特開2015-197309(P2015-197309A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日置電機株式会社の特許一覧

<>
  • 特開2015197309-静電容量測定装置 図000003
  • 特開2015197309-静電容量測定装置 図000004
  • 特開2015197309-静電容量測定装置 図000005
  • 特開2015197309-静電容量測定装置 図000006
  • 特開2015197309-静電容量測定装置 図000007
  • 特開2015197309-静電容量測定装置 図000008
  • 特開2015197309-静電容量測定装置 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-197309(P2015-197309A)
(43)【公開日】2015年11月9日
(54)【発明の名称】静電容量測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 27/26 20060101AFI20151013BHJP
【FI】
   G01R27/26 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2014-73657(P2014-73657)
(22)【出願日】2014年3月31日
(71)【出願人】
【識別番号】000227180
【氏名又は名称】日置電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083404
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100166752
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 典子
(72)【発明者】
【氏名】南 秀明
(72)【発明者】
【氏名】小池 伸一
【テーマコード(参考)】
2G028
【Fターム(参考)】
2G028AA02
2G028BB06
2G028CG07
2G028DH03
2G028DH13
2G028EJ06
2G028FK06
2G028GL12
2G028HN09
2G028LR02
(57)【要約】
【課題】キャパシタに印加する定電流値I,充電時間Tおよび初期電圧と充電終了時の最終電圧の差電圧とから、キャパシタの静電容量を測定するにあたって、電圧測定系の構成を簡素化するとともに、測定時間の高速化をはかる。
【解決手段】キャパシタCxの電圧Vと、予め設定されている充電終結電圧Vdとを比較してV=Vdのとき充電終結信号を出力する充電検出用比較器15と、充電時間を計時するタイマ11cとを備え、キャパシタCxを放電させた後、定電流Iで充電を開始し、充電検出用比較器15より充電終結信号が出力された時点で充電を完了し、この間の充電時間Tをタイマ11cにより取得して、キャパシタCxの静電容量CをI×T/Vdにより算出することを基本とし、充電途中で充電電流が適正かどうかの判定を行い、その判定結果に基づいて、適宜測定レンジの変更を行って、再度容量測定を行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定素子であるキャパシタを定電流で充電する定電流源からなる充電手段と、前記キャパシタを放電する放電手段と、前記キャパシタの端子間瞬時電圧Vを測定する電圧測定手段と、前記キャパシタに対する充放電を制御するとともに、充電時間および放電時間を計時するタイマ手段を有する制御手段と、表示部とを含み、
前記充電手段により前記キャパシタを定電流Iで充電したときに、前記キャパシタの端子間瞬時電圧Vのランプ波形が時間の経過とともに直線的に変化することに基づいて、前記キャパシタの静電容量Cを求めて前記表示部に表示する静電容量測定装置において、
前記制御手段または前記電圧測定手段は、前記キャパシタを所定の電圧範囲にまで放電した後、一定の単位時間Δtを1区間として、複数のn区間(nは0を含む順序を表す正の整数)にわたって、前記定電流源により前記キャパシタを連続的に充電し、前記複数のn区間の1区間ごとに、その区間内で所定の時間間隔で追加的にサンプリングした所定個数の前記キャパシタの端子間瞬時電圧Vを取得し、最初(n=0区間)の区間平均電圧をVA0、n区間目の区間平均電圧をVAnとして、前記区間平均電圧VAnの差電圧および/または前記キャパシタの静電容量Cを求め、前記キャパシタの端子間瞬時電圧V,前記区間平均電圧VAn,前記区間平均電圧VAnの差電圧,前記キャパシタの静電容量Cの各値から選択した少なくとも1つの値が所定の範囲外の値であるときには、前記キャパシタを実質的な0Vにまで放電した後、前記定電流源の前記定電流の値Iを変更して、前記キャパシタを連続的に充電して前記キャパシタの静電容量Cを求めることを特徴とする静電容量測定装置。
【請求項2】
前記制御手段または前記電圧測定手段には、前記定電流源が発生する前記定電流の値Iと、前記キャパシタの測定容量範囲とに応じた複数の測定レンジがあらかじめ設定してあり、前記複数の測定レンジごとに設定してある所定の充電終結電圧Vdと前記キャパシタの端子間瞬時電圧Vとを比較し、V=Vdを超えたときに充電終結信号を出力する充電検出用比較器を備え、
前記制御手段または前記電圧測定手段は、前記キャパシタの端子間を所定の電圧範囲内にまで放電した後、その放電状態が安定する所定の安定化時間が経過するのを待って、前記キャパシタを前記設定してある測定レンジの定電流の値Iで充電を開始し、その後前記充電検出用比較器が前記充電終結信号を出力した時点で充電を終結し、前記充電開始から充電終結までの充電時間Tを前記タイマ手段により取得して、前記キャパシタの静電容量Cを次の式(1)、
C=I×T/Vd…(1)
により算出して前記表示部に表示することを特徴とする請求項1に記載の静電容量測定装置。
【請求項3】
前記制御手段または前記電圧測定手段は、前記測定レンジをレンジアップあるいはレンジダウンするレンジ切替機能を備えていることを特徴とする請求項2に記載の静電容量測定装置。
【請求項4】
前記制御手段または前記電圧測定手段は、前記算出した静電容量Cが、レンジ下限容量未満の場合には、前記充電電流を減少するレンジダウン処理を行い、再度、前記キャパシタへの充電を開始することを特徴とする請求項3に記載の静電容量測定装置。
【請求項5】
前記制御手段または前記電圧測定手段は、前記算出した静電容量Cが、レンジ上限容量を超える場合には、前記充電電流を増加するレンジアップ処理を行い、再度、前記キャパシタへの充電を開始することを特徴とする請求項3に記載の静電容量測定装置。
【請求項6】
前記制御手段または前記電圧測定手段は、所定のタイムアウト時間Toutが経過しても、前記充電検出用比較器が前記充電終結信号を出力しない場合には、前記充電手段による充電を中止し、前記放電手段により前記キャパシタを実質的に0Vにまで放電し、前記充電電流を増加するレンジアップ処理を行い、再度、前記キャパシタへの充電を開始することを特徴とする請求項3に記載の静電容量測定装置。
【請求項7】
前記制御手段または前記電圧測定手段は、前記タイムアウト時間Toutを、レンジ最大容量をCmax,定電流をI,充電終結電圧をVd,所定のマージンをMとして、次の式(2)、
Tout=M×Vd×Cmax/I…(2)
により求めること、または、前記制御手段または前記電圧測定手段には、前記式(2)により求めた前記タイムアウト時間Toutがあらかじめ設定してあることを特徴とする請求項6に記載の静電容量測定装置。
【請求項8】
前記制御手段または前記電圧測定手段には、前記キャパシタの端子間瞬時電圧Vに対する所定の判定基準値Xが設定してあり、前記制御手段または前記電圧測定手段は、前記キャパシタへの充電期間中、前記キャパシタの端子間瞬時電圧Vと前記判定基準値Xとを比較し、前記キャパシタの端子間瞬時電圧Vが前記判定基準値Xを超えたときには、その時点で前記充電手段による充電を中止し、前記放電手段により前記キャパシタを所定の電圧範囲にまで放電し、レンジアップ処理またはレンジダウン処理を行い、再度、前記キャパシタへの充電を開始することを特徴とする請求項3ないし7のいずれか1項に記載の静電容量測定装置。
【請求項9】
前記制御手段または前記電圧測定手段には、測定範囲上限電圧VUが設定してあり、前記制御手段または前記電圧測定手段は、前記キャパシタの端子間瞬時電圧Vが前記測定範囲上限電圧VUを超えたとき、すなわち充電電圧が上昇する場合において、V>VUのときには、その時点で前記充電手段による充電を中止し、前記放電手段により前記キャパシタを所定の電圧範囲にまで放電し、前記レンジダウン処理を行い、再度、前記キャパシタへの充電を開始することを特徴とする請求項8に記載の静電容量測定装置。
【請求項10】
前記制御手段または前記電圧測定手段には、測定範囲上限電圧VUが設定してあり、前記制御手段または前記電圧測定手段は、前記各区間ごとに、前記電圧測定手段によりサンプリングした所定個数の前記キャパシタの端子間瞬時電圧Vから区間平均電圧VAnを取得し、前記区間平均電圧VAnが前記測定範囲上限電圧VUを超えたとき、すなわち充電電圧が上昇する場合において、VAn>VUのときには、その時点で前記充電手段による充電を中止し、前記放電手段により前記キャパシタを所定の電圧範囲にまで放電し、前記レンジダウン処理を行い、再度、前記キャパシタへの充電を開始することを特徴とする請求項8に記載の静電容量測定装置。
【請求項11】
前記制御手段または前記電圧測定手段は、前記各測定レンジの最小容量と所定の定数により求まるレンジダウン規定電圧Vdownを用い、前記n区間目の隣接する2区間の区間平均電圧VAnの電圧差をVDとして、前記電圧差VDが前記レンジダウン規定電圧Vdownを超えたとき、すなわち充電電圧が上昇する場合において、VD>Vdownのときには、その時点で前記充電手段による充電を中止し、前記放電手段により前記キャパシタを所定の電圧範囲にまで放電し、前記レンジダウン処理を行い、再度、前記キャパシタへの充電を開始することを特徴とする請求項10に記載の静電容量測定装置。
【請求項12】
前記制御手段または前記電圧測定手段は、前記区間平均電圧VAnと前記最初の区間平均電圧VA0との区間平均電圧の電圧差をVD(n)とし、前記レンジダウン規定電圧Vdownのn倍の値をVdown(n)とし、前記電圧差VD(n)が前記レンジダウン規定電圧Vdownのn倍の値Vdown(n)を超えたときには、その時点で前記充電手段による充電を中止し、前記放電手段により前記キャパシタを所定の電圧範囲にまで放電し、前記レンジダウン処理を行い、再度、前記キャパシタへの充電を開始することを特徴とする請求項11に記載の静電容量測定装置。
【請求項13】
前記制御手段または前記電圧測定手段は、前記レンジダウン規定電圧Vdownを、測定レンジの最小容量をCmin,定電流をI,区間の単位時間をΔt,所定のマージンをJとして次の式(3)、
Vdown=J×I×Δt/Cmin…(3)
により求めること、または、前記制御手段または前記電圧測定手段には、前記式(3)により求めた前記レンジダウン規定電圧Vdownがあらかじめ設定してあることを特徴とする請求項11または12に記載の静電容量測定装置。
【請求項14】
前記制御手段または前記電圧測定手段は、前記各測定レンジの最大容量と所定の定数により求まるレンジアップ規定電圧Vupを用い、前記n区間目の隣接する2区間の区間平均電圧VAnの電圧差をVDとして、前記レンジアップ規定電圧Vupが前記電圧差VDを超えたとき、すなわち充電電圧が上昇する場合において、VD<Vupのときには、その時点で前記充電手段による充電を中止し、前記放電手段により前記キャパシタを所定の電圧範囲にまで放電し、前記レンジアップ処理を行い、再度、前記キャパシタへの充電を開始することを特徴とする請求項10に記載の静電容量測定装置。
【請求項15】
前記制御手段または前記電圧測定手段は、前記区間平均電圧VAnと前記最初の区間平均電圧VA0との区間平均電圧の電圧差をVD(n)とし、前記レンジアップ規定電圧Vupのn倍の値Vup(n)が前記電圧差VD(n)を超えたとき、すなわち充電電圧が上昇する場合において、VD(n)<Vup(n)のときには、その時点で前記充電手段による充電を中止し、前記放電手段により前記キャパシタを所定の電圧範囲にまで放電し、前記レンジアップ処理を行い、再度、前記キャパシタへの充電を開始することを特徴とする請求項14に記載の静電容量測定装置。
【請求項16】
前記制御手段または前記電圧測定手段は、前記レンジアップ規定電圧Vupを、測定レンジの最大容量をCmax,定電流をI,区間の単位時間をΔt,所定のマージンをLとして次の式(4)、
Vup=L×I×Δt/Cmax…(4)
により求めること、または、前記制御手段または前記電圧測定手段には、前記式(4)により求めた前記レンジアップ規定電圧Vupがあらかじめ設定してあることを特徴とする請求項14または15に記載の静電容量測定装置。
【請求項17】
前記制御手段または前記電圧測定手段には、前記定電流の値Iを電流補正式I=d×Iにより補正し、サンプリングした前記区間平均電圧VAnまたは前記端子間瞬時電圧Vを電圧補正式V=e×V+fにより補正し、前記キャパシタの静電容量Cを静電容量補正式C=g×C+hにより補正する補正パラメータd,e,f,g,hが設定してあり、前記測定レンジが所定の範囲にあるかを判定する際、または、前記キャパシタの静電容量を算出する際に、前記電流補正式または前記電圧補正式または前記静電容量補正式による補正計算を1回以上行うことを特徴とする請求項1ないし16のいずれか1項に記載の静電容量測定装置。
【請求項18】
前記制御手段または前記電圧測定手段は、前記電流補正式または前記電圧補正式または前記静電容量補正式による補正計算の有無とその計算回数と、前記補正パラメータd,e,f,g,hを、所定のキーおよび表示部または外部機器に対して入出力可能であることを特徴とする請求項17に記載の静電容量測定装置。
【請求項19】
被測定素子であるキャパシタを定電流で充電する定電流源からなる充電手段と、前記キャパシタ放電する放電手段と、前記キャパシタの端子間瞬時電圧Vを測定する電圧測定手段と、前記キャパシタに対する充放電を制御するとともに、充電時間および放電時間を計時するタイマ手段を有する制御手段と、表示部とを含み、
前記充電手段により前記キャパシタを定電流Iで充電したときに、前記キャパシタの端子間瞬時電圧Vのランプ波形が時間の経過とともに直線的に変化することに基づいて、前記キャパシタの静電容量Cを求めて前記表示部に表示する静電容量測定装置において、
前記制御手段または前記電圧測定手段は、前記キャパシタの静電容量Cを求めない場合は、前記キャパシタの端子間瞬時電圧Vが0Vとみなせる状態にまで放電し、前記キャパシタの静電容量Cを求める場合は、放電の1回ごとに交互に定める所定の電圧範囲内にまで放電した後、前記定電流で充電する定電流源により前記キャパシタを正の方向あるいは負の方向に、充電の1回ごとに交互に充電を開始し、一定の単位時間Δtを1区間として、複数のn区間(nは0を含む順序を表す正の整数)にわたって、前記定電流源により前記キャパシタを連続的に充電し、前記複数のn区間の1区間ごとに、その区間内で所定の時間間隔で追加的にサンプリングした所定個数の前記キャパシタの端子間瞬時電圧Vから区間平均電圧VAnを取得し、最初(n=0区間)の区間平均電圧をVA0、n区間目の区間平均電圧をVAnとして、前記キャパシタの静電容量Cまたは前記区間平均電圧VAnの差電圧を求め、前記キャパシタの端子間瞬時電圧V,前記区間平均電圧VAnの差電圧,前記キャパシタの静電容量Cの各値から選択した少なくとも1つの値が所定の範囲外の値であるときには、前記キャパシタを実質的な0Vにまで放電した後、前記定電流源の前記定電流の値Iを変更して、前記キャパシタを連続的に充電して前記キャパシタの静電容量Cを求めることを特徴とする静電容量測定装置。
【請求項20】
前記制御手段または前記電圧測定手段には、前記定電流源が発生する前記定電流の値Iと、前記キャパシタの測定容量範囲とに応じた複数の測定レンジがあらかじめ設定してあり、前記制御手段または前記電圧測定手段は、前記測定レンジのレンジダウンあるいは前記測定レンジのレンジアップを実施するとき、前記充電の1回ごとに前記測定レンジのレンジダウンあるいは前記測定レンジのレンジアップを交互に繰り返している場合には、前記キャパシタの端子間瞬時電圧Vが経時的に直線的に変化することに基づいて、前記キャパシタの静電容量Cを求め、これに対して、前記充電の1回ごとに前記測定レンジのレンジダウンと前記測定レンジのレンジアップを交互に繰り返していない場合には、前記測定レンジのレンジダウンあるいは前記測定レンジのレンジアップを実施することを特徴とする請求項19に記載の静電容量測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定素子であるキャパシタの静電容量を測定する静電容量測定装置に関し、さらに詳しく言えば、キャパシタを定電流にて所定時間充電し、その定電流値と、充電時間と、キャパシタの初期電圧と充電終了時の最終電圧の差電圧とから、キャパシタの静電容量を測定する静電容量測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
キャパシタ(コンデンサ)を定電流で充電すると、経時的に電圧が線形に上昇する。したがって、充電電流(定電流)をI,充電時間をT,充電開始時の初期電圧をVinit,充電終了時の最終電圧をVfinalとすれば、キャパシタの静電容量Cは、
C=I×T/(Vfinal−Vinit)
により求めることができる(特許文献1参照)。通常、充電はキャパシタを放電してから行われるため、初期電圧のVinitは0Vである。
【0003】
この測定原理を利用した静電容量測定装置の一つとして、特許文献2には、線形に増加する電圧ランプ波形を生成するために、キャパシタに接続可能な定電流源を含む電荷回路と、前記電圧ランプ波形に沿って第1の点と第2の点の2点間の電位差ΔVおよび時間差Δtを測定する測定手段と、キャパシタを放電させる制御部とを含み、キャパシタに対する充電電流(定電流)I,電位差ΔVおよび時間差Δtから、キャパシタの静電容量Cを、C=I×Δt/ΔVで求める容量測定システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−277495号公報
【特許文献2】米国特許第6275047号明細書(請求項6)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献2に記載された発明によれば、容量を測定するにあたって、キャパシタの初期電圧を必ずしも放電完了時の0Vにする必要はなく、定電流充電によって線形に増加するキャパシタの電圧ランプ波形の安定した所定の2点間の電位差ΔVと時間差Δtとを見ればよい。
【0006】
しかしながら、前記の測定原理を利用する限り、電位差ΔVを測定するための電圧測定手段を必要とする。特許文献1,2に記載された発明では、その電圧測定手段として、多重積分型等のA/Dコンバータとマイクロプロセッサとの組み合わせを用いており、これがかなりのコスト高となる。
【0007】
また、充電電流が被測定キャパシタの静電容量に対して適切かどうかの判定(充電途中でのレンジ切り替えおよび放電開始の判定等)を行わないため、結果として測定時間が長くなる。
【0008】
したがって、本発明の課題は、キャパシタを定電流にて所定時間充電し、その定電流値と、充電時間と、キャパシタの初期電圧と充電終了時の最終電圧の差電圧とから、キャパシタの静電容量を測定するにあたり、キャパシタ電圧の電圧測定系の構成を簡素化して、低コスト化を実現するとともに、充電途中において適宜レンジの切り替えおよび放電開始の判定を行い高速化を可能にした静電容量測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、被測定素子であるキャパシタを定電流で充電する定電流源からなる充電手段と、前記キャパシタを放電する放電手段と、前記キャパシタの端子間瞬時電圧Vを測定する電圧測定手段と、前記キャパシタに対する充放電を制御するとともに、充電時間および放電時間を計時するタイマ手段を有する制御手段と、表示部とを含み、前記充電手段により前記キャパシタを定電流Iで充電したときに、前記キャパシタの端子間瞬時電圧Vのランプ波形が時間の経過とともに直線的に変化することに基づいて、前記キャパシタの静電容量Cを求めて前記表示部に表示する静電容量測定装置において、
前記制御手段または前記電圧測定手段は、前記キャパシタを所定の電圧範囲にまで放電した後、一定の単位時間Δtを1区間として、複数のn区間(nは0を含む順序を表す正の整数)にわたって、前記定電流源により前記キャパシタを連続的に充電し、前記複数のn区間の1区間ごとに、その区間内で所定の時間間隔で追加的にサンプリングした所定個数の前記キャパシタの端子間瞬時電圧Vを取得し、最初(n=0区間)の区間平均電圧をVA0、n区間目の区間平均電圧をVAnとして、前記区間平均電圧VAnの差電圧および/または前記キャパシタの静電容量Cを求め、前記キャパシタの端子間瞬時電圧V,前記区間平均電圧VAn,前記区間平均電圧VAnの差電圧,前記キャパシタの静電容量Cの各値から選択した少なくとも1つの値が所定の範囲外の値であるときには、前記キャパシタを実質的な0Vにまで放電した後、前記定電流源の前記定電流の値Iを変更して、前記キャパシタを連続的に充電して前記キャパシタの静電容量Cを求めることを特徴としている。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記制御手段または前記電圧測定手段には、前記定電流源が発生する前記定電流の値Iと、前記キャパシタの測定容量範囲とに応じた複数の測定レンジがあらかじめ設定してあり、前記複数の測定レンジごとに設定してある所定の充電終結電圧Vdと前記キャパシタの端子間瞬時電圧Vとを比較し、V=Vdを超えたときに充電終結信号を出力する充電検出用比較器を備え、
前記制御手段または前記電圧測定手段は、前記キャパシタの端子間を所定の電圧範囲内にまで放電した後、その放電状態が安定する所定の安定化時間が経過するのを待って、前記キャパシタを前記設定してある測定レンジの定電流の値Iで充電を開始し、その後前記充電検出用比較器が前記充電終結信号を出力した時点で充電を終結し、前記充電開始から充電終結までの充電時間Tを前記タイマ手段により取得して、前記キャパシタの静電容量Cを次の式(1)、
C=I×T/Vd…(1)
により算出して前記表示部に表示することを特徴としている。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項2において、前記制御手段または前記電圧測定手段は、前記測定レンジをレンジアップあるいはレンジダウンするレンジ切替機能を備えていることを特徴としている。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項3において、前記制御手段または前記電圧測定手段は、前記算出した静電容量Cが、レンジ下限容量未満の場合には、前記充電電流を減少するレンジダウン処理を行い、再度、前記キャパシタへの充電を開始することを特徴としている。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項3において、前記制御手段または前記電圧測定手段は、前記算出した静電容量Cが、レンジ上限容量を超える場合には、前記充電電流を増加するレンジアップ処理を行い、再度、前記キャパシタへの充電を開始することを特徴としている。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項3において、前記制御手段または前記電圧測定手段は、所定のタイムアウト時間Toutが経過しても、前記充電検出用比較器が前記充電終結信号を出力しない場合には、前記充電手段による充電を中止し、前記放電手段により前記キャパシタを実質的に0Vにまで放電し、前記充電電流を増加するレンジアップ処理を行い、再度、前記キャパシタへの充電を開始することを特徴としている。
【0015】
請求項7に記載の発明は、請求項6において、前記制御手段または前記電圧測定手段は、前記タイムアウト時間Toutを、レンジ最大容量をCmax,定電流をI,充電終結電圧をVd,所定のマージンをMとして、次の式(2)、
Tout=M×Vd×Cmax/I…(2)
により求めること、または、前記制御手段または前記電圧測定手段には、前記式(2)により求めた前記タイムアウト時間Toutがあらかじめ設定してあることを特徴としている。
【0016】
請求項8に記載の発明は、請求項3ないし7のいずれか1項において、前記制御手段または前記電圧測定手段には、前記キャパシタの端子間瞬時電圧Vに対する所定の判定基準値Xが設定してあり、前記制御手段または前記電圧測定手段は、前記キャパシタへの充電期間中、前記キャパシタの端子間瞬時電圧Vと前記判定基準値Xとを比較し、前記キャパシタの端子間瞬時電圧Vが前記判定基準値Xを超えたときには、その時点で前記充電手段による充電を中止し、前記放電手段により前記キャパシタを所定の電圧範囲にまで放電し、レンジアップ処理またはレンジダウン処理を行い、再度、前記キャパシタへの充電を開始することを特徴としている。
【0017】
請求項9に記載の発明は、請求項8において、前記制御手段または前記電圧測定手段には、測定範囲上限電圧VUが設定してあり、前記制御手段または前記電圧測定手段は、前記キャパシタの端子間瞬時電圧Vが前記測定範囲上限電圧VUを超えたとき、すなわち充電電圧が上昇する場合において、V>VUのときには、その時点で前記充電手段による充電を中止し、前記放電手段により前記キャパシタを所定の電圧範囲にまで放電し、前記レンジダウン処理を行い、再度、前記キャパシタへの充電を開始することを特徴としている。
【0018】
請求項10に記載の発明は、請求項8において、前記制御手段または前記電圧測定手段には、測定範囲上限電圧VUが設定してあり、前記制御手段または前記電圧測定手段は、前記各区間ごとに、前記電圧測定手段によりサンプリングした所定個数の前記キャパシタの端子間瞬時電圧Vから区間平均電圧VAnを取得し、前記区間平均電圧VAnが前記測定範囲上限電圧VUを超えたとき、すなわち充電電圧が上昇する場合において、VAn>VUのときには、その時点で前記充電手段による充電を中止し、前記放電手段により前記キャパシタを所定の電圧範囲にまで放電し、前記レンジダウン処理を行い、再度、前記キャパシタへの充電を開始することを特徴としている。
【0019】
請求項11に記載の発明は、請求項10において、前記制御手段または前記電圧測定手段は、前記各測定レンジの最小容量と所定の定数により求まるレンジダウン規定電圧Vdownを用い、前記n区間目の隣接する2区間の区間平均電圧VAnの電圧差をVDとして、前記電圧差VDが前記レンジダウン規定電圧Vdownを超えたとき、すなわち充電電圧が上昇する場合において、VD>Vdownのときには、その時点で前記充電手段による充電を中止し、前記放電手段により前記キャパシタを所定の電圧範囲にまで放電し、前記レンジダウン処理を行い、再度、前記キャパシタへの充電を開始することを特徴としている。
【0020】
請求項12に記載の発明は、請求項11において、前記制御手段または前記電圧測定手段は、前記区間平均電圧VAnと前記最初の区間平均電圧VA0との区間平均電圧の電圧差をVD(n)とし、前記レンジダウン規定電圧Vdownのn倍の値をVdown(n)とし、前記電圧差VD(n)が前記レンジダウン規定電圧Vdownのn倍の値Vdown(n)を超えたときには、その時点で前記充電手段による充電を中止し、前記放電手段により前記キャパシタを所定の電圧範囲にまで放電し、前記レンジダウン処理を行い、再度、前記キャパシタへの充電を開始することを特徴としている。
【0021】
請求項13に記載の発明は、請求項11または12において、前記制御手段または前記電圧測定手段は、前記レンジダウン規定電圧Vdownを、測定レンジの最小容量をCmin,定電流をI,区間の単位時間をΔt,所定のマージンをJとして次の式(3)、
Vdown=J×I×Δt/Cmin…(3)
により求めること、または、前記制御手段または前記電圧測定手段には、前記式(3)により求めた前記レンジダウン規定電圧Vdownがあらかじめ設定してあることを特徴としている。
【0022】
請求項14に記載の発明は、請求項10において、前記制御手段または前記電圧測定手段は、前記各測定レンジの最大容量と所定の定数により求まるレンジアップ規定電圧Vupを用い、前記n区間目の隣接する2区間の区間平均電圧VAnの電圧差をVDとして、前記レンジアップ規定電圧Vupが前記電圧差VDを超えたとき、すなわち充電電圧が上昇する場合において、VD<Vupのときには、その時点で前記充電手段による充電を中止し、前記放電手段により前記キャパシタを所定の電圧範囲にまで放電し、前記レンジアップ処理を行い、再度、前記キャパシタへの充電を開始することを特徴としている。
【0023】
請求項15に記載の発明は、請求項14において、前記制御手段または前記電圧測定手段は、前記区間平均電圧VAnと前記最初の区間平均電圧VA0との区間平均電圧の電圧差をVD(n)とし、前記レンジアップ規定電圧Vupのn倍の値Vup(n)が前記電圧差VD(n)を超えたとき、すなわち充電電圧が上昇する場合において、VD(n)<Vup(n)のときには、その時点で前記充電手段による充電を中止し、前記放電手段により前記キャパシタを所定の電圧範囲にまで放電し、前記レンジアップ処理を行い、再度、前記キャパシタへの充電を開始することを特徴としている。
【0024】
請求項16に記載の発明は、請求項14または15において、前記制御手段または前記電圧測定手段は、前記レンジアップ規定電圧Vupを、測定レンジの最大容量をCmax,定電流をI,区間の単位時間をΔt,所定のマージンをLとして次の式(4)、
Vup=L×I×Δt/Cmax…(4)
により求めること、または、前記制御手段または前記電圧測定手段には、前記式(4)により求めた前記レンジアップ規定電圧Vupがあらかじめ設定してあることを特徴としている。
【0025】
請求項17に記載の発明は、請求項1ないし16のいずれか1項において、前記制御手段または前記電圧測定手段には、前記定電流の値Iを電流補正式I=d×Iにより補正し、サンプリングした前記区間平均電圧VAnまたは前記端子間瞬時電圧Vを電圧補正式V=e×V+fにより補正し、前記キャパシタの静電容量Cを静電容量補正式C=g×C+hにより補正する補正パラメータd,e,f,g,hが設定してあり、前記測定レンジが所定の範囲にあるかを判定する際、または、前記キャパシタの静電容量を算出する際に、前記電流補正式または前記電圧補正式または前記静電容量補正式による補正計算を1回以上行うことを特徴としている。
【0026】
請求項18に記載の発明は、請求項17において、前記制御手段または前記電圧測定手段は、前記電流補正式または前記電圧補正式または前記静電容量補正式による補正計算の有無とその計算回数と、前記補正パラメータd,e,f,g,hを、所定のキーおよび表示部または外部機器に対して入出力可能であることを特徴としている。
【0027】
請求項19に記載の発明は、被測定素子であるキャパシタを定電流で充電する定電流源からなる充電手段と、前記キャパシタ放電する放電手段と、前記キャパシタの端子間瞬時電圧Vを測定する電圧測定手段と、前記キャパシタに対する充放電を制御するとともに、充電時間および放電時間を計時するタイマ手段を有する制御手段と、表示部とを含み、前記充電手段により前記キャパシタを定電流Iで充電したときに、前記キャパシタの端子間瞬時電圧Vのランプ波形が時間の経過とともに直線的に変化することに基づいて、前記キャパシタの静電容量Cを求めて前記表示部に表示する静電容量測定装置において、
前記制御手段または前記電圧測定手段は、前記キャパシタの静電容量Cを求めない場合は、前記キャパシタの端子間瞬時電圧Vが0Vとみなせる状態にまで放電し、前記キャパシタの静電容量Cを求める場合は、放電の1回ごとに交互に定める所定の電圧範囲内にまで放電した後、前記定電流で充電する定電流源により前記キャパシタを正の方向あるいは負の方向に、充電の1回ごとに交互に充電を開始し、一定の単位時間Δtを1区間として、複数のn区間(nは0を含む順序を表す正の整数)にわたって、前記定電流源により前記キャパシタを連続的に充電し、前記複数のn区間の1区間ごとに、その区間内で所定の時間間隔で追加的にサンプリングした所定個数の前記キャパシタの端子間瞬時電圧Vから区間平均電圧VAnを取得し、最初(n=0区間)の区間平均電圧をVA0、n区間目の区間平均電圧をVAnとして、前記キャパシタの静電容量Cまたは前記区間平均電圧VAnの差電圧を求め、前記キャパシタの端子間瞬時電圧V,前記区間平均電圧VAnの差電圧,前記キャパシタの静電容量Cの各値から選択した少なくとも1つの値が所定の範囲外の値であるときには、前記キャパシタを実質的な0Vにまで放電した後、前記定電流源の前記定電流の値Iを変更して、前記キャパシタを連続的に充電して前記キャパシタの静電容量Cを求めることを特徴としている。
【0028】
請求項20に記載の発明は、請求項19において、前記制御手段または前記電圧測定手段には、前記定電流源が発生する前記定電流の値Iと、前記キャパシタの測定容量範囲とに応じた複数の測定レンジがあらかじめ設定してあり、前記制御手段または前記電圧測定手段は、前記測定レンジのレンジダウンあるいは前記測定レンジのレンジアップを実施するとき、前記充電の1回ごとに前記測定レンジのレンジダウンあるいは前記測定レンジのレンジアップを交互に繰り返している場合には、前記キャパシタの端子間瞬時電圧Vが経時的に直線的に変化することに基づいて、前記キャパシタの静電容量Cを求め、これに対して、前記充電の1回ごとに前記測定レンジのレンジダウンと前記測定レンジのレンジアップを交互に繰り返していない場合には、前記測定レンジのレンジダウンあるいは前記測定レンジのレンジアップを実施することを特徴としている。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、キャパシタを定電流Iで充電するときに、キャパシタの端子間瞬時電圧Vを充電検出用比較器で監視し、キャパシタの端子間瞬時電圧Vが充電検出用比較器に設定してある充電終結電圧Vdを超えた時点で充電終結とし、その充電開始から充電終結時までの充電時間Tをタイマにより計時すればよく、これによって、キャパシタの静電容量CをI×T/Vdで求めることができるので、殊更A/Dコンバータやマイクロプロセッサ等により構成する高価な電圧測定手段を用いる必要がなく、低コストの静電容量測定装置を提供することができる。
【0030】
また、判定基準値(測定範囲上限電圧VU、レンジダウン規定電圧Vdown、レンジアップ規定電圧Vup)を設定し、キャパシタへの充電期間中、キャパシタの端子間瞬時電圧Vと判定基準値Xとを比較して、キャパシタへの充電継続の適否を判定し、否判定の際には、その時点で充電手段による充電を中止し、放電手段によりキャパシタをあらかじめ設定してある放電規定電圧Vzにまで放電し、レンジアップ処理あるいはレンジダウン処理を実施して、再度、キャパシタへの充電を開始するようにしたことにより、キャパシタ電圧Vが充電終結電圧Vdに到達する充電時間Tまで待つことなく、最適な電流レンジに設定することができ、結果的に測定時間を短縮することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の第1実施形態に係る静電容量測定装置の構成を示す模式図。
図2】前記第1実施形態で充放電されるキャパシタ電圧波形の一例を示すグラフ。
図3】前記第1実施形態の動作の一例を示すフローチャート。
図4】本発明の第2実施形態に係る静電容量測定装置の構成を示す模式図。
図5】前記第2実施形態で区間割りされるキャパシタ電圧波形の一例を示すグラフ。
図6】前記第2実施形態の動作の一例を示すフローチャート。
図7】(a)(b)前記第2実施形態で実行する割込ルーチンを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0032】
次に、図1ないし図7により、本発明の第1および第2実施形態について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0033】
まず、図1に示すように、この第1実施形態に係る静電容量測定装置10Aは、基本的な構成として、制御手段11と、充電手段である定電流源12と、放電手段13と、放電検出用比較器14と、充電検出用比較器15とを備えている。
【0034】
定電流源12と放電手段13は、スイッチSWを介して被測定素子としてのキャパシタCxのHi側端子に対して並列に接続してある。キャパシタCxのLo側端子は接地してある。これとは異なり、Hi側端子を測定回路のグランドに接地し、Lo側端子を測定回路に接続する構成、あるいはHi側端子とLo側端子をともに測定回路に接続する回路構成とすることもある。
【0035】
定電流源12は、出力電流が異なる複数の定電流ソース回路もしくは可変出力型の定電流ソース回路を備え、充電時にキャパシタCxに所定電流値の定電流Iを供給する。放電手段13は、放電時にキャパシタCxに蓄積されている電荷を好ましくは定電流にて放電させる定電流シンク回路を備えている。なお、定電流源12および放電手段13は、あらかじめ設定してある規定電圧に達した場合に、充電や放電を停止する手段を備えていてもよい。
【0036】
放電検出用比較器14は、キャパシタCxのHi側端子に接続してあり、キャパシタCxの放電時のキャパシタの端子間瞬時電圧Vを監視し、キャパシタの端子間瞬時電圧Vがあらかじめ設定してある所定の放電規定電圧Vzになった時点で、放電終結信号を制御手段11と放電手段13とに出力する。この実施形態において、放電規定電圧Vzは0Vに設定してある。
【0037】
充電検出用比較器15は、キャパシタCxのHi側端子に接続してあり、キャパシタCxの充電時のキャパシタの端子間瞬時電圧Vを監視する。充電検出用比較器15には、所定の充電終結電圧Vdが設定してあり、充電検出用比較器15は、充電時においてキャパシタの端子間瞬時電圧Vが充電終結電圧Vdを超えた時点で、充電終結信号を制御手段11に出力する。
【0038】
なお、充電検出用比較器15には、アナログコンパレータ、デジタルコンパレータのいずれを用いてもよいが、デジタルコンパレータの場合、充電終結電圧Vdは電圧値として設定する。
【0039】
制御手段11には、充電手段である定電流源12より出力可能な定電流の電流量とキャパシタCxの測定容量範囲とに応じた複数の測定レンジが設定してある。制御手段11には、CPU(中央演算処理ユニット)やマイクロコンピュータ等を用い、また、制御手段11には、メモリ11a,表示部11b,タイマ11c等が接続してある。
【0040】
メモリ11aには、制御手段11の動作プログラム等が書き込まれたROMと、ワークRAMとが存在する。表示部11bには、液晶表示パネル等を用い、キャパシタCxの電圧波形や測定条件等を表示する。タイマ11cは、キャパシタCxの充電開始から充電終結までの充電時間を計時するが、他の時間計時に兼用してもよい。
【0041】
次に、図2のグラフおよび図3のフローチャートを参照して、第1実施形態でのキャパシタCxの静電容量Cを測定する制御手段11の動作について説明する。
【0042】
まず、ステップST101では、初期設定として、定電流源12のレンジを最小レンジ(キャパシタCxに印加される電流値が最も小さくなるレンジ)に設定する。また、放電検出用比較器14に放電規定電圧Vzを0Vとして設定するとともに、充電検出用比較器15に充電を終結するための所定の充電終結電圧Vdを設定する。
【0043】
そして、定電流源12をオフ、放電手段13をオンとし、スイッチSWをオンにして放電を開始し、キャパシタCxを放電手段13により定電流(好ましくは許容最大電流)で放電し、ステップST102に移行し、キャパシタ電圧Vが放電規定電圧Vzの0Vになるまで待つ。
【0044】
なお、キャパシタの端子間瞬時電圧Vが充電終結電圧Vd以上の状態から放電を開始した場合、放電に伴ってキャパシタCxの端子間瞬時電圧Vが低下し、キャパシタCxの端子間瞬時電圧Vが実質的に放電規定電圧Vzになると、充電検出用比較器15は充電終結信号をONとして出力するが、制御手段11は、放電時における充電終結信号は無視する。
【0045】
放電が終結して、V=Vz(=0V)になると、放電検出用検出器14の出力がONになり、制御手段11と放電手段14とに放電終結信号を出力するが、ステップST103では、キャパシタCxの電圧波形、放電電流、放電終結信号が安定するまでの時間として、s0時間(安定化時間)待つ。このs0時間は、約1ms〜200ms程度であってよい。
【0046】
なお、図2に示すように、放電規定電圧Vzに所定(例えば15mV程度)のマージン電圧αを付加してVz+αとし、キャパシタ電圧VがVz+αまで低下した時点(この例では、Vz=0Vであるから実質αまで低下した時点)で、放電検出用検出器14から放電終結信号を出力するようにしてもよい。
【0047】
s0の安定化時間経過後、制御手段11は、ステップST104で、放電手段13をオフ、定電流源12をオン、タイマ11cをスタートして充電を開始し、キャパシタCxを定電流Iで充電する。これにより、図2に示すように、キャパシタの端子間瞬時電圧Vが、線形電圧ランプ波形として直線的に上昇する。
【0048】
充電開始と同時に、放電検出用検出器14は非動作状態となり、放電終結信号がONからOFFに転ずる。また、充電開始と同時に、制御手段11は、タイマ11cから充電開始時のカウント値を得て、充電開始時点tsとしてメモリ11aに記憶する。
【0049】
充電開始後、制御手段11は、ステップST105で、キャパシタの端子間瞬時電圧Vが充電終結電圧Vdに達したかどうかを判定する。キャパシタの端子間瞬時電圧Vが実質的な充電終結電圧Vdになると、充電検出用比較器15の出力がONになり、制御手段11に充電終結信号を出力する。
【0050】
これにより、制御手段11は、ステップST106で、タイマ11cから充電終結時のカウント値を得て、充電終結時点teとしてメモリ11aに記憶するとともに、定電流源12をオフにして充電を終了する。
【0051】
制御手段11は、続くステップST107において、放電手段13をオンにして放電を開始するとともに、メモリ11cに記憶した充電開始時点tsと充電終結時点teとから充電時間Tを求め、キャパシタCxの静電容量Cを次の式(1)、
C=I×T/Vd…(1)
により算出する。
【0052】
そして、制御手段11は、ステップST108において、静電容量Cがレンジ下限容量以上であるかどうかを判定し、静電容量Cがレンジ下限容量以上でYESであれば、ステップST109移行し、今度は静電容量Cがレンジ上限容量以下であるどうかを判定する。
【0053】
制御手段11は、ステップST109での判定結果がYESで、静電容量Cがレンジ上限容量以下であれば、ステップST110で、表示部11bに前記ステップST107で式(1)により算出した静電容量Cを表示し、ステップST111で、測定終了かどうかを判定する。
【0054】
測定終了であれば、ステップST112において、ステップST107で開始した放電が完了するのを待って終了処理を実行する。測定終了でなければ、ステップST102に戻り、同じキャパシタCxについて、再度容量測定を行う。
【0055】
なお、前記ステップST108での判定において、静電容量Cがレンジ下限容量未満でレンジ範囲外でNO判定の場合には、ステップST108aに移行し、表示部11bに測定範囲外であることを表示し、充電電流(定電流)が減少するようにレンジダウン処理を実行したうえで、ステップST102に戻り、同じキャパシタCxについて、再度容量測定を行う。
【0056】
このレンジダウン処理を行う際、静電容量Cがレンジ容量の下限に対して1/10以下である場合には、レンジを2レンジ同時に下げてもよい。
【0057】
また、前記ステップST109での判定において、静電容量Cがレンジ上限容量を超えてレンジ範囲外でNO判定の場合には、ステップST109aに移行し、表示部11bに測定範囲外であることを表示し、充電電流(定電流)が増加するようにレンジアップ処理を実行したうえで、ステップST102に戻り、同じキャパシタCxについて、再度容量測定を行う。
【0058】
また、前記ステップST105において、キャパシタCxの端子間瞬時電圧Vが実質的に充電終結電圧Vdになると(V=Vdで、判定結果YES)、充電検出用比較器15の出力がONになり、制御手段11に充電終結信号を出力するが、この充電終結信号をV=Vdになった時点から所定のβ時間だけ遅らせて出すようにすることが好ましい。
【0059】
このような出力遅延のβ時間を設定することにより、例えばキャパシタCxが小容量で、充電開始から充電終結までの時間が極端に短い場合、制御手段11に処理に対する時間的余裕を与えることができる。なお、このようなディレイβ時間を設定する場合、充電開始時点tsと充電終結時点teとから求められる充電時間Tからβ時間を減ずればよい。
【0060】
図3のフローチャートには示していないが、初期設定として、所定のタイムアウト時間Toutを設定し、タイムアウト時間Toutが経過しても、充電検出用比較器15が充電終結信号を出力しない場合には、充電手段12による充電を中止し、放電手段13によりキャパシタCxを実質的に放電規定電圧Vzにまで放電したのち、充電電流(定電流I)を増加させるレンジアップ処理を行うこともできる。
【0061】
この場合、前記タイムアウト時間Toutは、レンジ最大容量をCmax,定電流をI,充電終結電圧をVd,所定のマージンをM(約1.2)として次の式(2)、
Tout=M×Vd×Cmax/I…(2)
により求めることができる。
【0062】
前記第1実施形態によれば、キャパシタ電圧の電圧測定(検出)系に、A/Dコンバータやマイクロプロセッサ等により構成する高価な電圧測定手段に代えて、安価な比較器を用いるようにしたことにより、低コストの静電容量測定装置を提供することができる。
【0063】
次に、図4ないし図7を参照して、本発明の第2実施形態に係る静電容量測定装置10Bについて説明する。この静電容量測定装置10Bでは、キャパシタの端子間瞬時電圧Vが充電終結電圧Vzに達する充電時間Tまで待つことなく、キャパシタCxに対する充電期間中においても、適宜レンジアップあるいはレンジダウン処理を行うことを可能にしている。
【0064】
充電期間中にレンジアップあるいはレンジダウン処理を実行するため、この静電容量測定装置10Bは、先に説明した図1の第1実施形態に係る静電容量測定装置10Aが備える構成のほかに、キャパシタCxの端子間瞬時電圧Vを測定する電圧測定手段16をさらに備えている。
【0065】
この第2実施形態において、電圧測定手段16には、増幅器16aと、A/D変換器16bと、DSP(デジタルシグナルプロセッサ)16cとが存在する。電圧測定手段16は、キャパシタCxの端子間瞬時電圧Vを増幅器16aにて所定に増幅(この例では増幅率1)し、A/D変換器16bでデジタル値に変換したのち、DSP16cに入力する。
【0066】
この第2実施形態において、DSP16cは、1msのサンプリング間隔でキャパシタCxの端子間瞬時電圧Vをサンプリングし、100msを1区間として、100msが経過した時点で、100個のキャパシタCxの端子間瞬時電圧Vから区間平均電圧VAn(=ΣV/100)を算出し、この区間平均電圧VAnと、必要であれば、その算出基礎としての個々のキャパシタCxの端子間瞬時電圧Vとを制御手段11に出力する。
【0067】
サンプリング間隔や1区間の単位時間等は任意に設定してよく、例えば、1区間の単位時間を前記と同じく100msとし、これに対して、キャパシタCxの端子間瞬時電圧Vのサンプリング間隔を100μsとして、1区間内で1000個のキャパシタCxの端子間瞬時電圧Vをサンプリングするようにしてもよい。
【0068】
この実施形態では、A/D変換器16bにサンプリングADCを用いているが、別の実施形態として、A/D変換器自体が平均値を出力する例えば2重積分型AD変換器を利用することもできる。また、区間平均電圧VAnを制御手段11側で算出するようにしてもよく、このような場合には、DSP16cを省略することができる。
【0069】
次に、この第2実施形態における制御手段11の動作について、図5の横軸を時間、縦軸を電圧とするキャパシタCxの端子間瞬時電圧波形および図6図7のフローチャートにより具体的に説明する。
【0070】
まず、制御手段11は、ステップST201において、前記第1実施形態でのステップST101と同じく、初期設定として、定電流源12のレンジを最小レンジ(キャパシタCxに印加される電流値が最も小さくなるレンジ)に設定する。また、放電検出用比較器14に放電規定電圧Vzを0Vとして設定するとともに、充電検出用比較器15が充電の終結を検出するための所定の充電終結電圧Vdを設定する。
【0071】
そして、定電流源12をオフ、放電手段13をオンとし、スイッチSWをオンにして放電を開始し、キャパシタCxを放電手段13により定電流(好ましくは許容最大電流)で放電し、次のステップST202で、キャパシタCxの端子間瞬時電圧Vが実質的に放電規定電圧Vzの0Vになるまで待つ。
【0072】
放電が完了して、キャパシタCxの端子間瞬時電圧Vが実質的に放電規定電圧Vzになると、放電検出用検出器14の出力がONになり、制御手段11と放電手段13とに放電終結信号を出力するが、前記第1実施形態でのステップST103と同じく、ステップST203で、キャパシタCxの端子間瞬時電圧波形、放電電流、放電終結信号が安定するまでの時間として、s0時間(安定化時間)待つ。このs0時間は、約1ms〜200ms程度であってよい。
【0073】
なお、電圧測定手段16がフリーランの状態で、一定時間間隔(この例では100ms)で区間平均電圧VAnを出力している場合には、制御手段11は、s0時間内に電圧測定手段16が出力する区間平均電圧VAnは読み捨てる。電圧測定手段16がフリーランでない場合も同様に、s0時間内に電圧測定手段16が出力する区間平均電圧VAnは読み捨てる。
【0074】
制御手段11は、s0時間経過直後、ステップST204で、一定の単位時間(充電区間)Δtの時系列順を表す変数nを0に設定(n=0)し、また、タイマ取得フラグをクリアするとともに、タイマ11cをスタートして、定電流源12よりキャパシタCxに対する充電を開始する。
【0075】
このとき、制御手段11は、図7(a)に示す充電割込ルーチンを実行して、タイマ11cから充電開始時のカウント値を得て、充電開始時点(時刻)tsとしてメモリ11aに記憶する。
【0076】
また、ステップST204での充電開始と同時に、ステップST205で、キャパシタCxの端子間瞬時電圧波形、充電電流および電圧測定手段16の波形が安定するまでの時間として、s1時間(第2安定化時間)待つ。
【0077】
この第2安定化時間としてのs1時間(待ち時間)は、制御手段11から送信する指令信号および電圧測定手段16が出力する測定値信号の伝達遅延時間マージン(約0.0ms〜10ms程度)や前回の測定値出力信号受信時からの経過時間等を考慮して、約0.1ms〜100ms程度として設定してある。
【0078】
なお、電圧測定手段16がフリーランの状態で、一定時間間隔(この例では100ms)で区間平均電圧VAnを出力している場合には、制御手段11は、s1時間内に電圧測定手段16が出力する区間平均電圧VAnは読み捨てる。電圧測定手段16がフリーランでない場合も同様に、s1時間内に電圧測定手段16が出力する区間平均電圧VAnは読み捨てる。
【0079】
制御手段11は、s1時間経過直後、ステップST206において、一定の単位区間Δtごとに、その区間終了時点でDSP16cより、キャパシタCxの端子間瞬時電圧Vの区間平均電圧VAnの取得を開始する。
【0080】
前記したように、この実施形態において、一定の単位区間Δtは100msであり、その間、キャパシタCxの端子間瞬時電圧Vは直線的に上昇する。
【0081】
キャパシタCxの端子間瞬時電圧Vのサンプリング間隔が1msであるとして、電圧測定測定手段16は、一定の単位区間Δtの100msの間にサンプリングしたキャパシタCxの端子間瞬時電圧Vの総和(100個の総和ΣV)をサンプリング個数(100個)で割った値に、好ましくは電圧値への単位変換係数を掛けた値を区間平均電圧VAnとして制御手段11に出力する。このとき、必要であれば、サンプリングした個々のキャパシタCxの端子間瞬時電圧Vを制御手段11に出力する。
【0082】
なお、キャパシタCxの端子間瞬時電圧Vのサンプリングデータ番号が0番から始まるとして、最初の区間内には「0から99」番目、次の区間内には「100から199」番目、その次の区間内には「200から299」番目、以後同様として、区間最初のデータまたは最後のデータが隣接する区間に重複して存在しないように、電圧測定手段16には、各区間内に100個のサンプリングデータが存在する。
【0083】
この第2実施形態においても、制御手段11には、先の第1実施形態で説明した所定のタイムアウト時間Toutがあらかじめ設定してあり、制御手段11は、前記ステップST206に続くステップST207において、タイムアウト時間Tout以内かどうかを判定する。
【0084】
ステップST207での判定において、キャパシタCXの端子間瞬時電圧Vが充電終結電圧Vdに達する前にタイムアウト時間Toutが経過してNO判定である場合には、ステップST207aに移行し、充電手段12による充電を中止して、放電手段13によりキャパシタCxを放電し、充電電流を増加させるレンジアップ処理を行うとともに、表示部11bに測定範囲外であることを表示してステップST202に戻る。
【0085】
これに対して、ステップST207での判定において、タイムアウト時間Toutが経過していないYES判定の場合には、制御手段11は、次のステップST208で、新たな区間平均電圧VAnがあるかどうかを確認する。新たな区間平均電圧VAnがないNO判定の場合には、ステップST216で、キャパシタCxの端子間瞬時電圧Vが充電終結電圧Vdに達して充電終結時刻を取得済みかどうかを判定する。充電終結時刻を取得していないNO判定の場合には、ステップST207に戻り、充電終結時刻を取得済み(YES)であれば、ステップST217に移行する。
【0086】
ステップST208での判定において、新たな区間平均電圧VAnがありのYESである場合には、ステップST209に移行し、制御手段11は、DSP16cから区間平均電圧VAnを取得する。このとき、必要であれば、一定の単位区間Δt内でサンプリングした個々のキャパシタCxの端子間瞬時電圧Vも取得する。
【0087】
今回はn=0であるから、制御手段11がDSP16cから取得する区間平均電圧VAnは、最初の区間Δt0における区間平均電圧VA0である。制御手段11は、この最初の区間Δt0の区間平均電圧VA0をメモリ11aに記憶する。
【0088】
制御手段11は、続くステップST210で、区間平均電圧VAn(この場合VA0)またはキャパシタCxの端子間瞬時電圧Vが、あらかじめ設定してある測定範囲上限電圧VU(例えば1V)以下(充電電圧が上昇する場合において、VAn≦VUまたはV≦VU)かどうかを判定する。
【0089】
ステップST210の判定において、区間平均電圧VAn(VA0)またはキャパシタCxの端子間瞬時電圧Vが測定範囲上限電圧VUを超えており(充電電圧が上昇する場合において、VAn>VUまたはV>VU)NOである場合、制御手段11は、ステップST210aに移行し、充電手段12による充電を中止して、放電手段13によりキャパシタCxを放電し、充電電流が減少するようにレンジダウン処理を行うとともに、表示部11bに測定範囲外であることを表示してステップST202に戻る。
【0090】
これに対して、ステップST210の判定において、区間平均電圧VAn(VA0)またはキャパシタCxの端子間瞬時電圧Vが測定範囲上限電圧VU以下で(充電電圧が上昇する場合において、VAn≦VUまたはV≦VU)YESである場合には、制御手段11は、次のステップST211し、n>0かどうかを判定する。今回の場合、先のステップST204においてn=0に設定してあり、n≦0であるので、ステップST215に移行する。
【0091】
制御手段11は、ステップST215において、n=n+1として、変数nを1インクリメントして、ステップST207に戻り、タイムアウト時間Toutが経過してなくYESである場合には、ステップST209に移行し、n=1の区間Δt1におけるの区間平均電圧VA1を取得してメモリ11aに格納する。このとき、必要であれば、キャパシタCxの端子間瞬時電圧Vをも取得してメモリ11aに格納する。
【0092】
そして、ステップST210で、n=1の区間Δt1以降の各区間時間についても、区間平均電圧VAnまたはキャパシタCxの端子間瞬時電圧Vが測定範囲上限電圧VU以下であるかどうかを判定し、VAかつV≦VUであれば、次のステップST211で、n>0かどうかを判定するが、n=1でn>0あるため、次のステップST212に進む。
【0093】
制御手段11は、ステップST212において、n(n≧1)区間目の区間平均電圧VAnと、最初の区間の区間平均電圧VA0との電圧差VD(n)が、第1のレンジ許容電圧差としてあらかじめ設定してあるレンジダウン規定電圧Vdownのn倍(nは前記n区間目の変数nと同値)の値Vdown(n)以下であるかどうか、あるいは、n区間目の隣接する2区間の区間平均電圧VAnの電圧差VD(=VAn−VAn−1:今回の場合、VA1−VA0)が、レンジダウン規定電圧Vdown以下であるかどうか、のいずれか一方の判定を選択して実行する。この選択は、各測定レンジにおける測定レンジのアップダウン感度やノイズ電圧の状況等に応じて行う。
【0094】
この実施形態において、レンジダウン規定電圧Vdownは、測定レンジの最小容量をCmin,定電流をI,一定の単位時間をΔt,所定のマージンをJ(約1.1)として次の式(3)、
Vdown=J×I×Δt/Cmin…(3)
により求まる。なお、このレンジダウン規定電圧の整数倍の値であるVdown(n)は、n区間目の変数をnとして、Vdown×nにより求まる。
【0095】
ステップST212の判定において、n(n≧1)区間目の区間平均電圧VAnと、最初の第1区間の区間平均電圧VA0との電圧差VD(n)が、Vdown(n)を超え(充電電圧が上昇する場合において、VD(n)>Vdown(n))、あるいは、n区間目の隣接する2区間の区間平均電圧VAnの電圧差VDが、Vdownを超え(充電電圧が上昇する場合において、VD>Vdown)てNOである場合には、制御手段11は、ステップST210aに移行し、充電手段12による充電を中止して、放電手段13によりキャパシタCxを放電し、充電電流が減少するようにレンジダウン処理を行うとともに、表示部11bに測定範囲外であることを表示してステップST202に戻る。
【0096】
なお、ステップST212からステップST210aに移行して測定レンジのダウン処理を実行する場合、制御手段11は、n区間目と最初の区間の区間平均電圧の電圧差VD(n)の値が、比較値であるVdown(n)の10倍を超える場合には、測定レンジを2レンジ分ダウンしてもよいし、また、100場合を超える場合には、測定レンジを3レンジ分ダウンしてもよい。
【0097】
同様に、制御手段11は、隣接する2区間の区間平均電圧の電圧差VDの値が、比較値であるVdownの10倍を超える場合には、測定レンジを2レンジ分ダウンしてもよいし、また、100場合を超える場合には、測定レンジを3レンジ分ダウンしてもよい。
【0098】
これに対して、ステップST212での判定において、n区間目の区間平均電圧VAnと、最初の区間の区間平均電圧VA0との電圧差VD(n)が、Vdown(n)以下(充電電圧が上昇する場合において、VD(n)≦Vdown(n))、あるいは、n区間目の隣接する2区間の区間平均電圧VAnの電圧差VDが、Vdown以下である(充電電圧が上昇する場合において、VD≦Vdown)YESの場合には、ステップST213に移行する。
【0099】
制御手段11は、ステップST213において、n区間目の区間平均電圧VAnと、最初の区間の区間平均電圧VA0との電圧差VD(n)が、第2のレンジ許容電圧差としてあらかじめ設定してあるレンジアップ規定電圧Vupのn倍(nは前記n区間目の変数nと同値)の値Vup(n)以上であるかどうか、あるいは、n区間目の隣接する2区間の区間平均電圧VAnの電圧差VD(=VAn−VAn−1)が、レンジアップ規定電圧Vup以上であるかどうか、のいずれか一方の判定を選択して実行する。
【0100】
制御手段11が行うVupに関する選択は、各測定レンジおよび最大の容量を測定する測定レンジにおける電圧測定手段16の最小分解能やノイズ電圧の状況等に応じて行う。また、すでに最大測定レンジである場合、制御手段11は、電圧測定手段16の最小分解能やノイズ電圧の状況によっては、複数のn区間のうちの最初の数区間は測定レンジのレンジアップ処理を見合わせてもよく、Vupの設定自体も、他の測定レンジでのVupに比べて小さな値としてもよい。また、最大測定レンジでない場合でも、電圧測定手段16の最小分解能やノイズ電圧の状況によっては、複数のn区間のうちの最初の数区間は測定レンジのレンジアップ処理を見合わせてもよい。
【0101】
この実施形態において、レンジアップ規定電圧Vupは、測定レンジの最大容量をCmax,定電流をI,区間の単位時間をΔt,所定のマージンをL(約1.0)として次の式(4)、
Vup=L×I×Δt/Cmax…(4)
により求まる。なお、このレンジアップ規定電圧の整数倍の値であるVup(n)についても、前記と同様に、n区間目の変数をnとして、Vup×nにより求まる。
【0102】
ステップST213での判定において、区間平均電圧VAnと、最初の区間の区間平均電圧VA0との電圧差VD(n)が、レンジアップ規定電圧Vupのn倍の値Vup(n)未満(充電電圧が上昇する場合において、VD(n)<Vup(n))である場合、あるいは、n区間目の隣接する2区間の区間平均電圧VAnの電圧差VDが、レンジアップ規定電圧Vup未満(充電電圧が上昇する場合において、VD<Vup)であるNO判定の場合には、ステップST213aに移行する。
【0103】
ステップST213aにおいて、制御手段11は、充電手段12による充電を中止して、放電手段13によりキャパシタCxを放電し、充電電流を増加させるレンジアップ処理を行うとともに、表示部11bに測定範囲外であることを表示してステップST202に戻る。
【0104】
なお、測定レンジをレンジアップするにあたって、レンジアップ規定電圧のn倍の値Vup(n)が、比較値としてのn区間目と最初の第1区間の区間平均電圧の電圧差VD(n)の10倍を超える場合には、測定レンジを2レンジ分アップしてもよいし、また、100場合を超える場合には、測定レンジを3レンジ分アップしてもよい。
【0105】
同様に、レンジアップ規定電圧の値Vupが、比較値としての隣接する2区間の区間平均電圧の電圧差VDの10倍を超える場合には、測定レンジを2レンジ分アップしてもよいし、また、100倍を超える場合には、測定レンジを3レンジ分アップしてもよい。
【0106】
前記ステップST213の判定において、すでに最大レンジになっている場合には、レンジアップは実施せず、測定範囲外表示として、表示部11bに例えば「9999」等と表示する。この表示桁数は任意に決めてよい。また、表示内容も数字以外の例えば「XXXX」等の別の態様としてもよい。
【0107】
これに対し、ステップST213での判定において、区間平均電圧VAnと、最初の区間の区間平均電圧VA0との電圧差VD(n)が、Vup(n)以上(充電電圧が上昇する場合において、VD(n)≧Vup(n))である場合、あるいは、n区間目の隣接する2区間の区間平均電圧VAnの電圧差VDが、Vup以上(充電電圧が上昇する場合において、VD≧Vup)である場合には、ステップST214に移行して、nが規定回数に達しているかどうかを判定する。
【0108】
ステップST214での判定において、nが規定回数に達しているNOの場合には、ステップST213aに移行し、充電手段12による充電を中止して、放電手段13によりキャパシタCxを放電し、充電電流を増加させるレンジアップ処理を行うとともに、表示部11bに測定範囲外であることを表示してステップST202に戻る。
【0109】
これに対して、ステップST214での判定がYESで、nが規定回数に達していない規定回数以下の場合には、ステップST215に移行し、n=n+1として、変数nを1インクリメントして、ステップST207に戻る。
【0110】
そして、ステップST207での判定がYES、また、ステップST208での判定がYESの場合には、ステップST209〜ST215を繰り返し、その間、ステップST210,ST212,ST213の各判定ステップでNO判定が出された場合には、前記したように、キャパシタCxの充電を中止し、キャパシタCxの放電を開始し、レンジアップあるいはレンジダウンの処理を行って、ステップST202に戻り、再度、キャパシタCxへの充電(容量測定)を開始する。
【0111】
これに対して、ステップST208での判定がNOで、新たな区間平均電圧VAnがない場合には、ステップST216で、キャパシタCxの端子間瞬時電圧Vが充電終結電圧Vdに達して、充電終結時刻を取得できる状態かどうかを判定する。キャパシタCxの端子間瞬時電圧Vが充電終結電圧Vdを超えると、充電検出用比較器15の信号出力がONになる。
【0112】
これにより、制御手段は、図7(b)の割込ルーチンを実行し、充電終結時刻を取得してタイマ取得フラグをセットする。なお、ステップST216において、タイマ取得フラグがセットしていない状態であれば、ステップST207に戻り、ステップST216において、タイマ取得フラグがセットしてある状態であれば、制御手段11は、ステップST217に移行し、図7(b)の割込ルーチンで取得したタイマ11cから充電終結時のカウント値を得て、充電終結時点teとしてメモリ11aに記憶するとともに、定電流源12をオフにして充電を終了する。また、タイマ取得フラグをクリアする。
【0113】
ステップST217以後、制御手段11は、前記第1実施形態でのステップST107〜ST112(ST108a,ST109aを含めて)と同じステップを辿る。
【0114】
すなわち、ステップST217において、放電手段13をオンにして放電を開始するとともに、メモリ11cに記憶した充電開始時点tsと充電終結時点teとから充電時間Tを求め、キャパシタCxの静電容量Cを次の式(1)、
C=I×T/Vd…(1)
により算出する。
【0115】
そして、ステップST218で、静電容量Cがレンジ下限容量以上であるかどうかを判定し、静電容量Cがレンジ下限容量以上のYESであれば、ステップST219に移行し、今度は静電容量Cがレンジ上限容量以下であるどうかを判定する。
【0116】
ステップST219での判定において、静電容量Cがレンジ上限容量以下のYESであれば、ステップST220に移行し、表示部11bに前記ステップST217で式(1)により算出した静電容量Cを表示し、ステップST221で、測定終了かどうかを判定する。
【0117】
ステップST221での判定が測定終了であれば、ステップST222で、ステップST217で開始した放電が終結するのを待って終了処理を実行する。測定終了でなければ、ステップST202に戻り、同じキャパシタCxについて、再度容量測定を行う。
【0118】
なお、前記ステップST218での判定結果がNOで、キャパシタCxの静電容量Cがレンジ下限容量未満でレンジ範囲外の場合には、ステップST218aに移行し、表示部11bに測定範囲外であることを表示し、充電電流(定電流)が減少するようにレンジダウン処理を実行したうえで、ステップST202に戻り、同じキャパシタCxについて、再度容量測定を行う。
【0119】
このレンジダウン処理を行う際、キャパシタCxの静電容量Cがレンジ容量の下限に対して1/10以下である場合には、レンジを2レンジ同時に下げてもよい。
【0120】
また、前記ステップST219での判定結果がNOで、キャパシタCxの静電容量Cがレンジ上限容量を超えてレンジ範囲外の場合には、ステップST219aに移行し、表示部11bに測定範囲外であることを表示し、充電電流(定電流)が増加するようにレンジアップ処理を実行したうえで、ステップST202に戻り、同じキャパシタCxについて、再度容量測定を行う。
【0121】
前記第2実施形態によれば、最初に設定した初期の電流レンジが適切でない場合、キャパシタCxの端子間瞬時電圧Vが充電終結電圧Vdに達する充電時間Tまで待つことなく、適宜レンジアップもしくはレンジダウン処理して、最適な電流レンジに設定することができ、キャパシタCxの静電容量Cの計算後に用意してある前記ステップST218a,ST219aのレンジ修正ステップをほとんど行うことがなくなり、結果的に測定時間を短縮することが可能となる。
【0122】
また、前記第2実施形態によれば、前記ステップST209で取得される区間平均電圧VAnからも、キャパシタCxの静電容量Cを求めることもできる。
【0123】
すなわち、図5に示すように、キャパシタCxを所定の電圧にまで放電させ、好ましくは前記第1,第2の安定化時間s0,s1を経過した後、キャパシタCxに対して一定の単位時間Δtを1区間として、複数のn区間(nは0を含む順序を表す正の整数)にわたって、定電流IでキャパシタCxを連続的に充電し、各区間ごとに、その区間内で所定の時間間隔でサンプリングされた所定個数のキャパシタの端子間瞬時電圧Vから区間平均電圧VAnを取得し、最初の1区間(n=0区間)の区間平均電圧をVA0、n区間目の区間平均電圧をVAnとして、キャパシタCxの静電容量Cを次の式(5)、
C=(I×n×Δt)/(VAn−VA0)…(5)
により求めることができ、この式(5)による静電容量Cを例えば参考値として、前記式(1)による静電容量Cとともに表示部11bに併せて表示することもできる。
【0124】
なお、制御手段11に、定電流の値Iを電流補正式I=d×Iにより補正し、サンプリングした前記区間平均電圧VAnまたはキャパシタCxの端子間瞬時電圧Vを電圧補正式V=e×V+fにより補正し、キャパシタCxの静電容量Cを静電容量補正式C=g×C+hにより補正する補正パラメータd,e,f,g,hを設定し、測定レンジの整合性を判定する際またはキャパシタCxの静電容量Cを求める際に、前記補正電流式、前記電圧補正式および前記静電容量補正式による補正計算を1回以上行うようにすることが好ましい。これらの補正計算を電圧測定手段16で実施してもよい。
【0125】
制御手段11は、前記補正電流式、前記電圧補正式および前記静電容量補正式に対する補正パラメータd,e,f,g,hを、それぞれ複数個設定し、定電流の値IサンプリングしたキャパシタCxの端子間瞬時電圧V、キャパシタCxの静電容量Cの大きさ等に応じた適正な補正パラメータを使い分けるようにしてもよい。また、補正したキャパシタCxの静電容量Cに対して、再度補正をかけてもよい。これらの補正パラメータは、図示しない操作キーまたは外部機器により通信インタフェースを介して設定することができる。
【0126】
また、キャパシタCxの静電容量Cの別の算出方法として、電圧測定手段16の最小分解能が大きい場合や、ノイズがある場合のことを考慮して、最初の第1区間Δt0〜第n区間Δtnまでを前半と後半とに2分し、前半の区間平均電圧VAnまたは前半でサンプリングしたキャパシタCxの瞬時電圧Vの平均をVa,前半のサンプリング時刻の平均をtaとし、後半の区間平均電圧VAnまたは後半でサンプリングしたキャパシタCxの瞬時電圧Vの平均をVb,後半のサンプリング時刻の平均をtbとして、キャパシタCxの静電容量Cを前記式(1)に代えて次の式(6)、
C=I×(tb−ta)/(Vb−Va)…(6)
により求めてもよい。
【0127】
例として、n=0〜4の5区間の場合、ta−tb=2.5Δtで、キャパシタCxの静電容量Cは、
C=I×2.5Δt/{(VA4+VA3+VA2)/3−(VA1+VA0)/2}
または
C=I×2.5Δt/{(VA4+VA3+VA2+VA1)/4−(VA0)}
により求められる。
【0128】
また、さらに別のキャパシタCxの静電容量Cの算出方法として、最初の第1区間Δt0〜第n区間Δtnまでを前半と後半とに2分し、前半の区間での電圧データ数をa、前半の区間平均電圧VAnもしくは前半の区間内でサンプリングされたキャパシタCxの瞬時電圧Vの総和をΣVAa、後半の区間での電圧データ数をb、後半の区間平均電圧VAnもしくは後半の区間内でサンプリングされたキャパシタCxの瞬時電圧Vの総和をΣVAb、区間平均電圧VAnもしくは瞬時電圧Vを取得するサンプリング間隔をΔtとして、キャパシタCxの静電容量Cを前記式(1)に代えて次の式(7)、
C=I×0.5×(a+b)×Δt/((ΣVAb)/b−(ΣVAa)/a)
=I×0.5×a×b×(a+b)×Δt/(a×(ΣVAb)−b×(ΣVAa))
…(7)
により求めることもできる。
【0129】
これらの別のキャパシタCxの静電容量Cの算出方法を採用するにあたっては、制御手段11の演算性能や、最小の区間数が2区間であることを踏まえて、前記式(6)と式(7)のいずれかの方法を選択することになるが、前半と後半に2分する場合、区間平均電圧VAnや端子間瞬時電圧Vの最小分解能が大きい場合には、相対的に前半区間を短く後半区間を長くして、キャパシタCxの静電容量Cの計算桁数を多くし、ノイズが多い場合は、前半区間と後半区間をほぼ同じ時間間隔とすることが好ましい。
【0130】
このように、前記第2実施形態によれば、前記種々の計算式(5),(6),(7)により求められるキャパシタCxの静電容量Cを、式(1)により求められるキャパシタCxの静電容量Cとともに表示部11bに併せて表示することができ、測定の確度をより高めることができる。
【0131】
以上説明したように、本発明によれば、キャパシタの電圧測定系の構成を簡素化して、低コスト化を実現できるとともに、充電途中でレンジ切り替えおよび放電開始の判定を追加的に行うようにしたことにより、高速な静電容量測定装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0132】
11 制御手段
11a メモリ
11b 表示部
11c タイマ
12 定電流源
13 放電手段
14 放電検出用比較器
15 充電検出用比較器
16 電圧測定手段
16a 増幅器
16b A/D変換器
16c DSP
Cx 被測定キャパシタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7