【解決手段】差動伝送線路は、接地導体層の上方に同一層上に並んで配置され、それぞれが第1右側ストリップ導体と第1左側ストリップ導体からなる複数の第1ストリップ導体対を埋込み、接地導体層上から複数の第1ストリップ導体対の上方まで形成され、その上表面が平面となる誘電体層を供え、隣り合う2対の第1ストリップ導体対の間に導体は配置されない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、装置の小型化がより求められており、装置に備えられる複数の差動伝送線路のクロストークは、装置の小型化に伴い、より深刻な課題となっている。例えば、光ファイバ伝送用の光伝送装置(光トランシーバモジュール)においては、近年のブロードバンドネットワークの普及と共に高速化、小型、低コスト化に伴い、光伝送装置の規格も、現在のCFPからCFP2、CFP4(各MSA規格)へと進むことが予想される。規格の変更に伴って、ケース体積の縮小化・部品数の削減化が益々進むこととなる。
【0006】
図1は、MSA規格の光伝送装置の外形の一例を示す図である。
図1に示すように、CFP、CFP2、CFP4の順にケース体積が縮小化されている。そして、光伝送装置の小型化に伴いプリント回路基板の幅や面積の縮小も進み,プリント回路基板上の配線と搭載部品の実装密度とが増加している。ここで、まず、発明者らは、CFP4のMSA規格である光伝送装置に含まれるプリント回路基板の配線レイアウトを本発明の関連技術として検討を行った。本発明の関連技術に係るプリント回路基板の配線レイアウトを用いて、差動伝送線路のクロストークに関する問題について、以下に説明する。
【0007】
図2は、本発明の関連技術に係るプリント回路基板20の配線レイアウトを示す図である。
図2に示すプリント回路基板の配線レイアウトは、発明者らが検討したものであり、CFP4のMSA規格である光伝送装置に含まれるプリント回路基板20の配線レイアウトの一例を表している。ここで、CFP4のMSA規格においては、プリント回路基板20の幅は18mm〜19mm程度、プリント回路基板の一端にはコネクタ接続用の端子30が配置され、隣接する端子30の中心間距離である端子間距離P0は0.6mmでGSSGSSG…(G:グラウンド端子、S:信号端子)の並びで配置されると定められている。そして、ビットレートが100Gbit/s級の高速デジタル信号用の差動伝送線路として、受信側の4チャネルの受信側差動伝送線路2、及び送信側の4チャネルの送信側差動伝送線路3がすべて、このようなプリント回路基板20上の一面に配置する必要がある。なお、各々のチャネルを伝送する電気信号のビットレートはIEEE 802.3ba準拠の方式の場合は25.78125Gbit/s、OTN(Optical channel Transport Unit 4)に対応したITU−T G.959.1準拠の方式の場合は27.95249339Gbit/sである。
【0008】
図2に示すように、プリント回路基板20の一端に配置される端子30に接続される受信側差動伝送線路2及び送信側差動伝送線路3は、チャネル間ピッチPaを一定に保持したまま(Pa=1.8mm)延伸し、それぞれ受信用集積回路106及び送信用集積回路107に接続される。そして、各差動伝送線路のチャネル間にはクロストーク低減用の金属配線40が配置されており、金属配線40は、スルーバイアホールを介して、基板内部の接地導体層(図示せず)と接続されている。このように、
図2に示す配線レイアウトでは、プリント回路基板20の一端側の領域(端子30と、受信用集積回路106及び送信用集積回路107と、の間の領域)は、ほぼ配線のみで構成されることになり、その他の搭載部品や内層配線接続用のスルーバイアホールを配置することは極めて困難になる。
【0009】
また、
図2に示すプリント回路基板において金属配線40とスルーバイアホールの配置を省略し、チャネル間ピッチPaを1.8mmより狭くすることで受信側差動伝送線路2及び送信側差動伝送線路3が占拠する領域を小さくすることができるが、チャネル間ピッチPaを狭くすることにより差動伝送線路間のクロストークが増大するという問題がある。
【0010】
よって、発明者らは、本発明の関連技術に係るプリント回路基板20の配線レイアウトについて、以下のようにさらなる検討を行った。
【0011】
図2に示すように、CFP4のMSA規格である光送受信機に含まれるプリント回路基板20においても、受信側差動伝送線路2及び送信側差動伝送線路3のチャネル間に金属配線40を各差動伝送線路と並行に配置することができる。
【0012】
図3は、本関連技術に係るプリント回路基板20に配置される差動伝送線路のチャネル間のクロストーク特性を示す図である。
図3は、発明者らが
図2に示すプリント回路基板20に対して計算を行ったクロストーク特性の計算結果である。ここでは、チャネル長L=14mm、差動伝送線路のチャネル間ピッチPa=1.8mmとしてクロストーク特性を計算している。なお、クロストーク特性は三次元電磁界解析ツールを用いて計算されることとする。
図3に示すように、周波数0Hzから30GHzまでの周波数範囲でクロストーク量が−42dB以下と良好な値を示している。しかしながら、
図2に示すように、端子30の端子間距離(0.6mm)に倣い、チャネル間ピッチPaを1.8mm(P1の3倍)とすることは可能であるが、チャネル間ピッチPaを1.8mmより狭くすることは金属配線40とバイアホールの配置の必要上困難であり、他の部品の搭載領域を確保することが難しい。
【0013】
本発明は上記実情を鑑みて為されたものであり、本発明の目的は、複数の差動伝送線路が配置される光伝送装置において、差動伝送線路間のクロストーク量を低減でき、かつ、差動伝送線路が占拠する領域を狭くでき、高速化と高密度実装が可能な差動伝送線路及び光伝送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(1)上記課題を解決するために、本発明にかかる差動伝送線路は、接地導体層と、前記接地導体層の上方を同一層上に並んで配置され、それぞれが第1右側ストリップ導体と第1左側ストリップ導体からなる複数の第1ストリップ導体対と、前記接地導体層上から前記複数の第1ストリップ導体対を埋め込み、さらに、前記複数の第1ストリップ導体対の上方まで形成され、その上表面が平面となる、誘電体層と、を備える、差動伝送線路であって、隣り合う2対の前記第1ストリップ導体対の間それぞれには、導体が配置されることなく前記誘電体層によって埋めこまれている、ことを特徴とする。
【0015】
(2)上記(1)に記載の差動伝送線路であって、前記複数の第1ストリップ導体対それぞれの長さは14mm以下であり、前記複数の第1ストリップ導体対それぞれの前記第1右側ストリップ導体と前記第1左側ストリップ導体との内縁間の距離は0.25mm以下であり、前記接地導体層から前記複数の第1ストリップ導体対までの距離と、前記隣り合う2対の前記第1ストリップ導体対それぞれの中心間距離とは、前記接地導体層から前記複数の第1ストリップ導体対までの距離をx座標、前記隣り合う2対の前記第1ストリップ導体対の中心間距離をy座標として、(0.1mm、1.0mm)、(0.1mm、0.8mm)、(0.5mm、1.4mm)、(0.5mm、2.1mm)を頂点とする矩形上または当該矩形の範囲の内部にある組み合わせである、ことを特徴とする。
【0016】
(3)上記(1)または(2)に記載の差動伝送線路であって、前記誘電体層は、ガラスエポキシからなる、ことを特徴とする。
【0017】
(4)上記(1)または(2)に記載の差動伝送線路であって、前記誘電体層は、前記接地導体層から前記第1ストリップ導体対の上面までガラスエポキシからなり、前記第1ストリップ導体対の上面から外気との界面まではソルダーレジストからなる、ことを特徴とする。
【0018】
(5)上記(1)から(4)のいずれか1つに記載の差動伝送線路であって、前記複数の第1ストリップ導体対の信号伝送方向は同じである、ことを特徴とする。
【0019】
(6)上記課題を解決するために、本発明に係る光伝送装置は、上記(1)から(5)のいずれか1つに記載の差動伝送線路を備える。
【0020】
(7)上記(6)に記載の光伝送装置であって、前記複数の第1ストリップ導体対の一端側に、前記接地導体層の上方を同一層上に繰り返し並んで配置される、複数の第1信号端子対、及び複数の第1接地端子と、をさらに備え、各前記第1信号端子対は、対応する前記第1ストリップ導体対それぞれに対して電気的に接続され、各前記第1接地端子は、前記接地導体層に電気的に接続され、隣り合う2対の前記第1ストリップ導体対それぞれの中心間距離は、対応して隣り合う2対の前記第1信号端子対の中心間距離より、小さい、ことを特徴とする。
【0021】
(8)上記(7)に記載の光伝送装置であって、前記複数の第1ストリップ導体対と同一層上にあって、前記複数の第1ストリップ導体対の、さらに一方側に並ぶ、複数の第2ストリップ導体対と、前記複数の第1信号対及び前記複数の第1接地端子のさらに前記一方側に並んで、前記端子層上にあって繰り返し並んで配置される、複数の第2信号端子対、及び複数の第2接地端子と、をさらに備え、各第2ストリップ導体対は、第2右側ストリップ導体と第2左側ストリップ導体からなり、隣り合う2対の前記第2ストリップ導体対の間それぞれには、導体が配置されることなく前記誘電体層によって埋めこまれ、各前記第2信号端子対は、対応する前記第2ストリップ導体対それぞれに対して電気的に接続され、各前記第2接地端子は、前記接地導体層に電気的に接続され、隣り合う2対の前記第2ストリップ導体対それぞれの中心間距離は、対応して隣り合う2対の前記第2信号端子対の中心間距離より、小さく、前記複数の第1ストリップ導体対と前記複数の第1ストリップ導体対のいずれか一方は送信用に用いられ、他方は受信用に用いられる、ことを特徴とする。
【0022】
(9)上記(8)に記載の光伝送装置であって、前記複数の第2ストリップ導体対の中心は、前記複数の第2信号端子対の中心よりも前記一方側に配置され、前記複数の第1ストリップ導体対の中心は、前記複数の第1信号端子対の中心よりも前記一方側とは他方側に配置される、ことを特徴とする。
【0023】
(10)上記(8)に記載の光伝送装置であって、前記複数の第1ストリップ導体対と、前記複数の第2ストリップ導体対と、の間であって、前記第1ストリップ導体対及び前記第2ストリップ導体対と同一層上に配置されるとともに、前記接地導体層に電気的に接続される、金属配線を、さらに備える、ことを特徴とする。
【0024】
(11)上記(10)に記載の光伝送装置であって、前記複数の第1ストリップ導体対の中心は、前記複数の第1信号端子対の中心よりも前記一方側に配置されるとともに、前記金属配線の前記他方側に配置され、前記複数の第2ストリップ導体対の中心は、前記複数の第2信号端子対の中心よりも前記他方側に配置されるとともに、前記金属配線の前記一方側に配置される、ことを特徴とする。
【0025】
(12)本発明に係る差動伝送線路の製造方法は、プリント回路基板上に、接地導体層を形成し、前記接地導体層上に、第1のガラスエポキシ樹脂によって、硬化状態の第1誘電体層を形成し、前記第1誘電体層上に並んで配置され、それぞれが右側ストリップ導体と左側ストリップ導体からなる複数のストリップ導体対を形成して、差動伝送線路基本構造を形成する差動伝送線路基本構造形成工程と、半硬化状態のプリプレグ誘電体を作成するプリプレグ誘電体形成工程と、前記プリプレグ誘電体と、金属箔を、前記差動伝送線路基本構造の上下面に貼付し、平面熱盤を用いて加圧状態で加熱して、第2誘電体層を形成する、第2誘電体層形成工程と、前記金属箔を除去する金属箔除去工程と、を備える。
【0026】
(13)本発明に係る差動伝送線路の製造方法は、プリント回路基板上に、接地導体層を形成し、前記接地導体層上に、第1のガラスエポキシ樹脂によって、硬化状態の第1誘電体層を形成し、前記第1誘電体層上に並んで配置され、それぞれが右側ストリップ導体と左側ストリップ導体からなる複数のストリップ導体対を形成して、差動伝送線路基本構造を形成する差動伝送線路基本構造形成工程と、半硬化状態のプリプレグ誘電体を作成するプリプレグ誘電体形成工程と、前記プリプレグ誘電体と、金属箔を、前記差動伝送線路基本構造の上下面に貼付し、平面熱盤を用いて加圧状態で加熱して、第2誘電体層を形成する、第2誘電体層形成工程と、前記金属箔を除去する金属箔除去工程と、前記第2誘電体層を研磨することにより、前記複数のストリップ導体対の上面と同一平面上に上面を有する第3誘電体層を形成する、第3誘電体層形成工程と、前記第3誘電体層及び前記複数のストリップ導体対の上方にソルダーレジストを塗布して、ソルダーレジスト層を形成する、ソルダーレジスト層形成工程と、を備える。
【発明の効果】
【0027】
本発明により、複数の差動伝送線路が配置される光伝送装置において、差動伝送線路間のクロストーク量を低減でき、かつ、差動伝送線路が占拠する領域を狭くでき、高速化と高密度実装が可能な差動伝送線路及び光伝送装置が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0029】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について図面に基づき詳細に説明する。なお、図面において、同一または同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0030】
図4は、本実施形態に係る光伝送装置1の概略図である。
図4に示すように、本実施形態に係る光伝送装置1は、コネクタ10及びプリント回路基板20を含んで構成されている。
【0031】
コネクタ10は、例えば、プラグコネクタ、セカンドコネクタ等であって、光伝送装置1とネットワーク装置(図示せず)とを物理的及び電気的に接続する。
【0032】
プリント回路基板20は、多層構造のプリント配線基板であって、例えばビルドアップ工法による10層のプリント配線基板とする。プリント回路基板20は、端子列101、DCカット容量111、受信用集積回路106、送信用集積回路107を含んで構成されている。
【0033】
端子列101は、コネクタ接続用端子であり、コネクタ10と接続される。本実施形態では、端子列101は後述する受信側端子列91及び送信側端子列92を含む。受信側端子列91はプリント回路基板20の中心から一方側に配置され、送信側端子列92は他方側に配置される。そして、受信側端子列91及び送信側端子列92と、受信用集積回路106及び送信用集積回路107と、の間に、DCカット容量111とともに差動伝送線路(図示せず)が配置される。なお、端子列101は、受信側端子列91及び送信側端子列92のいずれか一方だけを含んでいてもよい。なお、DCカット容量111は、配置されなくてもよい。
【0034】
受信用集積回路106は、例えば、受信用のCDR(Clock Data Recovery)集積回路であり、差動伝送線路及びコネクタ10を介してネットワーク装置へ高速シリアルデータを出力する。送信用集積回路107は、例えば、送信用のCDR集積回路であり、差動伝送線路及びコネクタ10を介してネットワーク装置からの高速シリアルデータを入力する。
【0035】
図5Aは、本実施形態に係るプリント回路基板20の上面図である。
図5Aに示すように、受信側の4チャネルの受信側差動伝送線路2は、受信側端子列91と受信用集積回路106との間に配置され、送信側の4チャネルの送信側差動伝送線路3は、送信側端子列92と送信用集積回路107との間に配置される。
【0036】
本実施形態の光伝送装置1は、CFP4のMSA規格に従っている。プリント回路基板20は、CFP4のMSA規格に従い寸法が定められている。具体的には、CFP4のMSA規格においては、プリント回路基板20の幅は受信側端子列91及び送信側端子列92の領域において17.85mm、最も広い部分で19mmと定められている。プリント回路基板20の厚さは例えば1mmとする。
図2に示すように、複数のストリップ導体対104(124)の一端側(
図5Aの左側)に配置される受信側端子列91及び送信側端子列92には、それぞれグランド端子93(第1接地端子及び第2接地端子)と1対の信号端子94(第1信号端子対及び第2信号端子対)とが繰り返し並ぶともに等しいピッチで配置され、隣り合う端子間(グランド端子93と隣接する信号端子94の間、及び1対の信号端子94間)の中心間距離である第1端子間距離P1は等ピッチとなる(例えば、P1=0.6mm)。そして、受信側端子列91に隣接する領域において受信側差動伝送線路2のストリップ導体対114の中心間距離であるチャネル間ピッチはP1の3倍となり、P1=0.6mmの場合は1.8mmとなる。送信側端子列92に隣接する領域において送信側差動伝送線路3のチャネル間ピッチも同様に1.8mmである。ここで、送信側端子列92は、受信側端子列91のさらに一方側(
図5Aの下側)に並んでいる。そして、受信用集積回路106に接続される端子列206、及び送信用集積回路107に接続される端子列207は、それぞれグランド端子141と1対の信号端子142とが繰り返し並ぶとともに等しいピッチで配置され、隣り合う端子間(グランド端子141と隣接する信号端子142の間、及び1対の信号端子142間)の中心間距離である第2端子間距離P2は0.6mm以下で等ピッチとなる(ここではP2=0.4mmとする)。なお、受信側端子列91及び送信側端子列92それぞれのグランド端子93及び信号端子94は、接地導体層102(図示せず)の上方を同一層上(端子層とする)に配置される。
【0037】
受信側差動伝送線路2は、それぞれ互いに隣接した4つの差動伝送線路からなり、端子列206から受信側端子列91の方向に信号を伝送する。また、送信側差動伝送線路3は、それぞれ互いに隣接した4つの差動伝送線路からなり、送信側端子列92から端子列207の方向に信号を伝送する。各差動伝送線路は、接地導体層102、誘電体層103、及びストリップ導体対104,114,115を含んで構成されている。また、受信側差動伝送線路2に含まれる各ストリップ導体対(第1ストリップ導体対)は、信号の伝送方向に向かって右側に配置される右側ストリップ導体211(第1右側ストリップ導体)、及び信号の伝送方向に向かって左側に配置される左側ストリップ導体212(第1左側ストリップ導体)から構成されている。送信側差動伝送線路3に含まれる各ストリップ導体対(第2ストリップ導体対)においても、信号の伝送方向に向かって右側に配置されるストリップ導体を右側ストリップ導体211(第2右側ストリップ導体)、信号の伝送方向に向かって左側に配置されるストリップ導体を左側ストリップ導体212(第2左側ストリップ導体)とする。ここで、送信側差動伝送線路3に含まれる複数のストリップ導体対は、受信側差動伝送線路2に含まれる複数のストリップ導体対のさらに一方側(
図5Aの下側)に並んでいる。信号の伝達経路となる導体として、受信側端子列91(又は送信側端子列92)の各端子との接続領域では表層のストリップ導体対114を用い、端子列206(又は端子列207)の各端子との接続領域では表層のストリップ導体対115を用い、それ以外の領域では誘電体層103の内部であって、同一層上(ストリップ導体層とする)に配置されたストリップ導体対104を用いている。また、隣り合う2対のストリップ導体対104の間それぞれには、金属配線などの導体が配置されていない。
【0038】
ストリップ導体対114は、信号端子94に電気的に接続され、バイアホール109を介してストリップ導体対104に接続される。バイアホール109は、例えばドリル加工によるスルーバイアホールであり、ストリップ導体対114とストリップ導体対104とを接続する。DCカット容量111は、ストリップ導体対114のストリップ導体それぞれに配置され、例えば0603サイズの表面実装型キャパシタであり、容量値0.1μFとする。なお、DCカット容量111は、これ以外のキャパシタであってもよいし、配置されなくてもよい。そして、ストリップ導体対115は、信号端子142に接続され、バイアホール119を介してストリップ導体対104に接続される。配線108は、グランド端子93に電気的に接続され、バイアホール110を介して接地導体層102と接続される。
【0039】
そして、表層のストリップ導体対114及びストリップ導体対115の上部にはソルダーレジスト層105が配置されるが、ストリップ導体対104の上部には配置されない。ソルダーレジスト層105は、回路パターンを保護するために、ハンダ接続を必要とする端子等の表層銅箔の上に膜状となるよう塗布形成されるものである。ソルダーレジスト層105を形成する材料は熱硬化性エポキシ樹脂インクが用いられ、膜の厚さは30〜50μmとするのが好適である。
【0040】
本発明の主な特徴では、直線領域300における差動伝送線路の構造にある。そこで、ストリップ導体対104のうち直線領域300に配置される部分をストリップ導体対124として以下、説明する。
【0041】
そして、本発明に係る差動伝送線路の主な特徴は、直線領域300において、接地導体層102の上方を同一層上に並んで配置される複数のストリップ導体対124と、接地導体層102の上から複数のストリップ導体対124を埋め込み、さらに、ストリップ導体対124の上方まで形成され、その上表面(外気との界面)が平面となる、誘電体層103と、を備え、隣り合う2対のストリップ導体対124の間それぞれには、金属配線などの導体が配置されることなく誘電体層103によって埋めこまれていることにある。これにより、チャネル間のクロストーク特性を改善するとともに、プリント回路基板20における差動伝送線路が占拠する領域を低減することができる。
【0042】
まず、本実施形態に係る差動伝送線路の構造について説明する。
図5Bは、本実施形態に係る差動伝送線路の断面図であり、
図5AのVB−VB線に示す断面の一部を表している。
図5Bは、10層のプリント回路基板20のうち上層の構造を示している。
図5Bに示すように、差動伝送線路は、接地導体層102と、接地導体層102の上方にあるストリップ導体対124(右側ストリップ導体211及び左側ストリップ導体212)と、接地導体層102上からストリップ導体対124を埋め込み、さらにストリップ導体対124の上方まで形成される誘電体層103と、で構成される。
【0043】
ストリップ導体対124は、同一層上に並んで配置される。そして、複数のストリップ導体対124は、隣り合う2対のストリップ導体対124の間それぞれに導体等が配置されることなく誘電体層103に埋め込まれている。なお、ストリップ導体対124及び接地導体層102を形成する材料としては銅箔が用いられる。
【0044】
誘電体層103は、ガラス布基材とエポキシ樹脂からなるガラスエポキシ樹脂が用いられて形成されており、誘電体層103の比誘電率は例えば3.6である。そして、誘電体層103の上表面と外気(例えば、空気、窒素ガス等)との界面は平面となるよう形成される。
【0045】
なお、誘電体層103は比誘電率3.6のガラスエポキシ樹脂としたが、誘電体層103の比誘電率は、これに限定されるものではない。例えば、誘電体層103を形成する材料は、ガラス布基材とエポキシ樹脂からなる代表的な材料である、FR4またはFR5として、その比誘電率を4.0〜4.8としてもよい。また、高周波による損失を低減するために、誘電体層103を形成する材料として、ガラス布基材とポリテトラフルオロエチレン(PTFE)とからなる材料を用いてもよい。この場合の誘電体層103の比誘電率は2.0〜2.3としてもよい。
【0046】
ここで、
図5Bに示すように、差動伝送線路の各部について、ストリップ導体の右側ストリップ導体211の幅及び左側ストリップ導体212の幅それぞれをストリップ導体幅W、ストリップ導体の間の間隔(右側ストリップ導体211の内縁と、左側ストリップ導体212の内縁との距離)をストリップ導体間隔Gap、接地導体層102の上面からストリップ導体の下面までの距離を距離H、ストリップ導体の厚さをストリップ導体厚さt、ストリップ導体の上面から外気までの距離を距離H2、と定義する。
【0047】
次に、本実施形態に係る直線領域300の構造について説明する。直線領域300を上記のような構造とするために、まず、受信側差動伝送線路2に含まれる複数のストリップ導体対104のうち最も外側に配置されるストリップ導体対104(以下、外側ストリップ導体対とする)は、バイアホール109からバイアホール119まで直線に延伸する。そして、外側ストリップ導体対を基準として、チャネル間ピッチPaが1.1mmとなるよう各ストリップ導体対104が配置される。具体的には、外側ストリップ導体対以外のストリップ導体対104が、バイアホール109から外側ストリップ導体対の方向へ角度θ(例えば、45°)で屈曲し、チャネル間ピッチPa=1.1mmとなると外側ストリップ導体対と並行に延伸する。そして、外側ストリップ導体対以外のストリップ導体対104は、バイアホール119の近辺にてバイアホール119に接続されるよう屈曲して延伸する。これにより、受信側差動伝送線路2がチャネル間ピッチPa=1.1mmを保持して延伸する、直線領域300が形成される。すなわち、直線領域300において、受信側差動伝送線路2に含まれる複数のストリップ導体対124(第1ストリップ導体対)の中心は、受信側端子列91の中心よりも他方側(
図5Aに示す上側)に配置され、送信側差動伝送線路3に含まれる複数のストリップ導体対124(第2ストリップ導体対)の中心は、送信側端子列92の中心よりも一方側(
図5Aに示す下側)に配置される。また、直線領域300において、受信側差動伝送線路2に含まれる、隣り合う2対のストリップ導体対124(第1ストリップ導体対)の中心間距離(チャネル間ピッチPa)は、対応して隣り合う2対の信号端子94(第1信号端子対)の中心間距離(1.8mm)より、小さい。同様に、送信側差動伝送線路3に含まれる、隣り合う2対のストリップ導体対124(第2ストリップ導体対)の中心間距離(チャネル間ピッチPa)は、対応して隣り合う2対の信号端子94(第2信号端子対)の中心間距離(1.8mm)より、小さい。このように、差動伝送線路間のクロストーク量を低減しつつ、プリント回路基板20における差動伝送線路の占拠する領域を狭くすることができ、受信側差動伝送線路2に含まれる複数のストリップ導体対104のうち最も内側に配置されるストリップ導体対104(以下、内側ストリップ導体対とする)のさらに内側の領域に、他の搭載部品や内層配線接続用のスルーバイアホール等を配置することが可能となる。また、送信側差動伝送線路3についても、上述した受信側差動伝送線路2と同様の構造とすることができる。
【0048】
ここで、本実施形態に係る差動伝送線路の特性について説明する。以下では、受信側差動伝送線路2を例として直線領域300における差動伝送線路の特性について説明するが、送信側差動伝送線路3にも適用できる。よって、以下に説明する本実施形態に係る差動伝送線路は、受信側差動伝送線路2と送信側差動伝送線路3とを含んでいる。
【0049】
まず、差動伝送線路の特性として、チャネル長Lのクロストーク特性に対する影響について説明する。
【0050】
図6は、本実施形態に係る差動伝送線路のチャネル長Lに対するクロストーク特性の一例を示す図である。
図6は、チャネル間ピッチPa=1.5mm、ストリップ導体間隔Gap=0.2mm、距離H=0.279mm、ストリップ導体厚さt=35μm、及び距離H2=60μmとして、チャネル長Lを2mm〜40mmの範囲で変化させた場合の、周波数0Hzから30GHzの範囲でのクロストークの最大値を示している。
図6に示すように、周波数0Hzから30GHzまでの周波数範囲において、クロストーク量は、チャネル長の増加に伴い単調増加する。本実施形態においては、直線領域300の長さが7mm以上あれば、光伝送装置1を構成するために必要な部品を配置することが可能である。そこで、クロストーク量は−35dB以下となるのが望ましく、ここで、クロストーク量の許容値を−35dBとする。
図6に示す通り、クロストーク量−35dB以下を実現するためには、チャネル長Lが14mm以下が望ましい。本実施形態においては、クロストーク量の許容値を−35dBとし、チャネル長L=14mmである差動伝送線路の構造について説明する。なお、異なるチャネル長であっても、チャネル長に応じたクロストーク量の許容値を満たすよう、差動伝送線路の構造を設定することは可能である。
【0051】
次に、チャネル間ピッチPaのクロストーク特性に対する影響について説明する。まず、発明者らは、本実施形態に係る差動伝送線路との対比をするために、以下に示す第1及び第2の従来技術に係る差動伝送線路について考察を行った。
【0052】
図7は、第1の従来技術に係る差動伝送線路4の構造を示す断面図である。
図7は、プリント回路基板のうち上層の構造を示している。
図7に示すように、第1の従来技術に係る差動伝送線路4は、誘電体層103の一方側に接地導体層102を配置し、誘電体層103の他方側にストリップ導体対204を配置して構成されている。そして、ストリップ導体対204は誘電体層103に埋め込まれておらず、誘電体層103の上面に外気と接するよう配置されている。ここで、外気は空気であるとすると、空気の比誘電率は1.0、比透磁率は1.0であり、
図5Bに示す本実施形態にかかる誘電体層103とは比誘電率が異なるだけであり、磁界分布においては両者に違いはないものとする。
【0053】
図8は、第1の従来技術に係る差動伝送線路4のクロストーク特性を示す図である。
図8は、第1の従来技術に係る差動伝送線路4を本実施形態に係る直線領域300に配置した場合の、周波数に対するクロストーク特性を示している。ここでは、クロストーク特性は、チャネル長L=14mm、チャネル間ピッチPa=1.1mmとして計算されている。
図8に示すように、第1の従来技術に係る差動伝送線路4においては、周波数0Hzから30GHzまでの周波数範囲においてクロストーク量が最大で−23dBとなり、本実施形態に係る差動伝送線路と比較してクロストーク特性が劣化しており、後述する本実施形態に係る差動伝送線路のクロストーク特性を示す
図15と比較して分かるように、本発明が格別の効果を奏することを示している。このように、
図5Bで示すようにストリップ導体対124の上方まで誘電体層103を形成することでクロストーク特性を改善することができる。
【0054】
図9は、本実施形態に係る差動伝送線路のチャネル間ピッチPaに対するクロストーク特性を示す図であり、第1の従来技術に係る差動伝送線路4の特性とともに示している。なお、
図9に示すクロストーク特性は、チャネル長L=14mm、周波数範囲0〜30GHz、チャネル間ピッチPa=0.7mm〜3.6mm、として計算されている。
図9に示すように、第1の従来技術に係る差動伝送線路4の場合は、チャネル間ピッチPaを小さくするに従いクロストーク量は単調に増加する。一方、本実施形態に係る差動伝送線路の場合は、チャネル間ピッチPaが十分に広い場合(Pa>2.7mm)は、第1の従来技術に係る差動伝送線路4の場合と比較して、クロストーク量はほとんど差異がない。しかし、チャネル間ピッチPaが2.7mmから狭くなると、クロストーク量は徐々に低減し、極大値(Pa=1.5mm)を経て急激に減少する。そして、チャネル間ピッチPa=1.1mmにてクロストーク量は極小値を示した後、急激に増加する。そして、クロストーク量は、第1の従来技術に係る差動伝送線路に近づく。
【0055】
このように、第1の従来技術に係る差動伝送線路4においては、チャネル間ピッチPaを狭くするほどクロストーク量が増加するのに対して、本実施形態に係る差動伝送線路では、チャネル間ピッチPaを徐々に狭くすると、ある範囲でクロストーク量が急激に低減することが分かる。
【0056】
ここで、クロストークにより隣接するチャネルに伝達した信号の位相と正しいチャネルを伝達した信号の位相とを比較すると、第1の従来技術に係る差動伝送線路4においては、チャネル間ピッチPaの値に依らずクロストークによる信号の位相が90度進む。つまり、第1の従来技術に係る差動伝送線路4においては、クロストークの原因としては容量性結合が支配的であるといえる。そして、本実施形態に係る差動伝送線路においては、チャネル間ピッチPaが十分に広い場合(Pa>2.7mm)は、クロストークによる信号の位相が90度進むが、
図9においてクロストークが急激に増加するPa=0.8mm付近では、クロストークによる信号の位相が90度遅れる。つまり、Pa>2.7mmの場合は、クロストークの原因は容量性結合が支配的であり、Pa=0.8mm付近では、クロストークの原因は磁界結合が支配的であるといえる。0.8mm≦Pa≦2.7mmの範囲では、容量性結合の影響と磁界結合の影響と、が同程度の大きさで、かつ、それぞれが逆方向の力を有しているため、相殺効果が生じると考えられる。よって、本実施形態においては、0.8mm≦Pa≦2.7mmの範囲でクロストーク量が低減し、Pa=1.5mmにおける極大値とPa=1.1mmにおける極小値が生じることとなる。
【0057】
次に、第2の従来技術に係る差動伝送線路5のクロストーク特性について説明する。
【0058】
図10は、第2の従来技術に係る差動伝送線路5の構造を示す断面図である。
図10は、プリント回路基板のうち上層の構造を示している。
図10に示すように、第2の従来技術に係る差動伝送線路5は、接地導体層102の上面に誘電体層103を介してストリップ導体対304を配置し、ストリップ導体対304の上面及び誘電体層103の上面にソルダーレジスト層205を形成する。ソルダーレジスト層205は、ストリップ導体対304の上面及び誘電体層103の上面に膜状となるように塗布形成されるので、ストリップ導体対304の上面とチャネル間の誘電体層103の上面との段差で凹凸が形成される。よって、ソルダーレジスト層205と外気との界面は平面とならない。ここでは、例えば、ストリップ導体対304の厚さは60μm、ソルダーレジスト層205の厚さは30μm、チャネル長L=14mm、チャネル間ピッチPa=1.1mm、ソルダーレジスト層205の比誘電率は4.4とする。
【0059】
図11は、第2の従来技術に係る差動伝送線路5のクロストーク特性を示す図である。
図11は、第2の従来技術に係る差動伝送線路5を本実施形態に係るプリント回路基板20に配置した場合の、周波数に対するクロストーク特性を示している。これは、
図8と同様に、クロストーク特性は、チャネル長L=14mm、チャネル間ピッチPa=1.1mmとして計算されている。
図11に示すように、周波数0Hzから30GHzまでの周波数範囲において、クロストーク量が最大で−28dBとなる。このように、ストリップ導体対304の上部に誘電体(ソルダーレジスト層205)を配置した場合でも、誘電体と外気との界面が平面でないとクロストーク量の低減効果を得られないことが分かる。つまり、クロストーク量の低減効果を得るためには、誘電体層103の上面をストリップ導体対の厚さによる段差を感じないような平面とすることが重要であるといえる。
【0060】
ここで、チャネル長L=14mmの場合のクロストークの許容値(−35dB)を満たす、差動伝送線路の各部寸法の条件について説明する。
【0061】
図12は、本実施形態に係る差動伝送線路のチャネル間ピッチPaに対するクロストーク特性を示す図である。
図12は、ストリップ導体間隔Gapが、0.13mm(△)、1.20mm(●)、0.30mm(◇)の場合について、それぞれ示している。差動伝送線路のチャネル間のクロストーク量を低減し、かつ、差動伝送線路の配置領域を狭くする、差動伝送線路の構造を設定するには、まずクロストーク量が極大値を得るときのチャネル間ピッチPa_maxを求め、次にクロストーク量が極小値を得るときのチャネル間ピッチPa_minを求める。そして、チャネル間ピッチPaは、Pa_max≧Pa≧Pa_minの範囲から設定することが好適である。
図12に示すように、ストリップ導体間隔Gapの大小がクロストーク量の大小を支配的に決めており、特にGapの値がクロストーク量の極大値の大きさをほぼ一義的に決めている。
【0062】
図13は、本実施形態に係る差動伝送線路の相関図である。
図13は、種々の構造の差動伝送線路(ストリップ導体間隔Gap、距離H、ストリップ導体厚さt、ストリップ導体幅W、距離H2を任意に変化させた差動伝送線路)においてクロストーク量の極大値を求め、ストリップ導体間隔Gapとクロストーク量の極大値との相関を示したものである。
図13に示すように、ストリップ導体間隔Gapは、0.25mm以下とすることで、クロストーク量を許容値の−35dB以下にすることができる。
【0063】
図14は、本実施形態に係る差動伝送線路の相関図である。
図14は、ストリップ導体間隔Gapを0.25mm以下に限定した差動伝送線路において、距離Hを変化させたときのPa_max(◆)及びPa_min(◇)を求め、距離Hとチャネル間ピッチPaとの相関を示したものである。言いかえると、
図14はクロストーク量が−35dB以下となるHとPaの組み合わせ(範囲)を示したものと言える。
図14に示すように、チャネル間のクロストーク量を低減し、かつ、差動伝送線路の配置領域が占拠する領域を狭くするためには、距離Hは0.1mm≦H≦0.5mmとし、チャネル間ピッチPaはPa_min≦Pa≦Pa_maxの範囲(
図14に示す斜線部分の範囲)から設定されるのが好適である。例えば、距離Hを0.5mmとした場合は、チャネル間ピッチPaは1.4mm≦Pa≦2.1mmの範囲から設定されるのが好適である。また、例えば、距離Hを0.1mmとした場合は、チャネル間ピッチPaは0.8mm≦Pa≦1.0mmの範囲から設定されるのが好適である。すなわち、距離Hをx座標、チャネル間ピッチPaをy座標として、(H、Pa)が、(0.1mm、1.0mm)、(0.1mm、0.8mm)、(0.5mm、1.4mm)、(0.5mm、2.1mm)を頂点とする矩形上または当該矩形の範囲の内部にあるのが望ましい。さらに、距離Hおよびチャネル間ピッチPaが決まされれば、差動伝送線路の特性インピーダンスが消耗の値となるようにWなどを決めることができる。なお、
図14で示す範囲は、L=14mmだけではなく、L≦14mmにおいて、クロストーク量―35dB以下を実現できることは
図6より明らかである。
【0064】
よって、本発明に係る複数の第1ストリップ導体対それぞれの長さは14mm以下が望ましい。ここで、第1ストリップ導体対の長さとは、該第1ストリップ導体対と隣り合って位置する第1ストリップ導体対との間に導体(金属配線)が配置されることなく誘電層によって埋めこまれている部分の長さである。そして、
図13に示す通り、複数の第1ストリップ導体対のストリップ導体間隔Gapそれぞれは0.25mm以下であるのが望ましい。さらに、
図14に示す通り、距離Hと、隣り合う2対の第1ストリップ導体対それぞれのチャネル間ピッチPaとは、
図14に示す矩形(斜線部分)上または当該矩形の範囲の内部にある組み合わせであるのが望ましい。
【0065】
ここで、上述した、各部寸法の条件を満たす差動伝送線路を本実施形態に係る直線領域300に配置した場合のクロストーク特性を検証する。なお、チャネル長L=14mmとし、領域300における各チャネルの長さは、
図5Aに示すように、プリント回路基板20の外側からA1=9mm、A2=8mm、A3=7mmとする。
【0066】
まず、プリント回路基板20は、上述したCFP4のMSA規格に従った形状とし、距離Hは0.279mm、ストリップ導体厚さtは35μm、距離H2は60μmとする。そして、チャネル間における接地導体層102と外気との間の誘電体層103の厚さは0.374mm(距離H+ストリップ導体厚さt+距離H2)となる。ストリップ導体間隔Gapは、0.20mmとする。ストリップ導体幅Wは、差動伝送線路の特性インピーダンスZdiffが所望の値となるように設定し、ここでは、ストリップ導体幅Wは0.2mmとする。チャネル間ピッチPaは、距離Hに応じた値から設定し、ここではH=0.279に対して、Paは1.1mmと設定されることとする。
【0067】
図15は、本実施形態に係る差動伝送線路のチャネル間のクロストーク特性を示す図である。
図15は、上述したプリント回路基板20における差動伝送線路のチャネル間のクロストーク特性を示している。
図15に示すように、周波数0Hzから30GHzまでの周波数範囲においてクロストーク量が−47dB以下となる。このように、上述した条件を満たす差動伝送線路を用いることで差動伝送線路のチャネル間のクロストークを低減しつつ、差動伝送線路が占拠する領域を狭くすることができる。
【0068】
また、本実施形態に係るプリント回路基板20の受信側差動伝送線路2及び送信側差動伝送線路3は、上述した条件を満たす差動伝送線路を含むものとすると、例えば、
図5Aに示すように、受信側差動伝送線路2と送信側差動伝送線路3との配線間隔Dを7.2mmまで広げることができる。ここで、配線間隔Dは受信側差動伝送線路2と送信側差動伝送線路3との間隔をいう。すなわち、
図5Aに示すように、受信側差動伝送線路2に含まれる複数のストリップ導体のうち、最も送信側差動伝送線路3側に位置するストリップ導体の送信側差動伝送線路3側の縁と、送信側差動伝送線路3に含まれる複数のストリップ導体のうち、最も受信側差動伝送線路2側に位置するストリップ導体の受信側差動伝送線路2側の縁と、の間の距離である。このように、受信側差動伝送線路2と送信側差動伝送線路3との配線間隔が広がることで、送信側チャネルから受信側チャネルへの逆方向クロストーク(Backward Crosstalk)を低減することもできるという効果を奏する。ここで、逆方向クロストークとは、2対の逆方向に伝搬する差動伝送線路の一領域を互いに近接して並行に配置した場合に、近接する領域に発生するクロストークをいう。
【0069】
なお、特許文献2においては、ストリップ導体対からなる複数の差動伝送線路構造が提示されているが、プリント回路基板の一面に配置したコネクタ接続用の端子の配線層からその下の接地配線層、その下の信号層、その下の接地配線層と少なくとも4層を差動伝送線路用に占拠するものであり、実装密度の増加に対応できない。そして、特許文献3〜5においては、ストリップ導体対からなる複数の差動伝送線路構造の一部分にソルダーレジストなどの誘電体を選択的に配置したり、誘電体の厚さを変化させたりすることで順方向クロストーク量の低減を得ることができるとしている。そこで、特許文献3〜5に記載された構造を、
図5Aに示すようなCFP4のMSA規格のプリント回路基板20に適用して、クロストーク特性を検討した結果、クロストーク量の低減効果が得られない、または、効果が充分でないことが明らかになった。このことからも、本発明は、クロストーク量を低減でき、かつ、差動伝送線路が占拠する領域を狭くでき、高速化と高密度実装を可能とする、という顕著な効果を奏することが分かる。
【0070】
さらに、差動伝送線路における伝送損失を低減する上では、誘電体層103としてガラスエポキシ樹脂などの誘電正接の小さな材料を選択するのが一般的である。したがって、誘電体層103にソルダーレジストなどの誘電正接の高い材料を用いると伝送損失が十分に低減できないという問題があった。これに対して、本実施形態の差動伝送線路は、ソルダーレジスト層を配置しないため、差動伝送線路の伝送損失を最小限に抑えることができ、信号品位を良好に確保できるという効果を奏する。
【0071】
ここで、本実施形態に係る差動伝送線路の製造方法について
図16A〜
図16Dを用いて説明する。
図16A〜
図16Dは、本実施形態に係る差動伝送線路の製造方法の過程を模式的に示す図である。本実施形態に係る差動伝送線路の製造方法では、まず、プリント回路基板20上に、接地導体層102が形成され、接地導体層102上に、ガラス布基材とエポキシ樹脂からなる材料(第1のガラスエポキシ樹脂)を熱硬化して硬化状態の第1誘電体層131が形成される。そして、第1誘電体層131の上に並んで配置される、銅箔からなる複数のストリップ導体対104が形成される(
図16A)。
図16Aに示すように、接地導体層102の上面に第1誘電体層131が形成され、第1誘電体層131の上面にストリップ導体対104が形成された構造を差動伝送線路基本構造とする(以上、差動伝送線路基本構造形成工程)。次に、半硬化状態のガラスエポキシ樹脂であるプリプレグ誘電体132が作成される(以上、プリプレグ誘電体形成工程:
図16B)。プリプレグ誘電体132は、ガラス布基材にエポキシ樹脂を含浸し、これを加熱乾燥してエポキシ樹脂を半硬化状態にしたものである。そして、
図16Bに示すように、プリプレグ誘電体132が、差動伝送線路基本構造の最上層及び最下層(図示せず)(すなわち、上下面)の両面に貼り付けられる。そして、最上層のプリプレグ誘電体132の上面と、最下層のプリプレグ誘電体132の下面と、に厚さが均一な銅箔134が貼り付けられる。そして、平面熱盤135を用いて最上層と最下層との両面から加圧状態で加熱し、プリプレグ誘電体132を熱硬化させる(
図16C)。
図16Cにおいて、第2誘電体層133は、プリプレグ誘電体132が熱硬化されて形成されたものである(以上、第2誘電体層形成工程)。その後、最上層の銅箔134とストリップ導体対104との間にレーザービア工程によりバイアホール109(図示せず)を形成し、続いて最外層の銅箔134をパターンニングして、ストリップ導体対114、受信側端子列91、金属配線108などを形成する。そして、
図16Dに示すように、直線領域300においては最上層の銅箔134は取り除かれる(金属箔除去工程)。これにより、第1誘電体層131及び第2誘電体層133からなる誘電体層103の上面と外気との界面を平面にすることができる。
【0072】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態では、第1実施形態の差動伝送線路と異なる構造の差動伝送線路について示す。
【0073】
図17Aは、本実施形態に係るプリント回路基板20の上面図である。
図17Bは、本実施形態に係るプリント回路基板20の断面図であり、
図17AのXVIIIB−XVIIIB線に示す断面の一部を表している。本実施形態は第1実施形態とは、プリント回路基板20の最上層の構成に差異がある点を除けば、同一である。従って、第1実施形態と同等の構成には同符号を付し、その重複する説明は省略するものとする。
【0074】
図17Bに示すように、本実施形態の差動伝送線路は、接地導体層102と、接地導体層102の上方にあるストリップ導体対124(右側ストリップ導体211及び左側ストリップ導体212)と、接地導体層102上からストリップ導体対124を埋め込み、その上面がストリップ導体対124の上面と同じ平面となる誘電体層103と、ストリップ導体対124の上面及び誘電体層103の上方に塗付形成されるソルダーレジスト層125と、で構成される。そして、ソルダーレジスト層125の上面と外気との界面は平面となる。なお、ソルダーレジスト層125は誘電体によって形成されており、誘電層103とソルダーレジスト層125とを併せて、ストリップ導体対124を埋め込む誘電体層とする。
【0075】
本実施形態における差動伝送線路の各部寸法は以下の通りである。ストリップ導体対124と、距離H=0.279mm、ストリップ導体厚さt=53μm、距離H2=50μm(本実施形態において距離H2は、ソルダーレジスト層125の厚さである)、である。つまり、チャネル間における接地導体層102と外気との間に配置される誘電層(誘電体層103とソルダーレジスト層125)の厚さは0.382mm(距離H+ストリップ導体厚さt+距離H2)となる。そして、ストリップ導体間隔Gapは0.20mmであり、ストリップ導体幅Wは差動伝送線路の特性インピーダンスZdiffが所望の値となるよう設定される。ここでは、W=0.2mmとすると、特性インピーダンスZdiffは100Ω近い値となる。チャネル間ピッチPaは、距離Hに応じて定められ、ここではPa=1.1mmとする。
【0076】
図18は、本実施形態に係る差動伝送線路におけるチャネル間のクロストーク特性を示す図である。ここでは、チャネル長L=14mm、クロストーク量の許容値を−35dBとして計算している。
図18に示すように、周波数0Hzから30GHzまでの周波数範囲において、クロストーク量が−42dB以下となっており、差動伝送線路間のクロストーク量を低減できている。
【0077】
このように、本実施形態に係る差動伝送線路は、第1の実施形態に係る差動伝送線路と比較して、配線層数が比較的少ないプリント回路基板構成によって実現してできており、格別な効果を奏している。
【0078】
ここで、本実施形態に係る差動伝送線路の製造方法について
図19A及び
図19Bを用いて説明する。
図19A及び
図19Bは、本実施形態に係る差動伝送線路の製造方法の過程を模式的に示す図である。なお、本実施形態に係る製造方法は、
図16Cに示す第2誘電体層形成工程までは、第1実施形態に係る差動伝送線路の製造方法と同様であるため、ここでは重複する説明を省略する。
【0079】
次に、最上層の銅箔134が表面研磨により除去される(金属箔除去工程)。そして、第2誘電体層133がさらに表面研磨されることにより、ストリップ導体対124の上面と同一平面上に上面を有する第3誘電体層136が形成される(第3誘電体層形成工程:
図19A)。すなわち、第2誘電体層133を表面研磨し、研磨がストリップ導体対124の上部に達し、ストリップ導体対124の上部が研磨されることにより、ストリップ導体対124の上面と第2誘電体層133の上面とが同一平面上に形成されることとなる。かかる状態まで研磨された第2誘電体層133が、第3誘電体層136である。そして、
図19Bに示すように、ソルダーレジストが、誘電体層103及びストリップ導体対104の上方に膜状になるように塗布され、ソルダーレジスト層125が形成される(ソルダーレジスト層形成工程)。なお、
図19Bに示す誘電体層103は、
図19Aに示す第1誘電体層131及び第3誘電体層136からなる。ソルダーレジスト層125の素材としては熱硬化性エポキシ樹脂インクを用いるのが効果的であり、ハンダ接続を必要とする端子部分をエッチングにより取り除き、硬化させる。これにより、同一平面となる、ストリップ導体対124の上面と第2誘電体層133の上面とに、ソルダーレジスト層125を形成することにより、ソルダーレジスト層125の上面と外気との界面を平面にすることができる。
【0080】
本発明に係る差動伝送線路では、複数の第1ストリップ導体対(ストリップ導体対124)を埋め込む誘電層の上表面(外気との界面)を平面としている。ここでいう、平面とは、第1実施形態又は第2実施形態で説明したように、誘電体層の上表面を平坦化する工程を施したものを言う。言い換えれば、
図10に示す第2の従来技術に係る差動伝送線路5のように、平坦化する工程を含まずに、ソルダーレジスタ層205が形成される場合は含まない。なお、第1実施形態及び第2実施形態は、誘電体層の上表面を平坦化する工程の例であり、これらに限定されることがないのは言うまでもなく、平坦化する工程を施して上表面を平面とする誘電体層に広く適用することが出来る。
【0081】
[第3実施形態]
図20は、本発明の第3実施形態に係るプリント回路基板20の上面図である。本実施形態に係るプリント回路基板20は、第1の実施形態に係るプリント回路基板20と比較して、配線レイアウトが異なり、かつ、受信側差動伝送線路2と送信側差動伝送線路3との間に金属配線118が配置されるが、それ以外については、第1の実施形態と同一である。
図20に示すように、受信側差動伝送線路2に含まれるストリップ導体対104のうち最も内側に配置される内側ストリップ導体対は、バイアホール109からバイアホール119まで直線に延伸する。また、送信側差動伝送線路3についても、上述した受信側差動伝送線路2と同様の構造とすることができる。これにより、差動伝送線路間のクロストーク量を低減しつつ、プリント回路基板20の外側に差動伝送線路を配置しない領域を確保することができる。
【0082】
しかしながら、受信側差動伝送線路2及び送信側差動伝送線路3それぞれに含まれる複数のストリップ導体対はともにプリント回路基板20の内側に寄る。それゆえ、受信側差動伝送線路2の内側ストリップ導体対と、送信側差動伝送線路3の内側ストリップ導体対と、の間に、送信側差動伝送線路3から受信側差動伝送線路2へ(又は、その反対)の逆方向クロストークが問題となるが、本実施形態に係るプリント回路基板20では、金属配線118が、受信側差動伝送線路2に含まれる複数のストリップ導体対104と、送信側差動伝送線路3に含まれる複数のストリップ導体対104と、の間であって、これら複数のストリップ導体対104と同一層上に配置されている。金属配線118が、接地導体層102に電気的に接続されることにより、金属配線118は、送信側のストリップ導体対104と、受信側のストリップ導体対104とのガードトレース(Guard Trace)としての役割を持ち、送信側差動伝送線路3から受信側差動伝送線路2への逆方向クロストークを低減することができる。なお、受信側差動伝送線路2に含まれる複数のストリップ導体対104と、送信側差動伝送線路3に含まれる複数のストリップ導体対104と、の間とは、受信側差動伝送線路2に含まれる複数のストリップ導体対104の一方側(
図20の下側)の端と、送信側差動伝送線路3に含まれる複数のストリップ導体対104の他方側(
図20の上側)の端と、の間である。受信側差動伝送線路2の内側ストリップ導体対の右側ストリップ導体211の一方側(
図20の上側)の縁線と、送信側差動伝送線路3の内側ストリップ導体対の右側ストリップ導体211の他方側(
図20の上側)の縁線と、の間であると言ってもよい。
【0083】
また、本実施形態に係るプリント回路基板20の直線領域330において、受信側差動伝送線路2に含まれる複数のストリップ導体対124(第1ストリップ導体対)の中心は、受信側端子列91の中心よりも一方側(
図20に示す下側)に配置されるとともに、金属配線118の他方側(
図20に示す上側)に配置される。同様に、送信側差動伝送線路3に含まれる複数のストリップ導体対124(第2ストリップ導体対)の中心は、送信側端子列92の中心よりも他方側(
図5Aに示す上側)に配置されるとともに、金属配線118の一方側(
図20に示す下側)に配置される。
【0084】
[第4実施形態]
図21は、本発明の第4実施形態に係るプリント回路基板20の上面図である。本実施形態に係るプリント回路基板20は、第1の実施形態に係るプリント回路基板20と異なり、金属配線128が配置されるが、それ以外については、第1の実施形態と同一である。
図21に示すように、金属配線128は、受信側差動伝送線路2の両側、及び送信側差動伝送線路3の両側、それぞれに配置される。すなわち、受信側差動伝送線路2のうち最も外側に配置される外側ストリップ導体対のさらに外側に、外側ストリップ導体対と並行に配置され、最も内側に配置される内側ストリップ導体対のさらに内側に、内側ストリップ導体対と並行に配置される。また、送信側差動伝送線路3についても、上述した受信側差動伝送線路2と同様の構造とすることができる。これにより、金属配線128は、送信側のストリップ導体対104と、受信側のストリップ導体対104とのガードトレース(Guard Trace)としての役割を持ち、送信側差動伝送線路3から受信側差動伝送線路2への逆方向クロストークをさらに低減することができる。
【0085】
[第5実施形態]
第1から第4実施形態では、端子列101はコネクタ10に接続されることとしたが、端子列101はフレキシブルプリント基板(FPC:Flexible Printed Circuits)に接続されてもよい。そこで、第5実施形態では、光伝送装置をQSFP28のMSA規格に従った形状とする。QSFP28は、100Gbit/sの光送受信機のMSA規格の一種であり、CFP4より小型であるが、CFP4と同様のビットレートでデジタル信号が伝送される。
【0086】
図22は、本実施形態に係る光伝送装置の概略図であり、本実施形態に係る光伝送装置1は、QSFP28のMSA規格に従っている。
図22に示すように、第5実施形態に係る光伝送装置1は、プリント回路基板50、ROSA506、TOSA503、第1FPC504、及び第2FPC505を含んで構成されている。
【0087】
プリント回路基板50は、第1端子列501、第2端子列502、受信用集積回路106、及び送信用集積回路107を含んで構成されている。第1端子列501は、ROSA506接続用のフレキシブルプリント基板である第1FPC504と接続され、第2端子列502は、TOSA503接続用のフレキシブルプリント基板である第2FPC505と接続される。
【0088】
図23は、本実施形態に係るプリント回路基板50の上面図である。
図23に示すように、受信側の4チャネルの受信側差動伝送線路2は、第1端子列501と受信用集積回路106との間に接続され、送信側の4チャネルの送信側差動伝送線路3は、第2端子列502と送信用集積回路107との間に接続される。受信側差動伝送線路2は、それぞれ互いに隣接した4つの差動伝送線路からなり、第1端子列501から受信用集積回路106の入力端子列の方向に信号を伝送する。また、送信側差動伝送線路3は、それぞれ互いに隣接した4つの差動伝送線路からなり、送信用集積回路107の出力端子列から第2端子列502の方向に信号を伝送する。
【0089】
本実施形態に係るQSFP28のMSA規格に従った光伝送装置において、プリント回路基板50の幅は16〜17mmと定められている。このQSFP28のMSA規格に従ったプリント回路基板50は、CFP4のMSA規格に従ったプリント回路基板より1割程度小さい。本実施形態では、
図22に示すように、受信側差動伝送線路2における直線領域400にてチャネル間ピッチPaが狭くなり(例えば、Pa=0.5mm)、その隣に送信用集積回路107が配置される。同様に、送信側差動伝送線路3における直線領域410にてチャネル間ピッチPaが狭くなってよい。これにより、受信側差動伝送線路2のチャネル間、送信側差動伝送線路3のチャネル間、及び送信側差動伝送線路3と受信側差動伝送線路2とのチャネル間、におけるクロストーク量を低減することができるとともに、プリント回路基板50における差動伝送線路の占拠する領域を狭くすることができる。
【0090】
このように、フレキシブルプリント基板を介して、TOSA、ROSA等の光モジュールと接続されるプリント回路基板であっても、接地導体層の上面にストリップ導体対を埋め込んだ誘電体層を配置し、誘電体層と外気との界面を平面とした、差動伝送線路を用い、複数の差動伝送線路のチャネル間ピッチPaを小さくすることで、高速化と高密度実装が可能な光伝送装置を提供することが可能である。
【0091】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、プリント回路基板20における直線領域300について、クロストーク特性の検証対象としたが、この領域に限られず、同一のチャネル間ピッチPaを保ちながら配置したストリップ導体対104の45度の屈曲部と、その前後の並行な直線部とを含んだ領域についてクロストーク特性の検証対象としてもよい。このような、屈曲部を含む差動伝送線路に信号を入力した場合、伝送線路間の電気長の違いにより信号の一部が同相モードに変換される。一般的には、コモンモード信号成分は、差動モード信号成分に比べてクロストーク量を大きく劣化させることが多い。しかし、今回、周波数0Hzから30GHzまでの周波数範囲において、ストリップ導体の間の距離Gapが0.25mm以下、屈曲部の角度θが45度以下、の条件下であれば本実施形態のプリント回路基板20の構造であれば、伝送線路が直線の場合と比べてほとんどクロストーク量を劣化させることなく、上記実施形態と同様の改善結果が得られる。
【0092】
また、本発明は、上記実施形態に係る光伝送装置に限定されず、差動伝送線路を備えた光伝送装置、コンピュータ等の情報処理装置に適用することができる。