特開2015-199023(P2015-199023A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三浦工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開2015199023-濾過装置 図000003
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-199023(P2015-199023A)
(43)【公開日】2015年11月12日
(54)【発明の名称】濾過装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 33/06 20060101AFI20151016BHJP
   B01D 24/46 20060101ALI20151016BHJP
   B01D 33/44 20060101ALI20151016BHJP
   B01D 33/58 20060101ALI20151016BHJP
   B01D 24/38 20060101ALI20151016BHJP
   B01D 33/70 20060101ALI20151016BHJP
   B01D 29/11 20060101ALI20151016BHJP
   B01D 29/66 20060101ALI20151016BHJP
【FI】
   B01D33/06 D
   B01D33/36
   B01D33/38
   B01D29/10 510D
   B01D29/10 520B
   B01D29/10 520Z
   B01D29/10 530A
   B01D29/38 510C
   B01D29/38 520A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-78861(P2014-78861)
(22)【出願日】2014年4月7日
(71)【出願人】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074181
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 明博
(74)【代理人】
【識別番号】100152249
【弁理士】
【氏名又は名称】川島 晃一
(72)【発明者】
【氏名】白石 仁士
【テーマコード(参考)】
4D026
【Fターム(参考)】
4D026BA01
4D026BB05
4D026BC23
4D026BC26
4D026BC30
4D026BD01
4D026BF01
4D026BF06
4D026BF19
(57)【要約】
【課題】 吸引ノズルの当接面がフィルタ内面の縦継目を跨ぐことによる洗浄汚水排出管を流れる洗浄汚水の水量の急激な減少があっても、水撃作用を緩和することができるようにした濾過装置を得る。
【解決手段】 ケーシング1内に配置されて内部に流入した被処理水を濾過して外部へ流出させる円筒状のフィルタ2内に、フィルタ2の内周面に向かって開口し、逆洗水を吸引する吸引ノズル3を備え、吸引ノズル3で吸引した洗浄汚水を洗浄汚水排出管4から排出する濾過装置において、水中に空気を供給して気泡を混入させる空気供給手段17を設け、被処理水供給管12や洗浄汚水排出管4を流れる水中に空気を供給して気泡を混入させることにより、洗浄汚水排出管4を流れる洗浄汚水での音速を低速に抑え、洗浄汚水排出管4を流れる洗浄汚水の水量の急激な減少による水撃作用を緩和できるようにした。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシング内に配置されて内部に流入した被処理水を濾過して外部へ流出させる円筒状のフィルタ内に、前記フィルタの内周面に向かって開口し、逆洗水を吸引する吸引ノズルを備え、前記吸引ノズルで吸引した洗浄汚水を洗浄汚水排出管から排出する濾過装置において、水中に空気を供給して気泡を混入させる空気供給手段を設けたことを特徴とする濾過装置。
【請求項2】
前記空気供給手段により空気を供給して水中に気泡を混入したときのボイド率が1%〜10%であることを特徴する請求項1に記載の濾過装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーシング内に配置されて内部に流入した被処理水を濾過して外部へ流出させる円筒状のフィルタ内に、フィルタの内周面に向かって開口し、逆洗水を吸引する吸引ノズルを備え、吸引ノズルで吸引した洗浄汚水を洗浄汚水排出管から排出する濾過装置に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶に貯留されるバラスト水や、その他汚染物質を含んだ汚染水などの被処理水を濾過するものとして、内部に流入した被処理水を濾過して外部へ流出させる円筒状のフィルタを備えた濾過器がある。この濾過器で使用されるフィルタは、多数の穴を設けた金属薄板を、その側辺を突き合わせて接続し円筒形に形成した支持体の内周面に金網などの濾過体を円筒状に設けた構成のものが知られている。
【0003】
このように構成されるフィルタは、一方の開口部が被処理水入口となり、他方の開口部は閉鎖され、被処理水入口からフィルタ内側に流入した被処理水を内周面の濾過体を通過させ被処理水中の異物を捕捉することから、フィルタの内面に異物が堆積し、異物の堆積量が多くなるにつれフィルタの閉塞が進み、そのままにしておくと圧力損失が大きくなり、濾過流量が十分に得られなくなる。このような事態を防止するため、フィルタを洗浄して内面に堆積している異物を除去し、フィルタの濾過能力を維持する必要がある。
【0004】
フィルタを洗浄する方法として、濾過方向と逆方向にフィルタ二次側の処理水を流す逆洗浄が知られており、フィルタ内に、フィルタの内周面に向かって開口し、逆洗水を吸引する吸引ノズルを備え、吸引ノズルで吸引した洗浄汚水を洗浄汚水排出管から排出している(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2008−507391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した円筒状のフィルタが、多数の穴を設けた金属薄板の側辺を接続して円筒形に形成した支持体の内周面に金網などの濾過体を円筒状に設けた構成のものである場合、フィルタに1又は複数の縦継目が存在することになる。
このため、特許文献1に例示されるこの種の濾過装置の吸引ノズルの当接面は、フィルタ内面の摺動の過程で必ず縦継目を通過し、吸引ノズルの当接面が縦継目を跨いだとき吸引ノズルの当接面に設けられている吸引穴がフィルタの縦継目により瞬間的に塞がれ逆洗水の吸引が停止することになる。その結果、洗浄汚水排出管を流れる洗浄汚水の水量の急激な減少による洗浄汚水排出管の急激な圧力変化によって生じる圧力波の伝播による水撃作用が発生し、大きな衝撃音の発生ばかりか配管を破損してしまう場合がある。
【0007】
また、洗浄汚水排出管を流れる洗浄汚水の水量の急激な減少による洗浄汚水排出管の急激な圧力変化したときに生じる負の圧力波が排水側に伝播し、反射波が正の圧力波となって吸引ノズルの吸引穴から水を噴射させ、この噴射圧により吸引ノズルの当接面をフィルタ内面から離反させる場合がある。この場合、ノズルの当接面にフィルタの一次側の圧力が掛かり、吸引ノズルの当接面をフィルタに押しつける力が小さいと、吸引ノズルの当接面がフィルタの縦継目を通過した後も、吸引ノズルの当接面がフィルタ内面から離反したままの状態となることもある。こうした吸引ノズルの当接面のフィルタ内面からの離反を防ぐためには、正の圧力波により発生する吸引ノズルの吸引穴から水を噴射する噴射圧に勝る大きな力で吸引ノズルの当接面をフィルタに押しつけなければならず、その分構成が大がかりになる。
【0008】
本発明者は、上記諸問題を解決するために水撃作用を緩和する手段について試験研究を重ねた結果、洗浄汚水の水量の急激な減少による液体に加えられた圧力によって発生する圧力波は液体中での音速で伝わり、音速の速度に比例して衝撃も大きくなるといったこと、そして、液体中での音速は液体中に空気が混入していると速度が落ちるといったことに着目し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明の目的は、吸引ノズルの当接面がフィルタ内面の縦継目を跨ぐことによる洗浄汚水排出管を流れる洗浄汚水の水量の急激な減少があっても、水撃作用を緩和することができるようにした濾過装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、ケーシング内に配置されて内部に流入した被処理水を濾過して外部へ流出させる円筒状のフィルタ内に、前記フィルタの内周面に向かって開口し、逆洗水を吸引する吸引ノズルを備え、前記吸引ノズルで吸引した洗浄汚水を洗浄汚水排出管から排出する濾過装置において、水中に空気を供給して気泡を混入させる空気供給手段を設けたことを特徴としている濾過装置である。
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、水中に空気を供給して気泡を混入させる空気供給手段を設けたので、空気供給手段で被処理水供給管や洗浄汚水排出管を流れる水中に空気を供給して気泡を混入させることにより、洗浄汚水排出管を流れる洗浄汚水には気泡が混入した状態となり、洗浄汚水排出管を流れる洗浄汚水での音速は常に低速に抑えられた状態にあるので、洗浄汚水排出管を流れる洗浄汚水の水量の急激な減少により発生する圧力波は洗浄汚水排出管の中を低速に抑えられた音速で伝わることから、洗浄汚水排出管を流れる洗浄汚水の水量の急激な減少による水撃作用を緩和することができる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、前記空気供給手段により空気を供給して水中に気泡を混入したときのボイド率が1%〜10%であることを特徴としている請求項1に記載の濾過装置である。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、前記空気供給手段により空気を供給して水中に気泡を混入したときのボイド率が1%〜10%であるので、洗浄汚水排出管を流れる洗浄汚水中での音速として、水撃作用を緩和する良好な音速を得ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る濾過装置によれば、空気供給手段で被処理水供給管や洗浄汚水排出管を流れる水中に空気を供給して気泡を混入させることにより、洗浄汚水排出管を流れる洗浄汚水に気泡が混入した状態とし、洗浄汚水排出管を流れる洗浄汚水での音速を常に低速に抑えた状態とすることができるので、吸引ノズルの当接面がフィルタ内面の縦継目を跨ぐことによる洗浄汚水排出管を流れる洗浄汚水の水量の急激な減少があっても、洗浄汚水の水量の急激な減少による水撃作用を緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る濾過装置の実施の形態の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る濾過装置の実施の形態の一例を図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明に係る濾過装置の一例を示す概略断面図である。
【0017】
本発明に係る濾過装置は、円筒状のケーシング1内に配置され、内部に流入した被処理水を濾過して外部へ流出させる円筒状のフィルタ2と、フィルタ2の一次側に設けられ、フィルタ2の内周面に向かって開口し、フィルタ2の軸方向全域から常時吸引する吸引ノズル3と、吸引ノズル3で吸引した洗浄汚水をケーシング1から外部へ排出する洗浄汚水排出管4を備えている。
【0018】
ケーシング1は、上部開口部が蓋部5で、下部開口部が底部6で密閉されている。ケーシング3内に配置されたフィルタ4は、本例では、多数の穴を設けた金属薄板を、その側辺を突き合わせて接続し円筒形に形成した縦継目(図示せず。)が存在する支持体の内周面に金網などの濾過体を円筒状に設けた構成となっており、その上部開口部が上閉止部7で密閉され、下部開口部が下閉止部8で密閉され、その軸心を中心にケーシング1に回転可能に支持され、モータ9で回転するようになっている。
吸引ノズル3は、洗浄汚水排出管4に連通状態で取り付けられているヘッド基管10の先端側に軸方向に移動可能に嵌合し、弾性部材(図示せず。)によりフィルタ2の内周面方向に付勢されている。
【0019】
ケーシング1の下部にはフィルタ2と連通する被処理水導入口11が設けられ、被処理水導入口11には被処理水供給管12が接続されている。被処理水供給管12には、被処理水を圧送するポンプ13と、ポンプ13の下流側に位置して開閉弁14が設けられている。また、ケーシング1の側部には処理水流出口15が設けられている。洗浄汚水排出管4には、運転中は常時開いている開閉弁16が設けられている。
【0020】
被処理水供給管12と洗浄汚水排出管4には、被処理水供給管12を流れる被処理水中に、そして、洗浄汚水排出管4を流れる洗浄汚水中に空気を供給して気泡を混入させる空気供給手段17が設けられている。本例では、被処理水供給管12と洗浄汚水排出管4に空気供給手段17が設けられているが、いずれか一方に設けられてもよい。
被処理水供給管12を流れる被処理水中や洗浄汚水排出管4を流れる洗浄汚水中に空気を供給する位置にあっては、特に限定されない。本例では、被処理水供給管12を流れる被処理水中への吸気の供給は、ポンプ13の入口側に空気供給手段17を設け、また、洗浄汚水排出管4を流れる洗浄汚水中への吸気の供給は、洗浄汚水排出管4の途中に空気供給手段17を設けて空気を供給している。
【0021】
空気供給手段17にあっては、本例ではエアコンプレッサを使用し、高圧空気を水中に供給しているが、これに限られるものではなく、被処理水供給管12を流れる被処理水中や洗浄汚水排出管4を流れる洗浄汚水中に空気を供給して気泡を混入させることができるものであればよい。
また、空気供給手段17の空気供給口には、散気管などの空気を微細化させる散気部を設けることが好ましい。空気を微細化して供給することにより、水中に効果的に気泡を混入することができる。
空気供給手段17で被処理水中や洗浄汚水中に混入する気泡の量は特に限定されないが、これをボイド率で表わしたとき、1%〜10%であることが好ましい。ボイド率が1%以上であると、洗浄汚水排出管4を流れる洗浄汚水中での音速として、水撃作用を緩和する良好な音速を得ることができる。ボイド率が10%を超えると被処理水や洗浄汚水の流れの障害となる場合がある。
【0022】
このように構成された本発明に係る濾過装置によれば、空気供給手段17で、被処理水供給管12を流れる被処理水中や洗浄汚水排出管4を流れる洗浄汚水中に空気を供給して気泡を混入させると、洗浄汚水排出管4を流れる洗浄汚水中での音速が低下する。
すなわち、気泡が混入していない洗浄汚水での音速は約1500m/sであるが、洗浄汚水中に気泡が混入していると、例えば、ボイド率が1%以上であると洗浄汚水中での音速が300m/s前後まで低下する。
【0023】
このように、運転中、洗浄汚水排出管4を流れる洗浄汚水には気泡が混入した状態となり、混入した気泡により洗浄汚水排出管を流れる洗浄汚水での音速は常に低速に抑えられた状態にあるので、吸引ノズル3の当接面がフィルタ2の内周面の縦継目を跨ぐことによる洗浄汚水排出管4を流れる洗浄汚水の水量の急激な減少があっても、水量の急激な減少により発生する圧力波は洗浄汚水排出管4の中を低速に抑えられた音速で伝わることから、洗浄汚水排出管4を流れる洗浄汚水の水量の急激な減少による水撃作用を緩和することができる。
【0024】
また、空気供給手段17により加圧空気を供給して水中に気泡を混入したときのボイド率が1%〜10%であるので、洗浄汚水排出管4を流れる洗浄汚水中での音速として、水撃作用を緩和する良好な音速を得ることができるとともに、水中に混入した気泡による被処理水や洗浄汚水の流れの障害を防止することができる。
【0025】
なお、本例では、フィルタ2は回転するように構成され、吸引ノズル3当接面は、フィルタ2の回転によりフィルタ2の内面を走査するようになっているが、フィルタ2が固定され、洗浄汚水排出管4が回転するように構成されている場合にも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0026】
1 ケーシング
2 フィルタ
3 吸引ノズル
4 洗浄汚水排出管
5 蓋部
6 底部
7 上閉止部
8 下閉止部
9 モータ
10 ヘッド管
11 被処理水導入口
12 被処理水供給管
13 ポンプ
14 開閉弁
15 処理水流出口
16 開閉弁
17 空気供給手段
図1