【解決手段】基板10と、基板10の上面に配置されたLED素子12と、基板10の上面にLED素子12を取り囲むように配置された枠体11と、枠体11の内周面に設けられた保持部19と、保持部19と接合された蛍光体樹脂層13と、を有し、保持部19は、凹部又は凸部20を含み、枠体11と蛍光体樹脂層13とが、保持部19を介して、一体的に形成されている、ことを特徴とするLED発光装置1、及びその製造方法。
前記保持部は、更に、前記基板と略平行となる様に形成された凹部又は凸部と交差するように形成された凹部又は凸部を含む、請求項5に記載のLED発光装置の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された照明装置では、接着剤が光を吸収して照明装置の発光効率及び光出力が低下する、また、接着剤が光を吸収して機械的強度が劣化して波長変換部材が枠体に強固に固定されない、といった問題があった。さらには、特許文献1に記載された照明装置では、接着剤が、波長変換部材の放熱を阻害するという問題もあった。
【0007】
また、特許文献2に記載された照明装置では、波長変換部材は溝状凹部内に遊嵌されており、波長変換部材が反射部材から外れやすい、といった問題があった。また、特許文献2に記載された照明装置では、波長変換部材は溝状凹部と密着しておらず、空隙を有するため、波長変換部材の放熱性は低い。
【0008】
そこで、本発明は、上述した問題点を解消することを可能としたLED発光装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は、蛍光体樹脂層を枠体に強固に接合することを可能としたLED発光装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るLED発光装置は、基板と、基板の上面に配置されたLED素子と、基板の上面にLED素子を取り囲むように配置された枠体と、枠体の内周面に設けられた保持部と、保持部と接合された蛍光体樹脂層と、を有し、保持部は、凹部又は凸部を含み、枠体と蛍光体樹脂層とが、保持部を介して、一体的に形成されている、ことを特徴とする。
【0011】
本発明に係るLED発光装置では、凹部又は凸部は、基板と略平行となる様に形成されていることが好ましい。
【0012】
本発明に係るLED発光装置では、更に、前記基板と略平行となる様に形成された凹部又は凸部と交差するように形成された凹部又は凸部を含んでいることが好ましい。
【0013】
本発明に係るLED発光装置の製造方法は、基板、基板の上面に配置されたLED素子、及び、枠体を有するLED発光装置の製造方法であって、枠体の内周面に保持部を形成し、保持部の内側に未硬化の第1の蛍光体樹脂を滴下し、未硬化の第1の蛍光体樹脂を硬化させて、保持部と接合された蛍光体樹脂層を形成し、蛍光体樹脂層が形成された枠体を基板上にLED素子を取り囲むように配置する、工程を有し、保持部は、凹部又は凸部を含み、枠体と蛍光体樹脂層とが、保持部を介して、一体的に形成されている、ことを特徴とする。
【0014】
本発明に係るLED発光装置の製造方法では、凹部又は凸部は、前記基板と略平行となる様に形成されていることが好ましい。
【0015】
本発明に係るLED発光装置の製造方法では、更に、前記基板と略平行となる様に形成された凹部又は凸部と交差するように形成された凹部又は凸部を含んでいることが好ましい。
【0016】
本発明に係るLED発光装置の製造方法では、未硬化の第1の蛍光体樹脂を滴下後に、更に、未硬化の第1の蛍光体樹脂よりも粘度が高い未硬化の第2の蛍光体樹脂を滴下し、未硬化の第1の蛍光体樹脂及び未硬化の第2の蛍光体樹脂を硬化させて、保持部と接合された蛍光体樹脂層を形成することが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るLED発光装置及びその製造方法では、枠体と蛍光体樹脂層との接合面を多くとることができるため、蛍光体樹脂層を枠体に強固に接合すること、及び、蛍光体樹脂層で発生する熱を、枠体を通して十分に放熱すること、が可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下図面を参照して、本発明に係るLED発光装置及びその製造方法について説明する。但し、本発明の技術的範囲はそれらの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0020】
図1(a)は本発明に係るLED発光装置1の平面図であり、
図1(b)は
図1(a)のAA´断面図である。
【0021】
LED発光装置1は、基板10、枠体11、LED素子12、蛍光体樹脂層13等から構成されている。基板10には、2つの電極14が設けられている。
【0022】
LED素子12は、ダイボンド材15によって基板10の表面に接着され、透光性の樹脂27で封止されている。また、LED素子12は、基板10の上面側に形成された電極14にワイヤーボンディングされている。
【0023】
枠体11は、樹脂やセラミックス等から形成される。枠体11は、略円筒形であり、基板10の上面に、LED素子12を取り囲むように接着剤等により取り付けられている。
【0024】
枠体11の上端内周面には、保持部19が形成されている。保持部19には、凹部として、断面が略矩形の溝部20を含んでいる。なお、
図1(b)では、保持部19は、凹部として、2本の断面が略矩形の溝部20を設けているが、断面が略矩形の溝部の本数は2本に限定されず、1本であっても、3本以上であっても良い。
【0025】
凹部は、基板と略平行でなくとも、例えば、基板と45度傾いた構造を有していてもよい。なお、凹部が基板と略平行になるように形成されている場合、蛍光体樹脂層内に気泡が入りにくくなる。また、凹部が基板と略平行になるように形成されている場合、蛍光体樹脂層と枠体との接合は、枠体の上下両方向からの衝撃に強いものとなる。
【0026】
保持部19には、LED素子12の上部を覆うように、蛍光体を含有した樹脂が硬化して形成された蛍光体樹脂層13が接合されている。枠体11と蛍光体樹脂層13は、保持部19を介して、一体的に形成されている。
【0027】
蛍光体は、LED素子12から発光された青色光の一部を吸収し、波長変換した黄色光を発光するので、青色光と黄色光が混じり合い、LED発光装置1からは白色光が出射される。なお、蛍光体樹脂層13には、LED素子12から発光された光を均一に分散させるための散乱材が含まれていてもよい。
【0028】
本発明に係るLED発光装置1では、枠体11と蛍光体樹脂層13が、保持部19を介して一体的に形成されているため、蛍光体樹脂層13と枠体11とが強固に接合されている。したがって、蛍光体樹脂層13は枠体11から容易に離脱することがなく、また、蛍光体樹脂層13で発生する熱は、枠体11を通して十分に放熱することが可能となる。
【0029】
なお、枠体11の内周面には、光反射層を形成してもよい。光反射層は、例えば、白色インク、アルミニウム等の金属、又は、酸化チタン(TiO
2)や二酸化ケイ素(SiO
2)等からなる誘電体多層膜から形成される。光反射層は、LED素子12から枠体11に向かう光を、LED発光装置1の出射方向に向けて反射するので、発光効率が改善する。
【0030】
図2は、LED発光装置1の製造方法を説明するための図である。
【0031】
まず、樹脂により、略円筒形であって、上端内周面に保持部19を有する、枠体11を用意する。保持部19には、凹部として、断面が略矩形の溝部20を形成する。
【0032】
次に、
図2(a)に示すように、枠体11の上端が下向きとなるように、専用の治具21内に、枠体11を設置する。
【0033】
次に、
図2(b)に示すように、ディスペンサ22によって、未硬化の蛍光体樹脂24を、蛍光体樹脂24の高さが、完全に保持部19を満たすまで、枠体11及び治具21に囲まれた領域に滴下する。枠体11の上端を下向きに設置した状態で、蛍光体樹脂24を滴下することにより、保持部19に、未硬化の蛍光体樹脂24が密着し易くなる。
【0034】
次に、
図2(c)に示す様に、蛍光体樹脂24を硬化させて蛍光体樹脂層13を形成し、治具21から枠体11を取り外す。
図3は、
図2(c)のBの箇所の拡大図である。
図3に示す様に、蛍光体樹脂層13は硬化すると、枠体11に沿って蛍光体樹脂層13から盛り上がるヒケ部分23が生じる。
【0035】
最後に、
図2(d)に示すように、蛍光体樹脂層13を備える枠体11を、LED素子12を備える基板10に、接着剤等で取り付けて、LED発光装置1を完成させる。
【0036】
上述した製造方法によって、枠体11と蛍光体樹脂層13が、保持部19を介して一体的に形成されているため、蛍光体樹脂層13と枠体11とが強固に接合されている。したがって、蛍光体樹脂層13は枠体11から容易に離脱することがなく、また、蛍光体樹脂層13で発生する熱は、枠体11を通して十分に放熱することが可能となる。
【0037】
図4は、保持部19の他の例を説明するための図である。
【0038】
図4(a)に示すように、保持部19´は、凹部として、複数の断面が略V字状の溝部31を含んでいる。なお、
図4(a)では、保持部19´は、2本の断面が略V字状の溝部31を設けているが、溝部31の本数は2本に限定されず、1本であっても、3本以上であっても良い。
【0039】
図4(b)では、保持部19´´は、凹部として、断面が略ロ字状の1本の溝部32を含んでいる。溝部32は、保持部19´´の外周側に設けられた開口部分と連結され、開口部分より幅広の溝を有している。なお、溝部32は、特殊な工具によって保持部19´´部分を掘削するようにして形成しても良いし、2部品等によって形成しても良い。また、
図4(b)では、保持部19´´は、1本の断面が略ロ字状の溝部32を設けているが、溝部32の本数は1本に限定されず、2本以上であっても良い。
【0040】
図4(c)では、保持部19´´´は、凸部として、断面が略L字状の1本の突起33を含んでいる。なお、
図4(c)では、保持部19´´´は、1本の断面が略L字状の突起33を設けているが、突起33の本数は1本に限定されず、2本以上であっても良い。また、突起33の形状も断面が略L字状に限定されることなく、他の形状であっても良い。
【0041】
図5は、保持部19の更に他の例を説明するための図である。
【0042】
図5(a)は枠体11の平面図であり、
図5(b)は
図5(a)のCC´断面図である。
図5に示す例では、保持部19´´´´は、凹部として、
図1(b)と同様に、断面が略矩形状の2本の溝部20を含んでいる。しかしながら、保持部19´´´´は、
図5(a)に示す様に、更に凹部として、溝部20と交差するように形成された溝部34を含んでいる。
図5(a)に示す様に、枠体11を上部から観察すれば、溝部34と突起部35が交互に複数形成されることとなる。なお、突起部35には、
図5(b)に示す様に、断面が略矩形状の2本の溝部20が形成されていることとなる。このような構造とすることで、保持部と蛍光体樹脂層との密着強度、及び、蛍光体樹脂層で発生する熱の放熱性は、さらに高いものとなる。
【0043】
図6は、本発明に係る他のLED発光装置2の断面図である。
【0044】
図6に示すLED発光装置2と、
図1に示すLED発光装置1との差異は、LED発光装置2の蛍光体樹脂層13´が、LED発光装置1の蛍光体樹脂層13と異なっている点のみであり、他の構成は全て同様であるので、その他の説明を省略する。
【0045】
LED発光装置2では、保持部19の凹部である溝部20へ、未硬化の樹脂がより浸透、密着できるように、保持部19との接合部と、他の部分で、異なった2種類の樹脂を用いている。したがって、LED発光装置2の蛍光体樹脂層13´は、2種類の蛍光体樹脂により形成されている。蛍光体樹脂層13´が、2種類の蛍光体樹脂から形成される点については、後述する。
【0046】
なお、本発明に係るLED発光装置2でも、枠体11と蛍光体樹脂層13´が、保持部19を介して一体的に形成されているため、蛍光体樹脂層13´と枠体11とが強固に接合されている。したがって、蛍光体樹脂層13´は枠体11から容易に離脱することがなく、また、蛍光体樹脂層13´で発生する熱は、枠体11を通して十分に放熱することが可能となる。また、LED発光装置2においても、
図4及び
図5に示した、他の保持部を用いることが可能である。
【0047】
図7は、LED発光装置2の製造方法を説明するための図である。
【0048】
まず、樹脂により、略円筒形であって、上端内周面に保持部19を有する、枠体11を用意する。保持部19には、凹部として、断面が略矩形の溝部20を形成する。
【0049】
次に、
図7(a)に示すように、枠体11の上端が下向きとなるように、専用の治具21に、枠体11を設置する。
【0050】
次に、
図7(b)に示すように、第1のディスペンサ28によって、粘度が350mPa・sの未硬化の第1の蛍光体樹脂25を、第1の蛍光体樹脂25の高さが、完全に保持部19を満たすまで、枠体11及び治具21に囲まれた領域に滴下する。
【0051】
次に、
図7(c)に示すように、第1の蛍光体樹脂25を硬化させずに、保持部19の溝部20に十分に第1の蛍光体樹脂25が付着した枠体11を、治具21から取り出す。
【0052】
次に、
図7(d)に示すように、他の治具29に、第1の蛍光体樹脂25が付着した枠体11を再び設置し、第2のディスペンサ30によって、粘度が10000mPa・sの第2の蛍光体樹脂26を、第2の蛍光体樹脂26の高さが、完全に保持部19を満たすまで、枠体11及び治具29に囲まれた領域に滴下する。
【0053】
次に、
図7(e)に示すように、第1の蛍光体樹脂25及び第2の蛍光体樹脂26を併せて硬化させ、蛍光体樹脂層13´を形成し、治具29から枠体11を取り出す。
【0054】
最後に、
図7(f)に示すように、蛍光体樹脂層13´を備える枠体11を、LED素子12を備える基板10に、接着剤等で取り付けて、LED発光装置2を完成させる。
【0055】
LED発光装置2では、最初に、粘度がより低い第1の蛍光体樹脂25を滴下することにより、保持部19の溝部20には、第1の蛍光体樹脂25がよく浸透し、密着する。その後に、粘度が第1の蛍光体樹脂25より高い第2の蛍光体樹脂26を滴下するので、第2の蛍光体樹脂26は容易に第1の蛍光体樹脂25と混じり合う。したがって、保持部19に詳細な凹部又は凸部が形成されていても、保持部19と、第1の蛍光体樹脂25及び第2の蛍光体樹脂26から構成される蛍光体樹脂層13´とが強固に接合されることが可能となった。
【0056】
LED発光装置においてムラのない均一な白色光を得るためには、蛍光体樹脂層内には、所定量の蛍光体を、できる限り均一に分散させて含有させることが望ましい。しかしながら、そのような蛍光体樹脂層を形成する未硬化の蛍光体樹脂の粘度を低く抑えることが困難な場合がある。一方で、保持部19と接合される部分の樹脂には、必ずしも蛍光体の所条件を満足する必要はない。そこで、上記の製造方法では、強固に接合すべき部分には粘度の低い第1の蛍光体樹脂を用いて、保持部の凹部又は凸部に、よく浸透し、密着するようにした。一方、蛍光体樹脂層の大部分に相当する箇所には、所定の粘度の高い第2の蛍光体樹脂を用いて、ムラのない均一な白色光を得られるようにした。
【0057】
なお、第1の蛍光体樹脂25としては、粘度が100mPa・s以上、350mPa・s以下の蛍光体樹脂を用いることが好ましい。また、滴下の際、第1の蛍光体樹脂25が保持部19によく浸透、密着するように、必要に応じて第1の蛍光体樹脂25を加温してもよい。
【0058】
また、第2の蛍光体樹脂26としては、粘度が4000mPa・s以上、70000mPa・s以下の蛍光体樹脂を用いることが好ましい。
【0059】
なお、第1の蛍光体樹脂25及び第2の蛍光体樹脂26は、硬化後に1枚の蛍光体樹脂層13´として成形されることから、第1の蛍光体樹脂25と第2の蛍光体樹脂26には、成分が同一であるバインダ樹脂を用いることが好ましい。
【0060】
蛍光体を均一に分散させるためには、粘度の高い樹脂を用いるべきであるが、一方で、高粘度樹脂は、細かな凹凸部への浸透、密着がよくないという問題がある。そこで、本発明に係るLED発光装置2の製造方法では、第1の蛍光体樹脂25に粘度の低い蛍光体樹脂を用いて、蛍光体樹脂層13´が枠体11から外れ難くなる効果、及び、蛍光体樹脂層13´で発生する熱の枠体11を通じた放熱効果、を改善しつつ、さらに、第2の蛍光体樹脂26に粘度の高い蛍光体樹脂を用いることで、蛍光体樹脂層13´内に分散させる蛍光体の均一性がより高いものとなり、よりムラのない光の形成が可能となる。
【0061】
図8は、本発明に係る更に他のLED発光装置3の断面図である。
【0062】
図8に示すLED発光装置3と、
図1に示すLED発光装置1との差異は、LED発光装置3では、LED素子12が、基板10に所謂フリップチップ実装されている点のみであり、他の構成は全て同様であるので、その他の説明を省略する。
【0063】
なお、本発明に係るLED発光装置3でも、枠体11と蛍光体樹脂層13が、保持部19を介して一体的に形成されているため、蛍光体樹脂層13と枠体11とが強固に接合されている。したがって、蛍光体樹脂層13は枠体11から容易に離脱することがなく、また、蛍光体樹脂層13で発生する熱は、枠体11を通して十分に放熱することが可能となる。
【0064】
LED発光装置3は、
図2に示した製造方法及び
図7に示した製造方法の何れでも製造することが可能である。なお、
図7に示した製造方法によって製造される場合には、LED発光装置3の蛍光体樹脂層13は、2種類の蛍光体樹脂から成形されることとなる。また、LED発光装置3の保持部19においても、
図4及び
図5に示した、他の保持部を用いることが可能である。