特開2015-197308(P2015-197308A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-197308(P2015-197308A)
(43)【公開日】2015年11月9日
(54)【発明の名称】静電容量測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 27/26 20060101AFI20151013BHJP
【FI】
   G01R27/26 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】29
【出願形態】OL
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2014-73655(P2014-73655)
(22)【出願日】2014年3月31日
(71)【出願人】
【識別番号】000227180
【氏名又は名称】日置電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083404
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100166752
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 典子
(72)【発明者】
【氏名】南 秀明
(72)【発明者】
【氏名】小池 伸一
【テーマコード(参考)】
2G028
【Fターム(参考)】
2G028AA01
2G028BB06
2G028CG07
2G028DH13
2G028EJ06
2G028FK01
2G028GL12
2G028HN09
2G028LR02
(57)【要約】
【課題】キャパシタを定電流にて所定時間充電し、その定電流値と、充電時間と、キャパシタの初期電圧と充電終了時の最終電圧の差電圧とから、キャパシタの静電容量を測定する静電容量測定装置において、高速で安定度の高い測定値が得られるようにする。
【解決手段】キャパシタを放電手段により所定の電圧にまで放電させた後、一定の単位時間Δtを1区間として複数のn区間Δtにわたって、定電流源よりキャパシタを連続的に充電し、その間に測定レンジが適正かどうかを判定して、適宜測定レンジを切り替えて充電をやり直し、各区間Δtごとにキャパシタの電圧Vの区間平均電圧VAを求め、最初の1区間の区間平均電圧(初期電圧)をVA0、n区間目の区間平均電圧をVAnとして、前記キャパシタの静電容量Cを(I×n×Δt)/(VAn−VA0)により求める。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定素子であるキャパシタを定電流で充電する定電流源からなる充電手段と、前記キャパシタを放電する放電手段と、前記キャパシタの端子間瞬時電圧Vを測定する電圧測定手段と、前記キャパシタに対する充放電を制御するとともに、充電時間および放電時間を計時するタイマ手段を有する制御手段とを含み、前記定電流の値をIとして、前記キャパシタを前記定電流源により連続的に充電したときに、前記キャパシタの端子間瞬時電圧Vが時間の経過に対して直線的に変化することに基づいて、前記キャパシタの静電容量Cを求める静電容量測定装置において、
前記制御手段または前記電圧測定手段は、前記キャパシタを所定の電圧範囲内にまで放電した後、一定の単位時間Δtを1区間として、複数のn区間(nは0を含む順序を表す正の整数)にわたって、前記定電流源により前記キャパシタを連続的に充電し、前記複数のn区間の1区間ごとに、その区間内で所定の時間間隔でサンプリングした所定個数の前記キャパシタの端子間瞬時電圧Vから区間平均電圧VAを取得し、最初の(n=0区間)の区間平均電圧をVA0、n区間目の区間平均電圧をVAnとして、前記キャパシタの静電容量Cまたは所定区間の区間平均電圧VAnの差電圧を求め、前記キャパシタの端子間瞬時電圧V,前記キャパシタの静電容量Cまたは前記区間平均電圧VAnの差電圧の中から選択した少なくとも1つの値が所定の範囲外の値であるときには、前記キャパシタを所定の電圧範囲内にまで放電した後、前記定電流源の前記定電流の値Iを変更して、前記キャパシタを連続的に充電して前記キャパシタの静電容量Cを求めることを特徴とする静電容量測定装置。
【請求項2】
前記制御手段または前記電圧測定手段には、前記定電流源が発生する前記定電流の値Iと、前記キャパシタの測定容量範囲とに応じた複数の測定レンジがあらかじめ設定してあり、前記制御手段または前記電圧測定手段は、前記設定してある測定レンジの前記定電流の値Iと、前記一定の単位時間Δtと、前記最初の1区間の区間平均電圧VA0と、n区間目の区間平均電圧VAnとから、前記キャパシタの静電容量Cを次の式(1)、
C=(I×n×Δt)/(VAn−VA0)…(1)
により求めることを特徴とする請求項1に記載の静電容量測定装置。
【請求項3】
前記電圧測定手段は、前記単位時間Δtを1区間とした区間内で前記キャパシタの端子間瞬時電圧Vを所定のサンプリング間隔でサンプリングするとともに、そのサンプリングした所定個数の前記端子間瞬時電圧Vから前記区間平均電圧VAを算出する機能を有し、その算出した区間平均電圧VAを前記制御手段に送信することを特徴とする請求項1または2に記載の静電容量測定装置。
【請求項4】
前記電圧測定手段は、前記各区間内で前記キャパシタ端子間瞬時電圧Vを所定のサンプリング間隔でサンプリングして前記制御手段に送信し、前記制御手段は、前記電圧測定手段によりサンプリングした所定個数の前記キャパシタ端子間瞬時電圧Vから前記区間平均電圧VAを算出することを特徴とする請求項1または2に記載の静電容量測定装置。
【請求項5】
前記制御手段または前記電圧測定手段には、測定範囲上限電圧VUがあらかじめ設定してあり、前記制御手段または前記電圧測定手段は、前記各区間ごとに求めた区間平均電圧VAnと、前記測定範囲上限電圧VUとを比較し、前記区間平均電圧VAnが前記測定範囲上限電圧VUを超えたとき、すなわち充電電圧が上昇する方向に充電する場合においてVAn>VUのときには、前記キャパシタの放電を開始して、前記測定レンジを最小容量を測定する最小レンジとするレンジダウン処理を実行することを特徴とする請求項2ないし4のいずれか1項に記載の静電容量測定装置。
【請求項6】
前記制御手段または前記電圧測定手段には、測定範囲上限電圧VUがあらかじめ設定してあり、前記制御手段または前記電圧測定手段は、前記キャパシタの端子間瞬時電圧Vと前記測定範囲上限電圧VUとを比較し、前記キャパシタの端子間瞬時電圧Vが前記測定範囲上限電圧VUを超えたとき、すなわち充電電圧が上昇する場合において、V>VUのときには、前記キャパシタの放電を開始して、前記測定レンジを最小容量を測定する最小レンジとするレンジダウン処理を実行することを特徴とする請求項2ないし4のいずれか1項に記載の静電容量測定装置。
【請求項7】
前記制御手段または前記電圧測定手段には、前記各測定レンジの最小容量と所定の定数により定まるレンジダウン規定電圧Vdownがあらかじめ設定してあり、前記制御手段または前記電圧測定手段は、前記n区間目の隣接する2区間の区間平均電圧VAの電圧差をVDとして、前記電圧差VDが前記レンジダウン規定電圧Vdownを超えたとき、すなわち充電電圧が上昇する方向に充電する場合においてVD>Vdownのときには、前記キャパシタの放電を開始して、前記測定レンジを比較的小さい容量を測定する測定レンジとするレンジダウン処理を実行することを特徴とする請求項2ないし6のいずれか1項に記載の静電容量測定装置。
【請求項8】
前記制御手段または前記電圧測定手段には、前記各測定レンジの最小容量と所定の定数により定められたレンジダウン規定電圧Vdownがあらかじめ設定してあり、前記制御手段または前記電圧測定手段は、n区間目のn区間平均電圧VAnと最初の区間平均電圧VA0との区間平均電圧の電圧差をVD(n)として、前記電圧差VD(n)が前記レンジダウン規定電圧のn倍の値Vdown(n)を超えたとき、すなわち充電電圧が上昇する方向に充電する場合において、VD(n)>Vdown(n)のときには、前記キャパシタの放電を開始して、前記測定レンジを比較的小さい容量を測定する測定レンジとすることを特徴とする請求項2ないし6のいずれか1項に記載の静電容量測定装置。
【請求項9】
前記制御手段または前記電圧測定手段は、前記レンジダウン規定電圧Vdownを、測定レンジの最小容量をCmin,定電流をI,区間の単位時間をΔt,所定のマージンをJとして次の式(2)、
Vdown=J×I×Δt/Cmin…(2)
により求めること、または、前記制御手段または前記電圧測定手段には、あらかじめ求めた前記レンジダウン規定電圧Vdownが設定してあることを特徴とする請求項7または8に記載の静電容量測定装置。
【請求項10】
前記制御手段または前記電圧測定手段には、前記各測定レンジの最大容量と所定の定数により定まるレンジアップ規定電圧Vupがあらかじめ設定してあり、前記制御手段または前記電圧測定手段は、前記n区間目の隣接する2区間の区間平均電圧VAの電圧差をVDとして、前記レンジアップ規定電圧Vupが前記電圧差VDを超えたとき、すなわち充電電圧が上昇する方向に充電する場合においてVD<Vupのときには、前記キャパシタの放電を開始して、前記測定レンジを比較的大きい容量を測定する測定レンジとすることを特徴とする請求項2ないし9のいずれか1項に記載の静電容量測定装置。
【請求項11】
前記制御手段または前記電圧測定手段には、前記各測定レンジの最大容量と所定の定数により定まるレンジアップ規定電圧Vupがあらかじめ設定してあり、前記制御手段または前記電圧測定手段は、n区間目の区間平均電圧VAnと最初の区間平均電圧VA0との区間平均電圧の電圧差をVD(n)として、前記レンジアップ規定電圧Vupのn倍の値が前記電圧差VD(n)を超えたとき、すなわち充電電圧が上昇する方向に充電する場合においてVD(n)<Vup(n)のときには、前記キャパシタの放電を開始して、前記測定レンジを比較的大きい容量を測定する測定レンジとすることを特徴とする請求項2ないし9のいずれか1項に記載の静電容量測定装置。
【請求項12】
前記制御手段または前記電圧測定手段は、前記レンジアップ規定電圧Vupを、測定レンジの最大容量をCmax,定電流をI,区間の単位時間をΔt,所定のマージンをLとして次の式(3)、
Vup=L×I×Δt/Cmax…(3)
により求めること、または、前記制御手段または電気電圧測定手段には、あらかじめ求めた前記レンジアップ規定電圧Vupが設定してあることを特徴とする請求項10または11に記載の静電容量測定装置。
【請求項13】
前記制御手段または前記電圧測定手段には、前記各測定レンジの最小容量と所定の定数により定まるレンジ規定電圧差Vrngがあらかじめ設定してあり、前記制御手段または前記電圧測定手段は、n区間目の区間平均電圧VAnと最初の区間平均電圧VA0との区間平均電圧の電圧差VD(n)から、次のn+1区間目の区間平均電圧VAn+1と最初の第1区間の区間平均電圧VA0との差の予測電圧VD(n+1)を求め、前記予測電圧VD(n+1)がVrnを超えないとき、すなわち、充電電圧が上昇する場合において、前記予測電圧VD(n+1)が、VD(n+1)≦Vrngのとき、あるいは、前記区間平均電圧の電圧差VD(n)が前記レンジ規定電圧差Vrngの概略0.5倍から1.0倍の値を超えないときの、いずれかの電圧が比較値を超えないときには、あらかじめ設定されている区間回数まで充電を継続して、前記キャパシタの静電容量Cを求め、
前記いずれかの電圧が比較値を超えないときに対し、前記予測電圧VD(n+1)がVrngを超えるとき、すなわち、充電電圧が上昇する場合において、前記予測電圧がVD(n+1)>Vrngとき、あるいは、前記区間平均電圧の電圧差VD(n)が前記レンジ規定電圧差Vrngの概略0.5倍から1.0倍の値を超えたときの、いずれかの電圧が比較値を超えたとき、または、設定されている前記区間回数nに対する規定回数まで充電を継続したときには、その時点で前記キャパシタに対する充電を中止するとともに放電を開始して、前記キャパシタの静電容量Cを求めることを特徴とする請求項2ないし12のいずれか1項に記載の静電容量測定装置。
【請求項14】
前記制御手段または前記電圧測定手段は、前記レンジ規定電圧差Vrngを、測定レンジの最小容量をCmin,定電流をI,最小の所定測定間隔数をN(正の整数),一定の単位時間をΔt,所定のマージンをMとして次の式(4)、
Vrng=M×I×N×Δt/Cmin…(4)
により求めること、または、前記制御手段または前記電圧測定手段には、あらかじめ求めた電気レンジ規定電圧Vrngが設定してあることを特徴とする請求項13に記載の静電容量測定装置。
【請求項15】
前記制御手段または前記電圧測定手段には、レンジ最大容量Cmax,レンジ最小容量Cmin,最小の所定測定間隔数をN(正の整数),一定の単位時間をΔt,所定のマージンをKとして、次の式(5)による充電上限時間Tが、
T=K×N×Δt×Cmax/Cmin…(5)
が設定してあり、前記制御手段または前記電圧測定手段は、測定開始からの時間が、前記充電上限時間Tを超えた場合には、その時点で測定終了として、放電を開始し、キャパシタの静電容量を計算し表示部に表示することを特徴とする請求項1ないし14のいずれか1項に記載の静電容量測定装置。
【請求項16】
前記制御手段または前記電圧測定手段は、前記キャパシタに対して複数区間にわたって前記定電流源より前記キャパシタを連続的に充電した後、充電区間を前半と後半とに2分し、前半の区間平均電圧VAnの平均値もしくは前記前半の区間内でサンプリングした前記キャパシタの端子間瞬時電圧Vの平均値をVa,前半のサンプリング時刻の平均をtaとし、後半の区間平均電圧VAnの平均値もしくは前記後半の区間内でサンプリングした前記キャパシタの端子間瞬時電圧Vの平均値をVb,後半のサンプリング時刻の平均をtbとして、前記キャパシタの静電容量Cを前記の式(1)に代えて次の式(6)、
C=I×(tb−ta)/(Vb−Va)…(6)
により求めることを特徴とする請求項1ないし15のいずれか1項に記載の静電容量測定装置。
【請求項17】
前記制御手段または前記電圧測定手段は、前記キャパシタに対して複数区間にわたって前記定電流源より前記キャパシタを連続的に充電した後、充電区間を前半と後半とに2分し、前記前半の区間での電圧データ数をa、前記前半の区間平均電圧VAnあるいは前記前半の区間内でサンプリングした前記キャパシタの端子間瞬時電圧Vの総和をΣVAa、前記後半の区間での電圧データ数をb、前記後半の区間平均電圧VAnもしくは前記後半の区間内でサンプリングした前記キャパシタの端子間瞬時電圧Vの総和をΣVAb、前記区間平均電圧VAもしくは前記端子間瞬時電圧Vを取得するサンプリング間隔をΔtとして、前記キャパシタの静電容量Cを前記の式(1)に代えて次の式(7)、
C=I×0.5×(a+b)×Δt/((ΣVAb)/b−(ΣVAa)/a)
=I×0.5×a×b×(a+b)×Δt/(a×(ΣVAb)−b×(ΣVAa)) …(7)
により求めることを特徴とする請求項1ないし15のいずれか1項に記載の静電容量測定装置。
【請求項18】
前記放電手段は、定電流シンク回路と定電流ソース回路とを有し、当該静電容量測定装置が備える測定端子間に接続された前記キャパシタの電圧が充電方向の電圧である場合には、前記キャパシタを、蓄積電荷を前記定電流シンク回路を用いて放電し、前記キャパシタの電圧が放電方向である場合には、前記キャパシタを前記定電流ソース回路を用いて放電することを特徴とする請求項1ないし17のいずれか1項に記載の静電容量測定装置。
【請求項19】
前記電圧測定手段は、増幅器と、A/D変換器と、DSP(デシタルシグナルプロセッサ)とを含み、前記A/D変換器は、前記増幅器により所定の電圧範囲に増幅された前記キャパシタの端子間瞬時電圧Vをデジタル値に変換し、前記DSPは、前記デジタル値から前記区間平均電圧VAを算出して前記制御手段に送信することを特徴とする1ないし18のいずれか1項に記載の静電容量測定装置。
【請求項20】
前記DSPは、前記キャパシタの端子間瞬時電圧Vに相当する値と前記測定範囲上限電圧VUとを比較し、その比較結果を前記制御手段に送信することを特徴とする請求項19に記載の静電容量測定装置。
【請求項21】
前記電圧測定手段は、増幅器とA/D変換器を備え、前記制御手段は、その一部にDSP(デシタルシグナルプロセッサ)の機能を有し、前記電圧測定手段は、前記増幅器と、A/D変換器により前記キャパシタの端子間瞬時電圧Vをデジタル値に変換し、前記DSPを含む前記制御手段に送信し、前記DSPを含む前記制御手段は、前記デジタル値から前記区間平均電圧VAを算出することを特徴とする請求項1ないし18のいずれか1項に記載の静電容量測定装置。
【請求項22】
放電時における前記キャパシタの端子間瞬時電圧Vを監視し、前記端子間瞬時電圧Vが所定の放電電圧の範囲になった時点で放電終結信号を送信する放電検出用比較器を有し、前記制御手段または前記電圧測定手段は、前記放電終結信号に基づいて前記放電手段をオフ、前記定電流源をオンとして前記キャパシタに対する充電を開始することを特徴とする請求項1ないし21のいずれか1項に記載の静電容量測定装置。
【請求項23】
前記DSPに、放電時にキャパシタの端子間瞬時電圧Vが所定の電圧範囲であることを検出する放電検出用比較器の機能を含むことを特徴とする請求項22に記載の静電容量測定装置。
【請求項24】
前記制御手段は、前記放電終結信号の受信時点から放電状態が安定する所定の第1安定化時間が経過するのを待ち、その間に前記制御手段と前記電圧測定手段との所定のタイミング同期関係を図り、前記キャパシタに対する充電を開始することを特徴とする請求項1ないし23のいずれか1項に記載の静電容量測定装置。
【請求項25】
前記制御手段は、前記キャパシタに対する充電を開始してから充電状態が安定する所定の第2安定化時間が経過するのを待ち、その後前記制御手段と前記電圧測定手段との所定のタイミング同期関係を図った後、前記区間平均電圧の取得を開始する状態とし、前記一定の単位時間Δtの経過後に、最初の前記第1区間の区間平均電圧を得ることを特徴とする請求項1ないし24のいずれか1項に記載の静電容量測定装置。
【請求項26】
前記制御手段または前記電圧測定手段には、前記定電流の値Iを電流補正式I=d×Iにより補正し、サンプリングした前記区間平均電圧VAnもしくは前記端子間瞬時電圧Vを電圧補正式V=e×V+fにより補正し、前記キャパシタの静電容量Cを静電容量補正式C=g×C+hにより補正する補正パラメータd,e,f,g,hが設定してあり、前記制御手段または前記電圧測定手段は、前記測定レンジの整合性を判定する際、または前記キャパシタの静電容量を算出する際に、前記補正電流式または前記電圧補正式または前記静電容量補正式による補正計算を1回以上行うことを特徴とする請求項1ないし25のいずれか1項に記載の静電容量測定装置。
【請求項27】
前記制御手段または前記電圧測定手段は、前記電流補正式または前記電圧補正式または前記静電容量補正式による補正計算の有無とその計算回数と、前記補正パラメータd,e,f,g,hとが、所定のキー操作または外部機器に対して入出力可能であることを特徴とする請求項26に記載の静電容量測定装置。
【請求項28】
被測定素子であるキャパシタを定電流で充電する定電流源と、前記キャパシタに蓄積されている電荷を放電させる放電手段と、前記キャパシタの端子間瞬時電圧Vを測定する電圧測定手段と、前記キャパシタに対する充放電を制御するとともに、充電時間および放電時間を計時するタイマ手段を有する制御手段とを含み、前記制御手段は、前記定電流の値をIとして、前記キャパシタを前記定電流源により連続的に充電したときに、前記キャパシタの端子間瞬時電圧Vが時間の経過に対して直線的に変化することに基づいて、前記キャパシタの静電容量Cを求める静電容量測定装置において、
前記制御手段または前記電圧測定手段は、前記キャパシタの静電容量Cを求めない場合には、前記キャパシタの端子間瞬時電圧Vが0Vとみなせる状態にまで放電し、前記キャパシタの静電容量Cを求める場合には、放電の1回ごとに交互に定める所定の電圧範囲内にまで放電させた後、一定の単位時間Δtを1区間として、複数の(nは0を含む順序を表す正の整数)にわたって、前記定電流源により前記キャパシタを連続的に充電し、前記複数のn区間の1区間ごとに、その区間内で所定の時間間隔でサンプリングした所定個数の前記キャパシタの端子間瞬時電圧Vから区間平均電圧VAを取得し、最初の1区間(n=0区間)の区間平均電圧をVA0、n区間目の区間平均電圧をVAnとして、前記キャパシタの静電容量Cまたは所定区間の区間平均電圧VAnの差電圧を求め、前記キャパシタの端子間瞬時電圧V,前記キャパシタの静電容量Cまたは前記区間平均電圧VAnの差電圧の中から選択した少なくとも1つの値が所定の範囲外の値であるときには、前記キャパシタを前記キャパシタの端子間瞬時電圧Vが0Vとみなせる状態にまで放電した後、前記定電流源の前記定電流の値Iを変更して、放電の1回ごとに交互に定める所定の電圧範囲内にまで放電した後、前記定電流で充電する前記定電流源により前記キャパシタを正の方向あるいは負の方向に、充電の1回ごとに交互に充電を開始して、前記キャパシタの静電容量Cを求めることを特徴とする静電容量測定装置。
【請求項29】
前記制御手段または前記電圧測定手段には、前記定電流源が発生する前記定電流の値Iと、前記キャパシタの測定容量範囲とに応じた複数の測定レンジがあらかじめ設定してあり、前記制御手段または前記電圧測定手段は、前記測定レンジのレンジダウンあるいは前記測定レンジのレンジアップを実施するとき、前記充電の1回ごとに前記測定レンジのレンジダウンあるいは前記測定レンジのレンジアップを交互に繰り返している場合には、前記キャパシタの端子間瞬時電圧Vが経時的に直線的に変化することに基づいて前記キャパシタの静電容量Cを求め、前記キャパシタの静電容量Cを求めることに対して前記充電の1回ごとに前記測定レンジのレンジダウンあるいは前記測定レンジのレンジアップを交互に繰り返していない場合には、前記測定レンジのレンジダウンあるいは前記測定レンジのレンジアップを実施することを特徴とする請求項28に記載の静電容量測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定素子であるキャパシタの静電容量を測定する静電容量測定装置に関し、さらに詳しく言えば、キャパシタを定電流にて所定時間充電し、その定電流値と、充電時間と、キャパシタの端子間瞬時電圧の平均電圧の差電圧とから、キャパシタの静電容量を測定する静電容量測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
キャパシタ(コンデンサ)を定電流で充電すると、経時的に電圧が線形に上昇する。したがって、充電電流(定電流)をI,充電時間をT,充電開始時の初期電圧をVinit,充電終了時の最終電圧をVfinalとすれば、キャパシタの静電容量Cは、
C=I×T/(Vfinal−Vinit)
により求めることができる(特許文献1参照)。通常、充電はキャパシタをほぼ完全に放電してから行われるため、初期電圧のVinitは0Vである。
【0003】
この測定原理を利用した静電容量測定装置として、特許文献2に記載の発明は、キャパシタを初期電圧にまで放電し、その放電状態を所定時間保持する水平区間(ホールドステート)で初期電圧Vinitを測定する。
【0004】
その後、キャパシタを定電流で所定時間(1区間分)充電し、所定時間経過後の水平区間で電圧を測定し、以後同様に、水平区間を置いて何区間かにわたって定電流充電を行い、最終電圧Vfinalを得る。
【0005】
ここで、定電流をI,1区間の充電時間をΔt,充電回数をnとすれば、キャパシタの静電容量Cを、C=I×n×Δt/(Vfinal−Vinit)により求めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−277495号公報
【特許文献2】米国特許第6275047号明細書(図5
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記特許文献2に記載の発明は、大容量キャパシタでも比較的短時間で、その静電容量値を測定することができる。しかしながら、通常、充電開始の初期電圧Vinitを理論値として0Vとしているため、実際の充電開始電圧の誤差が無視できない。
【0008】
また、充電開始時には往々にして、電流が急激に変化するため、キャパシタに含まれている等価直列抵抗成分や端子接続部に存在する接触抵抗成分などの影響を受ける場合がある。
【0009】
特に前記のように、充電1区間ごとに水平区間(ホールドステート)を設ける場合には、その都度、充電の開始と停止とを行い、その際、電流が急激に変化するので、電流源や電圧計の応答が間に合わない場合があり、応答不良やノイズが発生することがある。また、最終電圧を得るまでに何回かの水平区間があるため、その分、測定時間が長くなる。
【0010】
また、充電電流が被測定キャパシタの静電容量に対して適切かどうかの判定(充電途中でのレンジ切り替えおよび放電開始の判定)を行わないため、結果として測定時間が長くなる。さらには、キャパシタの放電は、抵抗を介して行うため、その波形は指数関数的になり、放電完了時点を正確に捉えにくい、という問題もある。
【0011】
したがって、本発明の課題は、キャパシタを定電流にて連続的に充電し、その充電途中で適宜レンジ切り替えおよび放電開始の判定を行い、キャパシタの端子間瞬時電圧が時間の経過に対して直線的に直線的に変化することに基づいて、充電中の直線区間のみを平均化してキャパシタの静電容量を測定して、高速でかつ安定度が高く、高精度の測定値が得られるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、被測定素子であるキャパシタを定電流で充電する定電流源からなる充電手段と、前記キャパシタを放電する放電手段と、前記キャパシタの端子間瞬時電圧Vを測定する電圧測定手段と、前記キャパシタに対する充放電を制御するとともに、充電時間および放電時間を計時するタイマ手段を有する制御手段とを含み、前記定電流の値をIとして、前記キャパシタを前記定電流源により連続的に充電したときに、前記キャパシタの端子間瞬時電圧Vが時間の経過に対して直線的に変化することに基づいて、前記キャパシタの静電容量Cを求める静電容量測定装置において、
前記制御手段または前記電圧測定手段は、前記キャパシタを所定の電圧範囲内にまで放電した後、一定の単位時間Δtを1区間として、複数のn区間(nは0を含む順序を表す正の整数)にわたって、前記定電流源により前記キャパシタを連続的に充電し、前記複数のn区間の1区間ごとに、その区間内で所定の時間間隔でサンプリングした所定個数の前記キャパシタの端子間瞬時電圧Vから区間平均電圧VAを取得し、最初の(n=0区間)の区間平均電圧をVA0、n区間目の区間平均電圧をVAnとして、前記キャパシタの静電容量Cまたは所定区間の区間平均電圧VAnの差電圧を求め、前記キャパシタの端子間瞬時電圧V,前記キャパシタの静電容量Cまたは前記区間平均電圧VAnの差電圧の中から選択した少なくとも1つの値が所定の範囲外の値であるときには、前記キャパシタを所定の電圧範囲内にまで放電した後、前記定電流源の前記定電流の値Iを変更して、前記キャパシタを連続的に充電して前記キャパシタの静電容量Cを求めることを特徴としている。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記制御手段または前記電圧測定手段には、前記定電流源が発生する前記定電流の値Iと、前記キャパシタの測定容量範囲とに応じた複数の測定レンジがあらかじめ設定してあり、前記制御手段または前記電圧測定手段は、前記設定してある測定レンジの前記定電流の値Iと、前記一定の単位時間Δtと、前記最初の1区間の区間平均電圧VA0と、n区間目の区間平均電圧VAnとから、前記キャパシタの静電容量Cを次の式(1)、
C=(I×n×Δt)/(VAn−VA0)…(1)
により求めることを特徴としている。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2において、前記電圧測定手段は、前記単位時間Δtを1区間とした区間内で前記キャパシタの端子間瞬時電圧Vを所定のサンプリング間隔でサンプリングするとともに、そのサンプリングした所定個数の前記端子間瞬時電圧Vから前記区間平均電圧VAを算出する機能を有し、その算出した区間平均電圧VAを前記制御手段に送信することを特徴としている。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1または2において、前記電圧測定手段は、前記各区間内で前記キャパシタ端子間瞬時電圧Vを所定のサンプリング間隔でサンプリングして前記制御手段に送信し、前記制御手段は、前記電圧測定手段によりサンプリングした所定個数の前記キャパシタ端子間瞬時電圧Vから前記区間平均電圧VAを算出することを特徴としている。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項2ないし4のいずれか1項において、前記制御手段または前記電圧測定手段には、測定範囲上限電圧VUがあらかじめ設定してあり、前記制御手段または前記電圧測定手段は、前記各区間ごとに求めた区間平均電圧VAnと、前記測定範囲上限電圧VUとを比較し、前記区間平均電圧VAnが前記測定範囲上限電圧VUを超えたとき、すなわち充電電圧が上昇する方向に充電する場合においてVAn>VUのときには、前記キャパシタの放電を開始して、前記測定レンジを最小容量を測定する最小レンジとするレンジダウン処理を実行することを特徴としている。
【0017】
請求項6に記載の発明は、請求項2ないし4のいずれか1項において、前記制御手段または前記電圧測定手段には、測定範囲上限電圧VUがあらかじめ設定してあり、前記制御手段または前記電圧測定手段は、前記キャパシタの端子間瞬時電圧Vと前記測定範囲上限電圧VUとを比較し、前記キャパシタの端子間瞬時電圧Vが前記測定範囲上限電圧VUを超えたとき、すなわち充電電圧が上昇する場合において、V>VUのときには、前記キャパシタの放電を開始して、前記測定レンジを最小容量を測定する最小レンジとするレンジダウン処理を実行することを特徴としている。
【0018】
請求項7に記載の発明は、請求項2ないし6のいずれか1項において、前記制御手段または前記電圧測定手段には、前記各測定レンジの最小容量と所定の定数により定まるレンジダウン規定電圧Vdownがあらかじめ設定してあり、前記制御手段または前記電圧測定手段は、前記n区間目の隣接する2区間の区間平均電圧VAの電圧差をVDとして、前記電圧差VDが前記レンジダウン規定電圧Vdownを超えたとき、すなわち充電電圧が上昇する方向に充電する場合においてVD>Vdownのときには、前記キャパシタの放電を開始して、前記測定レンジを比較的小さい容量を測定する測定レンジとするレンジダウン処理を実行することを特徴としている。
【0019】
請求項8に記載の発明は、請求項2ないし6のいずれか1項において、前記制御手段または前記電圧測定手段には、前記各測定レンジの最小容量と所定の定数により定められたレンジダウン規定電圧Vdownがあらかじめ設定してあり、前記制御手段または前記電圧測定手段は、n区間目のn区間平均電圧VAnと最初の区間平均電圧VA0との区間平均電圧の電圧差をVD(n)として、前記電圧差VD(n)が前記レンジダウン規定電圧のn倍の値Vdown(n)を超えたとき、すなわち充電電圧が上昇する方向に充電する場合において、VD(n)>Vdown(n)のときには、前記キャパシタの放電を開始して、前記測定レンジを比較的小さい容量を測定する測定レンジとすることを特徴としている。
【0020】
請求項9に記載の発明は、請求項7または8において、前記制御手段または前記電圧測定手段は、前記レンジダウン規定電圧Vdownを、測定レンジの最小容量をCmin,定電流をI,区間の単位時間をΔt,所定のマージンをJとして次の式(2)、
Vdown=J×I×Δt/Cmin…(2)
により求めること、または、前記制御手段または前記電圧測定手段には、あらかじめ求めた前記レンジダウン規定電圧Vdownが設定してあることを特徴としている。
【0021】
請求項10に記載の発明は、請求項2ないし9のいずれか1項において、前記制御手段または前記電圧測定手段には、前記各測定レンジの最大容量と所定の定数により定まるレンジアップ規定電圧Vupがあらかじめ設定してあり、前記制御手段または前記電圧測定手段は、前記n区間目の隣接する2区間の区間平均電圧VAの電圧差をVDとして、前記レンジアップ規定電圧Vupが前記電圧差VDを超えたとき、すなわち充電電圧が上昇する方向に充電する場合においてVD<Vupのときには、前記キャパシタの放電を開始して、前記測定レンジを比較的大きい容量を測定する測定レンジとすることを特徴としている。
【0022】
請求項11に記載の発明は、請求項2ないし9のいずれか1項において、前記制御手段または前記電圧測定手段には、前記各測定レンジの最大容量と所定の定数により定まるレンジアップ規定電圧Vupがあらかじめ設定してあり、前記制御手段または前記電圧測定手段は、n区間目の区間平均電圧VAnと最初の区間平均電圧VA0との区間平均電圧の電圧差をVD(n)として、前記レンジアップ規定電圧Vupのn倍の値が前記電圧差VD(n)を超えたとき、すなわち充電電圧が上昇する方向に充電する場合においてVD(n)<Vup(n)のときには、前記キャパシタの放電を開始して、前記測定レンジを比較的大きい容量を測定する測定レンジとすることを特徴としている。
【0023】
請求項12に記載の発明は、請求項10または11において、前記制御手段または前記電圧測定手段は、前記レンジアップ規定電圧Vupを、測定レンジの最大容量をCmax,定電流をI,区間の単位時間をΔt,所定のマージンをLとして次の式(3)、
Vup=L×I×Δt/Cmax…(3)
により求めること、または、前記制御手段または電気電圧測定手段には、あらかじめ求めた前記レンジアップ規定電圧Vupが設定してあることを特徴としている。
【0024】
請求項13に記載の発明は、請求項2ないし12のいずれか1項において、前記制御手段または前記電圧測定手段には、前記各測定レンジの最小容量と所定の定数により定まるレンジ規定電圧差Vrngがあらかじめ設定してあり、前記制御手段または前記電圧測定手段は、n区間目の区間平均電圧VAnと最初の区間平均電圧VA0との区間平均電圧の電圧差VD(n)から、次のn+1区間目の区間平均電圧VAn+1と最初の第1区間の区間平均電圧VA0との差の予測電圧VD(n+1)を求め、前記予測電圧VD(n+1)がVrnを超えないとき、すなわち、充電電圧が上昇する場合において、前記予測電圧VD(n+1)が、VD(n+1)≦Vrngのとき、あるいは、前記区間平均電圧の電圧差VD(n)が前記レンジ規定電圧差Vrngの概略0.5倍から1.0倍の値を超えないときの、いずれかの電圧が比較値を超えないときには、あらかじめ設定されている区間回数まで充電を継続して、前記キャパシタの静電容量Cを求め、
前記いずれかの電圧が比較値を超えないときに対し、前記予測電圧VD(n+1)がVrngを超えるとき、すなわち、充電電圧が上昇する場合において、前記予測電圧がVD(n+1)>Vrngとき、あるいは、前記区間平均電圧の電圧差VD(n)が前記レンジ規定電圧差Vrngの概略0.5倍から1.0倍の値を超えたときの、いずれかの電圧が比較値を超えたとき、または、設定されている前記区間回数nに対する規定回数まで充電を継続したときには、その時点で前記キャパシタに対する充電を中止するとともに放電を開始して、前記キャパシタの静電容量Cを求めることを特徴としている。
【0025】
請求項14に記載の発明は、請求項13において、前記制御手段または前記電圧測定手段は、前記レンジ規定電圧差Vrngを、測定レンジの最小容量をCmin,定電流をI,最小の所定測定間隔数をN(正の整数),一定の単位時間をΔt,所定のマージンをMとして次の式(4)、
Vrng=M×I×N×Δt/Cmin…(4)
により求めること、または、前記制御手段または前記電圧測定手段には、あらかじめ求めた電気レンジ規定電圧Vrngが設定してあることを特徴としている。
【0026】
請求項15に記載の発明は、請求項1ないし14のいずれか1項において、前記制御手段または前記電圧測定手段には、レンジ最大容量Cmax,レンジ最小容量Cmin,最小の所定測定間隔数をN(正の整数),一定の単位時間をΔt,所定のマージンをKとして、次の式(5)による充電上限時間Tが、
T=K×N×Δt×Cmax/Cmin…(5)
が設定してあり、前記制御手段または前記電圧測定手段は、測定開始からの時間が、前記充電上限時間Tを超えた場合には、その時点で測定終了として、放電を開始し、キャパシタの静電容量を計算し表示部に表示することを特徴としている。
【0027】
請求項16に記載の発明は、請求項1ないし15のいずれか1項において、前記制御手段または前記電圧測定手段は、前記キャパシタに対して複数区間にわたって前記定電流源より前記キャパシタを連続的に充電した後、充電区間を前半と後半とに2分し、前半の区間平均電圧VAnの平均値もしくは前記前半の区間内でサンプリングした前記キャパシタの端子間瞬時電圧Vの平均値をVa,前半のサンプリング時刻の平均をtaとし、後半の区間平均電圧VAnの平均値もしくは前記後半の区間内でサンプリングした前記キャパシタの端子間瞬時電圧Vの平均値をVb,後半のサンプリング時刻の平均をtbとして、前記キャパシタの静電容量Cを前記の式(1)に代えて次の式(6)、
C=I×(tb−ta)/(Vb−Va)…(6)
により求めることを特徴としている。
【0028】
請求項17に記載の発明は、請求項1ないし15のいずれか1項において、前記制御手段または前記電圧測定手段は、前記キャパシタに対して複数区間にわたって前記定電流源より前記キャパシタを連続的に充電した後、充電区間を前半と後半とに2分し、前記前半の区間での電圧データ数をa、前記前半の区間平均電圧VAnあるいは前記前半の区間内でサンプリングした前記キャパシタの端子間瞬時電圧Vの総和をΣVAa、前記後半の区間での電圧データ数をb、前記後半の区間平均電圧VAnもしくは前記後半の区間内でサンプリングした前記キャパシタの端子間瞬時電圧Vの総和をΣVAb、前記区間平均電圧VAもしくは前記端子間瞬時電圧Vを取得するサンプリング間隔をΔtとして、前記キャパシタの静電容量Cを前記の式(1)に代えて次の式(7)、
C=I×0.5×(a+b)×Δt/((ΣVAb)/b−(ΣVAa)/a)
=I×0.5×a×b×(a+b)×Δt/(a×(ΣVAb)−b×(ΣVAa)) …(7)
により求めることを特徴としている。
【0029】
請求項18に記載の発明は、請求項1ないし17のいずれか1項において、前記放電手段は、定電流シンク回路と定電流ソース回路とを有し、当該静電容量測定装置が備える測定端子間に接続された前記キャパシタの電圧が充電方向の電圧である場合には、前記キャパシタを、蓄積電荷を前記定電流シンク回路を用いて放電し、前記キャパシタの電圧が放電方向である場合には、前記キャパシタを前記定電流ソース回路を用いて放電することを特徴としている。
【0030】
請求項19に記載の発明は、請求項1ないし18のいずれか1項において、前記電圧測定手段は、増幅器と、A/D変換器と、DSP(デシタルシグナルプロセッサ)とを含み、前記A/D変換器は、前記増幅器により所定の電圧範囲に増幅された前記キャパシタの端子間瞬時電圧Vをデジタル値に変換し、前記DSPは、前記デジタル値から前記区間平均電圧VAを算出して前記制御手段に送信することを特徴としている。
【0031】
請求項20に記載の発明は、請求項19において、前記DSPは、前記キャパシタの端子間瞬時電圧Vに相当する値と前記測定範囲上限電圧VUとを比較し、その比較結果を前記制御手段に送信することを特徴としている。
【0032】
請求項21に記載の発明は、請求項1ないし18のいずれか1項において、前記電圧測定手段は、増幅器とA/D変換器を備え、前記制御手段は、その一部にDSP(デシタルシグナルプロセッサ)の機能を有し、前記電圧測定手段は、前記増幅器と、A/D変換器により前記キャパシタの端子間瞬時電圧Vをデジタル値に変換し、前記DSPを含む前記制御手段に送信し、前記DSPを含む前記制御手段は、前記デジタル値から前記区間平均電圧VAを算出することを特徴としている。
【0033】
請求項22に記載の発明は、請求項1ないし21のいずれか1項において、放電時における前記キャパシタの端子間瞬時電圧Vを監視し、前記端子間瞬時電圧Vが所定の放電電圧の範囲になった時点で放電終結信号を送信する放電検出用比較器を有し、前記制御手段または前記電圧測定手段は、前記放電終結信号に基づいて前記放電手段をオフ、前記定電流源をオンとして前記キャパシタに対する充電を開始することを特徴としている。
【0034】
請求項23に記載の発明は、請求項22において、前記DSPに、放電時にキャパシタの端子間瞬時電圧Vが所定の電圧範囲であることを検出する放電検出用比較器の機能を含むことを特徴としている。
【0035】
請求項24に記載の発明は、請求項1ないし23のいずれか1項において、前記制御手段は、前記放電終結信号の受信時点から放電状態が安定する所定の第1安定化時間が経過するのを待ち、その間に前記制御手段と前記電圧測定手段との所定のタイミング同期関係を図り、前記キャパシタに対する充電を開始することを特徴としている。
【0036】
請求項25に記載の発明は、請求項1ないし24のいずれか1項において、前記制御手段は、前記キャパシタに対する充電を開始してから充電状態が安定する所定の第2安定化時間が経過するのを待ち、その後前記制御手段と前記電圧測定手段との所定のタイミング同期関係を図った後、前記区間平均電圧の取得を開始する状態とし、前記一定の単位時間Δtの経過後に、最初の前記第1区間の区間平均電圧を得ることを特徴としている。
【0037】
請求項26に記載の発明は、請求項1ないし25のいずれか1項において、前記制御手段または前記電圧測定手段には、前記定電流の値Iを電流補正式I=d×Iにより補正し、サンプリングした前記区間平均電圧VAnもしくは前記端子間瞬時電圧Vを電圧補正式V=e×V+fにより補正し、前記キャパシタの静電容量Cを静電容量補正式C=g×C+hにより補正する補正パラメータd,e,f,g,hが設定してあり、前記制御手段または前記電圧測定手段は、前記測定レンジの整合性を判定する際、または前記キャパシタの静電容量を算出する際に、前記補正電流式または前記電圧補正式または前記静電容量補正式による補正計算を1回以上行うことを特徴としている。
【0038】
請求項27に記載の発明は、請求項26において、前記制御手段または前記電圧測定手段は、前記電流補正式または前記電圧補正式または前記静電容量補正式による補正計算の有無とその計算回数と、前記補正パラメータd,e,f,g,hとが、所定のキー操作または外部機器に対して入出力可能であることを特徴としている。
【0039】
請求項28に記載の発明は、被測定素子であるキャパシタを定電流で充電する定電流源と、前記キャパシタに蓄積されている電荷を放電させる放電手段と、前記キャパシタの端子間瞬時電圧Vを測定する電圧測定手段と、前記キャパシタに対する充放電を制御するとともに、充電時間および放電時間を計時するタイマ手段を有する制御手段とを含み、前記制御手段は、前記定電流の値をIとして、前記キャパシタを前記定電流源により連続的に充電したときに、前記キャパシタの端子間瞬時電圧Vが時間の経過に対して直線的に変化することに基づいて、前記キャパシタの静電容量Cを求める静電容量測定装置において、
前記制御手段または前記電圧測定手段は、前記キャパシタの静電容量Cを求めない場合には、前記キャパシタの端子間瞬時電圧Vが0Vとみなせる状態にまで放電し、前記キャパシタの静電容量Cを求める場合には、放電の1回ごとに交互に定める所定の電圧範囲内にまで放電させた後、一定の単位時間Δtを1区間として、複数の(nは0を含む順序を表す正の整数)にわたって、前記定電流源により前記キャパシタを連続的に充電し、前記複数のn区間の1区間ごとに、その区間内で所定の時間間隔でサンプリングした所定個数の前記キャパシタの端子間瞬時電圧Vから区間平均電圧VAを取得し、最初の1区間(n=0区間)の区間平均電圧をVA0、n区間目の区間平均電圧をVAnとして、前記キャパシタの静電容量Cまたは所定区間の区間平均電圧VAnの差電圧を求め、前記キャパシタの端子間瞬時電圧V,前記キャパシタの静電容量Cまたは前記区間平均電圧VAnの差電圧の中から選択した少なくとも1つの値が所定の範囲外の値であるときには、前記キャパシタを前記キャパシタの端子間瞬時電圧Vが0Vとみなせる状態にまで放電した後、前記定電流源の前記定電流の値Iを変更して、放電の1回ごとに交互に定める所定の電圧範囲内にまで放電した後、前記定電流で充電する前記定電流源により前記キャパシタを正の方向あるいは負の方向に、充電の1回ごとに交互に充電を開始して、前記キャパシタの静電容量Cを求めることを特徴としている。
【0040】
請求項29に記載の発明は、請求項28において、前記制御手段または前記電圧測定手段には、前記定電流源が発生する前記定電流の値Iと、前記キャパシタの測定容量範囲とに応じた複数の測定レンジがあらかじめ設定してあり、前記制御手段または前記電圧測定手段は、前記測定レンジのレンジダウンあるいは前記測定レンジのレンジアップを実施するとき、前記充電の1回ごとに前記測定レンジのレンジダウンあるいは前記測定レンジのレンジアップを交互に繰り返している場合には、前記キャパシタの端子間瞬時電圧Vが経時的に直線的に変化することに基づいて前記キャパシタの静電容量Cを求め、前記キャパシタの静電容量Cを求めることに対して前記充電の1回ごとに前記測定レンジのレンジダウンあるいは前記測定レンジのレンジアップを交互に繰り返していない場合には、前記測定レンジのレンジダウンあるいは前記測定レンジのレンジアップを実施することを特徴としている。
【発明の効果】
【0041】
本発明によれば、キャパシタを所定の電圧範囲内にまで放電した後、一定の単位時間Δtを1区間として、複数のn区間にわたって、定電流源によりキャパシタを連続的に充電し、キャパシタに対する充電電流が適正かどうかを所定のパラメータに基づいて判定し、前記充電電流の適正に関する判定結果に基づいて、充電電圧が適正でない場合は、放電を実施するとともに適宜充電電流を変更し、最終的に選択した充電電流をキャパシタに印加する。そして、充電中の直線的な各区間において、キャパシタの端子間瞬時電圧Vの平均値を計算して、区間平均電圧を得るとともに、各区間での区間平均電圧の差分などを計算して適切な測定レンジを選択するようにしたことにより、耐ノイズ性に優れ高速で安定度の高いキャパシタの静電容量Cを得ることができる。
【0042】
また、キャパシタの静電容量Cの算出時に区間平均電圧の差分を計算することにより、キャパシタに含まれる等価直列抵抗成分やHi端子およびLo端子部分に存在する接触抵抗成分があってもキャンセルすることができる。さらに、測定に入る前に、第1および第2安定化時間を確保することにより、安定度の高い測定値を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】本発明の実施形態に係る静電容量測定装置の構成を示す模式図。
図2】本発明によるキャパシタ充放電電圧波形の一例を示すグラフ。
図3】本発明の動作の一例を示すフローチャート。
図4】本発明の実施形態において、瞬時電圧が測定範囲外のとき実行されるルーチンを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0044】
次に、図1ないし図4により、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれに限定するものではない。
【0045】
まず、図1に示すように、この実施形態による静電容量測定装置10は、基本的な構成として、制御手段11と、充電手段としての定電流源12と、放電手段13と、電圧測定手段14と、放電検出用比較器15とを備えている。
【0046】
また、この静電容量測定装置10は、容量測定時に被測定素子であるキャパシタCxを接続する測定端子として、Hi側の測定端子16aとLo側の測定端子16bとを備えている。Lo側の測定端子16bは0V(接地電位)に接地してあり、定電流源12と放電手段13は、スイッチSWを介してHi側の測定端子16aに接続してある。
【0047】
この実施形態において、定電流源12は、出力電流が異なる複数の定電流ソース回路あるいは可変出力型の定電流ソース回路を備え、充電時にキャパシタCxに所定の定電流Iを給電する。
【0048】
放電手段13は、放電時にキャパシタCxを定電流により放電する定電流シンク回路を備えている。
【0049】
ところで、既充電のキャパシタCxを、測定端子16a,16bに対して逆接続(−側をHi側の測定端子16aに接続し、+側をLo側の測定端子16bに接続)することがある。
【0050】
このような場合に対処するため、放電手段13に定電流シンク回路とは別に定電流ソース回路を備え、前記逆接続の場合は、制御手段11は放電手段13に備えた定電流ソース回路により既充電のキャパシタCxを放電することが好ましい。なお、逆接続の場合、定電流源12が備える定電流ソース回路を用いて、既充電のキャパシタCxを放電してもよい。
【0051】
電圧測定手段14は、増幅器14aと、A/D変換器14bと、DSP(デジタルシグナルプロセッサ)14cとを含む。電圧測定手段14は、キャパシタCxの端子間瞬時電圧Vを、増幅器14aにより所定の電圧範囲に増幅(この例では増幅率1)し、A/D変換器14bでデジタル値に変換した後、DSP14cに入力する。
【0052】
この実施形態において、DSP14cは、1msのサンプリング間隔でキャパシタCxの端子間瞬時電圧Vをサンプリングし、100msを1区間として、100msが経過した時点で、100個の端子間電圧Vから区間平均電圧VA(=ΣV/100)を算出し、その区間平均電圧VAと、制御手段11が個々の端子間瞬時電圧Vが必要であれば、その算出基礎としての個々の端子間瞬時電圧Vとを制御手段11に送信する。
【0053】
このとき、DSP14cは、前記のように区間平均電圧VAを算出した後、前記区間平均電圧VAに所定の単位変換係数を乗じたうえで、その区間平均電圧VAを制御手段11に送信してもよい。
【0054】
また、サンプリング間隔や一定の単位時間Δtは任意に設定してもよく、例えば、1区間の単位時間を前記と同じく100msとし、これに対して、キャパシタCxの端子間電圧Vのサンプリング間隔を100μsとして、電圧制御手段14は、1区間時間内に1000個の端子間瞬時電圧Vをサンプリングしてもよい。
【0055】
この実施形態では、A/D変換器14bに、例えばサンプリングAD変換器を用いているが、別の種類のA/D変換器を使用あるいは併用する実施形態では、A/D変換器自体が平均値を出力する2重積分型A/D変換器を使用あるいは併用することができる。
【0056】
放電検出用比較器15は、放電時にキャパシタCxの端子間瞬時電圧Vを監視し、前記キャパシタCxの端子間瞬時電圧Vが0V(接地電位)になった時点で、放電終結信号を制御手段11と放電手段13に出力する。
【0057】
制御手段11には、CPU(中央演算処理ユニット)やマイクロコンピュータなどが用いられ、この実施形態では、制御手段11とDSP14cとを個別に動作するようにしている。なお、制御手段11が高性能機種のマイクロコンピュータである別の実施形態では、制御手段11の一部にDSP14cの機能を含ませ、電圧測定手段14は、増幅器14aとA/D変換器とにより構成するようにしてもよい。
【0058】
また、制御手段11には、メモリ11a,表示部11b,タイマ11cが接続してある。メモリ11aは、制御手段11の動作プログラムなどが書き込まれたROMと、ワークRAMとを内包している。表示部11bには、例えば液晶表示パネルを用い、キャパシタCxの容量測定値や測定条件や測定状態を表示する。タイマ11cは、充電時間や放電時間、それに待ち時間を計時する。タイマ11cを専用タイマで構成する実施例では、タイマ11cには、充電時間計時用、放電時間計時用、待ち時間計時用の複数の専用タイマを使用して構成してもよい。
【0059】
本発明において、制御手段11には、定電流源12が発生する定電流の電流量IとキャパシタCxの測定容量範囲とに応じた複数の測定レンジがあらかじめ設定してあり、測定開始時には最小レンジに設定してあるが、制御手段11は、測定中はキャパシタCxの静電容量Cに応じて測定レンジを適宜切り替える。
【0060】
制御手段11は、前記測定レンジの切替処理(レンジダウン,レンジアップ処理)の判定プロセスを、静電容量測定中、特にキャパシタCxの充電期間において実行する。なお、前記測定レンジの切替処理の判定プロセスを、制御手段11で実施するほかに、電圧測定手段14に存在するDSP14cで行うようにしてもよく、このような態様も本発明に含むものとする。
【0061】
この実施形態に係る静電容量測定装置10において、制御手段11は、キャパシタCxの静電容量Cを測定するにあたって、基本的な態様として、まず、測定レンジを最小レンジに設定したうえで、キャパシタCxを放電手段13により所定の電圧範囲(好ましくは0V(接地電位))にまで放電した後、キャパシタCxに対して一定の単位時間Δt(この実施形態では100ms)を1区間として、複数のn区間(nは0を含む順序を表す正の整数)にわたって定電流源12によりキャパシタCxを連続的に充電し、前記複数のn区間ごとに、例えばサンプリング間隔を1msとしてキャパシタCxの端子間瞬時電圧Vをサンプリングし、前記複数のn区間内でサンプリングした100個の端子間瞬時電圧Vから第n区間目の単位時間Δtn内の区間平均電圧VAを求め、最初の1区間(n=0区間)の区間平均電圧をVA0、n区間(n≧1)目の区間平均電圧をVAnとして、キャパシタCxの静電容量Cを次の式(1)、
C=(I×n×Δt)/(VAn−VA0)…(1)
により求める。
【0062】
次に、制御手段11の動作について、図2の横軸を時間、縦軸を電圧とするキャパシタCxの電圧波形および図3図4のフローチャートにより具体的に説明する。
【0063】
なお、図2の電圧波形は、本発明によるキャパシタCxの充放電電圧波形の一例を示しているが、説明の便宜上、増幅器14a、A/D変換器14bやDSP14cなどの遅延時間や応答時間は、前記電圧波形に対して無視できる程度のものとしている。また、図3のフローチャートは本発明の動作の一例を示してあり、測定レンジの整合性を判定するステップの代表的な処理を示している。
【0064】
図2の電圧波形は、キャパシタCxをプラスの定電流Iで充電した場合の波形であるが、キャパシタCxをマイナスの定電流Iで充電する場合、図2の電圧波形は、時間軸を中心として上下反転した波形になる。また、以下に説明する比較判定式の不等号の向きも逆になる。
【0065】
キャパシタCxをマイナスの定電流Iで充電する場合、Hi端子16aを測定回路の0V(接地電位)に接続し、Lo端子16bに測定回路を接続する構成、あるいはHi端子16aおよびLo端子16bを測定回路に接続する回路構成をとることもある。
【0066】
まず、制御手段11は、ステップST101では、測定レンジを充電電流が最小になる最小レンジに設定したうえで、スイッチSWをオンにし、キャパシタCxを放電手段13により、例えば0V付近に存在する放電規定電圧範囲まで、好ましくは放電手段13の許容最大電流である電流量の定電流で放電し、ステップST102で、放電が完了するまで待つ。
【0067】
この場合、放電検出用比較器15またはDSP14cにより、キャパシタCxの端子間瞬時電圧Vの極性と交流電圧の有無を判別する。前記交流電圧は、測定端子16a,16bに図示しない交流電圧発生装置を接続した場合に、前記交流電圧発生装置が印加する電圧である。交流電圧を検出した場合には、制御手段11は、スイッチSWをオフとして、静電容量測定装置10が備える図示しない保護回路を介して前記交流電圧を放電する。
【0068】
また、この静電容量測定装置10が備える素子の耐電圧により、キャパシタCxの端子間瞬時電圧Vが連続して放電することが困難な場合には、制御手段11は、スイッチSWを間欠的にオンオフして連続放電が可能な電圧にまで下げる。
【0069】
また、キャパシタCxの端子間瞬時電圧Vが放電することが困難な極めて高い電圧である場合には、制御手段11はスイッチSWをオフにして図示しない保護回路を介して放電する。
【0070】
この場合のスイッチSWのオフ機能は、例えばDSP14cに高電圧用の閾値電圧HVを設定し、キャパシタCxの端子間瞬時電圧Vあるいは前記端子間瞬時電圧Vの実効値が前記高電圧用の閾値電圧HVを超えたときに、制御手段11によりスイッチSWをオフにすることにより実現できる。保護回路の性質上、ソフトウエアを介在せずに、スイッチSW自体あるいはハードウエアによりスイッチSWをオフする機能を、制御手段11がスイッチをオフする機能に併用して実現する。なお、前記閾値電圧HVは、人体が接触する危険がある場合は、キャパシタCxの端子間瞬時電圧Vが実効値で33Vを超えないように設定することが好ましい。
【0071】
キャパシタCxの端子間瞬時電圧Vが連続して放電することが可能で、端子間瞬時電圧Vの極性が充電方向(プラスの定電流Iで充電する場合は、キャパシタCxのプラス側がHi側の測定端子16aに、マイナス側がLo側の測定端子16bに接続されている状態)の場合には、制御手段11は、スイッチSWをオンにして、キャパシタCxを放電手段13の定電流シンク回路により放電する。
【0072】
これに対して、キャパシタCxの端子間瞬時電圧Vの極性が放電方向(プラスの定電流Iで充電する場合は、キャパシタCxが測定端子16a,16bに対して前記充電方向と逆の状態で接続してある状態)の場合には、制御手段11は、キャパシタCxを定電流源12の定電流ソース回路により放電する。なお、放電手段13が放電用の定電流ソース回路を備えている場合には、その放電用の定電流ソース回路によりキャパシタCxを放電させることもできる。
【0073】
前記放電時に、制御手段11は、キャパシタCxの端子間瞬時電圧Vの経過状態を表示部11bに例えばレベルメータ形式で表示してもよい。
【0074】
また、制御手段11は、放電時の異常回避のため、スイッチSWのオンと同時にタイマ11cをスタートして、あらかじめ設定してある放電上限時間が経過しても放電が完了しない場合には、表示部11bにエラー状態であることを表示して放電をさらに継続してもよい。
【0075】
前記放電上限時間は、既充電のキャパシタCxを測定端子16a,16bに接続した後の最初の1回の放電時間が不明であり、容量測定時にキャパシタCxの静電容量Cが測定範囲上限を超えて測定を終了し、その後制御手段11が行う放電の放電時間よりも十分に長い時間とすることが好ましい。
【0076】
制御手段11は、キャパシタCxを放電規定電圧範囲(例えば約0mVのレベルまで放電し、前記0mVのレベルを超えて放電方向に約数100mVのレベルの範囲に収まるまでの範囲)まで定電流で放電する。放電手段13の定電流シンク回路に電圧制限回路がある場合、前記電圧制限回路の電圧設定値は、前記放電規定電圧範囲内でマージン電圧(例えば前記0mVを超えて放電方向に約15mV程度)を考慮した電圧とすることが好ましい。
【0077】
これとは別に、放電規定電圧範囲を、例えば充電方向に約15mVのレベルにまで放電し、前記充電方向に約15mVのレベルを超えて、放電方向に約100mVのレベルの範囲に収まるまでの範囲としてもよい。放電手段13の定電流ソース回路に電圧制限回路がある場合、前記電圧制御回路の電圧設定値は約0mV程度としてもよい。さらに、定電流源12および放電手段13は、あらかじめ設定されている規定電圧に達した場合に、充電や放電を停止する手段を備えていてもよい。
【0078】
キャパシタCxが連続的に放電可能な場合で、キャパシタCxの端子間瞬時電圧Vが放電規定電圧範囲内にまで低下したとき、放電検出用比較器15は制御手段11に放電終結信号を送信する。この場合、ノイズ電圧などにより放電終結信号がオン・オフを繰り返して安定しない場合でも、制御手段11は、放電終結信号を最初に受信した時点でステップST103に移行する。
【0079】
別の例として、DSP14cが瞬時電圧比較器と状態遷移(ステート駆動)型放電終結検出用シーケンス部(ともに図示しない)を備え、前記DSP14cに備えてある瞬時電圧比較器と放電検出用シーケンス部を利用してDSP14cから制御手段11に放電終結信号を送信する場合には、前記状態遷移型放電完了検出用シーケンス部は、放電開始の直前に放電終結信号をオフにし、キャパシタCxの端子間瞬時電圧Vが放電規定電圧範囲内にまで低下したことを最初に検出した時点で、放電終結信号をオンとし、これをもって制御手段11はステップST103に移行する。
【0080】
DSP14cは、キャパシタCxの端子間瞬時電圧Vが放電規定電圧範囲内であるかどうかを前記瞬時電圧比較器で検出する際、ノイズの影響を避けるため、前記キャパシタCxの端子間瞬時電圧Vがローパスフィルタを通過した電圧を、前記瞬時電圧比較器に入力することが好ましい。また、前記瞬時電圧比較器をヒステリシスコンパレータとしてもよい。このとき、制御手段11は、所定の割り込み動作によって放電終結信号を検出してもよい。
【0081】
放電検出用比較器15あるいはDSP14cから出力する前記放電終結信号に基づいて、定電流シンク回路あるいは定電流ソース回路がオフになることで放電が終結する。このとき、図示しない測定終了スイッチによる指示によりキャパシタCxの静電容量Cを測定しない場合には、制御手段11は放電終結状態を継続する。キャパシタCxの静電容量Cを測定する場合には、ステップST103に移行する。
【0082】
ステップST103で、制御手段11は、タイマ11cをスタートして、キャパシタCxの端子間瞬時電圧波形V、放電電流、放電終結信号が安定するまでの時間として、s0時間(第1安定化時間)経過するのを待つ。
【0083】
この実施形態において、第1安定化時間としてのs0時間(待ち時間)は、制御手段11から送信する指令信号および電圧測定手段14が出力する測定値信号の伝達遅延時間マージン(約0.0ms〜10ms程度)や前回の測定値出力信号受信時からの経過時間を考慮して、約0.0ms〜100ms程度として設定される。
【0084】
電圧測定手段14が一定の単位時間Δtごとに区間平均電圧VAを出力するタイミングと、制御手段11から電圧測定手段14に区間平均電圧取得指令を出すタイミングが一致せず、s0時間終了時点で、電圧測定手段14が区間平均電圧VAを出力する時点よりも前の時点で、前記伝達遅延時間マージンを確保して、制御手段11から電圧測定手段14に区間平均電圧取得指令を出力するように、制御手段11は、電圧測定手段14との間でタイミング同期関係の成立をはかる。この同期関係の成立は、制御手段11と電圧測定手段14との間でのハンドシェーク動作によってもはかることができる。
【0085】
なお、制御手段11は、電圧測定手段14がフリーランの状態である場合、前記伝達遅延時間マージンの時間程度の範囲で、s0時間終了時点で前記タイミングが一致する場合には、s0時間に電圧測定手段14が区間平均電圧VAを出力するまでの時間を加えた待ち時間を新たなs0時間とする。
【0086】
また、電圧測定手段14がフリーランの状態で、一定時間間隔(この例では100ms)で区間平均電圧VAを出力している場合には、制御手段11は、s0時間内に電圧測定手段14が出力する区間平均電圧VAを読み捨てる。電圧測定手段14がフリーランでない状態の場合でも、s0時間内に電圧測定手段14が出力する区間平均電圧VAを読み捨てる。
【0087】
制御手段11は、s0時間経過直後に、タイマ11cをリセットし、ステップST104で、一定の単位時間Δtの時系列順を表す変数nを0に設定(n=0)するとともに、測定範囲外電圧フラグをクリアして、定電流源12と電圧測定手段14に、測定レンジ情報を含む充電開始指令信号を伝達する。
【0088】
前記充電開始指令信号を受けて、定電流源12は、定電流IによりキャパシタCxの充電を開始する。また、電圧測定手段14は、測定レンジ情報に基づく制御データを設定するとともに、前記状態遷移(ステート駆動)型放電終結用シーケンス処理および充放電に関する処理を実施する状態になる。なお、前記状態遷移(ステート駆動)型放電終結用型シーケンス処理による放電終結信号は、充電の後、放電の直前にオフの状態になる。
【0089】
ステップST104での充電開始と同時に、制御手段11は、ステップST105では、タイマ11cを再度スタートさせ、キャパシタCxの端子間瞬時電圧波形、充電電流および電圧測定手段14の波形が安定するまでの時間として、s1時間(第2安定化時間)経過するのを待つ。
【0090】
この第2安定化時間としてのs1時間(待ち時間)は、制御手段11から送信する指令信号および電圧測定手段14が出力する測定値信号の伝達遅延時間マージン(約0.0ms〜10ms程度)や前回の測定値出力信号受信時からの経過時間を考慮して、約0.1ms〜100ms程度として設定する。
【0091】
第2安定時間においても、電圧測定手段14が一定の単位時間Δtごとに区間平均電圧VAを出力するタイミングと、制御手段11から電圧測定手段14に区間平均電圧取得指令を出すタイミングが一致しないように、s1時間終了直前時に、電圧測定手段14が区間平均電圧VAを出力する時点よりも前の時点で、前記伝達遅延時間マージンを確保して、制御手段11から電圧測定手段14に区間平均電圧取得指令が出力するように、制御手段11は、電圧測定手段14との間でタイミング同期関係の成立をはかる。
【0092】
第2安定化時間におけるタイミング同期関係が成立した直後に、制御手段11は、電圧測定手段14に区間平均電圧取得指令を送信する。制御手段11が図るタイミング同期関係の成立は、制御手段11と電圧測定手段14との間でのハンドシェーク動作によってもはかることができる。
【0093】
なお、制御手段11は、電圧測定手段14がフリーランの状態である場合、前記伝達遅延時間マージンの時間程度の範囲で、s1時間終了直前で前記タイミングが一致する場合には、s1時間に電圧測定手段14が区間平均電圧VAを出力するまでの時間を加えた待ち時間を新たなs1時間とする。
【0094】
また、電圧測定手段14がフリーランの状態で、一定時間間隔(この例では100ms)で区間平均電圧VAを出力している場合には、制御手段11は、s1時間内に電圧測定手段14が出力する区間平均電圧VAを読み捨てる。電圧測定手段14がフリーランでない場合も同様に、ハンドシェーク実施期間中およびs1時間内に電圧測定手段14が出力する区間平均電圧VAを読み捨てる。
【0095】
制御手段11は、s1時間経過直後、タイマ11cをリセットしたうえで、電圧測定手段14がフリーランの状態でない場合は、電圧測定手段14に区間平均電圧の測定開始指令を送信する。ステップST106において、複数のn区間の1区間ごとに、その区間終了時点でDSP14cより、キャパシタCxの端子間電圧Vの区間平均電圧VAを取得する。
【0096】
ST106において区間平均電圧VAを取得するにあたって、制御手段11は、電圧測定測定手段14がフリーラン状態の場合には、前記したように、s1時間内に電圧測定手段14が出力する区間平均電圧VAを読み捨てる。
【0097】
s1時間を電圧測定手段14が計時する別の実施例として、電圧測定測定手段14にもs1時間を計時するタイマを内蔵し、制御手段11は、充電開始時に電圧測定測定手段14にタイマスタート信号を送信し、前記内蔵タイマがs1時間を計時した時点から、電圧測定手段14は区間平均電圧VAの計算を開始するようにしてもよい。
【0098】
この実施形態において、一定の単位時間Δtは100msであり、その間、キャパシタCxの端子間瞬時電圧Vは直線的に上昇する。キャパシタCxの端子間瞬時電圧Vのサンプリング間隔は1msであり、電圧測定手段14は、一定の単位時間Δtの100msの間にサンプリングした端子間瞬時電圧Vの総和(100個の総和ΣV)をサンプリング個数(100個)で割った値を区間平均電圧VAとして出力する。このとき、前記区間平均電圧VAに所定の単位変換係数を乗じた値を新たな区間平均電圧VAとして出力してもよい。
【0099】
前記サンプリング個数は100個であるので、キャパシタCxの端子間瞬時電圧Vのサンプリングデータ番号が0番から始まるとして、最初の1区間内には「0〜99」番目、次の第2区間内には「100〜199」番目、次の第3区間内には「200〜299」番目、以後同様として、電圧測定手段14は、区間最初のデータと最後のデータを前後の区間で重複しないようにすることが好ましい。このようにして、この実施形態では、一定の単位時間Δtを1区間とする各区間内に100個のサンプリングデータが存在するものとする。
【0100】
電圧測定手段14は、一定の単位時間ΔtとキャパシタCxの端子間瞬時電圧Vのサンプリング間隔は任意の値としてもよいものとする。例えば、一定の単位時間Δtを100msとして、端子間瞬時電圧Vのサンプリング間隔を0.1msとすれば、一定の単位時間Δtを1区間とする各区間内に1000個のサンプリングデータが存在することになる。
【0101】
ステップST106において、今回はn=0であるから、制御手段11がDSP14cから取得する区間平均電圧VAは、最初の単位時間Δt0を含むnが0である区間における区間平均電圧VA0である。制御手段11は、この最初の単位時間Δt0を含むnが0である区間における区間平均電圧VA0をメモリ11aに記憶する。
【0102】
制御手段11は、続くステップST107で、区間平均電圧VAまたはキャパシタCxの端子間瞬時電圧Vが測定範囲上限電圧VU(例えば1V)を超えた(充電電圧が上昇する場合においてVA0>UVまたはV>VU)ことを示す測定範囲外電圧フラグがクリアされているかどうかを判定する。
【0103】
電圧測定測定手段14は、キャパシタCxの端子間瞬時電圧Vをサンプリングする過程で、前記端子間瞬時電圧Vと測定範囲上限電圧VUを比較し、充電電圧が上昇する場合においてV>VUであるときは、瞬時電圧測定範囲外電圧割り込み信号を、瞬時電圧測定範囲外電圧に関する状態遷移型シーケンス処理を介して制御手段11に伝達する。制御手段11は、前記測定範囲外電圧割り込み信号を受けて、図4に示す測定範囲外電圧割り込みプログラムを実行する。
【0104】
前記測定範囲外電圧割り込みプログラムにおいては、まず、ステップST201では、制御手段11は前記測定範囲外電圧フラグがクリア状態にあるかどうかを判定し、クリア状態でなければNOの経路を通り、何もしないで割り込みプログラムを終了する。
【0105】
前記測定範囲外電圧フラグがクリア状態でない状態に対して、ステップST201の処理を実施したときに、測定範囲外電圧フラグがクリア状態であれば、YESの経路を通り、制御手段11はステップST202の処理を実施して、測定範囲外電圧フラグをセットした後、ステップST203に移行して、放電中かどうかを判定する。
【0106】
ステップST203の処理を実施して、放電中であればYESの経路を通り、制御手段11は前記測定範囲外電圧割り込みプログラムを終了する。放電中でなければ、NOの経路を通り、ステップST204の処理を実施して、放電を開始し、前記測定範囲外電圧割り込みプログラムを終了する。
【0107】
前記瞬時電圧測定範囲外電圧に関する状態遷移型シーケンス処理は、前記ステップST104で実施する充電開始処理の直前に、測定範囲外電圧フラグをクリアする時点で、測定範囲外電圧割り込み信号をオフし、キャパシタCxの端子間瞬時電圧Vが測定範囲上限電圧VUを超えたときに、電圧測定手段14が測定範囲外電圧割り込み信号をオンにする処理である。
【0108】
電圧測定手段14は、キャパシタCxの端子間瞬時電圧Vと測定範囲上限電圧VUとを比較するにあたって、ノイズによる誤動作を避けるため、前記端子間瞬時電圧Vがローパスフィルタを通過した電圧と、測定範囲上限電圧VUとを比較することが好ましい。また、その比較器をヒステリシスコンパレータとしてもよい。制御手段11は、ステップST107では、区間平均電圧VAまたは前記端子間瞬時電圧Vが測定範囲上限電圧VUを超えない場合には、測定範囲外電圧フラグをクリア状態に維持する。
【0109】
ステップST107において、区間平均電圧VA(VA0)またはキャパシタCxの端子間瞬時電圧Vが、充電電圧が上昇する場合において、測定範囲上限電圧VUを超えたことを示す測定範囲外電圧フラグが、図4に示す前記測定範囲外電圧割り込みプログラムによりセットされている場合には、NOの経路を通り、ステップST107aに移行し、放電が実施されていなければ放電を開始し、制御手段11は、測定レンジを、放電後に行う充電時の充電電流が最小となる最小のレンジに切り替えるレンジダウン処理を実行する。また、表示部11bに測定範囲外であることを表示する。
【0110】
一方、ステップST107で、前記VA(VA0)が前記VUを超えない状態(充電電圧が上昇する場合においてV≦VU)、かつ前記キャパシタCxの端子間瞬時電圧がVUを超える状態(充電電圧が上昇する場合においてV>VU)を示す測定範囲外電圧フラグをクリアしてあれば、制御手段11は、ステップST108に移行し、ステップST108で、n>0かどうかを判定する。今回の場合、先のステップST104でn=0に設定してあり、n≦0であるので、ステップST108aに移行する。
【0111】
ステップST108aでは、n=n+1として、変数nを1インクリメントして、制御手段11は、ステップST106に戻り、n=1である次の単位時間Δt1を含むnが1である区間の区間平均電圧VA1を取得してメモリ11aに格納する。
【0112】
ステップST106では、第n区間の区間平均電圧VAnも同様にメモリ11aに格納するが、制御手段11は、2つ以上の区間平均電圧VAnを格納した時点で、前記の式(1)によるキャパシタCxの静電容量Cを求める計算(C=(I×n×Δt)/(VAn−VA0))を実行してもよい。
【0113】
そして、ステップST107では、nが1の区間以降の各区間についても、区間平均電圧VAまたはキャパシタCxの端子間瞬時電圧Vが測定範囲上限電圧VUを超えたことを示す測定範囲外電圧フラグが、図4の前記測定範囲外電圧割り込みプログラムによりセットしてある場合には、前記ステップ107aに移行する場合と同様に、制御手段11は、ステップST107aに移行し、放電が実施されていなければ放電を開始し、測定レンジを、放電後に行う充電時の充電電流が最小となる、最小のレンジに切り替えるレンジダウン処理を実行する。また、表示部11bに測定範囲外であることを表示する。
【0114】
一方、ステップST107で、前記VA(VA0)が前記VUを超えない状態(充電電圧が上昇する場合においてVA≦VU)、かつ前記キャパシタCxの端子間瞬時電圧がVUを超える状態(充電電圧が上昇する場合においてV>VU)を示す測定範囲外電圧フラグをクリアしてあれば、制御手段11は、次のステップST108に移行して、n>0かどうかを判定するが、n=1でありn>0であるため、制御手段11は、次のステップST109に進む。
【0115】
制御手段11は、ステップST109において、n(n≧1)区間目の区間平均電圧VAnと、最初の第1区間の区間平均電圧VA0との電圧差VD(n)が、第1のレンジ許容電圧差としてあらかじめ設定されているレンジダウン規定電圧Vdownのn倍(nは前記n区間目の変数nと同値)の値Vdown(n)以下であるかどうか、あるいは、n区間目の隣接する2区間の区間平均電圧VAの電圧差VD(=VAn−VAn−1:今回の場合、VA1−VA0)が、レンジダウン規定電圧Vdownを超えないかどうか、のいずれか一方の判定を選択して実行する。制御手段11が実施するVdownに関する選択は、ノイズ電圧の状況に応じて行う。
【0116】
この実施形態において、レンジダウン規定電圧Vdownは、測定レンジの最小容量をCmin,定電流をI,区間の単位時間をΔt,所定のマージンをJ(約1.1)として次の式(2)、
Vdown=J×I×Δt/Cmin…(2)
により求まる。なお、このレンジダウン規定電圧の整数倍の値であるVdown(n)は、n区間目の変数をnとして、Vdown×nにより設定できる。
【0117】
ステップST109において、n(n≧1)区間目の区間平均電圧VAnと、最初の第1区間の区間平均電圧VA0との電圧差VD(n)が、レンジダウン規定電圧Vdownのn倍の値Vdown(n)を超えている場合(充電電圧が上昇する場合において、n区間目の区間平均電圧Vanと、最初の区間平均電圧VA0の電圧差VD(n)>Vdown(n))、あるいは、n区間目の隣接する2区間の区間平均電圧VAの電圧差VDが、レンジダウン規定電圧Vdownを超えている場合(充電電圧が上昇する場合において、隣接する2区間の区間平均電圧VAの電圧差VD>Vdown)には、制御手段11はステップST109aに移行する。
【0118】
ステップST109aにおいて、電圧差VD(n)を選択した場合、制御手段11は、放電を開始してから、測定レンジのダウン処理を実行するが、n区間目と最初の第1区間の区間平均電圧の電圧差VD(n)の値が、比較値であるVdown(n)の10倍を超える場合には、前記測定レンジを2レンジ分ダウンしてもよいし、また、100場合を超える場合には、前記測定レンジを3レンジ分ダウンしてもよい。
【0119】
同様に、ステップST109aにおいて、電圧差VDを選択した場合、制御手段11は、放電を開始してから、隣接する2区間の区間平均電圧の電圧差VDの値が、比較値であるVdownの10倍を超える場合には、前記測定レンジを2レンジ分ダウンしてもよいし、また、100場合を超える場合には、測定レンジを3レンジ分ダウンしてもよい。なお、ステップST109とステップST109aの選択内容(電圧差をVD(n)とするかVDとするか)は、両ステップで同じにすることが好ましい。
【0120】
なお、前記n区間目の区間平均電圧VAnと、最初の区間平均電圧VA0の電圧差VD(n)と、前記隣接する2区間の区間平均電圧VAの電圧差VDの、いずれを選択する場合でも、前記区間平均電圧VAが前記測定電圧上限電圧VUを超える場合は、制御手段11は、ステップST109を通る前に、前記ステップST107から前記ステップST107aに移行することがある。また、すでに最小の容量を測定する最小測定レンジである場合は、前記レンジダウン規定電圧Vdownによるレンジダウン処理を保留する。
【0121】
また、静電容量Cに電圧依存性があるキャパシタCxを測定する場合などで、レンジアップとレンジダウンとを交互に繰り返すような場合にも、制御手段11は、前記レンジダウン規定電圧Vdownによるレンジダウン処理を保留する。
【0122】
ステップST109aで、放電を開始して、レンジダウン処理を行う場合、制御手段11は、表示部11bに測定範囲外であることを表示(例えば表示部11bの静電容量表示部に「0000」と表示)して、ステップST102に戻る。
【0123】
これに対して、ステップST109において、n(n≧1)区間目の区間平均電圧VAnと、最初の第1区間の区間平均電圧VA0との電圧差VD(n)が、レンジダウン規定電圧Vdownのn倍の値Vdown(n)を超えない場合(充電電圧が上昇する場合において、n区間目の区間平均電圧Vanと、最初の区間平均電圧VA0の電圧差VD(n)≦Vdown(n))、あるいは、n区間目の隣接する2区間の区間平均電圧VAの電圧差VDが、レンジダウン規定電圧Vdownを超えない場合(充電電圧が上昇する場合において、隣接する2区間の区間平均電圧VAの電圧差VD≦Vdown)には、制御手段11は、ステップST110に進む。
【0124】
ステップST110において、制御手段11は、n(n≧1)区間目の区間平均電圧VAnと、最初の第1区間の区間平均電圧VA0との電圧差VD(n)が、第2のレンジ許容電圧差としてあらかじめ設定してあるレンジアップ規定電圧Vupのn倍(nは前記n区間目の変数nと同値)の値Vup(n)を超えるかどうか、あるいは、n区間目の隣接する2区間の区間平均電圧VAの電圧差VD(=VAn−VAn−1)が、レンジアップ規定電圧Vupを超えるかどうか、のいずれか一方の判定を選択して実行する。
【0125】
前記制御手段11が実施するVupに関する選択は、各測定レンジおよび最大の容量を測定する測定レンジにおける電圧測定手段14の最小分解能やノイズ電圧の状況に応じて行う。また、すでに最大測定レンジである場合、制御手段11は、電圧測定手段14の最小分解能やノイズ電圧の状況によっては、複数のn区間のうちの最初の数区間は測定レンジのレンジアップ処理を見合わせてもよく、Vupの設定自体も他のレンジでのVupに比べて小さな値としてもよい。最大測定レンジではない場合でも、制御手段11は、電圧測定手段14の最小分解能やノイズ電圧の状況によっては、複数のn区間のうち最初の数区間は測定レンジのレンジアップ処理を見合わせてもよい。
【0126】
この実施形態において、レンジアップ規定電圧Vupは、測定レンジの最大容量をCmax,定電流をI,区間の単位時間をΔt,所定のマージンをL(約1.0)として次の式(3)、
Vup=L×I×Δt/Cmax…(3)
により求まる。なお、このレンジアップ規定電圧の整数倍の値であるVup(n)についても、前記と同様に、n区間目の変数をnとして、Vup×nにより、制御手段11が設定する。
【0127】
ステップST110において、n(n≧1)区間目の隣接する2区間の区間平均電圧VAの電圧差VDが、レンジアップ規定電圧Vupを超えない(充電電圧が上昇する場合において、隣接する2区間の区間平均電圧VAの電圧差VD<Vup)場合、あるいは、n区間目の区間平均電圧VAnと、最初の区間平均電圧VA0との差電圧VD(n)が、レンジアップ規定電圧Vupのn倍の値Vup(n)を超えない(充電電圧が上昇する場合において、n区間目の区間平均電圧Vanと、最初の区間平均電圧VA0の電圧差VD(n)<Vup(n))場合は、制御手段11は、ステップST110aに移行する。
【0128】
ステップST110aにおいて、制御手段11は、放電を開始してから、測定レンジのレンジアップ処理を実行し、表示部11bに測定範囲外であることを表示して、ステップST102に戻る。
【0129】
ステップST110において、電圧差VD(n)を選択した場合は、ステップST110aにおいて、制御手段11は、測定レンジをレンジアップするにあたり、レンジアップ規定電圧のn倍の値Vup(n)が、比較値としてのn区間目と最初の第1区間の区間平均電圧の電圧差VD(n)の10倍を超える場合には、測定レンジを2レンジ分アップしてもよいし、また、100場合を超える場合には、測定レンジを3レンジ分アップしてもよい。
【0130】
ステップST110において、前記電圧差VDを選択した場合は、ステップST110aにおいて、制御手段11は、同様に、前記レンジアップ処理規定電圧の値Vupが、比較値としての隣接する2区間の区間平均電圧の電圧差VDの10倍を超える場合には、測定レンジを2レンジ分アップしてもよいし、また、100場合を超える場合には、測定レンジを3レンジ分アップしてもよい。いずれにしても、ステップST110とステップST110aの選択内容は、両ステップで同じとする。
【0131】
前記ステップST110の処理を実施するときに、すでに最大レンジになっている場合は、制御手段11は、レンジアップは実施せず、測定範囲外表示として、表示部11bに例えば「9999」と表示する。この表示桁数は任意に設定してよい。また、表示内容も数字以外の例えば「−−−−」などの別の態様としてもよい。
【0132】
これに対し、ステップST110において、n(n≧1)区間目の隣接する2区間の区間平均電圧VAの電圧差VDが、レンジアップ規定電圧Vupを超える(充電電圧が上昇する場合において、隣接する2区間の区間平均電圧VAの電圧差VD≧Vup)場合、あるいは、n区間目の区間平均電圧VAnと、最初の区間平均電圧VA0との差電圧VD(n)が、レンジアップ規定電圧Vupのn倍の値Vup(n)を超える(充電電圧が上昇する場合において、n区間目の区間平均電圧Vanと、最初の区間平均電圧VA0の電圧差VD(n)≧Vup(n))場合は、制御手段11は、ステップST111に移行する。
【0133】
ステップST111では、制御手段11は、充電区間時間Δtnの時系列順を表す変数nが、あらかじめ設定してある区間回数の規定回数以下であるかどうかを判定する。
【0134】
この実施形態では、予測電圧VD(n+1)とレンジ規定電圧差Vrngとを比較する場合において、制御手段11または電圧測定手段14には、測定レンジの測定容量範囲や充電電流Iの電流量が小さい順に10倍ごとに、あらかじめ設定してあるので、前記区間回数の規定回数を9回としている。
【0135】
なお、キャパシタCxの静電容量Cの表示部11bにおける表示桁数に余裕がある場合や、制御手段11が測定レンジのアップダウンを行わない場合は、前記規定回数を10回以上としてもよい。
【0136】
また、n(n≧1)区間目の区間平均電圧VAnと、最初の第1区間の区間平均電圧VA0との電圧差VD(n)と、前記レンジ規定電圧差Vrngの概略0.5倍から1.0倍の値を比較する別の実施例では、制御手段11または電圧測定手段14に、測定レンジの測定容量範囲や充電電流Iの電流量が小さい順に10倍ごとにあらかじめ設定してある場合は、前記区間回数の規定回数を5回としてもよい。
【0137】
なお、制御手段11または電圧測定手段14に、測定レンジの測定容量範囲や充電電流Iの電流量が小さい順に10倍ごとにあらかじめ設定してない場合や、測定レンジの最小容量Cminを測定する場合に、前記レンジ規定電圧差に含まれる区間の数である所定間隔数Nが通常の値である1でない場合や、キャパシタCxの静電容量Cを高速に測定する別の実施例では、前記区間回数の規定回数を任意に設定してもよいし、また、制御手段11は、充電の途中で前記区間回数の規定回数を適宜設定しなおしてもよい。
【0138】
ステップST111において、第n区間目の単位時間Δtnの時系列を表す変数nが前記区間回数の規定回数の例えば9回に達していない場合は、制御手段11は、YESの経路を通り、ステップST112に進む。ステップST112において、制御手段11は、次回のn+1回目の区間平均電圧VAn+1と、最初の区間平均電圧(初期電圧)VA0との差の予測電圧VD(n+1)を予測し、前記予測電圧VD(n+1)と、あらかじめ設定してあるレンジ規定電圧差Vrngとを比較し、前記予測電圧VD(n+1)が前記レンジ規定電圧差Vrngを超えないかどうかを判定する。
【0139】
前記レンジ規定電圧差Vrngの概略0.5倍から1.0倍の値を比較する別の実施例において、制御手段11は、n回目の区間平均電圧VAnと最初の第1区間での区間平均電圧VA0との電圧差VD(n)と、前記レンジ規定電圧差Vrngの0.5倍から1.0倍の値とを比較し、電圧差VD(n)が、前記レンジ規定電圧差Vrngの概略0.5倍から1.0倍の値を超えないかどうかを判定する。
【0140】
制御手段11が、前記予測電圧VD(n+1)を予測する場合は、前記レンジ規定電圧Vrngの概略0.5倍から1.0場合の値を比較する別の実施例に比べて、キャパシタCxの静電容量Cの計算分解能が大きくなり、ノイズに対しては安定するが、測定時間や計算時間が長くなる。
【0141】
前記レンジ規定電圧Vrngの概略0.5倍から1.0場合の値を比較する別の実施例において、制御手段11が、前記電圧差VD(n)と前記レンジ規定電圧差Vrngの概略0.5倍の値と比較するようにするのは、前記所定間隔数Nの最小の値が1であるので最小の区間数が2区間であることと、前記予測電圧VD(n+1)が前記レンジ規定電圧差Vrngを超えないようにするためである。最小の測定区間数が2区間を超える場合で、少なくとも前記最小の測定区間までは充電を継続する場合は、最小の測定区間数(前記所定間隔数をNとしてN+1)に応じて、前記レンジ規定電圧差Vrngに対する倍率を0.5より大きくすることができる。
【0142】
例えば、制御手段11は、前記レンジ規定電圧差Vrngに対する倍率を、前記所定間隔数をNとして、1.0−(1/(N+1))などとしてもよい。また、充電の途中でも、充電済み区間数などに応じて、前記予測電圧VD(n+1)が前記レンジ規定電圧差Vrngを超えない範囲で、前記レンジ規定電圧差Vrngに対する倍率を適宜設定しなおしてもよい。例えば、制御手段11は、前記レンジ規定電圧差Vrngに対するn区間目の倍率を、1.0−(1/(n+1))などとしてもよい。
【0143】
なお、前記レンジ規定電圧差Vrngに対する倍率を一定とする場合は、前記区間平均電圧VAnの最小分解能が十分にあり、ノイズが少ない環境であれば、前記レンジ規定分圧差Vrngに対する倍率を概略0.5にすることにより、制御手段11は、キャパシタCxの静電容量Cを比較的高速に測定することができる。
【0144】
ここで、n区間目の前記区間平均電圧VAnと、前記最初の区間平均電圧VA0との電圧差VD(n)の値を計算する時点まで、制御手段11による処理が進んだとして、前記次のn+1区間目の区間平均電圧VAn+1と、前記最初の区間平均電圧VA0との差の予測電圧VD(n+1)を予測するには、前記定電流により充電するので、キャパシタCxの電圧Vが直線的に上昇することを前提として、制御手段11は、前記予測電圧VD(n+1)をVD(n+1)=VD(n)×(n+1)/nとして予測することができる。
【0145】
例えば、図2のグラフにおいて、最初の単位時間Δt0(区間平均電圧VA0)からn=2の区間時間Δt2(区間平均電圧VA2)の3区間にわたって充電を継続したとき、制御手段11は、次のn=3の単位時間Δt3の区間平均電圧VA3と、最初の第1区間での区間平均電圧VA0との予測電圧差VD(3)を、VD(3)=VD(2)×3/2として予測することができる。
【0146】
また、この実施形態において、レンジ規定電圧差Vrngは、測定レンジの最小容量をCmin,定電流をI,最小の所定測定間隔をN(正の整数),区間の単位時間をΔt,所定のマージンをM(約0.8〜1.0)として次の式(4)、
Vrng=M×I×N×Δt/Cmin…(4)
により求まる。
【0147】
ステップST112の処理を実施したときに、前記予測電圧VD(n+1)が前記レンジ規定電圧Vrngを超えない(充電電圧が上昇する場合において、前記予測電圧VD(n+1)≦Vrng))場合、あるいは、例えば前記電圧差VD(n)が前記レンジ規定電圧Vrngの0.5場合を超えない(充電電圧が上昇する場合において、前記電圧差VD(n)≦(Vrng×0.5))場合は、制御手段11は、ステップST108aに移行して、変数nを1インクリメントしたのち、ステップST106〜ST111までを繰り返し実行する。
【0148】
ステップST111において、変数nが前記区間回数の規定回数に達した場合、あるいは、ステップST112において、前記予測電圧VD(n+1)が前記レンジ規定電圧Vrngを超える(充電電圧が上昇する場合において、前記予測電圧VD(n+1)>Vrng)場合は、制御手段11は、ステップST113に移行して、放電を開始するとともに、前記の式(1)により、キャパシタCxの静電容量Cを計算し、ステップST114aまたはステップST115において、その静電容量Cを表示部11bに表示する。前記レンジ規定電圧差Vrngの概略0.5場合から1.0倍の値を比較する別の実施例においては、例えば、前記電圧差VD(n)が前記レンジ規定電圧Vrngの0.5場合を超える(充電電圧が上昇する場合において、前記電圧差VD(n)>(Vrng×0.5))場合には、制御手段11はステップST113に移行する。
【0149】
キャパシタCxの静電容量Cを求めるにあたり、変数nが前記区間回数の規定回数に達した場合は、例えばn=9であり、VAnはn=9の単位時間Δt9の区間平均電圧VA9であるので、制御手段11は、前記区間平均電圧VA9を前記式(1)に代入する。これに対して、例えば6区間目で前記予測電圧VD(n+1)がVD(n+1)>Vrngになった場合は、n=5であり、VAnはn=5の単位時間Δt5の区間平均電圧VA5であるので、制御手段11は前記区間平均電圧VA5を前記式(1)に代入する。
【0150】
なお、前記レンジ規定電圧差Vrngの概略0.5倍から1.0倍の値を比較する別の実施例において、最小の所定測定間隔数Nが1で、制御手段11または電圧測定手段14に、測定レンジの測定容量範囲や充電電流の電流量が小さい順に10倍ごとに、あらかじめ規定してある場合には、前記区間回数の規定回数を5回とする。
【0151】
前記区間回数の規定回数が5回の場合に対して、制御手段11または電圧測定手段14に、測定レンジの測定容量範囲や充電電流Iの電流量が小さい順に10倍ごとにあらかじめ規定してない場合や、測定レンジの最小容量Cminを測定する場合に、前記レンジ規定電圧差に含まれる区間の数である所定間隔数Nが通常の値である1ではない場合や、キャパシタCxの静電容量Cを高速に測定する場合は、前記区間回数の区間回数の規定回数を任意に設定してもよいし、また、制御手段11は充電の途中で前記区間回数の規定回数を適宜設定しなおしてもよい。
【0152】
また、制御手段11には、前記定電流の値Iを電流補正式I=d×Iにより補正し、サンプリングした前記区間平均電圧VAn、または前記端子間瞬時電圧Vを電圧補正式V=e×V+fにより補正し、キャパシタCxの静電容量Cを静電容量補正式C=g×C+hにより補正する補正パラメータd,e,f,g,hが設定してあり、制御手段11は、測定レンジの整合性を判定する際またはキャパシタCxの静電容量Cを算出する際に、前記電流補正式または前記電圧補正式、または前記静電容量補正式による補正計算を1回以上行う。なお、前記補正計算は電圧測定手段14が行うこととしてもよい。
【0153】
このとき、制御手段11は補正パラメータd,e,f,g,hを設定し、前記定電流の値I、前記区間平均電圧VAn、前記端子間瞬間電圧V、前記キャパシタCxの静電容量Cの大きさなどに応じた適正な補正パラメータを使い分けるようにしてもよい。また、補正した静電容量Cに対して、再度補正をかけてもよい。なお、制御手段11に対して前記補正パラメータを、図示しない操作キーもしくは外部機器に接続してある通信インタフェースを介して設定することができる。
【0154】
その後、制御手段11は、ステップST114で、測定終了かどうかを判定する。この終了判定は、制御手段11に対する、例えば図示しない測定終了のためのスイッチを介した測定終了指示入力の有無で判定する。測定終了の指示入力がなく、測定を続行する場合には、制御手段11はステップST114aでは、前述した計算により求めたキャパシタCxの静電容量Cを表示部11bに表示した後、ステップST102に戻る。
【0155】
これに対して、制御手段11に対する、例えば図示しない測定終了のためのスイッチを介した測定終了指示入力がある場合は、制御手段11は、ステップST115で、キャパシタCxの静電容量Cを表示部11bに表示し、放電終了を待って測定を終了する。
【0156】
なお、放電が終了するまでの間、制御手段11は、表示部11bにキャパシタCxの端子間瞬時電圧Vを電圧値または電圧レベルメータなどにより、表示してもよい。前記端子間瞬時電圧Vの表示によれば、静電容量測定装置10は、キャパシタCxを放電完了状態で、測定端子16a,16bから取り外すことが可能になる。また、測定を再開することができる別の実施例では、例えば、制御手段11に対する、図示しない測定再開のためのスイッチを介した測定再開指示入力により、制御手段11は測定を再開できるものとする。
【0157】
なお、ステップST106の測定開始からの時間として、定電流をI、レンジ最大容量Cmax,レンジ最小容量Cmin,最小の所定測定間隔数をN(正の整数),一定の単位時間をΔt,所定のマージンをK(約1.2)で定められる、次の式(5)による異常状態回避のための充電上限時間Tが
T=K×N×Δt×Cmax/Cmin…(5)
により求まる。フローチャートには図示しないが、前記の式(5)による値を超えた場合、制御手段11は、その時点で測定終了として、放電を開始し、キャパシタCxの静電容量Cを計算し、その静電容量Cを好ましくは異常状態表示とともに、を表示部11bに表示するようにしてもよい。
【0158】
なお、前記測定レンジのアップダウン処理を実行する場合において、フローチャートには図示しないが、ステップST104aの処理を実施したときに、表示部11bが前記測定レンジ後との固定小数点方式による数値表示で、キャパシタCxの静電容量Cが、前記補正計算などにより、前記表示部11bの固定小数点方式による数値表示の表示範囲を超える場合は、制御手段11は、ステップST110aに移行するようにしてもよい。他方、前記測定レンジのアップダウン処理を実行しない実施例の場合において、測定容量範囲を広くする場合は、制御手段11は、レンジ最大容量Cmaxを大きくして充電上限時間Tを長くしてもよい。
【0159】
また、前記充電上限時間Tに対するマージンKは、前記充電上限時間Tが何らかの異常状態が発生した場合に有効となるように、前記レンジアップダウン処理や前記測定レンジのレンジダウン判定のマージンJ,前記測定レンジのレンジアップ判定に対するマージンL,前記連続的な充電の継続の必要性に対するマージンMに比べて、比較的大きな値とする。
【0160】
前記実施形態では、一定単位時間Δtを一例として100msとしているが、キャパシタCxの静電容量Cが小容量の場合には、電圧が上昇しやすいため、制御手段11は、これに応じて一定単位時間Δtを短くしてもよい。
【0161】
キャパシタCxの静電容量Cの別の算出方法として、電圧測定手段14の最小分解能が大きい場合や、ノイズがある場合のことを考慮して、最初の単位時間Δt0〜第n区間目の単位時間Δtnまでを前半と後半とに2分し、前半の区間平均電圧VAnまたは前半でサンプリングしたキャパシタCxの端子間瞬時電圧Vの平均をVa,前半のサンプリング時刻の平均をtaとし、後半の区間平均電圧VAnまたは後半でサンプリングしたキャパシタCxの端子間瞬時電圧Vの平均をVb,後半のサンプリング時刻の平均をtbとして、制御手段11は、キャパシタCxの静電容量Cを前記式(1)に代えて次の式(6)、
C=I×(tb−ta)/(Vb−Va)…(6)
により求めてもよい。
【0162】
例えば、区間数が5区間の場合、制御手段11は、ta−tb=2.5Δtであるので、キャパシタCxの静電容量Cは、
C=I×2.5Δt/{(VA4+VA3+VA2)/3−(VA1+VA0)/2}
または
C=I×2.5Δt/{(VA4+VA3+VA2+VA1)/4−(VA0)}
により求めることができる。
【0163】
また、さらに別のキャパシタCxの静電容量Cの算出方法として、最初の単位時間Δt0〜第n区間目の単位時間Δtnまでを前半と後半とに2分し、前半の区間での電圧データ数をa、前半の区間平均電圧VAnまたは前半の区間内でサンプリングしたキャパシタCxの端子間瞬時電圧Vの総和をΣVAa、後半の区間での電圧データ数をb、後半の区間平均電圧VAnまたは後半の区間内でサンプリングしたキャパシタCxの端子間瞬時電圧Vの総和をΣVAb、区間平均電圧VAまたはキャパシタCxの端子間瞬時電圧Vを取得するサンプリング間隔をΔtとして、制御手段11は、キャパシタCxの静電容量Cを前記の式(1)に代えて次の式(7)、
C=I×0.5×(a+b)×Δt/((ΣVAb)/b−(ΣVAa)/a)
=I×0.5×a×b×(a+b)×Δt/(a×(ΣVAb)−b×(ΣVAa)) …(7)
により求めることもできる。
【0164】
前記いくつかのキャパシタCxの静電容量Cの算出方法の中から一つの算出方法を採用するにあたって、制御手段11または電圧測定手段14の演算性能や、最小の区間数が2区間であることを踏まえて、前記の実施形態では前記の式(1)で説明しているが、前記の式(6)と式(7)のいずれかの方法を選択することが好ましい。この場合、制御手段11は、前半と後半に2分する場合、区間平均電圧VAnや端子間瞬時電圧Vの最小分解能が大きい場合には、相対的に前半区間を短く後半区間を長くして、キャパシタCxの静電容量Cの計算桁数を多くし、ノイズが多い場合は、前半区間と後半区間をほぼ同じ時間間隔とすることができる。
【0165】
以上説明したように、本発明によれば、キャパシタCxを定電流により連続的に充電し、その充電途中でレンジ切り替えおよび放電開始の判定を行い、充電中の直線区間のみを平均化して、キャパシタCxの静電容量を測定するようにしたことにより、高速で安定度の高い測定値が得られる。また、キャパシタCxの端子間瞬時電圧Vをレンジ範囲の上限電圧付近になるまで、測定を継続するようにしたことにより、キャパシタCxの静電容量Cに関して、安定度の高い測定値を期待することができる。
【0166】
また、キャパシタCxの静電容量Cを求めるときに、キャパシタCxの端子間瞬時電圧Vの電圧波形の傾きを計算することにより、キャパシタCxに含まれる等価直列抵抗成分やHi端子およびLo端子部分に存在する接触抵抗成分などがあってもキャンセルすることができる。
【0167】
さらに、区間平均電圧VAの取得を開始する前に、s0,s1の第1および第2安定化時間を確保していることにより、安定度の高いキャパシタCxの静電容量Cを求めることができる。
【符号の説明】
【0168】
11 制御手段
11a メモリ
11b 表示部
11c タイマ
12 定電流源
13 放電手段
14 電圧測定手段
14a 増幅器
14b A/D変換器
14c DSP
15 放電検出用比較器
Cx 被測定キャパシタ
図1
図2
図3
図4