【解決手段】 外気に接する外層と、外層に対して剥離可能に積層される内層とから構成され、一端に口部を有し他端に底部を有する輸液容器である。内層内には、薬液が収容される。外層には、空気導入部が設けられる。口部を下方に向け、空気導入部から外層と内層の間に空気を流通させ、内層内の薬液を滴下させる。空気導入部は、例えば外層に孔部を形成することにより形成され、ラベルを貼着することで閉塞され、ラベルを剥離することで開放される。
前記空気導入部は、前記外層に孔部を形成することにより形成され、ラベルを貼着することで閉塞され、ラベルを剥離することで開放されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の輸液容器。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述のように、空気針の使用する必要がないこと等、ボトルタイプの容器に比べて実用上の利点の多い輸液バッグであるが、未だ様々な課題を抱えている。例えば、可撓性のプラスチック材料により形成される輸液バッグは、自立性がなく、保管し難いという問題がある。自立性の無い輸液バッグは、自立させた状態で並べて保管することができないので、保管のための占有面積が大きくなってしまう。また、積み重ねることも難しい。
【0007】
さらに、輸液バッグに使用する可撓性プラスチック材料の選択にも制約があり、様々な機能を付与することができないという問題もある。例えば、点滴に用いられる薬液が紫外線に晒されると変質のおそれがあることから、輸液バッグに紫外線吸収能を付与することが望まれるが、薬液と接する輸液バッグを構成するプラスチック材料に紫外線吸収剤を添加することは難しい。紫外線吸収剤が表面に滲みだし、薬液中に入り込む可能性があるからである。
【0008】
そのため、一般的な輸液バッグでは、外装材の中に入れた状態で保管するという方法が採用されている。外装材に紫外線吸収剤を混入しておけば、輸液バッグ内の薬液に悪影響を与えることなく、紫外線に晒されることを防ぐことができる。
【0009】
また、輸液バッグにおいては、薬液の酸化防止等のために酸素の遮断も必要である。酸素バリア性に優れたプラスチック材料として、エチレン−ビニルアルコール共重合体が知られているが、柔軟性に欠けることから、輸液バッグのプラスチック材料としては使い難い。そこで、外装材の中に酸素吸収剤(脱酸素剤)を入れておき、酸素による悪影響を防止することが行われている。
【0010】
しかしながら、前記のような外装材の使用は、生産性の低下やコスト増の原因となるばかりでなく、使用時に外装材を開封して輸液バッグを取り出す必要がある等、作業性においても煩雑になるという問題もある。
【0011】
本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、外装材を使用することなく十分な紫外線吸収機能や酸素バリア機能を付与することができ、自立性を有し、点滴時に空気針が不要な輸液容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述の目的を達成するために、本発明の輸液容器は、外気に接する外層と、前記外層に対して剥離可能に積層される内層とから構成され、一端に口部を有し他端に底部を有する輸液容器であって、前記内層内には、薬液が収容され、前記外層には、空気導入部が設けられ、前記口部を下方に向け、前記空気導入部から外層と内層の間に空気を流通させ、内層内の薬液を滴下させることを特徴とする。
【0013】
本発明の輸液容器では、内層のみが外層から剥離して変形し、円滑な薬液の滴下が行われる。したがって、いわゆるヘッドスペースは不要であり、ヘッドスペースのガス置換も不要である。また、特許文献1記載の点滴用薬液容器等と同様、空気針を使用する必要もない。さらに、内層には紫外線吸収剤等を混入する必要がなく、収容された薬液が悪影響を受けることもない。
【0014】
一方、外層に関しては、薬液に対して直接的に接するわけではないので、使用するプラスチック材料に制約はなく、例えばある程度剛性のあるプラスチック材料で形成すれば、自立性のある輸液ボトルとして構成することが可能である。また、外層に紫外線吸収剤を混入したり、外層を酸素バリア性に優れるプラスチック材料で形成すれば、外装材を使用する必要もない。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、空気針を使用しなくとも、円滑に薬液の滴下を行うことが可能な輸液容器を提供することが可能である。また、本発明によれば、収容される薬液に悪影響を与えることなく、十分な紫外線吸収機能や酸素バリア機能等を付与することができ、外装材を使用する必要のない輸液容器を提供することが可能である。外装材を使用する必要がないことから、製造コストや作業性等の点でも有利である。さらに、本発明によれば、自立性を有する輸液容器を提供することができ、効率的に保管することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を適用した輸液容器の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
本発明の輸液容器1は、
図1に示すように、容器本体2の一端に口部3を有し、他端に底部4を有するものである。
図1においては、上下反転させてあり、下方に口部3が設けられ、上方に底部4が位置している。
【0019】
また、前記口部3にはキャップ5が装着されるとともに、前記口部3近傍の首部6には、不用意な変形により薬液の供給が遮断されることがないように、強度を高めるための円環状のリブ7が複数形成されている。一方、底部4には、輸液容器1を点滴スタンド等に吊り下げるための吊り下げ部8が一体に形成されており、この吊り下げ部8を点滴スタンドに引っ掛けることにより、点滴を行うようになっている。
【0020】
本発明の輸液容器は、いわゆる積層剥離タイプの容器を輸液容器に適用したものであり、本実施形態の輸液容器1も、
図2に示すように、外気に接する外層11と、前記外層11に対して剥離可能に積層される内層12とから構成されている。例えば、外層11と内層12とを互いに剥離自在とするために、接着性のない樹脂同士を重ね合わせてブロー成形し、外層11と内層12が積層された形態の輸液容器1を形成している。
【0021】
ここで、外層11と内層12を構成するプラスチック材料としては、剥離自在とするために互いに接着性のないものを選択すればよく、係る要件を満たせばそれぞれ任意のプラスチック材料を選択することができるが、外層11と内層12のそれぞれに要求される性能や機能を考慮して、最適なものを選択することが好ましい。
【0022】
例えば、内層12は、この中に収容される薬液と直接的に接することになることから、薬液に含まれる成分(薬剤)をなるべく吸着しないことが求められる。また、収容された薬液を円滑に滴下させるためには、柔軟であることが好ましい。このような観点から、内層12に用いるプラスチック材料としては、ポリプロピレンや環状ポリオレフィン等のポリオレフィン系樹脂材料が好ましい。内層12の形態としては、収縮可能なようにフィルム状である。
【0023】
なお、後述のように外層11に紫外線吸収剤等を混入すれば、内層12に紫外線吸収剤等を混入する必要はない。薬液と接する内層12に紫外線吸収剤等を混入すると、いわゆるブリード等によって薬液に移行してしまう可能性があるが、内層12に紫外線吸収剤等の添加剤を混入しなければ、収容される薬液に悪影響が及ぶことはない。
【0024】
一方、外層11に関しては、薬液と接することがないので、内層12内に収容される薬液に対して何ら影響を与えることがなく、柔軟性等を要求されることもないので、用いるプラスチック材料を自由に選定することができる。例えば、ある程度剛性のあるプラスチック材料を選定すれば、輸液容器1を自立性の容器(ボトル)とすることができる。輸液容器1を自立性の容器とすることができれば、保管が容易なものとなる。
【0025】
また、外層11には、紫外線吸収剤等、各種機能を付与するために必要な添加剤を混入することができ、それによって収容される薬液を保護することが可能である。外層11に紫外線吸収剤を必要量添加すれば、収容される薬液が紫外線に晒されることがなくなり、薬液の変質等を防止することができる。
【0026】
さらに、外層11に酸素バリア性に優れた樹脂材料を使用することも可能である。例えば、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)は、酸素バリア性に優れた樹脂材料であるが、柔軟性に欠けるため、比較的厚いEVOH層を輸液バッグに用いることは難しい。本発明の輸液容器1では、外層11が柔軟性に欠けていても構わないため、外層11に厚肉(例えば、厚さ100μm以上)のエチレン−ビニルアルコール共重合体の層を有するように形成することが可能である。外層11をエチレン−ビニルアルコール共重合体の層を有するように形成すれば、輸液容器1に酸素バリア性を付加することができ、外装材に入れて脱酸素材を入れる等の対策が必要なくなる。
【0027】
最も好ましくは、外層11をエチレン−ビニルアルコール共重合体で形成し、そこに紫外線吸収剤等の添加剤を添加することである。これによって、酸素や紫外線が遮断され、収容される薬液をこれらから保護することができる。
【0028】
また、外層11の最も内側の位置に、ポリプロピレンやポリエチレンの層を設け、内層12の最も外側の位置に、薄肉(例えば、厚さ100μm未満)のEVOH層を設けることで、外層11と内層12とが剥離しやすくなるとともに、酸素バリア性を高めることができる。なお、この層構成においては、内層12のEVOH層の内側隣接層に接着層を介して他の樹脂(低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン等)の層を設けることができるが、この層構成において、万が一、薄肉のEVOH層が成形不良などにより途切れていた場合は、外層11と内層12とが剥離しなくなるため、内容物を充填する前に、外層11から内層12を剥離してみる(予備剥離する)ことで、薄肉のEVOHの成形不良を確実に見つけることができる。また、EVOH層の代わりに、ナイロン層を設けることもできる。
【0029】
なお、外層11は透明であっても不透明であっても構わないが、外層11を透明とすることで、内層12の収縮状態を目視にて確認することができ、好ましい態様と言える。
【0030】
本実施形態の輸液容器1は、前述の通り、積層剥離タイプの容器であり、外層11と内層12とが剥離自在に積層されているが、使用時(点滴時)には、内層12が円滑に萎んで、薬液が滴下することが必要である。このような円滑な滴下を実現するために、本実施形態の輸液容器1には、空気導入部が設けられている。空気導入部を設け、ここから外層11と内層12の間に空気を導入することで、内層12の剥離を促進し、内層12が速やかに萎んで薬液が滴下される。
【0031】
前記空気導入部は、本実施形態の輸液容器1では、容器本体2の外層11に空気導入孔13を設けることにより形成されている。外層11に空気導入孔13を形成することで、ここから外層11と内層12の間に空気が導入され、外層11と内層12の剥離が進行する。
【0032】
また、外層11に設けられた空気導入孔13には、シール14が貼り付けられており、これによって未使用時には空気導入孔13が閉塞された状態とされている。未使用時には、空気導入孔13から空気を導入する必要がなく、空気導入孔13をシール14で閉塞しておくことによって、不用意に外層11と内層12が剥離されてしまうのを防止することができる。使用時には、シール14を剥がせば良く、これによって空気導入孔13が開放され、外層11と内層12の間に空気が導入される。
【0033】
輸液容器1の場合、内容物によっては滅菌処理を施す場合がある。滅菌処理として、例えば蒸気滅菌を採用した場合、空気導入孔13が開放されていると、そこから水分が浸入する可能性がある。本実施形態のように、空気導入孔13をシール14で閉塞しておけば、外層11と内層12の間に水蒸気(水分)が不用意に侵入することがなくなる。
【0034】
空気導入孔13の閉塞構造としては、これに限らず、種々の変更が可能である。例えば、
図2に示す例では、容器本体2の平坦部に空気導入孔13を形成し、これを閉塞する形で平坦面にラベル14を貼り付けているが、
図3に示すように、空気導入孔13の周囲を囲むように突起31を設け、その頂部にラベル14を貼り付けてもよい。突起31の形状を断面略三角形とし、その頂部を尖った形状としてラベル14を線状にシールすることで、シール14を簡単に剥がすことができる。シール14の貼着状態に耐圧性を持たせる必要がある場合には、
図4に示すように突起31の形状を断面略台形とし、頂部を平坦面とすればよい。これにより接着面積が増し、耐圧性が確保される。
【0035】
前記のように空気導入孔13の周囲に突起31を形成し、そこにシール14を貼り付けることで、シール14が容器本体2から若干浮き上がった状態となり、シール14が摘まみ易くなって剥がすのが容易になるという利点があるが、例えば搬送時等に輸液容器1が互いに接触すると、シール14が不用意に剥がれてしまうおそれもある。このような事態を避けるためには、例えば
図5に示すように、空気導入孔13の周囲において容器本体2に凹部32を設け、凹部32内に突起31を形成し、シール14を貼り付けるようにすればよい。凹部32の深さを突起31の高さとシール14の厚さの和より若干大きくしておけば、貼り付けられたシール14が容器本体2の凹部32内に落とし込まれた形になり、仮に輸液容器1同士が接触したとしても、シール14が不用意に剥がれることはなくなる。
【0036】
さらに、空気導入孔13に逆止弁を設けることも可能である。空気導入孔13は、前記のようにシール14が貼り付けられているが、シール14を剥がした後には、空気導入孔13は開放された状態となる。この状態で空気導入孔13から空気を導入し、外層11と内層12の剥離を進行させると、空気導入孔13から異物が侵入してしまうことがある。空気導入孔13に逆止弁を設置しておけば、このような異物の侵入を防ぐことができる。
【0037】
図6は逆止弁41の空気導入孔13への取り付け状態を示すものであり、本例の場合、空気導入孔13の周囲に凹部42を形成し、逆止弁41が突出しないようにしている。また、凹部42の周囲に突起43を形成し、シール14で閉塞している。
【0038】
図7〜
図10は、逆止弁の一形状例を示すものである。本例の逆止弁41は、胴部44と、胴部44の下方に形成され、底面に空気孔45を有する膨出部46と、胴部44の上方に形成される大径部47とから構成されている。空気導入孔13に取り付けた状態では、膨出部46と大径部47が外層11に係止することで容器本体2に固定される。この時、胴部44の周面をテーパ面とすることで、空気導入孔13としっかりと嵌合し、この部分からの空気の流出を最小限に抑えることができる。
【0039】
胴部44と膨出部46、大径部47の内部は、上下に連なる空洞48となっており、この空洞48内に球体49が収容されている。球体49は、例えばゴム等の弾性体により形成されている。また、大径部47にはストッパ部50が内周部分に設けられており、球体49の脱落を防止するようになっている。したがって、スクイズ時には、
図9に示すように、空気が空気孔45を通過する力で球体49が大径部47側に移動してストッパ部50に押し付けられ、空気が流出することがない。スクイズ終了時には、外層11と内層12の間が負圧となるので、球体49が膨出部46移動する。この時、球体49は膨出部46の底面に押し付けられ、空気孔45を塞ぐ形になるが、空気孔45には等間隔でスリット(隙間)が放射状に形成されているため、ここから空気が簡単に流入する。
【0040】
図11は、逆止弁の他の例を示すものであり、
図12はその取り付け状態を示すものである。本例の逆止弁51は、空気導入孔13に挿通される軸部52と、軸部52よりも断面積が大きな蓋部53と、逆止弁51が外層11内に入り込むことを防ぐ係止部54とを有する。係止部54は、軸部52と結合されたブリッジ部55と、その両端に設けられた支持部56とから構成される。逆止弁51を空気導入孔13に取り付けた状態では、ブリッジ部55の弾性力により、蓋部53が空気導入13を塞ぐ形になり、空気が外層11と内層12の間に流入・流出することはない。外層11と内層12の間が負圧になると、蓋部53に内方に向かう力が働き、ブリッジ部55が撓んで空気導入孔13が開放される。
【0041】
いずれの形態においても、シール14が貼り付けられており、これを剥がして使用するようになっている。したがって、シール14には、イージーピールタイプのシールを使用することが好ましい。
図13は、シール14の構成例を示すものである。この例では、シール14は、基材層14aと、イージーピール層14bの2層構造を有している。
【0042】
前記基材層14aには、任意のフィルムを用いることができ、用途によって最適なものを選べばよい。例えば、水蒸気や酸素に対して強力なバリア性が必要な場合には、アルミニウム蒸着を施したナイロン(商品名)フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリプロピレンフィルム等や、シリカ蒸着やアルミナ蒸着を施したナイロン(商品名)フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリプロピレンフィルム等を用いることができる。水蒸気や酸素に対して低〜中程度のバリア性が必要な場合には、塩化ビニリデンをコーティングしたナイロン(商品名)フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリプロピレンフィルム等を用いることができる。
【0043】
イージーピール層14bは、凝集剥離タイプのものや界面剥離タイプのもの、層間剥離タイプのもの等、任意の剥離形態のものを使用することができる。凝集剥離タイプのものは、例えばポリプロピレン樹脂やポリエチレン樹脂の層と、これらの混合樹脂の層とにより実現することができ、ポリマーブレンドにより剥離強度を調整することが可能である。界面剥離タイプのものは、エチレン−ビニルアルコールと粘着材とにより形成することができ、粘着材を選定することで剥離強度を調整することができる。層間剥離タイプのものは、中間層と接着層を積層することにより構成され、接着層と中間層の層間接着力を調整することにより剥離強度を調整する。
【0044】
シール14の貼り付け方法としては、熱溶着、超音波溶着、インパルス溶着等の方法を採用することができる。具体的には、先ず、容器本体2を成形後、外層11に空気導入孔13を穿設し、外層11と内層12の予備剥離を行う。予備剥離後、全周剥離を行い、内層12を復元してリークチェックを行い、シール14の溶着を行う。シール14の溶着に際しては、
図14に示すように、溶着棒61を用いてシール14を突起31に貼り付ける。
【0045】
空気導入部は、容器本体2の底部4のピンチオフ部に形成することも可能である。外層11と内層12を積層してブロー成形される容器本体2においては、
図3(A)に示すように、底部4にピンチオフ部15が形成されている。このピンチオフ部15は、容器本体2をブロー成形する過程で内層12を加熱溶融させることにより形成されたものであり、完全に封止された状態であるため、ここから内層12内に空気が進入することはない。この時、
図3(B)に示すように、ピンチオフ部15に臨む外層11と内層12の間にスリット16を設けておけば、ここから空気が進入することができる。すなわち、前記スリット16が空気導入部としての役割を果たすことになる。
【0046】
次に、本実施形態の輸液容器1の使用形態について説明する。本実施形態の輸液容器1は、自立性を有することから、保管の際には自立させて保管することが可能である。また、本実施形態の輸液容器1を使用して点滴等を行う場合、
図4に示すように、吊り下げ部8を点滴スタンド等に係止し、口部3を下方に向けて設置する。
【0047】
次いで、点滴ライン21の先端に設けた針22を口部3のキャップ5に刺し、これを貫通させ、ラベル14を剥がして外層11に設けられた空気導入孔13を開放する。これによって外層11と内層12の間に空気が進入し、内層12が外層11から剥離しながら収縮可能となって、内層12内の薬液Pの滴下が開始される。内層12内の薬液Pは、点滴ライン21の中途位置に設けられたチャンバー23において滴下され、微小な気泡等が除去されて体内へ投与される。
【0048】
前述の構成を有する本発明の輸液容器は、従来の輸液ボトルや輸液バッグ等と比べて、多くの利点を有する。先ず、本発明の輸液容器は、外層に比較的剛性を有する樹脂材料を用いることで、自立性の輸液ボトルとすることができ、保管が容易である。また、内層が萎むことにより薬液の滴下が行われるので、点滴時の空気針が不要であり、ヘッドスペースを設ける必要がない。ヘッドスペースは、ボトル内に設けられる空間であり、空気に含まれる酸素による薬液の酸化が問題となるので、通常は、不活性なガスによりガス置換する。ガス置換には手間がかかり、生産性の低下や製造コストの上昇等の原因となるが、本発明の輸液容器では、ヘッドスペースを設ける必要がないので、ガス置換も不要である。
【0049】
さらに、外層に紫外線吸収剤等の添加剤を混入したり、酸素バリア性に優れた樹脂材料を用いることで、内層内に収容される薬液に悪影響を及ぼすことなく、紫外線吸収機能や酸素バリア性等を付加することができ、外装材による包装や、脱酸素剤の使用等も不要である。
【0050】
以上、本発明を適用した実施形態についてを説明してきたが、本発明が前述の実施形態に限られるものでないことは言うまでもなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の変更を加えることが可能である。
【0051】
例えば、前述の実施形態では、外層11を剛性を有する樹脂材料で形成し、ボトルタイプの輸液容器としたが、外層11も柔軟性を有するフィルム状の樹脂材料で形成し、いわゆる輸液バッグと同様、フィルムタイプの輸液容器とすることも可能である。