【課題】炭素数8以上のペルフルオロアルキル基を含有せず、生体蓄積性や環境適応性の点で問題となるPFOSまたはPFOAを生成する懸念がない化学構造でありながら、優れた撥水・撥油性を付与することが可能であり、多種多様な用途に適用可能性を有するフッ素系シランカップリング剤として有用な、新規な含フッ素シラン化合物を提供する。
【背景技術】
【0002】
従来から、有機材料と無機材料の界面においてその接着性を改善するため、種々のシラン化合物がシランカップリング剤として使用されている。また、シランカップリング剤は、有機材料あるいは無機材料の表面処理剤としても利用されており、材料表面に種々の機能を付与することができることが知られている。
【0003】
その中でも、フッ素系シランカップリング剤は、滑り性・剥離性・撥水性・撥油性などの付与剤として様々な分野で使用され、とくに炭素数が8以上のペルフルオロアルキル基を含有するものが利用されてきた(例えば、特許文献1,2を参照)。
【0004】
ところが、近年、炭素数が8以上のペルフルオロアルキル基を有する化合物は分解することにより、毒性および環境・生体蓄積性が高いペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)またはペルフルオロクタン酸(PFOA)を生成し得ることが明らかとなったため、その使用が制限されつつあるという課題があった。そのため、市場では、構造上、環境および生体への蓄積性が高いPFOSまたはPFOAを生成し得ない、炭素数6以下で可能な限り短鎖長のペルフルオロアルキル基の構造の材料が望まれていた。
【0005】
そこで、単純にペルフルオロアルキル基の炭素数を短くした、短鎖長の構造のシラン化合物が提案されている(例えば、非特許文献1,2を参照)。このような短鎖長構造のシラン化合物によれば、分解した際にもPFOS又はPFOAを生成しないため、環境への影響の懸念がない。
【0006】
しかしながら、単純な短鎖長構造のシラン化合物を用いたフッ素系シランカップリング剤では、滑り性・剥離性・撥水性などの特性面において、炭素数が8以上のペルフルオロアルキル基を含有する、従来のフッ素系シランカップリング剤に匹敵するものが得られていないという課題があった。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を適用した一実施形態である含フッ素シラン化合物について、その製造方法及びフッ素系シランカップリング剤としての利用方法とともに詳細に説明する。
【0013】
<含フッ素シラン化合物>
先ず、本実施形態の含フッ素シラン化合物の構成について説明する。
本実施形態の含フッ素シラン化合物は、分子内に含窒素ペルフルオロアルキル基とアルコキシシリル基とをそれぞれ1以上有する構造であれば、特に限定されるものではない。
本実施形態の含フッ素シラン化合物の構成としては、具体的には、下記一般式(1)で表すことができる。
【0015】
ここで、上記式(1)中、Rf
1、Rf
2及びRf
3は、それぞれ同一または互いに異なる炭素数1〜6のペルフルオロアルキレン基であって、直鎖状又は分枝状であってもよい。Yは、酸素原子、窒素原子又はCF
2基である。
【0016】
また、上記式(1)中、Xは2価の有機基であり、炭素数2〜10の炭化水素基であって、エーテル結合、エステル結合、アミド結合およびウレタン結合から選択される1種以上の結合を含んでいてもよい。
さらに、上記式(1)中、R
1は低級アルキル基またはフェニル基、Zは加水分解性基である(ただし、aは0〜3の整数)。
【0017】
ここで、上記式(1)中の含窒素ペルフルオロアルキル基としては、より具体的には、下記式(2)〜(13)で示される、ペルフルオロ複素環として、ペルフルオロピペリジン、ペルフルオロピロリジン、ペルフルオロピペラジン、ペルフルオロモルホリン、ペルフルオロヘキサメチレンイミンを有する構造等を挙げることができる。
【0030】
また、上記式(1)中のXとしては、下記式(14)〜(17)で示される構造を挙げることができる。なお、下記式(14)はエーテル結合、下記式(15)はエステル結合、下記式(16)はアミド結合、下記式(17)はウレタン結合を含む例を示している。
【0035】
ここで、上記式(14)〜(17)中、R
2およびR
3は炭素数が0から10の炭化水素基、R
4は水素原子または炭素数1から6の炭化水素基である。
【0036】
また、上記式(1)中、R
1は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の低級アルキル基またはフェニル基であるが、これらの中でもメチル基とすることがより好ましい。
【0037】
また、上記式(1)中、Zは、加水分解されてSi−O−Si結合を形成可能な加水分解性基であれば特に限定されるものではない。このような加水分解性基としては、具体的には、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などのアルコキシ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基などのハロゲン基、フェノキシ基、ナフトキシ基などのアリールオキシ基、ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基などのアラルキルオキシ基、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、バレリルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基などのアシルオキシ基等が挙げられる。これらの中でも、メトキシ基、エトキシ基、クロロ基を適用することが好ましい。
【0038】
ここで、上記式(1)で表されるペルフルオロ複素環を有する含フッ素シラン化合物の具体例としては、例えば、下記式(18)〜(80)で表される構造が挙げられる。
なお、下記式(18)〜(80)中、Rはメチル基またはエチル基である。
【0102】
上述したように、本実施形態の含フッ素シラン化合物によれば、分子内に含窒素ペルフルオロアルキル基とアルコキシシリル基とをそれぞれ1以上有する構造となっている。より具体的には、窒素原子に炭素数が6以下の短鎖長のペルフルオロアルキル基が複数結合した含窒素ペルフルオロアルキル基を有しており、分子内のフッ素含有率が高いため、優れた撥水・撥油性を付与することができる。一方で、分子内に炭素数8以上のペルフルオロアルキル基を含有していないため、分解された場合であっても生体蓄積性や環境適応性の点で問題となるPFOSまたはPFOAを生成する懸念がない化学構造となっている。このように、本実施形態の含フッ素シラン化合物は優れた特性を備えた新規な化合物であり、フッ素系シランカップリング剤として有用である。すなわち、本実施形態の含フッ素シラン化合物は、優れた撥水撥油性と環境適応性とを両立するように設計したものであり、従来のフッ素系シランカップリング剤を構成する化合物からは容易に想到できるものではない。
【0103】
また、本実施形態の含フッ素シラン化合物は、含窒素ペルフルオロアルキル基としてペルフルオロ複素環構造を有する。このペルフルオロ複素環は、環状構造を有するため、環構造同士のパッキング効果により、短鎖長構造のペルフルオロアルキル基しか有しないにもかかわらず、炭素数の短い直鎖状ペルフルオロアルキル構造を有する含フッ素シラン化合物と比べ、高い撥水撥油性、防汚性、耐指紋性、離型性、耐湿性、耐水性、耐熱性などのフッ素基に起因する高い特性を付与することが可能となる。
【0104】
<含フッ素シラン化合物の製造方法>
次に、本実施形態の含フッ素シラン化合物の製造方法の一例について説明する。
本実施形態の含フッ素シラン化合物の製造方法は、下記一般式(81)で示される含窒素ペルフルオロアルキル基を有するカルボン酸ハロゲン化物をアルコールに還元した後、金属触媒の存在下でイソシアネートと反応させることによって得られる。
【0106】
なお、上記式(81)中、Rf
1、Rf
2及びRf
3は、それぞれ同一または互いに異なる炭素数1〜6のペルフルオロアルキレン基であって、直鎖状又は分枝状であってもよい。Yは、酸素原子、窒素原子又はCF
2基である。さらに、Aは、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素からなる群から選択されるいずれか1のハロゲン原子である。
【0107】
上記式(81)で示される含窒素ペルフルオロアルキル基を有するカルボン酸ハロゲン化物は、例えば、対応するカルボン酸エステル又はハロゲン化物をフッ化水素中で電解フッ素化することにより得ることができる。また、上記Yがフッ素原子以外のハロゲン原子であるものを用いる場合には、例えば、前記電解フッ素化により得られたペルフルオロアルキル基を有するカルボン酸フルオリドを加水分解処理して、対応するカルボン酸を生成させた後、適当なハロゲン化剤(例えば、塩化チオニル、塩化オキサリル、塩化ホスホリル、塩化スルフリル、三塩化リン、五塩化リン、三臭化リン、五臭化リン、臭化水素、ヨウ化水素等)を反応させて、対応するカルボン酸ハロゲン化物に誘導することにより得ることができる。
【0108】
以下、上記一般式(1)において、Xがエーテル結合、アミド結合およびウレタン結合を有する化合物の場合について、それぞれ説明する。
【0109】
「Xがウレタン結合を有する化合物の場合」
この場合には、例えば、以下の2段階の反応によって合成することが可能である。
【0110】
(カルボン酸ハロゲン化物の還元反応)
上記式(81)に示すカルボン酸ハロゲン化物を、例えば、水素化アルミニウムリチウム(LiAlH
4)や水素化ホウ素ナトリウム(NaBH
4)等に代表される還元剤を溶解または分散させた有機溶媒中に滴下して、還元反応させる。この還元反応によって、下記式(82)に示すアルコールを得る。
【0112】
なお、上記式(82)中、Rf
1、Rf
2及びRf
3は、それぞれ同一または互いに異なる炭素数1〜6のペルフルオロアルキレン基であって、直鎖状又は分枝状であってもよい。Yは、酸素原子、窒素原子又はCF
2基である。
【0113】
(イソシアネートとの反応)
上述の還元反応により得られた上記式(82)に示すアルコールと、イソシアネート基を有するシランカップリング剤であるトリアルコキシシランとを有機溶媒中で反応させることにより、上記式(1)に示す含フッ素シラン化合物が得られる。
【0114】
なお、イソシアネート基を有するシランカップリング剤としては、トリエトキシシリルプロピルイソシアネート、トリメトキシシリルプロピルイソシアネート等が挙げられる。
【0115】
また、上記反応では、反応を促進させるために触媒を添加してもよい。具体的には、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、オクチル酸錫、オクチル酸ビスマス、デカン酸ビスマス、ナフテン酸鉛、酢酸カリウムなどの金属触媒、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリエチレンジアミン、ジアザビシクロウンデセンなどのアミン系触媒、トリアルキルホスフィン触媒等が挙げられる。
【0116】
「Xがエーテル結合を有する化合物の場合」
(アリルエーテル体の生成)
この場合には、先ず、上記ウレタン結合を有する化合物の場合と同様に、フルオロアルキル基を有するカルボン酸ハロゲン化物を還元して得られる上記式(82)に示すアルコールと、ハロゲン化アリル(例えば、臭化アリル、塩化アリル等)とを反応させることにより、下記一般式(83)に示すアリルエーテル体を得る。
【0118】
(ヒドロシリル化反応)
次に、得られたアリルエーテル体とシラン化合物(例えば、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリクロロシラン等)とを反応(白金触媒を用いるヒドロシリル化反応)させることにより、上記式(1)に示す含フッ素シラン化合物が得られる。
【0119】
「Xがアミド結合を有する化合物の場合」
(アリルアミド体の生成)
この場合には、先ず、上記式(81)で示される含窒素ペルフルオロアルキル基を有するカルボン酸ハロゲン化物とアリルアミン(例えば、アリルアミン、N−メチルアリルアミン等)とを反応させることにより、下記一般式(84)に示すアリルアミド体を得る。なお、下記一般式(84)中に示されるRは、(Rは水素原子または炭素数1から6の炭化水素基等)である。
【0121】
(ヒドロシリル化反応)
次に、得られたアリルアミド体とシラン化合物(例えば、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリクロロシラン等)とを反応(白金触媒を用いるヒドロシリル化反応)させることにより、上記式(1)に示す含フッ素シラン化合物が得られる。
【0122】
<フッ素系シランカップリング剤としての利用方法>
次に、含フッ素シラン化合物のフッ素系シランカップリング剤としての利用方法について説明する。
本実施形態の含フッ素シラン化合物はフッ素系シランカップリング剤として、そのまま、または他の成分として媒体などで希釈して用いることが可能である。
【0123】
他の成分として用いられる希釈媒体としては有機溶媒および水などの液状媒体が挙げられる。希釈媒体中の含フッ素シラン化合物の濃度としては、具体的には、例えば、0、01〜100質量%であってもよく、0、01〜50質量%の範囲であることが好ましい。
【0124】
本実施形態のフッ素系シランカップリング剤に適用可能な有機溶媒は、特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒、α,α,α−トリフルオロトルエン、1,3−ビストリフルオロメチルベンゼン、1,4−ビストリフルオロメチルベンゼン、ペルフルオロオクタン、ペルフルオロヘキサン、HCFC−225、HFC−365、メチルペルフルオロプロピルエーテル、メチルペルフルオロブチルエーテル、エチルペルフルオロブチルエーテル、ヘキサフルオロイソプロパノールなどのフッ素系溶媒等を用いることができる。
【0125】
さらに、フッ素系シランカップリング剤には、上述した含フッ素シラン化合物以外に、他の成分として、酸やアルカリ(例えば、酸としては塩酸、硫酸、硝酸、アルカリとしてはアンモニア等)が含まれていてもよい。
【0126】
本実施形態のフッ素系シランカップリング剤は、発泡性、防汚性、耐指紋性、撥水撥油性、離型性、耐湿性、耐水性、潤滑性、耐熱性等の各種特性を付与するコーティング剤や、耐熱性付与する塗料の添加剤等の表面処理剤、銀ペーストや金属ナノワイヤなどの電子部品・回路のマイグレーション防止剤、プラスチック等の合成原料程などの用途に好適に使用することができる。
【0127】
特に、本実施形態のフッ素系シランカップリング剤としては、含フッ素シラン化合物が含窒素ペルフルオロアルキル基としてペルフルオロ複素環構造を有する。このペルフルオロ複素環は、環状構造を有するため、環構造同士のパッキング効果により、短鎖長構造のペルフルオロアルキル基しか有しないにもかかわらず、シランカップリング剤として用いた場合には、炭素数の短い直鎖状ペルフルオロアルキル構造を有する含フッ素シランカップリング剤と比べ、高い撥水撥油性などの上述したフッ素基に起因する高い特性を付与することが可能となる。
【0128】
なお、上記用途に用いる際、本実施形態のフッ素系シランカップリング剤は、1種で使用してもよいし、2種以上で併用してもよい。さらには、フッ素系シランカップリング剤以外の成分との混合物として用いてもよい。
【0129】
以上説明したように、本実施形態の含フッ素シラン化合物は、炭素数8以上のペルフルオロアルキル基を含有せず、生体蓄積性や環境適応性の点で問題となるPFOSまたはPFOAを生成する懸念がない化学構造でありながら、優れた撥水・撥油性を付与することが可能であり、多種多様な用途に適用可能性を有するフッ素系シランカップリング剤として有用である。
【0130】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【実施例】
【0131】
以下、実施例によって本発明の効果をさらに詳細に説明する。なお、本発明は実施例によって、なんら限定されるものではない。
【0132】
(実施例1)
滴下ロートを備えた三口フラスコに、水素化ホウ素ナトリウム(18、6g)(東京化成株式会社製)とテトラヒドロフラン(400ml)とを投入した。滴下ロートに、O(CH(CH
3)CH
2)
2NCH
2CO
2CH
3の電解フッ素化によって得られる、O(CF(CF
3)CF
2)
2NCF
2COF(350.0g、純度60%)を入れ、室温で徐々に滴下した。
【0133】
滴下終了後、室温で1時間攪拌した後、水、塩酸水溶液で反応液をクエンチし、クロロホルムを加えて分液した。得られたクロロホルム層を塩酸水溶液および水による洗浄を行い、硫酸マグネシウムで乾燥した後、得られた溶液をロータリーエバポレーターにより濃縮した。さらに、得られた溶液を減圧蒸留することでアルコール体(131、4g、収率65%)を得た。
【0134】
次に、得られたアルコール体(100、0g)と、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(50、2g)(東京化成株式会社製)、アセトニトリル(230ml)、ジブチル錫ジラウレート(3滴)(和光純薬株式会社製)を混合し、70度で4時間攪拌した。得られた溶液をエバポレータで濃縮し、減圧下(2Torr)、140度で乾燥させることにより、下記一般式(85)で示される含フッ素シラン化合物(130、7g、収率98%)を得た。
【0135】
【化86】
【0136】
(実施例2)
滴下ロートを備えた三口フラスコに、実施例1と同様にして得られるアルコール体(150、0g)と、t−ブタノール(150、0g)(東京化成株式会社製)、カリウムt−ブトキシド(53、2g)(和光純薬株式会社製)を投入した。滴下ロートに臭化アリル(88、3g)(和光純薬株式会社製)を入れ、0度で徐々に滴下した。
【0137】
滴下終了後、室温で1時間攪拌した。反応液を濾過後、得られた濾液にクロロホルムを投入し、水で洗浄を行い、硫酸マグネシウムで乾燥した後、得られた溶液をロータリーエバポレーターにより濃縮した。さらに、得られた溶液を減圧蒸留することでアリルエーテル(84、0g、収率51%)体を得た。
【0138】
次に得られたアリルエーテル体(20、0g)とトルエン(50ml)、1、3−ジビニル−1、1、3、3−テトラメチルジシロキサン白金錯体キシレン溶液(0、3ml)(シグマアルドリッチ社製)、トリメトキシシラン(6、5g)(東京化成株式会社製)を混合し、60度で4時間反応させた。得られた溶液をエバポレータで濃縮し、減圧蒸留することで、下記一般式(86)で示される含フッ素シラン化合物(15、2g、収率60%)を得た。
【0139】
【化87】
【0140】
(比較例1)
下記一般式(87)で示される含フッ素シラン化合物(東京化成社製、「トリメトキシ(1H、1H、2H、2H−ヘプタデカフルオロデシル)シラン」)を比較例1とした。
【0141】
【化88】
【0142】
(比較例2)
下記一般式(88)で示される含フッ素シラン化合物(東京化成社製、「トリエトキシ(1H、1H、2H、2H−ノナフルオロヘキシル)シラン」)を比較例2とした。
【0143】
【化89】
【0144】
<検証試験>
「シランカップリング剤としての撥水性評価」
上記実施例1及び実施例2にて合成した含フッ素シラン化合物のシランカップリング剤としての撥水性評価を行うため、上記比較例1〜2とともに水を付着させた際の接触角測定を行った。なお、被処理物にはスライドガラスを用い、上記含フッ素シラン化合物をAK−225(旭硝子株式会社製)に2質量%溶解させたものに浸漬塗布し、80度で1時間乾燥させることにより、評価部材を得た。また、接触角測定は、協和界面科学社製、CA−A型接触角計を用い、水の液滴量は20μlとし、表面処理部材上の任意の5点で接触角を測定し、その平均値を算出した。評価結果を下記表1に示す。
【0145】
「油性ペンのはじき性評価」
上記実施例1及び2にて合成した含フッ素シラン化合物のシランカップリング剤としての油性ペン(内田洋行社製、「マジックインキ」)のはじき性評価を行うため、上記比較例1〜2とともに油性ペンを付着させた際のはじき性を評価した。なお、評価部材は上記撥水性評価部材と同様にして調整し、油性ペンを用いて部材表面に長さ1cmの直線を書き、そのはじきやすさを以下の基準に従って目視により評価した。評価結果を下記表1に示す。
○:はじきが見られる
△:部分的にはじく
×:全くはじかない
【0146】
【表1】
【0147】
表1に示すように、本発明の含フッ素シラン化合物(実施例1,2)は、炭素数8以上のペルフルオロアルキル基を含有しないにもかかわらず、それと同等以上の水の接触角および油性ペンのはじき性を示していることから、優れた特性(撥水撥油性)を有していることがわかった。また、炭素数が短い比較例2よりも特性が優れていることが確認できた。