【解決手段】チューブ溝に嵌まる中央突条部341を有する受け板34と、受け板をカバー体から離間する方向に付勢する第1付勢部材35と、受け板をヒンジ2側から離間し、且つ設置面に沿う方向に付勢する第2付勢部材37と、ポンプ本体のチューブ取付面の第2端部側に取付けられ、カバー体がチューブ取付面を塞ぐ際に、受け板の第2端部側を第1端部側に押圧するガイド部材12と、を備え、カバー体が、チューブ取付面を正常に塞ぐ際には、受け板は、初期位置である第1のポジションから、ガイド部材によって第2の端部側に移動するとともに、チューブ取付面に押圧されることで、カバーの設置面に近接するように移動することで、中央突条部がチューブ溝に嵌まる第2のポジションへと変位するように構成されている。
【背景技術】
【0002】
従来より、輸液チューブの外周面を複数のフィンガーで順次押圧することで輸液の送液を行う輸液ポンプが提案されている。このような輸液ポンプでは、輸液チューブが正しい位置に装着されたときには、フィンガーで輸液チューブを適正に押圧して送液することができるが、輸液チューブが正しい位置に装着されない場合には、フィンガーが輸液チューブを正しく押圧できないため、送液できないという問題がある。そのため、例えば、特許文献1には、輸液チューブが正しく装着されていない場合には、これを検知する技術が開示されている。
【0003】
特許文献1の輸液ポンプは、複数のフィンガーが装着されるとともに輸液チューブが取り付けられるチューブ取付面を有するポンプ本体と、このポンプ本体のチューブ取付面を覆うカバー体とを備えており、カバー体は、ポンプ本体に対してヒンジにより揺動自在に支持されている。そして、カバー体において、チューブ取付面に対向する装着面には、輸液チューブを押圧する受け板が装着されている。この受け板は、カバー体からポンプ本体のチューブ取付面側にバネによって付勢されており、カバー体が閉じられたときには、バネの弾性力に抗して、輸液チューブを押圧するようになっている。また、受け板の背面側には、ストッパーが取り付けられており、このストッパーは、輸液チューブと直交する左右方向に移動可能にバネによって付勢されている。また、このストッパーは、初期状態では、受け板の端部から露出しており、ポンプ本体のチューブ取付面に設けられた突部材によって押圧可能となっている。
【0004】
以上のように構成された輸液ポンプは、次のように動作する。まず、チューブが正常に取り付けられている場合に、カバー体を閉じると、チューブ取付面から延びる突部材が、受け板の端部から露出するストッパーを押圧し、突部材を受け板の背面側に押し遣る。そして、カバー体は、ポンプ本体のチューブ取付面を覆うように閉じられる。
【0005】
一方、輸液チューブが正常に取り付けられていない場合、例えば、左右方向にずれて配置された場合には、突部材がストッパーを押圧する前に、ずれた輸液チューブが受け板とチューブ取付面との間に挟まれ、輸液チューブにより、受け板が押圧される。これにより、受け板が、その背面にあるストッパーを押圧し、ストッパーが左右方向に移動できないようになる。すなわち、ストッパーは、受け板の端部から露出したまま、受け板とカバー体との間で挟まれ、これによってカバー体が閉じられないようになる。その結果、ユーザは、輸液チューブが正しい位置に配置されていないことを認識することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記のような輸液ポンプでは、輸液チューブの誤装着を検知するため、受け板のほか、ストッパーが必要となり、装置構成が複雑になるという問題がある。また、ストッパーが露出している側の端部で、受け板とチューブ取付面との間に輸液チューブが挟まれた場合には、受け板がストッパーを押圧して、ストッパーが動かないようにすることができるが、受け板において、ストッパーが露出している側とは反対側で輸液チューブが挟まれた場合には、ストッパーを正しく押圧できないため、輸液チューブが挟まれたままカバー体が閉じられてしまう可能性がある。その結果、輸液チューブの誤装着を検知できないおそれがあった。
【0008】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、簡易な構造で、しかも輸液チューブがいずれの位置に誤装着されても、これを確実に検知することが可能な輸液ポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、輸液チューブの外周面を押圧して送液を行う輸液ポンプであって、前記輸液チューブを配置するチューブ溝が形成されたチューブ取付面を有するとともに、当該チューブ取付面において、前記チューブ溝と直交する第1方向に第1端部及び第2端部を有するポンプ本体と、前記ポンプ本体の第1端部に設けられたヒンジと、前記ポンプ本体のチューブ取付面を塞ぐように、前記ヒンジを介して前記ポンプ本体に対して揺動自在に取付けられ、前記チューブ取付面と対向する設置面に、前記チューブ溝と直交する第1方向に前記ヒンジ側の第1端部と、それとは反対の第2端部を有するカバー体と、前記カバー体において、前記設置面に取付けられ、前記チューブ溝に嵌まる中央突条部を有する受け部材と、前記受け部材を前記カバー体から離間する方向に付勢する第1付勢部材と、前記受け部材を、前記設置面に沿って前記第1の方向に付勢する第2付勢部材と、前記ポンプ本体のチューブ取付面の第1または第2端部側に取付けられ、前記カバー体が前記チューブ取付面を塞ぐ際に、前記受け部材を前記第1の方向に押圧するガイド部材と、を備え、前記カバー体が、前記チューブ取付面を正常に塞ぐ際には、前記受け部材は、初期位置である第1のポジションから、前記ガイド部材によって前記第2付勢部材に抗して前記第1の方向へ押圧されるとともに、前記チューブ取付面によって前記第1付勢部材に抗して前記カバー体の設置面に近接するように押圧されることで、前記中央突条部が前記チューブ溝に嵌まる第2のポジションへと変位するように構成されている。
【0010】
この構成によれば、初期位置である第1のポジションから、受け部材がガイド部材に押圧されながら、第1の方向へ移動し、最終的に受け部材の中央突条部がチューブ溝に嵌まる第2のポジションへと変位し、カバー体が閉じられるように構成されている。したがって、輸液チューブがチューブ溝から外れて配置された場合には、受け部材とチューブ取付面との間に輸液チューブが挟まれ、これによって、受け板は、挟まれた輸液チューブとの間の摩擦力によって、第1の方向へ移動できなくなる。その結果、受け板が第2のポジションへ変位できなくなるため、カバー体を閉じることができなくなる。これにより、ユーザは、輸液チューブが正しい位置に配置されていないことを認識することができる。
【0011】
このように、本発明に係る輸液ポンプでは、ストッパーを用いず、受け部材自体が第1の方向に移動できるように構成しているため、部品点数を低減することができる。また、受け部材とチューブ取付面との間に輸液チューブが挟まれたときには、挟まれた輸液チューブとの間の摩擦力によって、受け部材が第1の方向へ移動できなくなる。そのため、輸液チューブがいずれの位置にあっても、受け部材とチューブ取付面との間に輸液チューブが挟まれる限りは、受け部材が移動できなくなるため、誤装着を確実に検知することができる。
【0012】
上記輸液ポンプにおいては、前記カバー体の設置面に、前記カバー体に向けて突出する少なくとも1つの第1突部を形成し、前記受け部材において、前記設置面を向く背面に、前記受け部材が第2のポジションにあるときに前記第1突部が嵌まる第1凹部と、前記受け部材が第1のポジションから第2のポジションへと変位する途中に、前記第1突部が嵌まる第2凹部と、を形成することができる。
【0013】
この構成によれば、受け部材が第1のポジションから第2のポジションに移動する際に、輸液チューブが誤装着されていると、輸液チューブによって受け板が押圧されるため、第1突部は、第1凹部に嵌まる前に第2凹部に嵌まってしまい、受け部材が第1の方向に移動できなくなる。これにより、カバー体を正しく閉じることができなくなり、誤装着を検知することができる。したがって、第1突部及び第2凹部を設けることで、輸液チューブの誤装着時には、受け部材の移動を確実に制限することができる。その結果、輸液チューブの誤装着を確実に検知することができる。
【0014】
ここで、第1突部、第1凹部、及び第2凹部の形成位置は特には限定されないが、例えば、前記第1付勢部材を、前記受け部材において、前記中央突条部と対応する位置に設け、前記第1突部、第1凹部、及び第2凹部を、前記第1付勢部材とヒンジとの間に配置することができる。
【0015】
さらに、前記カバー体の設置面において、前記第1付勢部材と前記第1端部との間に、前記受け部材に向けて突出する少なくとも1つの第2突部を形成し、前記受け板において、前記設置面を向く背面に、前記受け部材が第2のポジションにあるときに前記第2突部が嵌まる第3凹部と、前記受け部材が第1のポジションから第2のポジションへと変位する途中に、前記第2突部が嵌まる第4凹部と、を形成することができる。
【0016】
この構成により、第1付勢部材を挟んで、受け部材が第1端部側又は第2端部側のいずれの位置において輸液チューブによって押圧されても、両側に突部及び凹部が形成されているため、誤装着をさらに確実に検出することができる。
【0017】
上記輸液ポンプにおいては、前記チューブ取付面に、前記チューブ溝に沿って延びる少なくとも1つの側突条部が設け、前記受け板に、前記側突条部が嵌まる溝部を形成することができる。このような側突条部を形成すると、チューブ溝に輸液チューブを装着する際のガイドになるため、輸液チューブを装着しやすくなる。また、誤装着された場足、側突条部上に輸液チューブが配置されるため、受け板との間で、輸液チューブを挟みやすくなり、これにより、誤装着が検出しやすくなる。
【0018】
上記輸液ポンプにおいては、前記受け板の背面には、前記第1方向に延びる長穴が形成され、前記第1付勢部材を、前記長穴に嵌め込み、当該長穴の中で前記第1方向に移動可能に構成することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る輸液ポンプによれば、簡易な構造で、しかも輸液チューブがいずれの位置に誤装着されても、これを確実に検知することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る輸液ポンプの一実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は、輸液ポンプの斜視図である。この輸液ポンプは、直方体状のポンプ本体1と、このポンプ本体1に対してヒンジ2により揺動自在に取付けられたカバー体3と、を備えている。そして、この輸液ポンプでは、ポンプ本体1とカバー体3との間に、輸液チューブ4を挟み、後述する複数のフィンガーによって輸液チューブ4に対して蠕動運動を行わせるようにして、輸液チューブ4内の輸液を所定の流量で送り出すものである。輸液チューブ4の上流には、輸液が収容された輸液バッグ(図示省略)が取り付けられており、この輸液バッグから輸液が輸液チューブ4に送られる。一方、輸液チューブ4の下流には患者の静脈などに刺し込まれる刺針(図示省略)などが取り付けられており、輸液チューブを流れる輸液を、輸液ポンプによって所望の量を患者に供給する。以下、この輸液ポンプについて、詳述する。
【0022】
<1.ポンプ本体>
図2は、この輸液ポンプにおいて、カバー体3を開いた状態を示す斜視図である。
図2に示すように、ポンプ本体1において、カバー体3と対向する面、つまりカバー体3によって閉じられる面が、輸液チューブを取付けるためのチューブ取付面11を構成している。チューブ取付面11には、上下方向の中央よりも上部にポンプ機構5が取付けられており、このポンプ機構5を挟んで、上下方向に輸液チューブ4が嵌め込まれるチューブ溝6が形成されている。ここでは、ポンプ機構5の上側のチューブ溝を上部チューブ溝61、ポンプ機構5の下側のチューブ溝を下部チューブ溝62と称し、さらにポンプ機構5において形成されているチューブ溝を中央チューブ溝63と称することとする。また、上部チューブ溝及び下部チューブ溝には、チューブを挟むためのクランプが設けられている。
【0023】
ポンプ機構5は、中央チューブ溝63を挟んで両側に配置される一対の基板51を備えている。すなわち、両基板51の間の隙間が中央チューブ溝63を構成する。ここでは、ヒンジ2側(第1の端部側)に配置された基板を第1基板51aと称し、ヒンジ2とは反対側(
図2の右側:第2の端部側)に配置された基板を第2基板51bと称することとする。各基板51a,51bは、矩形状に形成されており、中央チューブ溝63側の端部で、この溝に沿って延びる側突条部511a,511bがそれぞれ形成されている。また、上下方向の両端部には規制板512a,512bが形成されており、この規制板512a,512bの間に、後述するカバー体3の受け板34が配置されるようになっている。そして、第2基板51bの右側には、ガイド部材12が設けられている。このガイド部材12は、チューブ取付面11からカバー体3側へ突出し、上下方向に延びるような板状に形成されている。また、このガイド部材12において、第2基板51b側の面には、先端から基板51b側へ向かって下る傾斜面121が形成されている。このガイド部材12は、後述するように、カバー体3の受け板34と係合する部材である。
【0024】
次に、ポンプ機構5において、輸液チューブ4の蠕動運動を行わせるための構造について、
図3も参照しつつ説明する。
図3はポンプ機構の断面図である。基板51a,51bの背面には、中央チューブ溝63に沿って上下方向に並ぶ複数のフィンガー521〜525と、これらフィンガー521〜525を輸液チューブ4に対して進退させる駆動部53と、が配置されている。本実施形態では、合計5個のフィンガーが用いられているが、そのうち、最上部と最下部に配置されているものが、輸液チューブ4の内部空間が閉鎖されるように、輸液チューブ4を押しつぶす閉鎖フィンガーであり、ここでは、最上部のものを第1閉鎖フィンガー521、最下部のものを第2閉鎖フィンガー525と称することとする。そして、2個の閉鎖フィンガー521,525の間には、輸液チューブ4を押しつぶさない程度に押圧し、蠕動運動をさせるための3個の送液フィンガーが配置されている。ここでは、3つの送液フィンガーを、上から第1,第2,及び第3送液フィンガー522〜524と称することとする。これら5個のフィンガー521〜525は、先端部が、両基板51a、51bの間から外部を臨むように配置され、後端部がポンプ本体1の背面側に延びるような棒状に形成されている。
【0025】
まず、閉鎖フィンガー521,525について、
図4を参照しつつ説明する。
図4は閉鎖フィンガーの斜視図(a)、及び断面図(b)である。なお、両閉鎖フィンガーは、同じ構成であるため、ここでは、第1閉鎖フィンガー521について説明する。同図に示すように、閉鎖フィンガー521は、筒状の本体部541と、この本体部541に挿入される可動部材542とを備えている。本体部541において、先端部側には、円筒状の凹部543が形成されており、この凹部543に上述した可動部材542が挿入される。また、本体部541の外周面には、軸方向に延びる一対の長穴544が形成されており、これらは本体部541の軸心Xを挟んで対向配置されている。また、本体部541の後端部には、ローラ545が回転自在に取付けられており、このローラ545が後述する駆動部53のカムに当接するカムフォロワーを構成している。
【0026】
可動部材542は、本体部541の凹部543に挿入される筒状の基部546と、この基部546の先端に取付けられ、輸液チューブ4を押圧する押圧部547とを備えている。基部546の後端にはバネ548が嵌め込まれ、この状態で本体部541の凹部543に挿入されている。したがって、可動部材542は、バネ548によって凹部543から突出する方向に付勢されている。また、基部546の側面には、径方向に貫通孔5461が形成されており、基部546が本体部541の凹部543に挿入されているとき、本体部541の長穴544及び貫通孔5461には、軸部材549が嵌め込まれている。したがって、この軸部材549が抜け留めになり、可動部材542は、本体部541から抜け落ちないようにされ、且つ、長穴544の長さだけ、軸方向に移動可能となっている。
【0027】
押圧部547は、軸心が中央チューブ溝63と平行に延びるような五角形状の中空の筒形に形成されており、先端部には突条5471が形成されている。突条5471は、中央チューブ溝63と直交するように延びており、この突条5471により、輸液チューブ4を押しつぶすようになっている。また、中空部分において、突条5471と対応する部分には突条5471を補強するための補強板5472が設けられ、中空部分を塞ぐように、且つ突条5471と平行に配置されている。
【0028】
次に、送液フィンガーについて説明する。3つの送液フィンガー522〜524は同じ構成であるため、ここでは第1送液フィンガー522について説明する。
図3に示すように、送液フィンガー522は、棒状の本体部551と、この本体部551の先端に設けられた押圧部552とを備えている。本体部551の後端部には、閉鎖フィンガーと同様に、ローラ553が回転自在に取付けられ、カムフォロワーを構成している。押圧部552は、閉鎖フィンガーの押圧部547と同様に、軸心が中央チューブ溝63と平行に延びるような五角形状の中空の筒形に形成されている。但し、突条は設けられておらず、輸液チューブ4を押圧する面が、平坦になるように向きが調整されている。
【0029】
続いて、これらフィンガー521〜525を駆動する駆動部53について説明する。
図3に示すように、駆動部53は、フィンガー521〜525の背面側に配置され、中央チューブ溝63と平行に延びる軸部材531を備えている。この軸部材531は、ポンプ本体1内で回転自在に支持されており、図示を省略するモータによって軸回りに回転するように構成されている。また、軸部材531の外周面には、5個のカム561〜565が固定されており、各カム561〜565が、5つのフィンガー521〜525それぞれのカムフォロワー545,553と当接するように構成されている。これらのカム561〜565は、軸部材531が回転することで、5つのフィンガー521〜525を設定された順番で、中央チューブ溝63側に対して進退させ、輸液チューブに対する押圧を繰り返すように構成されている。これにより、輸液チューブ4が蠕動運動を行うように動作する。
【0030】
なお、軸部材531の回転速度は、図示を省略するコントローラで制御される。また、カム561〜565の形状などは、適宜変更可能である。
【0031】
<2.カバー体>
次に、カバー体3について説明する。
図1に示すように、カバー体3の表面31には、操作パネルが設けられている。操作パネルの詳細に関する図示は省略するが、この操作パネルには、液晶ディスプレイと、各種スイッチが配置されている。スイッチとしては、例えば、電源スイッチ、輸液の流量を調整する流量調整スイッチ、早送りスイッチ、ボーラスイッチなどが配置されている。早送りスイッチとは、気泡除去などを目的に押している間、早送りで送液を行うためのスイッチであり、ボーラススイッチとは、ワンショット注入を目的として、押しっぱなしにすることで設定量を急速投与するスイッチである。また、液晶ディスプレイには、例えば、時刻、設定された流量、輸液された積算量などが表示される。
【0032】
続いて、カバー体3の背面である設置面32の構成について説明する。カバー体3の設置面32には、矩形状の設置用凹部321が形成されており、この設置用凹部321には矩形状の支持板33が配置されている。そして、この支持板33を覆うように、上述した受け板34が配置されている。
【0033】
図5は支持板の斜視図である。
図5に示すように、支持板33の4隅には、支持板33を設置用凹部321に固定するためのねじ穴331が形成されている。また、これらねじ穴331の左右方向(第1の方向)の内側には、それぞれ受け板34を保持するための保持用ネジ部332が取付けられており、これらネジ部332は、雌ネジを有する筒状に形成されている。支持板33の幅方向の中央には、上下方向に並ぶ3つの保持穴333が形成されており、これら保持穴333の中には突部3331がそれぞれ形成されている。これら突部3331には、後述するように第1バネ35が嵌め込まれる。また、右側の一対の保持用ネジ部332の間には、上下方向に延びる突板334が設けられている。さらに、この突板334の右側には、次に説明するスライド部材36が嵌まるガイド溝335が形成されている。なお、この支持板33は、カバー体3と別部材となっているが、カバー体3の設置面32と一体的に形成することもできる。
【0034】
スライド部材36は、直方体状に形成されており、ガイド溝335に沿って左右方向にスライド可能となっている。そして、スライド部材36の突板334側(左側)の端部には、受け板34側へ突出する押圧板361が取付けられており、この押圧板361が受け板34の右端部を押圧するようになっている。一方、スライド部材36の右側(ヒンジ側:第1の端部側)の端部には、第2バネ37が嵌め込まれるバネ穴362が形成されている。このバネ穴362は左右方向に延びており、第2バネ37もこのバネ穴362に沿って左右方向に延びるように配置される。第2バネ37の端部は、設置用凹部321の端縁の内部に固定されており、これによって、スライド部材36は、第2バネ37により左側へ付勢され、これとともに、受け板34も左側へ付勢される。
【0035】
次に、受け板34について、
図2に示すように、受け板34の表面、つまりポンプ本体1と対向する面(以下、これを表面と称する)には、左右方向の中央に中央突条部341が形成されている。この中央突条部341は、上下方向に延び、ポンプ機構5の基板51a,51b間の隙間の中央チューブ溝63に嵌まるようになっている。すなわち、中央突条部341の幅は、中央チューブ溝63の幅とほぼ同じである。また、この中央突条部341の両側には、ポンプ機構5の各基板51a,51bに設けられた側突条部511a,511bが嵌まる一対の溝342a,342bが形成されている。さらに、受け板34の両側には、左右方向に延びる切り欠き部343が2個ずつ形成されており、各切り欠き部343の内壁面にはフランジ3431が形成されている。これら切り欠き部343には、上述した支持板33の保持用ネジ部332が挿通され、ワッシャ43を介してネジ留めされるようになっている。このとき、ワッシャ43は、各切り欠き部343のフランジ3431を覆うように配置されるため、このワッシャ43により受け板34が支持板33から外れないようになっている。また、各保持用ネジ部332は、切り欠き部343の中で、相対的に左右方向(第1の方向)に移動可能となっている。
【0036】
続いて、受け板34において支持板33と対向する面(以下、背面と称する)について、
図6も参照しつつ説明する。
図6は受け板を背面側から見た斜視図である。同図に示すように、受け板34の背面には、支持板33に固定された第1バネ35が嵌まる3個の長穴345が形成されている。各長穴345は左右方向に延びており、各長穴345の中で、第1バネ35が左右方向に移動可能となっている。すなわち、各第1バネ35は、支持板33側では、突部3331に嵌まって固定されているが、受け板34側では固定されずに長穴345にはまっているだけであるため、長穴345の中を左右方向に移動可能である。このとき、第1バネ35が長穴345の中でスムーズに移動できるように、第1バネ35の端部に平坦面を有するスライド部材(図示省略)を取り付けることもできる。そして、スライド部材の平坦面が長穴345の中でスライドするように配置すれば、第1バネ35の端部は、長穴345の中でスムーズに左右方向に移動することができる。
【0037】
また、長穴345よりも右側には上下方向に延びる固定用凹部346が形成されており、この固定用凹部346の右側には上下方向に延びるチェック用凹部347が形成されている。これら2つの凹部346,347は平行に並び、いずれも支持板33の突板334が嵌まる大きさに形成されている。
【0038】
以上のような構成により、受け板34は、第1バネ35によってカバー体3の背面32から離間する方向に押圧される。但し、ワッシャ43が切り欠き部343のフランジ3431に係合するため、これが抜け止めになって受け板34が支持板33から外れるのが防止される。また、受け板34の4つの切り欠き部343には、支持板33に形成された保持用ネジ部332が挿通されているため、受け板34は、保持用ネジ部332によりガイドされながら、左右方向(第1の方向)に移動することができる。
【0039】
また、カバー体3の設置面32において、受け板34よりも上方及び下方には、上部及び下部チューブ溝61,62に装着された輸液チューブ4を押圧するための突部39が設けられている。したがって、受け板34だけでなく、このような突部39によっても、輸液チューブ4は押圧される。
【0040】
<3.輸液ポンプの動作>
次に、上記のように構成されたポンプ装置の使用方法及び動作について説明する。
図7〜
図9はカバー体が正常に閉じられる様子を示す断面図である。以下では、まずカバー体を閉じるまでを説明し、その後、輸液チューブにより輸液を送液する動作について説明する。
【0041】
<3.1 輸液チューブの取付とカバー体の設置>
まず、カバー体3を開き、輸液チューブ4をチューブ溝61〜63に取付ける。このとき、輸液チューブ4の上流側には、輸液バッグが取り付けられており、下流側には刺針が取り付けられている。
【0042】
そして、輸液チューブ4が装着されると、初期位置(第1のポジション)からカバー体3を閉じる。カバー体3を閉じていくと、
図7に示すように、まず、ポンプ本体1のガイド部材12が、受け板34の左側(第2の端部側)の端部に当接する。この状態で、さらにカバー体3を閉じると、ガイド部材12の傾斜面121が受け板34の左側の端部を押圧し、これによって受け板34は、第2バネ37の弾性力に抗してヒンジ2側へ移動していく。そして、受け板34の端部がガイド部材12の傾斜面121を通過するまでカバー体3が閉じられると、受け板34はさらにヒンジ2側へ移動し、
図8に示すように、支持板33の突板334が固定用凹部346と対向する位置に配置される。また、受け板34の中央突条部341は中央チューブ溝63と対向する位置に配置される。この状態で、カバー体3をさらに押し込んで閉じようとすると、受け板34がポンプ本体1の基板51a,51bから押圧される。これにより、受け板34は第1バネ部材に抗して、支持板33へと押し付けられる。こうして、
図9に示すように、受け板34が支持板33と基板51a,51bとの間に密着して挟まれた状態で、カバー体3が完全に閉じられる(第2のポジション)。このとき、受け板34の中央突条部341は中央チューブ溝63に嵌まり、輸液チューブをしっかりと固定する。また、各基板51a,51bの側突条部511a,511bは、受け板34の溝に嵌まる。
【0043】
以上のようなカバー体3を閉じる動作は、カバー体3が正常に閉じられた場合の動作であるが、輸液チューブ4が中央チューブ溝63に適切に嵌まっておらず、その一部でも中央チューブ溝63からはみ出し、例えば、基板51a,51bの側突条部511a,511bの上に配置される場合には、次のように、動作する。
【0044】
図10は、輸液チューブを配置したときに、誤って基板51a,51bの側突条部511a,511bの上に輸液チューブ4が配置された例を示している。この例において、カバー体3を閉じると、
図7と同様に、ガイド部材12が、受け板34の端部に当接し、受け板34の端部はガイド部材12の傾斜面121に押圧されてヒンジ2側へ移動していく。この過程で、基板51a,51bの側突条部511a,511bにはみ出した輸液チューブ4は、受け板34がヒンジ2側に完全に押し込まれる前に、受け板34の表面または中央突条部341に当接する。この状態でカバー体3がさらに閉じられると、
図10に示すように、支持板33の突板334が、固定用凹部346と対向する位置に配置される前に、受け板34が支持板33側へ押圧され、支持板33の突板334は、チェック用凹部347に入り込む。これにより、受け板34のヒンジ2側への移動が制限され、受け板34はこれ以上、左右方向への移動ができなくなる。その結果、カバー体3を閉じることができず、ユーザは、輸液チューブ4が中央チューブ溝63に正常に配置されていないことを認識することができる。
【0045】
なお、上記の説明では、突板334がチェック用凹部347に嵌まることで、受け板34が移動できなくなっているが、輸液チューブ4が受け板34と基板51a,51bとの間に挟まれると、受け板34は輸液チューブ4との間の摩擦力によって左右方向に移動できなくなる。したがって、突板334とチェック用凹部347とを設けると、受け板34を確実に移動できなくすることができるが、それまでに、輸液チューブ4との摩擦によって受け板34は既に移動できなくなっている。
【0046】
<3.2 輸液の送液動作>
次に、操作パネルを操作して輸液の流量を決定する。これにより、軸部材が所定の速度で回転し、各フィンガーが前進及び後退する。各フィンガーの動作は種々の設定ができるが、例えば、以下のようにすることができる。まず、第2閉鎖フィンガー525が前進し輸液チューブ4を押しつぶし、輸液チューブ4を閉鎖する。続いて、第1閉鎖フィンガー521、第1、第2、第3送液フィンガー522〜524が、この順で後退し、輸液チューブ4には第2閉鎖フィンガー525よりも上方に輸液が溜まっていく。これに続いて、第1閉鎖フィンガー、第1、第2、第3送液フィンガー522〜524が、この順で前進することで、輸液チューブ4が蠕動運動を行うように動作し、輸液の下方への流れが促される。そして、第3送液フィンガー524が前進した後、第2閉鎖フィンガー525が後退することで、輸液チューブ4の閉鎖が解除され、下方へ開放する。これにより、蠕動運動で下方への向かう輸液が、第2閉鎖フィンガー525の下方へ流れ出る。以上の動作を繰り返すことで、輸液が設定された流量で送液される。
【0047】
<4. 特徴>
以上のように、本実施形態によれば、従来例のように、ストッパーを用いず、受け板34自体が左右方向に移動できるように構成しているため、部品点数を低減することができる。また、受け板34と基板51a,51bとの間に輸液チューブ4が挟まれたときには、挟まれた輸液チューブ4との間の摩擦力によって、受け板34が左右方向へ移動できなくなる。そのため、輸液チューブ4がいずれの位置にあっても、受け板34と基板51a,51bとの間に輸液チューブ4が挟まれる限りは、受け板34が移動できなくなるため、誤装着を確実に検知することができる。
【0048】
<5. 変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。
【0049】
例えば、上述したように、突板334とチェック用凹部347とを設けると、受け板34を確実に移動できなくすることができるが、これらを設けなくてもよい。すなわち、輸液チューブ4との摩擦によって受け板34は移動できなくなっているため、必ずしも突板334とチェック用凹部347を設ける必要はない。但し、カバー体3を無理に押し込んで閉じようとする場合にも、誤装着をチェックするためには、突板334とチェック用凹部347、さらに固定用凹部346を設けることが好ましい。
【0050】
また、上記実施形態では、突板334、チェック用凹部347、及び固定用凹部346を第1バネの右側に設けたが、
図11及び
図12に示すように、同様の構成、つまり第2突板330、第2チェック用凹部350、及び第2固定用凹部360を第1バネ35の左側に設けることもできる。
図11は輸液がチューブが挟まれた状態を示す断面図であり、
図12はカバー体が正常に閉じた状態を示す断面図である。そして、
図11に示すように、側突条部511bと中央突条部341との間に輸液チューブが挟まると、受け板の左側が支持板に向けて傾き、第2突板330が第2チェック用凹部360に嵌まる。その結果、受け板34が左右方向に動かなくなる。そして、
図12に示すように、カバー体3が正常に閉じると、第2突板330は、第2固定用凹部350に嵌まる。このようにすると、輸液チューブ4により押圧されて、受け板34がどのような角度で傾いたとしても、受け板34の左右方向の移動を確実に制限することができる。
【0051】
上記実施形態では、受け板34が、カバー体3の設置面32で、左右方向に移動可能となっており、
図2の左側から右側に移動することで、カバー体3が閉じられるようになっているが、これとは反対に動くようにすることもできる。すなわち、第2バネ37をカバー体3の左側に取り付け、受け板34を左から右へ付勢し、ポンプ本体1のガイド部材12をヒンジ2側に取付けるなど、受け板34の左右方向の移動に係る部材を上記実施形態とは反対に取り付ける。これによっても、上述した効果を得ることができる。