晶核が生じることになる。ただ、ゲル−ゾル法においては、ゲル網上、またはその網目であって非晶質水酸化チタンの濃度が高くなった部分においてTiOの結晶核が生じることになる。その場合、結晶核が生成して微粒子が成長するとしても、当該微粒子は、隣接するゲル網の網上または網目に同様に存在する微粒子とは、網目が邪魔することにより接触困難となり、各微粒子の成長過程を妨害する要因がほとんど存在しなくなる。つまり、非晶質水酸化チタンによるゲル状態を経るおかげで、溶液内のブラウン運動が抑制される。その結果、微粒子同士での衝突機会が著しく減少し、各微粒子が同様に成長することが可能となり、形状や大きさが均一な微粒子が得られ、ひいては極端に径が大きなまたは小さな微粒子がほとんど存在しないという単分散ないしそれに近い微粒子が得られる。しかも、微粒子同士の凝集の発生も著しく抑制される。
【0033】
また、このゲル網は、上記の役割に加え、TiOの原料を供給する供給源(いわばリザーバー)の役割も担う。図2に示すように、加水分解が進行すると、ゲル網を構成する非晶質水酸化チタンから、中間生成物である前駆体モノマーが形成される。この前駆体モノマーがTiOの結晶核と接触することにより、TiOの微粒子が成長していく。
【0034】
ここで、本実施形態においては、Ti錯体に加え、ドープ対象となるNbの原料においても錯体を使用する、つまりNb錯体を使用する。詳しく言うと、
(1)金属を錯化することにより加水分解の速度を抑えつつ、
(2)TiもNbも錯化することにより両者の加水分解の速度を近づける。
その上で、
(3)Ti錯体とNb錯体とを共存させた状態で加水分解を開始する。
という3つのステップを踏襲する。
上記の手法を採用することにより、以下の効果を奏する。
【0035】
まず、水熱合成工程(ゲル化工程)「非晶質水酸化チタン→前駆体モノマー→TiO」という流れ自体の速度を抑えることが可能になり、水の添加部近傍のみで不均一に加水分解が生じることがなくなり、得られる微粒子の粒径分布が広がるおそれもなくなる。しかも、水熱合成工程自体の速度を抑えられるため、特許文献3のTiアルコキシドを用いる場合とは異なり、室温での作業が可能となる。具体的に言うと、水熱合成工程前に、室温において、Ti錯体とNb錯体とを共存させた水溶液を準備することが可能となる。そして、当該水溶液を加熱することにより水熱合成工程を開始、逆に当該水溶液を冷却することにより水熱合成工程を停止させることが可能となる。つまり、作業者の意図通りに水熱合成工程を制御することが可能となる。その結果、Nb−TiOを作製する際の作業性が著しく向上する。
【0036】
また、TiとNbとを共に錯化したものを用いることにより、Tiの非晶質水酸化、前駆体モノマー化、酸化物生成のタイミングに、Nbの非晶質水酸化、Nb前駆体モノマー化、酸化物生成のタイミングを近づけることが可能となる。それにより、例えばTiとNbの非晶質水酸化が同じタイミングで生じ、非晶質水酸化物にはTiとNbが混在した状態となる。その結果、最終的に得られる金属酸化物においては、元素またはイオンレベルで両金属を混合することが可能となる。しかも、後述の実施例の図8および図9に示すように、本実施形態の手法を採用することにより、結晶内における元素レベルでの均一性(分散性)を獲得することができる。その上、後述の実施例の図7に示すように、原料の仕込み量におけるNb比率とNb−TiOにおけるNb比率を極めて近い値とすることが可能となる。その結果、Nbアルコキシドを過剰に用意する必要がなくなり、Nb−TiOの生産効率を著しく向上させられる。
【0037】
以上の効果を奏しつつ、さらに加水分解を進行させて、ゲル化した水溶液をゾル化させる。
【0038】
1−B−b)ゾル化工程
加水分解を進行させると、ゲルはゾル(コロイド)に相転移していくので反応の最終段階では、微粒子が成長し、全てゾルに変化する。そして、ゲル状混合物を加熱、冷却することによりゾル状混合物が得られ、遠心分離機等を用いた固液分離操作によりTiO微粒子を得る。加水分解(ゲル化)を進行させた後に、ゲルはゾルに相転移していくため、この相転移のことをゾル化工程、ゲル化緩和工程、またはゾルへの相転移工程と呼んでも構わない。つまり、加水分解工程内においてゲル化工程の後でゾル化工程が行われる。
【0039】
上記のゲル化工程およびゾル化工程を採用すると、核生成を抑制しつつ、Nb−TiO微粒子の成長を140℃〜250℃という比較的高温で行うことが可能となる。そうなると、特許文献3のように80℃という比較的低温で酸化物微粒子の生成を行う場合とは異なり、後述の実施例の図6に示すように、結晶子径を大きくすることが可能となる。その結果、赤外線遮蔽材料としてNb−TiOを使用する場合でも、比較的大きな結晶子径のNb−TiOの微粒子が得られる。しかも、Nb錯体が高濃度(特許文献3に記載の20%を更に上回る値)であっても、アナターゼ相からなる結晶構造を有するNb−TiOを安定して作製可能である。
その結果、Nb−TiOの微粒子に対して赤外線遮蔽材料としての機能を発揮させることが可能となる。
【0040】
さらに、本実施形態においては、比較的大きな結晶子径のNb−TiOの微粒子が得られる一方、後述の実施例の図10に示すように、得られるNb−TiOの微粒子は、単分散ないしそれに近い状態となっている。つまり、Nb−TiOの微粒子において径が極端に大きいもの(それに加えて、逆に極端に小さいもの)はほとんど含まれておらず、微粒子全体を見ても径がほぼ一定であり、いわゆる単分散ないしそれに近い状態となっている。その結果、Nb−TiOの微粒子に対して光を通過させても、散乱光はほとんど生じない。
また、凝集度合いについても、後述の実施例の図6図11とを比べるとわかるように、結晶子径に対し、液体媒質中での体積平均径Mvはあまり大きくなっておらず、凝集度合いが極めて小さくなっている。
その結果、例えば窓ガラスに対して当該赤外線遮蔽材料を適用させた場合であっても、赤外線を遮蔽させつつ、可視光を透過させることが可能となる。
【0041】
上記の効果を追補する形であるが、上記の手法を採用すると、以下の効果も奏する。
【0042】
凝集を抑制するゲル網を構成する非晶質水酸化チタンは、元を正せばTi錯体である。そのため、特許文献3のようにTiのアルコキシドをそのまま用いる場合に比べ、加水分解の速度を適度に抑えることが可能となる。その結果、非晶質水酸化チタンの濃度が、LaMerの原理で言うところの過飽和度(結晶核が生成するための物質の濃度)へと急激に到達することがない。しかも、温度や時間などの諸条件を適宜設定することにより、非晶質水酸化チタンの濃度が過飽和度を超えるタイミングや超える度合いを制御することが可能となり、微粒子成長中の新たな核生成を抑制することが可能となる。これは、核生成期と微粒子成長期を分離することが可能であることを意味する。この分離が可能となると、ごく初期に生成した結晶核からのみ微粒子が成長し、結果として凝集度合いを相当小さくした状態、かつ、極端に径が大きなまたは小さな微粒子がほとんど存在しないという単分散ないしそれに近い状態であるNb−TiO微粒子を生成することが可能となる。
【0043】
また、ゲル−ゾル法を採用すれば、金属酸化物微粒子を大量に合成できる。また、当該微粒子に形状異方性を導入でき、当該微粒子の結晶子径を制御できる。また、固相法に比較し低温焼結が可能となり、成長微粒子の凝集を抑制可能となる。
【0044】
なお、ゲル化工程およびゾル化工程を含めた水熱合成工程を行うための温度条件としては140℃〜250℃が好ましい。140℃以上なら、十分に加水分解を生じさせることが可能である。250℃以下ならば、ゲル状態を十分長く維持することが可能となる。
また、時間条件としては、十分に加水分解を生じさせること、および作業効率を鑑みると、3h〜72hで行うのが好ましい。
ただ、上記の数値範囲に本実施形態は限定されるものではない。本実施形態においては、水熱合成工程すなわちゲル化工程およびゾル化工程を行う。両工程を行うということはすなわち、水熱合成工程前の原料の仕込みにおけるNb比率、水熱合成工程の温度条件および時間条件が適切に設定されていることを意味する。つまり本実施形態において上記の各条件は、加水分解を進行させることによりゲル化およびゾル化をもたらすことが可能な値に設定されている。
【0045】
1−C)回収工程
本工程においては、水熱合成工程後、以上のメカニズムによりゾルとして析出した赤外線遮蔽材料微粒子を回収する。回収手法としては、ゾルを回収する公知の手法を用いても構わない。例えば、遠心分離により赤外線遮蔽材料微粒子を回収しても構わない。また、適宜、回収した赤外線遮蔽材料微粒子に対して洗浄および乾燥処理を行っても構わない。
【0046】
1−D)その他
赤外線遮蔽材料微粒子を製造する場合は、上記の回収工程までを行えばよい。その一方、当該微粒子を液体媒質に分散させた分散液を作製する場合、当該微粒子を当該液体媒質内にて解砕する解砕処理工程を行う。その場合、解砕処理時間を10時間未満とするのが好ましい。
本発明者の調べにより、赤外線遮蔽性能の基となるアナターゼ相は、機械による解砕処理などで破壊されやすいことが見出されている。その一方、本実施形態で得られる赤外線遮蔽材料微粒子は、後述の実施例が示すように、凝集度合いが非常に小さい。そのため、赤外線遮蔽材料微粒子から赤外線遮蔽材料微粒子粉末を作製する場合でも、機械による解砕処理を行うまでもない状態、または、解砕処理を行うとしてもわずかな時間の処理で済む状態となっている。そのため、仮に赤外線遮蔽材料微粒子に対する解砕処理を行うとしても、その処理に要する時間を10時間未満とすることにより、赤外線遮蔽性能の基となるアナターゼ相の大部分を保持することが可能となる。
【0047】
また、水熱合成工程(ゲル化工程)において、結晶核の生成のタイミングや結晶核から微粒子が成長するタイミングを制御するための化合物を水溶液に添加しても構わない。この化合物としては、アンモニアまたはその化合物が挙げられる。また、水熱合成工程(ゲル化工程)において、Nb−TiOに対して酸素欠損をもたらす還元性化合物(例えばグリコール類)を水溶液に添加しても構わない。本実施形態においては水熱合成工程を銘打っているため、水溶液中の水の体積%は50体積%以上とする。
【0048】
<2.赤外線遮蔽材料微粒子>
本実施形態の赤外線遮蔽材料微粒子の製造方法により製造された赤外線遮蔽材料微粒子自体にも大きな特徴がある。以下、詳述する。
【0049】
まず、本実施形態の赤外線遮蔽材料微粒子は、Tiの酸化物において、Tiの一部をNbで置換したアナターゼ型の結晶構造(アナターゼ相)を有する微粒子である。その上で、当該微粒子においてXRD測定により得られる結晶子径は13nm〜30nmである。これは、Nb−TiOを導電性材料として使用する特許文献3に記載のものとは大きく異なる。先ほど述べたように、特許文献3においてはアルコキシドの加水分解が速やかに行われるために核生成期と微粒子成長期を分離することが難しい。その一方、本実施形態においては140℃〜250℃という比較的高温で核生成を抑制しつつ酸化物微粒子を成長させることが可能である。そのため、比較的大きな結晶子径の赤外線遮蔽材料微粒子を作製し、赤外線遮蔽性能を十分発揮させることが可能となる。
【0050】
また、凝集度合いの観点から見ると、当該微粒子を液体媒質(例えばトルエン)に分散させたときの体積平均径Mv(分散粒子径)は当該結晶子径の1.0倍〜2.2倍(好ましくは1.0倍〜2.0倍)の範囲に留まる。つまり、本実施形態の赤外線遮蔽材料微粒子は、XRD測定の際においても当該微粒子の凝集度合いが非常に低い。そのため、所定の溶液に当該微粒子を分散させたとしても、体積平均径Mvは結晶子径と同程度に保たれているのである。所定の溶液に当該微粒子を分散させた当該微粒子の体積平均径Mvが結晶子径の2.2倍以下というのは、シンプルに考えると、13nm〜30nmというナノレベルの微小な結晶子同士が平均で2個程度しか互いに固着していない状態を指す。このことは、1つまたは2つの結晶子が1つの微粒子を形成するという驚くべき分散性を備えていることを意味する。これは、特許文献3の表1に記載の結果(結晶子径と分散粒子径)とを比べたとしても、全く新しい構成である。なお、特許文献2のように分散液を乾燥後、加熱処理(特許文献2の実施例のように550℃で焼成)した場合、このように低い凝集度合いは獲得できない。
【0051】
さらに、極端に大きなまたは小さな径の微粒子がほとんど存在しない(すなわち単分散ないしそれに近い状態)という観点から見ると、当該微粒子を液体媒質(例えばトルエン)に分散させたとき、Mv/D90が0.70〜1.00(好ましくは0.75〜1.00、さらに好ましくは0.85〜1.00)の範囲に留まる。このように、Mv/D90が1に近い値となるということは、当該微粒子が、液体媒質に分散させたときに粒径が揃う微粒子であるのは当然として、元を正せば、液体媒質に分散させる前の段階でも粒径が揃っている微粒子であることを意味する。なぜなら、微粒子の段階において粒径が揃っていなければ、液体媒質に分散させた場合に粒径が揃わないためである。そのため、当該微粒子においては、液体媒質に分散させない状態であってもMv/D90が0.70〜1.00の範囲に留まる。
後述の実施例でも説明するが、本実施例の赤外線遮蔽材料微粒子を液体媒質に分散させた場合、図10に示すように、単分散の状態に極めて近い微粒子となる。Mv/D90が上記の範囲に存在する赤外線遮蔽材料微粒子は、各特許文献に記載の内容に照らしても、全く新しい構成である。また、上記の課題でも述べたように、本発明は「赤外線遮蔽」材料微粒子に関するものである。そのため、特許文献2や3のように導電性の観点のみでは、そもそもMv/D90に着目する理由が存在しない。
【0052】
D10/MvやD10/D90についても、Mv/D90と同様に規定することが可能である。すなわち、極端に大きなまたは小さな径の微粒子がほとんど存在しない(すなわち単分散ないしそれに近い状態)という観点から見ると、当該微粒子を液体媒質(例えばトルエン)に分散させたとき、D10/Mvが0.80〜1.00(好ましくは0.85〜1.00、さらに好ましくは0.90〜1.00)の範囲に留まる。また、D10/D90は0.70〜1.00(好ましくは0.75〜1.00、さらに好ましくは0.80〜1.00)の範囲に留まる。D10/MvやD10/D90が1に近い値となるということは、当該微粒子が、液体媒質に分散させたときに粒径が揃う微粒子であるのは当然として、元を正せば、液体媒質に分散させる前の段階でも粒径が揃っている微粒子であることを意味する。
【0053】
なお、13nm〜30nmというナノレベルの微小な結晶子を考慮に入れなかったとしても、上記のような低い凝集度合い、および、単分散ないしそれに近い状態は、驚くべきものであることに変わりはない。そのため、本実施形態の赤外線遮蔽材料微粒子としては、ミクロンレベル(例えば0.1μm=100nmや0.2μm弱=180nm)以下あるいは金属がドープされることによる機能を発揮しつつ13nmよりも小さいサイズの結晶子径となる場合であったとしても「当該微粒子をトルエンに分散させたときの体積平均径Mvは当該結晶子径の1.0倍〜2.2倍の範囲とする」ことに技術的な意義が存在する。同様に、「Mv/D90は0.80〜1.00の範囲とする」ことにも技術的な意義が存在する。また、上記の各規定を適宜組み合わせるのが好ましい。なお、条件次第では上記の各種の数値範囲が変動する可能性もあるが、その点については本発明者が鋭意検討中である。
【0054】
また、Nb−TiOが赤外線遮蔽材料微粒子として機能を発揮するにはアナターゼ相を有する必要がある。アナターゼ相においては、TiはTi4+イオン状態であり、NbはNb5+イオン状態である。イオン半径の大きさにおける互いの関係としては、Ti4+<Nb5+である。そのため、TiOにNbが多量にドープされた状態となるたびに、結晶構造においてa軸およびc軸の格子定数は増加する。言い方を変えると、TiOにNbがドープされた場合であってもa軸およびc軸の格子定数が測定されるということは、結晶構造が形成されていること、すなわちTiOにNbが元素またはイオンレベルで良好にドープされていることを指す。そのため、TiOにNbが良好にドープされていることを指し示すための規定としては「結晶構造においてa軸の格子定数が3.79Å(TiO単体の場合の値)を超えた値であり、かつ、c軸の格子定数が9.51Å(TiO単体の場合の値)を超えた値である」となる。
【0055】
また、(課題5)すなわち「原料比が、最終的に得られるNb−TiOの結晶内におけるTiとNbとの組成比に、必ずしも反映されていない」という課題が本発明者により見出されている。後述の実施例の図7に示すように、本実施形態の手法を採用することにより、水熱合成工程前の水溶液におけるTiとNbのモル比を、赤外線遮蔽材料微粒子におけるTiとNbのモル比と合致させることに成功している。そのため、本実施形態の赤外線遮蔽材料微粒子は、水熱合成工程前の水溶液におけるTiとNbのモル比の好ましい範囲がそのまま適用可能である。つまり、本実施形態の赤外線遮蔽材料微粒子においては、TiとNbのモル比が[Ti]:[Nb]=90:10〜60:40であるのが好ましい。別の言い方をすると、[Nb]/([Ti]+[Nb])を0.1〜0.4(好ましくは0.2を超えかつ0.4以下)とするのが好ましい。0.1以上ならば、最終的に得られるNb−TiOに対して赤外遮蔽性能を備えさせることが可能となる。上限値についてであるが、本発明者が現在までの調べによれば、NbをTiOにドープする際に上記の値が0.4以下ならば赤外遮蔽性能を十分に備えさせつつも上記の各課題を解決可能であることを確認している。もちろん、この数値が更に大きくなっても構わない可能性は十分にある。
【0056】
<3.赤外線遮蔽材料微粒子の関連物>
本実施形態の赤外線遮蔽材料微粒子から得られる関連物にも本発明の思想が適用されており、当該関連物にも大きな技術的特徴が存在する。
例えば、上記の赤外線遮蔽材料微粒子を乾燥して得られる赤外線遮蔽材料微粒子粉末も挙げられる。
また、上記の赤外線遮蔽材料微粒子が液体媒質中に分散している赤外線遮蔽材料微粒子分散液が挙げられる。当該分散液は、上記の解砕処理工程を行った上で作製してもよい。ここで挙げた液体媒質としては、赤外線遮蔽材料微粒子を分散可能なものならば特に制限はなく、公知のものを用いても構わない。
また、上記の赤外線遮蔽材料微粒子が固体媒質中に分散している赤外線遮蔽材料微粒子分散体も挙げられる。この固体媒質としては、赤外線遮蔽材料微粒子を分散可能なものならば特に制限はなく、公知のもの(ガラスや樹脂)を用いても構わない。
また、上記の赤外線遮蔽材料微粒子を含有する被膜が基材表面に設けられている被覆基材も挙げられる。この基材としては、当該皮膜を形成可能なものならば特に制限はなく、公知の基材(ガラス基体や樹脂基体(基板またはフィルム))を用いても構わない。
【0057】
以上の結果、本実施形態ならば上記で挙げた効果を奏する。これらの効果をまとめると、NbがドープされたTiO微粒子であって、赤外線遮蔽材料としての機能を十分に発揮する赤外線遮蔽材料微粒子を製造する際に良好な回収率および良好な作業性を実現可能な手法が提供可能となり、さらには赤外線遮蔽性能を向上させた赤外線遮蔽材料微粒子およびその関連物を提供可能となる。
【0058】
なお、本実施形態においてはTiOに対してNbをドープする例について述べたが、Nbに加え、他の金属をドープする場合にも本実施形態を適用可能である。例えば、Ti錯体、Nb錯体と同様に、他の金属の錯体を作製しておき、これらの錯体が共存した状態で加水分解を行えばよい。なお、当該他の金属は1種でなくともよく、2種の金属について各々錯体を作製しておいても構わない。なお、錯体化するまでの具体例(当該他の金属を含有する化合物(アルコキシド等)、錯化剤)については、上記で列挙したものの中から適宜選択しても構わない。こうすることにより、アナターゼ相を有し、かつTiOに対してNbおよび他の金属をドープした赤外線遮蔽材料を得ることができる。
【実施例】
【0059】
以下に、本発明の実施例を比較例とともに具体的に説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0060】
(赤外線遮蔽材料微粒子粉末の製造)
本実施例においては以下のものを用いた。
Ti含有化合物…チタンテトライソプロポキシド(TIPO)
錯化剤A…トリエタノールアミン(TEOA)
Nb含有化合物…ニオブエトキシド
錯化剤B…トリエタノールアミン(TEOA)
【0061】
まず、窒素雰囲気下において、TIPO(14.21g)とTEOA(14.92g)とを混合し、室温で一晩撹拌することで、Ti錯体を作製した。そして、イオン交換水を加えて全量を100mLとすることにより、Tiの金属濃度が0.5MとなるTi錯体溶液を準備した。
同様に、窒素雰囲気下において、ニオブエトキシド(15.90g)とTEOA(14.92g)とを混合し、50℃で一晩撹拌することで、Nb錯体を作製した。そして、イオン交換水を加えて全量を100mLとすることにより、Nbの金属濃度が0.5MとなるNb錯体溶液を準備した。
【0062】
そして、Ti錯体溶液(4mL)とNb錯体溶液(1mL)およびイオン交換水(5mL)を混合し、TiとNbのモル比を[Ti]:[Nb]=80:20とした水溶液に対し、水熱合成を行った。水熱合成としては、具体的には、テフロン(登録商標)ライナー付きのオートクレーブを用い、250℃で72時間加熱し続けた。こうして水熱合成工程を行った後、析出した赤外線遮蔽材料微粒子を、遠心分離による固液分離により回収した。回収した当該微粒子に対し、エタノールやイオン交換水により複数回洗浄した。そして、60℃で一晩乾燥させ、赤外線遮蔽材料微粒子粉末を得た。
なお、以降に述べる実施例の結果においては、特記が無い限り、上記の条件で作製した試料に関する結果である。
【0063】
ちなみに、250℃以外の条件として、140℃〜250℃の間で10℃ごとに設定(140℃、150℃、・・・)して、同様の試験を行った。また、各温度条件に対し、時間としては3hおよび24h〜72hの間で24時間ごとに設定(3h、24h、48h、72h)して、同様の試験を行った。
【0064】
また、水熱合成工程前の水溶液におけるTiとNbのモル比を[Ti]:[Nb]=90:10〜60:40の間で10ごとに設定(90:10、80:20、・・・)して、同様の試験を行った。
【0065】
(測定)
当該粉末に対し、X線光電子分光分析装置(ULVAC−PHI製 PHI5000VersaProbeII)を用いてXPS測定を行った。
また、透過型電子顕微鏡(TEM,日立ハイテクノロジーズ社製HF−2200)を用いて微粒子形状を観察した。
また、X線回折装置(PANalytical製X’Pert Pro MRD)を用いてXRD測定を行い、結晶構造および格子定数を評価した。
また、エネルギー分散型蛍光X線分析装置を搭載した透過型電子顕微鏡(TEM−EDS,日立ハイテクノロジーズ製 HF−2200、およびNORAN製 VANTAGE)を用いてTEM−EDS点分析を行った。その際、各試料につき6か所の測定を行い、その平均値を採用した。また、同じくエネルギー分散型蛍光X線分析装置を搭載した透過型電子顕微鏡(TEM−EDS,日立ハイテクノロジーズ製 HF−2200、およびNORAN製 VANTAGE)を用いてTEM−EDS面分析を行い、元素分布を示す元素マップを得た。
【0066】
また、当該粉末と当量の不揮発成分を含有する酸性ポリエステル系分散剤の存在下で、Nb−TiOの濃度を4wt%とし、当該粉末をトルエン中に分散させた。その際、当該微粒子に対する解砕処理としてペイントシェーカを用いた。その際、解砕処理時間を1h〜30hの間で変動させた。そして、動的光散乱式粒径分布測定装置(日機装製 UPA150)を用い、当該分散液に対して動的光散乱法による粒度分布測定を行い、微粒子の分散状態を評価した。
また、分光光度計(日立ハイテクノロジーズ製 U-4000)を用い、当該分散液に対して透過スペクトル測定を行い、赤外吸収特性を評価した。それと共に、当該分散液を90℃に加熱してトルエンを除去した後、再び微粒子を乾燥させて粉末を作製した。そして、当該粉末に対してXRD測定を行った。
【0067】
(結果)
まず、上記の試験結果全体を通して見たところ、反応温度が高い、かつ時間が長いほど、赤外線遮蔽材料微粒子を多量に得ることができた。ただ、Nb比率が高くなるほど、赤外線遮蔽材料微粒子の量が少なくなった。これは、Nbの存在により加水分解に伴う反応速度が遅くなっていることに起因するものと考えられる。
【0068】
水溶液の外観としては、当該微粒子(Nb−TiO)の成長が進むにつれ、褐色のゲルから白色ないし青色のゾルへと変化した。また、Nbの金属濃度が高くなるほど、ゾルの青みが増していた。これは、赤色に起因する近赤外領域の波長の光が吸収されていることを示唆している。
【0069】
次に、XPS測定の結果について述べる。測定の結果、粉末内の結晶子においてはTiがTi4+となっており、かつ、NbがNb5+となっていることが明らかとなった。
【0070】
次に、TEM観察の結果について述べる。図3に、水熱合成工程前においてTiとNbのモル比を(a)90:10、(b)80:20、(c)70:30、(d)60:40として仕込んだ水溶液を250℃で72時間水熱合成した後に得られた当該微粒子のTEM像を示す。いずれの条件でも数10nmの微粒子が得られた。また、Nb比率が増加するにつれて、微粒子のサイズが減少した。また、Nb比率が増加するにつれて、方形微粒子の割合が増加する傾向が見られた。
【0071】
次に、XRD測定の結果について述べる。図4に、当該微粒子のXRD回折パターンを示す。いずれの微粒子においてもTiOのアナターゼ相からなる結晶構造を有することが示された。また、準安定相であるアナターゼ相が選択的に形成され、アナターゼ相が単相として形成されていることも示された。
格子定数については、図5にその結果を示す。(a)がa軸の格子定数の結果であり、(b)がc軸の格子定数の結果である。図5を見ると、Nb比率が高くなるほどa軸、c軸共に、格子定数がほぼ線形型に増加した。これはVegard則に従った挙動である。先ほど述べたように、結晶子においてはTiがTi4+となっており、かつ、NbがNb5+となっている。Ti4+のイオン半径は0.061nmであり、Nb5+のイオン半径はそれよりもわずかに大きい0.064nmである。両者のイオン半径が極めて近い数値であることから、上記の結果は、NbがTiサイトに置換固溶していることを示している。
また、結晶子径については、図6にその結果を示す。Nb比率が高くなるほど結晶子径は小さくなっていた。また、本実施例において結晶子径は13nm〜30nmの範囲内であった。
【0072】
次に、TEM−EDS点分析の結果について述べる。その結果、図7に示すように、水熱合成工程前におけるTiとNbのモル比と、最終的に得られた赤外線遮蔽材料微粒子粉末におけるTiとNbのモル比とが、ほぼ一致していることがわかった。つまり、本実施例ならば、原料比が、最終的に得られるNb−TiOの結晶内におけるTiとNbとの組成比に反映されていた。
また、TEM−EDS面分析により、当該微粒子中の元素分布についても観察した。その結果を図8(縮尺:100nm、K線)および図9(縮尺:25nm、K線)に示す。図8および図9に示すように、元素またはイオンレベルで、当該微粒子中にTiとNbが分散していた。
【0073】
次に、動的光散乱法による粒度分布測定の結果について述べる。なお、本結果については、上記の(赤外線遮蔽材料微粒子粉末の製造)における水熱合成時間を72h→24hに変更した試料についての結果である。図10は、ペイントシェーカによる解砕処理時間を3hとしたときの粒度分布測定結果を示す。また、図11は、解砕処理時間に対する体積平均径MvおよびD90を示すグラフ(左側)および表(右側)である。なお、表においてはMv/D90の値も記載している。その結果、トルエンに分散させた際の体積平均径Mvは、XRD測定で得られた結晶子径の1.0倍〜2.2倍の範囲に収まっていた。また、Mv/D90は0.70〜1.00の範囲に収まっていた。つまり、本実施例の試料においては、13nm〜30nmというナノレベルの微小な結晶子同士が平均で2個程度しか互いに固着しておらず、驚くべき分散性を備えていた。
また、図12は、試料をトルエンに分散させかつ加水分解時間を24hとして、解砕処理時間(1h、3h)を変動させた場合の動的光散乱法による粒径測定の結果を示すグラフ(a)および表(b)である。その結果、Mv/D90は0.70〜1.00の範囲に収まっていた。さらに、D10/Mvが0.80〜1.00の範囲に留まり、D10/D90は0.70〜1.00の範囲に留まっていた。つまり、本来ならば大きい値となるはずのD90や小さい値となるはずのD10が、体積平均径Mvに対して極めて近い値を示しており、図10図12の結果を加味すると、本実施例における微粒子は、凝集度合いが著しく小さく、かつ、単分散ないしそれに近い状態となっていることがわかった。
【0074】
次に、当該分散液に対して透過スペクトル測定を行った結果について述べる。なお、本結果については、上記の動的光散乱法による粒度分布測定を行った試料に対して透過スペクトル測定が行われた結果である。図13は、解砕処理時間に応じて透過スペクトルが変化する様子を示す。解砕処理時間が1h〜3h(特に3h)の場合、可視光領域の透過性と赤外領域の吸収を両立することができていた。その一方、解砕処理時間が長くなりすぎると、可視光領域の透過性は向上するものの、赤外領域の吸収能が劣化することがわかった。これは、準安定相のアナターゼ相が、長時間にわたる解砕処理により非晶質化してしまうことに起因すると推察される。
一方、各解砕処理時間を経た各分散液を90℃に加熱してトルエンを除去した後、再び微粒子を乾燥させて粉末を作製した。そして、当該粉末に対してXRD測定を行った。その結果を図14に示す。図14に示すように、解砕処理時間が長くなればなるほどアナターゼ相を示す回折ピークが小さくなっていた。この結果からも、準安定相のアナターゼ相が、長時間にわたる解砕処理により非晶質化してしまったことが伺える。
上記の透過スペクトル測定およびXRD測定を鑑みると、赤外線遮蔽材料微粒子に対する解砕処理時間を、波長700nm〜2600nmの領域の光が当該微粒子を透過する際の透過率の最高値が90%以下となるように設定するのが好ましい。その結果、解砕処理時間を10時間未満とするのが好ましい。
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