(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-197265(P2015-197265A)
(43)【公開日】2015年11月9日
(54)【発明の名称】貯湯式給湯機
(51)【国際特許分類】
F24H 1/00 20060101AFI20151013BHJP
F24D 17/00 20060101ALI20151013BHJP
【FI】
F24H1/00 602X
F24D17/00 L
F24H1/00 602V
F24D17/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-76271(P2014-76271)
(22)【出願日】2014年4月2日
(71)【出願人】
【識別番号】000000538
【氏名又は名称】株式会社コロナ
(72)【発明者】
【氏名】米山 正敏
(72)【発明者】
【氏名】本間 誠
(72)【発明者】
【氏名】佐山 和也
(72)【発明者】
【氏名】諸橋 信人
【テーマコード(参考)】
3L024
3L073
【Fターム(参考)】
3L024CC10
3L024DD03
3L024DD16
3L024DD21
3L024DD46
3L024FF18
3L024GG18
3L024HH03
3L024HH14
3L073AA07
3L073AA15
3L073AA18
3L073AB15
3L073AB16
3L073AC03
3L073AD05
3L073AD06
3L073AE09
(57)【要約】
【課題】従来の高速湯張り制御では、水位検出を省略する等をして湯張り開始から湯張り完了までの時間を短縮していたが、高速湯張りによる浴槽17への時間あたりの流量は、通常湯張りによる浴槽への時間あたりの流量と変わらないため、湯張り設定量が多くなると全体の湯張り時間に対する時間短縮の割合は小さくなってしまっていた。
【解決手段】高速湯張りの時に通常の湯張り経路の他に給湯経路の給湯栓10からも給湯側の湯張りができるようにしたことで浴槽17への時間当たりの流量が増加し、湯張りにかかる時間を短縮することができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
湯水を貯湯する貯湯タンクと、前記貯湯タンク上部から湯水を取り出す出湯管と、前記貯湯タンクに給水する給水管と、前記出湯管からの高温水と前記給水管からの給水とを混合する給湯ミキシング弁と、前記給湯ミキシング弁で混合された湯水が流れる給湯管と、前記給湯管を流れる湯水の流量を検出する給湯フローセンサと、前記給湯管を開閉する給湯栓と、前記出湯管からの高温水と前記給水管からの給水とを混合する風呂ミキシング弁と、前記風呂ミキシング弁で混合された湯水が流れる湯張り管と、前記湯張り管を流れる湯水の流量を検出する湯張りフローセンサと、前記湯張り管の開閉を行う電磁弁とを備え、更に前記給湯フローセンサと前記湯張りフローセンサの合計積算値を演算し、前記電磁弁の開閉を行う制御装置と、前記制御装置と通信可能に接続されたリモコンと、前記リモコンに設けた前記給湯管からの湯水と前記湯張り管からの湯水を同時に浴槽に供給する高速湯張りスイッチと、前記リモコンに設けたユーザーに所定の操作を促すスピーカーとを備えた貯湯式給湯機であって、前記給湯管からの湯水と前記湯張り管からの湯水を浴槽へ同時出湯する高速湯張りの場合には、前記制御装置で演算した前記合計積算値が浴槽の湯張り設定量に達した時に、前記制御装置が前記電磁弁を閉じると共に、前記スピーカーを介して前記給湯栓を閉じるように報知することを特徴とした貯湯式給湯機。
【請求項2】
前記給湯管からの湯水と前記湯張り管らの湯水を浴槽へ同時出湯している高速湯張りにおいて、前記給湯ミキシング弁で混合目標温度である給湯設定温度が前記風呂ミキシング弁で混合目標温度である風呂設定温度と異なる場合には前記給湯設定温度を前記風呂設定温度になるように前記給湯ミキシング弁の開度を変更する温度変更手段を前記制御装置に設けたことを特徴とする請求項1記載の貯湯式給湯機。
【請求項3】
前記給湯管からの湯水と前記湯張り管らの湯水を浴槽へ同時出湯している高速湯張りにおいて、前記制御装置で演算した前記合計積算値が前記湯張り設定量よりも所定の値だけ少ない値に達した時に前記給湯栓を閉めるように前記スピーカーで報知することを特徴とした請求項1又は2記載の貯湯式給湯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、浴槽への湯張りを行う貯湯式給湯機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種の貯湯式給湯機は、水道から供給した水を加熱手段で温め、温めた湯水を貯湯タンク等に蓄え、使用目的に応じて貯湯タンク内の湯水を給湯していた。
【0003】
従来、貯湯式給湯機の風呂湯張り動作において、湯張り時間を短縮させたい場合は、前回までに湯張りでかかった時間を学習して、湯張り動作を効率化したり、残り湯チェックの動作を省略することにより、風呂湯張り動作開始から風呂湯張り完了までの時間を短縮させる高速湯張り動作があった。
【0004】
例えば、浴槽内の水位検出手段で湯張り動作の途中で浴槽内の水位を検出し、水位に基づいて注湯する確認注湯モードと、湯張り動作の途中で水位検出をしない高速注湯モードを有し、ユーザーが浴槽に残湯水がないことを認識している場合は、高速注湯モードで高速湯張りを行えるものがあった(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11―294847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1のようなものでは、水位検出にかかる時間は短縮できるため湯張りの時間は短くなるが、高速湯張り制御では出湯量そのものは通常制御時の出湯量と同じであるから、風呂湯張り量が増加するほど、全体の湯張り時間に対する時間短縮された割合は小さくなってしまっていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記課題を解決するため、湯水を貯湯する貯湯タンクと、前記貯湯タンク上部から湯水を取り出す出湯管と、前記貯湯タンクに給水する給水管と、前記出湯管からの高温水と前記給水管からの給水とを混合する給湯ミキシング弁と、前記給湯ミキシング弁で混合された湯水が流れる給湯管と、前記給湯管を流れる湯水の流量を検出する給湯フローセンサと、前記給湯管を開閉する給湯栓と、前記出湯管からの高温水と前記給水管からの給水とを混合する風呂ミキシング弁と、前記風呂ミキシング弁で混合された湯水が流れる湯張り管と、前記湯張り管を流れる湯水の流量を検出する湯張りフローセンサと、前記湯張り管の開閉を行う電磁弁とを備え、更に前記給湯フローセンサと前記湯張りフローセンサの合計積算値を演算し、前記電磁弁の開閉を行う制御装置と、前記制御装置と通信可能に接続されたリモコンと、前記リモコンに設けた前記給湯管からの湯水と前記湯張り管からの湯水を同時に浴槽に供給する高速湯張りスイッチと、前記リモコンに設けたユーザーに所定の操作を促すスピーカーを備えた貯湯式給湯機であって、前記給湯管からの湯水と前記湯張り管からの湯水を浴槽へ同時出湯する高速湯張りの場合には、前記制御装置で演算した合計積算値が浴槽の湯張り設定量に達した時に、前記制御装置が前記電磁弁を閉じると共に、前記スピーカーを介して前記給湯栓を閉じるように報知する。
【0008】
また、前記給湯管からの湯水と前記湯張り管らの湯水を浴槽へ同時出湯している高速湯張りにおいて、前記給湯ミキシング弁で混合目標温度である給湯設定温度が前記風呂ミキシング弁で混合目標温度である風呂設定温度と異なる場合には前記給湯設定温度を前記風呂設定温度になるように前記給湯ミキシング弁の開度を変更する温度変更手段を前記制御装置に設けた。
【0009】
また、前記給湯管からの湯水と前記湯張り管らの湯水を浴槽へ同時出湯している高速湯張りにおいて、前記制御装置で演算した前記合計積算値が前記湯張り設定量よりも所定の値だけ少ない値に達した時に前記給湯栓を閉めるように前記スピーカーで報知する。
【発明の効果】
【0010】
このように本発明によれば、高速湯張りの時に通常の湯張り経路の他に給湯経路の給湯栓からも湯張りができるようにしたことで浴槽への時間当たりの流量が増加し、湯張りにかかる時間を短縮することができると共に、制御装置で湯張り量の合計積算値を演算しているため湯張り設定量になるように湯張りすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1実施形態の貯湯式給湯機の概略構成図
【
図2】本発明の第1実施形態を説明するためのフローチャート図
【
図3】本発明の第2実施形態を説明するためのフローチャート図
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の貯湯式給湯機の第一実施形態を
図1に基づいて説明する。
1は湯水を貯湯する貯湯タンク、2は貯湯タンク1に給水する給水管、3は貯湯タンク1下部からくみ上げた水を加熱するヒートポンプ式加熱手段、4は貯湯タンク1上部に接続された出湯管である。
【0013】
5は給水管2の途中で分岐する給湯用給水バイパス管、6は貯湯タンク1から取り出した高温水と給湯用給水バイパス管5の給水を適宜の比率で混合して給湯設定温度に調整する給湯ミキシング弁、7は給湯ミキシング弁6で混合された湯水が流れる給湯管、8は給湯管7を流れる流量を検出する給湯フローセンサ、9は給湯管6を流れる湯水の温度を検出する給湯サーミスタ、10はユーザーが開閉を行うシャワー等の給湯栓である。
【0014】
11は給水管2の途中で分岐する風呂用給水バイパス管、12は取り出した貯湯タンク1の高温水と風呂用給水バイパス管11の給水を適宜の比率で混合して風呂設定温度に調整する風呂ミキシング弁、13は風呂ミキシング弁12で混合された湯水が流れる湯張り管、14は湯張り管13を流れる流量を検出する湯張りフローセンサ、15は湯張り管13の開閉を行う電磁弁、16は湯張り管13を流れる湯水の温度を検出する湯張りサーミスタ、17は浴槽である。
【0015】
18は風呂の追い焚き経路である風呂配管、19は風呂往き温度を検出する風呂往きサーミスタ、20は貯湯タンク1上部の湯水と熱交換するために設けられた風呂熱交換器、21は追い焚き配管18の途中で風呂熱交換器20を迂回するように流路の切り替えを行う風呂三方弁である。
【0016】
22はマイコン等からなる、各センサの出力に基づいて所定の演算を行い機器の運転を制御すると共に電磁弁15の開閉制御を行う制御装置、23は給湯ミキシング弁の開度を変更する温度変更手段、24はユーザーが操作することで、給湯及び風呂の設定温度である給湯設定温度と風呂設定温度、湯張り量の設定湯量である湯張り設定量を適宜変更できる操作部を有し、操作した内容を制御装置16に通信可能に接続されたリモコン、25は風呂湯張りスイッチ、26は風呂湯張りスイッチよりも早く湯張りを完了させる事ができる高速湯張りスイッチ、27は制御装置22で演算した結果に基づき、湯張り完了報告やユーザーに所定の動作を促すことを報知するスピーカーである。
【0017】
次に、沸き上げ運転について説明する。
沸き上げ要求があると貯湯タンク1とヒートポンプ式加熱手段3を繋ぐ配管の途中にある図示しない循環ポンプが駆動して、貯湯タンク1内下部から水をくみ上げ、ヒートポンプ式加熱手段3で温めて貯湯タンク1上部に戻す動作を続ける事により徐々に貯湯タンク1内の水が高温水へと沸き上げられる。
【0018】
次に、給湯動作ついて説明する。
給湯栓10が開かれると給水管2から給水され、貯湯タンク1下部に流入すると共に、給湯用給水バイパス管5を通り、貯湯タンク1上部から押し出された高温水と給湯用給水バイパス管5の給水が給湯ミキシング弁7で混ぜ合わされ、給湯設定温度と給湯サーミスタ9で検出された温度が同じなるように調整された湯水が給湯栓10から給湯される。
【0019】
また、湯張り動作について説明する。
リモコン24の風呂湯張りスイッチ24が押されると制御装置22が電磁弁15を開状態にして、給水管2から給水を供給し、貯湯タンク1下部に流入すると共に、風呂用給水バイパス管11を通り、貯湯タンク1上部から押し出された高温水と風呂用給水バイパス管11の給水が湯張りミキシング弁12で混ぜ合わされ、風呂設定温度と湯張りサーミスタ16で検出された温度が同じになるように調整された湯水が風呂三方弁21で風呂熱交換器20を迂回して浴槽17に流入されることで湯張りが開始される。そして、湯張りフローセンサ14で流れた流量を検出して、流れた流量の合計積算値が湯張り設定量分流れたら制御装置22が電磁弁15を閉状態にすることで湯張りを完了する。
【0020】
ここで、給湯動作と湯張り動作を同時に行う高速湯張りについて
図2のフローチャート図に基づいて説明する。
【0021】
高速湯張りスイッチ26が押されると(S1)、給湯動作が行われていないことを確認し(S2)、もし給湯動作が行われている場合はスピーカー27で給湯栓10を閉じるように報知し(S3)、給湯が行われてない場合は、制御装置22が電磁弁15を開状態にすることで(S4)、風呂側の湯張り動作が開始される。
【0022】
そして、温度変更手段23が給湯設定温度を風呂設定温度と同じになるように給湯ミキシング弁6の開度を変えて温度を変更し(S5)、制御装置22は浴槽17の給湯栓10を開くようにリモコン24に設けられたスピーカー27で報知し(S6)、ユーザーが給湯栓10を開き、直接浴槽17に給湯することで、風呂設定温度に変更された温度の湯水が給湯栓10から浴槽17に湯張りする給湯側の湯張り動作が開始される。これにより手動の給湯側の湯張り動作と自動の風呂側の湯張り動作を同時に行う高速湯張りを開始する。
【0023】
制御装置22が給湯流量を検出する給湯フローセンサ8と湯張り流量を検出する湯張りフローセンサ14との流量の合計積算値が湯張り設定量に達すると(S7)、給湯栓10を閉じるように報知して給湯側の湯張り動作の停止を促すと共に電磁弁15を閉状態に切り替えることで風呂側の湯張り動作を終了する(S8)。そして、報知を受けたユーザーは給湯栓10を閉じて給湯側の湯張り動作を停止し、制御装置22が給湯設定温度を元に戻すことで(S9)、高速湯張りを完了する。
【0024】
このように、給湯側の湯張り動作と風呂側の湯張り動作の二つで湯張りを行うので浴槽17への時間あたりの流量そのものが通常の湯張りよりもあがるので、一つの経路で高速湯張りをしたときよりも早く湯張りを完了することができる。また浴槽17に備えられている給湯栓10はシャワーや蛇口を利用しているので、タンクユニットや浴槽17に余計な施工をする必要がないので、追加部品によるコストアップがなく簡単に変更することができる。
【0025】
次に、
図3のフローチャート図に基づいて第2実施形態について説明する。ここで、第1実施形態と同一のものは同一の符号を付してその説明を省略する。
【0026】
高速湯張りスイッチ25が押されると(S10)、給湯動作が行われていないことを確認し(S11)、もし給湯動作が行われている場合はスピーカー27で給湯栓10を閉じるように報知し(S12)、給湯が行われてない場合は、制御装置22が電磁弁15を開状態にすることで(S13)、風呂側の湯張り動作が開始される。
【0027】
そして、温度変更手段23が給湯設定温度を風呂設定温度と同じになるように給湯ミキシング弁6の開度を変えて温度を変更し(S14)、制御装置22は浴槽17の給湯栓10を開くようにリモコン24に設けられたスピーカー27で報知し(S15)、ユーザーが給湯栓10を開き、直接浴槽17に給湯することで、風呂設定温度に変更された温度の湯水が給湯栓10から浴槽17に湯張りする給湯側の湯張り動作が開始される。これにより手動の給湯側の湯張り動作と自動の風呂側の湯張り動作を同時に行う高速湯張りを開始する。
【0028】
制御装置22が給湯流量を検出する給湯フローセンサ8と湯張り流量を検出する湯張りフローセンサ14との流量の合計積算値が湯張り設定量よりも所定の値だけ少ない値に達すると(ここでは湯張り設定量180L―20L)、湯張りできたことを検知すると(S16)、ユーザーに給湯栓10を閉じて、給湯側の湯張り動作を停止させるようにスピーカー27で報知する(S17)。その後、フローセンサ8と湯張りフローセンサ14で検出した合計積算値が湯張り設定量が等しくなると(S18)、制御装置22が電磁弁15を閉じ、湯張り設定量の位置で風呂側の湯張り動作を停止させ(S19)、制御装置22が給湯設定温度を元に戻すことで(S20)、高速湯張りを完了する。
【0029】
このように、湯張りが完了する前に給湯側の湯張りである給湯栓10を閉じて、風呂側の湯張りだけで湯張りを行い、湯張り完了と同時に制御装置22が電磁弁15を閉じることで、湯張り完了した後にユーザーが給湯栓10を閉めるまでの時間分の湯張り設定量の増加を解消することができる。
【0030】
なお、本発明は第1及び第2実施形態に限定されるものではなく、要旨を変更しない範囲で改変する事を妨げるものではなく、例えば、今回はヒートポンプ式貯湯給湯機を用いて説明したが、貯湯タンク1内にヒーターを設けたものでもよいものとする。また、第2実施例では、ユーザーに給湯栓10を閉じることを促す報知を湯張り設定量180L−20Lとあるが、180L−20Lに限定するものではなく、割合を適宜変更するものでも良いものとする。また、ユーザーが給湯栓10を閉めるまでの時間を学習して適宜割合変更の制御を行うものでも良いものとする。
【符号の説明】
【0031】
1 貯湯タンク
2 給水管
4 出湯管
6 給湯ミキシング弁
7 給湯管
8 給湯フローセンサ
10 給湯栓
12 湯張りミキシング弁
13 湯張り管
14 湯張りフローセンサ
17 浴槽
22 制御装置
23 温度変更手段
24 リモコン
26 高速湯張りスイッチ
27 スピーカー