【解決手段】遊技機の遊技盤を形成するための基板部材であって、表面にシート状の化粧部材が貼着された別の遊技盤に使われている木質系部材を、化粧部材を取り除くことなく粉状化し、これにより得られた粉状体20を固めて形成されていることを特徴とする。
前記粉状体は、遊技部品の装着用の開口部を形成する際に、前記木質系部材をルーター加工することで生ずる切削粉からなることを特徴とする請求項1に記載の遊技盤用の基板部材。
前記基板部材は、前記粉状体を含む植物繊維を主体とする合成木材原料がプレス成形された合成木材であることを特徴とする請求項1又は2に記載の遊技盤用の基板部材。
遊技部品を装着するために後に形成される開口部に対応した領域内に、空洞・空隙を有する空隙部材が設けられていることを特徴とする請求項3又は4に記載の遊技盤用の基板部材。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年、遊技機の所定部品のリサイクル化は進んでいるものの、ベニヤ合板等による基板部材については、その表面に貼着された化粧部材が分離できない異物となってリサイクルし難いとされている。即ち、化粧部材は、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)等の透明樹脂の裏面に意匠模様が設けられ、ベニヤ合板との接着のため紙材が裏打ちされており、このような化粧部材を取り除かなければリサイクルができない。このため、上述の各特許文献のように、従来は、化粧部材を除去するための対費用効果から焼却又は埋め立て等の廃棄処分に付されていた。
そして、近年、遊技性の要求から液晶画像装置が大型化することにより、遊技部品の取付け用の開口部の面積はより拡大化され、遊技盤のかなりの面積を占めるにいたっている。例えば、特許文献3の
図1の遊技盤において、ルーター加工により開口部が形成される領域(符号2,3,4以外の領域)は、ルーター加工前の遊技盤の面積の凡そ50〜60%と推測される。このように、開口部を形成するため、遊技盤の凡そ半分以上がルーター加工によって粉状化され焼却処分されている。
【0007】
そこで本願発明は、化粧部材が貼着された遊技盤を切削して生じる切削紛を有効活用し、森林資源の保護と焼却による環境負荷を低減できる遊技盤用の基板部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、遊技機の遊技盤を形成するための基板部材であって、表面にシート状の化粧部材が貼着された別の遊技盤に使われている木質系部材を、前記化粧部材を取り除くことなく粉状化し、これにより得られた粉状体を固めて形成されている遊技盤用の基板部材により解決される。
この発明の構成によれば、基板部材は、木質系部材を粉状化し、これにより得られた粉状体を固めて形成されている。従って、例えば、遊技盤に遊技部品装着用の開口部を形成する際、ルーター加工で生じる紛状体、又は、ルーター加工後に生ずる木塊等を粉砕装置で粉砕して生じる紛状体、或いは、不用となった遊技盤を粉砕等して生じる紛状体を有効利用し、必要な剛性・釘の保持力、良好なルーター加工性を有するように固めれば、遊技機の基板部材として十分使用できるものを形成できる。
この点、この紛状化する前の木質系部材にはシート状の化粧部材が貼着されているが、本願発明では、この化粧部材を取り除くことなく紛状化している。従って、化粧部材を除去するための費用をかけることなく、リサイクルした基板部材を形成できる。
即ち、通常、ベニヤ合板等の基板部材の厚さは16〜20mm程度であるのに対して、化粧部材はシート状であり、その厚さは0.1〜1mm程度である。このため、遊技盤の粉状化した粉状体に占める化粧部材の混入割合は略々1〜6%程度と僅かであって、この化粧部材が混入した紛状体については、遊技盤に必要な剛性・釘の保持力、良好なルーター加工性を有するように固められることが分かった。従って、遊技盤以外の他分野へのリサイクルに供することができなくとも、基板部材の表面が化粧部材で隠される遊技盤用の基板部材への応用には大きな支障はない。
【0009】
また、好ましくは、前記粉状体は、遊技部品の装着用の開口部を形成する際に、前記木質系部材をルーター加工することで生ずる切削粉からなることを特徴とする。
従って、例えば、不用となった遊技盤を改めて粉砕して生じる紛状体を利用するよりも、ルーター加工で生じる紛状体をそのまま利用すればエネルギーコスト等を大幅に軽減したリサイクル化が達成できる。即ち、上記のように、ルーター加工による切削粉は集塵移送を容易にするため粉状化されているため、この粉状体を焼却することなく回収して、遊技機の基板部材としてリサイクル利用することで、粉状化のためのエネルギーコストが節約でき、さらに廃材利用による材料費が低減でき、焼却や埋め立て等の費用が低減でき、環境負荷をも低減できるため、これを採用することは大きなメリットを有する。
【0010】
また、好ましくは、前記基板部材は、前記粉状体を含む植物繊維を主体とする合成木材原料がプレス成形された合成木材であることを特徴とする。
従って、植物繊維を主体とする圧縮された合成木材であって、所定の植物性の繊維密度を有し、剛性や釘保持力等を高くして、遊技機用の基板部材として必要な諸物性を確保し易くなる。また、植物性の繊維密度が50重量%以上であれば、リサイクル資源の区分上で木材として扱われることにもなり、焼却処理が可能となるうえ、これらのルーター加工粉や、廃材を粉状化した粉状体を合成木材原料に配合すれば、再度のリサイクル使用が可能となる。
【0011】
また、好ましくは、前記合成木材の表面に、薄板状の補強部材が配設されていることを特徴とする。
これにより、補強部材が基板部位の曲げ強度、曲げ弾性率の向上に寄与して、基板部材全体を補強できると共に、遊技釘に対する釘打ち性や釘保持力を向上できる。さらに、この補強部材は薄板状であるため、リサイクル性を然程低下させることがなく、また、化粧部材の接着性を保持する機能部材として使用することができる。
この補強部材は、基板部材に求める曲げ強度・曲げ弾性・釘打ち性・釘保持力・化粧部材との接着性等に適宜対応して構成するのがよく、上記紛状体を含む植物繊維を主体とする合成木材に比べて、単位面積当たりの曲げ強度・曲げ弾性率が高く、繊維密度が大きな部材とするのが好ましい。
【0012】
また、好ましくは、遊技部品を装着するために後に形成される開口部に対応した領域内に、空洞・空隙を有する空隙部材が設けられていることを特徴とする。
この空隙部材は、基板部材の主体部分となる合成木材に比較して大きな空洞・空隙を有するため、ルーターの回転刃の切削抵抗を小さくする部材である。従って、遊技部品装着用の開口部を形成するためのルーター加工に際して、刃物の切削加工負担を軽減してルーター刃を長持ちさせることができ、また、ルーター加工時間を短縮することができる。
【0013】
また、上記課題は、本願発明によれば、遊技機の遊技盤用の基板部材の製造方法であって、表面にシート状の化粧部材が貼着された別の遊技盤に使われている木質系部材を、前記化粧部材を取り除くことなくルーター加工して生じた粉状体を回収する回収工程と、前記粉状体を含む植物繊維を主体として、これにマトリックス樹脂を混合して合成木材原料を形成する原料形成工程と、前記合成木材原料をプレス成形して合成木材を形成する成形工程とを有する遊技盤用の基板部材の製造方法により解決される。
本製造方法によれば、木質系部材をルーター加工して生じた粉状体を回収し、この粉状体を含む植物繊維を主体として、これにマトリックス樹脂を加えて合成木材原料を形成し、この合成木材原料をプレス成形して合成木材を形成する。従って、遊技盤に遊技部品を取り付けるための開口部をルーター加工で形成する際に生じた紛状体を有効利用して、必要な剛性・釘の保持力、良好なルーター加工性を有するように樹脂で固めて、遊技機の基板部材を形成できる。
この点、この製造方法では化粧部材を取り除くことなく紛状化しており、従って、化粧部材を除去するための費用をかけることなく、リサイクルした基板部材を形成できる。
そして、このように化粧部材を取り除かなくても、化粧部材はシート状であって、合成木材全体に占める化粧部材の混入割合は僅かである。従って、遊技盤に必要な剛性・釘の保持力、良好なルーター加工性が損なわれることはなく、さらに、基板部材の表面は化粧部材で隠されるため、遊技盤用の基板部材として十分使用できる。
【0014】
なお、プレス成形については、特に限定されず公知のプレス成形方法が適用できる。例えば、加熱プレス機を使用する場合、例えば、上下の2面にそれぞれ熱盤を備えた平板プレス装置であり、熱盤を上下にストロークし、この熱盤間にフォーミングした合成木材原料を挟んで成形することができ、あるいは成形用の金型を挟んで加圧することで熱プレスすることもできる。例えばプレス成形用の金型は、上型と下型によって構成されるモールドであり、これに合成木材原料を投入し加圧・加熱することで成形ができる。成形サイズは個々の基板部材の大きさで成形するか、さらに大きなサイズで成形後分割してもよい。
【0015】
また、好ましくは、前記成形工程は、成形型に充填した前記合成木材原料をプレス加工する工程であり、前記合成木材原料を前記成形型内に充填する前に、前記成形型内であって、遊技部品を装着するために後に形成される開口部に対応した領域内に、空洞・空隙を有し、かつ、前記プレス加工時にその押圧方向に変形可能な空隙部材を配置することを特徴とする。
そうすると、この空隙部材を配置した後に、合成木材原料を成形型内に充填してプレス成形すると、空隙部材は合成木材原料の圧縮変形と同時に変形して、後の開口部に対応する位置に空隙部材が埋設された基板部材が得られる。
そして、このようにして完成した基板部材は、遊技部品を装着するためにルーター加工で開口部を形成するに際して、刃物の切削加工負担を軽減してルーター刃を長持ちさせることができ、また、ルーター加工時間を短縮することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上、本発明によれば、化粧部材が貼着された遊技盤を切削して生じる切削紛を有効活用し、森林資源の保護と焼却による環境負荷を低減できる遊技盤用の基板部材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して詳しく説明する。
尚、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、以下の図において、同一の符号を付した箇所は同様の構成である。
【0019】
〔遊技機の遊技盤について〕
本発明の実施形態に係る基板部材を説明する前に、理解の便宜のため、一般的な(本発明に係る基板部材ではない)基板部材を用いた遊技盤の構成及びその製造方法について、
図1を用いて概説する。
図1は、パチンコ機の遊技機について、遊技部品を装着する前の遊技盤10の一例であり、
図1(a)はその正面図、
図1(b)はその右側面図である。
この遊技盤10は、ベニヤ合板等の木質系部材からなる矩形状の基板部材1と、この基板部材1の表面に貼着された装飾用の化粧部材8とを有している。
【0020】
遊技盤10の一般的な製造方法は次の通りである。
先ず、基板部材1に意匠模様7が視認できるシート状の化粧部材8を貼着するため、基板部材1の化粧部材8を貼着しようとする表面1a側の全面、及び/又は化粧部材8の裏面8a側全面に接着剤を塗布し、その後、基板部材1の表面1aに化粧部材8を位置決めして載置し、プレス機等で加圧してこれらを接着する。なお、化粧部材8の厚さD1は通常0.1〜1mm程度である。
次いで、画像表示装置等の遊技部品を装着するための表裏に貫通する複数の開口部16a〜16eを、ルーター切削加工によって、化粧部材8が貼着された基板部材1に形成する。すなわち、化粧部材8が貼着されたまま、木質系部材からなる基板部材1をルーター加工する。なお、
図1の場合、開口部16aは画像表示装置用で最も大きく、開口部16b,16c,16d,16eは入賞口・盤面飾り用等である。
次いで、図示されていないが、化粧部材8の表面に遊技球転動用の遊技釘を多数打ち、円形状の遊技球発射案内レールを取付け、加工済の開口部16a〜16eに画像表示装置、入賞口、盤面飾り等の遊技用部品を取付けて遊技機の盤面である遊技盤10を完成させる。
【0021】
〔本発明の実施形態1〕
次に、本発明の実施形態1に係る基板部材を説明する。
図2は、この実施形態1の基板部材1Aであり、
図2(a)はその正面図、
図2(b)は
図2(a)のA−A断面図である。
本実施形態1の基板部材1Aは、遊技盤を製造するための元となる基板であり、遊技基板とも呼ばれ、例えば、厚さ10〜20mm(
図2の厚さD2は20mm)で、遊技機の種類により異なるが、概略幅450mm×長さ500mmの大きさの略縦長の板状体のものが好適に使用される。また、基板部材1Aの表面は平滑に形成されている。
【0022】
この基板部材1Aは、木質系部材を粉状化して得られた粉状体を固めて形成されている。例えば、
図1に示す開口部16a〜16eを形成するために、ベニヤ合板等の木質系部材を化粧部材8が貼着されたままの状態でルーター加工した際に生じた切削粉、或いは、既に完成したが不用になった遊技盤を粉砕して生じる紛状物を回収し、それを固めて形成されている。
本実施形態の場合、基板部材1Aは、
図1で説明したルーター加工の際に生じた切削粉を回収し、その切削粉からなる粉状体を含む植物繊維を主体とする合成木材原料をプレス成形することで形成された合成木材23である。この植物繊維を主体とする合成木材23は、植物性の繊維量が50重量%以上であるのが好ましく、これにより、予め設計された圧力で圧縮すると、所要の繊維密度を確保して、曲げ強度、曲げ弾性率、遊技釘に対する釘打ち性や釘保持力が確保し易くなる。
【0023】
合成木材原料としては、上記ルーター加工で生じた切削粉からなる粉状体だけでもよいし、公知の植物繊維に上記粉状体をリサイクル量に応じて一定量含むものでもよい。
公知の植物繊維としては、例えば、籾殻、木材チップ、おから、古紙粉砕材、衣料粉砕材などのチップ状のもの、綿繊維、麻繊維、竹繊維、木材繊維、ケナフ繊維、ヘンプ繊維、ジュート繊維、バナナ繊維、ココナッツ繊維などの植物繊維もしくはこれらの植物繊維から加工されたパルプやセルロース繊維などの繊維状のもの、紙粉、木粉、竹粉、セルロース粉末、籾殻粉末、果実殻粉末、澱粉などの粉体状のものが挙げられ、成形性の観点から、紙粉、木粉、竹粉、セルロース粉末、籾殻粉末、果実殻粉末、澱粉などの粉体状のものが好ましく、これらの単一成分、もしくは複合成分が用いられる。
【0024】
そして、合成木材原料は、このような植物繊維を主体として、熱硬化性樹脂及び/又は熱可塑性樹脂をマトリックス樹脂とし、これら植物繊維と樹脂を単に撹拌混合し、或いは液状樹脂のスプレー塗布等で粉体状又は粒体状に形成されている。
マトリックス樹脂としての熱硬化性樹脂の例として、例えば、フェノール樹脂、レゾルシノール系樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、熱硬化性アクリル樹脂などが挙げられ、これらの単一成分、もしくは複合成分が用いられる。
また、マトリックス樹脂としての熱可塑性樹脂の例として、例えば、ABS樹脂、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、メタクリル樹脂、石油樹脂、ポリアミド、ポリ塩化ビニリデンなどが挙げられるが、本発明はこれらに限られるものではない。なお、これら樹脂は分散性のよい粉体物、粒状物、粉砕物がよく、これらの単一成分、もしくは複合成分が用いられる。
【0025】
また、合成木材原料には、追加配合成分として、必要に応じて静電気対策のため導電性を付与するためのカーボン粉や、植物繊維と他の配合樹脂成分間の接着性を向上させるためのシランカップリング剤や、燃焼時樹脂塊を防ぐ炭酸カルシウムなどの各種無機質成分や、成形性向上効果を有する滑剤等を加えるなどしてもよい。
【0026】
そして、これらの合成木材原料を、例えば、基板部材1Aの外形サイズを有する成形型内に投入してプレス成形したり、より大判のプレス成形後に分割したりして、板状に成形し、これにより、木質系の合成木材である基板部材1Aを形成している。
以下、この基板部材1Aの製造方法についての好ましい具体例を、主に
図1、
図3、及び
図4を用いて説明する。
なお、
図3は上記基板部材1Aの製造方法の一部を示す説明図であり、
図3(a−1)は成形工程における第1工程を示す上面図、
図3(a−2)は
図3(a−1)のB−B断面図、
図3(b−1)はその第2工程を示す上面図、
図3(b−2)は
図3(b−1)のB−B断面図である。また、
図4は
図3に続く第3工程を示す説明図であり、
図4(a)はプレス前の状態を示す断面図、
図4(b)はプレス後の状態を示す断面図である。
【0027】
先ず、
図1に示すように、別の遊技盤10(即ち、表面にシート状の化粧部材8が貼着した木質系部材)について、化粧部材8を取り除くことなくルーター加工で開口部16a〜16eを形成する際に生じた切削粉を回収しておく(回収工程)。このように、一般的な別の遊技盤10を形成する際に必要となるルーター加工で生ずる切削粉を有効活用することで、遊技盤とは関係のない別の木材、或いは、完成し終えた遊技盤を改めて粉砕して切削粉を形成するのに比べて、優れたリサイクル性を有する。
次に、このようにして得られた切削粉を含む植物繊維の量が50重量%以上となるようにして(本実施形態では例えば約53重量%としている)、これに熱硬化性樹脂をマトリックス樹脂として混合して粉体状の合成木材原料を形成する(原料形成工程)。
【0028】
次いで、この合成木材原料をプレス成形して合成木材を形成する(成形工程)。
具体的には、
図3(a−1)・(a−2)に示すように、成形しようとする基板部材と同様の外形寸法を持つ箱形のプレス成形型12を用意しておき(成形工程の第1工程)、そのプレス成形型12内に、
図3(b−1)・(b−2)に示すように、予め定められた重量の合成木材原料20を全面が平均した密度となるよう平らに充填する(成形工程の第2工程)。
【0029】
次いで、
図4に示すように、充填した合成木材原料20を圧縮して、合成木材23を形成する(成形工程の第3工程)。すなわち、
図4(a)に示すように、プレス成形型12のほぼ内寸法に相当する平板状の上型16をプレス成形型12の内側に載置し、その後、上下に熱盤を有するプレス装置にセットして加熱しながら、
図4(b)の矢印Fの方向に加圧する(例えば、圧力0.1〜3MPa、温度100〜200℃、保持時間15〜90分)。その結果、
図4(a)に示すプレス成形前の高さH1(例えば30mm)を有する合成木材原料20が圧縮及び加熱硬化して、
図4(b)に示すように、プレス成形後の高さH2(例えば20mm)(
図2のD2)へと寸法が小さく変化し、合成木材23からなる基板部材(
図2の1A)が完成する。
プレス成形型12から取り出された基板部材(
図2の1A)は、両面共に平坦な状態に形成されるため化粧部材を貼着することができ、また、上述のように植物繊維を主とする合成木材原料20を圧縮して所要の密度を有するため、予め設計された曲げ強度、曲げ弾性、遊技釘に対する釘打ち性や釘保持力を備えた基板部材となる。
【0030】
〔本発明の実施形態2〕
次に、本発明の実施形態2に係る基板部材を説明する。
図5は、本発明の実施形態2に係る基板部材1Bであり、
図5(a)は正面図、
図5(b)は
図5(a)のA−A断面図である。
図5の基板部材1Bは、
図2の基板部材1Aと比較して、合成木材22の表面に薄板状の補強部材24が配設されている点が異なっている。なお、合成木材22は、その厚みが
図2の合成木材23に比べて補強部材24,24の分だけ薄いが、その他の材料などの構成は
図2の合成木材23と同様である。
【0031】
この補強部材24は、主に、遊技機用の基板部材1Bとして必要な諸物性を確実に確保するためのものである。具体的には、補強部材24は合成木材22に比べて薄い平板状であるが、合成木材22に比べて単位面積当たりの曲げ強度と弾性率が高く、かつ、繊維密度が大きくなっており、これにより、基板部材1B全体の曲げ強度、曲げ弾性率、遊技釘に対する釘打ち性や釘保持力を向上させている。
図5の補強部材24は、このような諸物性を十分に発揮させるため、合成木材22の両面22a,22bに貼着されている。
また、補強部材24はシート状の化粧部材との接着性に優れたものが好ましく、合成木材22の主面と同じ形状の主面を有する面状であって、その表面が平坦である。
【0032】
このような補強部材24としては、例えば、従来から使用されているベニヤ合板のほか、主に木材などの植物繊維を成型したハードボード板(硬質繊維板)、MDF板(中密度繊維積層板)、インシュレーションボード板(軟質繊維板)などのファイバーボード板(繊維板)、及びこれらの繊維板に液状樹脂を含浸して強度を向上させた樹脂含浸繊維板などによる木質系板状体、そして、木粉、竹粉、紙粉等の植物繊維を主体として熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂をマトリックス樹脂として成型した合成木材板などの植物系繊維による板状体、さらに、エポキシ樹脂板、フェノール樹脂板、メラミン樹脂板、不飽和ポリエステル樹脂板、ポリウレタン樹脂板等の熱硬化性樹脂板及びこれらに補強繊維を混入した樹脂板、さらに紙又は布を基材としたこれらの樹脂板など、そして、上記掲げた板材を適宜組み合わせて複数積層した板状体などが適用できる。
【0033】
なお、とりわけ環境面を考慮すれば、補強部材24は、例えば、ハードボード板、MDF板、インシュレーションボード板等のファイバーボード板を利用することが好ましい。これらのファイバーボード板は、例えば森林育成のために伐採する間伐木材、木材加工工場における端材や加工屑、建築解体木材などを原料として再生された環境負荷の少ない木質系の板材である。また、このような木質系板状体はルーター加工における発熱を抑え刃物の切削性に優れ、また、紙材等の貼着面を有する化粧部材との接着性も優れるため好ましく適用できる。
【0034】
次に、このような補強部材24を有する基板部材1Bの製造方法について、主に
図6及び
図7を用いて説明する。
図6は
図5の基板部材1Bの製造方法の一部を示す説明図であり、
図6(a−1)はその成形工程における第1工程を示す上面図、
図6(a−2)は
図6(a−1)のB−B断面図、
図6(b−1)はその第2工程を示す上面図、
図6(b−2)は
図6(b−1)のB−B断面図である。なお、理解の便宜のため、
図6(b−1)では補強部材24の一部を除去して内側の合成木材原料20を見せている。また、
図7は
図6に続く第3工程を示す説明図であり、
図7(a)はプレス前の状態を示す断面図、
図7(b)はプレス後の状態を示す断面図である。
【0035】
本実施形態2の基板部材1Bの製造方法については、既に説明した回収工程、及び原料形成工程までは上述した実施形態1の製造方法と同じであり、成形工程が異なっている。
即ち、本実施形態2の成形工程では、
図6(a−1)・(a−2)に示すように、先ずプレス成形型12内の内側底面に面状の補強部材24をセットし(成形工程の第1工程)、その後、
図6(b−1)・(b−2)に示すように、合成木材原料20をプレス成形型12内に充填し、その上にさらに補強部材24をセットする(成形工程の第2工程)。
次いで、
図7(a)に示すように、上側の補強部材24の上に上型16をセットし、その後、既述したように、上下に熱盤を有するプレス装置にセットして加熱しながら、
図7(b)に示すように、矢印Fの方向に加圧してプレス成形する。そして、この加熱・加圧の際、合成木材原料20が溶融して、補強部材24は合成木材22に貼着され、基板部材(
図5の1B)が完成する。
【0036】
〔本発明の実施形態3〕
次に、本発明の実施形態3に係る基板部材を説明する。
図8はこの実施形態3に係る基板部材1Cであり、
図8(a)はその正面図、
図8(b)は
図8(a)のA−A断面図である。
図8の基板部材1Cが
図5の基板部材1Bと異なるのは、空隙部材30が配設されている点である(なお、
図8の合成木材22は、
図5の合成木材22に比べて空隙部材30が配設された分だけ小さいが、その他の材料などの構成は
図5の合成木材22と同様であるため、同じ符号を付している)。
【0037】
すなわち、基板部材1Cは、遊技部品を装着するために後に形成される開口部(
図1の開口部16a〜16e参照)に対応した領域AR内に、空隙部材30が設けられている。
空隙部材30は、基板部材1Cの主体部分となる合成木材22に比べて大きな空洞・空隙を有している。このため、遊技部品装着用の開口部を形成するためのルーター加工に際して、刃物の切削加工負担を軽減してルーター刃を長持ちさせることができ、また、ルーター加工時間を短縮することができる。
また、このような空隙部材30を有する基板部材1Cは、従来のベニヤ合板の基板部材と比較して、重量が大幅に軽減されるため、搬送コストを低減でき、加工時の取扱いをも容易となる。
【0038】
図8の空隙部材30は、比較的大きな開口部(例えば、
図1の画面表示装置の装着用の開口部16a)に対応した領域ARにのみ配置され、また、開口部に対応した領域ARの輪郭周辺には配置されないようになっている。したがって、ルーター加工する際は、この空隙部材30の周辺部分のみを精度よく加工すればよいため、高能率で短時間の切削加工が可能となる。このため、開口部の形成時における刃物に対する切削加工負担も極めて小さくできる。
なお、
図8の空隙部材30の全体的な外形形状(正面視の外形形状)は、複雑な輪郭ではない略円形状とされているが、本発明の空隙部材30の外形形状はこれに限られず、例えば、楕円形状、矩形状、多角形状、及びこれらを組合せた形状など任意に適用できる。
【0039】
具体的には、空隙部材30は、合成木材22を形成する際のプレス加工時に、その押圧方向(
図8(b)の左右方向)に変形可能な構成とされている(この点については後で説明する)。
また、空隙部材30は、基板部材1Cの完成後に化粧部材を精度よく貼着できるようにするため、合成木材22と同じ厚さを有し、その表面が合成木材22の表面と同一面とされている。
【0040】
以上のような種々の特性を満足させる空隙部材30として、本実施形態では、例えば、紙・プラスチック等で
図8に示すようにハニカム状に形成されたハニカムコア34を用いている。ハニカムコア34にはコア形状として6角ハニカム状、円形状、ジグザグ状、波打ち状等で構成されたものがこれに含まれる。なお、本発明の空隙部材30はこのような形態に限られるものではなく、その他に、厚く構成した段ボール紙、段ボール紙を積層したもの、ウレタン、ポリスチレン樹脂等による硬質発泡体、切削性に優れる合成樹脂の発泡体、熱硬化性樹脂の発泡体、メッシュ状の構造体、バルサ材(軽量木材)、などが適用できる。
【0041】
また、
図8の空隙部材30は、ハニカムコア34の両面に、ハニカムコア34の開放された空洞・空隙部Sを覆うように貼着された平板状部材35を有している。平板状部材35は、その正面視がハニカムコア34と略同じ外形形状であり、比較的厚さが薄く、表面が平坦な紙材又はプラスチック材等である。この平板状部材35は、製造時に合成木材原料が空洞・空隙部Sに侵入しないようにするためのカバーであり、図の場合は然程の剛性を有していない。
【0042】
そして、本実施形態では、同一面とされた合成木材22及び空隙部材30の表面に、薄板状の補強部材24が配置されている。補強部材24は平坦な面状であって、
図5で説明したものと同様の構成態様である。これにより、空隙部材30が埋設されていても、化粧部材を美しく貼着することができ、さらに、開口部対応領域AR以外の部分では基板部材1Cの必要な諸物性(強度、釘打ち性、釘保持力)を確実に確保できる。また、空隙部材30が基板部材1Cの厚み方向(即ち、後述する成形工程における圧縮方向)にあまり高い剛性を有さなくてもよく、空隙部材30の材料・形状の選択の幅を広げることができる。
【0043】
なお、本発明の基板部材はこのような構成態様に限られるものではなく、補強部材24がなくても構わない。
補強部材24がない場合、空隙部材30は、ハニカムコア34の各セルを比較的小さなセルサイズで構成し(例えば対辺が12mm以下)、表面がハニカム状に開放されているにも拘わらず平面的には全体として平坦な状態に形成されるのが好ましい。
また、補強部材24がない場合、ハニカムコア34は樹脂含浸されたクラフト紙等の紙材を用い、約47〜67N/cm
2ほどの圧縮強度を有するようにするのが好ましい。これにより、空隙部材30は、例えば表示画面装置を装着するための大きな開口部(
図1の開口部16a参照)に対応した大きな面積を有していても、後の化粧部材の貼着に際する加圧によって容易に凹むこともなく、化粧部材が位置決め精度よく貼着でき、従来と同様に化粧部材の貼着が行える。
【0044】
次に、このような空隙部材30を有する基板部材1Cの製造方法について、
図9及び
図10を用いて説明する。
図9は
図8の基板部材1Cの製造方法の一部を示す説明図であり、
図9(a−1)は成形工程における第1工程を示す上面図、
図9(a−2)は
図9(a−1)のB−B断面図、
図9(b−1)はその第2工程を示す上面図、
図9(b−2)は
図9(b−1)のB−B断面図である。なお、理解の便宜のため、
図9(a−1)では平板状部材35の一部を除去して内側のハニカムコア34を、
図9(b−1)では補強部材24の一部を除去して内側の合成木材原料20を、それぞれ見せている。また、
図10は
図9の第2工程に続く第3工程を示す説明図であり、
図10(a)はプレス前の状態を示す断面図、
図10(b)はプレス後の状態を示す断面図である。
【0045】
本実施形態3の基板部材1Cの製造方法については、既に説明した回収工程、及び原料形成工程までは上述した実施形態1の製造方法と同じであり、成形工程が異なっている。
即ち、本実施形態3の成形工程では、先ず、
図9(a−1)・(a−2)に示すように、合成木材原料をプレス成形型12内に充填する前に、プレス成形型12内の内側底面に面状の補強部材24をセットし、その後、補強部材24の上であって、遊技部品を装着するために後に形成される開口部に対応した領域内(
図8のAR参照)に、上述した空隙部材30を配置する(成形工程の第1工程)。なお、空隙部材30については、ハニカムコア34の両面に予め平板状部材35が接着されている。
【0046】
次いで、
図9(b−1)・(b−2)に示すように、プレス成形型12内に、予め定められた重量の合成木材原料20を、空隙部材30とほぼ同じ高さ付近まで、全面が平均した密度となるよう平らに充填し、その上にさらに補強部材24をセットする(成形工程の第2工程)。この際、空隙部材30の両面には、空洞・空隙部Sを覆うように平板状部材35が貼着されているため、合成木材原料20が空洞・空隙部Sに侵入することが防止され、粉状体原料の充填作業が容易に行える。
【0047】
次いで、
図10(a)に示すように、上側の補強部材24の上に上型16をセットし、その後、既述したように、上下に熱盤を有するプレス装置にセットして加熱しながら、
図10(b)に示すように、矢印Fの方向に加圧してプレス成形する(成形工程の第3工程)。
この際、空隙部材30は、プレス加工時にその押圧方向(矢印F方向)に変形可能であるため、合成木材原料20と同時に圧縮変形が可能となる。
また、空隙部材30は、その両面に平板状部材35を有し、さらに、上下の補強部材24に密着するように挟まれているため、空洞・空隙部Sへ溶融した合成木材原料20が侵入することが阻止され、そして、所要の密度を有する合成木材を形成できる。
その後、プレス成形型12から取出して、合成木材22及び空隙部材30に貼着した補強部材24と、埋設された空隙部材30とを有する基板部材(
図8の1C)を得ることができる。
【0048】
ところで、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
例えば、
図9の成形工程において、補強部材24の空隙部材30側の面に適宜な接着剤を塗布した後に、補強部材24をプレス成形型12内に載置してもよい。また、補強部材24と空隙部材30とが密着するため、平板状部材35を省略してもよく、溶融した合成木材原料20の空洞・空隙部Sへの侵入を防止できる。
また、
図9のように補強部材24を配設する場合は、成形工程において、空隙部材30に替えて、この空隙部材30の外形に相当する枠体もしくは中空体を配置してもよい。これにより、基板部材に埋設された枠体もしくは中空体の内側を空洞にすることができ、遊技部品装着用の開口部を形成する際のルーター加工を容易にし、また、基板部材の軽量化も図れる。
また、
図8の空隙部材30は、比較的大きな開口部に対応した領域ARにのみ配置されているが、比較的小さな開口部(例えば
図1の16d等)に配置してもよい。