熱可塑性樹脂原料11を加熱溶融し、その中に発泡剤を混合して溶融樹脂原料中に多数の大小気泡を生成し、かかる気泡含有樹脂原料を筒状フィルムFに成形し、筒状フィルムFの周壁内に気泡を含有させた状態とし、次いで筒状フィルムFを扁平状に巻取るまでの間に筒状フィルムFの周壁内の気泡を気泡破裂手段により破裂させて筒状フィルムFの全周壁に大きさや形状の異なる多数の通気孔Bを不整順に開口形成し、かかる多数の孔付き筒状フィルムDを生育植物Eの全体を被覆可能な所定形状に裁断成形して構成したことを特徴とする生育植物の保護カバー体11である。
気泡破裂手段は複数段に一定間隔で積層した円盤と、その外周縁を下方に向かった傾斜面により鋭角に形成した円盤先端縁と、それに沿った筒状フィルム内周面の間に形成した断面略三角形状の空気溜り空間と、積層した円盤間に空気を送気する空気供給経路とより構成したことを特徴とする請求項1に記載の生育植物の保護カバー体。
筒状フィルムの全周壁に多数の通気孔を開口形成した後には、筒状フィルムを左右二本の弾性ガイド線の外方に沿って案内しながら扁平状に折り畳み、その後所定形状に裁断成形することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の生育植物の保護カバー体。
前記カバー体は筒状から一定幅員の一枚のシート長尺形状に改変して巻取り、解舒しながら畑の畝の隆起部上面を畝の長手方向に沿って被覆可能な形状としたことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の生育植物の保護カバー体。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、大小多数の気泡を含有する加熱溶融された熱可塑性樹脂原料を筒状フィルムに成形して筒状フィルムの周壁内に気泡を含有させた状態とし、次いで筒状フィルムを扁平状に巻取るまでの間で、筒状フィルムが半硬化状態からゲル化した後に筒状フィルムの周壁内の気泡を気泡破裂手段により破裂させて筒状フィルムの全周壁に大きさや形状の異なる多数の通気孔を不整順に開口形成し、かかる多数の孔付き筒状フィルムを生育植物の全体を被覆可能な所定形状に裁断成形して構成したことを特徴とする生育植物の保護カバー体に関するものである。
【0026】
本実施形態に係る生育植物の保護カバー体は、鉢植えの植物や畝植えの植物、露地植えの植物等の生育植物を霜や雨水等から防御するために好適に用いることができる。
【0027】
ここで、本実施形態に係る生育植物の保護カバー体の原料となる熱可塑性樹脂原料は、特に限定されるものではない。一例として、ポリスチレンやポリプロピレンや高密度ポリエチレン等を挙げることができるが、それ以外の熱可塑性樹脂であっても良い。
【0028】
また、加熱溶融させた熱可塑性樹脂中の気泡は、エアレーション等によって混入させたものであっても良いが、好ましくは発泡剤の添加により生成させたものが望ましい。発泡剤の添加によって気泡を生成させることにより、大小種々の大きさの気泡を生成させながらも、大半の気泡の径に比して大きく逸脱するような径の気泡が生成されるおそれが低く、製品の品質安定化が図られる。
【0029】
発泡剤は熱可塑性樹脂の溶融時に与えられた熱によって、より具体的には、加熱され溶融状態となった熱可塑性樹脂中でその熱により発泡を開始するような発泡剤であるのが望ましい。
【0030】
熱可塑性樹脂中に添加する発泡剤の量は、気泡を含む溶融状態の熱可塑性樹脂(以下、気泡含有樹脂ともいう。)中の気泡の体積割合が、おおよそ30〜60%となるような添加量とするのが望ましい。気泡含有樹脂中の気泡の体積割合が60%を上回る発泡剤の添加量とすると、通気孔の形成が過剰となり好ましくない。また、気泡含有樹脂中の気泡の体積割合が30%を下回る発泡剤の添加量とすると、十分な通気孔の形成ができず好ましくない。上述のような範囲の気泡割合となる発泡剤を添加することにより、更に良好な生育植物の保護カバー体とすることができる。
【0031】
そして、本実施形態に係る生育植物の保護カバー体は、このような気泡含有樹脂を、例えば後述の押出成形手段や気泡破裂手段、扁平手段、巻取手段等を経ることで得ることができる。
【0032】
こうして得られた生育植物の保護カバー体には、樹脂製のフィルムに無数の通気孔が形成されており、同保護カバー体内に収容された植物の生育に必要な通気や水分、光等を供給することができる。
【0033】
また特に着目すべき点として、本実施形態に係る生育植物の保護カバー体に形成された通気孔は、前述の巻取手段による張力付与方向(引張方向)に沿った長径を有する略楕円形状となっている。
【0034】
そして、この長径方向が揃った無数の楕円通気孔により、見方を変えると、フィルム自体は方向性を有した樹脂組織となっている。
【0035】
それ故、本実施形態に係る生育植物の保護カバー体を構成するフィルムは、あたかもラスを設けた金属板の如く、所定方向(張力付与方向・通気孔の長径方向)にはあまり伸びず、所定方向と直交する方向(張力付与方向に直交する方向・通気孔の短径方向)には良く伸びるという機械的性質を備えている。
【0036】
このため、本実施形態に係る生育植物の保護カバー体は、傷つきやすい植物を包み込むのに極めて有用であり、また、通気孔の開口面積を自在に調整して通気や水分、日光の透過をコントロールできるという優れた長所を有している。
【0037】
以下、本実施形態に係る生育植物の保護カバー体について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、植木鉢Cに被覆する植木鉢用保護カバー体11の構造を示した斜視図である。また
図2は、畝を被覆するマルチフィルム12の構造を示した斜視図である。
【0038】
本実施形態に係る生育植物の保護カバー体は、鉢植えの植物Eを霜や雨水等から防護する植木鉢用保護カバー体11として使用したり、畝植えの植物Eや露地植えの植物E等を保護するマルチフィルム12として使用するものである。
【0039】
すなわち、植木鉢用保護カバー体11は、
図1に示すように、下方開口部K又は上方開口部K(図示せず)を有し、開口部Kとは反対端部にシール部Sを備えた袋状に形成したものである。
【0040】
また、マルチフィルム12は、
図2に示すように、圃場の畝U上に被覆するシート状に形成したものである。
【0041】
本発明では、植木鉢用保護カバー体11やマルチフィルム12は、
図1や
図2に示すように、その袋本体又はマルチフィルム本体が孔付き筒状フィルムDで形成した点に特徴を有する。
【0042】
図3は、孔付き筒状フィルムDに、縦方向に長い複数の楕円状の通気孔Bが開設される状態を説明する図である。
【0043】
すなわち、孔付き筒状フィルムDを保護カバー体11として植木鉢Cに被覆装着する際、保護カバー体として使用される孔付き筒状フィルムDに開設された複数の楕円状の通気孔Bは、
図3(a)に示すように、楕円の長手方向が保護カバー体11の上下被覆方向と平行に配列されることとなる。
【0044】
従って、通気孔Bの周縁の破泡ひだが長手方向に並んで植木鉢Cの縦方向の被覆がしやすく、被覆後は破泡ひだの抵抗により筒状フィルムDの横ずれが起こりにくい。
【0045】
このような孔付き筒状フィルムDを植木鉢CやプランターPへの保護カバー体11として利用することにより、通常の植木鉢用の保護カバー体とは異なる効果を発揮する。更には、通常のマルチフィルム12とも異なる種々の効果、すなわち、雨水の霧状滴下や風雨による畝からの横ずれの防止等の効果を発揮することができるものである。
【0046】
以下に、本実施形態に係る植木鉢用保護カバー体11やマルチフィルム12を構成する孔付き筒状フィルムDの製造方法を装置とともに
図4〜6に基づき説明する。
【0047】
まず、ポリスチレン、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン等から選択した熱可塑性樹脂原料を加熱溶融し、その中に発泡剤を混合して溶融樹脂原料中に多数の大小気泡を生成し、かかる気泡含有樹脂原料を筒状フィルムに成形し、筒状フィルムFの周壁内に気泡を含有させた状態とし、次いで筒状フィルムを扁平状に巻取るまでの間で、筒状フィルムが半硬化状態からゲル化した後に筒状フィルムFの周壁内の気泡を気泡破裂手段により破裂させて筒状フィルムFの全周壁に大きさや形状の異なる多数の通気孔Bを不整順に開口形成して孔付き筒状フィルムDと、かかる多数の孔付き筒状フィルムDを生育植物Eの全体を被覆可能な所定形状に裁断成形するものである。
【0048】
図4に示すように、かかる孔付き筒状フィルムDを作製する孔付き筒状フィルム成形装置100は、熱可塑性樹脂原料41を加熱溶融してその中に発泡剤を混合して溶融樹脂原料中に多数の大小気泡を生成する加熱溶融手段40と、筒状フィルムFの周壁内に気泡を含有させた状態としてかかる気泡含有樹脂原料を筒状フィルムFに成形する押出成形手段46と、筒状フィルムFを扁平状に巻取るまでの間で、筒状フィルムが半硬化状態からゲル化した後に筒状フィルムFの周壁内の気泡を破裂させて筒状フィルムFの全周壁に大きさや形状の異なる多数の通気孔Bを不整順に開口形成する気泡破裂手段47と、かかる孔付き筒状フィルムDを扁平状にしてロール状に巻取る巻取手段54と、孔付き筒状フィルムDを生育植物Eの全体を被覆可能な所定形状に裁断形成する裁断成形手段(図示せず)とにより構成される。
【0049】
加熱溶融手段40は、溶融槽42と、加熱ヒータ44と、搬送コンベア45とを備える。
【0050】
すなわち、加熱溶融手段40は、
図4に示すように、熱可塑性樹脂原料41を収納可能に溶融槽42を構成し、溶融槽42の上部には溶融樹脂原料を投入する投入口43を構成し、溶融槽42内には収納した熱可塑性樹脂原料41を加熱する加熱ヒータ44を構成し、溶融槽42内にはスクリューコンベアからなる搬送コンベア45を構成している。
【0051】
押出成形手段46は、
図5に示すように、溶融槽42の搬送先端側に連通連設されており、外枠型46−2に一定間隔のスリットを保持して内枠型46−1を収納し、内枠型46−1と外枠型46−2との間隔のスリットは、溶融槽42により溶融された熱可塑性樹脂原料41を円筒形状に上方に押出すための環状スリット63を形成している。
【0052】
また、環状スリット63は、上方に向かってスリット幅員が漸次減少し、終端開口縁は、筒状フィルムFを成形する押出口62を構成しており、フィルムの厚み規制はこの押出口62の幅員の調整による。なお、62は外枠型46−2の内部に連通した樹脂通路を示す。
【0053】
気泡破裂手段47は、前記押出成形手段46で成形された筒状フィルムFの周壁内の気泡を破裂させるものであり、複数段に一定間隔で積層した円盤50と、その外周縁を下方に向かった傾斜面に形成して鋭角とした円盤先端縁58bと、それに当接した筒状フィルムF内周面により形成した断面略三角形状の空気溜り空間58aと、積層した円盤50間の空間に空気を送気する空気供給経路Oとより構成している。しかも、後述するように筒状フィルムFの押出し成形初期は半硬化状樹脂とし、その後ゲル化して気泡を固化し気泡破裂手段47により破泡する。
【0054】
しかも、押出成形手段46における環状スリット63上方に一定間隔で積層した複数段の円盤50は最下層から3〜4段目までは漸次径が拡大し、その上方段は同径或いはやや拡径の積層円盤としている。
【0055】
更には、最下層から複数段目、例えば、3〜4段目の円盤まで押出され拡径の筒状となる熱可塑性樹脂原料41は、未硬化状態の樹脂原料のまま、すなわち、ゲル化しないままで保形される速度で押出成形を行う。未硬化状態とはいっても一定のシート状の形状を保形した状態であり、上方に連続して引張り上げられるだけの粘性を有している。
【0056】
この未硬化の未ゲル化状態で押出成形された筒状フィルムF中には気泡が含有されているが、樹脂原料は半溶融状態で粘稠性を有しているため半硬化状態で気泡周壁が伸長し、含有された気泡も縦方向に伸長する。しかし、この状態ではまだ気泡は破泡していない。
【0057】
そして、環状スリット63から押し出されて0.5〜1.8秒で円盤の3〜4段目より上方に至ると樹脂原料は未硬化状態から徐々にゲル化していき、ゲル化した気泡周壁において気泡が固化し、気泡破裂手段47により完全に破泡し、筒状フィルムF周壁に破泡による多数の孔が形成される。
【0058】
このように、押出成形手段46によって筒状フィルムFが成形されて積層円盤の外周縁に沿って引張り上げられる筒状フィルムFは、下層円盤から3〜4段上方の円盤に至るまでは樹脂原料は未硬化状態で上方に移動し、徐々にゲル化状態となって引張り上げられる。このことにより、次のような状況が理解できる。
【0059】
(1)最下層の円盤から未硬化状態で引張り上げられる距離を長くすれば(積層した円盤の数が多くなれば)その分包含気泡は縦長に引っ張られて徐々にゲル化し破裂した後は、縦長に伸長した大き目の気泡を形成する。
【0060】
換言すれば、未硬化状態の樹脂原料を引張り上げる距離や時間や未硬化状態でガイドされる積層円盤の個数等を調整することにより破裂気泡の縦長孔の大きさを調整することができる。例えば、本実施形態では、未硬化状態の樹脂原料がゲル化(破泡可能な程度に固化)するまでの時間は0.5〜1.8秒としている。
【0061】
(2)筒状フィルムFを引張り上げる際の時間経過とともに未硬化状態の樹脂原料は徐々にゲル化していくため、引上げ速度を調整することによって破裂気泡の縦長孔の大きさを調整することができる。例えば、本実施形態では、筒状フィルムFの引上げ(巻取)速度は10〜25m/minとしている。
【0062】
(3)未硬化状態の樹脂原料を上方に引張ることで形成される気泡の縦長形成(縦長楕円孔)は、ゲル化状態で破裂する際に破裂ひだが縦長の破裂孔の左右縁に形成され破裂ひだが縦方向になびく。その結果、多数筒状フィルムの孔表面は、フィルムの進行方向に対して左右縁のひだが干渉しないため滑動しやすくなるに対しては、進行横断方向に対しては左右縁の破裂ひだが微細突片となり横滑りに干渉して滑りにくくなる。従ってフィルムを生育植物の保護カバーとして使用する場合は植物Eに上方から被覆したり除去したりする取扱いが容易となり、他方、一旦被覆した場合は気泡の破裂ひだが植物表面と干渉して横方向のずれを防止し、風圧等により植物の一方に片寄ってずれることがなく万遍に植物を覆う被覆保護カバー体として機能することができる。更には、左右縁ひだが通気孔Bの周縁に植生状態で存在するため、筒状フィルムFの表面を伝って雨水が直接に通気孔Bに流入せず、細かい霧状雨水として筒状フィルムFから内収容植物に噴霧される。
【0063】
(4)筒状フィルムFは引き上げられる際に円盤の外周縁部に沿って引き上げられるが、最下層から数段の円盤に至るまでは筒状フィルムが未硬化状態であるため、空気圧により拡開気味に膨大し、円盤外周縁との接触が全んど生起せず、その分筒状フィルムの引上げに円盤抵抗がない。しかし、その上方に変位するに従いゲル化していき硬化した筒状フィルム内面と円盤外周縁との滑動がしやすく硬化フィルムの引上げが円滑に行われる。
【0064】
すなわち、
図6(a)に示すように、円盤50は、複数段に一定間隔で積層し、最下部に配置された円盤50の直径が最も小さく、その最下段から所定直径になる3段目までは直径が段階的に大きくなるように構成し4段目からは同直径となって複数段重ねている。
【0065】
また、円盤50の外周縁は、前述した通り
図6(a)に示すように、下方に向かった傾斜面により鋭角に形成した円盤先端縁58bを形成している。
【0066】
また、積層した円盤50を中心部において支持する中空パイプ51は内部に空気を送気する空気供給経路Oを形成しており、コンプレッサーの空気供給手段60からエアー供給管61を介して圧搾空気を送気する。そして、中空パイプ51の外周壁には積層した円盤間に送気するための複数のエアー吹出口57が開設されている。
【0067】
巻取手段54は、前記気泡破裂手段47を含む積層円盤の上方に配設し、2本の弾性ガイド線52a,52aからなる扁平手段52と、一組のピンチローラ53、53と、ガイドローラ55,55と、巻取装置(図示せず)とにより構成している。
【0068】
裁断成形手段(図示せず)は、巻取手段54により巻取される孔付き筒状フィルムDの下手側に配設されており、植物Eのカバー体の大きさにシーリングしてシール部Sを形成するシール機構(図示せず)と、シール部の後縁に裁断可能なようにミシン目(図示せず)を形成するミシン目形成機構(図示せず)とを備える。
【0069】
なお、マルチフィルム12として使用する場合には、シーリングなしで長手状のフィルムとして使用するため前記シール機構及び前記ミシン目形成機構の配置は不要とすることができる。
【0070】
孔付き筒状フィルム成形装置100により保護カバー体11としての孔付き筒状フィルムDを作製する方法及びその装置は前述の通りである。
【0071】
なお、
図4に示すように、孔付き筒状フィルムDは左右二本の弾性ガイド線52a,52aの外方に沿って案内されながら扁平状に折り畳まれる。
【0072】
そして、巻取手段54により、一組のピンチローラ53、53及びガイドローラ55,55を通して巻取装置(図示せず)によりロール状保護カバー体(図示せず)としてロール状に巻き取られる。
【0073】
なお、マルチフィルム12の場合には、孔付き筒状フィルムDの形態で巻き取った後、孔付き筒状フィルムDを解舒しながらの軸線方向に切り開くことにより一定幅員のシート長尺に改変して別の巻取装置で巻取するようにして作製する。
【0074】
ここで、
図4〜6を参照して、筒状フィルムFの周壁内の気泡が気泡破裂手段47により破泡されて、筒状フィルムFの全周壁に大きさや形状の異なる多数の通気孔Bが不整順に形成される態様について説明する。
【0075】
図4に示すように、所定厚みに引き伸ばされた筒状フィルムFは、複数の円盤50の円盤先端縁58bと接触しながら巻取手段54により上方に巻き上げられる。
【0076】
円盤50の外周端には下方に向かった傾斜面を鋭角に形成した円盤先端縁58bが形成されており、また円盤50の円盤先端縁58bには上端鋭角部58cが形成されており、この上端鋭角部58cに筒状フィルムFの内周面が接触する。
【0077】
そして、空気供給経路Oを通して中空パイプ51の外周壁に設けた複数のエアー吹出口57から積層した円盤50間に空気を送気すると、円盤50の円盤先端縁58bと筒状フィルムFの内周面との間に断面略三角形状の空気溜り空間58aが形成される。
【0078】
そして、筒状フィルムFの押出成形初期では、前述の通り、樹脂が未硬化状態であるため粘性を有しており、気泡が空気圧で伸長しても破泡しない。しかし、ゲル化すると樹脂に含有された気泡は固化し破泡して薄膜フィルムに破泡孔を形成する。
【0079】
すなわち、筒状フィルムFの内方に吹き込まれた圧搾空気は、空気溜り空間58aの下側開口部より空気溜り空間58aの上側狭窄部へ向かって圧送され、その圧送付勢力により、ゲル化した筒状フィルムFの内周面のうち、特に円盤50周縁の空気溜り空間58aに位置した筒状フィルムFの内周面は大きく膨出されて破泡を促すことになる。
【0080】
なお、前記円盤先端縁58bは、
図6(a)の形状に限られず、
図6(b)に示すように、下方に向かった傾斜面を湾曲状に構成することもできる。
【0081】
また、エアー吹出口57から筒状フィルムFの内部に吹き込まれる空気を加熱することにより、加熱膨張空気となって空気溜り空間58内でより強く筒状フィルムFの内周面を圧迫し破裂穿孔するように構成することもできる。
【0082】
また、エアー吹出口57の開口径は、圧送供給されるエアにより吹出音が生起される径としている。
【0083】
このような構成とすることにより、各円盤50間に形成された空間内で吹出音を反響させて定常波を生成し、この定常波の音圧によって破泡を促すことができる。
【0084】
このようにして、
図7(a)に示すように、筒状フィルムFに封じ込められた中央部が幅L1を有した縦方向に長楕円形状の気泡Aは、筒状フィルムFの内部からの空気圧による押圧付勢により、
図7(b)に示すように中央部が幅L1から幅L2に横方向に押し広げられる。
【0085】
そして、筒状フィルムFの内周面と、円盤50の外周上端縁の上端鋭角部58cとの接触及び空気溜り空間58aの空気圧による押圧付勢により、気泡Aを覆う表面の薄膜を破裂させ、異なる大きさ及び形状で、筒状フィルムFの縦方向に楕円状の多数の通気孔Bが異なる位置に不規則に穿孔開設されることになる。
【0086】
筒状フィルムFの樹脂内に封じ込められた気泡Aは、
図8(a)に示すように、薄い薄膜F1により表面が覆われており、前述の通り空気溜り空間58aの空気圧による押圧付勢により気泡Aの表面の薄膜F1が破裂して、
図8(b)に示すように、筒状フィルムFの縦方向に長い楕円状の通気孔Bが穿孔開設される。
【0087】
また、
図8(b)に示すように、筒状フィルムFに開設された通気孔Bの内周端面には、破裂した気泡Aの表面を覆う薄膜F1の破泡による破裂片F2、いわゆる破裂ひだが破泡の外周縁に縦方向に並んで残る。
【0088】
このように、気泡破裂手段47により、筒状フィルムFの全周壁に通気孔Bを大きさや形状が異なる状態で多数に穿孔開設することができる。
【0089】
この場合でも、筒状フィルムFに開設された複数の通気孔Bは、未硬化状態の樹脂中で伸長されているために、巻取手段54により上部に巻き上げられる状態と相俟って縦方向の楕円状に形成される。更には、エアー吹出口57から筒状フィルムFの内部に圧搾空気が吹き込まれることによって筒状フィルムFの原料となる熱可塑性樹脂原料41は冷却され、
図8(b)に示すように、複数の通気孔Bは縦方向に長い楕円状でゲル化される。
【0090】
このようにして多数の孔付き筒状フィルムDを得ることができ、この多数の孔付き筒状フィルムDを植木鉢用保護カバー体11の本体として、又は畝U上面を被覆可能なマルチフィルム12の本体として使用する。
【0091】
以下、具体的な植木鉢用保護カバー体11の使用方法について説明する。
【0092】
植木鉢用保護カバー体11に使用する場合には、前記孔付き筒状フィルム成形装置100で形成されたロール状保護カバー体(図示せず)から帯状に解舒しながらミシン目により一枚ずつ裁断することで、所定形状を有する植木鉢用保護カバー体11を得る。
【0093】
そして、
図1に示すように、植木鉢用保護カバー体11は、生育植物Eの全体を被覆可能な大きさを有しており、植木鉢Cに対して上方または下方から被覆可能に構成している。
【0094】
すなわち、下部にシール部Sを有し、上部に開口部Kを有する袋形状を有する。
【0095】
しかも、植木鉢用保護カバー体11は、製作時のシート引張方向に沿った楕円形状の製作時のシートの長手方向に沿った引張りにより通気孔Bの幅員は幅狭となりその分通気孔Bの面積は小となり、他方、製作時のシートの幅員方向に引張ることにより、通気孔Bの幅員は幅広とすることができる。
【0096】
すなわち、保護カバー体11を植木鉢Cに装着する際、保護カバー体11の本体を構成する孔付き筒状フィルムDに開設された複数の通気孔Bは、その長手方向が保護カバー体の垂直方向と平行に配列されているので、
図3(b)に示すように、孔付き筒状フィルムDの幅方向に伸縮性に優れることになる。
【0097】
なお、孔付き筒状フィルムDについては、伸縮自在、又は伸長した後で収縮せずにそのままの形態で保持できるように構成することもできる。
【0098】
この性質を利用することにより、
図1に示すように、植木鉢C等を保護する保護カバー体11としては幅方向に拡開させながら挿入させることができ、しかも、袋状を有する保護カバー体11の開口部Kの口縁を収縮させて閉じることができる。
【0099】
このようにして、植木鉢C及び生育植物E全体を保護カバー体11で被覆することができる。
【0100】
また、植木鉢Cに使用する場合に、下部がシールされ上方開口部Kを有した袋状に形成した筒状フィルムを使用することにより、袋内に収納された植木鉢Cに形態にでき、しかも、袋形態のままで持ち運びが可能である。
【0101】
そして、植木鉢用保護カバー体11を構成する孔付き筒状フィルムDには大小の形状の異なる孔を有しているが、この孔は無数の通気孔Bとして機能する。
【0102】
すなわち、通気孔Bは各形状が異なって保護カバー体11上に形成されており、無数の通気孔Bを通して多種多様に流通させながら取り込むことができ、生育植物Eに万遍なく光合成に必要な空気を与えることができる。
【0103】
また、太陽光の受光量も調節可能であり、孔付き筒状フィルムD上の通気孔Bの大きさにより光合成に必要な受光量の調節も可能としている。
【0104】
さらに、保護カバー体11には色彩を付すことが可能である。例えば花の色に応じた色彩にすることができ、判別性に富む。
【0105】
しかも、保護カバー体11の色彩を変化させることにより、植物Eに及ぼす最適な光合成機能を果たすことができる。
【0106】
また、前記空気量の調節と相俟って太陽光機能調整を果たすことができる。
【0107】
又は、植木鉢用保護カバー体11を黒色にすることにより、夏場の遮光性を増すようにしている。
【0108】
さらに、植木鉢用保護カバー体11の微細な通気孔Bによって霜や多量の雨水の浸入を防ぐことができる。
【0109】
すなわち、植物Eに多量の水が浸入するのを防止でき、多量の水の浸入による根腐れの予防ができ、適度な水分供給を行うことができる。
【0110】
なお、霜や雨水等の状況に応じて孔の大きさが異なるものを使い分けることができる。
【0111】
しかも、微細な通気孔Bによって植物Eに対して霧状に水を吹付ける形態とすることができる。
【0112】
また、植木鉢C上の生育植物Eをナメクジ、アブラムシ、カタツムリ、蟻等の害虫の食害、猪や鳥類等の害獣の食害を防止するために、通常では殺虫剤を使用したりするが、本発明では孔付き筒状フィルムDを本体とする保護カバー体11として使用することにより、殺虫剤が不要になる。
【0113】
すなわち、本発明では孔付き筒状フィルムDを適用した植木鉢用保護カバー体11としており、これが忌避材となり前記害虫等の浸入を防止できる。
【0114】
図9は、支持棒15を配設した植木鉢Cに適用する植木鉢用保護カバー体11の全体構造を示した説明図である。
【0115】
なお、植木鉢C内には支持棒15を立て、この支持棒15の上方で保護カバー体11を被せることにより、保護カバー体11の内周面と植物Eとの間に空間部を形成することができ、また、袋内面が植物Eに接触するのを防止する役目を有する。
【0116】
また、植木鉢用保護カバー体11の形態は、前記支持棒15等の数や配置によって、植木鉢Cに装着した状態では円筒状や袋状にすることができる。これにより、商品等として外観上においても見栄えが良くなる。
【0117】
さらに、
図1及び
図9に示すように、袋の上端部や下端部において留め具13で留めるように構成している。本発明に係る植木鉢用保護カバー体11は、孔付き筒状フィルムD内の通気孔Bにより留め具13の先端部が係止しやすくなる。
【0118】
すなわち、植木鉢用保護カバー体11の通気孔Bと袋本体とで微小な凹凸面を形成することになり、この凹凸面が留め具13の滑り止めとして機能する。
【0119】
しかも、その袋本体は軟質な樹脂製素材のために留め具13への接地性を良くするものである。
【0120】
なお、本発明では植木鉢C等に係止できるように孔付き筒状フィルムDに係止部を構成することもできる。
【0121】
すなわち、前記通気孔Bとはサイズの大きな丸孔や略三角形孔を穿設することで係止部(図示せず)を設け、その係止部を植木鉢C底部の高台等の凸部や凹部等に係止し、孔付き筒状フィルムDの伸縮性を利用することにより植物Eを生育させた植木鉢C全体を被覆することができる。
【0122】
この場合は、下方開口部Kを有する袋状の保護カバー体11の開口部K側に前記係止部を設ける。
【0123】
さらに、保護カバー体11内にLED電球等を配設することができる。すなわち、LED電球を備えたクリスマスツリーを被覆することで、通常とは異なるクリスマスツリーを演出可能である。
【0124】
次に、保護カバー体11をプランターPに適用する場合について説明する。
【0125】
前記では、孔付き筒状フィルムDを袋状に構成したものを植木鉢Cに適用したが、プランターP用の保護カバー体11として使用することができる。
【0126】
図10は、プランターP用の保護カバー体11の全体構造を示した説明図である。
【0127】
図10に示すように、横長のプランターPに使用する場合、前記植木鉢Cの形態とは異なり、上部にシール部Sを有し下方開口部Kを有した袋状に形成した保護カバー体11を植物Eに被せて使用して、プランターPに植生した植物Eのみを保護するような形態をとることができる。
【0128】
次に、具体的なマルチフィルム12の使用方法について
図2を参照して説明する。
図2は、マルチフィルム12の適用例を説明する説明図である。
【0129】
マルチフィルム12は、トラクタの後部に、前側から順に、ロータリ耕耘装置と、畝整形器と、マルチフィルム敷設装置とを備えた畝立てマルチャを装着し、走行しながら耕耘して畝立てをし、その畝Uに敷設するものである。
【0130】
通常のマルチフィルムは、畝U内の地温上昇や雑草抑制を目的とするものであるが、本発明では、
図2に示すように、孔付き筒状フィルムDからの改変シート材を適用することにより、従来のマルチフィルムにはない伸縮性に優れている効果が発揮される。
【0131】
すなわち、一定幅員の長尺形状として巻取り、解舒しながら畑の畝Uの隆起部上面を畝Uの長手方向に沿って被覆可能な形状としたマルチフィルム12を適用することで、幅方向に伸縮させながら畝Uの上面に被覆できる構成している。
【0132】
なお、前記植木鉢用の保護カバー体11は袋形状として構成しているが、マルチフィルム12では筒状の形状ではなく、その孔付き筒状フィルムDを軸線方向に切り開くことにより一定幅員の一枚のシート長尺形状に改変して使用する。
【0133】
そして、
図2に示すように、マルチフィルム12に被覆する際、孔付き筒状フィルムDの通気孔Bを利用して左右に伸長させることが可能である。しかも、横長の畝Uの幅に応じて自由に選択することができる。なお、マルチフィルム12上には、畝U上に育成された植物Eの葉茎部を通す通し孔14を縦横に所定間隔を有して複数配設することができる。
【0134】
本発明のマルチフィルム12は、場所や環境に応じて色毎に適用することができる。例えば、遮光性を必要な場合には、黒色のマルチフィルム12を使用する。
【0135】
また、光反射性を有するマルチフィルム12を使用することにより、害虫等を忌避することができる。
【0136】
このように孔付き筒状フィルムDを利用したマルチフィルム12とすることにより、伸縮性に富む孔付き筒状フィルムDを適用することができ、畝Uの形状に沿って被覆することができ、しかも、露害や雨水等から保護できる効果を有する。
【0137】
以上、本実施例を通して本発明を説明してきたが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、上述した各効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本実施例に記載されたものに限定されるものではない。