特開2015-198536(P2015-198536A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-198536(P2015-198536A)
(43)【公開日】2015年11月9日
(54)【発明の名称】交流発電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 19/34 20060101AFI20151013BHJP
【FI】
   H02K19/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-76279(P2014-76279)
(22)【出願日】2014年4月2日
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 隆
(72)【発明者】
【氏名】櫻木 勇人
【テーマコード(参考)】
5H619
【Fターム(参考)】
5H619AA00
5H619BB03
5H619BB15
5H619PP01
5H619PP14
(57)【要約】
【課題】三相出力と単相3線出力とを同時に出力可能な交流発電機の小型化を図ることができる構造を備えた交流発電機を提供する。
【解決手段】周方向に配置された複数のスロット内に三相出力用の電機子巻線と、単相3線出力用の電機子巻線とを挿入した交流発電機において、前記各電機子巻線の短節率を2/3に設定するとともに、前記単相3線出力用の電機子巻線の巻線数を、あらかじめ設定されている規定の巻線数に対して10〜50%少なく設定する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周方向に配置された複数のスロット内に三相出力用の電機子巻線と、単相3線出力用の電機子巻線とを挿入した交流発電機において、前記各電機子巻線の短節率を2/3に設定するとともに、前記単相3線出力用の電機子巻線の巻線数を、あらかじめ設定されている規定の巻線数に対して10〜50%少なく設定したことを特徴とする交流発電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流発電機に関し、詳しくは、三相出力と単相3線出力とを同時に出力可能とした交流発電機に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンで駆動される交流発電機として、三相巻線の内の1相の巻線に中間タップを設けるとともに、前記三相巻線の中性点に、前記中間タップに誘起される電圧に対して逆位相で等しい大きさの電圧を誘起する追加巻線を接続することにより、三相出力と単相3線出力とを同時に出力できるようにした交流発電機が知られている(例えば、特許文献1参照。)。また、三相巻線の中性点に,三相の内の一相の巻線に誘起される電圧に対して逆位相で半分の大きさの電圧を誘起する追加巻線を接続することにより、三相出力と単相3線出力とを同時に出力できるようにした交流発電機が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−204005号公報
【特許文献2】特開昭63−87157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、三相出力と単相3線出力とを同時に出力する場合、双方の出力に必要な巻線が必要になることから、既存の三相出力用巻線に単相3線出力用巻線を追加した分だけ巻線量が多くなってしまう。また、日本国内では、一般に、電機子巻線の短節率を0.8程度に設定し、高調波成分による三相出力波形の歪みをできるだけ抑えるようにしている。例えば、三相4極36スロットの交流発電機の場合は、一般に、短節率を7/9(0.78)に設定している。ここに、同時出力用の単相3線出力用巻線を追加すると、図5に示すように、電機子鉄心の周方向に等間隔で配置された36個のスロット51の内、一部のスロット51aに単相3線出力用巻線52が上下2段に重なって入ることになる。したがって、全てのスロット51の大きさを、単相3線出力用巻線52が2段に重なるスロット51aの大きさに対応した大きさに形成しなければならず、これに伴って電機子鉄心の外径も大きくなることから、交流発電機全体の大型化を招くことになる。
【0005】
さらに、日本国内では、単相3線出力を100−200Vにすることが求められている。例えば、図6に示すように、三相側56U,56V,56Wの巻線数を10T(10ターン)にした場合は、単相3線出力用巻線57vの巻線数を5Tにすることにより、U−W間の200Vに対してU−v間及びW−v間の出力を100Vにすることができる。したがって、図7に示すように、単相3線出力用巻線61が追加されるスロット62では、三相用の10Tの巻線63が上下2段に入っているところに単相3線出力用の5Tの巻線61が上下2段に重なって入ることになるため、このスロット62に入る巻線数は合計で30Tとなり、三相用のみ場合の20Tに比べて1.5倍の巻線を収容しなければならない。このため、スロット62の大きさを少なくとも1.5倍にしなければならず、電機子鉄心の外径も、それなりに大きくなってしまう。
【0006】
そこで本発明は、三相出力と単相3線出力とを同時に出力可能な交流発電機の小型化を図ることができる構造を備えた交流発電機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の交流発電機は、周方向に配置された複数のスロット内に三相出力用の電機子巻線と、単相3線出力用の電機子巻線とを挿入した交流発電機において、前記各電機子巻線の短節率を2/3に設定するとともに、前記単相3線出力用の電機子巻線の巻線数を、あらかじめ設定されている規定の巻線数に対して10〜50%少なく設定したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の交流発電機によれば、電機子巻線の短節率を2/3に設定することにより、一つのスロット内に単相3線出力用の電機子巻線同士が重なって入ることがなくなるので、スロット内に挿入される最大巻線数を従来の短節率0.8程度に比べて少なくすることができる。さらに、単相3線出力の許容電圧を満たす範囲内で巻線数を10〜50%少なくすることにより、スロット内に挿入する単相3線出力用の巻線数を少なくすることができる。したがって、従来のように単相3線出力用巻線を追加する場合に比べてスロットを小さくすることができ、電機子鉄心の小型化、すなわち、発電機の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明を三相4極36スロットの交流発電機に適用した一形態例を示す説明図である。
図2】同じく単相3線出力用巻線の巻線数を少なくした状態の説明図である。
図3】同じく単相3線出力用巻線の巻線数を少なくしたときのスロット内の巻線の挿入状態を示す説明図である。
図4】交流発電機の一例を示す一部断面斜視図である。
図5】従来の三相4極36スロットの交流発電機における単相3線出力用巻線の状態を示す説明図である。
図6】従来の三相出力用巻線と単相3線出力用巻線との関係を示す説明図である。
図7】従来のスロット内の巻線の挿入状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
まず、図4に示すように、交流発電機(同期発電機)は、円筒形のフレーム31の一端に取り付けられたエンドブラケット32に、ベアリング33を介して回転子部34のシャフト35を回転可能に設け、該シャフト35の他端をエンジンのフライホイール(図示せず)に連結するとともに、フレーム31の内周に固定子部36を設けている。回転子部34には、シャフト35の中央部に界磁鉄心37、界磁巻線38及び制動巻線39が、シャフト35の一端部には励磁機電機子鉄心40、励磁機電機子巻線41及びダイオード42が、他端部には冷却ファン43が、それぞれ設けられている。また、固定子部36には、電機子鉄心44の内周部分に電機子巻線45が、励磁機界磁鉄心46の内周部分に励磁機界磁巻線47がそれぞれ設けられている。
【0011】
このような交流発電機における電機子巻線は、図1に示すように、円筒形の電機子鉄心11の内周に、周方向に等間隔で軸線方向に設けられた複数のスロット、三相4極36スロットの場合は36個のスロット12の内の所定のスロット内にそれぞれ挿入されている。なお、図1では、三相出力用巻線を省略して単相3線出力用巻線のみを図示しているが、各スロット12内には、三相出力用巻線があらかじめ挿入されている。
【0012】
本形態例では、三相出力を得るためのU相,V相,W相が90度間隔で4コイルそれぞれ設けられ、毎極毎相のスロット数がそれぞれ3個ずつである三相4極36スロットの電機子鉄心11におけるU相,V相,W相の1極分の9個のスロットに単相3線出力用巻線13を追加する際に、両電機子巻線の短節率を2/3(6/9)に設定している。したがって、V相の一つのスロット120に挿入された巻線130の帰路側は、該スロット120から6個目のスロット126に挿入され(巻線136)、スロット121に挿入された巻線131の帰路側はスロット127に(巻線137)、スロット122に挿入された巻線132の帰路側はスロット128に(巻線137)、それぞれ挿入される状態となり、1極のスロット群におけるスロット120〜128において、単相3線出力用巻線13を挿入しない3個のスロット123〜125を除く6個のスロット120〜122,126〜128に単相3線出力用巻線130〜132,136〜138がそれぞれ追加挿入される。
【0013】
このように、三相4極36スロットの電機子鉄心11における単相3線出力用巻線13の短節率を2/3に設定することにより、従来のように一つのスロットに単相3線出力用巻線13が重なって挿入されることがなくなる。これにより、スロット12を小さくすることが可能となり、電機子鉄心11を小型化できることから、交流発電機全体の小型化を図ることが可能となる。
【0014】
また、図2の電機子コイル結線図に示すように、三相出力(U,V,W)用巻線14U,14V,14Wの巻線数をそれぞれ10T(10ターン)にしたときに、例えばV相の巻線14Vと逆位相の状態で単相3線出力用巻線13vを設ける際に、単相3線出力用巻線13vの巻線数を、あらかじめ設定されている規定の巻線数、例えば、U−W間の電圧が200Vの場合、U−v間及びW−v間に100Vを発生させるためには、三相側巻線数の10Tに対して5Tが規定の巻線数になるが、本形態例の場合は、単相3線出力用巻線13vの巻線数を規定の巻線数に対して20%少ない4Tとしている。このとき、U−v間及びW−v間の電圧は100.7Vになるが、この電圧は、電力会社が供給する商用電源に規定されている101V±6Vの範囲内であり、各種電気製品の一般的な許容電圧範囲が100V±10%程度であることから、100.7Vは、十分に許容できる電圧である。
【0015】
一方、単相3線出力用巻線13vの巻線数を4Tにすることにより、図3に示すように、各スロット12内には、あらかじめ10Tの三相出力用巻線14,14が2層に挿入されているので、4Tの単相3線出力用巻線13vが挿入されるスロット内の合計巻線数は24Tになる。したがって、三相出力専用の交流発電機における挿入巻線数20Tのスロットに比べると、挿入巻線数が24Tになるので、スロットの大きさを、1.2倍(24/20)に拡大する必要がある。しかし、単相3線出力用巻線13vを5T挿入する場合は、挿入巻線数が25Tになるので、1.25倍(25/20)に拡大する必要があるのに比べれば、スロット12を小さくすることができる。
【0016】
さらに、前述の図7に示すように、5Tの単相3線出力用巻線61が2段に重なって挿入される従来の場合は、合計巻線数が30Tになり、スロット62の大きさが1.5倍(30/20)になる。したがって、巻線の短節率を2/3(6/9)に設定して単相3線出力用巻線13vの重なりを無くすとともに、単相3線出力用巻線13vの巻線数を規定巻線数より20%減らした4Tにすることにより、スロットの拡大量を1.5倍から1.2倍に低減することができるので、三相出力と単相3線出力とを同時に出力する交流発電機11の小型化を図ることができる。
【0017】
これにより、本形態例に示す交流発電機は、三相出力専用の交流発電機、あるいは、三相出力と単相3線出力とを切り替えて出力する交流発電機と同程度の大きさにすることが可能となるので、交流発電機の設置スペースに制限がある可搬式エンジン発電機の交流発電機を本形態例に示す交流発電機に換装することにより、僅かな改造で三相出力と単相3線出力とを同時に出力可能な可搬式エンジン発電機を得ることができる。
【0018】
なお、本形態例では、三相4極36スロットの電機子鉄心を備えた交流発電機を例示したが、極数やスロット数は任意である。また、単相3線出力用巻線の巻線数は、規定の巻線数に対して10〜50%少なく設定することができ、10%未満では巻線数を少なくした効果を十分に得られず、50%を超えると単相3線出力の100V系電圧が過大となることがあることから、単相3線出力の電圧許容範囲などの条件に応じて10〜50%の範囲、好ましくは10〜30%の範囲で適宜設定することができる。
【符号の説明】
【0019】
11…電機子鉄心、12…スロット、13,13v…単相3線出力用巻線、14,14U,14V,14W…三相出力用巻線、31…フレーム、32…エンドブラケット、33…ベアリング、34…回転子部、35…シャフト、36…固定子部、37…界磁鉄心、38…界磁巻線、39…制動巻線、40…励磁機電機子鉄心、41…励磁機電機子巻線、42…ダイオード、43…冷却ファン、44…電機子鉄心、45…電機子巻線、46…励磁機界磁鉄心、47…励磁機界磁巻線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7