【解決手段】本発明の静電容量型センサは、誘電層及びこの誘電層の両面に積層される電極層を有する静電容量シートと、上記電極層に接続される静電容量検出手段とを備え、上記静電容量検出手段が、一方の上記電極層に電気的に接続され上記電極層間に電圧を印加する交流印加装置と、反転入力端子が他方の上記電極層に電気的に接続され非反転入力端子が接地される演算増幅器と、上記演算増幅器の反転入力端子及び出力端子間に並列に接続される帰還キャパシタ及び帰還抵抗とを有し、上記電極層間の1cm
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を参酌しつつ説明する。
【0018】
図1及び
図2に示すように、当該静電容量型センサは、誘電層2、この誘電層2の両面に積層される表側電極層3及び裏側電極層4を有する静電容量シート1と、上記表側電極層3及び裏側電極層4に電気的に接続される静電容量検出手段5とを備える。
【0019】
[静電容量シート]
上記静電容量シート1は、エラストマー組成物からなる誘電層2と、上記誘電層2の表面側に積層され、ストライプ状に配設される複数の表側導電部01A〜16Aからなる表側電極層3と、表側配線01a〜16aと、上記誘電層2の裏面側に積層され、平面視で上記複数の表側導電部01A〜16Aに略直交するようにストライプ状に配設される複数の裏側導電部01B〜16Bからなる裏側電極層4と、裏側配線01b〜16bとを備える。平面視で上記表側導電部と裏側導電部とが交差する部分が検出部C0101〜C1616となり、各検出部の静電容量が静電容量検出手段5によって測定される。なお、検出部の符号「C○○△△」中、上2桁の「○○」は、表側導電部01A〜16Aに対応しており、下2桁の「△△」は、裏側導電部01B〜16Bに対応している。また、上記静電容量シート1は、表側配線01a〜16aを静電容量検出手段5に接続する表側配線用コネクタ8と、裏側配線01b〜16bを静電容量検出手段5に接続する裏側配線用コネクタ9とを備える。また、上記静電容量シート1は、誘電層2の表面側に表側電極層3を覆うように積層された表側保護層6と、誘電層2の裏面側に裏側電極層4を覆うように積層された裏側保護層7とをさらに備える。
【0020】
上記静電容量シート1を構成する誘電層2、表側電極層3及び裏側電極層4は伸縮性を有しているので、静電容量シート1は、主に平面方向に伸縮し、この伸縮による表側電極層3及び裏側電極層4の面積の変化に伴って静電容量が変化する。静電容量検出手段5が各検出部の静電容量を測定することにより、この静電容量の変化が計測される。
【0021】
上記静電容量シート1の平均厚み、幅及び長さは、用いられる静電容量シート1の用途によって適宜設計変更可能である。
【0022】
上記静電容量シート1の表側電極層3及び裏側電極層4間の1cm
2当たりのシート抵抗の下限としては、350Ω/□が好ましく、450Ω/□がより好ましい。また、上記1cm
2当たりのシート抵抗の上限としては、10kΩ/□が好ましい。上記シート抵抗が上記下限未満であると、製造コストが上がり静電容量シートを安価に製造できなくなるおそれがある。また、上記シート抵抗が上記上限を超えると、十分な検出精度が得られなくなるおそれがある。
【0023】
<誘電層>
上記誘電層2は、弾性変形可能な層である。誘電層2は、シート状を呈しており、X方向及びY方向を各辺とする平面視長方形状を有する。この誘電層2はエラストマー組成物によって均質に形成されている。
【0024】
この誘電層2の平均厚みの下限としては、10μmが好ましく、30μmがより好ましい。誘電層2の平均厚みの上限としては、1,000μmが好ましく、200μmがより好ましい。誘電層2の平均厚みが上記下限未満であると、膜厚精度の高いエラストマー層の加工が難しく十分な検出分布精度が確保できないおそれがある。また、誘電層2の平均厚みが上記上限を超えると、静電容量が小さくなり検出感度が低下するだけでなく、静電容量シート1が厚くなりすぎ測定対象物への追従性が損なわれるおそれがある。
【0025】
また、誘電層2の常温における比誘電率の下限としては、2が好ましく、5がより好ましい。誘電層2の比誘電率が上記下限未満であると、静電容量が小さくなり、センサとして利用した際に十分な感度が得られないおそれがある。
【0026】
さらに、誘電層2のヤング率の下限としては、0.01MPaが好ましく、0.05MPaがより好ましい。誘電層2のヤング率の上限としては、5MPaが好ましく、1MPaがより好ましい。ヤング率が上記下限未満であると、誘電層2の柔軟性が高くなりすぎ、加工が難しく、十分な測定精度が得られないおそれがある。一方、ヤング率が上記上限を超えると、誘電層2の柔軟性が低くなりすぎ、静電容量シートへの変形荷重が小さい場合に静電容量シートの変形動作を阻害してしまい、計測目的に対して計測結果がそぐわないおそれがある。
【0027】
また、誘電層2の1軸方向の伸長率の下限としては、30%が好ましく、50%がより好ましく、100%がさらに好ましい。誘電層2の1軸方向の伸長率を上記下限以上とすることで、当該静電容量型センサ1は、柔軟な測定対象物の変形や動作に対し、優れた追従性を効果的に発揮することができる。なお、誘電層2の1軸方向の伸長率の上限は特に限定されないが、例えば400%である。
【0028】
(エラストマー組成物)
上記誘電層2を構成するエラストマー組成物は、エラストマーを主成分とする。ここで「主成分」とは、エラストマー組成物を構成する成分のうち最も含有量が多い成分であり、例えば含有量が50質量%以上の成分をいう。このエラストマーとしては、例えば天然ゴム、イソプレンゴム、ニトリルゴム(NBR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)、シリコーンゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム、水素添加ニトリルゴム、ウレタンゴム等を用いることができる。誘電層2を構成するエラストマーとしては、高い伸び性を有し、繰り返し変形での耐性に優れ、永久歪み性が小さいシリコーンゴム、ウレタンゴムが好ましい。ウレタンゴムは、静電容量シート1に変形が加えられても永久歪みが小さいので好ましい。永久歪みが小さいと、繰り返し使用しても(例えば伸長率100%の伸縮変形を1000回繰り返したとしても)初期静電容量が変化し難く、静電容量シートとして優れた測定精度を長期間にわたって維持することができる。さらにウレタンゴムは、表側電極層3及び裏側電極層4の導電性材料であるカーボンナノチューブとの密着性に優れる。
【0029】
誘電層2を形成するエラストマー組成物は、測定対象物や計測目的に応じて材料を選択することができ、配合の改良を施すことが可能である。上記エラストマー組成物は、上記エラストマー以外に架橋剤、可塑剤、鎖延長剤、加硫促進剤、触媒、老化防止剤、酸化防止剤、着色剤等の添加剤を含有してもよい。
【0030】
また、上記エラストマー組成物は、上記エラストマー以外に、チタン酸バリウムなどの誘電フィラーを含有することができる。誘電フィラーを含有することで、静電容量を大きくして検出感度を高めることができる。
【0031】
<表側電極層>
表側電極層3は、ストライプ状(平行)に配設される複数の表側導電部01A〜16Aからなり、誘電層2の表面側に積層されている。表側導電部01A〜16Aは、それぞれ帯状を呈しており、
図2に示すように誘電層2の表面に合計16本積層されている。表側導電部01A〜16Aは、それぞれX方向(
図1中の左右方向)に延在している。表側導電部01A〜16Aは、それぞれY方向(
図1中の上下方向)に所定間隔ごとに離間して、互いに略平行となるようにそれぞれ配置されている。
【0032】
表側導電部01A〜16Aはそれぞれカーボンナノチューブを含む。また、表側導電部01A〜16Aは、カーボンナノチューブ以外にも、エラストマー等のつなぎ材料を含んでもよい。このようなつなぎ材料を含むことで、電極層と上記誘電層2との接着強度の向上、電極層の膜強度の向上等を図ることができ、さらにカーボンナノチューブを含む塗布液の塗工時の環境安全性(カーボンナノチューブの毒性やアスベスト類似の問題)の確保に寄与する。但し、電極層の全固形成分に対する上記つなぎ材料の含有量は少ない方が好ましい。上記つなぎ材料の含有量を少なくすることで、繰り返し変形に対する電気抵抗の変化が少なく耐久性に優れるとともに、誘電層2の変形の阻害を抑制することができる。
【0033】
上記カーボンナノチューブとしては、例えば単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブを用いることができる。これらのうち、直径がより小さくアスペクト比がより大きい単層カーボンナノチューブが好ましい。上記カーボンナノチューブの平均繊維長の下限としては、1μmが好ましく、10μmがより好ましく、100μmがさらに好ましい。また、上記カーボンナノチューブの平均繊維長の上限としては、700μmが好ましく、600μmがより好ましく、500μmがさらに好ましい。また、上記カーボンナノチューブのアスペクト比としては、1,000以上が好ましく、10,000以上がより好ましく、30,000以上が特に好ましい。このような超長尺のカーボンナノチューブを用いることで、表側導電部01A〜16Aは、優れた伸縮性を発揮し、誘電層2の変形に対する追従性を向上させることができる。
【0034】
導電部を形成する材料として長尺のカーボンナノチューブを用いることで、ストライプ状の導電部からなる電極層は優れた伸縮性を発揮し、静電容量シート1の伸縮変形に伴う誘電層の変形に対する電極層の追従性を向上させることができる。また、長尺のカーボンナノチューブを含む導電部は、繰り返し変形させた際に電気抵抗の変動が少ないため、長期信頼性にも優れる。この理由は、長尺のカーボンナノチューブは、カーボンナノチューブ自体が伸縮し易く、その結果、電極層が誘電層に追従して伸長した時に導電パスが切断され難いためと考えられる。また、カーボンナノチューブを含む導電性組成物を用いて電極層を形成した場合、その電極層の導電性はカーボンナノチューブ同士が接触する(電気接点を形成する)ことにより発現する。ここで、長尺のカーボンナノチューブを用いた場合は、短尺のカーボンナノチューブを用いた場合に比べて、少ない電気接点数で導電性が確保されるとともに、1本のカーボンナノチューブにおける他のカーボンナノチューブとの電気接点数が多くなるため、より高次元の電気的ネットワークが形成される。このことにより、長尺のカーボンナノチューブを用いることで電気抵抗の変動が少なくなり、長期信頼性にも優れる電極層が形成されると考えられる。
【0035】
上記カーボンナノチューブの平均繊維径の下限としては、0.5nmが好ましく、1nmがより好ましい。また、上記カーボンナノチューブの平均繊維径の上限としては、30nmが好ましく、20nmがより好ましい。カーボンナノチューブの平均繊維径がこの範囲であると、変形が加えられた際にカーボンナノチューブがバネのように伸び、高い追従性等を発揮することにより、上記表側電極層3及び裏側電極層4が誘電層2の変形に対して高い追従性を発揮する。単層カーボンナノチューブは、平均繊維径が小さく(平均繊維径は製法に依存して0.5〜4nm程度)柔軟性に富む点で好ましい。一方、多層カーボンナノチューブは、平均繊維径が大きく剛直であるため、多層カーボンナノチューブの中ではより平均繊維径の小さいもの(例えば平均繊維径が30nm以下)が好ましい。
【0036】
上記つなぎ材料として含むエラストマー材料としては、例えば天然ゴム、イソプレンゴム、ニトリルゴム(NBR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)、シリコーンゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム、水素添加ニトリルゴム、ウレタンゴム等が挙げられる。これらは単独で用いても良いし、2種類以上併用しても良い。
【0037】
上記つなぎ材料としては、生ゴム(天然ゴム及び合成ゴムの加硫させていない状態のもの)も好ましい。このように比較的弾性の弱い材料を用いることで、誘電層2の変形に対する表側導電部01A〜16Aの追従性を高めることができる。
【0038】
また、表側導電部01A〜16Aは、上記カーボンナノチューブ及びエラストマー材料以外にも、各種添加剤を含有してもよい。上記添加剤としては、例えばカーボンナノチューブの分散のための分散剤、バインダーのための架橋剤、加硫促進剤、加硫助剤、老化防止剤、可塑剤、鎖延長剤、酸化防止剤、軟化剤、着色剤等が挙げられる。電極層の導電性を向上させる目的で、ドーパントとして電荷移動材料やイオン液体等の低分子材料をコーティング剤又は添加剤として用いる手法も考えられるが、電極層に高アスペクト比のカーボンナノチューブを用いることで、特段処理をしなくても、十分な導電性を確保することができる。また、上記低分子材料を用いると、誘電層2のエラストマー又は誘電層2のエラストマー中の可塑剤に上記低分子材料が移行することに起因すると考えられる誘電層2の絶縁性の低下(体積抵抗率の低下)や、電極層のドーパント効果の喪失、静電容量シート1の繰り返し変形に対する耐久性の低下、計測値の信頼性の低下を招来する可能性がある。従って、上記低分子材料を含まないことが好ましい。
【0039】
表側導電部01A〜16Aにおけるカーボンナノチューブの全固形成分に対する含有量の下限としては、51質量%が好ましく、75質量%がより好ましく、90質量%がさらに好ましく、95質量%が特に好ましい。さらには、カーボンナノチューブ濃度を100質量%とし、表側導電部01A〜16Aが実質的にカーボンナノチューブのみからなる構成とすることが最も好ましい。また、表側導電部01A〜16Aは、上記エラストマー材料を含まない構成とすることが好ましい。このように導電性材料であるカーボンナノチューブ以外の含有割合を少なくすることで、繰り返し変形を受けても表側導電部01A〜16Aの導電性低下(電気抵抗の増加)を抑制することができ、耐久性に優れるものとすることができる。
【0040】
また、表側導電部01A〜16Aにおける長尺のカーボンナノチューブ(例えば平均繊維長100μm以上700μm以下のカーボンナノチューブ)の全固形成分に対する含有量の下限としては、30質量%が好ましく、50質量%がより好ましく、70質量%がさらに好ましい。表側導電部が上記下限以上の含有量の長尺のカーボンナノチューブを含むことで、表側電極層が誘電層2の変形に対して高い追従性を発揮する。表側導電部は、少なくとも上記下限以上の含有量の長尺のカーボンナノチューブを含んでいれば、短尺のカーボンナノチューブ(平均繊維長100μm未満)を混ぜてもよい。短尺のカーボンナノチューブを混ぜることで、表側電極層が低コストで形成できる。
【0041】
また、表側導電部01A〜16Aの平均厚みの下限としては、0.1μmが好ましく、0.2μmがより好ましい。表側導電部01A〜16Aの平均厚みの上限としては、10μmが好ましく、5μmがより好ましい。表側導電部01A〜16Aの平均厚みを上記範囲とすることで、表側導電部01A〜16Aは誘電層2の変形に対し優れた追従性を発揮することができる。表側導電部01A〜16Aの平均厚みが上記下限未満では導電性が不足し検出精度が低下するおそれがある。一方、表側導電部01A〜16Aの平均厚みが上記上限を超えるとカーボンナノチューブの補強効果により静電容量シートが硬くなり、静電容量シート1の測定対象物への追従性が低下して誘電層2の変形を阻害するおそれがある。
【0042】
表側導電部01A〜16Aの帯状の幅は用途によって適宜設計変更するものであるが、表側導電部01A〜16Aの帯状の平均幅の下限としては、0.5mmが好ましく、1mmがより好ましい。また、表側導電部01A〜16Aの帯状の平均幅の上限としては、30mmが好ましく、20mmがより好ましい。表側導電部01A〜16Aの帯状の平均幅が上記下限未満になると、電極対向部で検知される静電容量が小さくなるため、検知誤差が大きくなるおそれがある。また、表側導電部01A〜16Aの帯状の平均幅が上記上限を超えると、電極対向部の間隔が大きくなり、歪み分布の空間分解能が低くなる。ただし、空間分解能の要求が低い場合、例えば大型の静電容量シート(ベットサイズなど)の場合には、表側導電部の帯状の幅を広くすることが有用である。
【0043】
また、ストライプ状(平行)に配置される表側導電部01A〜16Aの平均間隔も用途によって適宜設計変更するものであるが、隣接する表側導電部の平均間隔の下限としては、0.5mmが好ましく、1mmがより好ましい。また、隣接する表側導電部の平均間隔の上限としては、10mmが好ましく、5mmがより好ましい。隣接する表側導電部の平均間隔が上記下限未満になると、隣接する表側導電部同士が接触し易く、表側導電部の形成が困難となるおそれがある。また、隣接する表側導電部の平均間隔が上記上限を超えると、検知できない領域が大きくなり、歪み分布の空間分解能が低くなる。ただし、空間分解能の要求が低い大型の静電容量シートなどの場合には、隣接する表側導電部の間隔を必要以上に小さくしなくてもよい。
【0044】
また、誘電層2に積層された上記表側電極層3及び裏側電極層4の透明性(可視光の透過率)は特に限定されず、透明であってもよいし、不透明であってもよい。
【0045】
上記エラストマー組成物からなる誘電層2は、容易に透明な誘電層とすることができ、上記表側電極層3及び裏側電極層4の透明性を高めることにより、全体として透明な静電容量シートとすることができる。静電容量シートとして透明性が要求される場合には、透明な(例えば可視光(550nm光)の透過率が85%以上である)電極層を形成すればよい。
【0046】
一方、電極層の透明性は静電容量シートとしての性能には影響しない。そのため、透明性が要求されない場合には不透明な電極層を形成することで容易にかつ安価に静電容量シートを製造することができる。透明な電極層を例えばカーボンナノチューブを含む導電性組成物を用いて形成する場合、カーボンナノチューブに対して高度な分散化処理や精製処理等の前処理が必要となり、電極層の形成工程が煩雑となり経済的に不利となる。
【0047】
また、表側導電部01A〜16Aは、カーボンナノチューブを含む塗布液の塗布により形成されることが好ましい。例えば誘電層2上にカーボンナノチューブを含む塗布液を直接スプレー塗工などにより塗布して、表側導電部01A〜16Aを形成させることが好ましい。これにより、表側導電部01A〜16Aと誘電層2との密着性が向上し、表側導電部01A〜16Aと誘電層2との層間剥離が抑制される。
【0048】
<裏側電極層>
裏側電極層4は、ストライプ状(平行)に配設される複数の裏側導電部01B〜16Bからなり、誘電層2の裏面側に積層されている。裏側導電部01B〜16Bは、それぞれ帯状を呈しており、誘電層2の裏面に合計16本積層されている。裏側導電部01B〜16Bは、それぞれ表側導電部01A〜16Aと平面視で略直交するように配置されている。すなわち、裏側導電部01B〜16Bは、それぞれY方向に延在している。また、裏側導電部01B〜16Bは、X方向に所定間隔ごとに離間して、互いに略平行となるようにそれぞれ配置されている。
【0049】
裏側導電部01B〜16Bの構成は、上述の表側導電部01A〜16Aと略同一であるので、ここでは説明を省略する。
【0050】
<表側配線>
表側配線01a〜16aは、線状を呈しており、それぞれ上記表側導電部01A〜16Aの端部と表側配線用コネクタ8とを接続する。表側配線01a〜16aを構成する材料としては、特に限定されず、従来公知の材料を用いることができるが、上述した表側導電部01A〜16Aと同様の構成のものとすることで表側配線01a〜16aも伸縮変形できる。これにより、誘電層2の変形を阻害することがないため、誘電層2の歪み量が正確に検出される。すなわち、表側配線01a〜16aは、導電性材料であるカーボンナノチューブ以外の含有割合を少なくすることが好ましく、エラストマー材料を含まない構成とすることがより好ましい。
【0051】
<裏側配線>
裏側配線01b〜16bは、線状を呈しており、それぞれ上記裏側導電部01B〜16Bの端部と裏側配線用コネクタ9とを接続する。表側配線01a〜16aを構成する材料については、上記表側配線01a〜16aと略同様であるのでここでは説明を省略する。
【0052】
なお、静電容量シート1における上記表側配線及び裏側配線が形成される領域について伸縮性が要求されない場合には、この領域では、用いられる柔軟性のエラストマー組成物に代えて、PETフィルムやPENフィルム、ポリイミドフィルムなど伸縮性の低い基材フィルムを用いることができる。このような基材フィルムを用いることで、従来公知の導電性材料と従来公知の製造方法により、表側配線及び裏側配線が形成された部分を製造することができる。例えば金属メッキ技術や金属プリント技術により作製された配線フィルム等を使用することができる。
【0053】
<検出部>
検出部(画素)C0101〜C1616は、
図1にハッチングで示すように、表側導電部01A〜16Aと裏側導電部01B〜16Bとが平面視で交差する部分に形成されている。上記静電容量シート1では、検出部C0101〜C1616は、合計256個(=16個×16個)形成されており、256箇所で静電容量が測定される。256個の検出部をそれぞれ独立して形成した場合、各検出部ごとに表側電極及び裏側電極が存在するため、256×2極で512本の配線が必要となるが、本実施形態のように帯状の導電部を交差させることで、必要な配線数を16本+16本の32本とすることができる。そのため、上述のように検出部が効率良く配置される。なお、検出部C0101〜C1616は、X方向及びY方向ともに略等間隔でマトリクス状に配置されている。
【0054】
<表側配線用コネクタ>
表側配線用コネクタ8は、表側配線01a〜16a及び静電容量検出手段5の測定端子に接続され、静電容量検出手段5の選択制御によって静電容量検出手段5の測定端子に電気的に接続する表側配線を切り替える。これにより、表側導電部01A〜16Aのうち静電容量検出手段5によって選択された一つの表側導電部のみが静電容量検出手段5の測定端子に電気的に接続される。
【0055】
<裏側配線用コネクタ>
裏側配線用コネクタ9は、裏側配線01b〜16b及び静電容量検出手段5の測定端子に接続され、静電容量検出手段5の選択制御によって静電容量検出手段5の測定端子に電気的に接続する表側配線を切り替える。これにより、裏側導電部01B〜16Bのうち静電容量検出手段5によって選択された一つの裏側導電部のみが静電容量検出手段5の測定端子に電気的に接続される。
【0056】
<表側保護層及び裏側保護層>
シート状の表側保護層6は、
図2に示すように、誘電層2、表側導電部01A〜16A及び表側配線01a〜16aを覆うように、誘電層2の表面側に配置されている。また、シート状の裏側保護層7が、誘電層2、裏側導電部01B〜16B及び裏側配線01b〜16bを覆うように、誘電層2の裏面側に配置されている。表側保護層6及び裏側保護層7をこのように設けることで、表側導電部01A〜16A、表側配線01a〜16a、裏側導電部01B〜16B及び裏側配線01b〜16bと、静電容量シート1の外部の部材とが導通するのを抑制することができる。
【0057】
また、表側保護層6及び裏側保護層7を設ける目的は、電極層の保護に限定されるものではない。例えば着色した保護層を形成することにより、導電部や配線等を外部から見えなくでき、また保護層に印字することで意匠性が付与される。また、例えば表側保護層6及び裏側保護層7の表面に接着性又は粘着性を有する層を付与することで、測定対象物を静電容量シート1に貼り付けることができる。また、例えば保護層の表面を摩擦係数の低い表面層とすることもできる。
【0058】
表側保護層6及び裏側保護層7の材質は特に限定されず、その形成目的に応じて適宜選択すればよいが、例えば誘電層2に用いたエラストマー組成物と同様のものを用いることができる。上記表側保護層6及び裏側保護層7は、誘電層2と略同じベースポリマーを含んで形成されていることが好ましく、これにより誘電層2との高い接着性が得られる。なお、表側保護層6及び裏側保護層7は接着剤を介して誘電層2に積層してもよい。
【0059】
[静電容量検出手段]
上記静電容量検出手段5は、
図3に示すように、上記表側電極層3に電気的に接続され表側電極層3及び裏側電極層4間に電圧を印加する交流印加装置11と、反転入力端子が上記裏側電極層4に電気的に接続され非反転入力端子が接地される演算増幅器12と、上記演算増幅器12の反転入力端子及び出力端子間に並列に接続される帰還キャパシタ13及び帰還抵抗14とを有する。静電容量検出手段5の測定端子を上記静電容量シート1の表側配線用コネクタ8及び裏側配線用コネクタ9に接続することにより、交流印加装置11及び表側電極層3、演算増幅器12の反転入力端子及び裏側電極層4がそれぞれ電気的に接続される。電気的に接続した状態で表側電極層3及び裏側電極層4間に交流電圧を印加すると、上記静電容量シート1の表側電極層3及び裏側電極層4間の電極間キャパシタ15の静電容量に対応する電圧が演算増幅器12の出力端子から出力され、ADC(Analog−to−Digital Converter)10へ入力される。
【0060】
ここで、静電容量検出手段5により、各検出部C0101〜C1616の静電容量を測定する動作について以下に説明する。
【0061】
静電容量検出手段5は、表側導電部01A〜16Aのうち、測定対象の検出部に対応する一つの表側導電部が静電容量検出手段5の測定端子に電気的に接続されるよう表側配線用コネクタ8を選択制御すると共に、裏側導電部01B〜16Bのうち、測定対象の検出部に対応する一つの裏側導電部が静電容量検出手段5の測定端子に電気的に接続されるよう裏側配線用コネクタ9を選択制御する。そして、交流印加装置11によって電気的に接続された上記表側導電部及び裏側導電部間に電圧を印加し、演算増幅器12の出力電圧に基づいて、このときの表側電極層3及び裏側電極層4間の静電容量を測定する。
【0062】
静電容量検出手段5は、256個の全ての検出部C0101〜C1616について、上述した動作を繰り返し行う。すなわち、静電容量検出手段5は、測定する対象の検出部に対応する一つの表側導電部及び一つの裏側導電部のみを静電容量検出手段5の測定端子に電気的に接続させ、その表側導電部及び裏側導電部間に電圧を印加して静電容量を測定する動作を、測定端子に電気的に接続する表側導電部及び裏側導電部を順次切り替えることにより、全ての検出部C0101〜C1616について順次行う。これにより、全ての検出部C0101〜C1616について、それぞれの静電容量が順次静電容量検出手段5によって測定される。
【0063】
図3の静電容量検出手段5の回路において、表側電極層3に電気的に接続される交流印加装置11の端子と演算増幅器12の反転入力端子との間(以下、この間の抵抗を静電容量シート抵抗16と呼ぶ)の抵抗値をR
x(Ω)、交流印加装置11による印加電圧の周波数をf(Hz)、帰還キャパシタ13の容量値をC
f(F)、帰還抵抗14の抵抗値をR
f(Ω)、電極間キャパシタ15の容量値をC
x(F)とした場合に、この回路の伝達関数G(s)は下記式(6)で表される。下記式(6)の分子は、ボード線図上では単調増加のグラフになるため、この回路のカットオフ周波数を導出するためには、分母だけを考慮し、下記式(7)の伝達関数G’(s)を用いればよい。
【0065】
図3の回路はバンドパスフィルタと同構造なので、(i)sが非常に小さい場合、(ii)sが小さく、sの項以外を省略できる場合、及び(iii)sが大きく、s
2の項以外を省略できる場合の3つの周波数帯域の場合に分けることができる。上記(i)、(ii)及び(iii)の周波数帯域における伝達関数G’(s)は、それぞれ下記式(8)、式(9)及び式(10)となる。
【0067】
伝達関数から周波数応答を求めるために、上記式(8)、式(9)及び式(10)においてs=jωとすると、低周波側のカットオフ周波数ω
L(Hz)、高周波側のカットオフ周波数ω
H(Hz)及び中心周波数ω
0(Hz)が導出できる。なお、ここでωは角周波数、jは虚数単位である。具体的には、低周波側のカットオフ周波数ω
Lのときに上記式(8)及び式(9)の右辺同士が等しくなるので、上記式(8)及び式(9)より下記式(11)のように低周波側のカットオフ周波数ω
Lが導出される。また、高周波側のカットオフ周波数ω
Hのときに上記式(9)及び式(10)の右辺同士が等しくなるので、上記式(9)及び式(10)より下記式(12)のように高周波側のカットオフ周波数ω
Hが導出される。
【0069】
また、ボード線図上の低周波側のカットオフ周波数ω
Lと高周波側のカットオフ周波数ω
Hとの間の中心周波数がω
0となるので、中心周波数ω
0は下記式(13)で表される。従って、下記式(13)に上記式(11)及び式(12)のω
L及びω
Hを代入することにより、下記式(14)のように中心周波数ω
0が導出される。
【0072】
一方、ω
L<ω<ω
Hである周波数ωでの利得は、上記(ii)の場合で下記式(15)となり一定である。
【0074】
上記式(15)より、帰還抵抗14の抵抗値R
fが大きいほど高利得となることがわかる。また、交流印加装置11による発振周波数fが、ω
L<2πf<ω
Hの範囲内であれば利得が一定となる。従って、上記式(11)及び式(12)より、2πfが下記式(16)の関係を満たすとよい。
【0076】
つまり、上記式(16)の2πfの上限側の不等式を変形して、帰還抵抗14の抵抗値R
fが下記式(17)を満たすことが一定の高利得を得るための条件となる。下記式(17)では2πfR
xC
x−1>0である必要があるため、抵抗値R
fが下記式(17)を満たすときの発振周波数fは下記式(18)を満たすものでなければならない。
【0078】
同様に、上記式(16)の2πfの下限側の不等式を変形して、帰還抵抗14の抵抗値R
fが下記式(19)を満たすことが一定の高利得を得るための条件となる。下記式(19)においてR
f≧0より、1−2πfR
xC
x≧0なので、抵抗値R
fが下記式(19)を満たすときの発振周波数fは下記式(20)を満たすものである。
【0080】
従って、上記式(17)及び式(18)より帰還抵抗14の抵抗値R
fが下記式(1)を満たし、かつ上記式(19)及び式(20)より帰還抵抗14の抵抗値R
fが下記式(2)を満たすことにより高利得が得られる。
【0082】
しかし、上記発振周波数fが、ω
L<2πf<ω
Hの範囲内であっても、上記式(15)より抵抗値R
fが小さいと利得が低下する。つまり、上記式(15)より、抵抗値R
fが抵抗値R
xに対して大きいほど利得が大きくなり、その利得はC
x/C
fに近似され、電極間キャパシタ15の容量値と帰還キャパシタ13の容量値との比になる。そのため、帰還抵抗14の抵抗値R
fが下記式(3)を満たすことが好ましい。抵抗値R
fが下記式(3)の下限以下であると、利得が小さくなりその結果分解能が低下するおそれがある。
【0084】
従って、発振周波数fが上記式(1)及び式(2)を満たし、帰還抵抗14の抵抗値R
fが上記式(3)を満たすことにより、上記演算増幅器12の利得が向上し、静電容量シート1の電極層間の容量値C
xをより高精度に測定できる。なお、帰還抵抗14の抵抗値R
fをさらに大きくし抵抗値R
xの10倍よりも大きくすることで、さらに利得が大きくなり分解能が向上する。
【0085】
また、帰還キャパシタ13及び帰還抵抗14で構成されるローパスフィルタ部分の演算増幅器12の出力信号の立ち下がり時間t
f(秒)は、下記式(21)で求められる。
【0087】
演算増幅器12の出力信号の立ち下がり時間t
fを入力の発振周波数fの周期に対して十分に大きくすることにより、立ち下がりが遅くなり、安定した測定が可能となる。従って、帰還抵抗14の抵抗値R
fを、発振周波数fの周期に対して10倍の余裕を持たせるよう下記式(4)を満たすようにすることで、より精度よく容量値C
xが測定できる。なお、利得を考慮すると、入力の発振周波数fが高周波側のカットオフ周波数f
Hを超えないことが好ましい。従って、上記式(12)より、下記式(5)を満たす発振周波数fとすることにより高利得が得られる。
【0089】
また、上述したように、伝達関数G’(s)においてsが小さくsの項以外を省略できる上記(ii)の場合、演算増幅器12の利得はC
x/C
fに近似される。従って、帰還キャパシタ13の容量値C
fを、上記静電容量シート1の伸縮変形によって容量値C
xが取り得る範囲の最大値に近い値とすることにより、測定可能な容量の範囲が広がり、その結果分解能が向上する。なお、表側電極層3及び裏側電極層4間の距離が小さいほど容量値C
xは大きくなるので、当該静電容量型センサにより測定対象物を測定する際に静電容量シート1が伸縮変形する範囲内において表側電極層3及び裏側電極層4間の距離が最小となるときの容量値が、上記静電容量シート1の伸縮変形によって容量値C
xが取り得る範囲の最大値である。
【0090】
具体的には、上記帰還キャパシタ13の容量値C
fの下限としては、上記電極間キャパシタ15の容量値C
xが取り得る範囲の最大値の0.001倍が好ましく、0.5倍がより好ましい。また、上記容量値C
fの上限としては、上記容量値C
xが取り得る範囲の最大値の5倍が好ましく、1.5倍がより好ましい。上記容量値C
fが上記下限未満であると、測定可能な範囲が狭くなるおそれがある。また、上記容量値C
fが上記上限を超えると、十分な利得が得られなくなるおそれがある。
【0091】
〔利点〕
当該静電容量型センサは、静電容量検出手段5が演算増幅器12の反転入力端子及び出力端子間に帰還キャパシタ13と帰還抵抗14とが並列に接続されているので、演算増幅器12の出力電圧レベルが一定値になるまでの時間が短縮され、高抵抗の静電容量シート1の電極層間の容量値を優れた応答性及び精度で測定できる。
【0092】
[歪み計測装置]
当該歪み計測装置は、上記静電容量型センサを備える。上述したように、上記静電容量型センサは、静電容量シート1の主に平面方向への伸縮による表側電極層3及び裏側電極層4の面積の変化に伴って静電容量が変化し、この静電容量の変化を優れた応答性及び精度で測定できる。当該歪み計測装置は、上記静電容量型センサを備えることで、各検出部C0101〜C1616における静電容量の変化が優れた応答性及び精度で測定されるので、その測定結果を用いて測定対象物の凸凹形状及び形状変化を優れた応答性及び精度で検出でき、静電容量シート1の伸縮変形歪み量、伸縮変形歪み分布又は面圧分布を優れた精度で計測することができる。
【0093】
[その他の実施形態]
なお、本発明は上記実施態様の他、種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。
【0094】
つまり、上記実施形態における静電容量シート1は、誘電層2の表面側に積層される表側電極層3がストライプ状に配設される複数の表側導電部を有し、誘電層2の裏面側に積層される裏側電極層4が表側導電部に略直交するようにストライプ状に配設される複数の裏側導電部を有するものとしたが、このような表側電極層及び裏側電極層の構成に限定されるものではなく、誘電層の両面に積層される電極層間の静電容量を検知する静電容量シートであればどのような構成であってもよい。例えば、上記実施形態における静電容量シート1のように計測点(以下、「画素」と呼ぶ)がマトリクス状に配置されるものではなく、計測点が1点(単画素)である静電容量シートも本発明の意図する範囲である。また、各画素の形状は、正方形、長方形、多角形、円、楕円等どのような形状であってもよい。また、電極が共通化されていない複数の単画素を有する静電容量シートも本発明の意図する範囲である。
【0095】
また、誘電層の表面側及び裏面側に積層される電極層を有し、長手方向の伸縮を電極層間の静電容量の変化で検出する平面視帯状の静電容量型センサを少なくとも1つ備えた静電容量シートも本発明の意図する範囲である。さらに、このような帯状の静電容量型センサを複数備え、これらの静電容量型センサの端部同士が接続されてシート状を形成している静電容量シートも本発明の意図する範囲である。この静電容量シートは、複数の静電容量型センサの静電容量を測定することで、複雑で広い範囲の形状変化に伴う歪みの方向及び大きさを計測できる。
【0096】
また、上記実施形態では、電極層に保護層が積層される構成について説明したが、他の導体から入ってくる外来ノイズや電磁波をグランド(接地)するためのシールド電極層が電極層と保護層との間に配設されていてもよく、このようなシールド電極層を有する静電容量シートも本発明の意図する範囲である。シールド電極層は、例えば電極層の誘電層とは反対側の面にエラストマー材料等の絶縁層を積層し、この絶縁層と保護層との間に配設される。このシールド電極層は、誘電層の表面側及び裏面側のうち、一方の面側のみに配設されてもよいし、両方の面側に配設されてもよい。
【0097】
また、上記実施形態では、誘電層の表面側及び裏面側に表側保護層及び裏側保護層が積層される構成について説明したが、表側保護層及び裏側保護層が省略された構成としてもよい。
【実施例】
【0098】
以下、実施例によって当該発明をさらに具体的に説明するが、当該発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0099】
図3に示す静電容量検出手段5を用いて、静電容量シート抵抗16の抵抗値R
x及び帰還抵抗14の抵抗値R
fと、交流印加装置11の発振周波数及び演算増幅器12の出力波形との関係を求めた。
【0100】
まず、実施例1〜実施例4として、数値計算により、
図3に示す回路における抵抗値R
x及び抵抗値R
fに対する交流印加装置11の発振周波数及び演算増幅器12の出力信号の立ち下がり時間の関係を求めた。その結果を表1に示す。表1において、f
L(Hz)は低周波側のカットオフ周波数、f
H(Hz)は高周波側のカットオフ周波数、f
0(Hz)は中心周波数、t
f(秒)は演算増幅器12の出力信号の立ち下がり時間を示している。
【0101】
【表1】
【0102】
表1の実施例1〜3の結果より、抵抗値R
fが大きくなると、高周波側のカットオフ周波数f
Hが小さくなるが、立ち下がり時間t
fは大きくなることがわかる。また、実施例3及び4の結果より、抵抗値R
xを小さくすることで、高周波側のカットオフ周波数f
Hを大きくできることがわかる。
【0103】
次に、実施例5〜実施例8として、シミュレーションにより、
図3に示す回路における抵抗値R
x、抵抗値R
f及び交流印加装置11の発振周波数fと、演算増幅器12の出力信号波形との関係を求めた。実施例5では、抵抗値R
f=256kΩ、抵抗値R
x=100kΩ及び発振周波数f=10kHzと設定し、実施例6では、抵抗値R
f=4.7MΩ、抵抗値R
x=100kΩ及び発振周波数f=10kHzと設定し、実施例7では、抵抗値R
f=4.7MΩ、抵抗値R
x=100kΩ及び発振周波数f=20kHzと設定し、実施例8では、抵抗値R
f=4.7MΩ、抵抗値R
x=50kΩ及び発振周波数f=20kHzと設定した。実施例5〜8の出力波形のシミュレーション結果をそれぞれ
図4(a)〜
図4(d)に示す。これらの図では、横軸が時間を表し、縦軸が電圧を表し、入力波形を破線で表し、出力波形を実線で表している。
【0104】
図4(a)に示す実施例5は、発振周波数f、容量値C
f、抵抗値R
x、容量値C
x及び抵抗値R
fが上記式(13)を満たすものである。
図4(a)のシミュレーション結果より、この場合は立ち下がり時間が小さく、測定精度が低下し易いといえる。すなわち、上記式(13)を満たす設定では、抵抗値R
fが小さくなりすぎるといえる。
【0105】
一方、
図4(c)に示す実施例7及び
図4(d)に示す実施例8の結果より、抵抗値R
xが小さくなると立ち下がり時間が大きくなり、静電容量シートの電極層間の容量値C
xをより安定して測定できることがわかる。
【0106】
なお、
図4(b)に示す実施例6は、上記式(4)及び式(5)を満たすパラメータ値を設定した場合の出力波形を示している。
図4(b)の結果より、上記式(4)及び式(5)を満たすことにより、より優れた応答性及び精度で静電容量を測定できることがわかる。